(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透過型電子顕微鏡で観察したモルフォロジーにおいて、前記芳香族ポリカーボネート(A)からなる1つの相と、前記共重合体(b1)からなる2つの相と、を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0014】
〔熱可塑性樹脂組成物〕
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物(以下、「樹脂組成物」ともいう。)は、
芳香族ポリカーボネート(A)と、
シアン化ビニル系単量体と、該シアン化ビニル系単量体と共重合可能な1種以上の単量体と、の共重合体(b1)、及び、シアン化ビニル系単量体と、該シアン化ビニル系単量体と共重合可能な1種以上の単量体と、ゴム質重合体と、のグラフト共重合体(b2)を含む共重合体混合物(B)と、
Mg、Al、及びCaからなる群より選ばれる少なくとも一種類の金属原子と、を含み、
前記共重合体混合物(B)は、アセトン可溶成分を含み、
該アセトン可溶成分は、高速液相クロマトグラフィーによるシアン化ビニル成分含有率の測定において、シアン化ビニル成分含有率15〜50%の範囲に2つのピークトップ1及びピークトップ2を少なくとも有し、
前記ピークトップ1が、シアン化ビニル成分含有率15%以上30%以下の範囲に存在し、
前記ピークトップ2が、シアン化ビニル成分含有率30%超過50%以下の範囲に存在し、
前記金属原子の総含有量が、前記芳香族ポリカーボネート(A)及び前記共重合体混合物(B)の総量100質量部に対して、10〜1000ppmである。
【0015】
〔芳香族ポリカーボネート(A)〕
熱可塑性樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート(A)を含む。このような芳香族ポリカーボネート(A)としては、特に限定されないが、例えば、下記式で表される芳香族カーボネート単位を有する単独重合体、又は、下記式で表される芳香族カーボネート単位と非芳香族カーボネート単位とを有する共重合体が挙げられる。芳香族ポリカーボネート(A)は分岐状でも、非分岐状でもよい。
【化1】
(式中、Arは、芳香族基を有する2価の炭化水素基である。)
【0016】
芳香族ポリカーボネート(A)は、芳香族ヒドロキシ化合物と、ホスゲン又は炭酸ジエステルと、を反応させること、又は、芳香族ヒドロキシ化合物と、非芳香族ヒドロキシ化合物と、ホスゲン又は炭酸ジエステルと、を反応させることによって得ることができる。なお、芳香族ポリカーボネート(A)の製造方法は、上記の方法に限られず通常公知の方法であればいずれを用いてもよい。具体的には、ホスゲン法をはじめとする界面重合法、溶融法をはじめとするエステル交換法が挙げられる。このなかでも、溶融法によって製造され、末端基のOH基の量を調整して製造したものが好ましい。
【0017】
芳香族ポリカーボネート(A)の原料となる芳香族ジヒドロキシ化合物としては、特に限定されないが、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(慣用名ビスフェノールA)、テトラビスフェノールA、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−P−ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4−ジヒドロキシジフェニル等が挙げられる。このなかでも、ビスフェノールAが好ましい。
【0018】
なお、3つ以上のヒドロキシ基を有する芳香族ヒドロキシ化合物を用いることにより、分岐状の芳香族ポリカーボネート(A)を得ることができる。このような芳香族ポリヒドロキシ化合物としては、特に限定されないが、例えば、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6−ジメチル−2,4,6−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン−3、1,3,5−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン等のポリヒドロキシ化合物;3,3−ビス(4−ヒドロキシアリール)オキシインドール(慣用名イサチンビスフェノール)、5−クロルイサチン、5,7−ジクロルイサチン、5−ブロムイサチン等が挙げられる。
【0019】
3つ以上のヒドロキシ基を有する芳香族ヒドロキシ化合物の使用量は、芳香族ヒドロキシ化合物の総量100モル%に対して、好ましくは0.010〜10モル%であり、より好ましくは0.10〜2.0モル%である。分岐状の芳香族ジヒドロキシ化合物の使用量が上記範囲であることにより、熱可塑性樹脂組成物の流動性と、得られる成形体の耐衝撃性のバランスがより優れる傾向にある。
【0020】
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の重量平均分子量(以下、「Mw」ともいう。)は、好ましくは10000以上であり、より好ましくは20000〜500000であり、さらに好ましくは25000〜300000である。Mwが10000以上であることにより、PC/ABS系樹脂におけるABS系樹脂の熱変形温度、曲げ強度、耐衝撃性等の機械的強度の改善効果がより良好になる傾向にある。また、Mwが500000以下であることにより、成形加工性により優れる傾向にある。芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」ともいう。)によって測定することができる。
【0021】
芳香族ポリカーボネート(A)の含有量は、芳香族ポリカーボネート(A)と共重合体混合物(B)の総和100質量部に対して、好ましくは5〜95質量部であり、より好ましくは20〜90質量部であり、さらに好ましくは30〜80質量部である。芳香族ポリカーボネート(A)の含有量が5質量部以上であることにより、芳香族ポリカーボネート(A)を添加することによる耐熱性、耐衝撃性の改質効果がより優れる傾向にある。また、芳香族ポリカーボネート(A)の含有量が95質量部以下であることにより、共重合体混合物(B)を添加することによる加工性、塗装後の鮮映性、塗膜密着性、塗装後の耐傷付き性の改善効果がより優れる傾向にある。
【0022】
〔共重合体混合物(B)〕
熱可塑性樹脂組成物は、シアン化ビニル系単量体と、該シアン化ビニル系単量体と共重合可能な1種以上の単量体と、の共重合体(b1)、及び、シアン化ビニル系単量体と、該シアン化ビニル系単量体と共重合可能な1種以上の単量体と、ゴム質重合体と、のグラフト共重合体(b2)を含む共重合体混合物(B)を含む。
【0023】
共重合体混合物(B)が共重合体(b1)を含むことにより、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、耐傷性、塗装後の鮮映性、耐薬品性、生産性のバランスが優れる。また、共重合体混合物(B)がグラフト共重合体(b2)を含むことにより、得られる成形体の曲げ特性と耐衝撃性のバランスがより優れる。
【0024】
また、共重合体混合物(B)の含有量は、芳香族ポリカーボネート(A)と共重合体混合物(B)の総和100質量部に対して、好ましくは5〜95質量部であり、より好ましくは10〜80質量部であり、さらに好ましくは20〜70質量部である。共重合体混合物(B)の含有量が5質量部以上であることにより、成形加工性、及び塗装後の鮮鋭性がより優れる傾向にある。また、共重合体混合物(B)の含有量が95質量部以下であることにより、耐衝撃性、耐熱性がより優れる傾向にある。
【0025】
共重合体混合物(B)におけるシアン化ビニル系単量体の含有量は、ゴム質重合体以外の全成分100質量部に対して、好ましくは3〜65質量部であり、より好ましくは5〜55質量部であり、さらに好ましくは、8〜50質量部である。シアン化ビニル系単量体の含有量が3質量部以上であることにより、得られる成形体の耐衝撃性、耐傷性、塗装後の鮮映性、耐薬品性がより優れる傾向にある。また、シアン化ビニル系単量体の含有量が65質量部以下であることにより、熱可塑性樹脂組成物の生産性、成形加工性がより優れる傾向にある。
【0026】
(共重合体(b1))
共重合体(b1)は、シアン化ビニル系単量体と、該シアン化ビニル系単量体と共重合可能な1種以上の単量体と、を含む。
【0027】
上記シアン化ビニル系単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが挙げられる。このなかでも、アクリロニトリルが好ましい。これらシアン化ビニル系単量体を用いることにより、塗装後の鮮鋭性により優れる傾向にある。
【0028】
上記シアン化ビニル系単量体と共重合可能な上記単量体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、エチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル系単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル酸系単量体;N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド等のN−置換マレイミド系単量体;グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有単量体等が挙げられる。これらは1種単独で用いても、又は二種以上を併用してもよい。この中でも、スチレン、α−メチルスチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、N−フェニルマレイミド、グリシジルメタクリレートが好ましい。これら単量体を用いることにより、成形加工性、生産性により優れる傾向にある。
【0029】
