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特許6012905液体コーティング剤及びそれを用いた難燃性被膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012905
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】液体コーティング剤及びそれを用いた難燃性被膜
(51)【国際特許分類】
   C01F 7/00 20060101AFI20161011BHJP
   C01B 21/093 20060101ALI20161011BHJP
   C01B 25/45 20060101ALI20161011BHJP
   C09C 1/04 20060101ALI20161011BHJP
   C09C 1/40 20060101ALI20161011BHJP
   C09D 1/00 20060101ALI20161011BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20161011BHJP
   D21H 21/34 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   C01F7/00 C
   C01B21/093 Z
   C01B25/45 G
   C09C1/04
   C09C1/40
   C09D1/00
   C09D17/00
   D21H21/34
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-511953(P2016-511953)
(86)(22)【出願日】2015年3月31日
(86)【国際出願番号】JP2015060224
(87)【国際公開番号】WO2015152279
(87)【国際公開日】20151008
【審査請求日】2016年6月9日
(31)【優先権主張番号】特願2014-72662(P2014-72662)
(32)【優先日】2014年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(73)【特許権者】
【識別番号】516018810
【氏名又は名称】NT&I株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117226
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 俊一
(72)【発明者】
【氏名】村上 泰
(72)【発明者】
【氏名】小林 正美
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 伸
(72)【発明者】
【氏名】細尾 昇平
(72)【発明者】
【氏名】藤森 隆志
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/117957(WO,A2)
【文献】 特開2000−226585(JP,A)
【文献】 特開2013−209488(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/068118(WO,A1)
【文献】 特開2006−206660(JP,A)
【文献】 特表2001−524923(JP,A)
【文献】 米国特許第4883533(US,A)
【文献】 Lei YE, Baojun QU,Flammability characteristics and flame retardant mechanism of phosphate-intercalated hydrotalcite in halogen-free flame retardant EVA blends,Polymer Degradation and Stability,2008年 2月10日,Vol.93 No.5,page. 918-924
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F 7/00 − 7/76
C01B 21/093
C01B 25/45
C09C 1/04
C09C 1/40
C09D 1/00
C09D 17/00
D21H 21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄化合物又はリン化合物を含有するハイドロタルサイト様化合物の微粒子を含み、
当該微粒子の平均粒径が10nm以上、2500nm以下の範囲内であり、
前記硫黄化合物又はリン化合物を含有するハイドロタルサイト様化合物が、一般式[M2+1−x3+(OH)][An−x/n・mHO]で表され、ホスト元素であるM2+とM3+がそれぞれMgとAl、又はZnとAlであり、層間陰イオンであるAn−x/nがSONH、S2-、SOCF、及びP274-から選ばれる1又は2以上であることを特徴とする分散体からなる液体コーティング剤
【請求項2】
さらにバインダーが含まれている、請求項に記載の液体コーティング剤
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液体コーティング剤をコーティングしてなることを特徴とする難燃性被膜。
【請求項4】
