特許第6012840号(P6012840)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 備前発条株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6012840-ヘッドレスト 図000002
  • 特許6012840-ヘッドレスト 図000003
  • 特許6012840-ヘッドレスト 図000004
  • 特許6012840-ヘッドレスト 図000005
  • 特許6012840-ヘッドレスト 図000006
  • 特許6012840-ヘッドレスト 図000007
  • 特許6012840-ヘッドレスト 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6012840
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】ヘッドレスト
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/48 20060101AFI20161011BHJP
   A47C 7/38 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   B60N2/48
   A47C7/38
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-252637(P2015-252637)
(22)【出願日】2015年12月24日
【審査請求日】2016年1月20日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591283501
【氏名又は名称】備前発条株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114535
【弁理士】
【氏名又は名称】森 寿夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075960
【弁理士】
【氏名又は名称】森 廣三郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155103
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 厚
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194755
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀明
(72)【発明者】
【氏名】山根 孟士
(72)【発明者】
【氏名】小林 徳三
(72)【発明者】
【氏名】谷口 靖
【審査官】 古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0084534(US,A1)
【文献】 実開昭62−107754(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00−2/72
A47C 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
起立した最後方位置から前方に70〜90°程度傾倒した格納位置まで回動可能な状態でヘッドレストステーに支持された上振り調整式のヘッドレストであって、
ヘッドレストが、最後方位置から前方に40°程度傾倒して前方調整限界位置となるまでの使用範囲にあるときには、
使用時傾倒角度調節手段によってヘッドレストの傾倒角度が調節可能な状態とされ、
ロック解除手段によってヘッドレストを格納位置まで前方回動及び最後方位置まで後方回動させることが可能な状態になる一方、
ヘッドレストが格納位置にあるときには、
格納時後方回動規制手段によってヘッドレストの後方回動が規制されながらも、
ロック解除手段によって格納位置にあるヘッドレストを最後方位置まで後方回動させることが可能な状態となる
ことを特徴とするヘッドレスト。
【請求項2】
ヘッドレストステーに固定される固定部材と、
固定部材にピン結合された回動部材と、
回動部材を最後方位置に復帰する向きに常時付勢する回動部材付勢バネと、
回動部材にピン結合されたロックプレートと、
ロックプレートを規制方向に常時付勢するためのロック付勢バネと、
で構成したユニットと、
ユニットとヘッドレストステーが結合された機構部と、
機構部を包むケースと、
ケースに組み込まれた操作手段と、
ケースを覆うクッション材及び表皮と、
で構成され、
固定部材の外周部に設けられた使用時用第一係止部と、ロックプレートに設けられた使用時用第一被係止部とが、使用時傾倒角度調節手段とされ、
固定部材の外周部に設けられた第二係止部と、ロックプレートに設けられた第二被係止部とが、使用時前方回動規制手段とされ、
操作手段に設けられた第一カムとロックプレートに設けられた第一カム接触部、又は、固定部材にピン結合されたロック規制部材に設けられた第二カムとロックプレートに設けられた第二カム接触部とが、ロック解除手段とされた
請求項1記載のヘッドレスト。
【請求項3】
ヘッドレストステーに固定される固定部材と、
固定部材にピン結合された回動部材と、
回動部材を最後方位置に復帰する向きに常時付勢する回動部材付勢バネと、
回動部材にピン結合されたロックプレートと、
ロックプレートを規制方向に常時付勢するためのロック付勢バネと、
固定部材にピン結合されたロック規制部材と
で構成したユニットと、
ユニットとヘッドレストステーが結合された機構部と、
機構部を包むケースと、
ケースを覆うクッション材及び表皮と、
で構成され、
固定部材の外周部に設けられた使用時用第一係止部と、ロックプレートに設けられた使用時用第一被係止部とが、使用時傾倒角度調節手段とされ、
ロック規制部材に設けられた第二カムとロックプレートに設けられた第二カム接触部とが、ロック解除手段とされた
