特許第6012883号(P6012883)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6012883フィルムからインクを除去するための方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012883
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】フィルムからインクを除去するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   C09D 9/00 20060101AFI20161011BHJP
   B08B 1/02 20060101ALI20161011BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20161011BHJP
   B08B 7/04 20060101ALI20161011BHJP
   B29B 17/00 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   C09D9/00ZAB
   B08B1/02
   B08B3/02 C
   B08B7/04 A
   B29B17/00
【請求項の数】15
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-548785(P2015-548785)
(86)(22)【出願日】2013年12月13日
(65)【公表番号】特表2016-509613(P2016-509613A)
(43)【公表日】2016年3月31日
(86)【国際出願番号】IB2013002769
(87)【国際公開番号】WO2014096926
(87)【国際公開日】20140626
【審査請求日】2015年6月23日
(31)【優先権主張番号】13/725,817
(32)【優先日】2012年12月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515169429
【氏名又は名称】フローラル パッケージング アイピー ホールディングス エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】FLORAL PACKAGING IP HOLDINGS,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】ミラン ホルヘ アルベイロ
【審査官】 ▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−331137(JP,A)
【文献】 特開平07−084488(JP,A)
【文献】 特開平07−113191(JP,A)
【文献】 米国特許第06022423(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 9/00
B08B 1/02
B08B 3/02
B08B 7/04
B29B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性フィルムからインクを除去する方法であって、
フィルムの第1のロールから前記フィルムを解反することと、
前記第1のロールから解反された前記フィルムの第1面に洗浄用組成物を浴びせることと、
前記フィルムの前記第1面の幅全体に前記洗浄用組成物を塗り広げるためのクロスを備える第1の部材に隣接して前記フィルムの前記第1面および前記洗浄用組成物を通過させることと、
前記フィルムの前記第1面から前記インクを除去するためのクロスを備える少なくとも1つの追加部材に隣接して前記フィルムの前記第1面および前記洗浄用組成物を通過させることと、
前記フィルムの前記第1面から前記洗浄用組成物を擦り取ることと
を備える方法。
【請求項2】
前記クロスを備える第1の部材に隣接して前記フィルムの前記第1面および前記洗浄用組成物を通過させることは、隣り合う繊維列間に複数の平行な溝を有するマイクロファイバークロスに隣接して前記フィルムの前記第1面および前記洗浄用組成物を通過させることを備え、
前記平行な溝の各々の溝は、前記フィルムの進行方向に平行な方向に伸びる、請求項1の方法。
【請求項3】
前記クロスを備える第1の部材から前記クロスを備える少なくとも1つの追加部材まで、前記フィルムの前記第1面上で概ね垂直下方に前記洗浄用組成物を移動させることを更に備える、請求項1または2の方法。
【請求項4】
前記クロスを備える少なくとも1つの追加部材に隣接して前記フィルムの前記第1面および前記洗浄用組成物を通過させる前に、前記フィルムの前記第1面に追加の洗浄用組成物を浴びせることを更に備える、請求項1または2の方法。
