特許第6012902号(P6012902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6012902カンプトテシン類高分子誘導体の医薬製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6012902
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】カンプトテシン類高分子誘導体の医薬製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/48 20060101AFI20161011BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20161011BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20161011BHJP
   A61K 47/34 20060101ALI20161011BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20161011BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20161011BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20161011BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   A61K47/48
   A61K31/4745
   A61P35/00
   A61K47/34
   A61K47/10
   A61K9/19
   A61K47/26
   A61P43/00 123
【請求項の数】4
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2016-506023(P2016-506023)
(86)(22)【出願日】2015年10月16日
(86)【国際出願番号】JP2015079314
【審査請求日】2016年4月22日
(31)【優先権主張番号】特願2014-263848(P2014-263848)
(32)【優先日】2014年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 眞也
(72)【発明者】
【氏名】青木 進
【審査官】 高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/039869(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/142328(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/157279(WO,A1)
【文献】 GU, Q. et al.,SN-38 loaded polymeric micelles to enhance cancer therapy.,NANOTECHNOLOGY,2012年,Vol.23,205101,ISSN 0957-4484
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/4745
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレングリコールセグメントとカンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットを含むポリグルタミン酸セグメントが連結した、一般式(1)
【化1】
[式中、Rは水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキル基を示し、Aは炭素数(C1〜C6)アルキレン基であり、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アシル基及び置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルコキシカルボニル基からなる群から選択される1種を示し、Rは水酸基及び/または−N(R)CONH(R)を示し、前記R及び前記Rは同一でも異なっていてもよく、三級アミノ基で置換されていてもよい炭素数(C1〜C8)アルキル基を示し、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキル基及び置換基を有していてもよいシリル基からなる群から選択される1種を示し、Rは水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキル基を示し、tは90〜340の整数を示し、d及びeはそれぞれ整数であり、d+eは8〜40の整数を示し、d+eに対するdの割合が20〜70%、eの割合が30〜80%であり、前記ポリグルタミン酸セグメントは、カンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットとR基が結合したグルタミン酸ユニットがそれぞれ独立して、ランダムに配列したポリグルタミン酸セグメント構造である。]で表されるブロック共重合体を含有する医薬製剤であって、
pH調整剤を含み、
前記医薬製剤の水溶液中において、複数の前記ブロック共重合体は会合体を形成し、
前記医薬製剤を前記カンプトテシン誘導体含量濃度で1mg/mLの水溶液とした場合における、該水溶液のpHが3.0〜5.0であって、
前記医薬製剤を遮光下40℃で1週間保存した後において、前記医薬製剤の前記会合体の総分子量変化率が50%以下である、
凍結乾燥製剤である、医薬製剤。
【請求項2】
ポリエチレングリコールセグメントとカンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットを含むポリグルタミン酸セグメントが連結した、一般式(1)
【化2】
[式中、Rは水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキル基を示し、Aは炭素数(C1〜C6)アルキレン基であり、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アシル基及び置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルコキシカルボニル基からなる群から選択される1種を示し、Rは水酸基及び/または−N(R)CONH(R)を示し、前記R及び前記Rは同一でも異なっていてもよく、三級アミノ基で置換されていてもよい炭素数(C1〜C8)アルキル基を示し、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキル基及び置換基を有していてもよいシリル基からなる群から選択される1種を示し、Rは水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキル基を示し、tは90〜340の整数を示し、d及びeはそれぞれ整数であり、d+eは8〜40の整数を示し、d+eに対するdの割合が20〜70%、eの割合が30〜80%であり、前記ポリグルタミン酸セグメントは、カンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットとR基が結合したグルタミン酸ユニットがそれぞれ独立して、ランダムに配列したポリグルタミン酸セグメント構造である。]で表されるブロック共重合体を含有する医薬製剤であって、
前記医薬製剤の水溶液中において、複数の前記ブロック共重合体は会合体を形成し、
pH調整剤を含み、
前記医薬製剤を前記カンプトテシン誘導体含量濃度で1mg/mLの水溶液とした場合における、該水溶液のpHが3.0〜5.0であって、
前記医薬製剤を遮光下40℃で1週間保存した後において、前記医薬製剤の前記会合体の動的光散乱方式により測定される粒子径の変化率が0.25倍以上で5倍以下である、
凍結乾燥製剤である、医薬製剤。
【請求項3】
ポリエチレングリコールセグメントとカンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットを含むポリグルタミン酸セグメントが連結した、一般式(1)
【化3】
[式中、Rは水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキル基を示し、Aは炭素数(C1〜C6)アルキレン基であり、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アシル基及び置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルコキシカルボニル基からなる群から選択される1種を示し、Rは水酸基及び/または−N(R)CONH(R)を示し、前記R及び前記Rは同一でも異なっていてもよく、三級アミノ基で置換されていてもよい炭素数(C1〜C8)アルキル基を示し、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキル基及び置換基を有していてもよいシリル基からなる群から選択される1種を示し、Rは水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキル基を示し、tは90〜340の整数を示し、d及びeはそれぞれ整数であり、d+eは8〜40の整数を示し、d+eに対するdの割合が20〜70%、eの割合が30〜80%であり、前記ポリグルタミン酸セグメントは、カンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットとR基が結合したグルタミン酸ユニットがそれぞれ独立して、ランダムに配列したポリグルタミン酸セグメント構造である。]で表されるブロック共重合体を含有する医薬製剤であって、
前記医薬製剤の水溶液中において、複数の前記ブロック共重合体は会合体を形成し、
pH調整剤を含み、
前記医薬製剤を前記カンプトテシン誘導体含量濃度で1mg/mLの水溶液とした場合における、該水溶液のpHが3.0〜5.0であって、
前記医薬製剤を遮光下40℃で1週間保存した後において、前記医薬製剤の前記会合体の総分子量変化率が50%以下であり、且つ
前記医薬製剤を遮光下40℃で1週間保存した後において、前記医薬製剤の前記会合体の動的光散乱方式により測定される粒子径の変化率が0.25倍以上で5倍以下である、
凍結乾燥製剤である、医薬製剤。
【請求項4】
糖類及び/またはポリオールを含む請求項1〜の何れか一項に記載の医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カンプトテシン誘導体を高分子担体に結合させた高分子化カンプトテシン誘導体の、製剤安定性を向上させた医薬製剤組成物に関する。該高分子化カンプトテシン誘導体は、水溶液中において複数の該分子同士による会合性を有してナノ粒子を形成する物性を有する。このようなナノ粒子形成性を有する高分子化カンプトテシン誘導体を含有する医薬製剤において、ナノ粒子形成性が長期に亘り維持される保存安定性に優れた医薬製剤に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
医薬品の薬効を有効に発現させるためには、薬理活性化合物を生体内の適切な部位に適切な濃度及び時間で作用させることが求められる。特に殺細胞性抗腫瘍剤は、静脈内投与等によって全身投与された場合に、全身へ広範に分布して細胞増殖阻害作用を発揮する。この際、癌細胞と正常細胞の区別がなく薬理活性作用が発揮されるため、正常細胞に対する作用により重篤な副作用をもたらすと言われている。したがって、副作用の低減のためには、抗腫瘍剤を腫瘍患部へ送達する技術が重要である。そこで、抗腫瘍剤を腫瘍組織へ選択的に送達し、適切な薬剤濃度及び薬剤感作時間で作用させるための薬物動態の制御方法が求められている。
【0003】
薬物動態を制御する方法として、分子量に基づく薬物動態特性を利用する方法が知られている。すなわち、生体適合性高分子物質を血中投与すると、腎排泄が抑制され、血中半減期が長く維持される。更に、腫瘍組織は高分子物質の組織透過性が高く、またその回収機構が十分に構築されていないことから、高分子物質は相対的に腫瘍組織内に高濃度に分布して蓄積することが知られている。そこで、生体適合性高分子物質を高分子担体として、これに抗腫瘍剤を結合させた、高分子化抗腫瘍剤の開発が行われている。
高分子化抗腫瘍剤として、ポリエチレングリコールセグメントとポリグルタミン酸セグメントを連結させたブロック共重合体を高分子担体として、該ポリグルタミン酸セグメントの側鎖カルボン酸に、様々な抗腫瘍剤を結合させた高分子化抗腫瘍剤が報告されている。特許文献1には、該ブロック共重合体に7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンを結合させた医薬品が開示されている。また、他の抗腫瘍剤としてシチジン系抗腫瘍剤のブロック共重合体結合体(特許文献2)、コンブレタスタチンA4のブロック共重合体結合体(特許文献3)、HSP90阻害剤のブロック共重合体結合体(特許文献4)などが知られている。これらの高分子化抗腫瘍剤は、有効成分として用いられている低分子の抗腫瘍性化合物と比較して、抗腫瘍効果が増強されることが記載されている。
【0004】
これら抗腫瘍剤のブロック共重合体結合体は、該抗腫瘍剤の水酸基と該ブロック共重合体の側鎖カルボン酸をエステル結合により結合させた高分子化抗腫瘍剤である。これらは、生体内に投与されると該エステル結合が一定速度で開裂して抗腫瘍剤を遊離させることで、抗腫瘍活性作用を発揮させるプロドラッグである。