請求項1記載のヘッドレスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等のシートバック上部に備えられるヘッドレストに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等のシートバック上部に備えられるヘッドレストとしては、前後位置を変えることなく高さ調整のみを行うことができるもの(以下、「固定式のヘッドレスト」と呼ぶことがある。)のほか、各種のものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、不使用時においてシートバックに対して前方へ傾倒させる(折り畳む)ことができるようにしたヘッドレスト(以下、「折り畳み式のヘッドレスト」と呼ぶことがある。)が提案されている。折り畳み式のヘッドレストは、不使用時に折り畳むことで、ドライバー等の後方視界を広く確保することができるだけでなく、折り畳み時のヘッドレストをシートバックの前面側から大きく突出させ、ヘッドレストの不適切な使用を防止することも可能なものとなっている。
【0004】
ところで、ヘッドレストとしては、使用時における前後位置を調整することができるようにしたヘッドレスト(以下、「前後調整式のヘッドレスト」と呼ぶことがある。)も提案されている。例えば、特許文献2には、平行リンク機構を採用した前後調整式のヘッドレスト(以下においては、「平行リンクタイプのヘッドレスト」と呼ぶことがある。)が提案されている。また、特許文献3には、ヘッドレストステーの上部に回動可能に取り付けることで、平行リンク機構を採用することなく、使用時における前後位置を調整することができるようにした前後調整式のヘッドレスト(以下においては、「上振りタイプのヘッドレスト」と呼ぶことがある。)が提案されている。前後調整式のヘッドレストは、着席者の姿勢等に合わせて、ヘッドレストの前後位置を調整することができ、着席者の後頭部とヘッドレストの前面との隙間を適切に調整することが可能なものとなっている。
【0005】
しかし、固定式のヘッドレストは、その不使用時にドライバー等の後方視界を確保することや、使用時における前後位置を調整することができないという欠点を有していた。また、上記の折り畳み式のヘッドレストは、使用時における前後位置を調整することができないという欠点を有していた。さらに、上記の前後調整式のヘッドレストは、その使用時にドライバー等の後方視界を確保することができないという欠点を有していた。さらにまた、上記の前後調整式のヘッドレストは、いわゆる乗り越しバネによってロック状態と非ロック状態とを切り替えるものであったため、誤動作する虞があった。加えて、上記の前後調整式のヘッドレストは、それを構成する部材を加工する際に、ファインブランキング等の特殊プレスを施す必要があり、製造コストが高くなるという欠点を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5513693号公報
【特許文献2】特表2006−523497号公報
【特許文献3】特許第5710831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、その不使用時には前方に略水平となるまで傾倒させることでドライバー等の後方視界を確保でき、且つ、その使用時には、その前後位置(傾倒角度)を最適な場所に調節することができるヘッドレストを提供するものである。また、安全性に優れたヘッドレストを提供することや、ヘッドレストの構成部材を一般的なプレスで加工して低コスト化を図ることや、ヘッドレストの構成部材を薄くして軽量化を図ることも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、
起立した最後方位置から前方に70〜90°程度傾倒した格納位置まで回動可能な状態でヘッドレストステーに支持された上振り調整式のヘッドレストであって、
ヘッドレストが、最後方位置から前方に40°程度傾倒して前方調整限界位置となるまでの使用範囲にあるときには、
使用時傾倒角度調節手段によってヘッドレストの傾倒角度が調節可能な状態とされ、
ロック解除手段によってヘッドレストを格納位置まで前方回動及び最後方位置まで後方回動させることが可能な状態になる一方、
ヘッドレストが格納位置にあるときには、
格納時後方回動規制手段によってヘッドレストの後方回動が規制されながらも、
ロック解除手段によって使用範囲又は格納位置にあるヘッドレストを最後方位置まで後方回動させることが可能な状態となる
ことを特徴とするヘッドレスト
を提供することによって解決される。
【0009】
本発明のヘッドレストは、不使用時に、前方の格納位置に折り畳んでドライバー等の後方視界を確保するだけでなく、使用時に、ヘッドレストの前後位置を調整して着席者の頭部や首部が受けるダメージを軽減することが可能なものとなっている。
【0010】
本発明のヘッドレストを具体的にどのように構成するかは特に限定されないが、例えば、
ヘッドレストステーに固定される固定部材と、
固定部材にピン結合された回動部材と、
回動部材を最後方位置に復帰する向きに常時付勢する回動部材付勢バネと、
回動部材にピン結合されたロックプレートと、
ロックプレートを規制方向に常時付勢するためのロック付勢バネと、
で構成したユニットと、
ユニットとヘッドレストステーが結合された機構部と、
機構部を包むケースと、
ケースに組み込まれた操作手段と、
ケースを覆うクッション材及び表皮と、
で構成し、
固定部材の外周部に設けられた使用時用第一係止部と、ロックプレートに設けられた使用時用第一被係止部とを、使用時傾倒角度調節手段とし、
固定部材の外周部に設けられた第二係止部と、ロックプレートに設けられた第二被係止部とを、使用時前方回動規制手段とし、
操作手段に設けられた第一カムとロックプレートに設けられた第一カム接触部、又は、固定部材にピン結合されたロック規制部材に設けられた第二カムとロックプレートに設けられた第二カム接触部とを、ロック解除手段とする
と好ましい。
以下においては、この構成のヘッドレストを「使用時前方回動規制型のヘッドレスト」と呼ぶことがある。
【0011】
