特許第6012931号(P6012931)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6012931画像処理装置及び画像処理装置の制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012931
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】画像処理装置及び画像処理装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20161011BHJP
   A61B 6/00 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   A61B5/05 390
   A61B5/05 380
   A61B6/00 330Z
   A61B6/00 370
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-69151(P2011-69151)
(22)【出願日】2011年3月28日
(65)【公開番号】特開2011-224355(P2011-224355A)
(43)【公開日】2011年11月10日
【審査請求日】2014年2月18日
【審判番号】不服2015-7957(P2015-7957/J1)
【審判請求日】2015年4月28日
(31)【優先権主張番号】特願2010-77630(P2010-77630)
(32)【優先日】2010年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 聡
【合議体】
【審判長】 郡山 順
【審判官】 ▲高▼橋 祐介
【審判官】 渡戸 正義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−86400(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/150566(WO,A1)
【文献】 特開2000−287957(JP,A)
【文献】 特開2006−43187(JP,A)
【文献】 特開2006−55419(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/035444(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/055 ,A61B 6/00 ,A61B 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MRI装置によって被検体の左右の乳房を含む3次元空間を撮像して得られた3次元画像データから、前記左右の乳房それぞれの2次元画像を生成し、生成した各2次元画像における胸壁部分が互いに向き合うように配置することで前記左右の乳房を対称に配置した対比用2次元画像を生成する生成手段と、
前記対比用2次元画像を表示部に表示させる表示制御手段と
を備え
前記被検体を載置するための寝台と、
前記被検体からの磁気共鳴信号を受信し、前記寝台に設けられる受信RFコイルと、
前記受信RFコイルによって受信された磁気共鳴信号に基づいて前記3次元画像データを再構成する再構成手段とを更に備え、
前記生成手段は、前記寝台又は前記受信RFコイルの位置に基づいて、前記胸壁の位置を認識することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記生成手段は、前記生成した各2次元画像における胸壁部分を結合することで前記左右の乳房を対称に配置した対比用2次元画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記生成手段は、前記3次元画像データに対して前記被検体の頭尾方向又は左右方向に投影処理を施すことで前記左右の乳房それぞれの2次元投影画像を生成し、この2次元投影画像を配置することで前記対比用2次元画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記投影処理は最大値投影、最小値投影、加算平均の少なくとも一つを伴う処理であることを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記生成手段は、前記3次元画像データに含まれる領域のうち前記被検体の胸壁部分より背中側の領域を除いた領域に対して前記投影処理を施すことを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記生成手段は、前記3次元画像データから前記被検体の左右方向に並ぶ複数の体軸断面の断層像を生成し、生成した複数の断層像を左右の中心で2つの画像群に分け、左側の画像群に含まれる断層像の胸壁部分と右側の画像群に含まれる断層像の胸壁部分が互いに向き合うように配置することで複数の前記対比用2次元画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記生成手段は、前記3次元画像データから前記被検体の頭尾方向に並ぶ複数の矢状断面の断層像を作成し、生成した複数の断層像を前記3次元画像データの中心から同じ距離に位置する画像ごとに胸壁部分が互いに向き合うように配置することで複数の前記対比用2次元画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記表示制御手段は、X線マンモグラフィー装置によって取得されたX線マンモグラフィー画像を前記対比用2次元画像と対比可能に表示することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記生成手段は、前記MRI装置によって取得された複数種類の前記3次元画像データのそれぞれから、複数種類の対比用2次元画像を生成し、
前記表示制御手段は、前記複数種類の対比用2次元画像を対比可能に表示することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項10】
MRI装置によって被検体の左右の乳房を含む3次元空間を撮像して得られた3次元画像データから前記左右の乳房それぞれの2次元画像を生成し、生成した各2次元画像における胸壁部分が互いに向き合うように配置することで前記左右の乳房を対称に配置した対比用2次元画像を生成する生成手段と、
