(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
合成樹脂、活性剤、有機溶剤および60℃以上の融点を有するパラフィンワックスを含有し、パラフィンワックスが、フラックス総量に対して3〜8質量%の割合で含有され、
合成樹脂が、アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、テルペン樹脂およびポリアルキレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、はんだ付け用フラックス。
【背景技術】
【0002】
従来、電子回路部品などをはんだ接続するために、はんだ粉末とフラックスとからなる種々のはんだペースト組成物が使用されている。
【0003】
ところで、はんだペーストの塗布方法は、印刷法と吐出法とに大別できる。印刷法は、はんだ付部に孔が設けられたメタルマスクやシルクスクリーンなどをプリント基板の上に置いて、その上からはんだペーストを塗布する方法である。一方、吐出法は、ディスペンサーなどを用いてはんだ付部に1箇所ずつはんだペーストを塗布する方法である。ファインピッチのパターンには、吐出法では塗布できないという欠点がある。例えば、ファインピッチの回路基板に電子回路部品などをはんだ接続する場合には、印刷法が用いられる。
【0004】
電子機器の小型化によって実装技術も高密度化され、ますますファインピッチ化が進んでいる。そのため、はんだペーストには、従来求められていた特性(安定性、信頼性など)に加え、印刷性(転写性)に優れることが要求されるようになっている。印刷性とは、例えばメタルマスクを用いる場合、メタルマスク開口部の壁面などに付着したはんだペーストを基板へ効率よく転写することである。これまでに、印刷性の向上を実現するため、金属粒径の微細化やワックス量の増加などの手段が提案されている。しかし、金属粒径の微細化では、印刷性が向上するものの、「保存安定性」、「濡れ性の低下」などが見られる。一方、ワックス量の増加では、粘性の調整が難しく濡れ性が低下しやすい。
【0005】
このような問題を解決するために、特許文献1および2に記載のはんだペーストが開示されている。特許文献1には、はんだペーストに所定量の流動パラフィンを添加することで、流動性を改善して微細なパターンの印刷を可能にすることが記載されている。特許文献2には、はんだペーストに用いられるフラックスに、流動パラフィンまたはパラフィンワックスを添加すると、はんだ付けされたCuランドのプリント基板が高温高湿下の環境に曝されても、接合強度を低下させないことが記載されている。
【0006】
近年、上記の特性以外にも、残渣の耐亀裂性が求められている。残渣の亀裂を防止するために、フラックスのベース樹脂として、低いガラス転移温度(Tg)を有する樹脂が用いられている(特許文献3)。しかし、低Tgを有する樹脂は、残渣の亀裂防止には有用であるものの、リフロー後に残渣がべとつくという問題がある。また、特許文献1および2にも、リフロー後の残渣のべとつきを改善することについて言及されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、印刷性、濡れ性および電気的信頼性(絶縁抵抗)を損なわずに、残渣亀裂を防止し、かつリフロー後の残渣のべとつきを改善することができるはんだ付け用フラックスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った結果、以下の構成からなる解決手段を見出し、本発明を完成するに至った。
(1)合成樹脂、活性剤、有機溶剤および60℃以上の融点を有するパラフィンワックスを含有することを特徴とする、はんだ付け用フラックス。
(2)前記パラフィンワックスが、炭素および水素のみを構成元素とする、(1)に記載のはんだ付け用フラックス。
(3)前記パラフィンワックスが、フラックス総量に対して3〜8質量%の割合で含有される、(1)または(2)に記載のはんだ付け用フラックス。
(4)前記合成樹脂が、アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、テルペン樹脂およびポリアルキレンカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項(1)〜(3)のいずれかの項に記載のはんだ付け用フラックス。
(5)前記合成樹脂が、−30〜−100℃のガラス転移温度を有する、請求項(1)〜(4)のいずれかの項に記載のはんだ付け用フラックス。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかの項に記載のはんだ付け用フラックスと、はんだ合金粉末とを含有する、はんだペースト組成物
(7)前記はんだ付け用フラックスと前記はんだ合金粉末とが、8:92〜15:85の質量比で含有される、(6)に記載のはんだペースト組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、はんだ付け用フラックスにおいて、印刷性、濡れ性および電気的信頼性(絶縁抵抗)を損なわずに、残渣亀裂を防止し、かつリフロー後の残渣のべとつきを改善することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(はんだ付け用フラックス)
