(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1つもしくは直列接続された複数の太陽電池モジュールからなる太陽電池ストリングが並列接続により複数並べて配置された構成を有する太陽光発電システムにおいて、前記太陽電池ストリングの故障を検出する太陽光発電検査システムであって、
第1の太陽電池ストリングの第1の出力電流と、第2の太陽電池ストリングの第2の出力電流をそれぞれ測定する電流検出器と、
前記第1の出力電流の値と、前記第2の出力電流の値とに基づいて前記第2の太陽電池ストリングの第2の温度特性を算出し、前記第2の温度特性に基づいて前記第2の太陽電池ストリングの故障の有無を判定する監視部と、
を有する、太陽光発電検査システム。
1つもしくは直列接続された複数の太陽電池モジュールからなる太陽電池ストリングが並列接続により複数並べて配置された構成を有する太陽光発電システムにおいて、前記太陽電池ストリングの故障を検出する太陽光発電検査方法であって、
第1の太陽電池ストリングの第1の出力電流と、第2の太陽電池ストリングの第2の出力電流をそれぞれ測定する工程と、
前記第1の出力電流の値と前記第2の出力電流の値とに基づいて、前記第2の太陽電池ストリングの第2の温度特性を算出する工程と
前記第2の温度特性に基づいて前記第2の太陽電池ストリングの故障の有無を判定する工程と、
を有する、太陽光発電検査方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下においては、本発明の特徴を分かり易くするために、従来の技術と比較して説明する。
【0019】
<概要>
図13は、一般的な太陽光発電システムの構成例について概要を示した図である。太陽光発電システム1’は、複数の太陽電池モジュール310が直列に接続された太陽電池ストリング31が、接続箱20内での結線を介して1つ以上並列に接続され、さらに集約されて、DC/DCコンバータ41およびインバータ42、もしくはこれらを含む図示しないPCS(Power Conditioning System)を介して電力系統43に接続される構成を有する。これにより、各太陽電池ストリング31が生成した電力を電力系統43に対して出力することができる。複数の並列接続された太陽電池ストリング31を並べて配置して太陽電池アレイ30を構成し、太陽電池アレイ30毎に接続箱20を設けるようにしてもよい。なお、接続箱20内には、各太陽電池ストリング31で生成された電流の逆流を防止するため、逆流防止ダイオード21が接続されている。
【0020】
図14は、一般的な太陽電池ストリング31の構成例について概要を示した図である。図の右側に示した太陽電池ストリング31は、上述したように、複数の太陽電池モジュール310が直列に接続された構成を有する。各太陽電池モジュール310は、複数の太陽電池セル311が直列に接続され、さらにこれと並列に故障時等のためのバイパスダイオード312が接続された構成を有する。各太陽電池セル311は、太陽光を電力に変換する半導体素子等からなり、いわゆるPV(PhotoVoltaic)セルモデルとして図の左側に示すような等価回路により表される。
【0021】
図15は、従来技術における一般的な太陽光発電システム1’において各太陽電池ストリング31の故障を検出する仕組みの例について概要を示した図である。
図15の例では、接続箱20内における各太陽電池ストリング31に対応する端子に、電子負荷と電流計および電圧計が図示するように接続された電流−電圧特性測定器50を順次接続して、太陽電池ストリング31毎に電流−電圧特性を測定する構成を示している。従来技術では、このように、各太陽電池ストリング31について、電流と電圧を測定することで電流−電圧特性を求め、正常時との乖離状態に基づいて故障を検出するという仕組みがとられる。
【0022】
図16は、一般的な太陽光発電システム1’における太陽電池ストリング31の電流−電圧特性の例について概要を示した図である。図中の複数の特性曲線は、温度による特性の相違を示している。電圧軸に示された縦線は、測定基準の電圧を示している。この基準電圧は、例えば、太陽電池ストリング31における動作電圧とすることができる。ここで、基準電圧を示す縦線との交点が白丸1〜3で示されている実線の曲線は、正常時の電流−電圧特性のパターンを示している。この場合、基準電圧における白丸1〜3で示された範囲の電流値が正常な範囲の電流値であると考えることができる。