また、これらの抗腫瘍剤が結合したブロック共重合体は、該抗腫瘍剤が結合したブロック領域が疎水性である場合は、水溶液中において該抗腫瘍剤結合領域が疎水性相互作用に基づく会合性を示し、複数の該ブロック共重合体同士が凝集することによる会合体を形成する物性を有する。
この高分子化抗腫瘍剤による会合性凝集体は、レーザー光等を用いた光散乱測定により検出でき、その光散乱強度の値により会合性凝集体の物性を測定することができる。すなわち、光散乱強度を測定値として会合性凝集体の物性規定ができる。例えば、前記の抗腫瘍剤が結合したブロック共重合体は、光散乱分析法による粒径分析において、数ナノメートル〜数100ナノメートルのナノ粒子を形成する物性である。また、同様に光散乱強度測定に基づく総分子量測定において、該抗腫瘍剤が結合したブロック共重合体の会合性凝集体は、総分子量が数100万以上の会合体であることが測定できる。
これらの会合性を有する高分子化抗腫瘍剤は、生体内において前記ナノ粒子として挙動して、前記のような薬物動態を発揮して腫瘍組織へ高濃度で分布し、そこで抗腫瘍剤を遊離させることにより、高い抗腫瘍効果が発揮されるものである。したがって、これらの高分子化抗腫瘍剤は、ナノ粒子化される会合性がその性能発揮のための重要因子である。
【0005】
前述したような薬剤−高分子結合医薬品は、高分子担体の分子量に基づく薬物動態と、結合薬剤を活性体として徐放的に放出させることにより、高い薬理活性と副作用の低減を図る医薬品である。このため、このような薬剤−高分子結合医薬品は、製剤として保存した状態において高分子担体の分子量変化が少ない、すなわち低分子化を抑制した保存安定性に優れた製剤とする必要がある。
薬剤−高分子結合医薬品において保存安定性を考慮した製剤として、例えば、特許文献5及び6に、カルボキシル基を有する多糖類とカンプトテシン誘導体の結合体を、糖又は糖アルコール及びpH調整剤を含む医薬製剤とすることで、高分子担体の分子量変化やカンプトテシン誘導体の遊離を抑制することを開示している。
しかしながら、特許文献5及び6に記載の薬剤−高分子結合医薬品は水溶性高分子担体に薬剤が分散して結合していることからナノ粒子様の会合体を形成しないと考えられ、高分子担体の分子量が性能発揮因子であると思われる。このため、該担体の化学結合の開裂といった化学的分解反応による低分子化が課題であり、この抑制を目的とするものである。しかしながら、会合性凝集体によるナノ粒子化による高分子化を性能管理因子とするブロック共重合体による高分子化抗腫瘍剤について、ナノ粒子形成能を制御することを課題とした安定な医薬製剤は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2004/39869号
【特許文献2】国際公開第2008/056596号
【特許文献3】国際公開第2008/010463号
【特許文献4】国際公開第2008/041610号
【特許文献5】国際公開第2002/005855号
【特許文献6】特表2005−523329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、カンプトテシン誘導体を高分子担体に結合させた高分子化カンプトテシン誘導体の、ナノ粒子形成性が長期に亘って維持された製剤的に安定性が向上した医薬製剤組成物を提供することを課題とする。特に該高分子化カンプトテシン誘導体は会合性を有し、水溶液中において複数の該高分子化カンプトテシン誘導体が凝集することにより会合体を形成し、ナノ粒子を形成することが性能上の重要因子である。このようなナノ粒子形成性の高分子化カンプトテシン誘導体を含有する医薬製剤において、会合体ナノ粒子形成性を指標とした保存安定性に優れた医薬製剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者はポリエチレングリコールセグメントとカンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットを含むポリグルタミン酸セグメントが連結したブロック共重合体による高分子化カンプトテシン誘導体において、この水溶液を特定pH範囲とすることで、複数の該高分子化カンプトテシン誘導体の凝集による会合体形成によるナノ粒子の形成性が制御された保存安定性に優れた医薬製剤が得られることを見出し、発明を完成させるに至った。すなわち、本願は以下の発明を要旨とする。
【0009】
[1] ポリエチレングリコールセグメントとカンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットを含むポリグルタミン酸セグメントが連結した、一般式(1)
【化1】
[式中、Rは水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキル基を示し、Aは炭素数(C1〜C6)アルキレン基であり、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アシル基及び置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルコキシカルボニル基からなる群から選択される1種を示し、Rは水酸基及び/または−N(R)CONH(R)を示し、前記R及び前記Rは同一でも異なっていてもよく、三級アミノ基で置換されていてもよい炭素数(C1〜C8)アルキル基を示し、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキル基及び置換基を有していてもよいシリル基からなる群から選択される1種を示し、Rは水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキル基を示し、tは45〜450の整数を示し、d及びeはそれぞれ整数であり、d+eは6〜60の整数を示し、d+eに対するdの割合が1〜100%、eの割合が0〜99%であり、前記ポリグルタミン酸セグメントは、カンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットとR基が結合したグルタミン酸ユニットがそれぞれ独立して、ランダムに配列したポリグルタミン酸セグメント構造である。]で表されるブロック共重合体を含有する医薬製剤であって、
前記医薬製剤の水溶液中において、複数の前記ブロック共重合体は会合体を形成し、
前記医薬製剤を前記カンプトテシン誘導体含量濃度で1mg/mLの水溶液とした場合における、該水溶液のpHが2.4〜7.0であって、
前記医薬製剤を遮光下40℃で1週間保存した後において、前記医薬製剤の前記会合体の総分子量変化率が50%以下である、医薬製剤。
【0010】
また、本発明の医薬製剤は別の製剤安定性評価にて規定することができる。
[2] ポリエチレングリコールセグメントとカンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットを含むポリグルタミン酸セグメントが連結した、一般式(1)
【化2】
[式中、Rは水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキル基を示し、Aは炭素数(C1〜C6)アルキレン基であり、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アシル基及び置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルコキシカルボニル基からなる群から選択される1種を示し、Rは水酸基及び/または−N(R)CONH(R)を示し、前記R及び前記Rは同一でも異なっていてもよく、三級アミノ基で置換されていてもよい炭素数(C1〜C8)アルキル基を示し、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキル基及び置換基を有していてもよいシリル基からなる群から選択される1種を示し、Rは水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキル基を示し、tは45〜450の整数を示し、d及びeはそれぞれ整数であり、d+eは6〜60の整数を示し、d+eに対するdの割合が1〜100%、eの割合が0〜99%であり、前記ポリグルタミン酸セグメントは、カンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットとR基が結合したグルタミン酸ユニットがそれぞれ独立して、ランダムに配列したポリグルタミン酸セグメント構造である。]で表されるブロック共重合体を含有する医薬製剤であって、
前記医薬製剤の水溶液中において、複数の前記ブロック共重合体は会合体を形成し、
前記医薬製剤を前記カンプトテシン誘導体含量濃度で1mg/mLの水溶液とした場合における、該水溶液のpHが2.4〜7.0であって、
前記医薬製剤を遮光下40℃で1週間保存した後において、前記医薬製剤の前記会合体の動的光散乱方式により測定される粒子径の変化率が0.25倍以上で5倍以下である、医薬製剤。
【0011】
本発明に係るポリエチレングリコールセグメントとカンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットを含むポリグルタミン酸セグメントが連結したブロック共重合体は、カンプトテシン誘導体が結合した該ポリグルタミン酸セグメントが該ブロック共重合体において相対的に疎水性であることから、水溶液中において疎水性相互作用に基づく会合性を示し、複数の該ブロック共重合体が凝集することによる会合体であるナノ粒子を形成する。これは、生体内に投与されると、ナノ粒子に基づく薬物動態を示し、そこから一定の速度で該カンプトテシン誘導体を遊離させて、薬理活性を発揮させることを指向した医薬品である。このため、高分子化カンプトテシン誘導体である該ブロック共重合体は、会合体形成によりナノ粒子化される物性が性能発揮のための重要因子である。
【0012】
該会合体は、レーザー光を用いた光散乱強度測定により会合体形成性を評価することができる。例えば、光散乱強度をそのまま用いて会合体の形成性の物性値として用いることができ、通常、該ブロック共重合体は光散乱強度値として数千〜数10万cpsの測定値が得られ、会合体であることが認められる。また、この光散乱強度値から、ポリエチレングリコール標準物質を基準とした該会合体の分子量を概算することが可能である。この測定方法によると、該ブロック共重合体は総分子量として数100万以上の会合体であると算出される。一方、動的光散乱分析による粒径分析によると、該ブロック共重合体は数ナノメートル〜数100ナノメートルの粒径を有するナノ粒子体を形成する物性である。
したがって、該ブロック共重合体は、生体内に投与されるとナノ粒子としての物性に基づく特異的な薬物動態を発揮して腫瘍組織へ高濃度で分布し、そこで抗腫瘍剤を遊離させることにより優れた抗腫瘍効果を発揮する高分子化カンプトテシン誘導体である。このため、会合体形成によりナノ粒子化される物性が性能発揮のための重要因子である。本発明は、該高分子化カンプトテシン誘導体を含む医薬製剤において、性能上の重要因子であるナノ粒子形成性が制御され、製剤保存下において安定的に維持される安定性の高い医薬製剤を調製することを可能にするものである。
【0013】
また本発明の医薬製剤は、前記[1]及び[2]を兼ね備えた物性として規定することができる。
[3] ポリエチレングリコールセグメントとカンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットを含むポリグルタミン酸セグメントが連結した、一般式(1)
【化3】
[式中、Rは水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキル基を示し、Aは炭素数(C1〜C6)アルキレン基であり、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アシル基及び置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルコキシカルボニル基からなる群から選択される1種を示し、Rは水酸基及び/または−N(R)CONH(R)を示し、前記R及び前記Rは同一でも異なっていてもよく、三級アミノ基で置換されていてもよい炭素数(C1〜C8)アルキル基を示し、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキル基及び置換基を有していてもよいシリル基からなる群から選択される1種を示し、Rは水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキル基を示し、tは45〜450の整数を示し、d及びeはそれぞれ整数であり、d+eは6〜60の整数を示し、d+eに対するdの割合が1〜100%、eの割合が0〜99%であり、前記ポリグルタミン酸セグメントは、カンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットとR基が結合したグルタミン酸ユニットがそれぞれ独立して、ランダムに配列したポリグルタミン酸セグメント構造である。]で表されるブロック共重合体を含有する医薬製剤であって、
前記医薬製剤の水溶液中において、複数の前記ブロック共重合体は会合体を形成し、
前記医薬製剤を前記カンプトテシン誘導体含量濃度で1mg/mLの水溶液とした場合における、該水溶液のpHが2.4〜7.0であって、
前記医薬製剤を遮光下40℃で1週間保存した後において、前記医薬製剤の前記会合体の総分子量変化率が50%以下であり、且つ