【請求項5】
前記クロスを備える少なくとも1つの追加部材に隣接して前記フィルムの前記第1面および前記洗浄用組成物を通過させた後、前記フィルムの第1面に溶剤を浴びせることを更に備え、前記溶剤は、アルコール、エーテル、塩化溶剤、および水のうち少なくとも1つを備える、請求項1または2の方法。
【請求項6】
クロスを備える更に追加の部材に隣接して前記フィルムの前記第1面および前記溶剤を通過させることを更に備える、請求項5の方法。
【請求項7】
フィルムからインクを除去するためのシステムであって、
フィルムの第1のロールから前記フィルムを解反し、第1の方向に進行する前記システムに前記フィルムを供給するための手段と、
前記フィルムを曲折させ、前記第1の方向と反対の第2の方向に前記フィルムを進行させるように構成された少なくとも1つのローラと、
前記第1のロールから解反され前記システムに供給された前記フィルムの第1面に洗浄用組成物を浴びせるように構成された少なくとも1つのノズルと、
前記フィルムの前記第1面の幅全体に前記洗浄用組成物を塗り広げるように構成されたクロスを備える第1の部材と、
前記フィルムおよび前記洗浄用組成物が前記第2の方向へ進行した後、前記フィルムの前記第1面から前記インクを除去するように構成されたクロスを備える少なくとも1つの追加部材と、
前記フィルムの前記第1面から前記洗浄用組成物を擦り取るように構成された固定刃部と
を備えるシステム。
【請求項8】
前記クロスを備える第1の部材は、隣接する繊維列間に複数の平行な溝を有するマイクロファイバークロスを備える、請求項7のシステム。
【請求項9】
前記複数の平行な溝の各々の溝は、前記第2の方向に平行な方向に伸びる、請求項8のシステム。
【請求項10】
前記フィルムの前記第1面が、前記クロスを備える第1の部材から前記クロスを備える少なくとも1つの追加部材まで概ね垂直下方に前記洗浄用組成物を運搬するように構成される、請求項7〜9のいずれかのシステム。
【請求項11】
前記フィルムが前記クロスを備える少なくとも1つの追加部材を通過した後、前記フィルムの前記第1面に溶剤を浴びせるように構成された少なくとも1つの追加ノズルを更に備える、請求項7〜9のいずれかのシステム。
【請求項12】
前記フィルムの前記第1面に溶剤を浴びせるように構成された前記少なくとも1つの追加ノズルを前記フィルムが通過した後、前記フィルムの前記第1面に接触するように構成されたクロスを備える別の部材を更に備える、請求項11のシステム。
【請求項13】
前記少なくとも1つのノズルは、ポリウレタンで被覆された少なくとも1つのノズルを備える、請求項7〜9のいずれかのシステム。
【請求項14】
前記第1の部材は、前記クロスを前記フィルムに隣接する一定の位置に保持するように構成された固定具を更に備える、請求項7〜9のいずれかのシステム。
【請求項15】
前記固定具は、前記クロスおよび前記フィルムが、前記洗浄用組成物が通過するV字型の容積を定めるような位置に前記クロスを保持するように構成される、請求項14のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その内容が参照によって本願に組み込まれる、2012年12月21日に出願されたフィルムからインクを除去するための方法およびシステム(Method and System for Removing Ink From Films)と題された米国特許出願第13/725,817号の出願日の利益を主張するものである。
【0002】
本開示の実施形態は、例えば包装や標識に用いられる可撓性フィルム(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、アルミニウム、および他のフィルム)の処理などの化学処理に関する。
【背景技術】
【0003】
ポリマーフィルム、金属フィルム、および金属ポリマーフィルムは、包装材料や標識材料として役立つ様々な特性を有する。例えばそれらのフィルムは、軽量、強靭、液体および気体不浸透性、透明、印刷可能、可撓性、折り畳み可能、可溶性、および/または熱収縮性である。フィルムは一般的にシート状に形成され、処理、運搬、および保管のためにロール状に巻かれる。
【0004】
フィルムは、情報、装飾などを提供するために様々なインクを用いて印刷され得る。例えばロール状のポリマーフィルムは、フィルムを解反し、解反したフィルムにコロナ処理(低温プラズマに浴びせることによる表面修飾)を施し、処理したフィルムにインクを塗布し、別のローラにフィルムを巻きつけることによって印刷され得る。印刷は通常、プラスチックフィルムの場合毎分100リニアフィート(30.4メートル)以上を処理することができる高速印刷機によってなされる。
【0005】
