特許第6012960号(P6012960)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012960
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】コイル型電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/24 20060101AFI20161011BHJP
   H01F 1/33 20060101ALI20161011BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20161011BHJP
   H01F 27/255 20060101ALI20161011BHJP
   C22C 33/02 20060101ALI20161011BHJP
   B22F 3/00 20060101ALI20161011BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   H01F1/24
   H01F1/33
   H01F17/04 F
   H01F27/24 D
   C22C33/02 M
   C22C33/02 N
   B22F3/00 B
   C22C38/00 303T
   C22C38/00 303S
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-274265(P2011-274265)
(22)【出願日】2011年12月15日
(65)【公開番号】特開2013-125887(P2013-125887A)
(43)【公開日】2013年6月24日
【審査請求日】2014年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140198
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 保子
(74)【代理人】
【識別番号】100127513
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悟
(72)【発明者】
【氏名】八矢 正大
(72)【発明者】
【氏名】棚田 淳
(72)【発明者】
【氏名】大竹 健二
(72)【発明者】
【氏名】田中 喜佳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 鉄之
【審査官】 久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−249774(JP,A)
【文献】 特開2002−064011(JP,A)
【文献】 特開2005−142547(JP,A)
【文献】 特開2001−118725(JP,A)
【文献】 特開2002−313620(JP,A)
【文献】 特許第4906972(JP,B1)
【文献】 特許第5883437(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/12−1/375、3/00−3/14、
H01F 17/00−19/08、27/24−27/26
H01F 41/00−41/04
B22F 1/00−8/00
C22C 1/04−1/05、5/00−25/00
C22C 27/00−28/00、30/00−30/06
C22C 33/02、35/00−45/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体の内部あるいは表面にコイルを有するコイル型電子部品であって、
前記素体は、軟磁性合金の粒子群と、該軟磁性合金の粒子の酸化により粒子表面に形成された酸化層とから構成され、該酸化層を介しての前記軟磁性合金粒子の結合と、該酸化層を介さない前記軟磁性合金粒子同士の結合を有しており、
各軟磁性合金の粒子の内部には、複数の結晶粒が存在していることを特徴とするコイル型電子部品。
【請求項2】
前記軟磁性合金は、鉄、クロム、およびケイ素を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載のコイル型電子部品。
【請求項3】
前記軟磁性合金は、鉄、アルミニウム、およびケイ素を主成分とすることを特徴とする請求項1に記載のコイル型電子部品。
【請求項4】
前記酸化層は二層構造であり、前記酸化層のうちの外層が、内層よりも厚いことを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のコイル型電子部品。
【請求項5】
前記軟磁性合金の粒子同士を結合していない酸化層の外層の表面が凹凸面であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載のコイル型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル型電子部品に関し、特に、回路基板上への面実装が可能な小型化されたコイル型電子部品に適した、軟磁性合金を用いたコイル型電子部品に関する。
【0002】
従来、高周波で用いられるチョークコイルの磁性コアとして、フェライトコアや金属薄板のカットコアや、圧粉磁芯が使用されている。
フェライトに比較して、金属磁性体を用いると、高い飽和磁束密度を得られる利点がある。一方、金属磁性体そのものは、絶縁性が低いので、絶縁処理を施す必要がある。
特許文献1には、表面酸化被膜を有するFe−Al−Si粉末と結着剤からなる混合物を圧縮成形後、酸化性雰囲気中で熱処理することが提案されている。該特許文献によれば、酸化性雰囲気中で熱処理することで、圧縮成形時に合金粉末表面の絶縁層が破れたところに酸化層(アルミナ)を形成して、低いコア損失で良好な直流重畳特性を持つ複合磁性材料が得られるとしている。
特許文献2には、金属磁性体粒子を主成分とし、ガラスを含有する金属磁性体ペーストを用いて形成される金属磁性体層と、銀等の金属を含有する導体ペーストを用いて形成される導体パターンを積層して、積層体内にコイルパターンが形成された積層型電子部品、そして、この積層型電子部品は窒素雰囲気中において400℃以上の温度で焼成されていることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−11563号公報
【特許文献2】特開2007−27354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の複合磁性材料では、あらかじめ表面に酸化被膜を形成したFe−Al−Si粉末を使用して成形を行うので、圧縮成形時には大きな圧力が必要であった。
