特許第6012872号(P6012872)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 武▲漢凱▼迪工程技▲術▼研究▲総▼院有限公司の特許一覧

特許6012872大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料およびその合成方法
<>
  • 特許6012872-大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料およびその合成方法 図000002
  • 特許6012872-大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料およびその合成方法 図000003
  • 特許6012872-大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料およびその合成方法 図000004
  • 特許6012872-大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料およびその合成方法 図000005
  • 特許6012872-大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料およびその合成方法 図000006
  • 特許6012872-大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料およびその合成方法 図000007
  • 特許6012872-大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料およびその合成方法 図000008
  • 特許6012872-大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料およびその合成方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012872
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料およびその合成方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 85/00 20060101AFI20161011BHJP
   C08F 8/32 20060101ALI20161011BHJP
   C08F 8/44 20060101ALI20161011BHJP
   C08G 73/04 20060101ALI20161011BHJP
   C08G 77/388 20060101ALI20161011BHJP
   C08G 77/398 20060101ALI20161011BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20161011BHJP
   C01B 3/02 20060101ALN20161011BHJP
【FI】
   C08G85/00
   C08F8/32
   C08F8/44
   C08G73/04
   C08G77/388
   C08G77/398
   H01M8/04 J
   !C01B3/02 Z
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-531450(P2015-531450)
(86)(22)【出願日】2013年9月12日
(65)【公表番号】特表2015-531418(P2015-531418A)
(43)【公表日】2015年11月2日
(86)【国際出願番号】CN2013083371
(87)【国際公開番号】WO2014044146
(87)【国際公開日】20140327
【審査請求日】2015年5月7日
(31)【優先権主張番号】201210347088.5
(32)【優先日】2012年9月18日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】512244657
【氏名又は名称】武▲漢凱▼迪工程技▲術▼研究▲総▼院有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】方章建
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼▲義▼▲龍▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼岩▲豊▼
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼▲興▼才
(72)【発明者】
【氏名】薛永▲傑▼
(72)【発明者】
【氏名】陶磊明
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−513502(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0068071(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 85/00
C08F 8/32
C08F 8/44
C08G 73/04
C08G 77/388
C08G 77/398
H01M 8/04
C01B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料であって、主鎖となる線状高分子ポリマーと、前記線状高分子ポリマーの側鎖または末端基の両方または一方にグラフトされたアンモニアボラン誘導体とを含む大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料。