印刷におけるエラー(例えば、ラベルの誤植、オーバラン、アライメントエラー、誤った色処理など)は、エラーが特定され印刷が中断されるまでに大量のフィルムが処理されるために高コストとなる。高速印刷機は高い出力が可能であるため産業的に望ましいが、高速印刷は、エラーが起こった場合、大量の誤印刷フィルムを生じ得る。誤印刷フィルムは通常、未使用フィルムの何分の1かの価格でスクラップとして売却される。それらのフィルムは溶解され再利用され得るが、この処理には費用がかかり、環境的にも問題がある。従って、印刷エラーは、高速印刷機によって生じる場合特に、高コストとなり悪影響を与える。フィルムから効果的にインクを除去する方法を開発するために様々な試みがなされてきた。例えば、2004年5月19日に公開された“Procede de recyclage de support d’impression imprime de type film plastique et installation pour la mise en oeuvre dudit procede”と題された欧州特許明細書EP1414829A1号は、プラスチックフィルムを同時にまたは連続的に洗浄剤に浸けブラシで洗い落とす脱インク処理を記載する。1995年4月6日に公開された“Treatment of Surfaces by Corona Discharge”と題された国際特許出願公報WO95/09256号は、金属シートや金属箔に用いることができる表面洗浄処理を記載する。それらの金属フィルムからグリースやオイルを除去するために放電が用いられる。2006年3月16日に公開された“Erasable Ink, Method of Erasing Image Including the Same, and Method of Recycling Recording Medium Using the Erasing Method”と題された国際特許出願公報WO2006/028263A1号は、記録媒体に印刷することができる消去可能なインクを記載する。インクは、例えばコロナ放電によって発生するような酸化性ガスを浴びせることによって記録媒体から除去され得る。1997年4月22日に発行された“Apparatus for Regenerating Recording Medium”と題された米国特許第5,621,939号は、シートを洗浄液に浸けてトナーを膨潤させ、膨潤したトナーをブラシや布ベルトを用いて除去することによってオーバーヘッドプロジェクタフィルムのシートからトナーを除去するための方法を記載する。その後シートは乾燥および加熱され、カレンダーにかけられる。
【発明の概要】
【0006】
可撓性フィルムからインクを除去するための方法を開示する。方法は、第1のロールからフィルムを解反し、フィルムを処理システムに供給すること、フィルムに洗浄用組成物を浴びせること、およびフィルムから洗浄用組成物を擦り取ることを含む。方法は、フィルムの幅全体に洗浄用組成物を塗り広げるための第1の非研磨布に隣接してフィルムおよび洗浄用組成物を通過させること、およびフィルムから洗浄用組成物を擦り取る前に、フィルムからインクを洗い落とすための少なくとも1つの追加の非研磨布に隣接してフィルムおよび洗浄用組成物を通過させることを含む。方法は、可撓性フィルムのロール全部を継続的に洗浄するように作動し得る。
【0007】
可撓性フィルムからインクを除去するためのシステムは、第1のロールからフィルムを解反し、フィルムをシステムに供給するための手段、フィルムの第1面に洗浄用組成物を浴びせるように構成された少なくとも1つのノズル、およびフィルムの第1面から洗浄用組成物を擦り取るように構成された刃部を含む。そのようなシステムは、フィルムの第1面の幅全体に洗浄用組成物を塗り広げるように構成された第1の非研磨布、およびフィルムから洗浄用組成物を擦り取る前に、フィルムの第1面からインクを洗い落とすように構成された少なくとも1つの追加の非研磨布を含む。そのようなシステムは通常更に、インク除去後に継続してフィルムをロールに巻き直すための手段を含むが、代替としてインク除去後にフィルムを再印刷するための手段を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】フィルムからインクを除去するためのシステムおよびプロセスを示す概略図である。
図2図1の一部の拡大詳細図である。
図3図1に示すシステムの非研磨布の詳細を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書に開示するように、可撓性フィルムからインクを除去するためのプロセスおよび機械は、第1のロールからフィルムを解反すること、洗浄用組成物をフィルムに浴びせること、フィルムから洗浄用組成物を擦り取ること、および第2のロールにフィルムを巻きつけることを含む。プロセスは、フィルムから洗浄用組成物を擦り取る前に、第1の非研磨布に隣接してフィルムおよび洗浄用組成物を通過させること、および少なくとも1つの追加の非研磨布に隣接してフィルムおよび洗浄用組成物を通過させることを含む。非研磨布は、洗浄用組成物を塗り広げ、および/またはフィルムからインクおよび洗浄用組成物を洗い落とす。