被覆体上に、請求項1又は2に記載の液体コーティング剤をコーティングしてなる難燃性被膜が設けられていることを特徴とする難燃性被覆体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロタルサイト様化合物の分散体及びそれを用いた難燃性被膜、及びその難燃性被膜が設けられた難燃性被覆体に関し、さらに詳しくは、硫黄化合物又はリン化合物を含有するハイドロタルサイト様化合物の微粒子を含む分散体、及びその分散体を用いた難燃性被膜等に関する。
【背景技術】
【0002】
紙や段ボール等に難燃効果を持たせて、それらで包装したもの等の焼失を防ぐ技術が種々検討されている。例えば、特許文献1には、発煙性が低くかつ優れた難燃性を有する難燃紙又は難燃ボ−ドとして、セルロ−ス繊維、含水無機化合物、炭酸カルシウム、を所定の重量比で含有するものが提案されている。また、特許文献2には、紙に加工処理する際の熱安定性に優れ、難燃性が良好で且つホルムアルデヒドを発生しない難燃紙を与える紙用難燃剤組成物として、グアニジン塩とヒドラジド化合物を含む組成物が提案されている。また、特許文献3には、ホルムアルデヒドを含有せず、且つ耐熱性に優れると共に紙質が劣化しない難燃紙が得られる紙用難燃剤組成物として、グアニジン塩と硫酸マグネシウムとの混合物を主成分とするものが提案されている。
【0003】
また、特許文献4には、優れた難燃性と優れた剛度とを兼備したペーパーハニカムコア用の難燃紙を得るための技術として、紙全体の重量に対して、難燃性を付与する水酸化アルミニウム粉末、難燃性のフェノール樹脂粉末、及びセルロース繊維を主体とする有機物繊維を含有し、さらにセルロース繊維を難燃化するスルファミン酸グアニジンを定着担持させる技術が提案されている。また、特許文献5には、消防庁の規定する防炎効果を発揮する段ボールを得るための技術として、紙層に、炭酸カルシウム、カオリン、二酸化チタンの一つを含む無機質層を積層するとともに、無機質層以外の部分にリン及び窒素の複合化合物とからなる難燃剤を付与したものを、紙層より無機質層側を外側に配してライナとして用いることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−148798号公報
【特許文献2】特開平10−183123号公報
【特許文献3】特開平11−228968号公報
【特許文献4】特開平6−272190号公報
【特許文献5】特開2013−91210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムの熱分解時の吸熱反応、及び同時に発生する水による可燃性ガスの希釈を利用した技術であるため、難燃性を付与するための組成物を基材に多量に付着させなければならず、基材が有する本来の特性を阻害してしまうという問題があった。また、特許文献2,3の技術は、スルファミン酸グアニジンや、リン酸グアニジンの脱水炭化作用を利用した難燃化技術であるが、基材に対して多くの付着量が必要であり、また、基材の変色や酸性であるが故の不具合が生じることがあった。また、特許文献4,5の技術は、水酸化アルミニウムとスルファミン酸グアニジン又は炭酸カルシウムとリン酸窒素系難燃剤を組み合わせ、相乗効果を利用した難燃化技術であり、付着量の低減は図られているが、不十分であった。
【0006】
本発明は、こうした従来の難燃剤での問題を解決するための材料及び被膜を提供するものであって、その目的は、ハイドロタルサイト様化合物の微粒子を含む分散体、及びその分散体を用いた難燃性被膜、及びその難燃性被膜が設けられた難燃性被覆体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上記課題を解決するための本発明に係る分散体は、硫黄化合物又はリン化合物を含有するハイドロタルサイト様化合物の微粒子を含むことを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、硫黄化合物又はリン化合物を含有するハイドロタルサイト様化合物を含むので、耐水性に優れ、被覆体の酸劣化を生じさせない難燃性被膜を形成することができる。また、硫黄化合物又はリン化合物を含有するハイドロタルサイト様化合物は細かい微粒子で高分散化しているので、細かい粉粒を被覆体にコーティングできる。その結果、少量でも緻密にコーティングでき、被覆体自体の特性を損ねることなく良好な難燃性を付与することができる。
【0009】
本発明に係る分散体において、前記微粒子の平均粒径が10nm以上、2500nm以下の範囲内であることが好ましい。
【0010】
本発明に係る分散体において、前記硫黄化合物又はリン化合物を含有するハイドロタルサイト様化合物が、一般式[M2+1−x3+(OH)][An−x/n・mHO]で表され、ホスト元素であるM2+とM3+がそれぞれMgとAl、又はZnとAlであり、層間陰イオンであるAn−x/nがSONH、S2-、SOCF、PO43-、又はP274-であることが好ましい。この発明によれば、難燃性に優れた被膜を形成することができる。
【0011】