これにより、折り畳み式と前後調整式の特徴を兼ね備えたものでありながら、急な減速や衝突による異常停止時等に、ヘッドレストに前向きの慣性力が加わったとしても、使用時前方回動規制手段によって、ヘッドレストが使用範囲を越えて前方の格納位置まで移動することなく、前方調整限界位置で前方回動できない状態とすることができる。このため、異常停止時等に生じた慣性力によって前のめりになった反動で後方に移動する着用者の頭部が、前方に迫り出したヘッドレスト(前方の格納位置にあるヘッドレスト)の先端部に突き当たらないようにするだけでなく、その頭部を前方調整限界位置でサポートすることも可能になり、ヘッドレストの安全性を高めることが可能になる。このとき、ヘッドレストの背丈(ケースの背丈)を高くしても、異常停止時等に、使用時のヘッドレストが前方に突き出ることがない(ヘッドレストの先端部が着座者の頭部や背中に当たることがない)ため、ヘッドレストの背丈を高く確保したり、ヘッドレストの先端部の形状を角ばった形状にする等、ヘッドレストのデザインの自由度を高めたりすることも可能になる。さらに、使用時前方回動規制型のヘッドレストでは、ロックプレートの切替動作(第一係止部と第一被係止部の係止の切替)を、乗り越しバネを使用することなく行うので、誤動作を防ぐことも可能となっている。さらにまた、ロックプレート等の構成部材は、厚さ2mm程度の薄い鋼板の一般的なプレスによって加工することができる(ファインブランキング等の特殊プレスで加工する必要がない)ため、低コスト化や軽量化を図ることも可能になる。
【0012】
また、本発明のヘッドレストを、
ヘッドレストステーに固定される固定部材と、
固定部材にピン結合された回動部材と、
回動部材を最後方位置に復帰する向きに常時付勢する回動部材付勢バネと、
回動部材にピン結合されたロックプレートと、
ロックプレートを規制方向に常時付勢するためのロック付勢バネと、
固定部材にピン結合されたロック規制部材と
で構成したユニットと、
ユニットとヘッドレストステーが結合された機構部と、
機構部を包むケースと、
ケースを覆うクッション材及び表皮と、
で構成し、
固定部材の外周部に設けられた使用時用第一係止部と、ロックプレートに設けられた使用時用第一被係止部とを、使用時傾倒角度調節手段とし、
ロック規制部材に設けられた第二カムとロックプレートに設けられた第二カム接触部とを、ロック解除手段とする
ことも好ましい。
以下においては、この構成のヘッドレストを「使用時前方回動非規制型のヘッドレスト」と呼ぶことがある。
【0013】
これにより、折り畳み式と前後調整式の特徴を兼ね備えたものでありながら、操作手段の操作によらないで、ヘッドレストを格納位置まで前方回動させたり、最後方位置まで後方回動させたりすることが可能になる。ただし、使用時前方回動非規制型のヘッドレストは、使用時前方回動規制型のヘッドレストのように使用時前方回動規制手段を有しないため、使用時前方回動非規制型のヘッドレストでは、急な減速や衝突による異常停止時等に生じた前向きの慣性力によってヘッドレストが前方に倒れないように、回動部材付勢バネは、付勢力の大きなものを用いると好ましい。また、ヘッドレストの背丈(ケースの背丈)は、あまり高くしない方が好ましく、ヘッドレストの先端部は、丸みのある形状とすると好ましい。誤動作を防ぐことや、低コスト化や軽量化を図ることについては、使用時前方回動規制型のヘッドレストと同様、使用時前方回動非規制型のヘッドレストにおいても可能になる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によって、その不使用時には前方に略水平となるまで傾倒させることでドライバー等の後方視界を確保でき、且つ、その使用時には、その前後位置(傾倒角度)を最適な場所に調節することができるヘッドレストを提供することが可能になる。また、安全性に優れたヘッドレストを提供することや、ヘッドレストの構成部材を一般的なプレスで加工して低コスト化を図ることや、ヘッドレストの構成部材を薄くして軽量化を図ることも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第一実施態様のヘッドレストを示した分解斜視図である。
図2】第一実施態様のヘッドレストを前方から見た状態と側方から見た状態とを示した図である。
図3】第一実施態様のヘッドレストを最後方位置から前方調整限界位置を経て格納位置まで回動させる様子を側方から見た状態を示した図である。
図4】第一カムと第一カム接触部との位置関係の変化を示した図である。
図5】固定部材に溶接結合された横ステー部を上方から見た状態を示した図である。
図6】第二実施態様のヘッドレストを最後方位置から前方調整限界位置とロック解除位置とを経て格納位置まで回動させる様子を側方から見た状態を示した図である。
図7】第三実施態様のヘッドレストを最後方位置から前方調整限界位置と格納位置とを経てロック解除位置まで回動させる様子を側方から見た状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のヘッドレストの好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。以下においては、第一実施態様から第三実施態様までの3つの実施態様を例に挙げて本発明のヘッドレストを説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施態様に限定されることなく、適宜変更を施すことができる。また、一の実施態様で述べた構成は、他の実施態様において採用することが不可能でない限り、当該他の実施態様においても採用することができる。
【0017】
1.第一実施態様のヘッドレスト
まず、第一実施態様のヘッドレストについて説明する。図1は、第一実施態様のヘッドレストを示した分解斜視図である。図2は、第一実施態様のヘッドレストを前方から見た状態(同図(a))と側方から見た状態(同図(b))とを示した図である。図3は、第一実施態様のヘッドレストを最後方位置(同図(a))から前方調整限界位置(同図(b))を経て格納位置(同図(c))まで回動させる様子を側方から見た状態を示した図である。図2及び図3においては、図示の便宜上、ヘッドレストの内部が見える状態で描いている。図4は、第一カム111aと第一カム接触部63との位置関係の変化を示した図である。図4(a)及び図4(c)は、側方(操作手段110の棒状部111の長手方向に平行な方向)から見た状態を描いており、図4(b)及び図4(d)は、前方から見た状態を描いている。図5は、固定部材30に溶接結合された横ステー部22を上方から見た状態を示した図である。