【0010】
本明細書で用いられる場合、「フィルム」という用語は、約1mmに満たない厚さおよび約10cm以上の幅を有するポリマー材、金属材、または金属ポリマー材を意味し、含む。本明細書に開示するプロセスにおいて用いることができるポリマーフィルムは、例えば、ポリエステル(例えば、二軸配向ポリエチレンテレフタレート(BOPET))、ポリエチレン(例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、またはエチレンビニルアルコールポリエチレン樹脂(EVOHPE))、ポリプロピレン(例えば、配向ポリプロピレン(OPP)、二軸配向ポリプロピレン(BOPP)、またはキャストポリプロピレン(CPP))、ポリ塩化ビニル(PVC)などを含む。本明細書に開示するプロセスにおいて用いることができる金属フィルムは、例えば、アルミニウム、銅、またはすずを含む。本明細書に開示するプロセスにおいて用いることができる金属ポリマーフィルムは、例えば、金属(例えば、アルミニウム)の薄い層で被覆されたポリマーフィルムを含む。
【0011】
本明細書で用いられる場合、「可撓性」という用語は、構造損傷を伴わずに繰り返し曲げることができることを意味し、含む。例えば、連続可撓性材料は連続プロセスでローラに沿って進行し、可撓性材料の様々な部分が各々異なる方向に同時に進行するように、ローラは可撓性材料を曲折させることができる。
【0012】
本明細書で用いられる場合、「インク」という用語は、フィルムに接着するように形成された不透明または半透明の物質を意味し、含む。インクは例えば、溶剤型インク、水性インク、電子線硬化型インク、紫外線硬化型インク、および2液型インクを含む。
【0013】
可撓性フィルム102からインクを除去するためのシステム100の概略(側面)図が図1に示され、システム100は、インクを除去する方法も示す。システム100において、フィルム102は第1のロール104から解反される。フィルム102は、インク除去プロセス中にフィルム102にシステム100を継続的に通過させるように構成されたローラ106の上下または間を通過する。ローラ106は、フィルム102にシステム10を通過させ、フィルム102の処理中、フィルム102の伸張状態を維持するようにも構成される。ローラ106はフィルム102を上昇させ、一対のローラ106はインク除去中にフィルムが下方へ進行するようにフィルムを曲折させる。
【0014】
図1の一部の拡大詳細図である図2に示すように、通常、フィルム102が2つ以上のローラ106の上下または間を通過しノズル110の付近に到来した後に、第1のノズルセット110によって洗浄用組成物108がフィルム102に塗布される。第1のノズルセット110は、フィルム102の幅にわたって等間隔にある1または複数のノズルの列を含むが、あるいはフィルム102に隣接する単一の溝開口部であってもよい。ノズル110は、洗浄用組成物108を噴射する際の腐食を回避するように選択された材料で形成されるか、あるいは腐食を回避するように選択された材料で被覆され得る。例えばノズル110は、ポリウレタンで被覆されるか、あるいはセラミック製であってよい。いくつかの実施形態において、ノズル110は、各々が通常約1mm未満、約500μm未満、または約200μmにも満たない直径を有するノズルのアレイを含んでよい。
【0015】
洗浄用組成物108は、第1の非研磨布112または他の軟質材料によってフィルム102の幅全体に塗り広げられる。第1の非研磨布112は、フィルム102に洗浄用組成物108が塗布された直後に洗浄用組成物108がフィルム102全体に塗り広げられるように、ノズル110に隣接して配置され得る。例えば第1の非研磨布112は、ノズル110から10cm以内、ノズル110から5cm以内、またはノズル110から僅か1cm以内に配置され得る。第1の非研磨布112は、第1の非研磨布112の上部とフィルム102との間にV字型の間隙またはエアギャップが生じる一方で第1の非研磨布112の下部が洗浄用組成物108の薄い層を間に挟んでフィルム102に寄り掛かるように、支持体または固定具113に固定され得る。フィルム102が第1の非研磨布112を通過した後、洗浄用組成物108は、フィルム102の幅全体に概ね均一に塗り広げられ得る。洗浄用組成物108が塗り広げられる幅は、フィルム102の幅全体であるか、あるいはフィルム102の幅の一部のみであってもよい。例えば、洗浄用組成物108が塗り広げられていない部分がフィルム102の両端に存在し、それらはフィルム102のインクを有さない部分であるか、あるいはフィルム102のインクが保持されるべき部分である。いくつかの実施形態において、フィルム102の一部は、洗浄用組成物108とローラ106とが接触することを制限または防止するために洗浄用組成物108に被覆されないままであってよい。
