(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1基板支持部に支持させた前記基板と前記第2基板支持部との距離は、搬入時の前記基板の温度と前記加熱部により所定温度に加熱された前記第2基板支持部の温度との差に応じて調整されるように構成される請求項1に記載の基板処理装置。
前記第1基板支持部が支持する前記基板と前記第2基板支持部との距離は、搬入時の前記基板の温度と前記加熱部により所定の温度に加熱された前記第2基板支持部の温度との差に応じて調整する請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本発明の一実施形態>
(1)基板処理装置の構成
本発明の第1実施形態に係る基板処理装置について、
図1を用いて以下に説明する。
図1は、本実施形態に係る基板処理装置としての変形マグネトロン型プラズマ処理装置の図であって、(a)は基板の搬入時の様子を示す断面図であり、(b)は基板の処理時の様子を示す断面図である。
【0011】
本実施形態に係る基板処理装置は、電界と磁界とにより高密度プラズマを生成する変形マグネトロン型プラズマ源(Modified Magnetron Typed Plasma Source)を用いて、シリコン(Si)基板等のウエハ200をプラズマ処理する変形マグネトロン型プラズマ処理装置(以下、MMT装置100と記載)である。MMT装置100は、気密性を保持した処理室201内にウエハ200を搬入し、処理室201内に供給した各種のガスに、一定の圧力下で高周波電圧をかけてマグネトロン放電を起こすように構成されている。MMT装置100によれば、係る機構により例えば処理ガス等を励起させて、ウエハ200に酸化、窒化等の拡散処理を行なったり、薄膜を形成したり、またはウエハ200の表面をエッチングしたり等の各種プラズマ処理を施すことができる。
【0012】
(処理室)
MMT装置100は、ウエハ200をプラズマ処理する処理炉202を備えている。処理炉202には、処理室201を構成する処理容器203が設けられている。処理容器203は、第1の容器であるドーム型の上側容器210と、第2の容器である碗型の下側容器211とを備えている。上側容器210が下側容器211の上に被さることにより、処理室201が形成される。上側容器210は、例えば酸化アルミニウム(Al
2O
3)または石英(SiO
2)等の非金属材料で形成されており、下側容器211は、例えばアルミニウム(Al)で形成されている。
【0013】
また、下側容器211の下部側壁には、ゲートバルブ244が設けられている。ゲートバルブ244は、開いているときには、搬送機構(図示せず)を用いて処理室201内へ
ウエハ200を搬入し、または処理室201外へウエハ200を搬出することができるように構成されている。ゲートバルブ244は、閉まっているときには、処理室201内の気密性を保持する仕切弁となるように構成されている。
【0014】
(サセプタ)
処理室201の底側中央には、ウエハ200を支持する第2基板支持部としてのサセプタ217が配置されている。サセプタ217は、例えば窒化アルミニウム(AlN)、セラミックス、石英等の非金属材料から形成されており、ウエハ200上に形成される膜等への金属汚染を低減することができるように構成されている。
【0015】
サセプタ217の内部には、加熱部としてのヒータ217bが一体的に埋め込まれている。ヒータ217bは、電力が供給されると、ウエハ200表面を例えば25℃〜700℃程度に加熱することができるように構成されている。
【0016】
サセプタ217は、下側容器211とは電気的に絶縁されている。サセプタ217内部にはインピーダンス調整電極217cが装備されている。インピーダンス調整電極217cは、インピーダンス調整部としてのインピーダンス可変機構274を介して接地されている。インピーダンス調整電極217cは、後述する第1の電極としての筒状電極215に対する第2の電極として機能する。インピーダンス可変機構274はコイルや可変コンデンサから構成されており、コイルのインダクタンス及び抵抗並びに可変コンデンサの容量値を制御することにより、インピーダンス調整電極217c及びサセプタ217を介して、ウエハ200の電位(バイアス電圧)を制御できるように構成されている。
【0017】
サセプタ217には、サセプタ217を昇降させるサセプタ昇降機構268が設けられている。また、サセプタ217には貫通孔217aが設けられ、一方、下側容器211の底面には、第1基板支持部としてのウエハ突上げピン266が設けられている。貫通孔217aとウエハ突上げピン266とは互いに対向する位置に、少なくとも各3箇所ずつ設けられている。
図1(a)に示すように、サセプタ昇降機構268によりサセプタ217が下降させられたときには、ウエハ突上げピン266がサセプタ217とは非接触な状態で貫通孔217aを突き抜ける(挿通する)ことで、ウエハ突上げピン266により、処理室201内に搬入されたウエハ200を一時的に支持するように構成されている。また、
図1(b)に示すように、サセプタ昇降機構268によりサセプタ217が上昇させられたときには、ウエハ突上げピン266からサセプタ217へとウエハ200を移載するように構成されている。
【0018】
(ランプ加熱ユニット)
処理室201の上方、つまり上側容器210の上面には、光透過窓278が設けられ、光透過窓278上の反応容器203外側には、ランプ加熱装置としてのランプ加熱ユニット280が設置されている。ランプ加熱ユニット280は、サセプタ217と対向する位置に設けられ、ウエハ200の上方からウエハ200を加熱するよう構成されている。ランプ加熱ユニット280を点灯することで、ヒータ217bと比較してより短時間でウエハ200を加熱することができるよう構成されている。また、ヒータ217bを併用することで、基板表面の温度を例えば900℃にすることができる。
【0019】
(ガス供給部)
処理室201の上方、つまり上側容器210の上部には、シャワーヘッド236が設けられている。シャワーヘッド236は、キャップ状の蓋体233と、ガス導入口234と、バッファ室237と、開口238と、遮蔽プレート240と、ガス吹出口239とを備え、各種のガスを処理室201内へ供給できるように構成されている。バッファ室237は、ガス導入口234より導入されるガスを分散する分散空間として構成されている。
【0020】
ガス導入口234には、水素含有ガスとしての水素(H
2)ガスを供給する水素含有ガス供給管232aの下流端と、窒素含有ガスとしての窒素(N
2)ガスを供給する窒素含有ガス供給管232bの下流端と、が合流するように接続されている。水素含有ガス供給管232aには、上流側から順にH
2ガス供給源250a、流量制御装置としてのマスフローコントローラ252a、開閉弁としてのバルブ253aが設けられている。窒素含有ガス供給管232bには、上流側から順にN
2ガス供給源250b、流量制御装置としてのマスフローコントローラ252b、開閉弁としてのバルブ253bが設けられている。水素含有ガス供給管232aと窒素含有ガス供給管232bとが合流した下流側には、バルブ254が設けられ、ガスケット203bを介してガス導入口234の上流端に接続されている。バルブ253a,253b,254を開くことによって、マスフローコントローラ252a,252bによりそれぞれのガスの流量を調整しつつ、ガス供給管232a,232bを介して、水素含有ガス及び窒素含有ガスを処理室201内へ供給できるように構成されている。