なお、前記硫黄化合物又はリン化合物を含有するハイドロタルサイト様化合物は、(1)共沈法で直接合成してなる、(2)共沈法でナノハイドロタルサイト様化合物を合成した後、イオン交換法で硫黄化合物をインターカレーションして微粒化してなる、(3)沈殿補助剤を用いた均一沈殿法で炭酸型ハイドロタルサイト様化合物を合成した後、硫黄化合物をインターカレーションしてなる、(4)沈殿補助剤を用いた均一沈殿法で炭酸型ハイドロタルサイト様化合物を合成した後、微粒化し、イオン交換法で硫黄化合物をインターカレーションしてなる、又は、(5)ハイドロタルサイト様化合物を再構築法により合成して微粒化してなる、各種の方法で得ることができる。(1)〜(5)の各種手段で得られてなる硫黄化合物又はリン化合物を含有するハイドロタルサイト様化合物は、高分散状態で得られているので、細かい粉粒を被覆体にコーティングできる。その結果、少量でも緻密にコーティングでき、被覆体自体の特性を損ねることなく良好な難燃性を付与することができる。
【0012】
本発明に係る分散体において、さらにバインダーが含まれていることが好ましい。この発明によれば、分散体を被覆体に密着性良くコーティングすることができる。
【0013】
(2)上記課題を解決するための本発明に係る難燃性被膜は、上記した本発明に係る分散体をコーティングしてなることを特徴とする。この発明によれば、難燃性被膜を形成することができる。
【0014】
(3)記課題を解決するための本発明に係る難燃性被覆体は、被覆体上に、上記本発明に係る分散体をコーティングしてなる難燃性被膜が設けられていることを特徴とする。この発明によれば、難燃性に優れた被覆体とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る分散体によれば、硫黄化合物又はリン化合物を含有するハイドロタルサイト様化合物を含むので、耐水性に優れ、被覆体の酸劣化を生じさせない難燃性被膜を形成することができる。また、硫黄化合物又はリン化合物を含有するハイドロタルサイト様化合物は細かい微粒子であり、分散体中で高分散化しているので、細かい粉粒を被覆体にコーティングできる。その結果、少量でも緻密にコーティングでき、被覆体自体の特性を損ねることなく良好な難燃性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】硫黄化合物含有ハイドロタルサイト様化合物の電子顕微鏡写真である。
図2】実施例1,2で用いた硫黄化合物含有ハイドロタルサイト様化合物のXRDパターンである。
図3】(A)は実施例1において、段ボール片上に難燃性被膜を形成した後の表面形態のSEM写真であり、(B)は難燃性被膜を形成する前の表面形態のSEM写真である。
図4】実施例1、3,4で得た分散体で被覆した後の段ボールの燃焼試験を行った後の写真である。
図5】実施例9で行った垂直燃焼試験の模式図である。
図6】燃焼試験結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る分散体及びそれを用いた難燃性被膜について図面を参照しつつ説明する。本発明は、その要旨に範囲内であれば、以下の実施形態に限定されない。
【0018】
本発明に係る分散体は、硫黄化合物又はリン化合物を含有するハイドロタルサイト様化合物(以下「ハイドロタルサイト様化合物」と略す。)の微粒子を含むことに特徴がある。この分散体は、ハイドロタルサイト様化合物を含むので、耐水性に優れ、被覆体の酸劣化を生じさせない難燃性被膜を形成することができる。また、ハイドロタルサイト様化合物が細かい微粒子で高分散化しているので、細かい粉粒を被覆体にコーティングできるので、少量でも緻密な難燃性被膜を形成でき、被覆体自体の特性を損ねることなく良好な難燃性を付与することができる。
【0019】
以下、分散体の構成要素を順に説明する。
【0020】
(ハイドロタルサイト様化合物)
ハイドロタルサイト様化合物は、分散体を構成する成分であり、微粒子化されている。
【0021】
ハイドロタルサイト様化合物は、一般式[M2+1−x3+(OH)][An−x/n・mHO]で表される。このとき、M2+とM3+はホスト元素であり、An−x/nはゲストイオンである層間イオンである。
【0022】
本発明では、層間イオンとして、硫酸誘導体イオン、スルホン酸誘導体イオン等の硫黄化合物、又は、リン酸誘導体イオン等のリン化合物を採用している。これらから選ばれる1又は2以上の化学種が採用される。
【0023】
硫酸誘導体イオンとしては、スルファミン酸イオン(SONH)、ペルオキソ二硫酸イオン(S2−)、硫酸イオン、過硫酸イオン、二硫酸イオン、亜硫酸イオン、二亜硫酸イオン、チオ硫酸イオン、亜ジチオン酸イオン、硫酸水素イオン、フルオロスルホン酸イオン等を挙げることができる。また、スルホン酸誘導体イオンとしては、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、メチルスルホン酸イオン等の脂肪族スルホン酸;パラトルエンスルホン酸イオン、パラフェノールスルホン酸イオン、スルホフタル酸イオン、ポリスチレンスルホン酸イオン等の芳香族スルホン酸イオンを挙げることができる。なかでも、スルファミン酸イオン(SONH)、ペルオキソ二硫酸イオン(S2−)、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(SOCF)が好ましい。
【0024】
リン酸誘導体イオンとしは、リン酸イオン、二リン酸イオン、酸性リン酸エステルイオン、リン酸アミドイオン、ポリリン酸イオン、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオン、過リン酸イオン、三リン酸イオン、ホスホン酸イオン、ホスフィン酸イオン、ペルオキソ一リン酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、チオリン酸イオン、チオリン酸エステルイオン等を挙げることができる。