【0018】
第一実施態様のヘッドレストは、起立した最後方位置(図3(a))から前方に70〜90°程度傾倒した格納位置(図3(c))まで回動可能な状態でヘッドレストステー20に支持された上振り調整式のヘッドレストとなっている。この第一実施態様のヘッドレストは、使用範囲にあるとき、すなわち、図3(a)に示す最後方位置から、図3(b)に示すように、前方に40°程度傾倒して前方調整限界位置となるまでの範囲にあるときには、後述する使用時傾倒角度調節手段によってヘッドレストの傾倒角度が調節可能な状態とされるとともに、後述する使用時前方回動規制手段によって、ヘッドレストの使用範囲を越える前方回動を規制されるようになっている。また、ヘッドレストが使用範囲にあるときには、後述するロック解除手段によって、ヘッドレストを、格納位置まで前方回動及び最後方位置まで後方回動させることができるようになっている。一方、ヘッドレストが格納位置にあるとき、すなわち、図3(c)に示す位置にあるときには、後述する格納時後方回動規制手段によってヘッドレストの前方回動及び後方回動が規制されるようになっている。また、ヘッドレストが格納位置にあるときには、後述するロック解除手段によってヘッドレストを最後方位置まで後方回動させることができるようになっている。第一実施態様のヘッドレストは、折り畳み式と前後調整式の特徴を兼ね備えた上振り調整式ものとなっている。第一実施態様のヘッドレストは、使用時前方回動規制手段を有するものとなっており、上述した「使用時前方回動規制型のヘッドレスト」に該当するものとなっている。
【0019】
以下、第一実施態様のヘッドレストの具体的な構成について説明する。第一実施態様のヘッドレストは、図1に示すように、固定部材30と、回動部材40と、第一結合ピン50と、ロックプレート60と、第二結合ピン70と、回動部材付勢バネ80と、ロック付勢バネ90と、ケース100と、操作手段110と、クッションシート120とを備えたものとなっており、これらの構成部品10〜120がユニット化されたものとなっている。
【0020】
1.1 ヘッドレストフレーム及びヘッドレストステー
ヘッドレストフレーム10は、外径が6mmの鋼線を折り曲げることによって形成され、左右一対の縦フレーム部11の上端が、左右方向に延びる連結部12によって連結された構造を有している。ヘッドレストフレーム10における縦フレーム部11の下部は、回動部材40に溶接結合されている。また、ヘッドレストステー20は、鋼線を正面視逆U字状に折り曲げることによって形成され、左右一対の縦ステー部21の上端が横ステー部22で連結された構造を有している。
【0021】
1.2 固定部材
固定部材30は、外縁部に第一係止部31と第二係止部32とが設けられた左右一対の側壁部を有するU字状部材となっており、当該側壁部に第一ステー挿入孔33が設けられている。第一ステー挿入孔33は、長孔状に形成しており、横ステー部22の挿入を可能にしている。第一ステー挿入孔33は、横ステー部22を挿入可能な形状であればよく、切欠状にしてもよい。なお、図3図6及び図7では、図示の便宜上、第一ステー挿入孔33を横ステー部22と略同形の丸孔で描いている。
【0022】
第一係止部31は、後述するロックプレート60における第一被係止部61を係止するための部分となっている。第一実施態様のヘッドレストにおいては、両方の側壁に第一係止部31を複数個ずつ設けている。具体的には、それぞれの側壁に、複数(より具体的には3個)の使用時用第一係止部31aと、1つの格納時用第一係止部31bを設けている。使用時用第一係止部31aは、ヘッドレストが使用範囲にあるとき(例えば、図3(b)を参照)の第一被係止部61を係止するための部分となっている。このため、第一実施態様のヘッドレストでは、図3(a)に示す最後方位置からヘッドレストを前方に回動させていき、第一被係止部61を係止させる使用時用第一係止部31aを前方に1つずつずらしていくことによって、使用範囲におけるヘッドレストの前後位置を段階的に調整することができるようになっている。換言すると、使用時用第一係止部31aは、第一被係止部61とともに使用時傾倒角度調節手段として機能する部分となっている。一方の格納時用第一係止部31bは、ヘッドレストが格納位置にあるとき(図3(c)を参照)の第一係止部61を係止して、ヘッドレストの後方回動を規制するための部分となっている。換言すると、格納時用第一係止部31bは、第一係止部61とともに格納時後方回動規制手段として機能する部分となっている。
【0023】
第二係止部32は、後述するロックプレート60における第二被係止部61における第二被係止部62を係止するための部分となっている。第二係止部32は、最前方に位置する第一係止部31aよりも前側に、第一係止部31aとは逆向き(後向き)に設けられている。このため、ヘッドレストが前方調整限界位置を越えて前方回動しようとしても、第二係止部32に第二被係止部62が係止した状態となって、後述する操作手段110を操作しない限りは、ヘッドレストは、それ以上前方回動できないようになっている。すなわち、第二係止部32は、第二被係止部62とともに使用時前方回動規制手段として機能する部分となっている。
【0024】
第一ステー挿入孔33は、後述するように、それに挿入したヘッドレストステー20の横ステー部22を溶接結合するための部分となっている。第一実施態様のヘッドレストにおいては、図5に示すように、固定部材30における左右一対の側壁部に溶接部34を切り起こし、この溶接部34を横ステー部22の外周部に溶接するようにしている。また、固定部材30におけるそれぞれの側壁部の内側には、スペーサ用突起35を設けており、固定部材30の側壁部の内面と、固定部材30の内側に配される回動部材30の側壁部の外面との間に隙間が形成されるようにしている。これは、溶接部34を横ステー部22に溶接する際には、回動部材40が固定部材30の内側に配された状態となっているところ、固定部材30の側壁部と回動部材40の側壁部とが接触してしまうと、溶接部34を横ステー部22に溶接する際の熱が回動部材40に伝達され、固定部材30と回動部材40との間に塗布したグリスが気化する等の悪影響が及ぼされる虞があるからである。