【請求項2】
前記主鎖となる線状高分子ポリマーはポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル−ポリエチレンコポリマー、ポリエチレンイミン、アクリレートコポリマー、ポリアクリル酸、ポリスチレン、スチレンアクリレートコポリマー、ポリシロキサンを含み、前記高分子ポリマーの側鎖と末端基の両方または一方のアミノ化に用いられるポリアミン化合物は、1-メチルグアニジン、グアニジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンを含む、請求項1の大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料。
【請求項3】
前記大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料の主鎖となる線状高分子ポリマーは、分子量が5000〜50000であり、前記大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料におけるアンモニアボラン誘導体の含有量は25〜75wt%である、請求項1の大容量ポリマー水素吸蔵材料。
【請求項4】
前記大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料は後処理によりフィルムにされ、フィルム形態で使用される、請求項1の大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料。
【請求項5】
大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料の合成方法であって、
1)線状高分子ポリマーを供給し、ポリアミン化合物を用いて線状高分子ポリマーの側鎖と末端基の両方または一方をアミノ化して、アミンで官能化されたポリマーを生成する工程と、
2)工程1で得られたアミノ化ポリマーおよび水素化ホウ素を化学量論比に従い、有機溶剤懸濁液中において5〜50℃で1〜12時間撹拌し、下側の有機層を濾過・回収し、そこから真空蒸留により溶剤を除去し、洗浄することにより、大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料を得る工程と
を含む大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料の合成方法。
【請求項6】
前記主鎖となる線状高分子ポリマーはポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル−ポリエチレンコポリマー、ポリエチレンイミン、アクリレートコポリマー、ポリアクリル酸、ポリスチレン、スチレンアクリレートコポリマー、ポリシロキサンを含み、
前記高分子ポリマーの側鎖と末端基の両方または一方のアミノ化に用いられるポリアミン化合物は、1-メチルグアニジン、グアニジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンを含む
請求項5の大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料の合成方法。
【請求項7】
前記有機溶剤はテトラヒドロフラン、アセトニトリル、およびジメチルスルホキシドを含み、水素化ホウ素は水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、および水素化ホウ素カリウムからなるグループから選択される、請求項5の大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料の合成方法。
【請求項8】
前記工程1において、線状高分子ポリマーのアミノ化される側鎖と末端基の両方または一方に化学修飾を行った後に、ポリアミン化合物と反応させて、アミンで官能化されたポリマーを得る、請求項5の大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料の合成方法。
【請求項9】
更に、後処理によりフィルム状の大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料を得る、請求項5の大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料の合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子水素吸蔵材料エネルギの技術分野に関し、特に、大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料およびその合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業革命により、人類の近代化への扉が開けられた。一世紀の間に、人類社会の急速な発展にとってエネルギは力強い駆動力となっている。人類の持続可能な発展のために、燃焼値が高く、また便利に利用できる再生可能且つ環境汚染を生じさせない新しい燃料を見つけ出すことが急務である。水素は、環境に優しく、資源が豊富であり、発熱量が大きく、燃焼性能特性が良好であることから、最も有望なグリーンエネルギの一つとされている。しかし、水素の安全且つ効率の良い吸蔵は、常に水素エネルギの開発および利用を制限するボトルネックとなっている。既存の水素吸蔵方法は、水素と材料間の相互作用を完全利用することにより、高密度の水素エネルギと良好な安全性を備えるものであり、世界規模で注目されている。水素吸蔵材料は、国際的な注目を集める最も熱い研究分野の一つとなっている。大容量水素吸蔵材料の開発は、人類の未来のエネルギ問題を解消する重要な鍵であり、また、水素エネルギの大規模な利用にとって大きな原動力である。