【0025】
ホスト元素は、M2+としては、Ca2+,Mg2+,Fe2+,Co2+,Ni2+,Cu2+,Zn2+等を挙げることができる。また、M3+としては、Al3+,Ti3〜4+,Cr3+,Fe3+,Co3+,(Mo5〜6+)等を挙げることができる。M2+とM3+の組み合わせとしては、Mg−Al、Zn−Al等が好ましい。
【0026】
一般に「ハイドロタルサイト」とは、構造式MgAl(OH)16CO・4HOを指し、層状の結晶構造を有し、個々の結晶片は葉片状又は鱗状である。構造の主骨格[MgAl(OH)16]はシート状の金属水酸化物である。本願では、このハイドロタルサイトと構造が同じであることから、ハイドロタルサイト様化合物といい、上記のように、一般式[M2+1−x3+(OH)][An−x/n・mHO]で表される。前半部分の[M2+1−x3+(OH)]が水酸化物シートであり、金属イオンを6つのOHが取り囲んで形成する八面体が互いに稜を共有することによって作られている。八面体サイトでは2価金属と3価金属がランダムに入っている。水酸化物シートが何枚も重なってハイドロタルサイト様化合物の層状構造が形成され、そのシート間(層間)には陰イオンと水分子が入る。層間の厚さは、ほぼ層間の陰イオンの大きさに一致する。なお、ハイドロタルサイト様化合物は、シートの積み重なり方によって、菱面体晶系と六方晶系のポリタイプがある。菱面体晶系では単位胞中のシートが3枚、六方晶系では2枚となっている。
【0027】
ハイドロタルサイト様化合物は、微粒子化されている。微粒子化されたハイドロタルサイト様化合物を含む分散体は、被覆体に緻密な難燃性被膜を形成することができる。緻密な難燃性被膜を形成するためには、ハイドロタルサイト様化合物の平均粒径は、緻密な難燃性被膜を形成することができる程度に小さいことが好ましく、現時点では、2500nm以下程度であることが好ましい。なかでも、1000nm以下がより好ましく、800nm以下がさらに好ましい。一方、ハイドロタルサイト様化合物の平均粒径は、10nm以上であり、好ましくは50nm以上であり、より好ましくは100nm以上である。こうした平均粒径のハイドロタルサイト様化合物は、後述する合成方法で説明するように、直接合成してもよいし、合成した後に微粒子化してもよい。なお、平均粒径の測定は、分散体を動的光散乱法を用いて測定した結果で評価した。
【0028】
粒子の形状は、図1に示すように、葉片状又は鱗状であり、特定の規則的な形状ではなく不定形である場合がある。そのため、上記した平均粒径の測定にあたっては、測定対象とする葉片状又は鱗状の粒子について、厚さは除き、長径と短径の平均で表すものとする。
【0029】
なお、ハイドロタルサイト様化合物には、本発明の効果を阻害しない範囲内で、硝酸、サリチル酸等のような、硫黄を含有しないカルボン酸、リン酸、ホウ酸を組み合わせてもよい。
【0030】
(分散体)
分散体は、分散媒中に上記したハイドロタルサイト様化合物(硫黄化合物又はリン化合物を含有するハイドロタルサイト様化合物)が含まれる液体コーティング剤である。溶媒としては、水系溶媒でも非水系溶媒でもよく、本発明の効果を奏する範囲で任意に選択して用いられる。通常、水が好ましく用いられるが、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール等のグリコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のグリコールエーテル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等の含窒素化合物類;シクロヘキサン、n−ヘキサン、イソオクタン、トルエン、キシレン等の炭水素類、等を挙げることができる。
【0031】
分散体は、ハイドロタルサイト様化合物が0.1質量%以上、好ましくは1質量%、より好ましくは5質量%以上含まれている。また、ハイドロタルサイト様化合物が50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下含まれている。これ以外は分散媒である。
【0032】
分散体は、本発明を阻害しない範囲内で、金属水酸化物、無機粉末、リン酸化合物、硫酸化合物、アルキルスルホン酸やホスホン酸等の塩、その他分散体及び難燃層の作業性、安定性、耐水性等を向上させるような添加剤(分散剤、有機溶剤)及びバインダー(無機化合物、有機化合物)を必要に応じて含んでいてもよい。
【0033】
例えば、金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ハイドロタルサイト等を挙げることができる。また、無機粉末としては、炭酸カルシウム粉末、酸化チタン粉末、酸化亜鉛粉末、酸化モリブデン粉末、硼酸亜鉛粉末等を挙げることができる。リン酸化合物としては、リン酸グアジニジン、リン酸アンモニウム、リン酸メラミン、リン酸エチレンジアミン、リン酸ピペラジン、リン酸アミド、酸性リン酸エステル等のリン酸塩や、それらのダイマー、トリマー、オリゴマー、ポリマーを挙げることができる。硫酸化合物としては、スルファミン酸、ペルオキソ二硫酸、硫酸、過硫酸、二硫酸のアンモニウム塩や、メラミン、エチレンジアミン等のアミン類の塩を挙げることができる。