【0023】
一方で、基準電圧を示す縦線との交点が黒丸a〜cで示されている点線の曲線は、故障や異常、劣化等(以下これらを総称して「故障」と記載する場合がある)における電流−電圧特性のパターンを示している。ここで、黒丸b、cに対応する曲線では、基準電圧における電流値が、上記の白丸1〜3で示された正常な範囲の電流値から大きく乖離して低下している。このような明らかな場合には、単純な電流値の比較で故障であることを容易に検出することができる。しかしながら、黒丸aに対応する曲線では、故障であるにもかかわらず、基準電圧における電流値が、上記の白丸1〜3で示された正常な範囲の電流値と乖離しておらず、電流−電圧特性の測定からは故障を検出するのが困難であることを示している。
【0024】
これは、電流−電圧特性に温度が影響する、すなわち電流−電圧特性が温度特性を有するためであり、メガソーラーのように広大な面積を持つ大規模なシステムでは、場所によって大きな温度分布の差があり得るため、温度分布の影響をキャンセルしなければ、的確に故障を検出できないことを示している。しかしながら、例えば、正常時の電流−電圧特性を温度毎に保持しておくというような手法では、処理が煩雑となり、必要なデータ量も多くなってしまう。
【0025】
そこで、本発明の一実施の形態である太陽光発電検査システムは、例えば、太陽光発電システムの各太陽電池ストリング31について、隣接もしくは近接するものの間で温度特性の差分を求め、これに基づいて各太陽電池ストリング31の温度特性を算出し、これと想定の温度特性との比較により故障を判断する。隣接もしくは近接している太陽電池ストリング31間では、温度差は小さく、差分を無視することができるため、メガソーラーのような大規模なシステムであっても、場所による温度分布の差の影響をキャンセルすることができる。また、後述するように、隣接もしくは近接する太陽電池ストリング31間での温度特性の差分は、各太陽電池ストリング31の電流のみから算出することができるため、電圧の測定が不要となり、測定を容易にしてコストを低減させつつ、故障検出の精度を向上させることができる。
【0026】
<実施の形態1>
[システム構成]
図1は、本発明の実施の形態1である太陽光発電検査システムを有する太陽光発電システムの構成例について概要を示した図である。本実施の形態の太陽光発電システム1は、
図13に示した一般的な太陽光発電システム1’の構成において、例えば、接続箱20の内部に各太陽電池ストリング31の電流を測定して収集するストリングモニタ10を有している。このストリングモニタ10は、太陽光発電検査システムの一部もしくは全部を構成する装置であり、接続箱20の内部で固定的に設置されていてもよいし、可搬型として、故障検出の処理時に接続箱20の内部に取り付けることが可能なように構成してもよい。
【0027】
ストリングモニタ10は、各太陽電池ストリング31の出力電流を測定する電流検出器11と、各電流検出器11において測定される出力電流を一定時間毎に取得するサンプリング処理部12、サンプリング処理部12によって取得された電流値を示す信号を所定の出力情報に変換して出力する信号変換伝送装置13、および信号変換伝送装置13から伝送された電流値の情報を記録するメモリ14を有する。
【0028】
メモリ14に記録された各太陽電池ストリング31の電流値の情報は、例えば、ストリングモニタ10が有する図示しないUSB(Universal Serial Bus)端子等の外部端子を介して、USBメモリ等の外部記憶装置に取り出すことができる。その後、当該外部記憶装置から、PC(Personal Computer)やサーバ機器等により構成される図示しない監視装置や監視部にデータを取り込んで、後述するような手法により、故障の有無の判断を行うことができる。メモリ14を介さずに、通信手段により監視装置や監視部に直接データを送信するように構成することも可能である。また、例えば、ストリングモニタ10上にCPU(Central Processing Unit)とプログラムを有して、もしくはマイコン等を用いて図示しない監視部を構成し、ストリングモニタ10上で故障等の判断を行うようにすることも可能である。