本発明のはんだ付け用フラックス(以下、単に「フラックス」と記載する場合がある)は、合成樹脂、活性剤、有機溶剤および60℃以上の融点を有するパラフィンワックスを含有する。
【0012】
本発明のフラックスには、ベース樹脂として合成樹脂が含有される。合成樹脂であれば特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂およびポリアルキレンカーボネートなどが挙げられる。
【0013】
アクリル樹脂としては、アルキル部分が炭素数1〜23のアルキル(メタ)アクリレートの単独重合体や、このアルキル(メタ)アクリレートを主成分とする共重合体などが挙げられる。具体的には、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリ2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体、エチル(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体、ブチル(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体、エチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体、ブチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体、メチル(メタ)アクリレート−エチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、エチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体などが挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートまたはメタクリレートを意味し、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸またはメタクリル酸を意味する。
【0014】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、臭素化ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールS型、ビスフェノールAF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオレン型などの、各種のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂や、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0015】
ウレタン樹脂としては、ジフェニルメタンジイソシアネートやトリレンジイソシアネートとポリオール(エチレングリコール、プロピレングリコールなど)との縮合物などが挙げられる。
【0016】
ポリエステル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。
【0017】
フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA型フェノキシ樹脂、ビスフェノールF型フェノキシ樹脂などが挙げられる。
【0018】
ポリアルキレンカーボネートとしては、ポリプロピレンカーボネート、ポリブチレンカーボネートなどが挙げられる。
【0019】
これらの合成樹脂は、低いガラス転移温度(Tg)を有するものが好ましく、例えば、−30〜−100℃のTgを有する合成樹脂が好ましい。高いTgを有する樹脂を用いた場合、べとつきにくくなるが、残渣に亀裂が生じやすくなる。また、樹脂の酸価は特に限定されないが、0〜100mgKOH/g程度であることが好ましい。
【0020】
本発明のフラックスは、さらにロジンを含んでいてもよい。ロジンとしては、ガムロジン、トールロジン、ウッドロジン、これらの誘導体などが挙げられる。これらの誘導体としては、重合ロジン、アクリル化ロジン、水素添加ロジン、不均化ロジン、ホルミル化ロジン、ロジンエステル、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキド樹脂などが挙げられる。
【0021】
本発明に用いられるパラフィンワックスは、60℃以上の融点を有するパラフィンワックス(以下、「特定のパラフィンワックス」と記載する場合がある)である。60℃未満の融点を有するパラフィンワックス(すなわち、60℃未満で液状のパラフィンワックス)を用いた場合、べとつき改善の効果が得られない。
【0022】
特定のパラフィンワックスの中でも、70〜80℃の融点を有するパラフィンワックスが好ましい。また、100℃以上の融点を有するパラフィンワックスを用いてもよいが、コスト面と効果とのバランスを考慮すると、上限は100℃程度が好ましい。
【0023】
特定のパラフィンワックスは、単純な炭化水素系のもの(すなわち、炭素および水素のみを構成元素とするもの)でもよく、酸やアルコール変性されたものであってもよい。しかし、べとつきをより改善し得る点で、単純な炭化水素系のものが好ましい。
【0024】
パラフィンワックスは、構成するパラフィン(炭化水素)の形状によって、ノルマル体(直鎖状)、イソ体(分岐状)およびシクロ体(環状)に分類されるが、いずれであってもよい。また、ノルマル体、イソ体およびシクロ体の混合物であってもよい。