【0025】
ところで、第一実施態様のヘッドレストにおいては、ロックプレート60の回転中心Cから第一被係止部61までの距離β(図3(b)を参照)を、使用時用第一係止部31aのピッチαの6倍以上としており、使用範囲にあるヘッドレストを前方回動する際のロックプレート60の首振り角度が小さくなるようにしている。加えて、第一実施態様のヘッドレストにおいては、後述するロック付勢バネ90によって、ロックプレート60がロック方向に常時付勢された状態となっている。このため、ヘッドレストに衝撃等が加えられても、使用時用第一係止部31aから第一被係止部61が外れないようになっている。ロックプレート60における前記首振り角度は、15°以下に抑えると好ましく、10°以下に抑えるとより好ましい。
【0026】
1.3 回動部材及び第一結合ピン
回動部材40は、円弧長孔状の第二ステー挿入孔41(図3を参照)が設けられた左右一対の側壁部を有するU字状部材からなっている。また、第一結合ピン50は、固定部材30に対して回動部材40を回動可能に結合するためのものとなっている。このため、回動部材40は、固定部材30に対して、第一結合ピン50の中心線C図3(a)を参照)を回転中心として回動することができる状態となっている。第一実施態様のヘッドレストにおいては、第一結合ピン50を左右方向に長く形成しており、第一結合ピン50に、後述する左側ケース101と右側ケース102との連結機能を持たせている。
【0027】
1.4 ロックプレート及び第二結合ピン
ロックプレート60は、第一被係止部61が下端縁における左部及び右部に設けられた板状部材となっている。第一被係止部61は、既に述べた通り、ヘッドレストが使用範囲にあるときに使用時用第一係止部31aに係止されて回動部材40の後方回動を規制する機能と、ヘッドレストが格納位置にあるときに格納時用第一係止部31bに係止されて回動部材40の後方回動を規制する機能とを有している。換言すると、第一被係止部61は、使用時用第一係止部31aとともに使用時傾倒角度調節手段として機能するだけでなく、格納時用第一係止部31bとともに格納時後方回動規制手段として機能する部分となっている。第一実施態様のヘッドレストにおいては、ロックプレート60の下端部から左右に突片を設け、この下側の端面が第一被係止部61となるようにしている。当該突片の上側の端面は、上述した第二係止部32に係止するための第二被係止部62として機能する部分となっている。換言すると、第二被係止部62は、第二係止部32とともに使用時前方回動規制手段として機能する部分となっている。また、第二結合ピン70は、回動部材40に対してロックプレート60を回動可能に結合するためのものとなっている。このため、ロックプレート60は、回動部材40に対して、第二結合ピン70の中心線C図3(a)を参照)を回転中心として回動することができる状態となっている。
【0028】
1.5 回動部材付勢バネ及びロック付勢バネ
回動部材付勢バネ80は、回動部材40を初期位置(図3(a)を参照)に復帰させる向き(回動部材40を、図3(a)における中心線Cを中心として時計回り方向へ回転させる向き。)に常時付勢するためのものとなっている。回動部材付勢バネ80の付勢力は、急停止程度の慣性力ではヘッドレストを前方回動させない程度となっている。また、ロック付勢バネ90は、第一被係止部61が第一係止部31に係止される向き(ロックプレート60を、図3(a)における中心線Cを中心として時計回り方向へ回転させる向き。)にロックプレート60を常時付勢するためのものとなっている。
【0029】
1.6 ケース
ケース100は、固定部材30や回動部材40等で構成される機構部を包み込むための部材となっている。図1に示すように、ケース100の側面部には、複数の消音孔100cを設けており、第一係止部31と第一被係止部61とが接触する音等、ケース100の内部で発生した音がこもらないようにしている。また、ケース100の外形状を為す表層部は、その内面側をリブ100dで補強しており、薄肉で軽量ながらも強度に優れたものとなっている。
【0030】
ところで、第一実施態様のヘッドレストにおいては、ケース100を、左側ケース101と右側ケース102とで構成した左右分割式のものとしている。ケース100の分割端(第一実施態様のヘッドレストにおいては右側ケース102の分割端)には、複数の小突起100aを設けている。これらの小突起100aは、左側ケース101と右側ケース102とを組み付ける際に、他側のケース(第一実施態様のヘッドレストにおいては左側ケース101)の表層部内面に密着されて保持されるようになっている。
【0031】
また、左側ケース101及び右側ケース120の内部上側には、前後一対の壁部を有する嵌込溝100bが設けられている。この嵌込溝100bに、ヘッドレストフレーム10を嵌め込むことによって、嵌込溝100bにおける前後一対の壁部に、連結部12を含むヘッドレストフレーム10の前面及び後面が密着した状態となるようになっている。このため、左側ケース101及び右側ケース102をそれぞれ左側及び右側からヘッドレストフレーム10に組み付けることで、左側ケース101と右側ケース102とを連結部12を介して連結することができるようになっている。
【0032】
さらに、左側ケース101と右側ケース102とは、上述したように、第一結合ピン50によっても結合されることに加えて、後述するように、ヘッドレストフレーム10やクッションシート120によっても連結されるようになっており、必要に応じて抜け止めも設けている。このため、組み付けた後のケース100は、強い衝撃が加わる等した場合であっても、容易には分離しない構造となっている。
【0033】
1.7 操作手段