【0029】
図2は、電流検出器11の構成例について概要を示した図である。電流検出器11は、例えば、図示するような回路からなる一般的なCT(Current Transformer)センサなどのクランプ型電流計を用いて構成することができ、各太陽電池ストリング31からの線路を開いて接続するという操作を要さずに電流を測定することができる。
【0030】
図3は、検査時の構成の具体的な例について概要を模式的に示した図である。接続箱20の内部には、各太陽電池ストリング31からの配線には、それぞれ逆流防止ダイオード21と、MCCB(配線用遮断器)22が設置されており、また、各太陽電池ストリング31からの出力電流I
1〜I
nを測定するCTセンサなどの電流検出器11がそれぞれ設置されている。また、太陽電池アレイ30に対するMCCB23も設置されている。ストリングモニタ10は、各電流検出器11によってそれぞれ測定された電流値を収集し、例えば、PC等の監視装置17にデータを出力する。監視装置17では、取り込んだデータに基づいて、後述する手法によって故障検出を行う。
【0031】
[故障検出手法]
以下では、ストリングモニタ10により測定した各太陽電池ストリング31の電流値から故障を検出する手法について説明する。上述したように、本実施の形態では、並べて配置された複数の太陽電池ストリング31のうち、隣接するもしくは近接する太陽電池ストリング31間での温度特性の差分に基づいて各太陽電池ストリング31の温度特性を求め、これに基づいて故障の有無の判定を行う。
【0032】
図4は、並べて配置された複数の太陽電池ストリング31の電流−電圧特性の温度特性を求める例について示した図である。並べて配置された複数の太陽電池ストリング31について、図中の左端のものから順にそれぞれの電流値をI
1、I
2、I
3、…、電圧値をV
1、V
2、V
3、…、温度をT
1、T
2、T
3、…、とすると、各太陽電池ストリング31、およびi番目の太陽電池ストリング31についての電流−電圧特性の温度特性は、一般的に、以下の式で表されることが知られている。
【0034】
上記のi番目の太陽電池ストリング31についての式において、V
i、I
i、T
i、およびI
siは、それぞれ、i番目の太陽電池ストリング31の電圧、電流、温度、および逆方向の飽和電流である。また、N
cellは、太陽電池ストリング31に含まれる太陽電池セル311の数であり、n、k、qは定数である。また、I
scは標準の短絡電流、p
aは日射量である。日射量p
aは、以下の式から推定的に算出することができる。
【0036】
上記の式において、I
opは動作電流、I
scは短絡電流であり、これらの比jは一定となる。従って、各太陽電池ストリング31の全体での総電流であるI
op_tが得られれば、想定での日射量p
aを算出することができる。
【0037】
ここで、i番目の太陽電池ストリング31と、隣接するi+1番目の太陽電池ストリング31との間における、数1の式に示された電流−電圧特性の温度特性の差分を考える。この場合、
図4に示すように、各太陽電池ストリング31についての温度分布(T
1、T
2、T
3、…)は一様ではないものの、隣接する太陽電池ストリング31間では、その温度差(T
2−T
1、T
3−T
2、T
4−T
3、…T
i+1−T
i)は無視できる程度に小さいと考えられるため、これを0とみなすことで、温度特性の差分は近似的に以下の式で表される。
【0039】
上記の式の右辺に示された式には、電圧および温度がパラメータとして含まれておらず、i番目とi+1番目の太陽電池ストリング31の電流値のみから求めることができる。この値、すなわち、上記の式の左辺に示された温度特性の差分は、i番目およびi+1番目の太陽電池ストリング31がそれぞれ正常であれば近似的に0となる。
【0040】