【0021】
主に、シャワーヘッド236(蓋体233、ガス導入口234、バッファ室237、開口238、遮蔽プレート240、ガス吹出口239)、水素含有ガス供給管232a、窒素含有ガス供給管232b、H
2ガス供給源250a、N
2ガス供給源250b、マスフローコントローラ252a,252b、バルブ253a,253b,254により、本実施形態に係るガス供給部が構成されている。
【0022】
(ガス排気部)
下側容器211の側壁には、処理室201内からガスを排気するガス排気室201aが設けられている。ガス排気室201aには、ガス排気管231aの上流端が接続されている。
図2に示すように、ガス排気室201aには、例えばキャパシタンスマノメータ等の圧力制御センサとしてのダイアフラムゲージ241aが設けられている。ダイアフラムゲージ241aは、例えば上限の圧力として2Torr(266Pa)まで計測可能に構成されている。ガス排気管231aには、上流側から順に圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)242、真空排気装置としてのターボ分子ポンプ246a、開閉弁としての主要バルブ243a、真空排気装置としてのドライポンプ246bが設けられている。
【0023】
APC242は、弁を開閉することで真空排気・排気停止ができ、さらに、ダイアフラムゲージ241aにより計測された圧力情報に基づき弁を開度調節することで、処理室201内圧力の調整が可能な開閉弁である。MMT装置100を用いた基板処理は、例えば266Pa以下、より好ましくは240Pa以下の圧力下で実施される。ダイアフラムゲージ241aの上限の圧力を例えば2Torr(266Pa)とすることで、基板処理の圧力領域での計測精度が向上し、基板処理時に高い圧力制御性及び分解能を得ることができる。
【0024】
ターボ分子ポンプ246aには、例えば広帯域型を用いることができ、その場合、ターボ分子ポンプ246aの上流側、すなわち、ターボ分子ポンプ246aの1次側の最大圧力として400Paまで対応可能に構成されている。
【0025】
ターボ分子ポンプ246aの下流側、すなわち、ターボ分子ポンプ246aの2次側には、スロー排気ラインが設けられている。具体的には、ガス排気管231aのターボ分子ポンプ246aと主要バルブ243aとの間には、ガス排気管231bの上流端が接続されている。また、ガス排気管231aの主要バルブ243aとドライポンプ246bとの間には、ガス排気管231bの下流端が接続されている。ガス排気管231bには、例えば3/8インチ配管が用いられ、開閉弁としてのスロー排気バルブ243bが設けられて
いる。
【0026】
主に、ガス排気室201a、ダイアフラムゲージ241a、ガス排気管231a、APC242、ターボ分子ポンプ246a、主要バルブ243a、ドライポンプ246b、ガス排気管231b、スロー排気バルブ243bにより、本実施形態に係るガス排気部が構成されている。
【0027】
(プラズマ生成部)
処理室201の外周部、すなわち上側容器210の側壁の外側には、処理室201を囲うように、第1の電極としての筒状電極215が設けられている。筒状電極215は、筒状、例えば円筒状に形成されている。筒状電極215は、インピーダンスの整合を行なう整合器272を介して高周波電力を印加する、例えば周波数が13.56MHzの高周波電源273に接続されている。
【0028】
筒状電極215の外側表面の上下端部には、上側磁石216a及び下側磁石216bがそれぞれ取り付けられている。上側磁石216aおよび下側磁石216bは、ともに筒状、例えば円筒状に形成された永久磁石により構成されている。上側磁石216aおよび下側磁石216bは、処理室201に向いた面側とその反対の面側とに磁極を有している。上側磁石216aおよび下側磁石216bの磁極の向きは、逆向きになるよう配置されている。すなわち、上側磁石216aおよび下側磁石216bの処理室201に向いた面側の磁極同士は互いに異極となっている。これにより、筒状電極215の内側表面に沿って円筒軸方向の磁力線が形成される。
【0029】
上側磁石216aおよび下側磁石216bにより磁界を発生させ、さらに処理室201内に各種のガスを導入した後、筒状電極215に高周波電力を供給して電界を形成することで、
図1(b)に示すように、処理室201内のプラズマ生成領域224にマグネトロン放電プラズマが生成されるように構成されている。放出された電子を上述の電磁界が周回運動させることによって、プラズマの電離生成率が高まり、長寿命かつ高密度のプラズマを生成させることができる。
【0030】
なお、筒状電極215、上側磁石216aおよび下側磁石216bの周囲には、これらが形成する電磁界が他の装置や外部環境に悪影響を及ぼさないように、電磁界を有効に遮蔽する金属製の遮蔽板223が設けられている。
【0031】
主に、筒状電極215、整合器272、高周波電源273、上側磁石216aおよび下側磁石216bにより、本実施形態に係るプラズマ生成部が構成されている。
【0032】
(基板搬送口)
また、MMT装置100には、ゲートバルブ244を介して処理容器203の外側に図示しない基板搬送室口が設けられている。基板搬送室口は、MMT装置100に接続される図示しない基板搬送室へと連通している。基板搬送室には図示しない搬送機構が設けられ、基板を処理室201内に搬入・搬出自在に構成されている。なお、基板搬送室内の温度は例えば室温に保たれ、圧力は0.1Pa以上266Pa以下であって、例えば100Pa程度に保たれている。これにより、基板搬送室内にパーティクルが発生したとしても、搬送機構による基板の搬入・搬出動作により、パーティクルが舞い上がることを抑制することができる。
【0033】
(制御部)
制御部としてのコントローラ121は、信号線Aを通じてダイアフラムゲージ241a、APC242、ターボ分子ポンプ246a、ドライポンプ246b、主要バルブ243
a、スロー排気バルブ243bを、信号線Bを通じてサセプタ昇降機構268を、信号線Cを通じてヒータ217b及びインピーダンス可変機構274を、信号線Dを通じてゲートバルブ244を、信号線Eを通じて整合器272及び高周波電源273を、信号線Fを通じてマスフローコントローラ252a,252b及びバルブ253a,253b,254を、信号線Gを通じてランプ加熱ユニット280を、それぞれ制御するように構成されている。
【0034】
(2)基板処理工程
次に、本実施形態に係る基板処理工程について説明する。本実施形態に係る基板処理工程は、例えば半導体装置の製造工程の一工程として、上述のMMT装置100により実施される。本実施形態に係る基板処理工程においては、第2基板支持部としてのサセプタ217に内蔵される加熱部としてのヒータ217bにより、サセプタ217側からウエハ200を昇温し、また、加熱しつつ、例えばシリコン(Si)からなるウエハ200に所定の基板処理、例えば窒化処理を施す。なお以下の説明において、MMT装置100を構成する各部の動作は、コントローラ121により制御される。
