【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、この発明は、軌道輪の周方向に沿って配置される複数のころと、そのころを保持する保持器とを備えたころ軸受において、前記保持器は周方向に沿って複数のポケットを備え、前記ポケットに前記ころを収容する際に、前記ころの外面と前記ポケットの内面との間にシムを介在させ、前記ポケットに前記ころを収容した後、前記シムを抜き取るようになっており、前記シムの厚さは0.05mm以上であって、そのシムを介在させる前記ころの外面と前記ポケットの内面との間の隙間を、前記シムの厚さ以上としたことを特徴とするころ軸受を採用した。
【0015】
この構成によれば、前記ポケットに前記ころを収容する際に、ころと保持器とが直接接触することがないため、ころの表面を傷めにくい。このため、特に、ころのカチ込みの際において、ころの表面を保護することができる。
【0016】
なお、シムは、ころの圧入時、すなわち、カチ込みの際の面圧及び摩擦に耐えることができるよう、金属製のものが望ましい。また、そのシムの厚さは、シムの耐久性を考慮して、0.05mm以上とするのが最適である。このため、そのシムを介在させる前記ころの外面と前記ポケットの内面との間の隙間は、前記シムの厚さ以上とすることが必要である。
【0017】
このシムは、ころの外面に、滑り特性の向上又は防錆を目的とする表面処理が施されている場合に、その表面処理を施した部分(前記表面処理部)に宛がわれることで、特に有効である。
なお、表面処理部を有さないころを用いた場合にも、ころをポケットに収容する際、特に、カチ込みの際に、ころの表面を傷めないようにしたいという要請があるので、シムの使用が有効である。
【0018】
また、このシムは、カチ込みを伴う一体形揉み抜き保持器を用いている場合に、特に有効であり、このシムの使用により、保持器に加締め部を設ける等の特別な加工を不要とし得る。
なお、一体形揉み抜き保持器以外の形式からなる保持器(例えば、鋲付き別体形揉み抜き保持器、その他種々の構成からなる保持器)を用いた場合にも、ころをポケットに収容する際に、ころの表面を傷めないようにしたいという要請があるので、シムの使用が有効である。
【0019】
このシムは、例えば、ころの外周面に宛がって使用することができる。すなわち、前記保持器は、軸方向に並列する対の円環部とその両円環部間を軸方向に結ぶ複数の柱部とを備え、周方向に隣り合う前記柱部間の空間が前記ポケットとなっており、前記シムは帯状部材であり、前記帯状部材は、前記ころが前記ポケット内に収容される際に、その帯長さ方向が前記ころの周方向に沿うように前記ころの外周面に宛がわれ、且つ、その帯状部材の帯長さ方向端部が前記ポケット外に伸びており、前記ころを前記ポケット内に収容後、前記帯長さ方向端部を引くことにより前記シムを抜き取る構成である。
【0020】
また、このシムは、例えば、ころの端面に宛がって使用することができる。すなわち、前記保持器は、対の円環部とその両円環部間を軸方向に結ぶ複数の柱部とを備え、周方向に隣り合う前記柱部間の空間が前記ポケットとなっており、前記シムは、前記ころが前記ポケット内に収容される際に、前記ころの端面に宛がわれる宛がい部と、その宛がい部からポケット外に伸びる操作部とを備え、前記ころを前記ポケット内に収容後、前記操作部を引くことにより前記シムを抜き取る構成である。
【0021】
このころの端面に宛がわれるシムは、ころの外周面に宛がわれるシムと併用してもよいし、単独で使用してもよい。また、ころの端面に宛がわれるシムは、軸方向片側の端面のみに使用することもできるが、軸方向両側の端面に使用することが望ましい。
【0022】
なお、ころの外周面に宛がわれるシムを用いた場合において、そのシムの厚さを、前記ポケット内における前記ころに許容される径方向動き量の半径値以下、且つ、前記ポケット内における前記ころの周方向ポケットすきまの半径値以下とすることが望ましい。
【0023】
ころに許容される径方向動き量の半径値とは、保持器のポケット内において、そのポケット内に収容されたころが、保持器に対してその径方向に移動可能な距離の1/2の値のことである。ころが移動し得る範囲であるから、シムの挿入に無理がない。また、その抜き取りも容易になる。
さらに、ころの周方向ポケットすきまの半径値とは、保持器のポケット内において、そのポケット内に収容されたころが、保持器に対してその周方向に移動可能な距離の1/2の値のことである。シムが、保持器の周方向に沿ってころ両側に挿入される場合、このように、ころの両側にシムが入り込む隙間があれば、シムの挿入に無理がない。また、その抜き取りも容易になる。
【0024】
また、ころの端面に宛がわれるシムを用いた場合において、そのシムの厚さを、前記保持器の軸方向ポケットすきまの片側値以下とすることが望ましい。
【0025】