操作手段110は、ロックプレート60をロック解除方向に強制的に移動させることにより、ヘッドレストが使用範囲にあるときには、使用時用第一係止部31aに対する第一被係止部61の係止を解除、及び、第二係止部32に対する第二被係止部62の係止を解除し、ヘッドレストが格納位置にあるときには、格納時用第一係止部31bに対する第一被係止部61の係止を解除するものとなっている。第一実施態様のヘッドレストにおいて、操作手段110は、その先端部に第一カム111aが設けられた棒状部111と、棒状部111の基端側に設けられた押ボタン部112とで構成している。操作手段110は、筒状ホルダ130を介して、ケース100の側面に設けられた操作手段取付孔100eに取り付けられている。筒状ホルダ130の内部には、それに挿入された操作手段110を外方(第一カム111aが後述する第一カム接触部63に作用しない向き)へ押圧するための操作手段付勢バネ140が収容される。
【0034】
この操作手段110は、図4のように動作するものとなっている。すなわち、押ボタン部112に操作力を加えていないとき(非操作時)には、ロックプレート60が通常位置(第一被係止部61が第一係止部31(図3を参照)に係止する位置)にある一方、押ボタン部112に操作力を加えたとき(操作時)には、棒状部111が内側に押し込まれて第一カム111aが第一カム接触部63を押し上げることにより、ロックプレート60を、第二結合ピン70の中心線Cを中心としてロック解除方向(第一被係止部61と第一係止部31(図3を参照)との係止が解除する向き)に回動させるものとなっている。すなわち、第一カム111aは、第一カム接触部63とともにロック解除手段として機能する部分となっている。
【0035】
1.8 クッションシート
クッションシート120は、図1に示すように、ケース100の前面に対して左側ケース101と右側ケース102とに跨った状態で貼り付けられる。これにより、ウレタン等を一体発泡しなくてもヘッドレストにクッション性を付与することが可能となっている。加えて、クッションシート120によって、左側ケース101と右側ケース102との一体性をより高めることも可能となっている。クッションシート120は、ケース100とともに、図示省略の表皮によって覆われる。
【0036】
1.9 第一実施態様のヘッドレストの動作
第一実施態様のヘッドレストは、固定部材30の第一ステー挿入孔33と回動部材40における第二ステー挿入孔41とに、ヘッドレストステー20の横ステー部22を挿入した状態で、横ステー部22を固定部材30に溶接結合することによって、その機構部が構成されている。このような構造を備えたことによって、第一実施態様のヘッドレストは、折り畳み式と前後調整式の特徴を兼ね備えるだけでなく、操作手段110の操作によらなければ後方回動しない構造を有するものとなっている。
【0037】
具体的には、図3(a)に示すように、ヘッドレストが最後方位置にあるとき(前方回動角度が0°のとき)には、ヘッドレストステー20の横ステー部22が第二ステー挿入孔41の前端部に当接することによって、ヘッドレストの後方回動が規制されるようになっている。最後方位置にあるヘッドレストを前方回動させると、ロックプレート60の第一被係止部61が最後方の使用時用第一係止部31aに係止された状態となる。この状態からヘッドレストをさらに前方回動させると、第一被係止部61が係止される使用時用第一係止部31aが1つずつ前方にずれていき、図3(b)に示す前方調整限界位置となる。すなわち、図3(a)の状態も含めると、使用時におけるヘッドレストの前後位置を4段階で調整することができるようになっている。回動部材40は、上述した回動部材付勢バネ80によって、初期位置(図3(a)の位置)に復帰する向き(後方回動する向き)に常時付勢されていることに加えて、ロックプレート60は、上述したロック付勢バネ90によってロック方向に常時付勢されているため、使用時用第一係止部31aに対して第一被係止部61がしっかりと係止されるようになっている。
【0038】
このように、ヘッドレストが使用範囲(最後方位置から前方調整限界位置までの間)にあるときには、ヘッドレストステー20の横ステー部22が第二ステー挿入孔41の前端部に当接する、又は、第一被係止部61が第一係止部31aに当接することによって、ヘッドレストの後方回動が規制される一方、ヘッドレストの前方回動は、規制されない(操作手段110を操作することなくヘッドレストを前方回動させることができる)ようになっている。ただし、前方調整限界位置(図3(b)を参照)にあるヘッドレストがさらに前方回動しようとすると、ロックプレート60の第二被係止部62が第二係止部32に係止された状態となる。このため、ヘッドレストが前方調整限界位置にあるときには、操作手段110を操作してロックプレート60をロック解除方向に回動させない限りは、ヘッドレストが前方回動しない(ヘッドレストが図3(c)に示す格納位置に移動しない)ようになっている。よって、異常停止時等においても、ヘッドレストが必要以上に前方回動することなく、着用者の頭部を安全且つ適切にサポートすることができるようになっている。
【0039】
また、ヘッドレストの不使用時には、操作手段110(図1を参照)を操作することで第一被係止部61を第一係止部31から離脱させ、図3(c)に示すように、ヘッドレストを前方の格納位置に移動させることが可能な状態となる。ヘッドレストが格納位置にあるときには、ロックプレート60の第一被係止部61が格納時用第一係止部31bに係止された状態となるため、ヘッドレストの後方回動が規制される。また、ヘッドレストの前方回動も、横ステー部22が第二ステー挿入孔41の後端部に当接しているため、規制される。ヘッドレストが格納位置にあるときと、ヘッドレストが使用位置にあるとき(最後方位置にあるときを除く)には、操作手段110を操作することによって、ヘッドレストを後方回動させることが可能な状態となる。
【0040】
2.第二実施態様のヘッドレスト
続いて、第二実施態様のヘッドレストについて説明する。図6は、第二実施態様のヘッドレストを最後方位置(同図(a))から前方調整限界位置(同図(b))とロック解除位置(同図(c))とを経て格納位置(同図(d))まで回動させる様子を側方から見た状態を示した図である。図6では、図示の便宜上、ケース100(図1を参照)等の一部の部材を省略して描いている。以下においては、第一実施態様のヘッドレストと異なる部分に注目して説明する。第二実施態様のヘッドレストにおいて特に言及しない構成については、第一実施態様のヘッドレストと同様の構成を採用することができる。
【0041】