【0034】
また、添加剤としてのバインダーは、液体コーティング剤である分散体を被覆体に密着性良くコーティングするため、分散体に添加されることが好ましく、難燃性を顕著に向上させることができる。特に、プラスチック製品やゴム製品が被覆体である場合に好ましい。そうしたバインダーの例としては、種々の有機化合物や無機化合物を挙げることができる。中でも有機化合物のバインダーが好ましく、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、ポリアクリルアミド、ポリアミン、ポリアルキレンオキサイド、ポリプロピレングリコール、尿素樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、アクリル酸系ポリマー、メラミン樹脂、でんぷん、糖類、ポリエチレンイミン、ポリアミジン、オキサゾリン基含有水溶性ポリマー、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリイソシアネート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、アミド系樹脂、イミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル、シリコーン等を挙げることができる。
【0035】
こうした分散体を被覆体に塗布し、乾燥させて水を除去すれば、被覆体表面に薄い難燃性被膜を形成することができる。その難燃性被膜の厚さは任意に設定でき、特に限定されないが、例えば0.2μm以上120μm以下の範囲の程度にすることができる。この範囲内の厚さの難燃性被膜は、被覆体の柔軟性、曲げ性、剛性等の特性を阻害しないまま、難燃性を付与することができるので好ましい。難燃性被膜の厚さは、電子顕微鏡での測定や、塗布量から厚さに換算して求めることができる。
【0036】
なお、段ボール等の紙製品に難燃性被膜を設けた場合は、塗布量で表す方が容易である。その場合の好ましい塗布量は、0.5g/m以上、1000g/m以下の範囲であり、より好ましくは2.5g/m以上、250g/m以下の範囲であり、特に好ましくは10g/m以上、100g/m以下の範囲である。
【0037】
分散体で形成した難燃性被膜は、例えば加熱されると、脱水炭化して[M2+1−x3+(2+x)/2]が残ると考えられ、緻密な層状構造を維持している。こうした層状構造は、酸素を遮断でき、例えば被覆体が段ボール等の紙材質である場合、その燃焼を防ぐことができる。
【0038】
また、分散体で形成した難燃性被膜は、緻密なハイドロタルサイト様化合物層が形成されているので、水に対する溶解性が極めて低く、高い耐水性を被覆体に付与することができる。また、分散体自体は、中性から弱アルカリ性であり且つ分解性もないため、経時変化して酸性にならない。その結果、段ボール等の被覆体を酸劣化させることがない。
【0039】
(被覆体)
被覆体としては、分散体でコーティングすることによって燃焼を防ぎたい各種のものを挙げることができる。例えば、紙製品、プラスチック製品、ゴム製品、木材製品、繊維製品等を挙げることができる。
【0040】
紙製品としては、段ボール、塗工紙、ペーパーハニカム材、紙管を挙げることができる。また、プラスチック製品としては、樹脂フィルム、樹脂成形品、発泡フィルム、発泡樹脂成形品等を挙げることができる。木材製品としては、木材、合板、各種加工品等を挙げることができる。また、繊維製品としては、不織布、繊維圧縮体、繊維フィルム等を挙げることができる。
【0041】
これらの被覆体は、分散体でコーティングされた被膜(難燃性被膜)との間で密着性が良好であることが好ましく、特に熱が加わってもその密着性が保持されていることが好ましい。その結果、熱が加わっても被覆体と難燃性被膜との密着性が保持されるので、難燃性被膜がバリアとなって被覆体の燃焼を防ぐことができる。密着性の向上には、必要に応じ分散体にバインダーを添加することが望ましい。特にプラスチック製品やゴム製品は、紙製品や木材製品や維製製品のように被覆体の表面が繊維状であるものに比べ、表面が平坦である場合が多く、分散体をコーティングしてなる難燃性被膜の密着性が十分でない場合があることから、分散体にバインダーを添加することが好ましい。
【0042】
なお、被覆体として段ボールを適用した場合における難燃性被膜を含んだ後の段ボールの質量は、100を段ボールの質量とした場合、0.1以上、好ましくは0.5以上、より好ましくは2以上であり、200以下、好ましくは50以下、より好ましくは20以下である。特に、好ましい質量範囲においては、段ボール全体の質量を過度に増大させることがなく、運搬上支障が生じるのを抑えることができる。
【0043】
(その他の層)
被覆体上に難燃性被膜を形成した後、さらにその難燃性被膜上に表面保護層(トップコート層ともいう。)を形成することが好ましい。表面保護層の構成材料としては、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、シリコーン系化合物、シリカ系化合物、アルミニウムや銅等の金属、等を挙げることができる。表面保護層の形成は、その構成材料によっても異なるが、樹脂材料や化合物材料の場合は、コーティング等によって形成することができ、金属や化合物の場合は、PVD等の各種の成膜手段で形成することができる。また、各種の樹脂フィルム、化合物フィルム、金属フィルム等を接着層を介して貼り合わせて表面保護層としてもよい。その厚さも特に限定されないが、表面保護層の構成材料の種類に応じ、表面保護層としての機能を発揮できるだけの厚さが設けられていればよい。