上記共重合体(b1)の含有量は、芳香族ポリカーボネート(A)と共重合体混合物(B)との割合にもよるが、熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは10〜90質量部であり、より好ましくは15〜80質量部であり、さらに好ましくは20〜60質量部である。共重合体(b1)の含有量が10質量部以上であることにより、成形加工性、塗装後の鮮映性がより向上する傾向にある。また、共重合体(b1)の含有量が90質量部以下であることにより、耐熱性、耐熱性がより向上する傾向にある。
【0030】
共重合体(b1)の製造方法としては、特に限定されず、従来公知のいずれの方法であってもよい。
【0031】
(グラフト共重合体(b2))
グラフト共重合体(b2)は、シアン化ビニル系単量体と、該シアン化ビニル系単量体と共重合可能な1種以上の単量体と、ゴム質重合体と、を含む。
【0032】
グラフト共重合体(b2)に含まれる、シアン化ビニル系単量体と、該シアン化ビニル系単量体と共重合可能な1種以上の単量体としては、上記共重合体(b1)で例示したものと同様のものが挙げられる。
【0033】
ゴム質重合体としては、特に限定されないが、例えば、ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、エチレン系ゴム等が挙げられる。このようなゴム質重合体としては、具体的には、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリル共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体ポリイソプレン、スチレン−イソプレン共重合体、及びこれらの水素添加物、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、エチレン−α−オレフィン−ポリエン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、シリコーンゴム、シリコーン−アクリルゴム等が挙げられる。このなかでも好ましくは、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ブタジエン−アクリル共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体アクリル系ゴム、エチレン−α−オレフィン−ポリエン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、シリコーンゴム、シリコーン−アクリルゴムである。より好ましくは、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体である。これらは1種単独で用いても、又は2種以上を併用してもよい。
【0034】
ゴム質重合体は、均一な組成であってもよいし、異なる組成の重合体を含むものであってもよい。また、連続的に組成が変化しているものであってもよい。
【0035】
ゴム質重合体がシアン化ビニル系単量体及び共重合可能な1種類以上との単量体との共重合体である場合の共重合の形態は従来公知のいずれであってもよい。具体的には、ランダム共重合体、テーパー共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等が挙げられる。なお、ゴム質重合体の製造方法は限定されず、従来公知のいずれの方法であってもよい。具体的には、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0036】
グラフト共重合体(b2)の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、乳化重合で製造されたゴム質重合体のラテックスに、シアン化ビニル系単量体と、シアン化ビニル系単量体と共重合可能な1種以上の単量体とをグラフト重合させる乳化グラフト共重合法が挙げられる。乳化グラフト共重合法で得られる重合体混合物には、上記グラフト共重合体(b2)と、上記共重合体(b1)が含まれ得る。なお、グラフト共重合体成分の製造方法は、上記には限定されず、従来公知のいずれの方法であってもよい。具体的には、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合、及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。
【0037】
また、グラフト共重合体(b2)の製造方法により得られたグラフト共重合体(b2)及び共重合体(b1)を含む共重合体混合物と、別途重合した共重合体(b1)と、を混合することにより、共重合体混合物(B)を得てもよい。
【0038】
ゴム質重合体にグラフト共重合したシアン化ビニル系単量体及びシアン化ビニル系単量体と共重合可能な1種以上の単量体の割合は、ゴム質重合体100質量部に対して、好ましくは60〜200質量部であり、より好ましくは60〜170質量部であり、さらに好ましくは70〜170質量部である。ゴム質重合体にグラフト共重合したシアン化ビニル系単量体及びシアン化ビニル系単量体と共重合可能な1種以上の単量体の割合は、フーリエ変換赤外分光光度法(FT−IR法)により得られるピーク解析により算出することができる。
【0039】
本実施形態で用い得るゴム質重合体の体積平均粒子径は、好ましくは50〜1000nmであり、より好ましくは100〜500nmであり、さらに好ましくは200〜500nmである。体積平均粒子径が50nm以上であることにより、耐衝撃性がより向上する傾向にある。また、体積平均粒子径が1000nm以下であることにより、耐衝撃性及び光沢がより向上する傾向にある。ゴム質重合体の体積平均粒子径は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0040】
上記ゴム質重合体の含有量は、芳香族ポリカーボネート(A)と共重合体混合物(B)との割合にもよるが、熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは1〜30質量部であり、より好ましくは3〜25質量部であり、さらに好ましくは5〜20質量部である。ゴム質重合体の含有量が1質量部以上であることにより、耐衝撃性がより向上する傾向にある。また、ゴム質重合体の含有量が30質量部以下であることにより、剛性や耐熱性がより向上する傾向にある。
【0041】
上記グラフト共重合体(b2)の含有量は、芳香族ポリカーボネート(A)と共重合体混合物(B)との割合にもよるが、熱可塑性樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは1〜30質量部であり、より好ましくは5〜25質量部であり、さらに好ましくは5〜15質量部である。グラフト共重合体(b2)の含有量が1質量部以上であることにより、耐衝撃性がより向上する傾向にある。また、グラフト共重合体(b2)の含有量が30質量部以下であることにより、剛性や耐熱性がより向上する傾向にある。
【0042】
(アセトン可溶成分)
共重合体混合物(B)は、アセトン可溶成分を含む。該アセトン可溶成分は、高速液相クロマトグラフィー(HPLC)によるシアン化ビニル成分含有率の測定において、シアン化ビニル成分含有率15〜50%の範囲に少なくとも2つのピークトップ1及びピークトップ2を有する。ピークトップ1は、シアン化ビニル成分含有率15%以上30%以下の範囲に存在し、ピークトップ2は、シアン化ビニル成分含有率30%超過50%以下の範囲に存在する。アセトン可溶成分のピークの数は、生産性の点から2つ以上が好ましく、耐衝撃性、耐傷性、塗装後の鮮映性、生産性のバランスの観点から4つ以下が好ましい。ここで、「シアン化ビニル成分」とは、アセトンに溶解する重合体成分に含まれるシアン化ビニル系単量体単位をいう。
【0043】
ここで、「アセトン可溶成分」とは、アセトンに溶解する重合体成分をいい、単独重合体、共重合体いずれであってもよい。また、1種の重合体成分であっても、2種類以上の重合体成分の混合物であってもよい。本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物をアセトンで溶解すると、アセトン可溶成分とアセトン不溶成分がアセトン中に共存した形の溶液となる。この場合、アセトン可溶成分とアセトン不溶成分は、濾過、遠心分離等の通常公知の方法によって分離することができる。
【0044】
共重合体混合物(B)におけるアセトン可溶成分としては、特に限定されないが、例えば、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−メタクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。なお、これ以外の重合体であっても、実質的にアセトンに溶解する重合体成分であればいずれであってもよい。
【0045】
また、共重合体混合物(B)におけるアセトン不溶成分としては、特に限定されないが、具体的にはブタジエン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体、及びこれらの水素添加物等が挙げられる。
【0046】
共重合体混合物(B)に含まれるアセトン可溶成分は、HPLCによるシアン化ビニル成分含有率の測定において、シアン化ビニル成分含有率15〜50%の範囲に2つのピークトップ1及びピークトップ2を少なくとも有する。これにより、塗装後の鮮映性と塗膜の密着性のバランス、耐衝撃性、耐傷性のバランスに優れる熱可塑性樹脂組成物が得られる。なお、アセトン可溶成分の組成によってはシアン化ビニル成分含有率が15%未満及び/又は50%を超えた範囲にピークトップが存在し、シアン化ビニル成分含有率が15〜50%の範囲にそのピークの裾部分が存在する場合がある。この場合、ピークの裾部分はピークの数に含めない。
図1に、本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶成分を、高速液相クロマトグラフィー(HPLC)によって測定したシアン化ビニル成分含有率のスペクトルの模式図を示す。