第二実施態様のヘッドレストは、第一実施態様のヘッドレストと同様、折り畳み式と前後調整式の特徴を兼ね備えた上振り調整式ものとなっている。また、第二実施態様のヘッドレストは、第一実施態様のヘッドレストと同様、使用時傾倒角度調節手段と、使用時前方回動規制手段と、格納時後方回動規制手段と、ロック解除手段とを備えており、上述した「使用時前方回動規制型のヘッドレスト」に該当するものとなっている。固定部材30における使用時用第一係止部31aとロックプレート60における第一被係止部61とが使用時傾倒角度調節手段として機能すること、固定部材30における第二係止部32とロックプレート60における第二被係止部62とが使用時前方回動規制手段として機能すること、固定部材30における格納時用第一係止部31bとロックプレート60における第一被係止部61とが格納時後方回動規制手段として機能すること、及び、ロックプレート60における第一カム接触部63と操作手段110における第一カム111aとがロック解除手段として機能することは、第一実施態様のヘッドレストと同様である。ただし、第二実施態様のヘッドレストは、ヘッドレストが使用範囲にあるときに、第一カム接触部63と第一カム111a以外の構成も、ロック解除手段として機能するようになっており、ロック解除手段の詳細が、第一実施態様のヘッドレストと異なっている。
【0042】
以下、このことについて具体的に説明する。第二実施態様のヘッドレストは、図6に示すように、第二カム151と円弧長孔状の第三ステー挿入孔152とを有するロック規制部材150を備えたものとなっている。ロック規制部材150は、回動部材40と同様、第一結合ピン50に対して回動可能な状態で支持されている。第三ステー挿入孔152には、ヘッドレストステー20の横ステー部22が挿入されている。また、ロックプレート60には、第一被係止部61と第一カム接触部63とに加えて、第二カム接触部を設けている。
【0043】
第二実施態様のヘッドレストは、ヘッドレストが図6(a)に示す最後方位置から図6(b)に示す前方調整限界位置となるまでの範囲においては(使用範囲にあるときには)、第一実施態様のヘッドレストと同様、ヘッドレストの位置を前方調整可能な状態となっている。ロック規制部材150は、回動部材40との間で回転抵抗を付与されている。このため、ヘッドレストが使用範囲にあるときのロック規制部材150は、回動部材40に連動して前方回動するようになっている。したがって、ヘッドレストが使用範囲にあるときには、第一実施態様のヘッドレストと同様、ロックプレート60がロック方向へ押し付けられることによって、第一被係止部61が第一係止部31に係止された状態となり、ヘッドレストの後方回動が規制されるようになっている。ヘッドレストが最後方位置にあるときには、ヘッドレストステー20の横ステー部22が第二ステー挿入孔41の前端部に当接した状態となっているため、この当接によってもヘッドレストの後方回動が規制されるようになっている。
【0044】
また、第二実施態様のヘッドレストでは、図6(b)に示すように、ヘッドレストが前方調整限界位置に達すると、ロック規制部材150における第三ステー挿入孔152の後端部に、ヘッドレストステーの横ステー部22が当接して、ロック規制部材150の前方回動が規制された状態となる。このため、前方調整限界位置にあるヘッドレストをさらに前方へ回動させると、ロック規制部材150は、回動部材40に連動することなくその場所に留まり、回動部材40がロック規制部材150を残して前方回動するようになる。さらに、第二実施態様のヘッドレストでは、ヘッドレストが前方調整限界位置付近に達した際に、ロック規制部材150の第二カム151が、ロックプレート60における第二カム接触部64に当接するようになっている。このため、第二カム151が第二カム接触部64に接触して以降、ヘッドレストをさらに前方回動させると、第二カム151と第二カム接触部64との作用によって、第一被係止部61が使用時用第一係止部31aから離脱し、ヘッドレストを最後方位置まで後方回動させることが可能な状態となる。また、第二実施態様のヘッドレストでは、操作手段110を操作して第一カム111aを第一カム接触部63に作用させることによっても、第一被係止部61を第一係止部31から離脱させてヘッドレストを前方の格納位置に移動させることができるようになっている。すなわち、第二実施態様のヘッドレストでは、第二カム151と第二カム接触部64、及び、操作手段110の第一カム111a(図4)とロックプレート60の第一カム接触部63(図4)の双方が、ロック解除手段として機能するようになっている。
【0045】
また、前方調整限界位置にあるヘッドレストをさらに前方回動すると、図6(c)に示すように、ロックプレート60の第二被係止部62が固定部材30の第二係止部32に係止された状態となる。このため、ヘッドレストが前方調整限界位置にあるときには、操作手段110を操作してロック解除させない限りは、第二係止部32に対する第二被係止部62の係合を解除することができず、ヘッドレストが図6(d)に示す格納位置に移動しないようになっている。よって、異常停止時等においても、ヘッドレストが必要以上に前方回動することなく、着用者の頭部を安全且つ適切にサポートすることができるようになっている。ヘッドレストの不使用時には、操作手段110(図1を参照)を操作することで第二被係止部62を第二係止部32から離脱させ、図6(d)に示すように、ヘッドレストを前方の格納位置に移動させることが可能な状態となり、最後方位置への復帰も可能である。
【0046】
3.第三実施態様のヘッドレスト
続いて、第三実施態様のヘッドレストについて説明する。図7は、第三実施態様のヘッドレストを最後方位置(同図(a))から前方調整限界位置(同図(b))と格納位置(同図(c))とを経てロック解除位置(同図(d))まで回動させる様子を側方から見た状態を示した図である。図7では、図示の便宜上、一部の部材を省略して描いている。以下においては、第一実施態様又は第二実施態様のヘッドレストと異なる部分に注目して説明する。第三実施態様のヘッドレストにおいて特に言及しない構成については、第二実施態様又は第三実施態様のヘッドレストと同様の構成を採用することができる。
【0047】