保持器の軸方向ポケットすきまの片側値とは、保持器のポケット内において、そのポケット内に収容されたころが、保持器に対してその軸方向に移動可能な距離の1/2の値のことである。シムが、保持器の軸方向両側に挿入される場合、このように、ころの軸方向両側にシムが入り込む隙間があれば、シムの挿入に無理がない。また、その抜き取りも容易になる。
【0026】
さらに、前記ころを前記ポケットに収容する際に、前記ころの表面が触れる前記ポケットの内面の表面粗さは、0.6μmRa以下とすることが望ましい。また、前記保持器の素材のヤング率は、130GPa以下であることが望ましい。
【0027】
また、上記の課題を解決するために、この発明は、ころ軸受の組み立て方法として、以下の構成を採用した。
【0028】
すなわち、軌道輪の周方向に沿って配置される複数のころと、そのころを保持する保持器とを備えたころ軸受の組立方法において、前記保持器は周方向に沿って複数のポケットを備え、前記ポケットに前記ころを収容する際に、前記ころの外面と前記ポケットの内面との間にシムを介在させ、前記ポケットに前記ころを収容した後、前記シムを抜き取ることを特徴とするころ軸受の組立方法を採用した。
【0029】
この構成からなるころ軸受の組み立て方法によれば、前記ポケットに前記ころを収容する際に、ころと保持器とが直接接触することがないため、ころの表面を傷めにくい。このため、特に、ころのカチ込みの際において、ころの表面を保護することができる。
【0030】
また、前述のように、このシムは、ころの外面に、滑り特性の向上又は防錆を目的とする表面処理が施されている場合に、その表面処理を施した部分(前記表面処理部)に宛がわれることで、特に有効である。
なお、表面処理部を有さないころを用いた場合にも、ころをポケットに収容する際、特に、カチ込みの際に、ころの表面を傷めないようにしたいという要請があるので、シムの使用が有効である点も同様である。
【0031】
また、このシムは、カチ込みを伴う一体形揉み抜き保持器を用いている場合に、特に有効であり、このシムの使用により、保持器に加締め部を設ける等の特別な加工を不要とし得る。
なお、一体形揉み抜き保持器以外の形式からなる保持器(例えば、鋲付き別体形揉み抜き保持器、その他種々の構成からなる保持器)を用いた場合にも、ころをポケットに収容する際に、ころの表面を傷めないようにしたいという要請があるので、シムの使用が有効である。
【0032】
このシムは、例えば、ころの外周面に宛がって使用することができる。すなわち、前記保持器は、軸方向に並列する対の円環部とその両円環部間を軸方向に結ぶ複数の柱部とを備え、周方向に隣り合う前記柱部間の空間が前記ポケットとなっており、前記シムは帯状部材であり、前記帯状部材は、前記ころが前記ポケット内に収容される際に、その帯長さ方向が前記ころの周方向に沿うように前記ころの外周面に宛がわれ、且つ、その帯状部材の帯長さ方向端部が前記ポケット外に伸びており、前記ころを前記ポケット内に収容後、前記帯長さ方向端部を引くことにより前記シムを抜き取る構成である。
【0033】
また、このシムは、例えば、ころの端面に宛がって使用することができる。すなわち、前記保持器は、対の円環部とその両円環部間を軸方向に結ぶ複数の柱部とを備え、周方向に隣り合う前記柱部間の空間が前記ポケットとなっており、前記シムは、前記ころが前記ポケット内に収容される際に、前記ころの端面に宛がわれる宛がい部と、その宛がい部からポケット外に伸びる操作部とを備え、前記ころを前記ポケット内に収容後、前記操作部を引くことにより前記シムを抜き取る構成である。
【0034】
このころの端面に宛がわれるシムは、ころの外周面に宛がわれるシムと併用してもよいし、単独で使用してもよい。また、ころの端面に宛がわれるシムは、軸方向片側の端面のみに使用することもできるが、軸方向両側の端面に使用することが望ましい。
【0035】
なお、ころの外周面に宛がわれるシムを用いた場合において、そのシムの厚さを、前記ポケット内における前記ころに許容される径方向動き量の半径値以下、且つ、前記ポケット内における前記ころの周方向ポケットすきまの半径値以下とすることが望ましい。
【0036】
また、ころの端面に宛がわれるシムを用いた場合において、そのシムの厚さを、前記保持器の軸方向ポケットすきまの片側値以下とすることが望ましい。
【0037】
なお、シムは、ころの圧入時、すなわち、カチ込みの際の面圧及び摩擦に耐えることができるよう、金属製のものが望ましい。また、そのシムの厚さは、シムの耐久性を考慮して、0.05mm以上とするのが最適である。
【0038】
さらに、前記ころを前記ポケットに収容する際に、前記ころの表面が触れる前記ポケットの内面の表面粗さは、0.6μmRa以下とすることが望ましい。また、前記保持器の素材のヤング率は、130GPa以下であることが望ましい。
【0039】
これらの各構成からなるころ軸受の組立方法によって、少なくとも軌道輪、ころ、保持器の各部材を組み立てることによってころ軸受を構成することができる。軌道輪は、内輪と外輪とで構成される場合や、組み立て時において外輪のみで構成され、内輪は軸で構成される場合等が考えられる。