一方で、隣接する太陽電池ストリング31の一方が故障の太陽電池モジュール310を含む場合は、故障を有する太陽電池ストリング31では正常時よりも高い電圧が検出されることから、上記の式の左辺に示された温度特性の差分の値は0ではなくなる。すなわち、故障を有する太陽電池ストリング31において検出された電流値を数3の式に代入して得られる値は0ではなくなる。従って、数3の式により得られた値が0ではない場合は、i番目もしくはi+1番目の太陽電池ストリング31の少なくとも一方に故障が存在し、温度特性が異常になっているものと考えられる。
【0041】
従って、この温度特性の差分に基づいて、i番目およびi+1番目の太陽電池ストリング31のそれぞれについて、後述するような手法で、太陽電池セル311単位での温度特性を算出し、これを、太陽電池セル311単位での想定の温度特性と比較することで、温度特性の乖離の程度を算出する。この乖離の程度が所定の閾値以上である場合には、当該太陽電池ストリング31のいずれかの太陽電池モジュール310もしくは太陽電池セル311に故障が発生しているものと推定することができる。なお、i+1番目の太陽電池ストリング31は、i番目の太陽電池ストリング31と必ずしも隣接している必要はなく、温度差が無視できる程度の範囲で複数個離れた近接する太陽電池ストリング31としてもよい。
【0042】
図5は、上述した太陽電池ストリング31の故障を検出する手法の例について概要を示した図である。図の上から1段目には、複数の太陽電池ストリング31の配列のうち、端部から数えてNo.1〜6までの6つの太陽電池ストリング31について例示的に図示している。このうち、No.3の太陽電池ストリング31の一部の太陽電池セル311に故障が発生しているものとする。
【0043】
ここで、i=1〜6として、各太陽電池ストリング31において測定された電流値から、上記の数3に示された式に基づいて、隣接する各太陽電池ストリング31間の電流−電圧特性の温度特性の差分の値を算出した結果を2段目に示している。
図5の例では、No.2とNo.3との間の差分(−3[V/℃])、およびNo.3とNo.4との間の差分(+3[V/℃])が0ではない状態となっていることを示している。
【0044】
ここで、図の3段目に示した各太陽電池ストリング31についての温度特性を求めるにあたり、基準値としての温度特性の差分を0[V/℃]として、端部のNo.1の太陽電池ストリング31の温度特性を暫定的に基準値(0[V/℃])とするとともに、これに基づいて、他の太陽電池ストリング31について順次、暫定的な温度特性の値を求める。例えば、図中のNo.2の太陽電池ストリング31については、No.1の太陽電池ストリング31の温度特性の暫定値が0[V/℃]であり、かつ、No.1とNo.2の太陽電池ストリング31の間の温度特性の差分が0[V/℃]であることから、No.2の太陽電池ストリング31の温度特性の暫定値は0[V/℃]であることになる。
【0045】
さらに、No.3の太陽電池ストリング31については、No.2の太陽電池ストリング31の温度特性の暫定値が0[V/℃]であり、かつ、No.2とNo.3の太陽電池ストリング31の間の温度特性の差分が−3[V/℃]であることから、No.3の太陽電池ストリング31の温度特性の暫定値は−3[V/℃]であることになる。また、No.4の太陽電池ストリング31については、No.3の太陽電池ストリング31の温度特性の暫定値が−3[V/℃]であり、かつ、No.3とNo.4の太陽電池ストリング31の間の温度特性の差分が+3[V/℃]であることから、No.4の太陽電池ストリング31の温度特性の暫定値は0[V/℃]であることになる。以下、同様の手順で各太陽電池ストリング31の暫定的な温度特性の値を求めることができる。
【0046】
このような手順により得られた各太陽電池ストリング31についての暫定的な温度特性の値を、当該太陽電池ストリング31に含まれる太陽電池セル311の数で除算して、図の4段目に示すように太陽電池セル311単位での暫定的な温度特性の値([mV/℃])を算出し、この値にさらに、太陽電池セル311での想定の温度特性の値を加えることで、図の5段目に示すように太陽電池セル311単位での温度特性の値を算出する。なお、太陽電池セル311での想定の温度特性は、以下の式により得ることができる。
【0048】
上記の式において、V
ocは太陽電池ストリング31の開放電圧であり、V
oc/N
cellは、開放電圧を太陽電池ストリング31に含まれる太陽電池セル311の数で除算したものである。また、E