【0047】
ピークトップ1は、シアン化ビニル成分含有率15%以上30%以下の範囲に存在し、好ましくはシアン化ビニル成分含有率18%以上30%以下の範囲に存在し、より好ましくはシアン化ビニル成分含有率20%以上28%以下の範囲に存在する。ピークトップ1がこのような範囲に存在することにより、耐衝撃性に優れ、延性破壊した破断面ができやすい等、製品に求められる要求特性を満足でき、さらに塗装後の塗膜密着性が向上する。
【0048】
また、ピークトップ2は、シアン化ビニル成分含有率30%超過50%以下の範囲に存在し、好ましくはシアン化ビニル成分含有率32%以上50%以下の範囲に存在し、さらに好ましくはシアン化ビニル成分含有率33%以上48%以下の範囲に存在する。ピークトップ2がこのような範囲に存在することにより、耐熱性、塗装後の鮮映性がより向上する。また、熱履歴等による成形体の耐衝撃性などの機械的特性の低下をより抑制できる。
【0049】
さらに、ピークトップ1とピークトップ2のシアン化ビニル成分含有率の差は、好ましくは5%以上であり、より好ましくは7%以上であり、さらに好ましくは10%以上である。ピークトップ1とピークトップ2のシアン化ビニル成分含有率の差が5%以上であることにより、塗装後の鮮映性と塗膜の密着性のバランス、耐衝撃性、耐傷性のバランスがより優れる傾向にある。
【0050】
なお、ピークトップ1及び/又はピークトップ2が複数存在する場合は、ピークトップ1のうち、シアン化ビニル成分含有率の高い数値と、ピークトップ2のうち、シアン化ビニル成分含有率の低い数値の差を、上記の差として用いるものとする。
【0051】
また、HPLCにて観察されるピークが3つ以上存在する場合には、ピークトップ1及びピークトップ2がシアン化ビニル成分含有率15%以上30%以下の範囲と30%超過50%以下の範囲にそれぞれ1つずつ存在していれば、その他のピークはどこに存在していてもよい。
【0052】
アセトン可溶成分中のシアン化ビニル成分含有率は、該アセトン可溶成分をHPLCにて測定したチャートのピークトップの位置から算出する。このHPLCによる測定では、あらかじめ炭素原子核磁気共鳴分光(
13C−NMR)法によってスチレン−アクリロニトリル共重合体中のシアン化ビニル成分含有率を測定し、シアン化ビニル成分含有率の異なる複数標準試料を用い、シアン化ビニル成分含有率とHPLCリテンションタイムとの関係から検量線を作成する。その後、試料として、アセトン可溶成分をHPLCにより分離して、検量線とリテンションタイムの関係から、アセトン可溶成分中のシアン化ビニル成分含有率を算出する。
【0053】
HPLC測定に用いる溶媒は、本実施形態の熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶成分を溶解させ、HPLCの解析に用いられる溶媒であれば特に限定されないが、具体的には、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0054】
ピークトップ1のピークの面積と、ピークトップ2のピークの面積の比(ピークトップ1のピークの面積/ピークトップ2のピークの面積)は、好ましくは90/10〜10/90であり、より好ましくは75/25〜25/75であり、さらに好ましくは65/35〜35/65である。面積比が90/10以下であることにより、塗装後の鮮映性により優れる傾向にある。また、面積比が10/90以上であることにより、塗膜の密着性により優れる傾向にある。
【0055】
ピークトップ1のピークの面積及びピークトップ2のピークの面積を算出する際に、各々のピークの裾がシアン化ビニル成分含有率15%以上30%以下の範囲、及びシアン化ビニル成分含有率30%超過50%以下の範囲を超える場合がある。この場合、当該範囲を超える部分はピーク面積として算入しない。
【0056】
なお、共重合体混合物(B)を製造する際に単量体組成を連続的に変化させて重合する方法1、ピークトップ1を有する共重合体(b1)と、ピークトップ2を有する共重合体(b1)と、を各々独立して重合した後、溶融混練等の従来公知の方法で混合する方法2等により、シアン化ビニル成分含有率15%以上30%以下の範囲にピークトップ1が存在するように制御することができ、また、シアン化ビニル成分含有率30%超過50%以下の範囲にピークトップ2が存在するように制御することができる。なお、これらの方法を組み合わせてもよい。これらの中でも、方法2が好ましい。方法2を行なうことにより、製造時の共重合体の品質安定性をはじめとする生産性がより優れる傾向にある。
【0057】
アセトン可溶成分の還元粘度(ηsp/c)は、好ましくは0.2〜2.0dl/gであり、より好ましくは0.3〜1.5dl/gであり、さらに好ましくは0.3〜1.3dl/gである。還元粘度が0.2dl/g以上であることにより、耐衝撃性や強度により優れる傾向にある。また、還元粘度を2.0dl/g以下であることにより、成形性や生産性により優れる傾向にある。
【0058】
なお、熱可塑性樹脂組成物全体におけるアセトン可溶成分としては、特に限定されないが、例えば、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−メタクリル酸メチル共重合体、ポリカーボネートなどが挙げられる。さらに、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル−メタクリル酸メチル共重合体等のように、共重合体(b1)と相溶する(共)重合体などが挙げられるが、これ以外の重合体であっても、実質的にアセトンに溶解する重合体成分であればいずれであってもよい。
【0059】
また、熱可塑性樹脂組成物全体におけるアセトン不溶成分としては、特に限定されないが、例えば、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体、ブタジエン−アクリル共重合体、ブタジエン−スチレン−アクリル共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、ポリイソプレン、スチレン−イソプレン共重合体、及びこれらの水素添加物などが挙げられる。
【0060】
〔ゴム質重合体〕
熱可塑性樹脂組成物は、グラフト重合されていないゴム質重合体をさらに含んでもよい。ゴム質重合体を含むことにより、耐衝撃性、耐傷性、塗装後の鮮映性、生産性のバランスにより優れる傾向にある。また、ゴム質重合体を含むことにより、成形品が面衝撃により破壊した場合の破断面が延性的に破壊されることで、成形品破壊後の破断面による、例えば人の皮膚を切創する等の危険性が下る傾向にある。なお、ゴム質重合体としては上記グラフト重合体(b2)で述べたものと同様のものが挙げられる。
【0061】
〔Mg、Al、Ca〕
熱可塑性樹脂組成物は、Mg、Al、及びCaからなる群より選ばれる少なくとも一種類の金属原子をさらに含む。これら金属原子の総含有量は、芳香族ポリカーボネート(A)及び共重合体混合物(B)の総量100質量部に対して、10〜1000ppmであり、好ましくは50〜900ppmであり、より好ましくは100〜750ppmであり、さらに好ましくは252〜437ppmである。金属原子の総含有量が10ppm以上であることにより、熱可塑性樹脂組成物の荷重たわみ温度をはじめとする耐熱性がより向上する。また、金属原子の総含有量が1000ppm以下であることにより、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が向上する。さらに、例えば射出成形時に成形機内に可塑化された樹脂を一定時間滞留させた後に得られる成形体の耐衝撃性も向上する。Mg、Al、及びCaの含有量は実施例に記載の方法により測定することができる。
【0062】
Mg、Al、及びCaからなる群より選ばれる少なくとも一種類の金属原子は、特に限定されないが、例えば、芳香族ポリカーボネート(A)、共重合体混合物(B)を製造する際に使用した水中に微量に含まれる金属や(例:乳化重合や懸濁重合で製造した際の乳化剤、懸濁剤由来のもの)、製造時に用いられた触媒等の残留物、重合体が乳化重合で製造される場合には、ラテックスから樹脂成分を固形分として回収する工程(塩析工程)で使用される塩析剤の残留物、着色剤や添加剤成分として添加される化合物、あるいはこれらを溶融混練してペレット化する際のストランド冷却水に含有される金属、及び輸送配管等に由来して、添加され得る。
【0063】
熱可塑性樹脂組成物中のMg、Al、及びCa含有量を低減する方法としては、特に限定されないが、例えば、芳香族ポリカーボネート(A)、共重合体混合物(B)を製造する際に、例えば塊状重合、溶液重合のように金属化合物の含有量が比較的少ない製造方法を用いる方法、製造時にできるだけ金属化合物の添加量を低減する方法、水溶性の金属化合物を用いる場合には水洗時に脱イオン水を用いて水洗を十分に行う方法、水洗後の脱水率をできるだけ上げる方法、Mg、Al、及びCa含有量の少ない添加剤、又は、Mg、Al、及びCaを含まない添加剤を用いる方法等が挙げられる。
【0064】
これらのうち、水溶性の金属化合物を用いる場合には水洗時に脱イオン水を用いて水洗を十分に行う方法、水洗後の脱水率をできるだけ上げる方法、Mg、Al、Ca含有量の少ない添加剤、又は、Mg、Al、Caを含まない添加剤を用いる方法が金属化合物の除去に効率的であり、また特殊な設備を必要としないため生産性の点から好ましい。これらの方法は、一つの方法を用いても、複数の方法を併用してもよい。
【0065】
また、熱可塑性樹脂組成物の製造方法において、組成物の安定性、物性バランスの点から、共重合体混合物(B)を乳化重合により製造する場合がある。この場合、熱可塑性樹脂組成物中のMg、Al、及びCa含有量に及ぼす影響が大きいのは、使用する金属化合物の量の面から考えて、ラテックスから樹脂成分を固形分として回収する工程(塩析工程)で使用される塩析剤由来のものである。この場合の塩析剤は水溶性の金属化合物であるので、水洗時に多くの脱イオン水を用いて水洗を十分に行う方法、水洗を複数回行う方法、水洗後の脱水率をできるだけ上げる方法により、Mg、Al、Ca含有量を低減することができる。また、塩析剤として金属を含まない硫酸等の化合物を用いる方法が好ましく用いられる。これらの方法は、一つの方法を用いても、複数の方法を併用してもよい。