【0035】
(基板搬入工程)
まずは、処理室201内の圧力を処理室201に隣接する基板搬送室(図示せず)と同じ圧力、例えば100Paとし、ウエハ200を基板搬送室から処理室201内に搬入する。具体的には、ターボ分子ポンプ246aとドライポンプ246bとを用いて処理室201内を真空排気すると共に、ウエハ200若しくはウエハ200に施す処理に対して不活性なガスを処理室201内に供給し、処理室201内の圧力を基板搬送室と略同圧力に調整する。次に、ウエハ200の搬送位置までサセプタ217を下降させて、サセプタ217の貫通孔217aにウエハ突上げピン266を貫通させる。その結果、ウエハ突上げピン266が、サセプタ217上面よりも所定の高さ分だけ、例えば0.5mm〜3.0mm程度、突出した状態となる。続いて、ゲートバルブ244を開き、図中省略の搬送機構を用いて基板搬送室から処理室201内にウエハ200を搬入する。その結果、ウエハ200は、サセプタ217の上面から突出したウエハ突上げピン266上に水平姿勢で支持される。処理室201内にウエハ200を搬入したら、搬送機構を処理室201外へ退避させ、ゲートバルブ244を閉じて処理室201内を密閉する。
【0036】
ヒータ217bには予め電力が供給され、ヒータ271b及びサセプタ217は、例えば25℃以上700℃以下、ランプ加熱ユニット280を併用した場合には900℃以下の範囲内の所定温度に加熱されている。ここで、搬入したウエハ200を直ちにサセプタ217上に移載すると、ウエハ200のサセプタ217との接触面の方が加熱され易く、ウエハ200の反対側の面との昇温速度に差が生じてしまう。その結果、ウエハ200の温度均一性が低下してしまうおそれがある。ウエハ200の温度均一性の低下は、例えば700℃以上で起こり易い。
【0037】
そこで本実施形態においては、ウエハ200をサセプタ217に移載する前に以下の基板昇温工程を実施する。すなわち、本発明者等は、以下に述べるように、ウエハ突上げピン266によりウエハ200をサセプタ217から離して支持させ、サセプタ217からの熱の輻射により、ウエハ200の温度均一性を良好に保ったまま徐々に昇温することに想到した。しかしながら、係る手法では、ウエハ200が所定温度にまで昇温されるのに長時間を要してしまう懸念がある。
【0038】
このため、本発明者等は、ウエハ200を高速に昇温すべく、更に研究を重ねた。以下、係る研究結果から本発明者等が得た知見に基づき、ウエハ200の温度均一性を向上させつつ、ウエハ200を高速に昇温する手法について説明する。
【0039】
(基板昇温工程)
基板昇温工程では、処理室201内に搬入したウエハ200の昇温を行う。具体的には、例えばヒータ217bにより25℃以上700℃以下、ランプ加熱ユニット280を併用した場合には900℃以下の範囲内の所定温度に加熱されたサセプタ217の上方に、ウエハ突上げピン266によりウエハ200をサセプタ217から離して支持させる。また、ターボ分子ポンプ246a及びドライポンプ246bによりガス排気管231aを介して処理室201内を排気しつつ、例えば昇圧ガスとしてのN
2ガスを処理室201内に供給して、処理室201内の圧力を高める。具体的には、バルブ253b,254を開け、マスフローコントローラ252bにて流量制御しながら、バッファ室237を介して処理室201内にN
2ガスを供給する。このとき、N
2ガスの流量を、例えば1000sccm以上2000sccm以下の範囲内の所定値とする。これにより、処理室201内の圧力を例えば100Pa以上266Pa以下の範囲内であって、基板搬入工程における圧力より高い所定値とする。ターボ分子ポンプ246a及びドライポンプ246bは、少なくとも後述の基板搬出工程が終了するまで作動させておく。
【0040】
上記の状態を所定時間、例えば40秒間〜60秒間保つことで、サセプタ217からの熱の輻射により、ウエハ200は、サセプタ217側の面から徐々に昇温される。このとき、ウエハ200をサセプタ217から離して支持させているので、ウエハ200のサセプタ217側の面が急激に昇温されてしまうことを抑制し、ウエハ200のサセプタ217側の面(以降、下面ともいう)と反対側の面(以降、上面ともいう)との昇温速度の差を低減して、ウエハ200の温度均一性を向上させることができる。
【0041】
また、上記により、処理室201内はN
2ガスで満たされた状態となっている。これにより、サセプタ217とウエハ200との間に存在するN
2ガスによって、サセプタ217からウエハ200へと熱が伝達される。つまり、サセプタ217からの熱の輻射に加え、N
2ガスの熱伝達によってもウエハ200が加熱されるので、ウエハ200の昇温速度を向上させることができる。
【0042】
また、ウエハ200とサセプタ217との距離は、搬入時のウエハ200の温度(例えば常温)と、ヒータ217bにより所定温度に加熱されたサセプタ217の温度との差に応じて調整することが好ましい。すなわち、ウエハ200の温度とサセプタ217の温度との差が大きいときは、ウエハ200とサセプタ217との距離を大きく取ることで、ウエハ200の下面が急激に昇温されて上面との昇温速度差が生じることを抑制する。また、ウエハ200の温度とサセプタ217の温度との差が小さいときは、ウエハ200とサセプタ217との距離を小さく取ることで、ウエハ200の昇温を加速し、ウエハ200が所定温度に到達するまでの時間を短縮することができる。ウエハ200とサセプタ217との距離は、例えばサセプタ昇降機構268によるサセプタ217の昇降により調整することができる。
【0043】
また、ウエハ200とサセプタ217との距離は、ウエハ200とサセプタ217との温度差だけでなく、処理室201内に供給するガスの種類(本実施形態ではN
2ガス)や、ガスの流量、処理室201内の圧力等に応じて調整することがより好ましい。これにより、ウエハ200の下面が急激に昇温されることを抑制したり、或いはウエハ200の昇温を加速したりすることができる。
【0044】
(基板移載工程)
所定時間が経過した後に、所定温度まで昇温されたウエハ200をウエハ突上げピン266からサセプタ217へと移載する。つまり、サセプタ昇降機構268を用いてサセプタ217を上昇させ、ウエハ200をサセプタ217の上面に支持させる。その後、ウエハ200を所定の処理位置まで上昇させる。
【0045】
(処理ガス供給工程)
次に、処理室201内に処理ガスとしてのN
2ガスの供給を行う。本実施形態では、例えば昇圧ガスとして用いたN
2ガスを処理ガスとしても用いるので、上述の基板昇温工程にて開始した、N
2ガスの処理室201内への供給を継続しておくことでN
2ガスの供給が可能である。この状態で、マスフローコントローラ252b及びAPC242による再調整を行って、処理ガスとしてのN
2ガスの流量及び処理室201内の圧力を、基板処理に係る所定値とする。すなわち、N
2ガスの流量を、例えば100sccm以上500sccm以下の範囲内の所定値とする。また、処理室201内の圧力が、例えば1Pa以上266Pa以下の範囲内の所定圧力となるように、APC242の開度を調整して処理室201内を排気する。このように、処理室201内を適度に排気しつつ、後述のプラズマ処理工程の終了時までN
2ガスの供給をさらに継続する。
【0046】