go/qは、バンドギャップリファレンス電圧であり、本実施の形態では約1.25Vとしている。常温(298[K])での開放電圧V
ocの値と、太陽電池ストリング31に含まれる太陽電池セル311の数N
cellの値は、太陽電池モジュールの仕様書等から知ることができるため、太陽電池セル311での想定の温度特性は、予め算出しておいて定数とすることができ、本実施の形態では、例えば、−2.0[mV/℃]のような値となる。
【0049】
上記の手順により得られた、各太陽電池ストリング31についての温度特性の値と、太陽電池セル311での想定の温度特性の値とを比較し、乖離が所定の閾値以上である場合に、当該太陽電池ストリング31は故障の太陽電池モジュール310を含むものとして検出することができる。所定の閾値については、特に限定はされないが、例えば、太陽電池セル311での想定の温度特性の絶対値の10%などの値を設定することができる。
【0050】
このように、隣接もしくは近接する太陽電池ストリング31における電流−電圧特性の温度特性の差分をとることにより、メガソーラーのような大規模なシステムでの場所による温度分布の差異をキャンセルすることができる。また、電流の測定値のみから温度特性の差分を算出することができるため、電圧を測定する必要がなく、測定にかかる労力や設備のコストを低減させるとともに、多数のパラメータの測定を要することによる検出の精度の低下を抑止することができる。
【0051】
[処理の流れ]
図6は、上述した太陽電池ストリング31の故障検出の手法を実装する際の処理の流れの例について概要を示したフローチャートである。まず、ストリングモニタ10の電流検出器11により、サンプリング処理部12からの指示に基づいて、各太陽電池ストリング31の電流をそれぞれ計測する(S01)。計測した電流値は、信号変換伝送装置13を介してメモリ14に記録される。
【0052】
その後、監視装置等では、メモリ14に記録された電流値を外部記憶装置等を介して、もしくは通信により取得し、電流値に基づいて後述する手順により太陽電池ストリング31の故障等の有無を判定する。上述したように、監視装置等ではなく、ストリングモニタ10自身がCPU等により処理を行うようにしてもよい。ここでは、まず、各太陽電池ストリング31についての電流値を合計して総電流を算出する(S02)。次に、当該総電流の値に基づいて、上述の数2に示した式に基づいて想定の日射量を算出する(S03)。
【0053】
その後、並べて配置された各太陽電池ストリング31について、上述の数3に示した式に基づいて、隣接する太陽電池ストリング31間での電流−電圧特性の温度特性の差分をそれぞれ算出する(S04)。上述したように、隣接しているものに限らず、例えば、数個おきに間欠的に抽出した近接する太陽電池ストリング31間について算出するようにしてもよい。
【0054】
その後、故障検出の対象の全ての太陽電池ストリング31について順次処理を繰り返すループ処理を開始する。ここでの対象の太陽電池ストリング31は、ストリングモニタ10が接続された太陽電池ストリング31となり、太陽光発電システム1の全ての太陽電池ストリング31が含まれていなくてもよい。
【0055】
ループ処理では、まず、処理対象の太陽電池ストリング31について、その直前の太陽電池ストリング31について後述するような処理により求められた暫定の温度特性の値と、直前の太陽電池ストリング31との間の温度特性の差分の値とに基づいて、暫定の温度特性の値を算出する(S05)。
【0056】
具体的には、
図5に示したように、直前の太陽電池ストリング31についての暫定の温度特性の値に、直前の太陽電池ストリング31との間の温度特性の差分の値を加算することで、処理対象の太陽電池ストリング31についての暫定の温度特性の値を算出する。なお、処理対象の太陽電池ストリング31が先頭の太陽電池ストリング31である場合は、上述したように、暫定的な温度特性についての基準値の値(本実施の形態では0[V/℃])を、先頭の太陽電池ストリング31の暫定の温度特性の値として設定する。
【0057】