【0025】
本発明に用いられる活性剤は、従来用いられている活性剤であれば、特に限定されない。活性剤としては、例えば、アミン類(ジフェニルグアニジン、ナフチルアミン、ジフェニルアミン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミンなど)、アミン塩類(エチレンジアミンなどのポリアミンや、シクロヘキシルアミン、エチルアミン、ジエチルアミンなどのアミンの有機酸塩や無機酸(塩酸、硫酸などの鉱酸)塩など)、有機酸類(コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、セバシン酸、マレイン酸などのジカルボン酸;ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸;乳酸、ジメチロールプロピオン酸、リンゴ酸などのヒドロキシカルボン酸;安息香酸、フタル酸、トリメリット酸など)、アミノ酸類(グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、バリンなど)、アニリンのハロゲン化水素酸塩(アニリン臭化水素酸塩など)などが挙げられる。
【0026】
本発明に用いられる有機溶剤は特に限定されず、例えば、アルコール系溶剤(エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルカルビトールなど)、エステル系溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、炭化水素系溶剤(トルエン、テレピン油など)などが挙げられる。これらの中でも、イソプロピルアルコール、ブチルカルビトールなどが好ましい。イソプロピルアルコールは、揮発性や活性剤の溶解性に優れ、例えば液状のフラックスなどに好ましく用いられる。一方、フラックスを、はんだ合金粉末と混合して、はんだペースト組成物として用いる場合は、ブチルカルビトールなどのような高沸点を有する多価アルコールのエーテルが好ましく用いられる。
【0027】
上記の4成分(合成樹脂、活性剤、有機溶剤および特定のパラフィンワックス)は、フラックスを構成し得る割合であれば、その含有量は特に限定されず、例えば以下の割合(フラックス総量に対する割合)で含有される。なお、これらの含有量は、あくまで好適な範囲であり、効果に影響を与えないのであれば、少なくとも1つの成分がこの範囲外であっても差し支えない。
【0028】
合成樹脂 :20〜80質量%、好ましくは30〜60質量%、
特定のパラフィンワックス:3〜8質量%、好ましくは5〜8質量%、
活性剤 :5〜25質量%、好ましくは10〜20質量%、
有機溶剤 :5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%。
【0029】
一般的に、フラックスにはチキソ剤が含有されるが、本発明のフラックスにもチキソ剤が含有されていてもよい。チキソ剤としては、例えば、硬化ひまし油、蜜ロウ、カルナバワックス、ステアリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸エチレンビスアミドなどが挙げられる。チキソ剤の含有量は、フラックス総量に対して、通常2〜10質量%程度である。
【0030】
さらに、本発明のフラックスは、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて酸化防止剤、キレート剤、防錆剤などの添加剤を含んでいてもよい。なお、これらの添加剤は、例えば、フラックスとはんだ合金粉末とを混合する際に添加してもよい。
【0031】
(はんだペースト組成物)
本発明のはんだペースト組成物は、本発明のフラックスとはんだ合金粉末とを含有する。はんだ合金粉末は特に限定されず、例えば、Sn−Pb合金や、Sn−Pb合金に銀、ビスマス、インジウムなどを添加した合金、Sn−Ag系合金、Sn−Cu系合金、Sn−Ag−Cu系合金などが挙げられる。環境への影響を考慮すると、Sn−Ag系合金、Sn−Cu系合金、Sn−Ag−Cu系合金などの鉛フリー合金が好ましい。はんだ合金粉末の平均粒子径は特に限定されないが、例えば10〜40μm程度が好ましい。
【0032】
フラックスとはんだ合金粉末との質量比(フラックス:はんだ合金粉末)は、はんだペーストの用途などに応じて適宜設定すればよく特に限定されないが、例えば8:92〜15:85程度が好ましい。
【0033】
本発明のはんだペースト組成物は、電子機器部品などをはんだ接続する際に、ディスペンサーやスクリーン印刷などによって基板上に塗布される。塗布後、150〜200℃程度でプリヒートを行い、最高温度170〜250℃程度でリフローを行う。基板上への塗布およびリフローは、大気中で行ってもよく、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性雰囲気中で行ってもよい。
【実施例】
【0034】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
(実施例1)
<フラックスの調製>
表1に記載の成分を表1に記載の割合で混合して均一に溶解するまで加熱し、溶解後、冷却してフラックスを得た。アクリル樹脂としては、2−エチルヘキシルアクリレートとラウリルメタクリレートとメタクリル酸との共重合体を用いた。