【0016】
洗浄用組成物108は、界面活性剤、テルペン、水、溶剤、および乳化剤のうち1または複数を有する市販または業務用の洗浄用組成物であってよい。本明細書で用いられる場合、「界面活性剤」という用語は、疎水性基および親水性基の両方を有する化合物を意味し、含む。界面活性剤は、陰イオン性、非イオン性、陽イオン性、両性または双性イオン性の界面活性剤、あるいはそれらの配合剤であってよい。界面活性剤の例は、石鹸、スルホン酸塩、硫酸塩、カルボン酸塩、ホスホン酸塩、リン酸塩、ラウリン酸塩、四級アンモニウム洗浄剤などを含むがそれらに限られない。例えば1981年11月18日に公開された“Cleansers Containing D-Limonene”と題された英国特許明細書第1603047号に記載されるようにいくつかの実施形態において、D−リモネンを含む洗浄用組成物が用いられ得る。洗浄用組成物108は、インク除去プロセス中にフィルム102を損傷することを制限または防止することができる非研磨性材料であるように選択され得る。
【0017】
第1の非研磨布112は通常、織状または不織マイクロファイバークロスである。第1の非研磨布112は、インク除去プロセス中にフィルム102を損傷することを制限または防止するように選択され得る。例えば第1の非研磨布112は、2006年1月4日 に認可された“Superfine microfiber nonwoven web”と題された欧州特許明細書第1314808号に記載されるような布であってよい。図3は、第1の非研磨布112の詳細を示す。第1の非研磨布112は、列300に配置されたループ状または糸状の材料を有してよく、列300の間には空間または間隙302を有する。第1の非研磨布112は、列300および空間または間隙302がフィルム102の進行方向に対して平行に方向付けられた平行な溝を形成するようにシステム100(図1)内で方向付けられ得る。従って、フィルム102が第1の非研磨布112を通過すると、洗浄用組成物108の一部は、空間または間隙302を通って第1の非研磨布112に隣接して進行し得る。そのような方向付けにおいて、第1の非研磨布112の材料の列300および空間または間隙302は、フィルム102を比較的均一に被覆するように洗浄用組成物108を塗り広げる傾向にある。洗浄用組成物108が第1の非研磨布112の幅全体と交差するフィルム102に塗布されると、洗浄用組成物108は、第1の非研磨布112を通過するフィルム102全体を被覆する傾向にある。
【0018】
図1を参照すると、洗浄用組成物108は、フィルム102が下方へ進行する位置でフィルム102に塗布され得る。そのような配置において、洗浄用組成物108は、フィルム102の下方進行および重力の両方によって押し流され、フィルム102を流れ落ちる。フィルム102の速度、第1の非研磨布112と後続する処理機構との間の距離、および洗浄用組成物108の粘度は、選択された期間フィルム102が洗浄用組成物108を浴びるように選択され得る。例えばフィルム102は、例えば約1秒〜約10秒など、約0.1秒〜約60秒の期間、洗浄用組成物108を浴びてよい。洗浄用組成物108のインクを除去する能力は、フィルム102が洗浄用組成物108を浴びる時間に依存し得る。
【0019】
フィルム102が洗浄用組成物108を最初に浴びた後、フィルム102が下方へ進行する間に追加の洗浄用組成物108が追加のノズルセット114によってフィルム102に塗布され得る。フィルム102はその後、追加の非研磨布116の隣接を通過する。追加の非研磨布116は、上述したような第1の非研磨布112と同様であってよいが、フィルム102の進行方向に対しほぼ平行に配置され得る。例えば追加の非研磨布116は、ブロックの周囲に部分的に巻かれ、フィルム102はブロックの表面に沿って通過してよい。追加の非研磨布116は、フィルム102が追加の非研磨布116を通過するとフィルム102からインクを洗い落とす。
【0020】