(プラズマ処理工程)
処理室201内の圧力が安定したら、筒状電極215に対して高周波電源273から整合器272を介して、例えば150W以上1000W以下の範囲内の所定の出力値の高周波電力の印加を開始する。このとき、インピーダンス可変機構274は、予め所定のインピーダンス値に制御しておく。これにより、処理室201内、より具体的にはウエハ200の上方のプラズマ生成領域224内にプラズマ放電を起こしてN
2ガスを励起する。N
2ガスは例えばプラズマ化されて解離し、窒素(N)を含む窒素活性種等の反応種を生成する。N
2ガスが励起して生じた窒素活性種により、ウエハ200の表面に窒化処理が施される。
【0047】
その後、所定の処理時間が経過したら、高周波電源273からの電力の印加を停止して、処理室201内のプラズマ放電を停止する。また、バルブ253b,254を閉めて、N
2ガスの処理室201内への供給を停止する。以上により、プラズマ処理工程が終了する。
【0048】
(排気工程)
N
2ガスの供給を停止したら、ガス排気管231aを用いて処理室201内を排気する。これにより、処理室201内のN
2ガスや、N
2ガスが反応した排ガス等を処理室201外へと排気する。その後、APC242の開度を調整し、処理室201内の圧力を処理室201に隣接する基板搬送室(ウエハ200の搬出先。図示せず)と同じ圧力(例えば100Pa)に調整する。
【0049】
(基板搬出工程)
処理室201内が所定の圧力となったら、サセプタ217をウエハ200の搬送位置まで下降させ、ウエハ突上げピン266上にウエハ200を支持させる。そして、ゲートバルブ244を開き、図中省略の搬送機構を用いてウエハ200を処理室201外へ搬出する。以上により、本実施形態に係る基板処理工程を終了する。
【0050】
なお、上述の基板昇温工程にてN
2ガスを供給して処理室201内の圧力を高める際には、処理室201内を密閉状態としてN
2ガスを処理室201内に封入するようにしてもよい。すなわち、N
2ガスを処理室201内に供給しつつ、APC242を閉じて処理室201内の排気を停止してN
2ガスを処理室201内に封入し、処理室201内の圧力を高めてもよい。これにより、処理室201内の圧力の上昇速度を高めることができ、また、ウエハ200の温度の上昇速度を高めることができる。また、圧力の上限を266Paとし、基板処理時の圧力から大きく外れないようにすることによって、基板昇温工程からプラズマ処理工程にかけての圧力調整時間を短縮することができる。
【0051】
また、昇温工程で処理室201内にN
2ガス等を供給する際には、N
2ガス等の供給位置を上述とは異ならせることも可能である。例えば、処理炉203が備える下側容器211の側壁にノズルを設け、サセプタ217を下降させたときのウエハ200の搬送位置近傍、より具体的には、ウエハ突上げピン266にて支持されたウエハ200とサセプタ217との間に、ノズルを介してN
2ガス等を供給する。これにより、ウエハ200の下面側でサセプタ217から熱を受け取ったN
2ガスの一部がウエハ200の上面側に回り込み、上面側への熱伝達が促進される。このように、N
2ガス等の対流によってもウエハ200の昇温速度を速めることができる。
【0052】
(3)本実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0053】
(a)本実施形態によれば、処理室201内に搬入したウエハ200を昇温する基板昇温工程を有する。つまり、基板昇温工程では、ウエハ200を一時的に支持するウエハ突上げピン266により、処理室201内に設けられたサセプタ217の上方に、処理室201内に搬入したウエハ200をサセプタ217から離して支持し、ヒータ217bによりサセプタ217を介してウエハ200を昇温する。これにより、ウエハ200のサセプタ217側の面(下面)と反対側の面(上面)との昇温速度の差が低減され、ウエハ200の温度均一性を向上させることができる。
【0054】
(b)また、本実施形態によれば、基板昇温工程では、ガス供給部により処理室201内にN
2ガスを供給し、処理室200内の圧力を基板搬入工程における圧力より高めた状態で、ウエハ200を昇温する。これにより、サセプタ217からの熱輻射に加え、サセプタ217とウエハ200との間のN
2ガスによってもサセプタ217からウエハ200へと熱が伝達され、ウエハ200の昇温速度を向上させてウエハ200を高速に昇温することができる。
【0055】
(c)また、本実施形態における、ウエハ200をサセプタ217から離して一時的に支持する構成は、ウエハ200を処理室201内へ搬入し処理位置へと配置するシーケンスの一部のタイミングを変更するだけで適用することができる。後のプラズマ処理工程への影響もほとんど生じることがない。
【0056】
(d)また、本実施形態によれば、ウエハ突上げピン266が支持するウエハ200とサセプタ217との距離を、搬入時のウエハ200の温度と、ヒータ217bにより所定温度に加熱されたサセプタ217の温度との差に応じて調整する。これによって、温度差が大きいときは距離を大きく取り、ウエハ200の下面と上面との昇温速度の差を低減することができる。また、温度差が小さいときは距離を小さく取り、ウエハ200の昇温にかかる時間をさらに短縮することができる。
【0057】
(e)また、本実施形態によれば、ウエハ突上げピン266が支持するウエハ200と、サセプタ217との距離を、昇温工程にて処理室201内に供給するガスの種類や、ガスの流量、処理室201内の圧力等に応じて調整する。これにより、ウエハ200の下面の急激な昇温を抑制したり、ウエハ200の昇温時間の短縮を図ったりすることができる。
【0058】
(f)また、本実施形態によれば、基板昇温工程にてN
2ガスを供給する際、ウエハ突上げピン266にて支持されたウエハ200とサセプタ217との間に、ノズルを介してN
2ガス等を供給する。これにより、サセプタ217から熱を受け取ったウエハ200の下面側のN
2ガスが、ウエハ200の上面側に一部回り込んで熱伝達を促進し、ウエハ200の昇温速度を向上させて昇温時間を短縮することができる。
【0059】
(g)なお、本実施形態によれば、ウエハ200の温度均一性を向上させることができる。したがって、ウエハ200の上下面の熱膨張の差によるウエハ200の反りを低減する効果も期待することができる。係るウエハ200の反りは、例えばウエハ200の温度が700℃以上となったときに起こり易い。
【0060】
<本発明の第2実施形態>
上述の実施形態では、ウエハ突上げピン266によりウエハ200をサセプタ217から離して支持させ、また、処理室201内をN
2ガスで満たし圧力を高めた状態で、サセプタ217からの熱の輻射とN
2ガスの熱伝達とによりウエハ200を昇温する場合について説明した。係る構成では、処理室201内の圧力を高めるほど、熱伝達による昇温速度が向上するはずである。しかしながら、上述の実施形態に係るMMT装置100では、基板処理時の圧力領域に合わせたダイアフラムゲージ241aの上限の圧力が使用可能な圧力の上限値であった。
【0061】
そこで本実施形態では、基板処理の圧力領域での計測精度を低下させることなく、ウエハ200の昇温にかかる時間をさらに短縮すべく、更に高い圧力領域での基板処理工程が可能となるMMT装置および係るMMT装置を用いた基板処理工程について説明する。