前記医薬製剤を遮光下40℃で1週間保存した後において、前記医薬製剤の前記会合体の動的光散乱方式により測定される粒子径の変化率が0.25倍以上で5倍以下である、医薬製剤。
すなわち、本発明の医薬製剤は、複数の該ブロック共重合体が凝集することによる会合体であるナノ粒子を形成が保存下において維持されるものであり、該会合性の総分子量及び粒子径の変化が少ない、物性変化が少なく保存安定性に優れた医薬製剤である。
【0014】
[4] 凍結乾燥製剤である前記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の医薬製剤。
本発明の医薬製剤は、凍結乾燥製剤とすることでナノ粒子形成性を安定に制御して維持しやすいことから望ましい製剤形である。
【0015】
[5] pH調整剤を含み、前記カンプトテシン誘導体含量濃度で1mg/mLの水溶液とした場合における該水溶液のpHが2.4〜7.0に調整される前記[1]〜[4]の何れか一項に記載の医薬製剤。
本発明は、酸性添加剤、塩基性添加剤又は酸性添加剤と塩基性添加剤の混合物であるpH調整剤を添加して、当該医薬製剤を特定pHに設定するものであって良い。
[6] 糖類及び/又はポリオールを含む前記[1]〜[5]の何れか一項に記載の医薬製剤。
本発明は、糖類及び/又はポリオールを添加することにより、よりナノ粒子形成能を制御した医薬製剤を提供することができることから、より好ましい。また、凍結乾燥製剤とした場合、該医薬製剤を水溶液に再構成する際の溶解速度を高めることができることから、より好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るポリエチレングリコールセグメントとカンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットを含むポリグルタミン酸セグメントが連結したブロック共重合体は、会合凝集体によるナノ粒子形成が薬効発揮において必須の性能であり、特に所望の会合状態のナノ粒子を形成できることが重要である。本発明の医薬製剤は、会合凝集体を形成する該ブロック共重合体を有効成分とする医薬製剤において、保存安定性に優れた医薬製剤を提供することができる。すなわち、製剤保存下において、該ブロック共重合体は所望の会合状態が維持され、医薬品として使用する該医薬製剤水溶液は、所望の会合性のナノ粒子形成体として用いることでき、医薬品としての有効性が保証される医薬製剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、ポリエチレングリコールセグメントとカンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットを含むポリグルタミン酸セグメントが連結したブロック共重合体の安定化製剤を調製するに当たり、前記医薬製剤を前記カンプトテシン誘導体含量濃度で1mg/mLの水溶液とした場合における、該水溶液のpHを2.4〜7.0に調整して医薬製剤を調製し、前記医薬製剤を遮光下40℃で1週間保存した後において、前記医薬製剤の該会合体の形成変化率が少なく、該会合体形成が安定に維持された該ブロック共重合体を含有する医薬製剤に関する。以下に本発明について詳細に説明する。なお、本願において、前記会合体は会合性凝集体と称することもある。
【0018】
本発明は、ポリエチレングリコールセグメントとカンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットを含むポリグルタミン酸セグメントが連結したブロック共重合体であって、下記一般式(1)
【化4】
[式中、Rは水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキル基を示し、Aは炭素数(C1〜C6)アルキレン基であり、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アシル基及び置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルコキシカルボニル基からなる群から選択される1種を示し、Rは水酸基及び/又はN(R)CONH(R)を示し、前記R及び前記Rは同一でも異なっていてもよく、三級アミノ基で置換されていてもよい炭素数(C1〜C8)アルキル基を示し、Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキル基及び置換基を有していてもよいシリル基からなる群から選択される1種を示し、Rは水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキル基を示し、tは45〜450の整数を示し、d及びeはそれぞれ整数であり、d+eは6〜60の整数を示し、d+eに対するdの割合が1〜100%、eの割合が0〜99%であり、前記ポリグルタミン酸セグメントは、カンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットとR基が結合したグルタミン酸ユニットがそれぞれ独立して、ランダムに配列したポリグルタミン酸セグメント構造である。]で表されるブロック共重合体を用いる。
該ブロック共重合体は、ポリエチレングリコールセグメントとカンプトテシン誘導体が側鎖にエステル結合したグルタミン酸ユニットを含むポリグルタミン酸セグメントが適当な結合基を介して連結したブロック共重合体である。
【0019】
前記Rにおける置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキル基とは、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数(C1〜C6)アルキル基が挙げられる。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−プロピル基、neo−ペンチル基、シクロペンチル基、n−へキシル基、シクロへキシル基等が挙げられる。
前記有していても良い置換基としては、メルカプト基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素環若しくは複素環アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルファモイル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、カルバモイルオキシ基、置換又は無置換アミノ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、ウレイド基、スルホニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基又はシリル基等を挙げることができる。芳香環上の置換位置は、オルト位でも、メタ位でも、パラ位でも良い。アミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、カルボキシル基、ホルミル基が好ましい。
該Rとして好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ベンジル基、2,2−ジメトキシエチル基、2,2−ジエトキシエチル基、2−ホルミルエチル基が挙げられる。無置換の直鎖状、分岐状又は環状の炭素数(C1〜C4)アルキル基が好ましい。特にメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基等が好ましい。
【0020】
一般式(1)において、ポリエチレングリコールセグメントは、そのセグメントにおけるポリエチレングリコール部分が分子量2キロダルトン〜20キロダルトンのものを用いることが好ましく、4キロダルトン〜15キロダルトンのものがより好ましい。すなわち、エチレンオキシ基;(−OCHCH)基の単位繰り返し構造数である一般式(1)のtは45〜450の整数である。好ましくは、tは90〜340の整数である。なお、ポリエチレングリコールセグメントの分子量は、ポリエチレングリコール標準品を用いたGPC法により求められるピークトップ分子量を用いる。
【0021】
ポリエチレングリコールセグメントとポリグルタミン酸セグメントをつなぐ結合基である一般式(1)におけるAは、炭素数(C1〜C6)のアルキレン基である。例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基等を挙げることができる。中でも、好ましくはエチレン基又はトリメチレン基であり、特に好ましくはトリメチレン基である。
【0022】
一般式(1)で表される本発明の高分子化合物のポリグルタミン酸セグメントは、グルタミン酸ユニットがα‐アミド結合型で重合した構造である。しかしながら、該アミノ酸重合構造において、γ‐アミド結合型で重合したグルタミン酸ユニットが一部において含まれていても良い。該ポリグルタミン酸セグメントにおいて、各グルタミン酸ユニットはL型でもD型でも、それらが混在していてもよい。
一般式(1)におけるグルタミン酸ユニット総数はd+eで表され、6〜60の整数である。好ましくはd+eが8〜40である。したがって、該ポリグルタミン酸セグメントの平均分子量は、後述する結合するカンプトテシン誘導体及びR基の構造及び結合基量に依存するが、0.6キロダルトン〜15キロダルトン、好ましくは0.8キロダルトン〜10キロダルトンである。
【0023】
前記ポリグルタミン酸セグメントのグルタミン酸ユニット総数は、H−NMRによるグルタミン酸ユニット数の算出法、アミノ酸分析法、側鎖カルボキシ基の酸−塩基滴定法等により求めることができる。側鎖にカンプトテシン誘導体及び前記R基を結合させる前のポリグルタミン酸セグメントを用い、側鎖カルボキシ基を酸−塩基滴定法することにより求められるグルタミン酸ユニット数を採用することが好ましい。
【0024】
における置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アシル基とは、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数(C1〜C6)アシル基が挙げられる。例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基等が挙げられる。
置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリール基等を具備していても良い。
好ましくは、ホルミル基、アセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基、ベンジルカルボニル基、フェネチルカルボニル基、等が挙げられる。置換基を有していてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数(C1〜C4)アシル基が好ましく、アセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基が好ましい。
【0025】
における置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルコキシカルボニル基としては、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数(C1〜C6)アルコキシカルボニル基が挙げられる。置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリール基等を具備していても良い。
好ましくは、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基等が挙げられる。
【0026】
該Rは、水素原子若しくは置換基を有していてもよい直鎖状、分岐状又は環状の炭素数(C1〜C4)アシル基を用いることが好ましい。Rとしては水素原子、アセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基が特に好ましい。
【0027】
一般式(1)において、Rは水酸基及び/又は−N(R)CONH(R)である。すなわち、側鎖カルボキシ基が該Rであるグルタミン酸ユニットは、側鎖が未修飾のグルタミン酸ユニット及び/又は側鎖にウレア誘導体が結合したグルタミン酸ユニットである。
該R及びRは、同一でも異なっていてもよく三級アミノ基で置換されていても良い直鎖状、分岐状または環状の炭素数(C1〜C8)アルキル基である。該R及びRにおける炭素数(C1〜C8)アルキル基とは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基等が挙げられる。
三級アミノ基で置換されていても良い直鎖状、分岐状または環状の炭素数(C1〜C8)アルキル基とは、2−ジメチルアミノエチル基、3−ジメチルアミノプロピル基等を挙げることができる。
該R及びRはとしては、好ましくはエチル基、イソプロピル基、シクロへキシル基、3−ジメチルアミノプロピル基が挙げられる。より好ましくは、該R及びRがいずれもイソプロピル基、該R及びRがいずれもシクロへキシル基、又は該R及びRがエチル基と3−ジメチルアミノプロピル基である場合を挙げることができる。
【0028】