洗浄用組成物108の別の部分(例えば、洗浄用組成物108の第3の部分)は、別の非研磨布116が後続し得る別のノズルセット114(第3のノズルセット)によってフィルム102に塗布され得る。非研磨布116が後続する一連の洗浄用組成物108は、フィルム102からインクを十分に除去するために必要な回数分繰り返され得る。フィルム102は、洗浄用組成物108を塗布する間、一様に下方へ進行し続けてよい。例えば図1に示すように、システムは4つのノズルセット110、114および4つの非研磨布112、116を含んでよい。第1の非研磨布112は主に洗浄用組成物108を塗り広げるために構成され、追加の非研磨布116は主にフィルム102からインクを除去する(例えば、洗い落とす、拭き取る、擦り取るなど)ために構成され得る。
【0021】
フィルム102からインクを洗い落とした後、ローラ106がフィルム102を水平方向に曲折させ、固定刃部118がフィルム102から浮き出たインク材および洗浄用組成物108を収集容器120へ擦り取る。フィルム102が水平方向にあるので、洗浄用組成物108および浮き出たインク材は刃部118から落下し収集容器120への斜面を流れ落ち得る。ポンプ122は、ノズルセット110、114を遡る洗浄用組成物108を再利用する。収集容器120またはポンプ122は、洗浄用組成物108からインク材を分離するための手段を含んでよい。例えば収集容器120は、比重に基づいて洗浄用組成物108からインク材が凝固するのに十分なほど大きくてよい。いくつかの実施形態において、ポンプ122は、洗浄用組成物108からインク材を除去するためのフィルタを含んでよい。
【0022】
洗浄用組成物108を用いてフィルム102を洗い落とした後、フィルム102は、別の洗浄用組成物124を用いて再び洗い落され得る。1つまたは複数のローラ106は、下方へ向かう垂直方向にフィルム102を曲折させ得る。洗浄用組成物124はノズルセット126によってフィルム102に塗布され、別の非研磨布128が後続する。非研磨布128が後続する一連の洗浄用組成物124は、フィルム102からインクを十分に除去するために必要な回数分繰り返され、フィルムが概ね下方へ進行する間に実行され得る。例えば図1に示すように、システムは1つのノズルセット126および1つの非研磨布128を含んでよい。
【0023】
ローラ106はフィルム102を再び水平方向に曲折させ、別の固定刃部130がフィルム102から浮き出たインク材および洗浄用組成物124を収集容器132へ擦り取る。フィルム102が水平方向にあるので、洗浄用組成物124および浮き出たインク材は刃部130から落下し収集容器132への斜面を流れ落ち得る。ポンプ134は、ノズルセット126を遡る洗浄用組成物124を再利用する。収集容器132またはポンプ134は、洗浄用組成物124からインク材を分離するための手段を含んでよい。例えば収集容器132は、比重に基づいて洗浄用組成物124からインク材が凝固するのに十分なほど大きくてよい。いくつかの実施形態において、ポンプ134は、洗浄用組成物124からインク材を除去するためのフィルタを含んでよい。
【0024】
洗浄用組成物124は、上述したように、洗浄用組成物108と類似し得る。しかしながら、フィルム102がシステム100を通過する際、フィルム102が漸進的に清浄な液体に接触するように、洗浄用組成物124は洗浄用組成物108とは個別に保持され得る。洗浄用組成物124が塗布される前に、フィルム102はインクの一部が既に洗い落とされているので、洗浄用組成物124は、最初の洗浄に用いた洗浄用組成物108よりも清浄に保たれ得る。システム100が一定の期間作動した後、洗浄用組成物124は洗浄用組成物108の一部または全部と入れ替えるために用いられ、新たな洗浄用組成物(例えば、未使用の洗浄用組成物または浄化処理後の洗浄用組成物)が洗浄用組成物124と入れ替えるために用いられ得る。
【0025】
洗浄用組成物124を用いてフィルム102を洗い落とした後、フィルム102は、例えばアルコール、エーテル、塩化溶剤、水、またはそれらの任意の化合物などの溶剤136を用いてゆすがれ得る。例えば溶剤136は一般的に液体であり、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、水、および/または脱イオン水を含んでよい。1つまたは複数のローラ106は、下方へ向かう垂直方向にフィルム102を再び曲折させ得る。溶剤136はノズルセット138によってフィルム102に塗布され、別の非研磨布140が後続する。非研磨布140が後続する一連の溶剤136は、フィルム102からインクおよび洗浄用組成物を十分に除去するために必要な回数分繰り返され、フィルムが概ね下方進行する間に実行され得る。例えば図1に示すように、システムは、1つのノズルセット138および1つの非研磨布140を含んでよい。
【0026】