【0062】
(1)基板処理装置の構成
本実施形態に係るMMT装置は、ガス排気部の構成が上述の実施形態と異なる。それ以外の構成については、上述の
図1に示すMMT装置100と同様であるので説明を省略し、ガス排気部の構成について
図3を用いて以下に説明する。
図3は、本実施形態に係るMMT装置が備えるガス排気部の図であって、(a)はガス排気部の一例を示す模式図であり、(b)はガス排気部の他の例を示す模式図である。
図3において、上述の実施形態の
図2の構成と同様の構成には同様の符号を付して説明を省略する。
【0063】
図3(a)に示すガス排気部のガス排気室201aには、ダイアフラムゲージ241aに加え、例えばキャパシタンスマノメータ等の圧力制御センサとしてのダイアフラムゲージ241bが設けられている。ダイアフラムゲージ241bは、例えば上限の圧力として10Torr(1330Pa)まで計測可能に構成されている。これにより、ダイアフラムゲージ241bにて計測された圧力情報に基づき、APC242の弁開度を調整することで、制御可能な処理室201内圧力を、例えばターボ分子ポンプ246aが対応可能な最大圧力である400Pa程度まで高めることができる。
【0064】
図3(b)のガス排気部においても、ガス排気室201aには、ダイアフラムゲージ241bが設けられている。また、
図3(b)に示すガス排気部では、スロー排気ラインがターボ分子ポンプ246aを迂回する構造をとっている。すなわち、上流端がガス排気室201aに接続されるガス排気管231aの、APC242とターボ分子ポンプ246aとの間には、開閉弁としての遮断バルブ243cが設けられている。また、ガス排気管231aのAPC242と遮断バルブ243cとの間には、スロー排気ラインのガス排気管231cの上流端が接続され、ガス排気管231aの主要バルブ243aとドライポンプ246bとの間には、ガス排気管231cの下流端が接続されている。これにより、ターボ分子ポンプ246aの対応可能圧力によらず、例えばダイアフラムゲージ241bの上限の圧力である10Torr(1330Pa)程度まで、処理室201内の圧力を高めることができる。すなわち、遮断バルブ243cを閉じ、スロー排気バルブ243bを開けた状態で、ダイアフラムゲージ241bにて計測された圧力情報に基づき、APC242の弁開度を調整することで、ターボ分子ポンプ246aを高圧下に曝すことなく処理室201内の圧力を高圧に制御することができる。なお、スロー排気ラインのガス排気管231cは、例えば3/8インチ配管と同等の排気コンダクタンスを有するため、400Pa以上の高圧力であっても対応可能である。
【0065】
(2)基板処理工程
本実施形態に係る基板処理工程は、例えば半導体装置の製造工程の一工程として、上述の
図3に示すガス排気部を備えるMMT装置により実施される。本実施形態に係る基板処理工程においても、上述の実施形態と同様、N
2ガスによる窒化処理を行うものとするが、本実施形態に係る基板処理工程は、主に基板昇温工程が上述の実施形態とは異なる。以下、異なる点について説明する。以下の説明において、MMT装置は
図3(b)のガス排気部を備えるものとする。また、本実施形態に係るMMT装置を構成する各部の動作は、上述の
図1のコントローラ121と同様のコントローラにより制御される。
【0066】
(基板昇温工程)
基板搬入工程にて処理室201内に搬入したウエハ200に対し、昇温工程を実施する。すなわち、上述の実施形態と同様の手順で、例えばヒータ217bにより25℃以上700℃以下、ランプ加熱ユニット280を併用した場合には900℃以下の範囲内の所定温度に加熱されたサセプタ217の上方に、ウエハ200を離して支持する。また、例えば昇圧ガスとしてのN
2ガスを処理室201内に供給して、処理室201内の圧力を例えば基板搬入工程における圧力より高める。具体的には、バルブ253b,254を開け、マスフローコントローラ252bにて流量制御しながら、バッファ室237を介して処理室201内にN
2ガスを供給する。このとき、N
2ガスの流量を、例えば1000sccm以上2000sccm以下の範囲内の所定値とする。また、処理室201内の圧力を、例えば240Pa以上1000Pa以下、より好ましくは400Pa以上1000Pa以下の範囲内の所定圧力とする。具体的には、遮断バルブ243cを閉じ、スロー排気バルブ243bを開けた状態で、ダイアフラムゲージ241bにて計測された圧力情報に基づきAPC242の開度を調整し、処理室201内を排気する。
【0067】
これにより、処理室201内がN
2ガスで満たされる。この状態を所定時間、例えば40秒間〜60秒間保つことで、サセプタ217とウエハ200との間に存在するN
2ガスによって、サセプタ217からウエハ200へと熱が伝達される。つまり、サセプタ217からの熱の輻射に加え、N
2ガスの熱伝達によってもウエハ200が加熱されるので、ウエハ200の昇温速度を向上させることができる。
【0068】
また、ウエハ突上げピン266により支持されるウエハ200と、サセプタ217との距離を、ウエハ200とサセプタ217との温度差や、処理室201内に供給するガスの種類(本実施形態ではN
2ガス)、ガスの流量、処理室201内の圧力等に応じて調整することができる。これにより、ウエハ200の下面が急激に昇温されることを抑制したり、或いはウエハ200の昇温を加速したりすることができる。
【0069】
(基板移載工程)
所定時間が経過した後、上述の実施形態に係る基板移載工程と同様の手順により、ウエハ200をサセプタ217へと移載して所定の処理位置へと上昇させる。
【0070】
(処理ガス供給工程)
本実施形態では、例えば上述の基板昇温工程にて開始した、N
2ガスの処理室201内への供給を継続しておく。この状態で、マスフローコントローラ252b及びAPC242による再調整を行って、処理ガスとしてのN
2ガスの流量及び処理室201内の圧力を、例えば上述の実施形態に係る処理ガス供給工程と同様の所定値とする。
【0071】
このとき、APC242による圧力制御は、ダイアフラムゲージ241aにて計測された圧力情報に基づいて行う。これにより、例えば266Pa以下、より好ましくは240Pa以下の圧力下で実施される基板処理時の圧力を、精度よく制御することができる。こ
のように、各工程における制御圧力に応じてそれぞれのダイアフラムゲージ241a,241bを使い分けることで、処理室201内の圧力を精度よく計測し、制御することができる。
【0072】
また、処理室201内の圧力を所定値とするにあたっては、処理室201内の圧力が例えば400Pa程度に下がるまでは、ターボ分子ポンプ246aが高圧下に曝されないよう、遮断バルブ243cを閉じ、スロー排気バルブ243bを開けた状態で、スロー排気ラインを介して処理室201内の排気を継続する。処理室201内の圧力が400Pa以下となった後は、スロー排気バルブ243bを閉じ、遮断バルブ243cを開けて、ターボ分子ポンプ246aを介して処理室201内の排気を行う。
【0073】
以上、
図3(b)のガス排気部を備えるMMT装置による基板処理工程の説明を終了する。
【0074】
なお、上述の実施形態で述べた、基板昇温工程にてN