【0044】
その他の層としては、被覆体と難燃性被膜との間には、両者の密着性を向上させるためのプライマー層を設けてもよいし、上記した表面保護層と難燃性被膜との間にも、両者の密着性を向上させるためのプライマー層を設けてもよい。
【0045】
以上説明したように、分散体は、硫黄化合物又はリン化合物を含有するハイドロタルサイト様化合物を含むので、耐水性に優れ、被覆体の酸劣化を生じさせない難燃性被膜を形成することができる。また、硫黄化合物又はリン化合物を含有するハイドロタルサイト様化合物が微粒化しているので、細かい粉粒を被覆体にコーティングでき、少量でも緻密にコーティングでき、被覆体自体の特性を損ねることなく良好な難燃性を付与することができる。
【0046】
(合成方法)
次に、ハイドロタルサイト様化合物の合成方法を説明する。ハイドロタルサイト様化合物は、(1)共沈法で直接合成して得てもよいし、(2)共沈法でナノハイドロタルサイト様化合物を合成した後、イオン交換法で硫黄化合物をインターカレーションして微粒化して得てもよいし、(3)沈殿補助剤を用いた均一沈殿法で炭酸型ハイドロタルサイト様化合物を合成した後、硫黄化合物をインターカレーションして得てもよいし、(4)沈殿補助剤を用いた均一沈殿法で炭酸型ハイドロタルサイト様化合物を合成した後、微粒化し、イオン交換法で硫黄化合物をインターカレーションして得てもよいし、又は、(5)ハイドロタルサイト様化合物を再構築法により合成して微粒化して得てもよい。
【0047】
これらの方法で合成されたハイドロタルサイト様化合物は、緻密な難燃性被膜を得ることができる程度に微粒化された状態で得られているので、細かい粉粒を被覆体にコーティングでき、少量でも緻密にコーティングでき、被覆体自体の特性を損ねることなく良好な難燃性を付与することができる。
【0048】
上記した層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide;以下、LDHという。)層間への陰イオンのインターカレーション法としては、一般に、共沈法、イオン交換法、再構築法が用いられる。
【0049】
共沈法は、一般的な炭酸型、塩化物型又は硝酸型のLDH(層状複水酸化物、Layered Double Hydroxide;以下、LDHという。)を調製する方法であり、目的のゲスト陰イオンを含む水溶液に二価−三価金属イオン混合溶液をpH調整しながら加え、加水分解によるLDHの沈殿生成にともなって、陰イオンを直接LDH層間に取り込む方法である。
【0050】
イオン交換法は、まずNOやClのような電荷密度の低い陰イオンをゲストとするLDHを調製し、次いで、これを目的のゲスト陰イオンを含む水溶液に添加することによりイオン交換を行い、陰イオンを取り込む方法である。
【0051】
再構築法は、Mg−Al型LDHやZn−Al型LDHに特有な熱分解−再水和反応を利用するものであり、熱分解物の再水和法、浸漬法又は再生法とも呼ばれている。すなわち、先ず、LDHを熱分解して層間水の脱離と、層間イオンの分解・脱離及び水酸化物基本層の縮合脱水とを行い、酸化物固溶体(前駆体)を得る。次いで、これを目的のゲスト陰イオンを含む水溶液に添加し、再水和反応に伴ってLDH構造を再生する際に陰イオンを層間に取り込む方法である。
【実施例】
【0052】
以下、実施例と比較例を挙げて本発明を詳しく説明する。
【0053】
[実施例1]
ハイドロタルサイトとして、一般式;MgAl(OH)(CO2−0.5・2HOで示される市販の炭酸型LDHであるハイドロタルサイト(DHT−6、協和化学工業株式会社製、平均粒径:約1μm)を700℃、2時間の条件で焼成して、ハイドロタルサイト焼成物を得た。このハイドロタルサイト焼成物34.4質量部を、スルファミン酸アンモニウム(NHSONH)25.1質量部と脱炭酸イオン交換水1500質量部とを混ぜた溶液中に投入し、60℃で2時間撹拌させ、上記した再構築法によって硫黄化合物含有ハイドロタルサイト様化合物を生成した。溶液中で生成した硫黄化合物含有ハイドロタルサイト様化合物の沈殿物は、遠心分離した後に水洗して得た。得られたハイドロタルサイト沈殿物に水を加え、沈殿しないように高分散化させ、硫黄化合物含有ハイドロタルサイト様化合物を含む分散体である実施例1のコーティング剤を得た。なお、硫黄化合物含有ハイドロタルサイト様化合物の平均粒径は、動的光散乱法(マルバーン株式会社製)によって測定した値であり、210nmであった。
【0054】
得られたコーティング剤を、縦215mm、横165mm、厚さ5mmの段ボール片上に、80℃で3時間乾燥した後の付着量が約3質量%(段ボール100質量%との比。以下同じ。)になるように塗布し、その後に80℃で3時間乾燥して実施例1の燃焼試験用試験片を作製した。この燃焼試験用試験片には、付着量2.8質量%の硫黄化合物含有ハイドロタルサイト様化合物が付着していた。なお、付着量は、段ボール100質量%に対する質量%で示した。
【0055】
[実施例2]