【0003】
水素吸着力に基づき、水素吸蔵材料は2つのカテゴリ、即ち化学的吸着材料と物理的吸着材料に分けられる。化学的吸着は、水素分子の解離から生じる水素原子が基板の格子内に挿入され、或いは新しい化合物を形成するものである。化学的吸着材料は金属水素化物材料、水素化物材料、アンモニアボラン誘導体等を含む。アンモニアボラン化合物(NH3BH3,AB)は近年一層注目されている新規の水素化物吸蔵材料である。超高水素密度(19.6wt%)を有するとともに、穏やかな熱安定性と良好な化学的安定性を備える。これは非常に有望で良好な水素貯蔵材料である。水素吸蔵材料の合成方法には、ボラン法と水素化ホウ素ナトリウム法が含まれる。ボラン法ではボランをホウ素源として利用して液体アンモニアと反応させることにより、直接生成物を生成する。例えば、特許文献1ではアンモニアボランおよび有機化合物を原料として、比較的低い水素放出温度で複合アンモニアボラン水素吸蔵材料を合成している。得られた材料は、低温の水素放出特性を備える。水素化ホウ素ナトリウム法では、水素化ホウ素ナトリウムおよびアミン化合物の反応により得られる。例えば、特許文献2では、ホウ化水素p-/m-フェニレンジアミンの大容量水素吸蔵材料の合成方法を開示している。水素吸蔵材料は不活性ガス中において、p-/m-フェニレンジアミンハイドロクロレートとヒドロボランを、NH3+:BH4-のモル比を1:1として混合した混合物を破砕することにより合成される。昨今では、既存のアンモニアボラン誘導体は、温度および操作条件下では水素放出速度が遅く、水素放出工程中に有害な不純物ガスの放出を伴うといった問題を抱えている。また、水素吸蔵材料を適用すると、加熱の不均一さといった問題に遭遇することが頻繁にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許公開第102030313号公報
【特許文献2】中国特許公開第102180445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、水素吸蔵能力が高く、水素放出温度が低いことを特徴とする大容量高分子水素吸蔵材料を提供することにある。材料は可撓性を備えた固体であり、透明な薄膜を形成することができるので、便利に利用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に以下の技術構成を適用する。
【0007】
大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料であって、主鎖となる線状高分子ポリマーと、前記線状高分子ポリマーの側鎖と末端基の両方または一方にグラフトされたアンモニアボラン誘導体とを含む
【0008】
好適には、主鎖となる線状高分子ポリマーは、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル−ポリエチレンコポリマー、ポリエチレンイミン、アクリレートコポリマー、ポリアクリル酸、ポリスチレン、スチレンアクリレートコポリマー、ポリシロキサンを含み、また、高分子ポリマーの側鎖と末端基の両方または一方のアミノ化に用いられるポリアミン化合物は1-メチルグアニジン、グアニジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミンを含む。
【0009】
好適には、前記大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料の主鎖となる線状高分子ポリマーの分子量は5000〜50000であり、前記大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料におけるアンモニアボラン誘導体の含有量は25〜75wt%である。
【0010】
好適には、前記大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料は、後処理を経てフィルムにされ、フィルム形態で使用される。
【0011】
大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料の合成方法を提供する。本方法は以下の工程を含む。
【0012】
1)線状高分子ポリマーを供給し、ポリアミン化合物を用いて線状高分子ポリマーの側鎖と末端基の両方または一方をアミノ化して、アミンで官能化されたポリマーを生成する工程。
2)工程1で得られたアミノ化ポリマーおよび水素化ホウ素を化学量論比に従い、有機溶剤懸濁液中において5〜50℃で1〜12時間撹拌し、下側の有機層を濾過・回収し、そこから真空蒸留により溶剤を除去し、洗浄することにより、本発明の大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料を得る工程。
【0013】
好適には、前記主鎖となる線状高分子ポリマーは、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニル−ポリエチレンコポリマー、ポリエチレンイミン、アクリレートコポリマー、ポリアクリル酸、ポリスチレン、スチレンアクリレートコポリマー、ポリシロキサンを含む。
【0014】
前記高分子ポリマーの側鎖と末端基の両方または一方のアミノ化に用いられるポリアミン化合物は、1-メチルグアニジン、グアニジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等を含む。
【0015】
好適には、前記有機溶剤はテトラヒドロフラン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシドを含み、前記ホウ化水素は水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウムおよび水素化ホウ素カリウムからなる一群から選択される。