2ガス等の供給に下側容器211の側壁に設けたノズルを用いる手法や、N
2ガスを処理室201内に封入して処理室201内の圧力を高める手法は、本実施形態においても適用可能である。N
2ガスを封入する場合には、本実施形態では上限の圧力を1000Paまで高めることができる。
【0075】
また、MMT装置が
図3(a)のガス排気部を備える場合は、昇温工程における処理室201内の圧力を、ターボ分子ポンプ246aの対応可能圧力を上限として、例えば1Pa以上400Pa以下とすることができる。
【0076】
(3)本実施形態に係る効果
本実施形態においても、上述の実施形態と同様の効果を奏する。
【0077】
(a)また、本実施形態によれば、基板昇温工程で、処理室200内の圧力を240Pa以上1000Pa以下、より好ましくは400Pa以上1000Pa以下に高める。これにより、N
2ガスによるサセプタ217からウエハ200への熱の伝達が一層促進され、ウエハ200の昇温速度をより一層向上させて昇温時間を短縮することができる。
【0078】
(b)また、本実施形態によれば、ガス排気部は、計測圧力の上限が2Torr(266Pa)のダイアフラムゲージ241aと、計測圧力の上限が10Torr(1330Pa)のダイアフラムゲージ241bと、を備えている。また、処理ガス供給工程やプラズマ処理工程等ではダイアフラムゲージ241aの圧力情報に基づき処理室201内の圧力制御を行い、基板昇温工程ではダイアフラムゲージ241bの圧力情報に基づき処理室201内の圧力制御を行う。これにより、基板処理時の制御圧力の精度を維持したまま、基板昇温工程では処理室201内の圧力をいっそう高めることができる。
【0079】
(c)また、本実施形態によれば、ガス排気部は、ターボ分子ポンプ246aを迂回する構造のスロー排気ラインを備えている。これにより、昇温工程では、ターボ分子ポンプ246aの対応可能圧力よりさらに高い、ダイアフラムゲージ241bの上限圧力まで処理室201内の圧力を高めることができる。よって、ウエハ200をさらに高速に昇温することができる。
【0080】
<本発明の第3実施形態>
上述の実施形態では、サセプタ217に埋め込まれたヒータ217bを加熱部として、ウエハ200を昇温する場合について説明した。しかしながら、係る手法では、主にウエハ200の下面側からウエハ200を加熱して昇温することとなり、ウエハ200の下面と上面との昇温速度の差が充分に低減されない場合が考えられる。
【0081】
また、上述の実施形態のように、N
2ガス等をウエハ200の上方のシャワーヘッド236から吹き出させて処理室201内に供給すると、例えば供給されるN
2ガス等が比較的低温であった場合、ウエハ200の上面にN
2ガス等が直接当たってウエハ200の上面が冷却され、ウエハ200の下面との昇温速度の差を低減する効果が弱まってしまうことが考えられる。
【0082】
そこで本発明者等は、ウエハ200の下面と上面との昇温速度の差を低減する効果を一層高めるべく、更に研究を重ねた。以下、係る研究結果から本発明者等が得た知見に基づき、ウエハ200の下面と上面との昇温速度の差を一層低減し、ウエハ200の温度均一性を更に向上させる手法について説明する。
【0083】
(1)基板処理工程
本実施形態に係る基板処理工程においても、上述の
図3(b)に示すガス排気部を備えるMMT装置を用いてN
2ガスによる窒化処理を行うものとする。以下、上述の実施形態とは異なる基板昇温工程について、主に説明する。
【0084】
(基板昇温工程)
上述の実施形態と同様の手順で、例えばヒータ217bにより25℃以上700℃以下、ランプ加熱ユニット280を併用した場合には900℃以下の範囲内の所定温度に加熱されたサセプタ217の上方に、ウエハ200を離して支持する。また、バルブ253a,254を開け、マスフローコントローラ252aにて流量制御しながら、バッファ室237を介して処理室201内に、ウエハ200若しくはウエハ200に施す処理に対して不活性なガス、例えばN
2ガス、ヘリウム(He)ガス、アルゴン(Ar)ガス、クリプトン(Kr)ガス、キセノン(Xe)ガス等の不活性ガスを供給する。ここで、例えばN
2ガスを用いるとすると、N
2ガスの流量を、例えば1000sccm以上2000sccm以下の範囲内の所定値とすることができる。また、処理室201内の圧力を、例えば240Pa以上1000Pa以下、より好ましくは400Pa以上1000Pa以下の範囲内の所定圧力とする。
【0085】
次に、処理室201内の圧力が安定したら、筒状電極215に対して高周波電源273から整合器272を介して、例えば150W以上1000W以下の範囲内の所定の出力値の高周波電力の印加を開始する。このとき、インピーダンス可変機構274は、予め所定のインピーダンス値に制御しておく。これにより、処理室201内、より具体的にはウエハ200の上方のプラズマ生成領域224内にプラズマ放電を起こす。
【0086】
このように、不活性ガスを励起させてウエハ200の上方にプラズマを生成させることで、プラズマからの熱がウエハ200に伝わり、ウエハ200は上面側からも加熱される。これにより、ウエハ200下面側のヒータ217bとウエハ200の上面側のプラズマとを熱源として、ウエハ200を両面から加熱して昇温させることができる。よって、ウエハ200の下面と上面との昇温速度の差を一層低減することができる。
【0087】
また、高周波電力の印加時には、ウエハ200の温度は急速に上昇する。このため、上述の実施形態のようにガスをプラズマ化せずに供給する場合に比べ、ウエハ200の昇温時間を一層短縮することができる。
【0088】
また、処理室201内への搬入前、ウエハ200は例えば大気に曝されており、ウエハ200の表面には予め自然酸化膜(SiO
2膜)が形成されている場合がある。このような場合に、処理室201内にH
2ガスを導入し、励起させてもよい。H
2ガスは例えばプラズマ化されて解離し、水素(H)を含む水素活性種等の反応種を生成する。生成した水
素活性種等により、ウエハ200の表面の自然酸化膜をエッチングして、少なくとも一部を除去することができる。H
2ガスプラズマによる自然酸化膜のエッチングレートは、ウエハ200の温度が高いほど、つまり、予めヒータ217bの温度を高く設定しておくほど増大する。また、筒状電極215に印加する高周波電力を高めることによってもエッチングレートが増大する。このように、ウエハ200の表面の自然酸化膜を予め除去しておくことで、プラズマ処理工程における窒化速度および窒化濃度を向上させることができる。
【0089】
また、ウエハ200の表面には凹凸のパターンが形成されることがあり、さらに、係る表面の略全体に自然酸化膜(SiO
2)が形成されていることがある。このような場合に、突上げピン266の突出高さを高くすることで、ウエハ200とインピーダンス調整電極217cとの間に真空のキャパシタンスを形成する。真空のキャパシタンスにより、ウエハ200のバイアスを低減してプラズマの引き込み量を減少させ、凹凸パターンの側面に対する凹部の底面や凸部の上面の除去レートを抑えて、凹凸パターンの底面や上面と、側面とに形成された自然酸化膜を均一に除去することができる。よって、ウエハ200の表面に凹凸パターンが形成されている場合でも、自然酸化膜による影響を低減することができ、プラズマ処理工程における窒化速度及び窒化濃度を向上させることができる。