アクリル樹脂(Tg=−60℃、酸価=100mgKOH/g):30質量%
セバシン酸(活性剤) :10質量%
アニリン臭化水素酸塩(活性剤) : 0.3質量%
パラフィンワックス(融点:70〜80℃、直鎖状) : 7質量%
ブチルカルビトール(有機溶剤) :47.7質量%
硬化ひまし油(チキソ剤) : 5質量%
【0036】
<はんだペースト組成物の調製>
得られたフラックス12質量部とはんだ合金粉末(Sn−3.0質量%Ag−0.5質量%Cu、平均粒径25〜38μm)88質量部とを混合して(フラックス:はんだ合金粉末=12:88)、はんだペースト組成物を得た。
【0037】
(実施例2〜6および比較例1〜6)
表1に記載の成分を表1に記載の割合で用いたこと以外は、それぞれ実施例1と同様にしてフラックスを得、それぞれ実施例1と同様にしてはんだペースト組成物を得た。
【0038】
各実施例および各比較例で得られたはんだペースト組成物を用いて、(1)リフロー後の残渣のべとつき、(2)はんだペーストの印刷性、(3)電気的信頼性、(4)濡れ性(はんだボール試験)および(5)残渣亀裂の有無を評価した。
【0039】
(1)リフロー後の残渣のべとつき
JIS Z 3284付属書12に従って、リフロー後の残渣のべとつきを評価した。試験片(銅板:50mm×25mm×0.5mm)上に、厚み200μmのメタルマスク(開口6.5mmφが4ヶ所に存在)を用いて印刷を行った。試験片を、使用した金属(はんだ合金)の液相線温度より50±2℃のホットプレート上に放置し、金属溶融後5秒間加熱を続けた。次いで、試験片を水平状態に保って室温で約30分間放置した。試験片上に粉末タルクを十分に振りかけて柔らかいブラシで軽く払い、下記の基準で評価した。結果を表2に示す。
◎:試験片上の粉末タルクが、完全に除去された場合。
○:試験片上の粉末タルクが、完全ではないものの、ほぼ除去された場合。
△:試験片上の粉末タルクが、うっすらと残存しているものの、下地が視認できた場合。
×:試験片上の粉末タルクが残存し、下地が視認できなかった場合。
【0040】
(2)はんだペーストの印刷性
印刷性評価用基板(10×10ピンの0.5mmピッチBGA0.25mmφ開口パターンを有するガラエポ基板)を用い、対応する厚み120μmマスクを使用し、20枚の連続印刷性を以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
◎:全ての基板において10×10ピンの内、0(欠け無し)〜1割欠けている場合。
○:全ての基板において10×10ピンの内、1割〜5割欠けている場合。
△:全ての基板において10×10ピンの内、5割〜8割欠けている場合。
×:全ての基板において10×10ピンの内、8割以上欠けている場合。
【0041】
(3)電気的信頼性
JIS Z 3197に従って、絶縁抵抗を測定し、電気的信頼性を評価した。JIS Z 3197に規定されるくし型基板(II型)に、同じパターンを有する厚み100μmのメタルマスクを用いて、はんだペースト組成物を印刷した。印刷後10分以内に、大気下にて175±5℃で80±5秒間プリヒートを行い、最高温度235±5℃でリフローを行った。次いで、リフロー後の基板に残渣亀裂試験と同様の条件で冷熱サイクル負荷をかけた。その後、基板を温度85℃および湿度85%の恒温恒湿槽内に放置して、初期(0時間)、500時間後および1000時間後の抵抗値(Ω)を測定した。初期から1000時間まで、抵抗値が1×10
8Ω以上の場合、電気的信頼性が高い(〇)と評価した。結果を表2に示す。
【0042】
(4)濡れ性(はんだボール試験)
0.8mmピッチのQFP(Quad Flat Package)パターンが存在する基板に、同じパターンを有する厚み200μmのメタルマスクを用いてはんだペースト組成物を印刷した。印刷後10分以内に、大気下において175±5℃で80±5秒間プリヒートを行い、最高温度235±5℃でリフローを行った。そして、はんだ付け性の指標となるはんだボールの発生状況を、20倍の実体顕微鏡を用いて80パッド(80個のはんだ付け部)の周囲に発生したはんだボール数(個)をカウントすることにより評価した。結果を表2に示す。
【0043】
(5)残渣亀裂の有無
上記のはんだボール試験を行った後の基板を試験片とし、該試験片に、−40℃×30分→125℃×30分を1サイクルとして1000サイクルの条件で冷熱サイクル負荷をかけた。1000サイクル後、基板上のSOPパターンまたはQFPパターンのはんだ付け部における亀裂発生状態を目視観察し、以下の基準で評価した。結果を表2に示す。
○:亀裂が全く認められない。
△:亀裂は発生しているが、信頼性に悪影響を及ぼす亀裂、すなわち2つ以上の隣接するはんだ付け部にまたがるような亀裂(以下、「連結亀裂」と記載する)は認められない。
×:連結亀裂が発生している。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
表2に示すように、実施例1〜6では、はんだペーストの印刷性、電気的信頼性および濡れ性のいずれも損なわずに、リフロー後の残渣のべとつきを改善していることがわかった。また残渣亀裂も全く生じていないこともわかった。一方、比較例1〜6では、リフロー後の残渣のべとつきを改善していなかった。さらに、はんだペーストの印刷性も損なっており、残渣亀裂を生じていることもわかった。