前記対比用2次元画像を表示部に表示させる表示制御手段と
をコンピュータに実行させ
前記被検体からの磁気共鳴信号を受信し、前記被検体を載置するための寝台に設けられる受信RFコイルによって受信された磁気共鳴信号に基づいて前記3次元画像データを再構成する再構成手段を更にコンピュータに実行させ、
前記生成手段は、前記寝台又は前記受信RFコイルの位置に基づいて、前記胸壁の位置を認識することを特徴とする画像処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び画像処理装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(Magnetic Resonance Imaging:MRI)装置は、対象原子核スピンの集団が磁場中に置かれたときに、その固有の磁気モーメントと存在磁場強度とに応じた特定の周波数(共鳴周波数)で回転する高周波磁場に共鳴し、その緩和過程で信号(磁気共鳴信号)を発生する現象を利用して、物質の化学的及び物理的な微視的情報を取得する装置である。
【0003】
かかるMRI装置は、頭頸部、腹部、脊椎など、全身各部位の画像を取得することが可能である。そのため、MRI装置によって取得された画像は、診断目的に利用されることが多い。また、近年、MRI装置は、乳房の検査にも使用されている(例えば、特許文献1参照)。MRI装置によって取得された乳房の画像は、特に早期の乳がん検出や病変の良悪性診断、腫瘍の広がり診断に有効であると報告されている。
【0004】
しかし、一般的な乳腺疾患の画像診断においては、診断のエビデンス、装置普及度、検査の簡便性などの理由からX線マンモグラフィー装置による検査が第一に選択される場合が多く、次いで超音波診断装置による検査が行われる。MRI装置による検査は、X線マンモグラフィー装置や超音波診断装置による画像診断の結果を参照して腫瘤の広がりの把握や術式を決定する場合に相補的に利用されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−325972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来の技術では、以下で説明するように、X線マンモグラフィーによって取得された画像(以下、X線マンモグラフィー画像と呼ぶ)とMRI装置によって撮像された画像とを容易に比較することができないという課題があった。
【0007】
例えば、乳腺画像診断の標準的手法であるX線マンモグラフィー装置による標準的な撮影方法には、CC(Cranio Caudal:頭尾)方向の撮影、ML(Medio Lateral:内外側)方向又はMLO(Medio Lateral Oblique:内外側斜位)方向の撮影がある。そして、一般的に、これらの撮影により個々に撮影した左右の乳房の画像は、対称性を見るために、胸壁を合わせて並べて表示されて読影される。
【0008】
一方、MRI装置は3次元のデータ収集が可能である。そのため、MRI装置による検査では、通常、体軸断(Axial)の画像又は矢状断(Sagittal)の画像、あるいはそれらの方向に最大値投影した画像が読影に使用される。したがって、MRI装置により取得された画像の読影において、すでに撮像されているX線マンモグラフィー画像との対比を行う場合に、それぞれの画像の視線方向と表示される向きが異なるため、読影者が両者の位置関係を把握することが困難であった。
【0009】
なお、上記課題はMRI装置に限って生じるものではなく、X線CT(Computed Tomography)装置やPET(Positron Emission Tomography)装置など、他の医用画像診断装置によって取得された乳房の画像とX線マンモグラフィー画像とを比較する場合にも同様に生じるものである。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、X線マンモグラフィーによって撮影された画像との比較を容易に行うことができる画像を読影者に提供することが可能な画像処理装置、医用画像診断装置及び画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1記載の本発明は、画像処理装置が、MRI装置によって被検体の左右の乳房を含む3次元空間を撮像して得られた3次元画像データから前記左右の乳房それぞれの2次元画像を生成し、生成した各2次元画像における胸壁部分が互いに向き合うように配置することで前記左右の乳房を対称に配置した対比用2次元画像を生成する生成手段と、前記対比用2次元画像を表示部に表示させる表示制御手段とを備え、前記被検体を載置するための寝台と、前記被検体からの磁気共鳴信号を受信し、前記寝台に設けられる受信RFコイルと、前記受信RFコイルによって受信された磁気共鳴信号に基づいて前記3次元画像データを再構成する再構成手段とを更に備え、前記生成手段は、前記寝台又は前記受信RFコイルの位置に基づいて、前記胸壁の位置を認識することを特徴とする。
また、請求項10記載の本発明は、画像処理装置の制御プログラムが、MRI装置によって被検体の左右の乳房を含む3次元空間を撮像して得られた3次元画像データから前記左右の乳房それぞれの2次元画像を生成し、生成した各2次元画像における胸壁部分が互いに向き合うように配置することで前記左右の乳房を対称に配置した対比用2次元画像を生成する生成手段と、前記対比用2次元画像を表示部に表示させる表示制御手段とをコンピュータに実行させ、前記被検体からの磁気共鳴信号を受信し、前記被検体を載置するための寝台に設けられる受信RFコイルによって受信された磁気共鳴信号に基づいて前記3次元画像データを再構成する再構成手段を更にコンピュータに実行させ、前記生成手段は、前記寝台又は前記受信RFコイルの位置に基づいて、前記胸壁の位置を認識することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1及び10記載の本発明によれば、X線マンモグラフィーによって撮影された画像との比較を容易に行うことができる画像を読影者に提供することが可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施例に係るMRI装置の全体構成を示す図である。