【0090】
所定時間、例えば40秒間〜60秒間経過後、処理室201内のプラズマ放電を停止し、H
2ガスの供給を停止する。なお、高周波電力の印加後、上記昇温速度差の低減や昇温時間の短縮等のいずれかの効果が得られた時点でプラズマ放電を停止してもよく、必ずしも昇温工程の全期間に亘ってプラズマ放電を維持しなくともよい。
【0091】
以上のように、本実施形態においては、プラズマ生成部も加熱部としての機能を果たす。
【0092】
(基板移載工程)
所定時間が経過した後、上述の実施形態に係る基板移載工程と同様の手順により、ウエハ200をサセプタ217へと移載して所定の処理位置へと上昇させる。また、処理室201内のH
2ガスや、H
2ガスが反応した排ガス等を処理室201外へと排気する。これにより、H
2ガス等が処理室201内に残留して後の工程に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0093】
以上、本実施形態に係る基板処理工程の、上述の実施形態とは異なる点についての説明を終了する。
【0094】
なお、ウエハ200の上面側からウエハ200を加熱してウエハ200の下面と上面との昇温速度の差を低減する手法は、上述のプラズマを用いる手法のほかにも考えられうる。例えば、ウエハ200の上方のシャワーヘッド236から、所定温度に加熱したガスを噴出させて処理室201内に供給する。これにより、上面側からウエハ200を加熱することができる。この手法によれば、所定温度のガスで処理室201内が満たされることで、ウエハ200の周囲が略一定温度となり、ウエハ200の外周部からの放熱を抑えることができる。これにより、ウエハ200の面内における昇温速度の差も低減することができる。よって、ウエハ200の温度均一性を一層向上させることができる。このように、係る構成においてはガス供給部も加熱部としての機能を果たす。
【0095】
また、これまでに述べてきたランプ加熱装置としてのランプ加熱ユニット280を用いることによっても、ウエハ200の上方からウエハ200を加熱することとなっており、ウエハ200の下面と上面との昇温速度の差を低減する効果がある。このように、係る観点からは、ランプ加熱ユニット280も加熱部としての機能を果たしているといえる。
【0096】
(2)本実施形態に係る効果
本実施形態においても、上述の実施形態と同様の効果を奏する。
【0097】
(a)また、本実施形態によれば、基板昇温工程で、ウエハ突上げピン266に支持したウエハ200を昇温する際、ガス供給部により処理室201内に不活性ガスを供給し、プラズマ生成部により不活性ガスを励起させ、ウエハ200の上方にプラズマを生成させる。これにより、ウエハ200下面側のヒータ217bとウエハ200の上面側のプラズマとを熱源として、ウエハ200を加熱して昇温することができる。よって、ウエハ200の下面と上面との昇温速度の差を一層低減することができ、ウエハ200の温度均一性を更に向上させることが可能となる。
【0098】
(b)また、本実施形態によれば、基板昇温工程で、高周波電力を印加して不活性ガスをプラズマ化している。これにより、高周波電力を印加した際、ウエハ200の温度を急速に上昇させることができる。よって、ガスをプラズマ化せずに供給する場合に比べ、ウエハ200を更に高速に昇温することが可能となる。
【0099】
(c)また、本実施形態によれば、基板昇温工程で、H
2ガスを励起させてプラズマ化している。これにより、ウエハ200の表面に形成された自然酸化膜を除去することができ、プラズマ処理工程における窒化速度および窒化密度を向上させることができる。
【0100】
図4(a)に示すフローにて製作したサンプルのAPM洗浄後およびH
2ガスプラズマ処理後の自然酸化膜厚の測定値を、
図4(b)に示す。H
2ガスプラズマによる処理は、ウエハ200の温度を制御して実験精度を上げるため、ウエハ200をサセプタ217上に直接載置した状態で、ヒータ217bの温度をそれぞれ600℃(図中、□印の)と900℃(図中、●印)としてデータを取得した。
図4(b)に示すように、ヒータ217bの温度をより高温にし、かつ、H
2ガスプラズマによる処理を行うことで、自然酸化膜を除去することができる。
【0101】
本実施形態では、同一の処理室201内で、H
2ガスプラズマによる処理に引き続いて窒化処理を行うため、途中、ウエハ200が大気に曝されることがなく、より一層、窒化処理が効率化される。
【0102】
(d)また、本実施形態によれば、ウエハ200をサセプタ217から離してウエハ突上げピン266に支持した状態で、H
2ガスを励起させてプラズマ化している。これにより、ウエハ200とインピーダンス調整電極217cとの距離が離れ、真空インピーダンスが形成されるため、バイアスを弱めることができる。つまり、プラズマ中の活性種をウエハ200に引き込む力を弱めることができる。よって、ウエハ200に凹凸パターンが形成され、さらに凹凸パターンの表面に自然酸化膜が形成されている場合であっても、凹凸パターンの底面や上面と、側面とに形成された自然酸化膜を均一に除去することができる。
【0103】
(e)また、本実施形態によれば、昇温工程においてウエハ200の昇温のみならず、自然酸化膜除去等の副次的な処理を行う。これにより、基板処理工程の効率化が図られ、基板処理の生産性を向上させることができる。
【0104】
(f)また、本実施形態によれば、加熱したガスやランプ加熱ユニット280により、ウエハ200を上方から加熱する。これにより、ウエハ200の上面と下面との昇温速度の差が更に低減される。
【0105】
(g)また、加熱したガスを用いる場合、所定温度のガスでウエハ200の周囲が満たされることで、ウエハ200の外周部からの放熱が抑えられ、ウエハ200の面内の昇温速度の差も低減でき、ウエハ200の温度均一性が一層向上する。
【0106】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0107】
例えば、上述の実施形態においては、サセプタ217を上昇させることにより、ウエハ突上げピン266により支持したウエハ200をサセプタ217上に移載することとしたが、例えばウエハ突上げピンに昇降等を行う駆動機構を設け、ウエハ突上げピンを降下させることによりウエハ200をサセプタ上に移載してもよい。また、上述の実施形態においては、ウエハ200をウエハ突上げピン266上に支持する際に、サセプタ217を降下させたが、ウエハ突上げピンを上昇させることによりウエハ200をウエハ突上げピン上に支持させてもよい。これにより、サセプタ217を昇降動作させるよりも昇降動作の機構を簡略化することができ、基板処理装置の消費電力を低減することができる。また、サセプタ及びウエハ突上げピンの両方が昇降動作するように、サセプタ及びウエハ突上げピンのそれぞれに昇降等を行う駆動機構を設け、それぞれが相対的に昇降動作するようにしてもよい。
【0108】