【0066】
〔モルフォロジー〕
熱可塑性樹脂組成物は、断面を透過型電子顕微鏡(以下、「TEM」ともいう。)で観察したモルフォロジーにおいて、芳香族ポリカーボネート(A)からなる1つの相と、共重合体(b1)からなる2つの相と、を有することが好ましい。また、共重合体(b1)からなる2つの相は、体積平均粒子径50〜1000nmのゴム質重合体をそれぞれ含むことが好ましい。具体的には、グラフト共重合体(b2)が、共重合体(b1)からなる2つの相のいずれにも含まれていることが好ましい。これにより、耐衝撃性、耐傷性がより優れる傾向にある。モルフォロジーは成形温度、成形方法により制御することができる。
【0067】
モルフォロジーの具体的な態様としては、特に限定されないが、例えば、芳香族ポリカーボネート(A)が連続相、共重合体(b1)からなる2つの相が独立して分散相として存在している場合、芳香族ポリカーボネート(A)が連続相、共重合体(b1)からなる2つの相が1つの分散相として存在し、該分散相の中で異なる2つの相として存在している場合、芳香族ポリカーボネート(A)及び共重合体(b1)からなる1つの相が共連続相、共重合体(b1)からなるもう1つの相が分散相として存在している場合、芳香族ポリカーボネート(A)と共重合体(b1)からなる2つの相がいずれも共連続相として存在している場合、共重合体(b1)からなる1つの相が連続相、芳香族ポリカーボネート(A)及び共重合体(b1)からなるもう1つの相が独立して分散相として存在している場合、共重合体(b1)からなる1つの相が連続相、芳香族ポリカーボネート(A)及び共重合体(b1)からなる相が1つの分散相として存在し、該分散相の中で異なる2つの相として存在している場合、共重合体(b1)からなる2つの相が共連続相、芳香族ポリカーボネート(A)からなる相が分散相として存在している場合が挙げられる。勿論これ以外でも、共重合体(b1)からなる相が異なる2つの相であればいずれのモルフォロジーを有していてもよい。
【0068】
芳香族ポリカーボネートの1つの相の他に、共重合体(b1)からなる2つの相が存在していることの確認は、熱可塑性樹脂組成物をTEMにて観察した画像を、画像解析ソフトを用いて解析、加工することにより実施することができる。
【0069】
具体的には、以下のようにして実施する。熱可塑性樹脂組成物を四酸化オスミウム等の染色剤にて染色処理を施す。染色処理の方法としては、共重合体(b1)からなる相中、シアン化ビニル含有率が異なる成分を染め分けることができる方法であればいずれの染色方法であってもよい。具体的には、染色剤として四酸化オスミウムを用い、染色時間を変化させる方法、四酸化オスミウムで染色後、ルテニウム酸で染色する等、異なる2つ以上の染色剤を用いて染色する方法、TEM観察時にあらかじめ電子線を照射させる時間を変化させる方法等が挙げられる。特に、四酸化オスミウムで染色後、ルテニウム酸で染色する方法は、共重合体混合物(B)のゴム質重合体を除いた相中、シアン化ビニル含有率が異なる成分を染め分けやすく好ましい。
【0070】
染色後、超薄切片を作製し、TEMにて観察を行う。得られたTEM観察画像には、明色部、中間色部、非円形の暗色部、及び略円形の暗色部が観察され得る。略円形の暗色部は、ゴム質重合体である。熱可塑性樹脂組成物中にゴム質重合体が含まれていることは、熱可塑性樹脂組成物中を通常公知の分析方法、具体的には核磁気共鳴分光法(NMR法)、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR法)、熱分解ガスクロマトグラフ法等の分析方法中、1つ以上の方法により確認することができる。
【0071】
得られたTEM観察画像を画像解析ソフト「A像くん」(商標名、旭化成エンジニアリング株式会社製)に取り込み、取り込んだ画像の明度ヒストグラム(明度分布)を作成し、TEM観察画像の色分け加工を行う。
【0072】
明度ヒストグラムは、横軸に明度(各画素の明るさ)、縦軸に各明度を示す画素数を取り、横軸は0を最小値、255を最大値として作成する。得られた明度ヒストグラムは3〜4つのピークが得られ、4つのピークが得られる場合には明度が低い方から暗色部、中間色部−1、中間色部−2、明色部、3つのピークが得られる場合には明度が低い方から中間色部−1、中間色部−2、明色部と定義する。
【0073】
暗色部はゴム質重合体であり、中間色部−1は、共重合体(b1)からなる相であって、ピークトップ1に該当する成分の相であり、中間色部−2は共重合体(b1)からなる相であって、ピークトップ2に該当する成分の相であり、明色部は芳香族ポリカーボネート(A)からなる相である。熱可塑性樹脂組成物のTEM画像を「A像くん」(商標名、旭化成エンジニアリング株式会社製)にて解析した明度ヒストグラムの模式図を
図2に示す。
【0074】
TEM観察画像の色分けは、得られた明度ヒストグラムを用いて以下のようにして行う。A像くんによる解析で得られた明度ヒストグラムにおいて、4つのピークが得られる場合には暗色部のピークと中間色部−1のピークの谷における明度を閾値A、中間色部−1と中間色部−2のピークの谷における明度を閾値B、中間色部−2と明色部のピークの谷における明度を閾値Cと設定する。すなわち、明度0以上閾値A未満が暗色部、閾値A以上閾値B未満が中間色部−1、閾値B以上閾値C未満が中間色部−2、閾値C以上明度255以下が明色部となる。
【0075】
また、A像くんによる解析で得られた明度ヒストグラムにおいて、3つのピークが得られる場合には中間色部−1と中間色部−2のピークの谷における明度を閾値B、中間色部−2と明色部のピークの谷における明度を閾値Cと設定する。すなわち、明度0以上閾値B未満が中間色部−1、閾値B以上閾値C未満が中間色部−2、閾値C以上明度255以下が明色部となる。
【0076】
さらに、A像くんにてそれぞれの明度を加工することで、TEM観察画像における暗色部、中間色部−1、中間色部−2、明色部を色分け加工することができる。
【0077】
色分け加工をしたTEM観察画像から、共重合体混合物(B)のゴム質重合体を除いた相であって、ピークトップ1に該当する成分、ピークトップ2に該当する成分のいずれの部分にゴム質重合体が存在しているかを確認することができる。
【0078】
〔熱可塑性樹脂組成物の製造方法〕
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物の製造方法としては、特に限定されないが、例えば、芳香族ポリカーボネート(A)と共重合体混合物(B)とを、単軸又は二軸の押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等の熱可塑性樹脂に一般に用いられる通常公知の各種混合装置を用いて混合する方法が挙げられる。これらの中で、ベントつき押出機が生産性の面で好ましく、二軸ベントつき押出機が生産性及び混練性の点で好ましい。
【0079】
熱可塑性樹脂組成物は、必要に応じて、顔料、染料、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、補強材、充填材等の各種添加剤を含有していてもよい。このような添加剤としては、特に限定されないが、例えば、大豆油、ひまし油等の油脂類;ロジン、コパール等の天然樹脂;石油樹脂等の加工樹脂;アルキド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の合成樹脂;塩化ゴム、環化ゴム等のゴム誘導体;ラッカー、アセチルセルロース等のセルロース誘導体等が挙げられる。このなかでも、合成樹脂、ゴム誘導体、セルロース誘導体が好ましい。
【0080】
また上記以外の添加剤としては、特に限定されないが、例えば、可塑剤、分散剤、消泡剤、防黴剤、防腐剤、乾燥剤、たれ防止剤、艶消し剤、耐光剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。このなかでも、防黴剤、たれ防止剤、耐光剤、紫外線吸収剤が好ましい。
【0081】
一方、熱可塑性樹脂組成物が臭素系難燃剤を含む場合、その添加量は、耐熱性の観点から、熱可塑性樹脂組成物100質量部に対し、臭素系難燃剤中に含まれる臭素基準で、1質量部以下であることが好ましい。
【0082】
また、熱可塑性樹脂組成物中、200℃以下の沸点を持つ揮発分の含有量は、好ましくは1500ppm以下であり、より好ましくは1000ppm以下であり、さらに好ましくは800ppm以下である。揮発分の含有量が1500ppm以下であることにより、長期経過後であっても、熱可塑性樹脂組成物からなる成形体の塗装後の鮮映性の低下が小さい傾向にある。
【0083】
熱可塑性樹脂組成物に含まれる「揮発分」とは、樹脂やゴムに残留する原料モノマーや製造工程で使用される溶媒等である。このような揮発分としては、例えば、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、アクリル系単量体等、及び/又は沸点が200℃以下の成分を含有する添加剤等が挙げられる。
【0084】
〔成形体〕
本実施形態に係る熱可塑性樹脂組成物を成形することにより成形体を得ることができる。熱可塑性樹脂組成物の成形方法としては、特に限定されないが、例えば、射出成形、押出成形、真空圧縮成形、ブロー成形、フイルムインフレーション成形等、通常公知の成形加工方法を用いることができる。このなかでも、製品形状の自由度が高いほか、得られる成形体の表面平滑性及び生産性がより向上するという観点から、射出成形機により得られる成形体が好ましい。
【0085】