図2図2は、本実施例に係る計算機システムの詳細な構成を示す機能ブロック図である。
図3図3は、本実施例に係るMRI装置による対比用乳房画像の生成の処理手順を示すフローチャートである。
図4図4は、本実施例に係る対比用乳房画像生成部による頭尾方向の対比用乳房画像の生成を説明するための図である。
図5図5は、本実施例に係る対比用乳房画像生成部による左右方向の対比用乳房画像の生成を説明するための図である。
図6図6は、他の実施例に係る対比用乳房画像生成部による頭尾方向の対比用乳房画像の生成を説明するための図である。
図7図7は、他の実施例に係る対比用乳房画像生成部による左右方向の対比用乳房画像の生成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る画像処理装置、医用画像診断装置及び画像処理プログラムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下では、本発明をMRI装置に適用した場合について説明するが、本実施例により本発明が限定されるものではない。
【0015】
最初に、図1を用いて、本実施例に係るMRI装置の全体構成について説明する。
【0016】
図1は、本実施例に係るMRI装置の全体構成を示す図である。同図に示すように、本実施例に係るMRI装置100は、静磁場磁石1、傾斜磁場コイル2、傾斜磁場電源3、寝台4、寝台制御部5、送信RFコイル6、送信部7、受信RFコイル8、受信部9、及び計算機システム10を備える。
【0017】
静磁場磁石1は、中空の円筒形状に形成された磁石であり、内部の空間に一様な静磁場を発生させる。この静磁場磁石1としては、例えば永久磁石、超伝導磁石等が使用される。
【0018】
傾斜磁場コイル2は、中空の円筒形状に形成されたコイルであり、静磁場磁石1の内側に配置される。この傾斜磁場コイル2は、互いに直交するX,Y,Zの各軸に対応する3つのコイルが組み合わされて形成されており、これら3つのコイルは、後述する傾斜磁場電源3から個別に電流供給を受けて、X,Y,Zの各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を発生させる。なお、Z軸方向は、静磁場と同方向とする。
【0019】
ここで、傾斜磁場コイル2によって発生するX,Y,Z各軸の傾斜磁場は、例えば、スライス選択用傾斜磁場Gs、位相エンコード用傾斜磁場Ge及びリードアウト用傾斜磁場Grにそれぞれ対応している。スライス選択用傾斜磁場Gsは、任意に撮像断面を決めるために利用される。位相エンコード用傾斜磁場Geは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の位相を変化させるために利用される。リードアウト用傾斜磁場Grは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号の周波数を変化させるために利用される。
【0020】
傾斜磁場電源3は、後述する計算機システム10による制御のもと、傾斜磁場コイル2に電流を供給する。
【0021】
寝台4は、被検体Pが載置される天板4aを備え、後述する寝台制御部5による制御のもと、天板4aを、被検体Pが載置された状態で傾斜磁場コイル2の空洞(撮像口)内へ挿入する。通常、この寝台4は、長手方向が静磁場磁石1の中心軸と平行になるように設置される。
【0022】
寝台制御部5は、寝台4を制御する。例えば、寝台制御部5は、寝台4を駆動して、天板4aを長手方向又は上下方向へ移動する。
【0023】
送信RFコイル6は、傾斜磁場コイル2の内側に配置されたコイルである。この送信RFコイル6は、送信部7から高周波パルスの供給を受けて、高周波磁場を発生する。
【0024】
送信部7は、後述する計算機システム10による制御のもと、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信RFコイル6に送信する。この送信部7は、発振部、位相選択部、周波数変換部、振幅変調部、高周波電力増幅部などを有する。発振部は、静磁場中における対象原子核に固有の共鳴周波数の高周波信号を発生する。位相選択部は、上記高周波信号の位相を選択する。周波数変換部は、位相選択部から出力された高周波信号の周波数を変換する。振幅変調部は、周波数変調部から出力された高周波信号の振幅を例えばsinc関数に従って変調する。高周波電力増幅部は、振幅変調部から出力された高周波信号を増幅する。これらの各部の動作の結果として、送信部7は、ラーモア周波数に対応する高周波パルスを送信RFコイル6に送信する。
【0025】
受信RFコイル8は、送信RFコイル6により発生した高周波磁場の影響によって被検体Pから放射される磁気共鳴信号を受信する。本実施例で使用される受信RFコイル8は、乳房撮像用のコイルであり、寝台4の天板4a上に配置される。診断時には、この受信RFコイル8の上に被検体Pが伏臥位で配置される。かかる受信RFコイル8は、磁気共鳴信号を受信すると、その磁気共鳴信号を受信部9へ出力する。
【0026】
受信部9は、後述する計算機システム10による制御のもと、受信RFコイル8から出力される磁気共鳴信号に基づいて磁気共鳴(Magnetic Resonance:MR)信号データを生成する。そして、受信部9は、生成したMR信号データを計算機システム10に送信する。
【0027】
計算機システム10は、MRI装置100の全体制御やデータ収集、画像再構成などを行う。この計算機システム10は、インタフェース部11、データ収集部12、データ処理部13、記憶部14、表示部15、入力部16、及び制御部17を有する。
【0028】
インタフェース部11は、傾斜磁場電源3、寝台制御部5、送信部7及び受信部9に接続される。そして、インタフェース部11は、これらの接続された各部と計算機システム10との間で授受される信号の入出力を制御する。
【0029】
データ収集部12は、インタフェース部11を介して、受信部9から送信されるMR信号データを収集する。このデータ収集部12は、MR信号データを収集すると、収集したMR信号データを記憶部14に記憶させる。
【0030】
データ処理部13は、記憶部14に記憶されているMR信号データに対して、後処理すなわちフーリエ変換等の再構成処理を施すことによって、被検体P内における所望核スピンのスペクトラムデータあるいは画像データを生成する。