後述するように該Rにおける−N(R)CONH(R)は、一般式(1)に係るカンプトテシン誘導体が結合したブロック共重合体を合成する際に、カルボジイミド系縮合剤を用いることにより副生するグルタミン酸側鎖修飾基である。したがって、該R及びRは用いたカルボジイミド系縮合剤のアルキル置換基と同一となる。すなわち、カルボジイミド縮合剤として、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCI)を用いた場合、該R及びRは何れもイソプロピル基となる。1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)を用いた場合、該R及びRはエチル基及び3−ジメチルアミノプロピル基の混合置換基となる。この場合、該Rがエチル基で該Rが3−ジメチルアミノプロピル基である場合と、その逆である場合が存在し、これらが一分子中に混在した−N(R)CONH(R)基であっても良い。
【0029】
一般式(1)において、Rは水酸基であっても良い。すなわち、本発明におけるポリグルタミン酸セグメントは、カンプトテシン誘導体及び前記−N(R)CONH(R)基の何れもが結合していない遊離型グルタミン酸ユニットが存在して良い。該Rは水酸基である該グルタミン酸ユニットにおける側鎖カルボン酸は、遊離酸型で示されるが、医薬品として使用し得る塩の態様であってもよく、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩型の形態も本発明として含まれる。アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩が挙げられる。本発明の医薬製剤が、抗癌剤として非経口投与にて供せられる場合、医薬品として許容される溶解液にて溶液調製される。その場合は、該遊離型グルタミン酸ユニットの態様は、その溶液のpH及び緩衝溶液等の塩の存在に依存し、任意のグルタミン酸塩の態様を取り得る。
【0030】
一般式(1)で示されるブロック共重合体はポリグルタミン酸セグメントの側鎖カルボキシ基にカンプトテシン誘導体をエステル結合にて具備している。該カンプトテシン誘導体は、10位に前記エステル結合に供せられる水酸基を有し、更に7位にR基及び9位にR基を備えているカンプトテシン誘導体である。R及びRは何れも水素原子であっても良いが、該R及びRは何れか一方が、水素原子以外の置換基であることが好ましい。
【0031】
該Rは水素原子、置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキル基又は置換基を有していてもよいシリル基である。
における置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキル基としては、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐状または環状の炭素数(C1〜C6)アルキル基が挙げられる。置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリール基等を具備していても良い。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ベンジル基等が挙げられる。置換基を有していてもよい直鎖状、分岐状または環状の炭素数(C1〜C4)アルキル基が好ましく、特にエチル基が好ましい。
における置換基を有していてもよいシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基等が挙げられる。t−ブチルジメチルシリル基が好ましい。
【0032】
該Rとしては、水素原子又は無置換の炭素数(C1〜C6)アルキル基が好ましい。水素原子又はエチル基が特に好ましい。
【0033】
は水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキル基を示す。
における置換基を有していてもよい炭素数(C1〜C6)アルキル基としては、置換基を有していてもよい直鎖状、分岐状または環状の炭素数(C1〜C6)アルキル基が挙げられる。置換基としては、水酸基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アルコキシ基、アリール基等を具備していても良い。例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ベンジル基、ジメチルアミノメチル基等が挙げられる。
該Rとしては、水素原子又はアミノ基を有する炭素数(C1〜C6)アルキル基が好ましい。水素原子又はジメチルアミノメチル基が特に好ましい。
【0034】
一般式(1)において結合しているカンプトテシン誘導体としては、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン及び/又はノギテカン(9−ジメチルアミノメチル−10−ヒドロキシカンプトテシン)の結合残基であることが好ましい。すなわち、前記Rがエチル基であり、前記Rが水素原子である7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンがエステル結合した結合残基であることが好ましい。若しくは、前記Rが水素原子であり、前記Rがジメチルアミノメチル基であるノギテカン(9−ジメチルアミノメチル−10−ヒドロキシカンプトテシン)がエステル結合した結合残基であることが好ましい。特に好ましくは、前記Rがエチル基であり、前記Rが水素原子である7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンがエステル結合した結合残基である。
【0035】
本発明の一般式(1)に記載のブロック共重合体は、好ましくは複数のカンプトテシン誘導体を具備するものである。その場合、該ブロック共重合体の同一分子鎖に結合する該カンプトテシン誘導体は、同一化合物であっても、複数種類の化合物が混在していても良い。しかしながら、該ブロック共重合体の同一分子鎖において結合するカンプトテシン誘導体は、同一化合物であることが好ましい。
【0036】
一般式(1)において、前記ポリグルタミン酸セグメントは各グルタミン酸ユニットにおいて、側鎖カルボキシ基にカンプトテシン誘導体が結合しているグルタミン酸ユニット、側鎖カルボキシ基に前記R基が結合しているグルタミン酸ユニットがそれぞれ独立して、ランダムな配置にて存在するものである。該R基は水酸基及び/又は−N(R)CONH(R)であっても良いことから、カンプトテシン誘導体が結合しているグルタミン酸ユニット、前記−N(R)CONH(R)が結合しているグルタミン酸ユニット、及び側鎖が遊離カルボキシ基またはその塩であるグルタミン酸ユニットがそれぞれ独立して、ランダムな配置にて存在するポリグルタミン酸セグメントである。
【0037】
本発明は、前記カンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットは必須のセグメント構成である。一般式(1)において該カンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットはdでその存在量が表され、グルタミン酸セグメントの総重合数における1〜100%を占める。該dのポリグルタミン酸セグメント中の存在比率は、20〜70%であることが好ましい。該カンプトテシン誘導体の結合量は、当該ブロック共重合体の医薬品としての使用の際において、有効成分の含有量を決定し、且つ投与後の生体内における薬物動態に大きく影響して薬効や副作用の発現に関わる。
一方、前記R基結合グルタミン酸ユニットは任意のセグメント構成である。すなわち、前記カンプトテシン誘導体が結合していないグルタミン酸ユニットが当該R基結合グルタミン酸ユニットである。一般式(1)において該R基結合グルタミン酸ユニットはeでその存在量が表され、該グルタミン酸セグメントの総重合数における0〜99%を占める。該eのポリグルタミン酸セグメント中の存在比率は、30〜80%であることが好ましい。
該R基は水酸基及び/又は−N(R)CONH(R)である。該−N(R)CONH(R)は任意の置換基であり、前記カンプトテシン誘導体が結合していないグルタミン酸ユニットは、水酸基が主な置換基であることが好ましい。ポリグルタミン酸セグメントのグルタミン酸総重合数(d+e)において、Rが水酸基であるグルタミン酸ユニットの存在比率は15〜60%であることが好ましく、Rが−N(R)CONH(R)であるグルタミン酸ユニットの存在比率は0〜50%であることが好ましい。
【0038】
なお、本発明の一般式(1)に係る前記ブロック共重合体は、水溶液中で会合性凝集体を形成する物性である。安定な会合性凝集体形成能を得るためには、前記ポリエチレングリコールセグメントの親水性と、前記ポリグルタミン酸セグメントの疎水性のバランスにより、適宜設定することができる。好ましくは、一般式(1)におけるポリエチレングリコールセグメントのtが90〜340の整数であり、グルタミン酸ユニット総数の(d+e)が8〜40の整数である該ブロック共重合体を用い、前記カンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットの存在量であるdのポリグルタミン酸セグメント中の存在比率が20〜70%である該ブロック共重合体を用いることである。
【0039】
次に、本発明における一般式(1)で示されるブロック共重合体の製造方法について、例を挙げて説明する。
当該ブロック共重合体は、「ポリエチレングリコールセグメントと遊離型ポリグルタミン酸セグメントが連結したブロック共重合体」に、10位に水酸基を有するカンプトテシン誘導体をエステル化反応により結合させることで調製することができる。任意に、Rに係る−N(R)CONH(R)基を結合反応させることで、本発明に係るカンプトテシン誘導体が結合したブロック共重合体を調製することができる。この10位に水酸基を有するカンプトテシン誘導体と、任意の該−N(R)CONH(R)基の結合反応方法は特に限定されるものではなく、先に10位に水酸基を有するカンプトテシン誘導体を結合反応させ、その後、該−N(R)CONH(R)基を結合反応させても、その逆工程でも良く、同時に結合反応させても良い。
【0040】
前記「ポリエチレングリコールセグメントと遊離型ポリグルタミン酸セグメントが連結したブロック共重合体」の構築方法は、ポリエチレングリコールセグメントとポリグルタミン酸セグメントを結合させる方法、ポリエチレングリコールセグメントにポリグルタミン酸を遂次重合させる方法等が挙げられ、いずれの方法であっても良い。
【0041】
本発明における一般式(1)で示されるブロック共重合体の合成方法を、カンプトテシン誘導体が7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンであって、該カンプトテシン誘導体の10位水酸基と該ブロック共重合体のグルタミン酸セグメントのカルボキシ基をエステル結合した例にて説明する。なお、当該カンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体は、国際公開WO2004/039869号に開示される方法により製造することができる。以下に、この文献に記載の製造方法を概説する。
【0042】
前記「ポリエチレングリコールセグメントと遊離型ポリグルタミン酸セグメントが連結したブロック共重合体」の合成方法としては、片末端にアルコキシ基、他方片末端にアミノ基が修飾されたポリエチレングリコール化合物に、N−カルボニルグルタミン酸無水物を順次反応させ、ポリエチレングリコールセグメントの方末端側にポリグルタミン酸構造部位を構築させる方法を挙げることができる。この場合、N−カルボニルグルタミン酸無水物において、グルタミン酸側鎖のカルボキシル基は適当なカルボン酸保護基で修飾したグルタミン酸誘導体であることが好ましい。当該カルボン酸保護基としては、特に限定されるものではないが、エステル保護基が好ましい。
より具体的には、片末端にメトキシ基、他方片末端にアミノ基を修飾したポリエチレングリコール化合物に対し、γ−ベンジル−N−カルボニルグルタミン酸無水物を順次反応させ、遂次重合により、ポリエチレングリコールセグメントとポリグルタミン酸セグメントを有するブロック共重合体を調製する方法を挙げることができる。この際、γ−ベンジル−N−カルボニルグルタミン酸無水物の使用当量を調整することで、ポリグルタミン酸セグメントのグルタミン酸重合数を制御することができる。
その後、適当な方法により、ポリグルタミン酸セグメントのベンジル基を脱保護することにより、該「ポリエチレングリコールセグメントとポリグルタミン酸セグメントが連結したブロック共重合体」を調製できる。ベンジル基の脱保護反応としては、アルカリ条件による加水分解反応、水素添加還元反応が挙げられる。
【0043】
次に、前記「ポリエチレングリコールセグメントと遊離型ポリグルタミン酸セグメントが連結したブロック共重合体」に、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンを、カルボジイミド縮合剤の共存下で縮合反応させる。この方法を用いることにより、該ブロック共重合体に、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンと−N(R)CONH(R)基を同時に結合させることができるため、有利な反応である。なお、当該縮合反応において、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンの使用当量を調整することにより、該カンプトテシン誘導体の結合量を制御することができる。また、カルボジイミド縮合剤の使用当量を調整することにより、−N(R)CONH(R)基の導入量を制御することができる。
該カンプトテシン誘導体及び該−N(R)CONH(R)基の結合したグルタミン酸ユニットを除く、側鎖カルボキシ基が化学修飾されていない残部グルタミン酸ユニットが、前記Rが水酸基であるグルタミン酸ユニットとなる。カンプトテシン誘導体及びカルボジイミド縮合剤の使用当量により、該Rが水酸基であるグルタミン酸ユニット量を制御することができる。