また、射出成形時の加熱シリンダーの設定温度は、好ましくは230〜300℃であり、より好ましくは240〜280℃であり、さらに好ましくは240〜260℃である。加熱シリンダーの設定温度が230℃以上であることにより、芳香族ポリカーボネート(A)の1つの相の他に、共重合体(b1)からなる異なる2つの相を有するモルフォロジーを形成でき、これにより塗膜の密着性と塗装後の鮮映性の両方を高めることができる。また、加熱シリンダーの設定温度が300℃以下であることにより、熱可塑性樹脂組成物中の含有ゴム質重合体やマトリックスの分解が抑制され、成形体の耐衝撃性の低下を抑えることができる。
【0086】
また、射出成形時の金型温度は、好ましくは40〜100℃であり、より好ましくは60〜80℃である。射出成形時の金型温度が40℃以上であることにより、金型内に注入された熱可塑性樹脂が固化する前に金型に充填されるために、金型どおりの所望の成形体を得ることができる傾向にある。また、射出成形時の金型温度100℃以下であることにより、金型に充填された樹脂の固化時間が短いため、生産性の向上につながる傾向にある。
【0087】
成形体を射出成形にて成形する場合、射出速度は、好ましくは30〜120mm/秒であり、より好ましくは50〜75mm/秒である。射出速度が30mm/秒以上であることにより、熱可塑性樹脂が金型内で固化する前に充填でき、金型どおりの所望の成形体が得られる傾向にある。射出速度が120mm/秒以下であることにより、外観不良となりうる成形体表面に筋状の模様(シルバーストリーク)等の発生を抑制することができる傾向にある。
【0088】
〔塗装成形体〕
本実施形態に係る塗装成形体は、上記成形体が、少なくとも1層の塗装層を有するものである。熱可塑性樹脂組成物からなる成形体は、塗装が施されることも意匠性及び成形体の耐久性を高める上で好ましい。塗装は少なくとも1回施されるが、好ましくは成形体表面との密着性を高めるためのプライマー塗装、色つけとしてのベース塗装、塗膜保護としてのトップコート塗装の3種類、又は成形体表面との密着性を高めるためのプライマー塗装、色つけとしてのベース塗装、輝度つけとしてのメタリック塗装、塗膜保護としてのトップコート塗装の4種類が施された後、乾燥される。求められる意匠性や色調により、ベース塗装の色調を変化させたり、メタリック塗装の有無が異なる。
【0089】
塗装としては、主剤のみで硬化剤を含まない1種類の液体を塗布する1液塗装と、主剤と硬化剤の2種類の混合液体を塗布する2液塗装が挙げられる。これら塗料を塗布する方法として、特に限定されないが、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、静電塗装、電着塗装、粉体塗装、カーテンフローコート、及びロールコート等が挙げられる。このなかでも、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、静電塗装等が好ましい。静電塗装の場合、静電塗装が可能となるようにあらかじめ導電プライマー塗布等の前処理を施した後に静電塗装を行うことが好ましい。
【0090】
塗装の塗膜厚は、1層あたり、好ましくは1〜100μmであり、より好ましくは5〜80μmである。塗膜厚が1μm以上であることにより、塗料の隠蔽性が発現し、塗装による意匠改善効果が得られる傾向にある。また、塗膜厚が100μm以下であることにより、塗膜の表面不良が起きにくい傾向にある。
【0091】
また、メタリック塗装の場合、塗膜厚は、1層あたり、好ましくは1〜50μmであり、より好ましくは1〜35μmである。塗膜厚が1μm以上であることにより、メタリック調が発現し、塗装による意匠改善効果が得られる傾向にある。また、塗膜厚が50μm以下であることにより、メタリック顔料が均一に分散し、良好な外観が得られる傾向にある。
【0092】
塗装に用いられる塗料に含まれる成分としては、特に限定されないが、例えば、顔料、樹脂、添加剤、及び溶剤等が挙げられる。顔料としては、特に限定さないが、例えば、一般的に樹脂で用いられる塗料を使用することができ、有機顔料、無機顔料、メタリック顔料等が挙げられる。
【0093】
有機顔料としては、特に限定されないが、例えば、アゾレーキ顔料、ベンズイミダゾリン顔料、ジアリリド顔料、縮合アゾ顔料等のアゾ系顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料;イソインドリン顔料、キノフタロン顔料、キナクリドン顔料、ペリレン顔料、アントラキノン顔料、ペリノン顔料、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環系顔料等が挙げられる。
【0094】
無機顔料としては、特に限定されないが、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、酸化鉄系顔料、群青、コバルトブルー、酸化クロム、スピネルグリーン、クロム酸鉛系顔料、カドミウム系顔料等が挙げられる。
【0095】
メタリック顔料としては、特に限定されないが、例えば、鱗片状のアルミのメタリック顔料、ウエルド外観を改良するために使用されている球状のアルミ顔料、パール調メタリック用のマイカ粉、その他ガラス等の無機物の多面体粒子に金属を鍍金やスパッタリングで被覆したもの等が挙げられる。
【0096】
塗料に含まれる樹脂及び添加剤の総含有量は、塗料100質量部に対して、好ましくは35〜45質量部である。また、樹脂と添加剤の含有量比率(樹脂成分/添加剤比)は、好ましくは70〜95質量部/30〜5質量部である。
【0097】
溶剤は、主に真溶剤、助溶剤、稀釈剤に分けられる。真溶剤としては、特に限定されないが、例えば、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素系溶剤;キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶剤が挙げられる。助溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコールが挙げられる。稀釈剤としては、特に限定されないが、例えば、トルエン等が挙げられる。
【0098】
塗料に用いられる溶剤は、季節や塗料の主成分となる樹脂により沸点を変えることが好ましく、一般的には100℃未満の沸点を持つ低沸点溶剤又は100〜150℃の沸点を持つ中沸点溶剤を用いることが好ましい。溶剤の含有量は、塗料100質量部に対して、好ましくは15〜35質量部である。
【0099】
塗料は、上記構成成分を組み合わせて用いられ、特に限定されないが、例えば一般的にラッカー系塗料、ウレタン系塗料、アクリル系塗料、シリコーン系塗料、弗素系塗料、アルキッド系塗料、エポキシ系塗料等と称される。
【0100】
溶剤を短時間で放出させたり、塗料を硬化させたりする観点から、塗装後、乾燥工程を行うことが好ましい。乾燥温度は、好ましくは70〜120℃である。乾燥温度が70℃以上であることにより、溶剤の放出時間をより短縮することができる。また、乾燥温度が120℃以下であることにより、成形体の熱変形がより抑制される傾向にある。
【0101】
熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性及び塗装後の塗装鮮映性、塗膜密着性のバランスに優れるという特長を有する。従って、人の目に触れ、室内外等において人の手に触れる製品として用いられることが好ましい。製品の具体例としては、ドアハンドル、ドアミラーカバースイッチ類、カバー類、及びガーニッシュ類等の自動車の内外装部品、複写機、複合機、パソコン、マウス、携帯電話、及びゲーム機等の電子電気機器の部品及びリモコン、エアコン、テレビ、冷蔵庫、電子レンジ、電気ポット、掃除機及び電話機等の家電製品の部品、システムキッチン、システムバス、洗面台、衛生機器、電力メーター及び配電盤等の住宅機器の備品が挙げられる。
【実施例】
【0102】
以下、本実施形態を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本実施形態は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。評価は以下に示す方法で行った。
【0103】
(1)アセトン可溶成分のピークトップ位置、ピーク面積比の測定方法
実施例及び比較例の熱可塑性樹脂組成物とアセトンとを混合し、アセトン可溶成分を抽出した。次いで、遠心分離により不溶成分を沈殿させてアセトン可溶成分溶液を得た。得られたアセトン可溶成分溶液からアセトンを蒸発させてアセトン可溶成分の固形分を得た。得られた固形分をテトラヒドロフランに溶解し、試料とした。
【0104】
あらかじめ炭素原子核磁気共鳴分光(
13C−NMR)法により、複数のスチレン−アクリロニトリル共重合体中のシアン化ビニル成分含有率を測定した。測定条件は、測定周波数50.1MHz、積算回数30000回とした。スチレン中のベンゼン環の2、4、6位の炭素由来の127ppmのピークの積分値と、スチレン中のベンゼン環の3、5位の炭素由来の128ppmのピークの積分値の合計を炭素数5で除した数値をスチレン−アクリロニトリル共重合体中のスチレン含有量の基準とした。ニトリル基の炭素由来の121ppmのピークの積分値をシアン化ビニル成分含有量の基準とした。スチレン含有量の基準となる積分値とシアン化ビニル成分含有量の基準となる積分値からスチレン−アクリロニトリル共重合体中のシアン化ビニル成分含有率を算出した。これらのスチレン−アクリロニトリル共重合体を標準資料として用い、シアン化ビニル成分含有率とHPLCリテンションタイムとの関係から検量線を作成した。
【0105】
上記のようにして作製した試料を、HPLC(島津製作所製島津高速液体クロマトグラフProminenceシステム)を用い、カラムとして島津Shim−packCLC−CN(M)(商標名、島津製作所製)を用いて分離し、検量線とリテンションタイムの関係から、ピークトップにおけるシアン化ビニル成分含有量を算出した。
その後、HPLC測定により得られたシアン化ビニル成分含有率のプロファイルより、ピークトップがシアン化ビニル成分含有率15%以上30%以下の範囲に観測されるピーク部分及びピークトップがシアン化ビニル成分含有率30%超過50%以下の範囲に観察されるピーク部分を切り出し、各々切り出された部分の重量を測定し、ピーク面積比を100分率で測定した。