【0031】
記憶部14は、データ収集部12によって収集されたMR信号データや、データ処理部13によって生成された画像データなどを被検体Pごとに記憶する。
【0032】
表示部15は、制御部17による制御のもと、スペクトラムデータあるいは画像データ等の各種の情報を表示する装置である。この表示部15としては、液晶表示器などの表示デバイスを利用可能である。
【0033】
入力部16は、操作者から各種操作や情報入力を受け付ける。この入力部16としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスを適宜に利用可能である。
【0034】
制御部17は、図示していないCPU(Central Processing Unit)やメモリ等を有し、MRI装置100を総括的に制御する。例えば、制御部17は、操作者により設定された撮像条件に基づいて傾斜磁場電源3、送信部7及び受信部9を制御することで、各種撮像シーケンスを実行する。
【0035】
以上、本実施例に係るMRI装置の全体構成について説明した。このような構成のもと、本実施例では、計算機システム10が、被検体Pの左右の乳房を含む3次元空間からMR信号を収集する撮像シーケンスを実行する。また、計算機システム10は、撮像シーケンスを実行することにより収集されたMR信号に基づいて左右の乳房の3次元画像データを再構成する。また、計算機システム10は、再構成した3次元画像データから左右の乳房それぞれの2次元画像を生成し、生成した各2次元画像における胸壁部分を結合することで左右の乳房を対称に配置した2次元画像を生成する。そして、計算機システム10は、生成した2次元画像を表示部15に表示させる。
【0036】
ここで、上述した従来の技術では、X線マンモグラフィー画像とMRI装置によって撮像された画像とを容易に比較することができない。例えば、乳腺画像診断の標準的手法であるX線マンモグラフィー装置による標準的な撮影方法には、CC(Cranio Caudal:頭尾)方向の撮影、ML(Medio Lateral:内外側)方向又はMLO(Medio Lateral Oblique:内外側斜位)方向の撮影がある。そして、一般的に、これらの撮影により個々に撮影した左右の乳房の画像は、対称性を見るために、胸壁を合わせて並べて表示されて読影される。
【0037】
一方、MRI装置は3次元のデータ収集が可能である。そのため、MRI装置による検査では、通常、体軸断(Axial)の画像又は矢状断(Sagittal)の画像、あるいはそれらの方向に最大値投影した画像が読影に使用される。したがって、MRI装置により取得された画像の読影において、すでに撮像されているX線マンモグラフィー画像との対比を行う場合に、それぞれの画像の視線方向と表示される向きが異なるため、読影者が両者の位置関係を把握することが困難であった。
【0038】
しかしながら、本実施例の構成によれば、MRI装置100により撮像された乳房の画像が、X線マンモグラフィー装置により撮影されるX線マンモグラフィー画像と同様に、左右の乳房が胸壁を合わせて対称に配置された状態で表示される。したがって、MRI装置により取得された画像の読影において、すでにX線マンモグラフィー装置により撮影されている画像との対比を行う場合に、それぞれの画像の視線方向と表示される向きが同じになるため、読影者が両者の位置関係を容易に把握することができる。すなわち、本実施例によれば、X線マンモグラフィーによって撮影された画像との比較を容易に行うことができる画像を読影者に提供することが可能になる。
【0039】
以下では、かかる計算機システム10が有する機能を中心に、本実施例に係るMRI装置100の詳細について説明する。なお、以下では、計算機システム10によって生成される2次元画像、すなわち、左右の乳房の2次元画像における胸壁部分を結合することで左右の乳房を対称に配置した2次元画像を「対比用乳房画像」と呼ぶ。
【0040】
まず、図2を用いて、本実施例に係る計算機システム10の詳細な構成について説明する。図2は、本実施例に係る計算機システム10の詳細な構成を示す機能ブロック図である。なお、ここでは、図1に示したデータ処理部13、記憶部14、及び制御部17に関する機能を中心に説明する。
【0041】
図2に示すように、記憶部14は、MR信号データ記憶部14a及び画像データ記憶部14bを記憶する。MR信号データ記憶部14aは、データ収集部12によって収集されたMR信号データを記憶する。また、画像データ記憶部14bは、データ処理部13によって生成された画像データを記憶する。
【0042】
また、制御部17は、シーケンス実行部17a及び表示制御部17bを有する。シーケンス実行部17aは、操作者により設定された撮像条件に基づいて各種のシーケンス実行データを生成し、生成したシーケンス実行データにしたがって傾斜磁場電源3、送信部7及び受信部9を制御することで、各種撮像シーケンスを実行する。なお、ここでいうシーケンス実行データとは、傾斜磁場電源3が傾斜磁場コイル2に供給する電源の強さや電源を供給するタイミング、送信部7が送信RFコイル6に送信するRF信号の強さやRF信号を送信するタイミング、受信部9がNMR信号を検出するタイミングなど、撮像を実行するための手順を定義した情報である。表示制御部17bは、後述する対比用乳房画像生成部13bにより生成される対比用乳房画像を表示部15に表示させる。
【0043】
また、データ処理部13は、画像再構成部13a及び対比用乳房画像生成部13bを有する。画像再構成部13aは、被検体の左右の乳房を含む3次元空間から磁気共鳴信号を収集する撮像シーケンスを実行することにより収集されたMR信号データに基づいて、被検体Pの左右の乳房の3次元画像データを再構成する。対比用乳房画像生成部13bは、画像再構成部13aにより再構成された3次元画像データから、対比用乳房画像として、被検体Pの左右の乳房それぞれの2次元画像を各乳房の胸壁側を合わせて対称に配置した2次元画像を生成する。
【0044】
次に、主に図3を用いて、本実施例に係るMRI装置100による対比用乳房画像の生成の処理手順について説明する。図3は、本実施例に係るMRI装置100による対比用乳房画像の生成の処理手順を示すフローチャートである。なお、上述した制御部17及びデータ処理部13が有する各部によって行われる処理について詳細に説明する。