【0044】
なお、用いられるカルボジイミド縮合剤は、前記カンプトテシン誘導体をグルタミン酸ユニットの側鎖カルボキシ基にエステル結合させることができる縮合剤であれば、特に限定することなく用いることができる。好ましくは、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCI)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)を挙げることができる。上記縮合反応の際に、N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)等の反応補助剤を用いてもよい。なお、カルボジイミド縮合剤としてDCCを用いた場合、該R及びRはシクロヘキシル基であり、DIPCIを用いた場合、該R及びRはイソプロピル基であり、WSCを用いた場合、該R及びRはエチル基と3−ジメチルアミノプロピル基の混合物となる。
【0045】
上記反応により、「ポリエチレングリコールセグメントと遊離型ポリグルタミン酸セグメントが連結したブロック共重合体」のグルタミン酸側鎖に対し、適当量の7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン、並びにRとして任意の置換基である−N(R)CONH(R)基を結合させた後、適宜、精製工程を経由することにより、本発明に係るカンプトテシン誘導体が結合したブロック共重合体を合成することができる。精製工程として、陽イオン交換樹脂等により残存アミン成分を除去するとともに、ポリグルタミン酸の側鎖水酸基体を遊離酸型に調製することが好ましい。
【0046】
一般式(1)で示されるカンプトテシン誘導体を結合したブロック共重合体は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)溶液中で徐々にカンプトテシン誘導体を解離し、放出し続ける性能を有する。例えば、該カンプトテシン誘導体が7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンであって、10位の水酸基によるエステル結合体である場合、これを生体内に投与すると、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンを徐放的に放出させる物性を備える。一般的に臨床に用いられている低分子薬剤は、投与直後に薬剤の最高血中濃度を示し、その後比較的速やかに体外に排出される。これに対し、当該カンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体は、有効成分である7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシンを徐放的に解離させるため、投与後の血中において有効成分の血中濃度をあまり上げず、持続的な血中濃度推移を示すことを特徴とする製剤である。
【0047】
また、当該カンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体は、該ブロック共重合体におけるポリエチレングリコールセグメントは親水性である。一方、ポリグルタミン酸セグメントが疎水性のカンプトテシン誘導体を具備するため、当該カンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体は、水溶液中で該ポリグルタミン酸セグメント同士の疎水性相互作用に基づく会合性を有する。このため、該ブロック共重合体の水溶液は、疎水性のポリグルタミン酸セグメントが会合・凝集によるコア部を形成し、その周りを親水性のポリエチレングリコールセグメントが覆って外殻をなしてシェル層を形成したコア‐シェル型のミセル様会合体を形成する。
【0048】
該ミセル様会合体は、レーザー光等を用いた光散乱強度測定により会合体形成を確認することができ、光散乱強度値に基づき会合体形成性を評価することができる。例えば、光散乱強度をそのまま用いて会合性凝集体の形成性の物性値として用いることができる。該ブロック共重合体の水溶液は、例えば該ブロック共重合体0.01〜100mg/mLの水溶液における光散乱強度値として数千〜数10万cpsを示し、会合性凝集体であることが認められる。また、前記光散乱強度から、ポリエチレングリコール等の高分子量標準品を基準とした該会合性凝集体の総分子量を概算することができる。該ブロック共重合体は、水溶液において会合性凝集体を形成し、それは光散乱強度分析の結果から総分子量として数100万以上の会合性凝集体であることを算出することができる。したがって、該ミセル様会合体は数10〜数100分子の複数の該ブロック共重合体が会合して形成されると考えられる。本発明において、水溶液中において形成される前記会合性凝集体の光散乱強度分析によりポリエチレングリコール標準品を基準として算出される見かけの分子量を、会合体の総分子量と称する。
また、該ブロック共重合体の水溶液は、動的光散乱分析による粒径分析によると、数ナノメートル〜数100ナノメートルの粒径を有するナノ粒子体を形成する物性である。
【0049】
水溶液中で会合性凝集体としてナノ粒子を形成する前記ブロック共重合体は、生体内に投与されると、血中において前記の会合性ナノ粒子の状態で体内に分布する。高分子量の化合物やナノ粒子状物体は、従来用いられている低分子薬剤と比較して、生体内における薬物動態挙動や、組織分布が大きく異なる。したがって、会合性ナノ粒子を形成する前記カンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体は、ナノ粒子の会合分子量や粒径に応じて体内滞留性や組織内分布が決定され、特に腫瘍組織において滞留して分布することが知られている。このことから、当該カンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体は、従来の低分子カンプトテシン製剤とは薬学的に薬効発現特性及び、副作用発現特性が全く異なり、カンプトテシン誘導体の臨床上の新しい治療方法を提供できる抗腫瘍性製剤である。したがって、当該ブロック共重合体は、特定の会合性により形成される所望の会合分子量(総分子量)及び粒径を有するように制御されたナノ粒子であることで、抗腫瘍剤として好ましい体内動態及び組織内分布を得ることが肝要であり、所望の会合分子量及び粒径のナノ粒子形成が、その性能発揮のための重要な品質管理項目として挙げられる。
【0050】
本発明は、前記カンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体を有効成分として含有する医薬製剤に関する。すなわち、該ブロック共重合体を、任意の含有量で所定の製剤形に充填された医薬単位製剤に関する発明である。
該カンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体を医薬品として用いる場合、適当な製剤形の医薬製剤として用いられることが望まれる。医薬製剤としては、注射剤、点滴剤、錠剤、カプセル剤、散剤等の通常使用されている製剤型にて使用される。すなわち、本発明は、これらの製剤形において、前記ブロック共重合体を所定量で含有し、任意に添加剤を含有する医薬単位製剤である。
医薬製剤を調製する場合、通常、医薬品として許容される添加剤を用い、有効成分の化学安定性を考慮して長期保存に耐用できるような製剤処方が検討される。本発明の前記カンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体を有効成分とした医薬製剤の場合、水溶液とした際のナノ粒子形成性が重要品質管理項目であることから、ナノ粒子形成性の安定性も考慮した製剤化の処方を行う必要がある。
【0051】
本発明のカンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体を有効成分とする医薬製剤のナノ粒子形成性は、光散乱強度分析により観測される会合体の形成性に基づいて評価することができる。例えば、レーザー光散乱強度を計測できる測定機器により、その光散乱強度を指標に、該会合体の形成性を評価することができる。
具体的には、カンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体を含有する該医薬製剤の水溶液を測定試料として用い、該試料の光散乱強度の測定値を該会合体の形成性の物性値として用いてもよい。また、光散乱強度から算出される会合体分子量や粒子径を該会合体形成性の指標に用いても良い。
光散乱強度分析の測定機器としては、例えば、大塚電子社製ダイナミック光散乱光度計DLS−8000DLや、Particle Sizing System社製NICOMP Model 380 ZLS−Sを用いて測定することができる。
本発明のカンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体は、その会合体形成性が保存中において安定に維持される製剤であることが望ましい。具体的には、少なくとも冷蔵で2年乃至3年の安定性が確保される医薬製剤であることが望ましい。若しくは、少なくとも冷蔵3年の安定性が確保される医薬製剤であることが望ましい。
【0052】
当該カンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体を有効成分とする医薬製剤の安定性の評価方法として、該医薬製剤を遮光下、40℃で1週間保存した場合において、会合体形成性の変化率を指標とすることができる。該評価方法として、光散乱強度分析において、光散乱強度やこれから算出される会合体分子量や粒子径の測定値を、保存試験前の初期値と比較することにより会合体の形成変化率として評価することができる。当該カンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体を有効成分とする医薬製剤は、該医薬製剤を遮光下、40℃で1週間保存した場合において、会合体分子量(総分子量)を指標とした会合体形成変化率が50%以下である。すなわち、製剤保存中に会合体形成性が著しく低下して、当初の会合性ナノ粒子が形成できない場合、当該カンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体の有効性が低下する問題が生じる。このため、医薬品製剤として、保存状態下で会合体形成性が低下しない製剤であることが望ましい。前記試験方法において、会合体分子量を指標とした会合体形成変化率が30%以下であることが好ましい。なお、会合体分子量の変化率はイニシャル値に対する40℃で1週間保存した後の値の増減率の絶対値で表した値である。
また、前記会合性ナノ粒子の粒子径を指標とした会合体形成変化率を評価した場合、該医薬製剤を遮光下、40℃で1週間保存した場合において、該粒子径の変化率が0.25倍以上で5倍以下である必要がある。粒子径を指標とした会合体形成変化率を評価した場合0.5倍以上で2.5倍以下であることが好ましい。なお,前記会合性ナノ粒子の粒子径の変化率はイニシャル値に対する40℃で1週間保存した後の値の比率で表した値である。
また、光散乱強度を示す散乱光量の変化率は、イニシャル値に対する40℃で1週間乃至2週間保存した後の値の比率で表した値である。
【0053】
本発明のカンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体を有効成分とする医薬製剤として、会合体変化率が少ない製剤保存安定性に優れた医薬製剤を調製するためには、前記医薬製剤を前記カンプトテシン誘導体含量濃度で1mg/mLの水溶液とした場合における、該水溶液のpHを2.4〜7.0の範囲に調整することが必要である。このpH範囲は、該カンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体を有効成分とする医薬製剤の溶液調製時において、当該pH範囲に設定することが必要である。なお、該医薬製剤が例えば凍結乾燥製剤等の固体状である場合、水溶液に再構成した場合に該水溶液のpHが2.4〜7.0の範囲であることが必要である。該カンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体は、酸性域である低pH領域や、中性〜アルカリ性領域においては、化学的安定性を考慮する必要があるため、pHは3.0〜7.0の範囲に調整することが好ましい。より好ましくは、前記医薬製剤を前記カンプトテシン誘導体含量濃度で1mg/mLの水溶液とした場合における、該水溶液のpHが3.0〜6.5の範囲に調整した医薬製剤である。
該水溶液のpHは2.4より低い場合、該ブロック共重合体の会合体分子量が当初分子量より著しく低下し、該ブロック共重合体の会合体形成能が極度に低下することが観測される。また、該ブロック共重合体の粒子径測定では、該ブロック共重合体水溶液における会合性凝集体の粒径が初期値でも数100ナノメートルと大きくなり、40℃で1週間保存した場合は、一層、粒子径が大粒径化して会合体形成性の著しい変化が生じることが観測される。酸性域である低pHは、該ブロック共重合体の化学的安定性が低下する懸念があることから、該pHは3.0以上にすることが好ましい。