実施例1において、硫黄化合物含有ハイドロタルサイト様化合物の付着量を19.1質量%にした他は、実施例1と同様にして、実施例2の燃焼試験用試験片を作製した。
【0056】
[実施例3]
実施例1において、スルファミン酸アンモニウム(NHSONH)に代えてペルオキソ二硫酸アンモニウム((NH)25.1質量部を用い、硫黄化合物含有ハイドロタルサイト様化合物の付着量を20.3質量%にした他は、実施例1と同様にして、実施例3の燃焼試験用試験片を作製した。なお、このときの硫黄化合物含有ハイドロタルサイト様化合物の平均粒径は、320nmであった。
【0057】
[実施例4]
実施例1において、スルファミン酸アンモニウム(NHSONH)に代えてトリフルオロメタンスルホン酸ナトリウム(NaSOCF)50.6質量部を用い、硫黄化合物含有ハイドロタルサイト様化合物の付着量を19.9質量%にした他は、実施例1と同様にして、実施例4の燃焼試験用試験片を作製した。なお、このときの硫黄化合物含有ハイドロタルサイト様化合物の平均粒径は、350nmであった。
【0058】
[実施例5]
実施例1において、スルファミン酸アンモニウム(NHSONH)に代えてりん酸アンモニウム((NH3PO)37.2質量部を用い、リン化合物含有ハイドロタルサイト様化合物を得た。得られたハイドロタルサイト様化合物の付着量を50.0質量%にした。その他は、実施例1と同様にして、実施例5の燃焼試験用試験片を作製した。なお、このときのハイドロタルサイト様化合物の平均粒径は、2210nmであった。
【0059】
[実施例6]
実施例1において、スルファミン酸アンモニウム(NHSONH)に代えて二リン酸ナトリウム・10水和物(Na・10HO)24.5質量部を用い、リン化合物含有ハイドロタルサイト様化合物を得た。得られたハイドロタルサイト様化合物の付着量を20.2質量%にした。その他は、実施例1と同様にして、実施例6の燃焼試験用試験片を作製した。なお、このときのハイドロタルサイト様化合物の平均粒径は、2150nmであった。
【0060】
[実施例7]
水酸化マグネシウム(Mg(OH))38.5質量部とスルファミン酸(HSONH)20.9質量部と脱炭酸イオン交換水733質量部とを混ぜた溶液中に、アルミン酸ナトリウム(NaAlO)128.2質量部と脱炭酸イオン交換水608.7質量部とを混ぜた溶液を投入し、上記した共沈法にて沈殿物を共沈させた。共沈法は、上記したように、ゲスト陰イオンを含む水溶液に二価−三価金属イオン混合溶液をpH調整しながら加え、LDHの沈殿生成にともなって、陰イオンを直接LDH層間に取り込む方法である。共沈の後、60℃で18時間熟成させ、遠心分離した後に湿式粉砕し、硫黄化合物含有ハイドロタルサイト様化合物を得た。得られたハイドロタルサイト沈殿物に固形分が5%(質量比)になるように水を加え、沈殿しないように高分散化させ、硫黄化合物含有ハイドロタルサイト様化合物を含む分散体である実施例7のコーティング剤を得た。このときの平均粒径は、640nmであった。
【0061】
得られたコーティング剤を、縦215mm、横165mm、厚さ5mmの段ボール片上に、80℃で3時間乾燥した後の付着量が約15質量%になるように塗布し、その後に80℃で3時間乾燥して実施例7の燃焼試験用試験片を作製した。この燃焼試験用試験片には、付着量15.6質量%の硫黄化合物含有ハイドロタルサイト様化合物が付着していた。
【0062】
[実施例8]
実施例7において、水酸化マグネシウム(Mg(OH))に代えて酸化亜鉛(ZnO)53.7質量部を用い、硫黄化合物含有ハイドロタルサイト様化合物の付着量を21.5質量%にした他は、実施例7と同様にして、実施例8の燃焼試験用試験片を作製した。なお、このときの硫黄化合物含有ハイドロタルサイト様化合物の平均粒径は、220nmであった。
【0063】
[比較例1]
実施例1において、スルファミン酸アンモニウム(NHSONH)を入れずにハイドロタルサイト様化合物(硫黄化合物を含まない)を得た。得られたハイドロタルサイト様化合物の付着量を20.0質量%にした。その他は、実施例1と同様にして、比較例1の燃焼試験用試験片を作製した。なお、このときのハイドロタルサイト様化合物の平均粒径は、1800nmであった。
【0064】
[比較例2]
実施例1において、遠心分離して得たハイドロタルサイト沈殿物を湿式粉砕せず、硫黄化合物含有ハイドロタルサイト様化合物を得た。その他は、実施例1と同様にして、比較例2の燃焼試験用試験片を作製した。なお、このときの硫黄化合物含有ハイドロタルサイト様化合物の平均粒径は、5000nmであった。
【0065】
[比較例3]
平均粒径0.2μmの水酸化アルミニウムの固形分が5%(質量比)になるように水を加えて比較例3のコーティング剤を得た。このコーティング剤を、縦215mm、横165mm、厚さ5mmの段ボール片上に、80℃で3時間乾燥した後の付着量が20質量%になるように塗布し、その後に80℃で3時間乾燥して比較例3の燃焼試験用試験片を作製した。この燃焼試験用試験片には、付着量22.6質量%の水酸化アルミニウムが付着していた。
【0066】
[比較例4]
アルミナゾル溶液(日産化学工業株式会社製、商品名:AS−200)からなるコーティング剤を調製した。そのコーティング剤を、縦215mm、横165mm、厚さ5mmの段ボール片上に、80℃で3時間乾燥した後の付着量が約20質量%になるように塗布し、その後に80℃で3時間乾燥して比較例4の燃焼試験用試験片を作製した。この燃焼試験用試験片には、付着量20.4質量%のアルミナが付着していた。