【0045】
図3に示すように、本実施例に係るMRI装置100では、計算機システム10が、入力部16を介して操作者から開始指示を受け付けた場合に(ステップS301,Yes)、MRI装置100の各部を制御することで、被検体Pの乳房の3次元画像を撮像する(ステップS302)。
【0046】
具体的には、シーケンス実行部17aが、傾斜磁場電源3、送信部7及び受信部9を制御することで、被検体の左右の乳房を含む3次元空間から磁気共鳴信号を収集するための撮像シーケンスを実行する。例えば、シーケンス実行部17aは、1次元の周波数エンコードと2次元の位相エンコードとを組み合わせたグラディエントエコー法の撮像シーケンスを実行する。また、データ収集部12が、上記撮像シーケンスを実行することにより受信部9から送信されたMR信号データを収集する。そして、画像再構成部13aが、データ収集部12によって収集されたMR信号データに対して3次元フーリエ変換処理を施すことで、被検体Pの左右の乳房の3次元画像データを再構成する。
【0047】
通常、MRI装置によるデータ収集は、不要な領域からの信号の折り返しを防ぐために、帯域の制限されたRFパルスと傾斜磁場との組み合わせにより、3次元のうち一方向にスライス選択をして制限された領域から行われる。このように、スライス選択により制限された領域からデータを収集する撮像は、スライスの方向により、体軸断(Axial)撮像、矢状断(Sagittal)撮像、冠状断(Coronal)撮像と呼ばれる。MRI装置を用いた診断では、これら体軸断、矢状断、冠状断の一枚一枚の画像あるいはこれらのスライス軸に沿って最大値投影処理を行った画像を保存及び表示して診断が行われる。なお、乳房検査では、一般的に、体軸断又は矢状断の撮像が行われる。そこで、以下では、これら2つの撮像が行われる場合について説明する。
【0048】
乳腺MR検査では、MR用の造影剤を静脈より注入し、関心領域が造影される程度や造影されるまでの時間、造影剤が流出する時間などを腫瘍の良悪性の判断の基準にすることがある。しかし、造影剤が体外に流出される時間を考慮すると、一度の検査では造影剤は一回しか注入できないため、左右両側の乳房の画像を一回の3次元撮像で取得することが望ましい。
【0049】
したがって、撮像領域を決める位置決めの際には左右両側の乳房が全て含まれるような直方体の領域を設定する。得られたローデータを3次元フーリエ変換して得られる3次元画像データの表示において、体軸断撮像の場合には、被検体の前後(Anterior-Posterior)方向が画像の上下方向、被検体の左右方向が画像の左右方向となり、矢状断撮像の場合には、被検体の頭尾(superior-inferior)方向が画像の上下、被検体の前後(Anterior-Posterior)方向が画像の左右方向となる。
【0050】
また、体軸断撮像の場合は左右の乳房を一度に撮像した場合には一枚の画像に左右の乳房を保存、表示することもあるが、矢状断撮像の場合には、左右の乳房は通常別々の画像で表示される。このような一般的なMR画像の表示方法は、X線マンモグラフィーで通常行われるCC(Cranio Caudal)撮影やML(Medio Lateral)撮影又はMLO(Medio lateral Oblique)撮影の結果を左右の乳房の対称性を重視した配置にして読影する方法とは異なるため、X線マンモグラフィーの診断情報をもとに、これとの対比でMR画像の読影を行う場合には、それぞれの画像の視線方向と表示される向きが異なる両者の位置関係を把握することが難しい。
【0051】
図3の説明にもどって、左右の乳房の3次元画像データが再構成された後に、対比用乳房画像生成部13bが、X線マンモグラフィー画像との対比表示を行うか否かを判定する(ステップS303)。このとき、例えば、対比用乳房画像生成部13bは、入力部16を介して、対比表示を行うか否かを選択する操作を操作者から受け付ける。そして、対比用乳房画像生成部13bは、受け付けた操作に基づいて、対比表示を行うか否かを判定する。
【0052】
ここで、対比表示を行わないと判定した場合には(ステップS303,No)、対比用乳房画像生成部13bは、以下に示す手順を実行することなく処理を終了する。一方、対比表示を行うと判定した場合には(ステップS303,Yes)、対比用乳房画像生成部13bは、対比用乳房画像を表示させる表示方向を判定する(ステップS304)。
【0053】
具体的には、対比用乳房画像生成部13bは、対比用乳房画像を表示させる表示方向として、X線マンモグラフィー撮撮影における頭尾方向(CC方向)に対応する方向、又は、左右方向(ML方向又はMLO方向)に対応する方向のいずれかに判定する。このとき、例えば、対比用乳房画像生成部13bは、入力部16を介して、対比用乳房画像を表示させる方向を選択する操作を操作者から受け付ける。そして、対比用乳房画像生成部13bは、受け付けた操作に基づいて、対比用乳房画像の表示方向を判定する。
【0054】
そして、対比用乳房画像を頭尾方向に表示させると判定した場合には(ステップS305,Yes)、対比用乳房画像生成部13bは、画像再構成部13aにより生成された3次元画像データに対して被検体Pの頭尾方向に最大値投影処理を施すことで、左右の乳房を頭尾方向に投影した2次元投影画像を生成する(ステップS306)。また、対比用乳房画像生成部13bは、生成した2次元投影画像を左右の中心で分離し、分離した左右の2次元投影画像における胸壁部分を結合することで、胸壁を合わせて左右の乳房を対称に配置した対比用乳房画像を生成する(ステップS307)。
【0055】
ここで、図4を用いて、本実施例に係る対比用乳房画像生成部13bによる頭尾方向の対比用乳房画像の生成について具体的に説明する。図4は、本実施例に係る対比用乳房画像生成部13bによる頭尾方向の対比用乳房画像の生成を説明するための図である。
【0056】
図4において、3次元画像データ405は、3次元撮像法による撮像シーケンスを実行することで収集されたMR信号データに対して3次元フーリエ変換処理を施すことで生成されたものである。この3次元画像データ405は、右の乳房410及び左の乳房415を含んでいる。また、A,P,R,L,H,Fは、被検体座標における前(Anterior)方向、後(Posterior)方向、右(Right)方向、左(Left)方向、頭(Head)方向、足(Feet)方向をそれぞれ表している。