次に、処理対象の太陽電池ストリング31についてステップS05で算出した暫定の温度特性の値を、処理対象の太陽電池ストリング31に含まれる太陽電池セル311の数で除算し、太陽電池セル311あたりの暫定の温度特性の値を算出する(S06)。さらに、太陽電池セル311あたりの暫定の温度特性の値に、上述の数4に示した式に基づいて算出される太陽電池セル311の想定の温度特性の値(本実施の形態では−2.0[mV/℃])を加算して、暫定ではない太陽電池セル311あたりの温度特性の値を算出する(S07)。
【0058】
その後、ステップS07で算出した太陽電池セル311あたりの温度特性の値と、上述の数4に示した式に基づいて算出される想定の温度特性の値(本実施の形態では−2.0[mV/℃])との差分を算出し(S08)、当該差分の値が所定の閾値未満であるか否かを判定する(S09)。所定の閾値未満である場合は、何もせずにループ処理における次の太陽電池ストリング31の処理に移る。
【0059】
一方、所定の閾値以上である場合は、その旨を通知するアラームを出力する(S10)。アラームの出力形式は特に限定されず、例えば、通知メッセージを監視装置の画面上に表示したり、所定の電子メールアドレスに通知メッセージを送信したりすることができる。音声等により通知するものであってもよい。アラーム出力が完了すると、ループ処理における次の太陽電池ストリング31の処理に移る。ループ処理にて全ての太陽電池ストリング31についての処理を繰り返すと、故障検出の処理を終了する。なお、上記の一連の処理は、例えば、ストリングモニタ10のサンプリング処理部12からの指示等をトリガとして、定期的に行うのが望ましい。
【0060】
以上に説明したように、本発明の実施の形態1であるストリングモニタ10を有する太陽光発電検査システムは、例えば、各太陽電池ストリング31について、隣接もしくは近接するものの間で電流−電圧特性の温度特性の差分を求め、これに基づいて各太陽電池ストリング31の温度特性を算出し、これと想定の温度特性との比較により故障を判断する。これにより、メガソーラーのような大規模なシステムでも、場所による温度分布の差の影響をキャンセルすることができる。また、温度特性の差分の値は、各太陽電池ストリング31の電流のみから算出することができるため、電圧の測定が不要となり、測定を容易にしてコストを低減させつつ、故障検出の精度を向上させることができる。
【0061】
<実施の形態2>
上述した実施の形態1の太陽光発電検査システムでは、隣接もしくは近接する太陽電池ストリング31間の電流−電圧特性の温度特性の差分を算出する際に必要なパラメータである日射量p
aを、上述の数2に示した式により、各太陽電池ストリング31の電流の合計である総電流I
op_tに基づいて算出した想定日射量として取得していた。
【0062】
これに対し、本発明の実施の形態2である太陽光発電検査システムは、メガソーラー上の場所による日射量の分布の差異の影響を低減し、より故障判定の精度を向上させるため、日射計等により実際に日射量p
aを測定して取得する。
【0063】
図7は、本発明の実施の形態2である太陽光発電検査システムを有する太陽光発電システム1の構成例について概要を示した図である。
図1に示した実施の形態1の太陽光発電システム1の構成に加えて、本実施の形態のストリングモニタ10は、さらに、外部装置との間で信号の入出力を行うI/O部15と、これに接続された日射計16を有している。これにより、日射計16で測定した日射量の情報を故障検出の処理時に利用することができる。
【0064】
図8は、本実施の形態における太陽電池ストリング31の故障検出の手法を実装する際の処理の流れの例を示したフローチャートである。ここでは、
図6に示した実施の形態1の処理手順におけるステップS02およびS03の処理、すなわち、対象の全ての太陽電池ストリング31の電流の合計である総電流を算出する処理、および当該総電流に基づいて想定での日射量p
aを算出する処理が、日射計16により日射量p
aを実際に測定して取得する処理(S20)に置き換えられている。他の処理(S01、およびS04〜S10)については、
図6に示した実施の形態1の処理手順と同様であるため、再度の説明は省略する。
【0065】
これにより、太陽電池ストリング31の総電流から算出された想定の日射量p
aの代わりに、日射計16により実際に測定された日射量を太陽電池ストリング31についての日射量p