ローラ106はフィルム102を再び水平方向に曲折させ、別の固定刃部142がフィルム102から溶剤136、洗浄用組成物、およびインクを除去するために擦り取り、それらは収集容器144に溜まる。フィルム102が水平方向にあるので、溶剤136、洗浄用組成物、および浮き出たインク材は刃部142から落下し、収集容器144への斜面を流れ落ち得る。溶剤ポンプ146は、ノズル138を遡る溶剤136を再利用する。収集容器144または溶剤ポンプ146は、溶剤136からインク材および洗浄用組成物を分離するための手段を含んでよい。例えば収集容器144は、比重に基づいて溶剤136からインク材および洗浄用組成物が凝固するために十分なほど大きくてよい。いくつかの実施形態において、溶剤ポンプ146は、溶剤136からインク材または洗浄用組成物を除去するためのフィルタを含んでよい。
【0027】
溶剤136は、フィルム102が刃部142を通過した後フィルム102に残っている溶剤136の全てが周囲温度で急速に蒸発するように、低い沸騰点を有するように選択され得る。従ってフィルム102は、刃部142を通過した後、乾燥しているか、ほぼ乾燥している(すなわち、溶剤が残っていない)。
【0028】
フィルム102は、非研磨布112、116、128、140に接触する前に、洗浄用
組成物108、124、および溶剤136を浴びる間中、下方進行し得る。いくつかの実
施形態において、フィルム102の合計下方進行距離は2m〜20m、例えば約3m〜1
0mであってよい。例えばフィルム102は、第1の洗浄用組成物108が塗布される点
から、フィルム102から溶剤136を除去するように構成された刃部142まで、シス
テム100内を合計約5m下方進行し得る。
【0029】
刃部142を通過した後、フィルム102は、印刷プロセスに再利用するために第2の(モーター付き)ロール148へ途切れなく進行してよい。(例えば、特定のフィルム102に関して洗浄プロセスが完了した後に)第2のロール148にフィルム102を巻いた後、第2のロール148は、保管場所、印刷システム、切断システムなどへ搬送され得る。第2のロール148は、システム100を通る経路に沿ってフィルム102を牽引する駆動力を提供し得る。
【0030】
刃部118、130、142は、インク、洗浄用組成物108、124、および溶剤136がフィルム102から除去されるように、フィルム102の幅全体に均一に力を加える。刃部118、130、142は、ポリマー材または金属材で形成され、鋳造、圧搾、モールディング、スタンピングなどによって成形され得る。刃部118、130、142の設計は、フィルム102からのインク、洗浄用組成物108、124、および溶剤136の除去を促すような任意の選択された強度を実現するように選択され得る。刃部118、130、142は、洗浄するフィルム102の幅に概ね等しい幅、フィルムの幅全体を洗浄するのではない場合はフィルム102の一部の幅に概ね等しい幅、あるいはフィルム102の幅または洗浄する一部の幅よりも大きい幅を有するように選択され得る。いくつかの実施形態において、刃部118、130、142は、成形ポリウレタンから形成され得る。
【0031】
いくつかの実施形態において、フィルム102の端部にインク材が残り得る。例えば、ローラ106や他の処理装置の汚染を回避するために、洗浄プロセス中、洗浄用組成物108、124はフィルム102の端部には塗り広げられないことがある。そのような実施形態において、フィルム102の一端または両端部分は、当該技術において知られる従来のスライス技術などによって洗浄プロセス後に切り取られ得る。例えば、概ね1mm、2mm、5mm、10mm、また時には20mmの材料がフィルム102の一端または両端から切り取られ得る。
【0032】
いくつかの実施形態において、システム100は、当該技術において知られているが本明細書では詳しく説明しない印刷システムに連結され得、それによってシステム100は印刷システムに洗浄後の可撓性フィルムを継続的に供給される。そのような実施形態において、システム100を通過するフィルム102の供給が、印刷システムのニーズに一致して提供することが予想される場合、第2のロール148は任意選択的に省略され得る。そのような実施形態において、印刷システムが、システム100を通るフィルム102を牽引する駆動力を提供してよい。
【0033】
システム100は、フィルム102の張力を維持するために十分な数のローラ106を含む。フィルム102の張力により、非研磨布112、116、128、140および刃部118、130、142がフィルム102に力を加えることが可能になる。ローラ106はまた、フィルム102の進行方向も維持する。ローラ106、非研磨布112、116、128、140、および/または刃部118、130、142の配置を変え、フィルム102に加わる力の量(例えば、張力)を変えることができる。例えば、濃く印刷されたフィルムや比較的強く接着したインクを有するフィルムを洗浄するために張力が強くされ、あるいは比較的薄いフィルムまたは弱いフィルムを損傷せずに洗浄するために張力が弱くされ得る。