【0016】
好適には、前記工程1において、線状高分子ポリマーのアミノ化される側鎖と末端基の両方または一方が化学修飾された後に、再度ポリアミン化合物を加えてアミノ化することにより、アミンで官能されたポリマーが生成される。
【0017】
好適には、前記大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料の合成方法は更に、得られた大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料に後処理を施してフィルム状の大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料を得る工程を含む。
【0018】
本発明では、線状高分子ポリマーを化学修飾し、ポリアミン化合物をポリマーの側鎖と末端基の両方または一方と結合させることにより、アミンで官能されたポリマーを得る。次に化学反応を用いてポリマーの側鎖と末端基の両方または一方にアンモニアボラン誘導体を生成する。このようにして得られた新規の大容量高分子ポリマー水素貯蔵材料は、異なるポリマーを選択することにより、水素吸蔵能力の調整が可能である。熱分解水素放出温度は低く(60〜250℃、好適には90〜160℃)、また、ボラントリアジン、ジボラン、アンモニア等の有害な不純物ガスが生成されない。水素放出工程において、ウィルキンソン触媒を導入することにより、水素放出量および水素放出性能が著しく改善される。また、材料は固形可撓性材料であり、良好な薄膜形成性能を備えているので、透明な薄膜が容易に形成されることにより、不均一な加熱により生じる制御不能な水素放出が回避される。例えば、自動車分野で使用される場合には、材料が自動車の放熱フィンに塗布されることにより、加熱が均一となり、水素吸蔵材料の水素放出性能が良好に制御される。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、ポリマーの表面改質を行い、ポリマー表面に大容量のアンモニアボラン誘導体を合成することにより得られる大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料は、次のような効果を有する。1)水素吸蔵容量は高く、また調整が可能であり、水素放出温度は低く、水素放出工程中に有害な不純物ガスが生成されない。2)固形可撓性材料であり、良好な薄膜形成特性を備えることから、後処理により形成される薄膜を使用することにより、現有の水素吸蔵材料における不均一な加熱により生じる制御不能な水素放出を回避することができる。3)合成方法は単純であり、費用が安価であることから、大規模工業生産に適する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施例1に係る水素吸蔵材料ポリマーcの合成経路を示す図。
図2】実施例2に係る水素吸蔵材料ポリマーdの合成経路を示す図。
図3】水素吸蔵材料ポリマーdの水素放出の動力学曲線を示す図。
図4】水素吸蔵材料ポリマーdの昇温脱離を示す図。
図5】ウィルキンソン触媒の水素吸蔵材料ポリマーdへの影響を説明する動力学曲線を示す図であって、点線はウィルキンソン触媒の存在下での結果を示す一方、実線はウィルキンソン触媒の不在下での結果を示す。
図6】実施例3に係る水素吸蔵材料ポリマーhの合成経路を示す図。
図7】実施例3に係る水素吸蔵材料ポリマーeの合成経路を示す図。
図8】実施例5〜7で合成されるその他の大容量高分子ポリマー水素吸蔵材料を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を詳細に説明するために、以下に添付図および実施形態を併せて、本発明の主要内容を説明する。当然のことながら、以下の実施形態は説明を目的とするものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例1】
【0022】
水素吸蔵材料ポリマーcの合成
【0023】
図1に示すように、ポリマーa(ポリアクリル酸、分子量5000)を冷たいジクロロメタンに加え、続いて過量の塩化チオニルを加えた。混合物を0℃で1時間撹拌し、次に、溶剤を脱水により除去した。得られた生成物を乾燥したジクロロメタンに溶解させ、次に、グアニジンおよびトリエチルアミンを加えた。混合物を0℃で2時間反応させ、次に、脱水させた。得られた生成物を脱イオン水で3回洗浄してから乾燥させて、ポリマーbを生成した。
【0024】
アミノ化ポリマーbおよび水素化ホウ素ナトリウムを、化学量論比に従い、テトラヒドロフラン懸濁液中で、25℃で12時間撹拌した。混合物を濾過し、下側の有機層を回収し、そこから真空蒸留により溶剤を除去した。得られた生成物をエーテルで2回洗浄することにより生成物を得た。得られたポリマーcにおけるアンモニアボラン誘導体のポリマー全体に対する割合は57wt%であった。
【0025】
水素吸蔵材料ポリマーcの水素放出性能試験を実施した。その結果によれば、ポリマーcの水素放出温度は約105℃であり、105℃で約6.2wt%の純水素が放出された。
【実施例2】
【0026】
ポリマーd水素吸蔵材料の合成
【0027】
図2に示すように、ポリ塩化ビニル−ポリエチレンコポリマーm(分子量50000、ポリ塩化ビニルモノマーの重合度nは750)を乾燥したジクロロメタンに溶解させ、次に、1−メチル−グアニジンおよびトリエチルアミンを加えた。混合物を20℃で12時間反応させ、次に、脱水させた。得られた生成物を脱イオン水で3回洗浄してから乾燥させて、ポリマーnを生成した。
【0028】