一方、該水溶液のpHが7.0より大きい場合、該ブロック共重合体の会合体分子量が当初分子量において小さく会合体形成性が著しく低下することが観測される。更に、40℃で1週間保存した場合は、該ブロック共重合体の会合体形成能が極度に低下するため好ましくない。また、該ブロック共重合体の粒子径測定では、該ブロック共重合体水溶液における会合性凝集体の粒径は、40℃で1週間保存した場合において、粒子径が大粒径化して会合体形成性の著しい変化が生じていることが観測される。中性〜アルカリ性域では、該ブロック共重合体の化学的安定性が低下する懸念があることから、該pHは6.5以下に設定することが好ましい。
【0054】
該ブロック共重合体の会合体形成能が低下すると、会合形成体から解離した該ブロック共重合体の存在が認められる。例えば、サイズ排除クロマトグラフィー(Size Exclusion Chromatography;SEC)により、該ブロック共重合体の会合形成体と、この会合形成体から解離したブロック共重合体分子種を分離でき、会合形成体の存在比率が減少し、相対的に前記会合形成体から解離したブロック共重合体の存在比率が増加していく傾向が観察される。
該水溶液のpHが2.4〜7.0から外れた医薬製剤の場合、前記SEC法により該ブロック共重合体の会合体形成能の著しい低下傾向が観察される。
また、該水溶液のpHが2.4〜7.0から外れた医薬製剤の場合、当該有効成分の化学安定性が低下してしまい、低分子化合物を含む類縁物質が増加するため好ましくない。
このことから、該ブロック共重合体の会合体形成性において安定性を確保するためには、当該医薬製剤においてpHを制御することが重要である。好ましくは、記医薬製剤をカンプトテシン誘導体含量濃度で1mg/mLの水溶液とした場合における、該水溶液のpHが2.4〜7.0である。特に好ましくは、該水溶液のpHが3.0〜7.0である。長期保存における化学的安定性を考慮すると、該水溶液のpHは3.0〜6.5の範囲に設定することが良く、pHが3.0〜5.0の範囲とすることが殊更好ましい。
【0055】
本発明の医薬製剤は、カンプトテシン誘導体含量濃度で1mg/mLの水溶液とした場合における、該水溶液のpHが2.4〜7.0とすることが必要であり、pHが3.0〜7.0が好ましく、3.0〜6.5の範囲とすることが特に好ましい。このpH調整には、pH調整剤を添加剤として用いて調整しても良い。該pH調整剤を含み、該医薬製剤を水溶液とした場合にpHが2.4〜7.0、好ましくは3.0〜7.0、より好ましくはpHが3.0〜6.5、特に好ましくはpHが3.0〜5.0に調整された医薬製剤が好ましい。すなわち、医薬製剤の水溶液が、酸性に調整できるpH調整剤を用いることが挙げられ、pH調整剤として酸性化合物が用いられる。また、該カンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体は、遊離カルボキシ基を有することから、pHを4.0〜7.0、好ましくは4.5〜7.0に調整する場合は、アルカリ性化合物が用いられる。また、前記の酸性化合物及びアルカリ性化合物を混合物とした、いわゆる緩衝剤として用いても良い。
本発明において用いられるpH調整剤としては、医薬品添加剤として用いることができる酸であれば、特に限定されることなく用いることができ、例えば塩酸、硫酸、リン酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、メシル酸、トシル酸、ベシル酸等を挙げることができる。これらの酸性添加剤を主成分として、これにアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を含んだ緩衝剤を用いても良い。好ましくは、塩酸、リン酸、クエン酸、酒石酸であり、該医薬製剤の水溶液としてpHが2.4〜7.0、好ましくは3.0〜7.0、より好ましくはpHが3.0〜6.5、特に好ましくはpHが3.0〜5.0に設定されるよう適当な添加量にて用いることが好ましい。より好ましくは、pH調整剤として塩酸、リン酸、クエン酸又は酒石酸を用い、該医薬製剤水溶液のpHが3.0〜6.0に調整された医薬製剤であり、特に好ましくはpH3.0〜5.0に調整された医薬製剤である。
また、pH調整剤として用いられるアルカリ性化合物としては、医薬品添加剤として用いることができるアルカリ性化合物であれば、特に限定されることなく用いることができ、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の炭酸塩及び炭酸水素塩、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム等のリン酸塩、酢酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム等の有機酸塩を挙げることができる。好ましくは、炭酸水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウムである。該医薬製剤の水溶液としてpHが3.0〜6.5に設定されるよう適当な添加量にて用いることが好ましい。
【0056】
また、本発明に係る医薬有効成分である一般式(1)で表されるカンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体は、前記Rが水酸基であっても良く、側鎖が遊離カルボン酸であるグルタミン酸ユニットを含むことができる。このため、該有効成分のみで水溶液のpHを2.4〜7.0、好ましくは3.0〜7.0、より好ましくはpHを3.0〜6.5、特に好ましくはpHを3.0〜5.0に調整することができる。
すなわち、用いる有効成分である該ブロック共重合体が、Rが水酸基であるグルタミン酸ユニットを必須成分として、当該ブロック共重合体を、カンプトテシン誘導体含量濃度で1mg/mLの水溶液とした場合における該水溶液のpHが3.0〜6.5、好ましくはpHを3.0〜6.0、特に好ましくはpHを3.0〜5.0に調整できる該ブロック共重合体をもちいることが好ましい。
上記の酸性を示すブロック共重合体を有効成分とすることで、特にpH調整剤を添加剤として用いることなく会合体形成性が担保された医薬製剤を調製することができる。
【0057】
すなわち、本発明は、好ましくは一般式(1)で表されるカンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体の前記Rが水酸基を必須成分として含み、該ブロック共重合体におけるポリグルタミン酸セグメントの総重合数における、前記Rが水酸基であるグルタミン酸ユニット含量が15〜60%を占める該ブロック共重合体であることが好ましい。この場合、一般式(1)で表されるカンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体において、カンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニット含量が20〜70%であって、前記Rが前記−N(R)CONH(R)基であるグルタミン酸ユニット含量が0〜50%を占める該ブロック共重合体であることが好ましい。この場合、該Rが水酸基の場合、側鎖カルボキシ基が遊離型グルタミン酸ユニットであるが、この側鎖カルボン酸は、遊離酸型で示されるが、医薬品として使用し得る塩の態様であってよく、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩型の形態も本発明として含まれる。アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩であっても良い。その場合は、前記のpH調整剤を用いて、カンプトテシン誘導体含量濃度で1mg/mLの水溶液とした場合における、該水溶液のpHが3.0〜6.5、好ましくはpHを3.0〜6.0、特に好ましくはpHを3.0〜5.0に調整することで、本発明の医薬製剤を調製することができる。
【0058】
本発明は、一般式(1)で表されるカンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体が、カンプトテシン誘導体含量濃度で1mg/mLの水溶液とした場合における、該水溶液のpHが3.0〜6.5である医薬有効成分を用い、これにpH調整剤を添加することで、該水溶液のpHが2.4〜7.0に調整した医薬製剤であることが好ましい。より好ましくは、該水溶液のpHが3.0〜7.0に調整した医薬組成物であり、pHが3.0〜6.5に調整した医薬組成物であることがより好ましい。一般式(1)で表されるカンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体が、カンプトテシン誘導体含量濃度で1mg/mLの水溶液とした場合における、該水溶液のpHが3.0〜6.0である医薬有効成分を用い、pH調整剤を用いて、該水溶液のpHが3.0〜6.0に調整した医薬製剤が殊更好ましい。
【0059】
本発明の医薬製剤は、注射用又は点滴用の血管内投与される製剤であることが好ましく、静脈内投与できる注射用製剤であることが好ましい。製剤形としては、凍結乾燥製剤、用事に希釈して注射溶液を調製できる注射液製剤、そのまま投与可能な希釈溶液製剤等の製剤型であることが好ましい。
すなわち、医薬品として投与する場合において、通常、水、生理食塩水、5%ブドウ糖又はマンニトール水溶液、水溶性有機溶媒(例えばグリセロール、エタノール、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ポリエチレングリコール、クレモフォア等の単一溶媒又はこれらの混合溶媒)等を用いて当該医薬製剤の溶液として使用される。
当該カンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体の化学的安定性及び会合体形成安定性を考慮すると、凍結乾燥製剤であることが好ましい。
【0060】
本発明の医薬製剤には、通常使用されている薬学的に許容される添加剤を含有しても良い。添加剤としては、例えば結合剤、滑沢剤、崩壊剤、溶剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、保存剤、無痛化剤、色素、香料が使用できる。
本発明の医薬製剤の添加剤として、糖類、ポリオール類、ポリエチレングリコール類、アミノ酸類、無機塩類等を用いることが好ましい。
医薬製剤における糖類は、一般に賦形剤としても機能するものであり、本発明における糖類も賦形剤として用いられる。
【0061】
糖類としては、アラビノース、イソマルトース、ガラクトサミン、ガラクトース、キシロース、グルコサミン、グルコース、ゲンチオビオース、コージビオース、ショ糖、セロビオース、ソホロース、チオグルコース、ツラノース、デオキシリボース、トレハロース、ニゲロース、パラチノース、フコース、フルクトース、マルトース、マンノース、メリビオース、ラクトース、ラムノース、ラミナリビオースが挙げられる。
ポリオール類としては、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、メグルミン等が挙げられる。
ポリエチレングリコール類としては、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール4000等が挙げられる。
アミノ酸類としてはアスパラギン酸、アルギニン、グリシン、グルタミン酸、セリン、ヒスチジン、リジン塩酸塩等が挙げられる。
無機塩類としては塩化カルシウム、塩化ナトリウム、酸化カルシウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。より好ましくは、イノシトール、グルコース、トレハロース、フルクトース、マルトース、マンニトール、ラクトースを用いることが好ましい。
【0062】
用いられる添加剤としては、医薬品製剤として用いられる純度であれば特に制限されることなく用いることができる。これらを1種のみ用いても良く、これらの混合物として用いても良い。
本発明の医薬製剤において、添加剤をブロック共重合体に対して0.5〜50倍質量で用いることが好ましい。より好ましくは1〜30倍質量で用いることが望ましい。3〜25倍質量で用いることが特に好ましい。
【0063】
本発明の医薬製剤は、注射剤、点滴剤等の血管内投与される製剤であることが好ましく、凍結乾燥製剤、注射液製剤等の製剤型であることが好ましい。
凍結乾燥製剤とする場合は、医薬有効成分であるカンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体を、任意の製剤用添加剤と共に水溶液を調製し、該水溶液のpHを調整された薬液とする。これを好ましくは濾過滅菌を施した後、製剤バイアルに分注し、凍結乾燥することで凍結乾燥製剤を作成することができる。pHの調整には、pH調整剤を用いても良く、有効成分として側鎖が遊離カルボン酸のグルタミン酸ユニットを含む該カンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体を用いて、有効成分自体でpH調整を行っても良い。
一方、注射液製剤とする場合は、該ブロック共重合体に任意の製剤用添加剤と共に水溶液を調製する。その後、pHを調整した薬液として、これを好ましくは濾過滅菌を施した後、製剤容器に分注することで、注射液製剤を作成することができる。pHの調整には、pH調整剤を用いても良く、有効成分自体でpH調整を行っても良い。
当該医薬製剤は、遮光下、40℃で1週間保存しても該水溶液で分析される粒径の変化率が小さく、会合体形成率において安定性に優れた医薬製剤である。
【0064】
本発明のカンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体を有効成分として含有する医薬製剤は、カンプトテシン誘導体を有効成分とする医薬品として利用できる。特に癌化学療法のための抗腫瘍剤として用いることが好ましい。