【0057】
また、点線425は、受信RFコイル8の上端又は、寝台天板4aの上端の垂直方向の位置を表している。また、一点鎖線430は、装置座標系における左右の中心を表している。ここで、点線425は、被検体Pの胸壁の前側にほぼ一致している。また、一点鎖線430は、被検体Pの体軸に関する左右方向の中心にほぼ一致している。
【0058】
頭尾方向の対比用乳房画像を生成する場合には、例えば、対比用乳房画像生成部13bは、矢印420で示した頭尾(HF)方向に最大値投影処理を行い、対比用乳房画像となる2次元投影画像を作成する。このとき、対比用乳房画像生成部13bは、おおよそ胸壁に相当する部分より背中側(後側)の領域を除いた領域435に対して最大値投影処理を行う。なお、ここで図4における右の乳房410及び左の乳房415は製図の都合上完全に分離されて表現されている。しかし、実際には上述のように領域435は胸壁を含んだ領域となる。したがって、右の乳房410及び左の乳房415は、実際には、点線425の近傍で接続しているものとして理解されたい。このことは、図5ないし図7においても同様である。
【0059】
ここで、最大値投影が行われる領域435と除外される領域との境界としては、例えば、点線425で示すように、受信RFコイル8又は寝台天板4aの垂直方向の位置を基準として、この位置より一定の幅だけ背中側の位置が設定される。これにより、最大値投影処理が行われる範囲を適切に設定することができる。また、この方法で所定の範囲を設定することによって、乳房及び胸壁の一部を含む領域のみを選択し、診断に不要な肺や心臓などの領域を排除することができる。
【0060】
なお、この領域の選択、排除は、受信RFコイル8や寝台天板4aの位置を基準とするものに限られず、画像認識によって行われても良い。この場合、例えば、左右乳房をパターン認識して領域435を選択するなどする。さらに具体的には、左右乳房の横方向の大きさが被検体の前側から後側にかけてどう変化しているかを認識し、胸壁付近では左右乳房が接近、接続するので、この接続した位置を胸壁の位置として認識し、最大値投影が行われる領域435を選択するなどとしても良い。
【0061】
なお、ここでは、対比用乳房画像生成部13bが、3次元画像データ405の限られた領域に対して最大値投影処理を行う場合について説明した。この他にも、例えば、対比用乳房画像生成部13bが、3次元画像データ405上の全領域に対して最大値投影処理を行い、その後、最大値投影処理により得られた2次元画像上で不要な領域を削除するようにしてもよい。
【0062】
そして、最大値投影処理を行った後に、対比用乳房画像生成部13bは、最大値投影処理により得られた2次元投影像440を装置座標における左右の中心に相当する線455で分離する。続いて、対比用乳房画像生成部13bは、分離した2つの画像のうち、右の乳房を含む画像460を時計方向に90度回転し、左の乳房を含む画像465を反時計方向に90度回転する。その後、対比用乳房画像生成部13bは、回転した各画像を、胸壁を合わせて対称になるように結合することで、対比用乳房画像470を生成する。
【0063】
なお、被検体Pが寝台4に載置される際に、被検体Pの体軸に関する左右方向の中心が装置座標の左右中心に一致するように被検体Pの位置が設定されていれば、装置座標の左右中心に相当する位置で画像を左右に分離すると、結合した画像の上下方向すなわち被検体の左右方向の左右の乳房の対称性が保たれる。これにより、得られた対比用乳房画像470は、X線マンモグラフィー装置によるCC方向の撮影によって取得された2枚の画像を対称に配置して読影を行う際の表示方法と視線及び方向が一致したものとなる。したがって、X線マンモグラフィー画像とMR画像との対比を容易に行うことができるようになる。
【0064】
ここで、X線マンモグラフィー画像とMR画像の対比は、それぞれ別の表示部に表示された画像を対比することによって行われても良いが、これに限られない。例えば、表示制御部17bは、外部から取得したマンモグラフィー画像と対比用乳房画像470を、同じスケールとなるように画像サイズ調整して、同じ表示部15に表示してもよい。具体的には、表示制御部17bは取得したX線マンモグラフィー画像と対比用乳房画像470それぞれの実寸に対する画素サイズを比較し、一方を拡大又は縮小することにより、同じ大きさで乳房が映し出されるように画像調整してもよい。具体的な表示形態としては、X線マンモグラフィー画像と対比用乳房画像470を近接配置して並列表示しても良いし、どちらか一方を入力部16への入力指示に従って切り替えて表示してもよい。
【0065】
図3の説明にもどって、対比用乳房画像を左右方向に表示させると判定した場合には(ステップS305,No)、対比用乳房画像生成部13bは、画像再構成部13aにより生成された3次元画像データに対してその3次元画像データの中心から左右それぞれの方向に最大値投影処理を施すことで、左右それぞれの乳房を投影した2次元投影画像を生成する(ステップS308)。また、対比用乳房画像生成部13bは、生成した各2次元投影画像における胸壁部分を結合することで、胸壁を合わせて左右の乳房を対称に配置した対比用乳房画像を生成する(ステップS309)。
【0066】
ここで、図5を用いて、本実施例に係る対比用乳房画像生成部13bによる左右方向の対比用乳房画像の生成について具体的に説明する。図5は、本実施例に係る対比用乳房画像生成部13bによる左右方向の対比用乳房画像の生成を説明するための図である。なお、図5に示す3次元画像データ405は、図4に示したものと同じである。
【0067】
左右方向の対比用乳房画像を生成する場合には、例えば、対比用乳房画像生成部13bは、頭尾方向の対比用乳房画像を生成する場合と同様に、おおよそ胸壁に相当する部分より背中側(後側)の領域を除いた領域435に対して最大値投影処理を行う。つまり、対比用乳房画像生成部13bは、胸壁に相当する境界線よりも前側の領域について行うが、この場合には、装置座標における左右の中心を現す一点鎖線430で領域435を2つに分け、それぞれの領域を矢印520及び525で示す左右方向に最大値投影する。これにより、右の乳房を左右方向の2次元投影画像560、及び、左の乳房の左右方向の2次元投影画像565が得られる。