【0034】
システム100は、当該技術において知られており本明細書では詳しく説明されない様々な制御装置も含む。例えばシステム100は、モーター、弁、ばね、センサ、コンピュータ制御装置などを含んでよい。いくつかの実施形態において、例えば溶剤136の蒸気の一部を集めるため、または可動部品や危険材料から作業員を保護するために、システム100の一部は閉鎖され得る。
【0035】
システム100は、可撓性フィルムからインクを除去するために可撓性フィルムを継続的に処理するように作動することができる。例えばシステム100は、少なくとも毎分50リニアメーターのフィルム(50m/分)、100m/分、200m/分、また時には500m/分で処理するように作動可能である。
【0036】
上述したようなシステム100は、フィルム102の片面からインクを除去するように構成される。すなわち、洗浄用組成物108、124、溶剤136、非研磨布112、116、128、140、および刃部118、130、142は全て、フィルム102の同じ面に接触してよい。フィルム102の両面からインクを洗浄するために、フィルム102は、システム100を2回通過するか、あるいは連続した2つのシステム100を通過し得る。あるいは洗浄システムは、第2のロール148にフィルム102を巻く前かその後に、反対側の面からインクを除去するように上述したものと同様に構成された追加のノズル、非研磨布、刃部、ローラなどを含んでもよい。フィルム102の両面は連続して洗浄される(例えば、一方の面は、他方の面に洗浄用組成物を塗布する前に概ね洗浄される)か、あるいは同時に洗浄され得る(例えば、洗浄用組成物が両面に同時に塗布される)。
【実施例】
【0037】
清浄かつ可撓性の、約1.0mの幅を有する、ロール状の二軸配向ポリプロピレン(BOPP)フィルムは、その表面の約75%にインクが付着するように一方の面に印刷されたデザインを有する。BOPPフィルムは、図1に示すシステム100のようなシステムにおいて処理される。D−リモネンを含む洗浄液および水がBOPPフィルムに塗布され、マイクロファイバークロスによってBOPPフィルムの印刷面の幅全体に概ね塗り広げられる。フィルムは、BOPPフィルムの印刷面に追加の洗浄液が塗布されるまでに約毎分100mでおよそ1.5m下方進行する。下方経路を進むと、BOPPフィルムの印刷面は、BOPPフィルムからインクの一部を洗い落とす第2のマイクロファイバークロスを通過する。BOPPフィルムの印刷面に更なる洗浄液が塗布され、第3のマイクロファイバークロスがインクを更に洗い落とす。BOPPフィルムの印刷面に更なる洗浄液が塗布され、第4のマイクロファイバークロスがBOPPフィルムからまた更にインクを洗い落とす。BOPPフィルムはローラを通過した後水平に進行し、洗浄液および浮き出たインクはその後第1のポリウレタン刃部によってBOPPフィルムから除去される。洗浄液はインクから分離され、システム内で再利用される。
【0038】
BOPPフィルムは再び垂直に進行し、別の洗浄液がBOPPフィルムに塗布される。第5のマイクロファイバークロスがBOPPフィルムからインクを洗い落とす。BOPPフィルムはローラを通過した後水平に進行し、洗浄液および浮き出たインクはその後第2のポリウレタン刃部によってBOPPフィルムから除去される。洗浄液はインクから分離され、システム内で再利用される。
【0039】
BOPPフィルムは再び垂直に進行し、70%のイソプロピルアルコールおよび30%の水から成る溶液がBOPPフィルムに塗布される。第6のマイクロファイバークロスがBOPPフィルムを洗い落とす。BOPPフィルムはローラを通過した後水平に進行し、アルコールおよび水の溶液、残っていた洗浄液、および浮き出たインクはその後第3のポリウレタン刃部によってBOPPフィルムから除去される。アルコールおよび水の溶液はインクから分離され、システム内で再利用される。洗浄プロセス中のBOPPフィルムの合計下方進行距離は約5mである。
【0040】
BOPPフィルムは、後の再印刷および再利用のために再びロール状にされる。プロセスは、BOPPフィルムの両端に僅かな染料を残してBOPPフィルムの印刷面からほぼ全てのインクを除去し、その両端は切り取ることによって任意選択的に除去される。BOPPフィルムにインクまたは洗浄液の残留物はほぼなくなる。BOPPフィルムからインクを除去することによって、BOPPフィルムは、溶解することによる再利用ではなく、包装用品として再利用するために適切になり得る。例えば、BOPPフィルムは、食品用包装用品として十分なほど清浄になり得る。
【0041】
本開示を教示されると、当業者は、容易に入手可能な市販の部品(例えば、モーター、ロール、ポンプ、およびノズル)を用いて本システムを製造することが可能であろう。
図1
図2
図3