aとして用いることで、故障検出の精度を向上させることができる。なお、日射計16の数は1つに限らず、太陽電池ストリング31の領域毎に複数の日射計16を対応させて設置するようにしてもよい。この場合は、各日射計16により測定された日射量を、対応する領域の太陽電池ストリング31の日射量p
aとして用いることができる。
【0066】
<実施の形態3>
上述した実施の形態1および2の太陽光発電検査システムでは、固定もしくは可搬型のストリングモニタ10によって、各太陽電池ストリング31の電流値を測定し、測定結果に基づいて、隣接もしくは近接する太陽電池ストリング31間の電流−電圧特性の温度特性の差分を算出している。しかしながら、この場合は、対象の太陽電池アレイ30における全ての太陽電池ストリング31の電流値を測定するための電流検出器11が必要となり、接続箱20に固定的に設置する場合には、設置スペースを要する。また、可搬型とする場合でも、ストリングモニタ10が大きくなるとともに、測定時に多数の電流検出器11を同時に設置することから設置ミスも生じ易い。
【0067】
そこで、本発明の実施の形態3である太陽光発電検査システムは、ストリングモニタ10を可搬型とし、CTセンサなどの電流検出器11を2つのみ有するものとする。本実施の形態では、2つの電流検出器11により、1組の隣接もしくは近接する太陽電池ストリング31の電流値をそれぞれ測定して、上述した手法により、当該組における電流−電圧特性の温度特性の差分を算出する。その後、作業員が、測定対象の太陽電池ストリング31のペアを1つずらして、同様の測定を行う。これを、測定対象の全ての太陽電池ストリング31に対して順次行うことで、上述の
図6もしくは
図8におけるステップS04までの処理と同等の処理を行うことができ、その後は、
図6もしくは
図8のステップS05以降と同様の処理によって故障検出を行うことができる。
【0068】
図9、
図10は、本発明の実施の形態3である太陽光発電検査システムを有する太陽光発電システムの構成例について概要を示した図である。上述の実施の形態1の
図1における太陽光発電システムとの相違は、ストリングモニタ10が有する電流測定器11が2つのみである点である。
図9の例では、太陽電池アレイ30の太陽電池ストリング31のうち、左側から順に2つの電流値(I
1およびI
2)を測定している状態を示している。また、
図10の例では、
図9の例から測定対象の太陽電池ストリング31のペアを1つずらして電流値(I
2およびI
3)を測定している状態を示している。
図11および
図12は、
図9および
図10の例にそれぞれ対応した、検査時の構成の具体的な例について概要を模式的に示した図である。
【0069】
このように、測定対象の太陽電池ストリング31のペアを作業員が順次ずらして電流値を測定し、電流−電圧特性の温度特性の差分を算出していくことで、機能的には実施の形態1および2と同様の結果を得ることができる。また、本実施の形態では、電流測定器11を2つのみ有する可搬型のストリングモニタ10を用いることで、ストリングモニタ10の設置スペースを削減し、太陽光発電システムをコンパクトに構成することが可能となる。
【0070】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施の形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施の形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施の形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0071】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、またはICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0072】
また、上記の各図において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、必ずしも実装上の全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。