また、上述の実施形態においては、ウエハ突上げピン266によりウエハ200をサセプタ217から離して支持することとしたが、ウエハ200の支持はウエハ突上げピン266によるものに限られず、例えばウエハ200をサセプタの上方に所定距離離して吊り下げて支持たり、処理室201内にウエハ200を搬入する搬送機構をサセプタの上方で所定時間停止することでウエハ200をサセプタから離して支持したりしてもよい。また、例えばサセプタの上面に凹凸加工(エンボス加工)を施して、サセプタ上面の凸部によりウエハ200を支持してもよい。これにより、サセプタとウエハ200との接触面積が減り、ウエハ200を載置したときのウエハ200の横滑りを抑制することができる。また、ウエハ200の裏面に形成される傷等を減らすことができる。さらに、ウエハ200の反りを低減することができる。
【0109】
また、上述したように、サセプタ217が備えるヒータ217b、ランプ加熱ユニット280、プラズマ生成部、加熱したガスを供給するガス供給部等が加熱部として用いられ得る。その際、加熱部は、ヒータ217b、ランプ加熱ユニット280、プラズマ生成部、ガス供給部のいずれか、又はこれらのうちのいくつか若しくは全てを組み合わせたものとすることができる。上記いずれの組み合わせにおいても、基板昇温工程にてサセプタ217から離してウエハ200を支持し、また、サセプタ217とウエハ200との距離を適宜調整することで、ウエハ200の上下面の温度環境を均一化させることができる。よって、上下面での昇温速度の差が生じ難くなり、ウエハ200の温度均一性を向上させることができる。
【0110】
また、昇温工程で処理室201内に供給して圧力を高めるガスやプラズマ化するガスは、上述の実施形態で示したN
2ガスやH
2ガスに限られず、基板処理の内容やウエハ200の表面状態(所定膜の形成有無等)に応じて適宜選択することができる。以下に、いくつかの具体例を示す。
【0111】
例えば、ウエハ200のSi表面やシリコン酸化膜(SiO
2膜)の窒化時には、上述のN
2ガスやH
2ガスのほか、例えばArガス、Heガス、Krガス等の希ガスを用いることができる。但し、O
2ガスは、処理室201内に残留して窒化効率を低下させるおそれがあるので好ましくない。
【0112】
また、Si等の酸化処理時には、例えばN
2ガスやO
2ガス、H
2ガス、希ガス等を用いることができる。但し、フラッシュメモリ等の半導体装置のゲート酸化膜の形成時には、ゲート酸化膜中に取り込まれて電気的特性を悪化させるおそれがあるH
2ガスを使用することは好ましくない。
【0113】
また、アニール処理時には、例えばN
2ガスや希ガス等を用いることができる。但し、O
2ガスやH
2ガス等、アニール処理時の高温下でウエハ200やウエハ200上に形成された膜を酸化あるいは還元させてしまうおそれのあるガスは好ましくない。
【0114】
また、SiO
2膜/金属膜(順不同)等の積層構造に対して行う選択酸化時には、N
2ガスやO
2ガス、H
2ガス、希ガス等を用いることができ、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いた各種成膜時には、N
2ガスや希ガス等を用いることができる。
【0115】
いずれの処理においても、例えばHeガス等の分子量や分子サイズが小さいガスを用いることで、熱の伝達効率をより向上させることができる。
【0116】
また、本発明は上記に挙げた基板処理のみならず、ベアウエハや各種の膜が形成されたウエハに対する、酸化と窒化とを一緒に行う酸窒化、拡散、エッチング、アニール等の処理にも適用可能である。上記処理は、プラズマにより、又はプラズマによらずに行うことができる。
【0117】
<本発明の好ましい態様>
以下に、本発明の好ましい態様を付記する。
【0118】
本発明の一態様は、
基板を処理する処理室と、
前記処理室内に搬入された前記基板を一時的に支持する第1基板支持部と、
前記処理室内に設けられ、前記第1基板支持部から前記基板が移載される第2基板支持部と、
前記処理室内に搬入された前記基板を加熱する加熱部と、
前記第2基板支持部の上方に、前記処理室内に搬入された前記基板を前記第1基板支持部により前記第2基板支持部から離して支持させ、前記加熱部により前記基板を昇温させ、
所定時間経過した後に、前記第1基板支持部から前記第2基板支持部へと前記基板を移載させ、
前記加熱部により前記基板を加熱させながら前記基板を処理させるよう、前記第1基板支持部および前記加熱部を制御する制御部と、を有する
基板処理装置である。
【0119】
好ましくは、
前記第1基板支持部に支持させた前記基板と前記第2基板支持部との距離は、搬入時の前記基板の温度と前記加熱部により所定温度に加熱された前記第2基板支持部の温度との差に応じて調整されるよう構成される。
【0120】
好ましくは、
前記処理室内にガスを供給するガス供給部を有し、
前記制御部は、
前記第1基板支持部に支持させた前記基板を昇温させる際、前記ガス供給部により前記
処理室内に前記ガスを供給させ、前記処理室内の圧力を前記基板の搬入時の圧力より高めさせるよう、更に前記ガス供給部を制御する。
【0121】
好ましくは、
前記加熱部は、
前記処理室内に供給された前記ガスを励起するプラズマ生成部を有し、
前記制御部は、
前記ガス供給部により前記処理室内に前記ガスを供給させて前記第1基板支持部に支持させた前記基板を昇温させる際、前記プラズマ生成部により前記ガスを励起させるよう、更に前記プラズマ生成部を制御する。
【0122】
さらに好ましくは、
前記基板の表面には自然酸化膜が形成されており、
前記ガスは水素含有ガスである。
【0123】
好ましくは、
前記加熱部は、
前記第1基板支持部の上方に設けられたランプ加熱装置を有し、
前記制御部は、
前記第1基板支持部に支持させた前記基板を昇温させる際、前記ランプ加熱装置により前記基板を上方から加熱させるよう、更に前記ランプ加熱装置を制御する。
【0124】
本発明の他の態様は、
基板を処理する処理室内に前記基板を搬入する工程と、
前記基板を一時的に支持する第1基板支持部により、前記処理室内に設けられた第2基板支持部の上方に、前記処理室内に搬入した前記基板を前記第2基板支持部から離して支持し、前記処理室内に搬入された前記基板を加熱する加熱部により前記基板を昇温する工程と、
所定時間経過した後に、前記第1基板支持部から前記第2基板支持部へと前記基板を移載する工程と、
前記加熱部により前記基板を加熱しながら前記基板を処理する工程と、
前記処理室内から前記基板を搬出する工程と、を有する
半導体装置の製造方法である。
【0125】
好ましくは、
前記第1基板支持部が支持する前記基板と前記第2基板支持部との距離は、搬入時の前記基板の温度と前記加熱部により所定温度に加熱された前記第2基板支持部の温度との差に応じて調整する。
【0126】
好ましくは、
前記第1基板支持部に支持した前記基板を昇温する工程では、
ガス供給部により前記処理室内にガスを供給し、前記処理室内の圧力を前記基板を搬入する工程における圧力より高める。
【0127】
好ましくは、
前記第1基板支持部に支持した前記基板を昇温する工程では、
ガス供給部により前記処理室内にガスを供給し、前記加熱部が有するプラズマ生成部により前記ガスを励起する。
【0128】
さらに好ましくは、
前記基板の表面には自然酸化膜が形成されており、
前記ガスは水素含有ガスである。
【0129】
好ましくは、
前記第1基板支持部に支持した前記基板を昇温する工程では、
前記加熱部が有し、前記第1基板支持部の上方に設けられたランプ加熱装置により、前記基板を上方から加熱する。