【0106】
なお、実施例、比較例において、「低ANピーク」とは、ピークトップがシアン化ビニル成分含有率15%以上30%以下の範囲に観測されるピークをいう。また、「高ANピーク」とは、ピークトップがシアン化ビニル成分含有率30%超過50%以下の範囲に観察されるピークをいう。さらに、表1、2中では低ANピークの面積と、高ANピークの面積との比を低ANピーク/高ANピーク比と記載する。
【0107】
なお、芳香族ポリカーボネート(A)等は、シアン化ビニル系単量体を含まないので、実施例及び比較例の熱可塑性樹脂組成物のアセトン可溶成分中に芳香族ポリカーボネートが含まれていても、共重合体由来のシアン化ビニル成分含有量を示すピークに影響を及ぼすことはなかった。
【0108】
(2)還元粘度の測定方法
製造例3〜21の共重合体混合物又は共重合体とアセトンとを混合し、アセトン可溶成分を抽出した。次いで、遠心分離により不溶成分を沈殿させてアセトン可溶成分溶液を得た。得られたアセトン可溶成分溶液からアセトンを蒸発させてアセトン可溶成分の固形分を得た。残った固形分0.25gを2−ブタノン50mLにて溶解した溶液を30℃でCannon−Fenske型毛細管を用いて還元粘度(ηsp/c)を測定した。
【0109】
(3)Mg、Al、Ca含有量の測定方法
実施例及び比較例の熱可塑性樹脂組成物を5g切り出し、坩堝の中で20分間焼成し、灰分を得た。得られた灰分と王水5mLとを処理し、純水で稀釈しながら濾過し、100mLの水溶液を得た。
【0110】
得られた水溶液を多元素同時測定発光分析装置(ICP−AES装置)ICPS−7500(島津製作所製)を用い、水溶液中のMg、Al、及びCaのイオン濃度を測定し、得られたイオン濃度と切り出された熱可塑性樹脂組成物の重量(5g)から熱可塑性樹脂組成物中のMg、Al、及びCaの含有量を算出した。
【0111】
(4)ゴム質重合体の体積平均粒子径の測定方法
日機装(株)社製マイクロトラック粒度分析計「nanotrac150」(商品名)を用いてゴム質重合体の体積平均粒子径を測定した。
【0112】
(5)熱可塑性樹脂組成物のモーフォロジーの観察(TEM観察)
実施例及び比較例の熱可塑性樹脂組成物を切り出し、断面部分をまず四酸化オスミウム(OsO
4)で染色後、超薄切片を作製し、該超薄切片を四酸化ルテニウム(RuO
4)で染色した。得られた超薄切片を試料とし、TEMにて観察した。
【0113】
得られたTEM画像を画像解析ソフト「A像くん」(商標名、旭化成エンジニアリング株式会社製)を用いて解析し、明度ヒストグラムを作成した。作成した明度ヒストグラムには試料により2〜4つのピークが観測された。それぞれのピークの谷における明度を閾値として設定し、ピークの数に対応する数で色分け加工を施した。
【0114】
なお、本実施例中では、シアン化ビニル系単量体と共重合可能な1種以上の単量体と、の共重合体としてスチレン−アクリロニトリル共重合体、又はスチレン−アクリロニトリル−ブチルアクリレート三元共重合体を用いていることから、表1、2中ではTEM観察されたシアン化ビニル系単量体と共重合可能な1種以上の単量体と、の共重合体(b1)からなる相をAS相と記載する。
【0115】
(6)塗装後の鮮映度
東芝機械製射出成形機EC60Nを用いて、シリンダー温度=250℃、金型温度=60℃にて5cm×9cm、厚み2.5mmの平板を射出成形した。この平板を23℃、相対湿度50%雰囲気下に24時間放置した。次いで、塗料として、アクリル塗料(カンペラッカーAあか、商標名、株式会社カンペハピオ製赤色塗料)を用い、試料に吹付塗装を行った後、鮮映度の評価を行った。鮮映度の評価は、写像性測定装置ICM−ID(スガ試験機株式会社製)を用い、ASTM5767に従って行なった。数値が大きいほど鮮映性が良好であることを示す。
【0116】
(7)塗膜密着性
東芝機械製射出成形機EC60Nを用いて、シリンダー温度=260℃、金型温度=60℃にて5cm×9cm、厚み2.5mmの平板を射出成形した。この際、可塑化された樹脂は1箇所の射出経路(ゲート)を通じて平板を成形した。成形された平板の射出経路(ゲート)に近い側をゲート側、射出経路(ゲート)とは反対側を非ゲート側とする。この平板を23℃、相対湿度50%雰囲気下に24時間放置した。次いで、塗料として、アクリル塗料(カンペラッカーAあか、商標名、株式会社カンペハピオ製赤色塗料)を用い、試料に吹付塗装を行った後、塗膜密着性の評価を行った。塗膜密着性の評価は、マルチクロスカッターでゲート側、非ゲート側に碁盤目クロスカット(1×1mmの桝目100個)を施した後、セロハンテープ剥離試験を行った。評価はゲート側及び非ゲート側での(剥離しない桝目の数)/(碁盤目の数)の平均を算出して以下のように判定した。
◎:剥離なし
○:剥離少 1〜5箇所
×:剥離あり 6箇所以上
【0117】
(8)シャルピー衝撃強度
ファナック株式会社製射出成形機AS−100Dを用いて、シリンダー温度=260℃、金型温度=60℃にてISO評価用試験片を射出成形した。得られた試験片はISO179に準拠し、ハンマー10Jのシャルピー衝撃試験機を用いた。
【0118】
また、成形機内で熱可塑性樹脂組成物を滞留させた場合の評価は以下のように行った。射出成形機のシリンダー内を可塑化した熱可塑性樹脂にて置換した直後に成形した試験片を用いて測定されたシャルピー衝撃強度値を滞留なしのシャルピー衝撃強度値とした。また、射出成形機のシリンダー内を可塑化した熱可塑性樹脂にて置換し、20分放置後に成形した試験片を用いて測定されたシャルピー衝撃強度値を20分滞留のシャルピー衝撃強度値とした。
【0119】
(9)滞留変色△E
上記(8)同様に、射出成形機のシリンダー内を可塑化した熱可塑性樹脂にて置換した直後に成形した試験片の色座標測定値(L
*1、a
*1、b
*1、)と、20分放置後に成形した試験片の色座標測定値(L
*2、a
*2、b
*2、)から色差△Eを算出し、この値を滞留変色△Eとした。△E値の算出式は以下の通りである。
△E={(L
*1−L*
2)
2+(a
*1−a
*2)
2+(b
*1−b
*2)
2}
1/2【0120】
(10)落錘衝撃破断面
東芝機械製射出成形機EC60Nを用いて、シリンダー温度=260℃、金型温度=60℃にて5cm×9cm、厚み2.5mmの平板を射出成形した。この平板を23℃、相対湿度50%雰囲気下に24時間放置したものを試料として用いた。この試料を用いてJIS K7211−1976に準拠して落錘衝撃試験を行った。破断面を目視観察して、以下のように判定した。
○:延性的に破壊し、破断面がエッジ状になってない
×:脆性的に破壊し、破断面がエッジ状になっている
【0121】
(11)荷重たわみ温度
上記(8)で得られた試験片を用い、ISO75−1、2に準拠した方法にて、荷重0.45MPa条件下における荷重たわみ温度を測定した。
【0122】
(製造例1)ポリブタジエンゴムラテックス(LX−1)の製造
ブタジエンモノマー95質量部、アクリロニトリル5質量部、脱イオン水(鉄濃度:0.02ppm未満)135質量部、オレイン酸カリウム3.0質量部、過硫酸カリウム0.3質量部、ターシャリードデシルメルカプタン0.2質量部、及び水酸化カリウム0.18質量部を撹拌機の付いた耐圧容器に収納して、温度を70℃に上げ、重合を開始した。重合時間を15時間とし、固形分40質量部のポリブタジエンラテックス(LX−1)を得た。ポリブタジエンラテックス(LX−1)の体積平均粒子径は81nmであった。
【0123】
(製造例2)ポリブタジエンゴムラテックス(LX−2)の製造
製造例1で得られたポリブタジエンゴムラテックス(LX−1)に次の一般式(1)で示される乳化剤をポリブタジエンゴムラテックス(LX−1)の固形分100質量部に対して0.1質量部加え、5分間攪拌後、酢酸0.65質量部を添加した。ついで、水酸化カリウム0.65質量部を加えてポリブタジエンゴムラテックス(LX−2)を得た。ポリブタジエンゴムラテックス(LX−2)の体積平均粒子径は250nmであった。また、ポリブタジエンゴムラテックス(LX−2)はコアギュラム(粘着性の凝固塊)を含まず、固形分37質量部の高濃度凝集ラテックスであった。
【化2】
【0124】
(製造例3)グラフト共重合体(b2−1)の製造
重合反応槽に、製造例2で製造したLX−2を135質量部、ターシャリードデシルメルカプタン(t−DM)0.1質量部、及び脱イオン水70質量部を加え、気相部を窒素置換した。これに脱イオン水20質量部にナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(SFS)0.0786質量部、硫酸第一鉄(FeSO
4)0.0036質量部、エチレンジアミンテトラ酢酸2ナトリウム塩(EDTA)0.0408質量部を溶解してなる水溶液を加えた後、55℃に昇温した。続いて、1.5時間かけて70℃まで昇温し、その後3.5時間温度を保ちながら、アクリロニトリル20質量部、スチレン30質量部、クメンハイドロパーオキシド(過酸化剤、製品名パークミルH、日油株式会社製)0.15質量部、及びt−DM0.1質量部よりなる単量体混合液、及び脱イオン水35質量部にSFS0.1305質量部を溶解してなる水溶液を添加した。添加終了後にクメンハイドロパーオキシド(過酸化剤、製品名パークミルH、日油株式会社製)0.02質量部を加えた後、さらに1時間、反応槽を70℃に制御しながら重合反応を完結させてラテックス組成物を得た。
【0125】
得られたラテックス組成物に、シリコーン樹脂製消泡剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製、製品名TSA−737)、及びフェノール系酸化防止剤エマルジョン(中京油脂株式会社製、製品名WINGSTAYL)を添加した後、硫酸アルミニウム水溶液(水溶液中の硫酸アルミニウム部数2質量部)を加えて凝固させ、さらに、毎時4m