【0067】
[比較例5]
45%スルファミン酸グアニジン水溶液からなるコーティング剤を調製した。そのコーティング剤を、縦215mm、横165mm、厚さ5mmの段ボール片上に、80℃で3時間乾燥した後の付着量が約5質量%になるように塗布し、その後に80℃で3時間乾燥して比較例5の燃焼試験用試験片を作製した。この燃焼試験用試験片には、付着量4.3質量%のスルファミン酸グアニジンが付着していた。
【0068】
[比較例6]
50%リン酸グアニジン水溶液からなるコーティング剤を調製した。そのコーティング剤を、縦215mm、横165mm、厚さ5mmの段ボール片上に、80℃で3時間乾燥した後の付着量が約10質量%になるように塗布し、その後に80℃で3時間乾燥して比較例6の燃焼試験用試験片を作製した。この燃焼試験用試験片には、付着量11.3質量%のリン酸グアニジンが付着していた。
【0069】
[結晶構造]
図2は、実施例1,2で用いた硫黄化合物含有ハイドロタルサイト様化合物のXRDパターンである。X線回折は、X線回折装置(装置名:RINT2000、リガク株式会社製)を用い、CuKα線を用いて測定した、得られたX線回折パターンは、2θ=10°、20°、35°、61°に結晶性のブロードな回折ピークが確認された。このことは、硫黄化合物又はリン化合物を含有するハイドロタルサイト様化合物が非常に小さな微結晶(40nm以下)であることを示している。そのため、硫黄化合物又はリン化合物を含有するハイドロタルサイト様化合物は、多結晶微粒子ということができる。
【0070】
[表面形態]
図3は、(A)は実施例1において段ボール片上に難燃性被膜を形成した後の表面形態のSEM写真であり、(B)は難燃性被膜を形成する前の表面形態のSEM写真である。図3(B)に示すように、分散体で難燃性被膜を形成する前では、段ボール表面の繊維が見えるが、図3(A)に示すように、分散体で難燃性被膜を形成した後は、緻密な難燃性被膜が形成されており、段ボール表面の繊維は見えない。さらに、難燃性被膜の割れた部分を見ても、繊維が見えないことから、割れた部分にも難燃性被膜が形成されていることが確認でき、極めて燃えにくいと考えられる。
【0071】
[燃焼実験]
燃焼試験は、JIS Z 2150に準拠し、45°に傾けた長さ250mmの燃焼試験用試験片に対し、接炎角度45°で接炎させた。燃焼ガスは、都市ガス13A(メタン89.60%、エタン5.62%、プロパン3.43%、ブタン1.35%で計100%)を用い、ブレセントバーナー炎高さ65mm、接炎高さ65mm、接炎時間10秒とし、酸化性炎を、燃焼試験用試験片の下端から50mmの箇所に接炎させて行った。
【0072】
残炎(着炎後バーナーを取り去ってから炎を上げて燃える状態がやむまでの経過時間)の評価は、5秒以内の場合を「○」で表し、5秒を超えた場合を「×」で表した。残じん(着炎後バーナーを取り去ってから炎を上げずに燃える状態がやむまでの経過時間)の評価も、5秒以内の場合を「○」で表し、5秒を超えた場合を「×」で表した。炭化長の評価は、燃焼試験後の炭化した部分の長手方向の長さ(cm)で表した。その結果を表1に示す。
【0073】
また、図4は、実施例1、3,4で得た分散体で被覆した後の段ボールの燃焼試験を行った後の写真である。
【0074】
【表1】
【0075】
以上の結果より、本発明に係る分散体を用いて得た難燃性被膜は、残炎、残じん、炭化長において、良好な結果を示した。
【0076】
[実施例9]
実施例1で用いたコーティング剤に、さらにバインダー(アミノ系樹脂、固形分20%、25質量部)加えたコーティング剤を使用した。このコーティング剤を用い、厚さ50μmのPETフィルム(東レ株式会社製、ルミラー(登録商標)S10#50)の両面にコーティング剤を塗布し、乾燥(150℃、5分)して、厚さ1μmの難燃性被膜を形成した。これを、UL94VTMに準拠した垂直燃焼試験用の試料とした。
【0077】
UL94VTMとは、UL規格でのプラスチックの燃焼試験に関するものであり、薄いフィルムにおいてフィルムが変形したり縮み上がって着火不能な場合に行われる燃焼試験である。今回の垂直燃焼試験は、燃焼ガス種としてプロパンガスを用い、バーナーとしてブレゼンバーナーを用いた他は、UL94VTMと同じとした。図5は、今回行った垂直燃焼試験(UL94VTM試験準拠)の模式図である。UL94VTM試験では、試験フィルムを標線まで筒状に巻いた全長200mmのものを5サンプル準備し、それぞれのサンプルの先端に図5に示すように着火(3秒間を2回)した。判定は、UL94VTM試験と同様、(1)各サンプルの燃焼時間、(2)5サンプルの燃焼時間の合計、(3)2回目着火後のグローイング時間、(4)上端まで燃えるか否か、(5)滴下物で綿が燃えるか否か、で評価した。結果を表2と図6に示した。
【0078】
表2及び図6の結果からわかるように、(1)各サンプルの燃焼時間は最大で4秒であり、(2)5サンプルの燃焼時間の合計は14秒であり、(4)上端まで燃えることはなかった。また、(3)2回目着火後のグローイング時間は0秒であり、(5)滴下物で綿が燃えることもなかった。この結果より、難燃性被覆の作用により燃焼が継続しないことが確認でき、VTM試験の評価結果としては最高水準の「VTM−0」であることを確認した。
【0079】
【表2】
図2
図5
図1
図3
図4
図6