【0068】
そして、最大値投影処理を行った後に、対比用乳房画像生成部13bは、最大値投影処理により得られた2次元投影画像560と2次元投影画像565とを胸壁が合わさるように回転して結合することで、対比用乳房画像570を生成する。これにより、得られた対比用乳房画像570は、X線マンモグラフィー装置によるML方向又はMLO方向の撮影によって取得された2枚の画像を対称に配置して読影を行う際の表示方法と視線及び方向がほぼ一致したとものなる。
【0069】
図3にもどって、対比用乳房画像生成部13bによって対比用乳房画像が生成されると、表示制御部17bが、生成された対比用乳房画像を表示部15に表示させる(ステップS310)。
【0070】
上述したように、本実施例では、シーケンス実行部17aが、被検体Pの左右の乳房を含む3次元空間からMR信号を収集する撮像シーケンスを実行する。また、画像再構成部13aが、シーケンス実行部17aが撮像シーケンスを実行することにより収集されたMR信号に基づいて左右の乳房の3次元画像データを再構成する。また、対比用乳房画像生成部13bが、画像再構成部13aにより再構成された3次元画像データから左右の乳房それぞれの2次元画像を生成し、生成した各2次元画像における胸壁部分を結合することで左右の乳房を対称に配置した対比用乳房画像を生成する。そして、表示制御部17bが、対比用乳房画像生成部13bにより生成された対比用乳房画像を表示部15に表示させる。
【0071】
このように、本実施例では、MRI装置100により撮像された乳房の画像が、X線マンモグラフィー画像と同様に、左右の乳房が胸壁を合わせて対称に配置された状態で表示される。したがって、本実施例によれば、X線マンモグラフィーによって撮影された画像との比較を容易に行うことができる画像を読影者に提供することが可能になる。また、本実施例によれば、X線マンモグラフィー画像とMR画像との対比が容易になるので、微小石灰化の存在位置をマンモグラフィーから判断し、ほぼ同じ領域の浸潤性乳管癌をMRで検索するなどの診断を行うことも可能になる。
【0072】
なお、上記実施例では、3次元画像データに対して最大値投影処理を行うことで乳房の2次元画像を生成し、その2次元画像を用いて対比用乳房画像を生成する場合について説明した。しかし、対比用乳房画像を生成する方法はこれに限られない。
【0073】
例えば、最大値投影処理以外にも、最小値投影を伴う投影処理、加算平均を伴う投影処理などの、3次元画像データを2次元画像に変換する処理であれば上記実施例に適応可能である。加えて、対比用乳房画像を生成する方法は、投影処理等の3次元画像データを2次元画像に変換する処理を含むとも限らない。
【0074】
例えば、対比用乳房画像生成部13bが、画像再構成部13aによって再構成された3次元画像データから被検体Pの左右方向に並ぶ複数の体軸断面の断層像を生成し、生成した複数の断層像を左右の中心で2つの画像群に分け、左側の画像群に含まれる断層像の胸壁部分と右側の画像群に含まれる画像の胸壁部分とを結合することで、複数の対比用乳房画像を生成するようにしてもよい。
【0075】
図6は、他の実施例に係る対比用乳房画像生成部13bによる頭尾方向の対比用乳房画像の生成を説明するための図である。この場合には、対比用乳房画像生成部13bは、画像再構成部13aによって生成された3次元画像データから体軸断面の断層像を領域選択して切り出し、切り出した各断層像を左右に分離して回転し結合する。
【0076】
このとき、対比用乳房画像生成部13bは、例えば、図6に示す3次元画像データ405に含まれる領域のうち、おおよそ胸壁に相当する部分より背中側の領域を除いた領域435から、複数の体軸断面の断層像を切り出すことで、2次元画像の画像群605を得る。そして、対比用乳房画像生成部13bは、得られた画像群605を装置座標における左右の中心で2分した後に、2分された画像群610の左右両側をそれぞれ回転して結合することで、対比用乳房画像の画像群615を生成する。これにより、X線マンモグラフィー装置によるCC方向の撮影によって取得された2枚の画像を対称に配置して読影を行う際の表示方法と視線及び方向が一致した複数の対比用乳房画像が得られる。
【0077】
また、例えば、対比用乳房画像生成部13bが、画像再構成部13aによって再構成された3次元画像データから被検体Pの頭尾方向に並ぶ複数の矢状断面の断層像を作成し、生成した複数の断層像を3次元画像データの中心から同じ距離に位置する画像ごとに胸壁部分を結合することで、複数の対比用乳房画像を生成するようにしてもよい。
【0078】
図7は、他の実施例に係る対比用乳房画像生成部13bによる左右方向の対比用乳房画像の生成を説明するための図である。この場合には、対比用乳房画像生成部13bは、画像再構成部13aによって生成された3次元画像データから矢状断面の断層像を領域選択して切り出し、切り出した各断層像を装置座標における左右方向の中心からの距離が等しい2枚の2次元画像ごとにそれぞれ回転し結合する。
【0079】
このとき、対比用乳房画像生成部13bは、例えば、図7に示す3次元画像データ405に含まれる領域のうち、おおよそ胸壁に相当する部分より背中側の領域を除いた領域435から、複数の矢状断面の断層像を切り出すことで、2次元画像の画像群を得る。そして、対比用乳房画像生成部13bは、得られた画像群を装置座標における左右中心430で分けることで、2次元画像の画像群を画像群705と画像群710とに分ける。図7に示す例では、画像群705は右側の乳房を含んだ2次元画像の組になり、画像群710は左側の乳房を含んだ2次元画像の組になる。
【0080】
その後、対比用乳房画像生成部13bは、画像群705及び画像群710それぞれから、装置座標における左右中心430から等距離にある画像を選択し、選択した各画像を胸壁を合わせて被検体Pの頭尾方向が一致するように結合することで対比用乳房画像を生成する。例えば、図7に示すように、対比用乳房画像生成部13bは、装置座標における左右中心430から距離dだけ離れた位置にある画像データa及びbを用いて、1枚の対比用画像を作成する。対比用乳房画像生成部13bは、装置座標における左右中心430から等距離にある画像ごとに同様の処理を行うことで、対比用画像の画像群715を生成する。これにより、X線マンモグラフィー装置によるML方向又はMLO方向の撮影によって取得された2枚の画像を対称に配置して読影を行う際の表示方法と視線及び方向がほぼ一致した複数の対比用乳房画像が得られる。