第三実施態様のヘッドレストは、第一実施態様や第二実施態様のヘッドレストと同様、折り畳み式と前後調整式の特徴を兼ね備えた上振り調整式ものとなっている。ただし、第三実施態様のヘッドレストは、使用時傾倒角度調節手段と、格納時後方回動規制手段と、ロック解除手段とを備えているものの、使用時前方回動規制手段を有しておらず、上述した「使用時前方回動非規制型のヘッドレスト」に該当するものとなっている。また、上記の第一実施態様及び第二実施態様のヘッドレストは、いずれも、操作手段110を備えており、ロック解除手段として、ロックプレート60における第一カム接触部63と操作手段110における第一カム111aとを有するものとなっていたが、第三実施態様のヘッドレストは、ロック解除手段として、ロックプレート60における第二カム接触部64とロック規制部材150における第二カム151のみを有するものとなっている。さらに、上記の第一実施態様及び第二実施態様のヘッドレストは、いずれも、格納位置にあるヘッドレストをそれ以上前方に回動させることができない状態となっていたが、第三実施態様のヘッドレストでは、格納位置にあるヘッドレストをそれよりも前方のロック解除位置まで前方回動させることができるものとなっている。
【0048】
以下、このことについて具体的に説明する。第三実施態様のヘッドレストでは、使用時前方回動規制手段150となる第二係止部32と第二被係止部62とを有しておらず、図7(b)に示す前方回動調整限界位置にあるヘッドレストを前方回動させることができるようになっている。このため、第三実施態様のヘッドレストでは、急な減速や衝突等の異常停止時等に使用範囲にあるヘッドレストが格納位置まで前方回動しないように、回動部材付勢バネ80の付勢力を大きくすると好ましい。また、万が一、ヘッドレストが格納位置まで前方回動したとしても、ヘッドレストの先端部が着座者を傷つけないように、ケース100の背丈を低くするとともに、ヘッドレストの先端部を丸く形成すると好ましい。
【0049】
また、第三実施態様のヘッドレストは、図7に示すように、ロック規制部材150を備えている。ロック規制部材150には、第二実施態様のヘッドレストと同様、第三ステー挿入孔152が設けられているが、第三実施態様のヘッドレストにおける第三ステー挿入孔152は、第二実施態様のヘッドレストにおける第三ステー挿入孔152よりも長い円弧状に形成されている。このため、第二実施態様のヘッドレストでは、前方回動するヘッドレストが前方調整限界位置にあるときに、ヘッドレストステー20の横ステー部22が第三ステー挿入孔152の後端部に当接し、前方調整限界位置より前方では、ロック規制部材150を残して回動部材40のみが前方回動するようになっていたのに対し、第三実施態様のヘッドレストでは、前方回動するヘッドレストが、図7(c)に示す格納位置となったときに、ヘッドレストステー20の横ステー部22が第三ステー挿入孔152の後端部に当接し、格納位置よりもさらに前方となったときに、ロック規制部材150を残して回動部材40のみが前方回動するようになっている。したがって、第二カム接触部64と第二カム151とが作用してロックプレート60のロックが解除されるロック解除位置(図7(d))が、格納位置よりも前方となっている。
【0050】
以上の第三実施態様のヘッドレストでは、操作手段110を有しておらず、使用範囲又は格納位置にあるヘッドレストを、一旦、格納位置よりも前方にあるロック解除位置まで回動させることによって、操作手段110の操作によることなく、図7(a)に示す最後方位置まで復帰させることができるようになっている。よって、第三実施態様のヘッドレストは、折り畳み式と前後調整式の特徴を兼ね備えたヘッドレストでありながら、複雑な操作が必要ないものとなっている。
【0051】
4.用途
以上のように、本発明のヘッドレストは、折り畳み式と前後調整式の特徴を兼ね備えたものであることに加えて、安全性を高めることや、低コスト化や軽量化を図ることも可能なものであるため、自動車等の輸送手段のシート上部に設けられるヘッドレストとして、好適に採用することができる。
【符号の説明】
【0052】
10 ヘッドレストフレーム
20 ヘッドレストステー
21 縦ステー部
22 横ステー部
30 固定部材
31 第一係止部
31a 使用時用第一係止部(使用時傾倒角度調節手段)
31b 格納時用第一係止部
32 第二係止部(使用時前方回動規制手段)
33 第一ステー挿入孔
34 溶接部
35 スペーサ用突起
40 回動部材
41 第二ステー挿入孔
50 第一結合ピン
60 ロックプレート
61 第一被係止部(使用時傾倒角度調節手段)
62 第二被係止部(使用時前方回動規制手段)
63 第一カム接触部(ロック解除手段)
64 第二カム接触部(ロック解除手段)
70 第二結合ピン
80 回動部材付勢バネ
90 ロック付勢バネ
100 ケース
100a 小突起
100b 嵌込溝
100c 消音孔
100d リブ
100e 操作手段取付孔
101 左側ケース
102 右側ケース
110 操作手段
111 棒状部
111a 第一カム(ロック解除手段)
112 押ボタン部
120 クッションシート
130 筒状ホルダ
140 操作手段付勢バネ
150 ロック規制部材
151 第二カム(ロック解除手段)
152 第三ステー挿入孔
【要約】      (修正有)
【課題】不使用時には後方視界を確保でき、使用時には前後位置を調節することができるヘッドレストを提供する。
【解決手段】ヘッドレストを、最後方位置から前方に傾倒した格納位置まで回動可能なものとし、最後方位置から前方の前方調整限界位置となるまでの使用範囲にあるときには、使用時傾倒角度調節手段31a,61によってヘッドレストの傾倒角度が調節可能で、ロック解除手段によってヘッドレストを格納位置まで前方回動及び最後方位置まで後方回動させることが可能な状態になる一方、ヘッドレストが格納位置にあるときには、格納時後方回動規制手段31b,61によってヘッドレストの前方回動及び後方回動が規制されながらも、ロック解除手段によってヘッドレストを最後方位置まで後方回動させることが可能な状態となる。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7