アミノ化ポリマーnおよび水素化ホウ素ナトリウムを、化学量論比に従い、テトラヒドロフラン懸濁液中において、20℃で8時間撹拌した。混合物を濾過し、下側の有機層を回収し、そこから真空蒸留により溶剤を除去した。得られた生成物をエーテルで2回洗浄することによりポリマーdを得た。ポリマーdにおけるアンモニアボラン誘導体のポリマー全体に対する割合は75wt%であった。
【0029】
前記水素吸蔵材料ポリマーdの水素放出性能試験を実施した。図3および図4は、ポリマー水素吸蔵材料の水素放出動力学曲線および昇温脱離をそれぞれ示す。結果に示すとおり、水素吸蔵材料ポリマーdの出発水素放出温度は低い(約50℃)。温度上昇に伴い、水素放出反応は略一工程で急激に加速する。水素放出ピーク温度は100℃であり、約8%の水素が放出された。水素放出工程全体において、有害な不純物ガスは生成されなかった。
【0030】
対照的に、図5に示すとおり、水素放出工程においてウィルキンソン触媒が加えられて、水素吸蔵材料dの水素放出性能が実施されると、ウィルキンソン触媒の導入後に、ポリマー水素吸蔵材料の水素放出性能は著しく改善した。
【実施例3】
【0031】
ポリマーh水素吸蔵材料の合成
【0032】
図6に示すとおり、ポリマーj(分子量16000)を冷たいジクロロメタンに加え、続いて過量の塩化チオニルを加えた。混合物を0℃で2時間撹拌し、次に、溶剤を脱水により除去した。得られた生成物を乾燥したジクロロメタンに溶解させ、次に、エチレンジアミンおよび炭酸カリウムを加えた。混合物を5℃で2時間反応させ、次に、脱水させた。得られた生成物を脱イオン水で3回洗浄してから乾燥させて、アミノ化ポリマーkを生成した。
【0033】
アミノ化ポリマーkおよび水素化ホウ素ナトリウムを、化学量論比に従い、ジメチルスルホキシド懸濁液中において、50℃で6時間撹拌した。混合物を濾過し、下側の有機層を回収し、そこから真空蒸留により溶剤を除去した。得られた生成物をエーテルで2回洗浄することにより生成物を得た。得られたポリマーにおけるアンモニアボラン誘導体のポリマー全体に対する割合は39.6wt%であった。
【0034】
試験によれば、水素吸蔵材料ポリマーhの水素放出ピーク温度は約110℃であり、110℃で約3.8wt%の純水素が放出された。水素放出工程中に有害な不純物ガスは生成されなかった。
【実施例4】
【0035】
図7に示すとおり、ポリエチレンイミン(分子量5000)をアセトニトリルに加え、続いてブロモエタノールおよび炭酸カリウムを化学量論比に従い加えた。混合物を80℃で24時間撹拌した。沈殿物を濾過し、水で洗浄し、乾燥させた後、無水ジクロロメタンに溶解させた。その後、溶液に1.5当量の塩化メタンスルホニルおよびトリエチルアミンを加えた。2時間後に、溶剤を脱水により除去し、ジクロロメタンにより抽出して乾燥させ、続いて、グアニジンおよびトリエチルアミンを加えた。混合物を25℃で一晩反応させ、次に、濾過・洗浄して、アミノ化ポリマーを生成した。得られたアミノ化ポリマーおよび水素化ホウ素カリウムを、化学量論比に従い、ジメチルスルホキシド懸濁液中において、50℃で6時間撹拌した。混合物を濾過し、下側の有機層を回収し、且つ、そこから真空蒸留により溶剤を除去した。得られた生成物をエーテルで2回洗浄することにより、ポリマー水素吸蔵材料eを得た。
【0036】
高分子ポリマー水素吸蔵材料eの水素放出ピーク温度は約115℃であり、110℃において、約6.7wt%の純水素が放出された。水素放出工程中に有害な不純物ガスは生成されなかった。
【実施例5】
【0037】
実施例1の水素吸蔵材料ポリマーcの合成方法を参考にして、ポリマーa(ポリアクリル酸、分子量20000)を原料として、ポリマーaの側鎖をエチレンジアミンによりアミノ化し、次に、アミノ化ポリマーを水素化ホウ素ナトリウムと反応させて、図8に示すような水素吸蔵材料ポリマーfを合成した。
【0038】
水素吸蔵材料ポリマーfの水素放出ピーク温度は約109℃であり、115℃において、約4.6wt%の純水素が放出され、水素放出工程中に有害な不純物ガスは生成されなかった。
【実施例6】
【0039】
実施例2の水素吸蔵材料ポリマーdの合成方法を参考にして、ポリ塩化ビニル(分子量50000)を原料として、ジエチレントリアミンをポリ塩化ビニルの側鎖に用いるポリアミン化合物として採用してアミノ化を行い、水素化ホウ素ナトリウムと反応させて、図8に示すような水素吸蔵材料ポリマーgを合成した。
【0040】
水素吸蔵材料ポリマーgの水素放出ピーク温度は約103℃であり、110℃で約7.8wt%の純水素が放出され、水素放出工程中に有害な不純物ガスは生成されなかった。
【実施例7】
【0041】
ポリブロモスチレン−ポリブチルアクリレート(分子量30000、ブロモスチレンモノマーの重合度nは100)をジオキサンに溶解させ、次に、計量されたエチレンジアミンおよび炭酸カリウムを溶液に加え、12時間還流反応させ、溶液を脱水した。得られた生成物を脱イオン水で3回洗浄してから乾燥させて、アミノ化ポリマーを得た。アミノ化ポリマーおよび水素化ホウ素ナトリウムを、化学量論比に従い、テトラヒドロフラン懸濁液中において、室温で8時間撹拌した後に濾過し、下側の有機層を回収し、真空蒸留により溶剤を除去した。得られた生成物をエーテルで3回洗浄することにより、図8に示す水素吸蔵材料ポリマーiを得た。得られたポリマーにおけるアンモニアボラン誘導体のポリマー全体に対する割合は25wt%であった。
【0042】
水素吸蔵材料ポリマーiは、塗布によりフィルムを形成する方法によって、自動車のテール部品表面のフィルムとして使用してもよい。
【0043】
水素吸蔵材料ポリマーiの水素放出ピーク温度は約116℃であり、120℃で約2.8wt%の純水素が放出された。水素放出工程中に有害な不純物ガスは生成されなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8