3の流量で脱イオン水を用いて水洗を行いながら30分間遠心分離法にて脱水を行った。その後、脱イオン水を用いた水洗を止めた状態で、含水率が10質量部になるまで遠心分離法にて脱水を継続した。残存した成分を乾燥させてグラフト共重合体(b2−1)を得た。該混合物の組成比は、フーリエ変換赤外分光光度計(FR−IR)(日本分光(株)製)を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル20.2質量%、ブタジエン50.8質量%、スチレン29.0質量%であり、ジエン系ゴム質重合体を除くスチレンとアクリロニトリル単位由来成分中のアクリロニトリル単位由来成分の平均含有量(VCN)は41.1質量%であった。また、上記還元粘度の測定方法により測定した、還元粘度は0.39dl/gであった。
【0126】
なお、このグラフト共重合体(b2−1)の製造例では、アクリロニトリルと、スチレンとからなり、ゴム状重合体を含まない共重合体も同時に生成した。以下の製造例においても同様であった。
【0127】
(製造例4)グラフト共重合体(b2−2)の製造
得られたラテックスに添加する硫酸アルミニウム水溶液の代わりに硫酸マグネシウム水溶液(水溶液中の硫酸マグネシウム部数2質量部)を用いたこと以外は、製造例3と同様の操作を行い、グラフト共重合体(b2−2)を得た。該混合物の組成比は、フーリエ変換赤外分光光度計(FR−IR)(日本分光(株)製)を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル20.1質量%、ブタジエン50.6質量%、スチレン29.3質量%であり、ジエン系ゴム質重合体を除くスチレンとアクリロニトリル単位由来成分中のアクリロニトリル単位由来成分の平均含有量(VCN)は40.7質量%であった。また、上記還元粘度の測定方法により測定した、還元粘度は0.39dl/gであった。
【0128】
(製造例5)グラフト共重合体(b2−3)の製造
得られたラテックスに添加する硫酸アルミニウム水溶液の代わりに塩化カルシウム水溶液(水溶液中の塩化カルシウム部数2質量部)を用いたこと以外は、製造例3と同様の操作を行い、グラフト共重合体(b2−3)を得た。該混合物の組成比は、フーリエ変換赤外分光光度計(FR−IR)(日本分光(株)製)を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル20.1質量%、ブタジエン50.6質量%、スチレン29.3質量%であり、ジエン系ゴム質重合体を除くスチレンとアクリロニトリル単位由来成分中のアクリロニトリル単位由来成分の平均含有量(VCN)は40.7質量%であった。また、上記還元粘度の測定方法により測定した、還元粘度は0.39dl/gであった。
【0129】
(製造例6)グラフト共重合体(b2−4)の製造
アクリロニトリルの使用量を13.5質量部とし、スチレンの使用量を36.5質量部としたこと以外は、製造例3と同様の操作を行い、グラフト共重合体(b2−4)を得た。該混合物の組成比は、フーリエ変換赤外分光光度計(FR−IR)(日本分光(株)製)を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル13.4質量%、ブタジエン50.3質量%、スチレン36.3質量%であり、ジエン系ゴム質重合体を除くスチレンとアクリロニトリル単位由来成分中のアクリロニトリル単位由来成分の平均含有量(VCN)は27.0質量%であった。また、上記還元粘度の測定方法により測定した、還元粘度は0.41dl/gであった。
【0130】
(製造例7)グラフト共重合体(b2−5)の製造
得られたラテックスに添加する硫酸アルミニウム水溶液の代わりに硫酸マグネシウム水溶液(水溶液中の硫酸マグネシウム部数2質量部)を用いたこと以外は、製造例6と同様の操作を行い、グラフト共重合体(b2−5)を得た。該混合物の組成比は、フーリエ変換赤外分光光度計(FR−IR)(日本分光(株)製)を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル13.6質量%、ブタジエン50.2質量%、スチレン36.2質量%であり、ジエン系ゴム質重合体を除くスチレンとアクリロニトリル単位由来成分中のアクリロニトリル単位由来成分の平均含有量(VCN)は27.3質量%であった。また、上記還元粘度の測定方法により測定した、還元粘度は0.40dl/gであった。
【0131】
(製造例8)グラフト共重合体(b2−6)の製造
得られたラテックスに添加する硫酸アルミニウム水溶液の代わりに塩化カルシウム水溶液(水溶液中の塩化カルシウム部数2質量部)を用いたこと以外は、製造例6と同様の操作を行い、グラフト共重合体(b2−6)を得た。該混合物の組成比は、フーリエ変換赤外分光光度計(FR−IR)(日本分光(株)製)を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル13.5質量%、ブタジエン50.0質量%、スチレン36.5質量%であり、ジエン系ゴム質重合体を除くスチレンとアクリロニトリル単位由来成分中のアクリロニトリル単位由来成分の平均含有量(VCN)は27.0質量%であった。また、上記還元粘度の測定方法により測定した、還元粘度は0.41dl/gであった。
【0132】
(製造例9)グラフト共重合体(b2−7)の製造
得られたラテックスに添加する硫酸アルミニウム水溶液の代わりに硫酸アルミニウム水溶液(水溶液中の硫酸アルミニウム部数4質量部)を用い、さらに遠心分離法にて脱水を行う際に脱イオン水による水洗を行わなかったこと以外は、製造例3と同様の操作を行い、グラフト共重合体(b2−7)を得た。該混合物の組成比は、フーリエ変換赤外分光光度計(FR−IR)(日本分光(株)製)を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル20.1質量%、ブタジエン50.6質量%、スチレン29.3質量%であり、ジエン系ゴム質重合体を除くスチレンとアクリロニトリル単位由来成分中のアクリロニトリル単位由来成分の平均含有量(VCN)は40.7質量%であった。また、上記還元粘度の測定方法により測定した、還元粘度は0.39dl/gであった。
【0133】
(製造例10)グラフト共重合体(b2−8)の製造
得られたラテックスに添加する硫酸アルミニウム水溶液の代わりに硫酸マグネシウム水溶液(水溶液中の硫酸マグネシウム部数4質量部)を用いたこと以外は、製造例9と同様の操作を行い、グラフト共重合体(b2−8)を得た。該混合物の組成比は、フーリエ変換赤外分光光度計(FR−IR)(日本分光(株)製)を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル20.1質量%、ブタジエン50.6質量%、スチレン29.3質量%であり、ジエン系ゴム質重合体を除くスチレンとアクリロニトリル単位由来成分中のアクリロニトリル単位由来成分の平均含有量(VCN)は40.7質量%であった。また、上記還元粘度の測定方法により測定した、還元粘度は0.39dl/gであった。
【0134】
(製造例11)グラフト共重合体(b2−9)の製造
得られたラテックスに添加する硫酸アルミニウム水溶液の代わりに塩化カルシウム水溶液(水溶液中の塩化カルシウム部数4質量部)を用いたこと以外は、製造例9と同様の操作を行い、グラフト共重合体(b2−9)を得た。該混合体の組成比は、フーリエ変換赤外分光光度計(FR−IR)(日本分光(株)製)を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル20.1質量%、ブタジエン50.6質量%、スチレン29.3質量%であり、ジエン系ゴム質重合体を除くスチレンとアクリロニトリル単位由来成分中のアクリロニトリル単位由来成分の平均含有量(VCN)は40.7質量%であった。また、上記還元粘度の測定方法により測定した、還元粘度は0.39dl/gであった。
【0135】
(製造例12)グラフト共重合体(b2−10)の製造
得られたラテックスに添加する硫酸アルミニウム水溶液の代わりに硫酸アルミニウム水溶液(水溶液中の硫酸アルミニウム部数4質量部)を用い、さらに遠心分離法にて脱水を行う際に脱イオン水による水洗を行わなかったこと以外は、製造例6と同様の操作を行い、グラフト共重合体(b2−10)を得た。該混合物の組成比は、フーリエ変換赤外分光光度計(FR−IR)(日本分光(株)製)を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル13.4質量%、ブタジエン50.3質量%、スチレン36.3質量%であり、ジエン系ゴム質重合体を除くスチレンとアクリロニトリル単位由来成分中のアクリロニトリル単位由来成分の平均含有量(VCN)は27.0質量%であった。また、上記還元粘度の測定方法により測定した、還元粘度は0.41dl/gであった。
【0136】
(製造例13)グラフト共重合体(b2−11)の製造
得られたラテックスに添加する硫酸アルミニウム水溶液の代わりに硫酸マグネシウム水溶液(水溶液中の硫酸マグネシウム部数4質量部)を用い、さらに遠心分離法にて脱水を行う際に脱イオン水による水洗を行わなかったこと以外は、製造例12と同様の操作を行い、グラフト共重合体(b2−11)を得た。該混合物の組成比は、フーリエ変換赤外分光光度計(FR−IR)(日本分光(株)製)を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル13.6質量%、ブタジエン50.2質量%、スチレン36.2質量%であり、ジエン系ゴム質重合体を除くスチレンとアクリロニトリル単位由来成分中のアクリロニトリル単位由来成分の平均含有量(VCN)は27.3質量%であった。また、上記還元粘度の測定方法により測定した、還元粘度は0.40dl/gであった。
【0137】
(製造例14)グラフト共重合体(b2−12)の製造