本発明の医薬製剤の用途は、該カンプトテシン誘導体が治療効果を奏する癌腫であれば特に限定されないが、具体的には小細胞肺癌、非小細胞肺癌、子宮頸癌、卵巣癌、胃癌、結腸直腸癌、乳癌、有棘細胞癌、悪性リンパ腫、小児悪性固形腫瘍、膵臓癌、多発性骨髄腫等が挙げられる。
本発明の医薬製剤の投与量は、患者の性別、年齢、生理的状態、病態等により当然変更されうるが、非経口的に、通常、成人1日当たり、該カンプトテシン誘導体として0.01〜500mg/m(体表面積)、好ましくは0.1〜250mg/mを投与する。注射による投与は、静脈、動脈、患部(腫瘍部)等に行われることが好ましい。
【実施例】
【0065】
[合成例1]
一般式(1)においてR=メチル基、R=アセチル基、A=トリメチレン基、R=R=イソプロピル基、d+e=24、t=273、d+eに対するdの割合が44%、eの割合が56%(Rが水酸基であるグルタミン酸ユニット含有率が30%、−N(R)CONH(R)であるグルタミン酸ユニット含有率が26%)である7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン結合ブロック共重合体(化合物1)の合成。
国際公開WO2004/39869号の記載に基づき化合物1を合成した。すなわち、メトキシポリエチレングリコール−ポリグルタミン酸ブロック共重合体(分子量12キロダルトンの片末端がメチル基、他片末端がアミノプロピル基であるメトキシポリエチレングリコール構造部分とN末端がアセチル基で修飾された重合数が24のポリグルタミン酸構造部分であり、結合基がトリメチレン基であるブロック共重合体に、7−エチル−10−ヒドロキシカンプトテシン(EHC)をジイソプロピルカルボジイミド(DIPCI)及びN,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)を用いて反応させ、次いでイオン交換樹脂(ダウケミカル製ダウエックス50(H)にて処理し、凍結乾燥することで化合物1を得た。
得られた化合物1を、水酸化ナトリウム水溶液を用い、室温にて10分間加水分解した後、遊離するEHCをHPLC法により定量分析してEHC含量を求めたところ、19.50質量%であった。
【0066】
[合成例2]
合成例1に準じた方法で化合物2を得た。
得られた化合物2を、合成例1と同様に遊離するEHCをHPLC法により定量分析してEHC含量を求めたところ、19.76質量%であった。
【0067】
[実施例1]
注射用水を用いて、化合物1をEHC含量として1mg/mLの濃度にした溶液3mLを調製した。これをガラスバイアルに充填して凍結乾燥した。その後、ゴム栓にて密栓した。この凍結乾燥製剤を実施例1とした。
得られた凍結乾燥製剤は、3mLの注射用水で再溶解したときのpHは4.7であった。以下の実施例及び試験例ともに、pH測定は、室温(25℃)で行った。
【0068】
[実施例2]
実施例1と同様の方法により化合物1の溶液3mLを調製した。この溶液をリン酸を用いてpHを3.0に調整し、これを凍結乾燥した。この凍結乾燥製剤を実施例2とした。
得られた凍結乾燥製剤は、3mLの注射用水で再溶解したときのpHは3.0であった。
【0069】
[実施例3]
実施例1と同様な方法により化合物1の溶液3mLを調製した。この溶液を炭酸水素ナトリウムを用いてpHを6.0に調整し、これを凍結乾燥した。この凍結乾燥製剤を実施例3とした。
得られた凍結乾燥製剤を3mLの注射用水で再溶解したときのpHは6.5であった。
【0070】
[実施例4]
実施例1と同様の方法により化合物2の溶液3mLを調製した。この溶液をリン酸を用いてpHを3.0に調整し、これを凍結乾燥した。この凍結乾燥製剤を実施例4とした。
得られた凍結乾燥製剤は、3mLの注射用水で再溶解したときのpHは2.9であった。
【0071】
[実施例5]
実施例1と同様な方法により化合物2の溶液3mLを調製した。この溶液をリン酸を用いてpHを3.5に調整し、これを凍結乾燥した。この凍結乾燥製剤を実施例3とした。
得られた凍結乾燥製剤を3mLの注射用水で再溶解したときのpHは3.5であった。
【0072】
[実施例6]
実施例1と同様な方法により化合物2の溶液3mLを調製した。この溶液をリン酸を用いてpHを4.5に調整し、これを凍結乾燥した。この凍結乾燥製剤を実施例6とした。
得られた凍結乾燥製剤を3mLの注射用水で再溶解したときのpHは4.5であった。
【0073】
[実施例7]
実施例1と同様な方法により化合物2の溶液3mLを調製した。この溶液を炭酸水素ナトリウムを用いてpHを6.0に調整し、これを凍結乾燥した。この凍結乾燥製剤を実施例7とした。
得られた凍結乾燥製剤を3mLの注射用水で再溶解したときのpHは6.9であった。
【0074】
[実施例8]
注射用水を用いて、化合物2とマルトースを溶かし、EHC含量として1mg/mL、マルトースの濃度として5mg/mLにした溶液3mLを、リン酸を用いてpH4.0に調整した。これをガラスバイアルに充填して凍結乾燥した。その後、ゴム栓にて密栓した。この凍結乾燥製剤を実施例8とした。
得られた凍結乾燥製剤を3mLの注射用水で再溶解したときのpHは4.2であった。
【0075】
[実施例9]
注射用水を用いて、化合物2と乳糖を溶かし、EHC含量として1mg/mL、乳糖の濃度として5mg/mLにした溶液3mLを、リン酸を用いてpH4.0に調整した。これをガラスバイアルに充填して凍結乾燥した。その後、ゴム栓にて密栓した。この凍結乾燥製剤を実施例9とした。
得られた凍結乾燥製剤を3mLの注射用水で再溶解したときのpHは4.2であった。
【0076】
[実施例10]
実施例1と同様な方法により化合物2の溶液3mLを調製した。この溶液をクエン酸を用いてpHを3.2に調整し、これを凍結乾燥した。この凍結乾燥製剤を実施例10とした。
得られた凍結乾燥製剤を3mLの注射用水で再溶解したときのpHは3.2であった。
【0077】
[実施例11]
実施例1と同様な方法により化合物2の溶液3mLを調製した。この溶液をクエン酸を用いてpHを4.0に調整し、これを凍結乾燥した。この凍結乾燥製剤を実施例11とした。
得られた凍結乾燥製剤を3mLの注射用水で再溶解したときのpHは4.2であった。
【0078】
[実施例12]
実施例1と同様な方法により化合物2の溶液3mLを調製した。この溶液をリン酸水素二ナトリウムを用いてpHを5.0に調整し、これを凍結乾燥した。この凍結乾燥製剤を実施例12とした。
得られた凍結乾燥製剤を3mLの注射用水で再溶解したときのpHは5.0であった。
【0079】
[実施例13]
実施例1と同様な方法により化合物2の溶液3mLを調製した。この溶液をリン酸水素二ナトリウムを用いてpHを6.0に調整し、これを凍結乾燥した。この凍結乾燥製剤を実施例13とした。
得られた凍結乾燥製剤を3mLの注射用水で再溶解したときのpHは5.7であった。
【0080】
[比較例1]
実施例1と同様の方法により化合物1の溶液3mLを調製した。この溶液をリン酸を用いてpHを1.0に調整し、これを凍結乾燥した。この凍結乾燥製剤を比較例1とした。
得られた凍結乾燥製剤は、3mLの注射用水で再溶解したときのpHは1.2であった。
【0081】
[比較例2]
実施例1と同様の方法により化合物1の溶液3mLを調製した。この溶液をリン酸を用いてpHを2.0に調整し、これを凍結乾燥した。この凍結乾燥製剤を比較例2とした。
得られた凍結乾燥製剤は、3mLの注射用水で再溶解したときのpHは1.9であった。
【0082】
[比較例3]
実施例1と同様の方法により化合物1の溶液3mLを調製した。この溶液を炭酸水素ナトリウムを用いてpHを7.0に調整し、これを凍結乾燥した。この凍結乾燥製剤を比較例3とした。
得られた凍結乾燥製剤は、3mLの注射用水で再溶解したときのpHは8.1であった。
【0083】
[比較例4]
実施例1と同様の方法により化合物1の溶液3mLを調製した。この溶液を炭酸水素ナトリウムを用いてpHを8.0に調整し、これを凍結乾燥した。この凍結乾燥製剤を比較例4とした。
得られた凍結乾燥製剤は、3mLの注射用水で再溶解したときのpHは9.2であった。
【0084】
[比較例5]
実施例1と同様の方法により化合物2の溶液3mLを調製した。この溶液をリン酸を用いてpHを1.0に調整し、これを凍結乾燥した。この凍結乾燥製剤を比較例5とした。
得られた凍結乾燥製剤は、3mLの注射用水で再溶解したときのpHは1.1であった。
【0085】
[比較例6]
実施例1と同様の方法により化合物2の溶液3mLを調製した。この溶液をリン酸を用いてpHを2.0に調整し、これを凍結乾燥した。この凍結乾燥製剤を比較例6とした。
得られた凍結乾燥製剤は、3mLの注射用水で再溶解したときのpHは1.9であった。
【0086】
[比較例7]
実施例1と同様の方法により化合物2の溶液3mLを調製した。この溶液を炭酸水素ナトリウムを用いてpHを8.0に調整し、これを凍結乾燥した。この凍結乾燥製剤を比較例7とした。
得られた凍結乾燥製剤は、3mLの注射用水で再溶解したときのpHは9.2であった。
【0087】
[実施例14]
実施例1と同様の方法により化合物2の溶液3mLを調製した。この溶液をクエン酸を用いてpHを2.5に調整し、これを凍結乾燥した。この凍結乾燥製剤を比較例8とした。
得られた凍結乾燥製剤は、3mLの注射用水で再溶解したときのpHは2.4であった。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
試験例1;40℃/1週間保存条件下の会合性凝集体の粒子径変化
実施例1〜3及び比較例1〜4の凍結乾燥製剤に注射用水3mLを加え、各EHC含量として1mg/mL溶液を調製した。この溶液のpHを測定した。その後、更に注射用水を3mL添加した。この溶液を5μL採取し、注射用水480μLを加えて、粒子径測定用試料溶液とした。試料溶液を測定用セルに入れ、その平均粒子径を測定しイニシャル時の粒子径とした。データ解析はガウス分布(体積加重)で行い、体積加重粒子径として表記した。なお、体積加重粒子径とは重量分率による平均粒子径であり、以下の式で定義される。
粒子径の小さい順からd1、d2、d3、・・di、・・dkの粒子径を持つ粒子がそれぞれ、n1、n2、n3、・・ni、・・nk個あるとして、粒子1個当たりの体積をv1、v2、v3、・・vi、・・vkとすると、
体積加重粒子径 = Σ(Vi・di)/Σ(vi)
別に、実施例1〜3及び比較例1〜4の凍結乾燥製剤を、遮光下40℃で1週間保存した。その後、各実施例及び比較例を、注射用水を用いてEHC含量として1mg/mL溶液を調製し溶液pHを測定した。その後、上記イニシャル時と同様の試料調製を行い、各凍結乾燥製剤の会合性凝集体の粒子径を測定した。
イニシャル時の溶液pH及び粒子径、並びに40℃/1週間保存後の溶液pH及び粒子径の測定結果、粒子径の変化率を表3にまとめた。
【0091】
測定機器及び測定条件を以下に示した。
測定機器及び測定条件
測定機器 :NICOMP Model 380 ZLS−S
(Particle Sizing System 社製)
セル温度 :25℃
測定時間 :15分
【0092】
【表3】
【0093】
試験例1の結果から、再溶解時pHが3.0〜6.5である凍結乾燥製剤(実施例1、2及び3)の粒子径の変化率が0.57〜0.90と小さく、製剤保存下において、有効成分であるカンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体の会合性凝集体の形成性に変化が少なく安定な製剤であることが認められた。これに対し、溶液pHが1.9以下である凍結乾燥製剤(比較例1及び2)、並びに溶液pHが8以上の凍結乾燥製剤(比較例3及び4)は、40℃/1週間の保存下において測定される粒子径の著しい変化が観測された。これは、有効成分の会合性凝集体の形成性が大きく変化したことを示しており、製剤保存安定性が悪いことが明らかとなった。
当該医薬有効成分は、会合性凝集体の形成に基づきカンプトテシン誘導体の薬効発現に有利な薬物動態挙動を確保することで、抗腫瘍効果の増大と副作用の低減を達成する薬剤である。このため、会合性凝集体の形成性能が当該医薬有効成分にとって重要物性であり、凍結乾燥製剤の溶液pHを3〜6.5の範囲に設定することが、製剤の安定化に効果を奏することが示された。
【0094】
試験例2:40℃/1週間保存条件下の会合性凝集体の分子量変化
実施例1〜3及び比較例1〜4の凍結乾燥製剤に注射用水3mLを加え、各EHC含量として1mg/mL溶液を調製した。この溶液のpHを測定した。その後、更に注射用水を3mL添加した。この溶液中の会合性凝集体の平均分子量をSEC−MALS法により測定した。これをイニシャル時の平均分子量とした。測定機器及び測定条件を以下に示した。なお、SEC−MALS法による測定される会合性凝集体の平均分子量は、本発明に係る会合体の総分子量と同義であり、以降で該会合体の総分子量について平均分子量と称して記載する。
別に、実施例1〜3及び比較例1〜4の凍結乾燥製剤を、遮光下40℃で1週間保存した。その後、各実施例及び比較例を、注射用水を用いてEHC含量として1mg/mL溶液を調製し溶液pHを測定した。その後、上記イニシャル時と同様の試料調製を行い、各凍結乾燥製剤の溶液中の会合性凝集体の平均分子量を測定した。
イニシャル時の溶液pH及び平均分子量、並びに40℃/1週間保存後の溶液pH及び平均分子量の測定結果、並びに平均分子量の変化率を表4にまとめた。
【0095】
測定機器及び測定条件
GPCシステム:Shodex GPC−101(昭光サイエンティフィック社製)
使用カラム :Shodex OHpak SB−806M HQ
300mm×8.0mmI.D.