【0081】
なお、上記実施例では、3次元空間から収集されたMR信号に対して3次元フーリエ変換処理を施すことで3次元画像データを再構成し、その3次元画像データを用いて対比用乳房画像を生成する場合について説明した。しかしながら、本発明はこれに限られるものではない。例えば、2次元のマルチスライス撮像を行って得られたボリュームデータを用いることでも、本発明を同様に実施することが可能である。
【0082】
また、乳腺MR検査では、MRI装置が、造影剤注入後の組織の信号値の変化をとらえるために連続撮像を行い、連続撮像により得られた時系列画像の各ピクセルにおける時間に対する信号値の変化曲線(タイムインテンシティーカーブ)を生成し、その変化曲線における曲線の傾きや信号値が最大値に到達した時刻などを示す値を各ピクセルの色に対応づけた画像を生成して診断用の画像として提供することもある。これらのいわゆるカラーマップ画像など、MR信号から再構成された画像に対して何らかの後処理を施した画像データについても、上記実施例で説明した処理を行うことで、左右の乳房の2次元画像における胸壁部分を結合することで左右の乳房を対称に配置した2次元画像として表示することが可能である。
【0083】
また、MRI装置においては、さまざまなシーケンスによって異なる性質の画像を生成できるという特徴がある。例えば、T1強調画像、T2強調画像などがあり、互いに画像上で強調される組織が異なる。このほかにも造影、非造影で行われる種々の血管強調画像が提供されうる。また、拡散強調画像という、拡散係数の低い信号を強調する画像を生成することもできる。この拡散強調画像では、密度の高い細胞を強調することができるため、悪性腫瘍の検出に向いており、乳房の腫瘍診断にも有用であるといえる。本実施例においては、上記のものをはじめとして、種々の性質の画像が用いられうる。その場合、これら種々の性質の複数の画像それぞれに対して、上述したように最大値投影が行われる領域を選択され、胸壁部分を結合し、左右の乳房を対称に配置した2次元画像が生成される。
【0084】
これに加え、このような異なる性質の画像を対比観察することにより、それぞれ単独では得られない診断情報を得られることもある。したがって、本実施例において、表示制御部17bは、X線マンモグラフィと、複数種類のMRI画像との対比も可能な表示形態で各画像を表示してもよい。対比可能な表示の具体例としては、X線マンモグラフィー画像と複数のMRI画像を全て並列に表示しても良い。また、同時に表示される画像は、X線マンモグラフィー画像と複数のMRI画像のうちのどれか一つとし、入力部16への所定の入力によって切り替えて表示してもよい。さらに、複数のMRI画像のうちの一つとX線マンモグラフィー画像との二つを同時に表示し、複数のMRI画像を所定の入力によって切り替えて表示してもよい。また、図6図7に示されるような複数の対比用乳房画像を生成する場合であって、複数のMRI画像を表示する場合には、常に同じ位置に対応した複数のMRI画像が表示されるよう制御されることが望ましい。
【0085】
また、上記実施例では、左右の乳房の2次元画像における胸壁部分を結合することで左右の乳房を対称に配置した2次元画像として表示すると記してきた。しかし、ここでいう、胸壁部分とは、必ずしも胸壁が写し出された部分のみ指すものではなく、胸壁よりもすこし手前の実際には胸壁を含まない部分でもよい。要はX線マンモグラフィー装置での撮像範囲に対して比較可能な領域が表示されればよい。左右の乳房の2次元画像は必ずしも胸壁部分で結合されなくともよい。つまり、胸壁部分が互いに向き合うように配置されていれば、実際に結合されない形態も考えられる。例えば、左右の乳房の2次元画像の胸壁部分が若干の隙間をおいて配置されていても、X線マンモグラフィー像と対比可能な2次元画像が生成され、本実施形態の思想を逸脱するものではないことは明白である。
【0086】
また、上記実施例では、MRI装置100に本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、ネットワークを介してMRI装置に接続された画像処理装置にも本発明を同様に適用することが可能である。この場合には、MRI装置100が、対比用乳房画像のもとになる3次元MR信号データや3次元画像データをネットワーク又は記録媒体を経由して画像処理装置に転送する。そして、画像処理装置が、MRI装置から転送された3次元MR信号データや3次元画像データに基づいて、上記実施例で説明した計算機システム10と同様の処理を行うことによって、対比用乳房画像を生成して表示する。
【0087】
また、上記実施例で説明したシーケンス実行部17a、表示制御部17b、画像再構成部13a、及び対比用乳房画像生成部13bの機能は、その全て又は一部の機能をソフトウェアで実現することもできる。すなわち、図3に示した処理手順を規定した画像処理プログラムをコンピュータに実行させることで、上記各部の機能を実現する。このとき、画像処理プログラムは、コンピュータにあらかじめインストールされていてもよいし、磁気ディスクや光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリなどのリムーバブルな記録媒体に記録され、あるいはネットワークを介して配布されて、コンピュータ装置に適宜インストールされてもよい。
【0088】
また、上記実施例では、MRI装置100に本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、X線CT装置やPET装置など、X線マンモグラフィー装置を除いた他の医用画像診断装置にも本発明を同様に適用することが可能である。
【0089】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0090】
100 MRI装置
10 計算機システム
13 データ処理部
13a 画像再構成部
13b 対比用乳房画像生成部
14 記憶部
14a MR信号データ記憶部
14b 画像データ記憶部
17 制御部
17a シーケンス実行部
17b 表示制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7