得られたラテックスに添加する硫酸アルミニウム水溶液の代わりに塩化カルシウム水溶液(水溶液中の塩化カルシウム部数4質量部)を用い、さらに遠心分離法にて脱水を行う際に脱イオン水による水洗を行わなかったこと以外は、製造例6と同様の操作を行い、グラフト共重合体(b2−12)を得た。該混合物の組成比は、フーリエ変換赤外分光光度計(FR−IR)(日本分光(株)製)を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル13.5質量%、ブタジエン50.0質量%、スチレン36.5質量%であり、ジエン系ゴム質重合体を除くスチレンとアクリロニトリル単位由来成分中のアクリロニトリル単位由来成分の平均含有量(VCN)は27.0質量%であった。また、上記還元粘度の測定方法により測定した、還元粘度は0.41dl/gであった。
【0138】
(製造例15)グラフト共重合体(b2−13)の製造
得られたラテックスに添加する硫酸アルミニウム水溶液の代わりに硫酸水溶液(水溶液中の硫酸部数2質量部)を用いたこと以外は、製造例3と同様の操作を行い、グラフト共重合体(b2−13)を得た。該混合物の組成比は、フーリエ変換赤外分光光度計(FR−IR)(日本分光(株)製)を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル20.2質量%、ブタジエン50.8質量%、スチレン29.0質量%であり、ジエン系ゴム質重合体を除くスチレンとアクリロニトリル単位由来成分中のアクリロニトリル単位由来成分の平均含有量(VCN)は41.1質量%であった。また、上記還元粘度の測定方法により測定した、還元粘度は0.39dl/gであった。
【0139】
(製造例16)グラフト共重合体(b2−14)の製造
得られたラテックスに添加する硫酸アルミニウム水溶液の代わりに硫酸水溶液(水溶液中の硫酸部数2質量部)を用いたこと以外は、製造例6と同様の操作を行い、グラフト共重合体(b2−14)を得た。該混合物の組成比は、フーリエ変換赤外分光光度計(FR−IR)(日本分光(株)製)を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル13.4質量%、ブタジエン50.3質量%、スチレン36.3質量%であり、ジエン系ゴム質重合体を除くスチレンとアクリロニトリル単位由来成分中のアクリロニトリル単位由来成分の平均含有量(VCN)は27.0質量%であった。また、上記還元粘度の測定方法により測定した、還元粘度は0.41dl/gであった。
【0140】
(製造例17)共重合体(b1−1)の製造
アクリロニトリル29.0質量部、スチレン40.5質量部、エチルベンゼン30.5質量部、α‐メチルスチレンダイマー0.3質量部、次の化学式(2)で示される繰返し単位7個を有する過酸化物(10時間半減期63.5℃)1.05質量部から成る単量体混合物を空気と接触を断った状態で調製し、連続的に反応器に供給した。
【化3】
【0141】
重合温度は120℃に調整した。攪拌回転数は95回転で十分な混合を行わせた。平均滞留時間は4.0時間とした。重合率55%、ポリマー濃度50質量部の溶液を連続的に反応器から抜き出し、第一分離槽へ移送した。熱交換器にて160℃に加熱し、真空度60トールで脱揮して反応混合物中のポリマー濃度を65質量部にしたのち、第一分離槽から排出して第二分離槽へ移送した。熱交換器にて260℃に反応混合物を加熱し、真空度32トールで脱揮して反応混合物中の揮発性成分の含有量を0.7質量部、ポリマー成分99.4質量部にしたのち、排出してペレット状の製品を得た。該共重合体の組成比は、フーリエ変換赤外分光光度計を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル39.5質量部、スチレン60.5質量部であった。得られた共重合体0.5gを取り出し、アセトン10mL中に投入し、30分振盪したところ、該共重合体はアセトンに全量溶解した。
【0142】
得られたアセトン溶液のアセトンを蒸発後、残った成分0.25gを2−ブタノン50mLにて溶解した溶液を30℃でCannon−Fenske型毛細管を用いて還元粘度(ηsp/c)を測定した。還元粘度は0.49dl/gであった。
【0143】
(製造例18)共重合体(b1−2)の製造
使用量を、アクリロニトリル18.5質量部、スチレン50.5質量部、エチルベンゼン31.0質量部としたこと以外は、製造例17と同様の操作を行い、共重合体(b1−2)を製造した。該共重合体の組成比は、フーリエ変換赤外分光光度計を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル26.5質量部、スチレン73.5質量部であった。得られた共重合体0.5gを取り出し、アセトン10mL中に投入し、30分振盪したところ、該共重合体はアセトンに全量溶解した。
【0144】
得られたアセトン溶液のアセトンを蒸発後、残った成分0.25gを2−ブタノン50mLにて溶解した溶液を30℃でCannon−Fenske型毛細管を用いて還元粘度(ηsp/c)を測定した。還元粘度は0.48dl/gであった。
【0145】
(製造例19)共重合体(b1−3)の製造
アクリロニトリル33.2質量部、スチレン29.9質量部、ブチルアクリレート8.1質量部、エチルベンゼン28.8質量部、α‐メチルスチレンダイマー0.3質量部、t‐ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.01質量部から成る単量体混合物を空気と接触を断った状態で調製し、連続的に反応器に供給した。重合温度は142℃に調整した。攪拌回転数は95回転で十分な混合を行わせ、撹拌強度P/Vは4.0kw/m
3であった。ここでP(kw)とは撹拌に要する動力であり、混合時の消費電力を測定することで容易に求めることができる。また、V(m
3)は混合部の空間容積であり、溶液にせん断力を与える部分の空間容積である。平均滞留時間は1.65時間とした。重合率60%、ポリマー濃度50質量部の溶液を連続的に反応器から抜き出し、第一分離槽へ移送した。熱交換器にて160℃に加熱し、真空度60トールで脱揮して反応混合物中のポリマー濃度を65質量部にしたのち、第一分離槽から排出して第二分離槽へ移送した。熱交換器にて260℃に反応混合物を加熱し、真空度32トールで脱揮して反応混合物中の揮発性成分の含有量を0.7質量部、ポリマー成分99.4質量部にしたのち、排出してペレット状の製品を得た。該共重合体の組成比は、アクリロニトリル38.6質量部、スチレン50.3質量部、ブチルアクリレート8.4質量部であった。得られた共重合体0.5gを取り出し、アセトン10mL中に投入し、30分振盪したところ、該共重合体はアセトンに全量溶解した。
【0146】
得られたアセトン溶液のアセトンを蒸発後、残った成分0.25gを2−ブタノン50mLにて溶解した溶液を30℃でCannon−Fenske型毛細管を用いて還元粘度(ηsp/c)を測定した。還元粘度は0.42dl/gであった。
【0147】
(製造例20)共重合体(b1−4)の製造
使用量を、アクリロニトリル32.0質量部、スチレン37.0質量部、エチルベンゼン31.0質量部としたこと以外は、製造例17と同様の操作を行い、共重合体(b1−4)を製造した。該共重合体の組成比は、フーリエ変換赤外分光光度計を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル46.5質量部、スチレン53.5質量部であった。得られた共重合体0.5gを取り出し、アセトン10mL中に投入し、30分振盪したところ、該共重合体はアセトンに全量溶解した。
【0148】
得られたアセトン溶液のアセトンを蒸発後、残った成分0.25gを2−ブタノン50mLにて溶解した溶液を30℃でCannon−Fenske型毛細管を用いて還元粘度(ηsp/c)を測定した。還元粘度は0.48dl/gであった。
【0149】
(製造例21)共重合体(b1−5)の製造
使用量を、アクリロニトリル14.5質量部、スチレン54.5質量部、エチルベンゼン31.0質量部としたこと以外は、製造例17と同様の操作を行い、共重合体(b1−5)を製造した。該共重合体の組成比は、フーリエ変換赤外分光光度計を用いた組成分析の結果、アクリロニトリル20.5質量部、スチレン79.5質量部であった。得られた共重合体0.5gを取り出し、アセトン10mL中に投入し、30分振盪したところ、該共重合体はアセトンに全量溶解した。
【0150】
得られたアセトン溶液のアセトンを蒸発後、残った成分0.25gを2−ブタノン50mLにて溶解した溶液を30℃でCannon−Fenske型毛細管を用いて還元粘度(ηsp/c)を測定した。還元粘度は0.49dl/gであった。
【0151】
(実施例1)
充分に乾燥し、水分除去を行った後、芳香族ポリカーボネート(A)としてパンライトL−1225Y(商標名、帝人化成株式会社製)を70質量部、グラフト共重合体(b2−1)を10質量部、共重合体(b1−1)を5質量部、共重合体(b1−2)を15質量部、摺動補助剤として、サンワックスE−250P(商標名、三洋化成工業株式会社製、 重量平均分子量1.0万、酸価20)0.5質量部、及びNUC3195(商標名、ダウ・ケミカル日本株式会社製)0.5質量部を混合した後、ホッパーに投入し、二軸押出機(PCM−30、L/D=28、池貝鉄工(株)製)を使用して、シリンダー設定温度250℃、スクリュー回転数200rpm、混練樹脂の吐出速度15kg/hrの条件で混練して樹脂ペレットを得た。得られた樹脂ペレットを用いて評価を行った。各評価結果を表1に示す。
【0152】
(実施例2〜20、比較例1〜13)
表1、2に記載の組成とした以外は、実施例1と同様に製造して、実施例2〜20、比較例1〜13の樹脂ペレットを得た。得られた樹脂ペレットを用いて評価を行った。各評価結果を表1、2に示す。
【0153】
【表1】
【0154】
【表2】
【0155】
なお、実施例の共重合体(b1)からなる相は、いずれの相にも体積平均粒子径50〜1000nmのゴム質重合体をそれぞれ含むものであった。
【0156】
本出願は、2013年4月23日に日本国特許庁へ出願された日本特許出願(特願2013−090801)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。