光散乱検出器 :DAWN 8+(Wyatt Technology社製)
データ処理装置:Shimadzu C−R7A(UV,RI)
ASTRA for windows 5.3.4(DAWN)
セル温度 :40℃
測定時間 :20分
移動相溶媒:50mM NaCl水溶液
移動相流速:1mL/min
【0096】
【表4】
【0097】
試験例2の結果から、再溶解時pHが3.0〜6.5である凍結乾燥製剤(実施例1、2及び3)の会合性凝集体に係る分子量測定値の変化率が50%以下であり剤保存下において、有効成分であるカンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体の会合性凝集体の形成性に変化が少なく安定な製剤であることが認められた。特に実施例1及び2は会合性凝集体の分子量変化率が20%以下であり、極めて安定な製剤であることが示された。これに対し、溶液のpHが1.9以下である凍結乾燥製剤(比較例1及び2)は、40℃/1週間の保存下において測定される会合性凝集体の平均分子量値に著しい変化が観測された。また、溶液のpHが8以上の凍結乾燥製剤(比較例3及び4)は、イニシャル時における会合性凝集体の分子量が小さく、初期値において有効成分の会合性凝集体の形成性が大きく異なることを示している。したがって、比較例に係る凍結乾燥製剤は、有効成分の会合性凝集体の形成性能を大きく変化させてしまうことが明らかとなった。
以上の結果から、当該医薬有効成分の重要物性となる会合性凝集体の形成性能を安定に維持するためには、凍結乾燥製剤の溶液pHを3.0〜6.5の範囲に設定することが好ましいことが示された。
【0098】
試験例3;40℃/1週間保存条件下の実施例及び比較例の会合性凝集体の粒子径変化
実施例4〜14及び比較例5〜7の凍結乾燥した直後の製剤に注射用水3mLを加え、各EHC含量として1mg/mL溶液を調製した。この溶液のpHを測定した。その後、更に注射用水を3mL添加した。この溶液を5μL採取し、注射用水480μLを加えて、粒子径測定用試料溶液とした。試料溶液を測定用セルに入れ、その平均粒子径を測定しイニシャル時の粒子径とした。データ解析はガウス分布(体積加重)で行った。測定機器及び測定条件は試験例1と同様に行った。
別に、実施例4〜14及び比較例5〜7の凍結乾燥製剤を、遮光下40℃で1週間保存した。その後、各実施例及び比較例を、注射用水を用いてEHC含量として1mg/mL溶液を調製し溶液pHを測定した。その後、上記イニシャル時と同様の試料調製を行い、各凍結乾燥製剤の会合性凝集体の粒子径を測定した。
イニシャル時の溶液pH及び粒子径、並びに40℃/1週間保存後の溶液pH及び粒子径の測定結果、粒子径の変化率を表5にまとめた。
【0099】
【表5】
【0100】
試験例4;40℃/2週間保存条件下の実施例及び比較例の会合性凝集体の粒子径変化
実施例4〜9及び比較例5〜7の凍結乾燥した直後の製剤に注射用水3mLを加え、各EHC含量として1mg/mL溶液を調製した。この溶液のpHを測定した。その後、更に注射用水を3mL添加した。この溶液を5μL採取し、注射用水480μLを加えて、粒子径測定用試料溶液とした。試料溶液を測定用セルに入れ、その平均粒子径を測定しイニシャル時の粒子径とした。データ解析はガウス分布(体積加重)で行った。測定機器及び測定条件は試験例1と同様に行った。
別に、実施例4〜9及び比較例5〜7の凍結乾燥製剤を、遮光下40℃で2週間保存した。その後、各実施例及び比較例を、注射用水を用いてEHC含量として1mg/mL溶液を調製し溶液pHを測定した。その後、上記イニシャル時と同様の試料調製を行い、各凍結乾燥製剤の会合性凝集体の粒子径を測定した。
イニシャル時の溶液pH及び粒子径、並びに40℃/2週間保存後の溶液pH及び粒子径の測定結果、粒子径の変化率を表6にまとめた。
【0101】
【表6】
【0102】
試験例3、4の結果から、再溶解時pHが2.4〜7.0である凍結乾燥製剤(実施例4〜14)の粒子径の変化率は40℃/1週間保存時点で0.84〜1.28、凍結乾燥製剤(実施例4〜9)の粒子径の変化率は40℃/2週間保存時点で0.81〜1.19と小さく、製剤保存下において、有効成分であるカンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体の会合性凝集体の形成性に変化が少なく安定な製剤であることが認められた。これに対し、溶液pHが1.9以下である凍結乾燥製剤(比較例5、6)、並びに溶液pHが9以上の凍結乾燥製剤(比較例7)は、40℃/1週間及び2週間の保存下において測定される粒子径の著しい変化が観測された。これは、有効成分の会合性凝集体の形成性が大きく変化したことを示しており、その結果、製剤の保存安定性が悪いことが明らかとなった。当該医薬有効成分は、会合性凝集体の形成に基づくカンプトテシン誘導体の薬効発現に有利な薬物動態挙動を確保することで、抗腫瘍効果の増大と副作用の低減を達成する薬剤である。このため、会合性凝集体の形成性能が当該医薬有効成分にとって重要物性であり、試験例1の結果と同様に、凍結乾燥製剤の溶液pHを3.0〜6.5の範囲に設定することが、製剤の安定化に効果を奏することが示された。
【0103】
試験例5:40℃/1週間保存条件下の実施例及び比較例の会合性凝集体の平均分子量変化
実施例4〜14及び比較例5〜7の凍結乾燥製剤に注射用水3mLを加え、各EHC含量として1mg/mL溶液を調製した。この溶液のpHを測定した。その後、更に注射用水を3mL添加した。この溶液中の会合性凝集体の平均分子量をSEC−MALS法により測定した。これをイニシャル時の会合体凝集体の平均分子量とした。測定機器及び測定条件は試験例2と同様に行った。
別に、実施例4〜14及び比較例5〜7の凍結乾燥製剤を、遮光下40℃で1週間保存した。その後、各実施例及び比較例を、注射用水を用いてEHC含量として1mg/mL溶液を調製し溶液pHを測定した。その後、上記イニシャル時と同様の試料調製を行い、各凍結乾燥製剤の溶液中の会合性凝集体の平均分子量を測定した。
イニシャル時の溶液pH及び平均分子量、並びに40℃/1週間保存後の溶液pH及び平均分子量の測定結果、並びに平均分子量の変化率を表7にまとめた。
【0104】
【表7】
【0105】
試験例6:40℃/2週間保存条件下の実施例及び比較例の会合性凝集体の平均分子量変化
実施例4〜9及び比較例5〜7の凍結乾燥製剤に注射用水3mLを加え、各EHC含量として1mg/mL溶液を調製した。この溶液のpHを測定した。その後、更に注射用水を3mL添加した。この溶液中の会合性凝集体の平均分子量をSEC−MALS法により測定した。これをイニシャル時の会合性凝集体の平均分子量とした。測定機器及び測定条件は試験例2と同様に行った。
別に、実施例4〜9及び比較例5〜7の凍結乾燥製剤を、遮光下40℃で2週間保存した。その後、各実施例及び比較例を、注射用水を用いてEHC含量として1mg/mL溶液を調製し溶液pHを測定した。その後、上記イニシャル時と同様の試料調製を行い、各凍結乾燥製剤の溶液中の会合性凝集体の平均分子量を測定した。
イニシャル時の溶液pH及び平均分子量、並びに40℃/2週間保存後の溶液pH及び平均分子量の測定結果、並びに平均分子量の変化率を表8にまとめた。
【0106】
【表8】
【0107】
試験例5、6の結果から、40℃保存1週間後及び40℃保存2週間後において、再溶解時pHが2.4〜7.0である凍結乾燥製剤(実施例4〜9)の会合性凝集体に係る平均分子量測定値の変化率が50%以下であり製剤保存下において、有効成分であるカンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体の会合性凝集体の形成性に変化が少なく安定な製剤であることが認められた。これに対し、溶液pHが1.9以下である凍結乾燥製剤(比較例5、6)は、40℃/1週間の保存下において測定される会合性凝集体の平均分子量値に著しい変化が観測された。また、溶液pHが9以上の凍結乾燥製剤(比較例7)は、イニシャル時における会合性凝集体の総分子量が小さく、初期値において有効成分の会合性凝集体の形成性が大きく変化していることを示している。したがって、比較例に係る凍結乾燥製剤は、有効成分の会合性凝集体の形成性能を大きく変化させてしまうことが明らかとなった。したがって、当該医薬有効成分の重要物性となる会合性凝集体の形成性能を安定に維持するためには、試験例2の結果と同様に、凍結乾燥製剤の溶液pHを3.0〜6.5の範囲に設定することが必要であることが示された。
【0108】
試験例7:40℃/1週間保存条件下の実施例及び比較例の会合性凝集体の光散乱強度変化
実施例4〜13及び比較例5〜7の凍結乾燥製剤に注射用水3mLを加え、各EHC含量として1mg/mL溶液を調製した。この溶液のpHを測定した。その後、更に注射用水を3mL添加した。この溶液中の会合性凝集体の散乱光量を静的光散乱法(SLS法)により測定した。これをイニシャル時の散乱光量とした。測定機器及び測定条件を以下に示した。
別に、実施例4〜13及び比較例5〜7の凍結乾燥製剤を、遮光下40℃で1週間保存した。その後、各実施例及び比較例を、注射用水を用いてEHC含量として1mg/mL溶液を調製し溶液pHを測定した。その後、上記イニシャル時と同様の試料調製を行い、各凍結乾燥製剤の溶液中の会合性凝集体の散乱光量を測定した。
イニシャル時の溶液pH及び散乱光量、並びに40℃/1週間保存後の溶液pH及び散乱光量の測定結果を表9にまとめた。
【0109】
測定機器及び測定条件
光散乱光度計:DLS−8000DL(大塚電子社製)
コントラローラ:LS−81(大塚電子社製)
ポンプコントラローラ:LS−82(大塚電子社製)
高感度示差屈折計:DRM−3000(大塚電子社製)
循環恒温槽:LAUDA E200
波長:632.8nm(He−Ne)
角度:90°
Ph1:OPEN
Ph2:SLIT
ND Filter:10%
ダストカット設定:10
測定温度:25℃
【0110】
【表9】
【0111】
試験例8:40℃/2週間保存条件下の実施例及び比較例の会合性凝集体の光散乱強度変化
実施例4〜9及び比較例5〜7の凍結乾燥製剤に注射用水3mLを加え、各EHC含量として1mg/mL溶液を調製した。この溶液のpHを測定した。その後、更に注射用水を3mL添加した。この溶液中の会合性凝集体の散乱光量を静的光散乱法(SLS法)により測定した。これをイニシャル時の散乱光量とした。測定機器及び測定条件は実験例7と同様に行った。
実施例4〜9及び比較例5〜7の凍結乾燥製剤を、遮光下40℃で2週間保存した。その後、各実施例及び比較例を、注射用水を用いてEHC含量として1mg/mL溶液を調製し溶液pHを測定した。その後、前記イニシャル時と同様の試料調製を行い、各凍結乾燥製剤の溶液中の会合性凝集体の散乱光量を測定した。
イニシャル時の溶液pH及び散乱光量、並びに40℃/2週間保存後の溶液pH及び散乱光量の測定結果、並びに散乱光量の変化率を表10にまとめた。
【0112】
【表10】
【0113】
試験例7、8の結果から、再溶解時pHが2.9〜6.9である凍結乾燥製剤(実施例4〜13)の散乱光量の変化率は40℃/1週間保存時点で0.44〜1.01、凍結乾燥製剤(実施例4〜9)の散乱光量の変化率は40℃/2週間保存時点で0.62〜1.38であった。試験例1〜6に係る平均粒子径及び総分子量(平均分子量)測定は、レーザー光を用いた動的散乱光量から算出される数値である。一方、試験例7、8では静的散乱光量を測定した。したがって、散乱光量値は当該カンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体の会合体の形成性の指標となり得る。そこで、その散乱光量をそのまま用いて、該会合体の形成性変化を測定することができる。本発明に係るカンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体を有効成分として含有する医薬製剤は、製剤保存下において、会合体の形成性に変化が少なく安定な製剤であることが認められた。
試験例7の結果から、本発明に係るカンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体を有効成分とする医薬製剤は、遮光下40℃で1週間保存した後において、前記医薬製剤の前記会合体の散乱光量変化率が0.4以上であり1.5以下である、医薬製剤であると定義付けることができる。また、試験例8の結果から、本発明に係るカンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体を有効成分とする医薬製剤は、遮光下40℃で2週間保存した後において、前記医薬製剤の前記会合体の散乱光量変化率が0.4以上であり1.5以下である、医薬製剤であると定義付けることができる。
また、試験例1〜8の結果を踏まえると、本発明に係るカンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体を有効成分とする医薬製剤は、遮光下40℃で1週間保存した後において、前記会合体の総分子量変化率が50%以下であり、前記会合体の動的光散乱方式により測定される粒子径の変化率が0.25倍以上で5倍以下であり、且つ前記会合体の散乱光量変化率が0.4以上であり1.5以下である、医薬製剤と定義付けることができる。
以上の結果から、本発明に係るカンプトテシン誘導体結合ブロック共重合体を有効成分とする医薬製剤は、製剤保存下において会合体の形成性に変化が少なく、保存安定性に優れた医薬製剤であることが認められた。
【要約】
水溶液中で会合してナノ粒子形成性を有するカンプトテシン誘導体を高分子担体に結合させた高分子化カンプトテシン誘導体を含有する医薬製剤であって、製剤的に安定性が向上された医薬製剤組成物を提供することを課題とする。特に、重要因子であるナノ粒子形成性が維持され保存安定性に優れた医薬製剤を提供することを課題とする。
ポリエチレングリコールセグメントとカンプトテシン誘導体が結合したグルタミン酸ユニットを含むポリグルタミン酸セグメントが連結したブロック共重合体を含有する医薬製剤であって、前記医薬製剤は水溶液中で会合体を形成し、前記医薬製剤を前記カンプトテシン誘導体含量濃度で1mg/mLの水溶液とした場合における、該水溶液のpHが2.4〜7.0であって、遮光下40℃で1週間保存した後、前記医薬製剤の該会合体の形成能の変化率が50%以下である、医薬製剤。