また、パワーインダクタのような、より大きな電流を流す必要がある電子部品に適用する場合においては、さらなる小型化に十分応えられるものではない、という課題があった。
また、特許文献2の積層型電子部品では、金属磁性体粒子を主成分とし、ガラスを含有する金属磁性体ペーストを用いて形成される金属磁性体層を用いた積層型電子部品を提案しているが、ガラス層により抵抗は改善するものの、ガラスの混合により金属磁性体の充填率が低下し、透磁率μをはじめとする磁気特性の低下が生じる。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、低コストにて生産することができ、かつ、より高い透磁率とより高い飽和磁束密度の両方の特性を兼ね備えた磁性体を備えたコイル型電子部品及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、鉄、ケイ素およびクロム、或いは、鉄、ケイ素およびアルミニウムを主成分とする軟磁性合金の粒子と結合材とを混合して成形し、その成形体を、酸素を含有する雰囲気中、特定の条件下で熱処理すると、この熱処理により、結合材が分解して熱処理後の金属粒子表面には酸化層が形成され、この酸化層により合金粒子同士が結合されることで、熱処理前の透磁率よりも熱処理後の透磁率が高くなるとともに、熱処理後の合金粒子内に結晶粒(以下、「粒子内結晶粒」ということもある。)が生成され、この粒子内結晶粒の存在により、高い透磁率μと低い磁気損失Pcvの両立ができることを見いだした。また、この酸化層は、好ましくは、二層構造となっており、該二層構造の酸化層のうち内層が、クロムの酸化物、或いはアルミニウムの酸化物を主成分とする酸化層から形成され、軟磁性合金粒子を被覆することで、軟磁性合金粒子内部の酸化進行を防ぎ特性の劣化を抑制できることも判明した。また、該二層構造の酸化層のうち外層は、鉄およびクロムの酸化物、或いは鉄およびアルミニウムの酸化物を主成分とする酸化層から形成されており、さらに、前記内層に比較して厚い酸化層であるため、絶縁性の改善を達成することができることも判明した。さらにまた、合金粒子同士に結合に関与していない表面酸化層が、その表面に凹凸を有しており、粒子比表面積が熱処理前に比して大きくなることで、絶縁性の改善効果が高まることも見いだした。
【0007】
本発明は、これらの知見に基づいて完成に至ったものであり、以下のとおりのものである。
〈1〉素体の内部あるいは表面にコイルを有するコイル型電子部品であって、
前記素体は、酸化層を介して互いに結合されている軟磁性合金の粒子群から構成され、各軟磁性合金の粒子の内部には、複数の結晶粒が存在していることを特徴とするコイル型電子部品。
〈2〉前記軟磁性合金は、鉄、クロム、およびケイ素を主成分とすることを特徴とする〈1〉に記載のコイル型電子部品。
〈3〉前記軟磁性合金は、鉄、アルミニウム、およびケイ素を主成分とすることを特徴とする〈1〉に記載のコイル型電子部品。
〈4〉前記素体は、前記酸化層を介さない、前記軟磁性合金粒子同士の結合を有していることを特徴とする〈1〉〜〈3〉のいずれかに記載のコイル型電子部品。
〈5〉前記酸化層は二層構造であり、前記酸化層のうちの外層が、内層よりも厚いことを特徴とする〈1〉〜〈4〉のいずれかに記載のコイル型電子部品。
〈6〉前記軟磁性合金の粒子同士を結合していない酸化層の外層の表面が凹凸面であることを特徴とする〈1〉〜〈5〉のいずれかに記載のコイル型電子部品。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、鉄、ケイ素およびクロム、或いは鉄、ケイ素およびアルミニウムを主成分とする軟磁性合金粒子を適切に熱処理することにより、合金粒子同士が粒子表面に形成された酸化層を介して結合されることで、熱処理前の透磁率よりも熱処理後の透磁率が高くなり、絶縁性の改善が図られるとともに、この熱処理により、熱処理後の合金粒子内に結晶粒が生成され、この粒子内結晶粒の存在により、高い磁気特性μと低い磁気損失の両立ができ、前記酸化層を介した粒子結合効果と相俟って製品特性の向上が可能となる。また、酸化層を二層構造とした場合には、従来のように合金粒子表面に形成されたクロム或いはアルミニウムの比率が高い酸化層の更にその外層に、より比抵抗の高い、鉄およびクロムの酸化物、或いは鉄およびアルミニウムの酸化物を主成分とする酸化層を厚く形成させることができるので、絶縁性の改善を達成することができる。また、軟磁性合金粒子が、クロムの酸化物、或いはアルミニウムの酸化物を主成分とする酸化層から形成された内層で被覆されることで、軟磁性合金粒子内部の過剰な酸化進行を防止し、特性の劣化を抑制することができる。さらに、本発明の熱処理により、粒子表面に凹凸が発生し、比表面積が高くなることで、従来技術に見られる合金粒子同士が結合されることによるμ改善が起き易くなり、さらに、結合していない表面酸化層に凹凸があることで、表面抵抗が増加し、絶縁性の改善効果が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の電子部品用軟磁性合金を用いた素体の第1の実施形態を示す側面図である。
図2】本発明により形成される酸化層を模式的に示す図である。
図3図2において破線で囲んだ部分4を拡大して、粒子内結晶粒を模式的に示す図である。
図4】本発明のコイル型電子部品の第1の実施形態を示す一部を透視した側面図である。
図5】第1の実施形態のコイル型電子部品の内部構造を示す縦端面図である。
図6】本発明の電子部品用軟磁性合金を用いた素体の実施形態の変形例の一例を示す内部構造の透視図である。
図7】本発明の電子部品の実施形態の変形例の一例を示す内部構造の透視図である。
図8】本発明の実施例の3点曲げ破断応力の試料測定方法を示す説明図である。
図9】本発明の実施例の体積抵抗率の試料測定方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において「粒子が酸化されて生成された酸化層」は粒子の自然酸化以上の酸化反応により形成された酸化層であり、粒子による成形体を酸化性雰囲気で熱処理することにより粒子の表面と酸素とを反応させ成長させた酸化層をいう。なお、「層」は組成上、構造上、物性上、外観上、及び/又は製造工程上等によりほかと識別できる層であり、その境界は明確であるもの、明確でないものを含み、また、粒子上で連続膜であるもの、一部に非連続部分を有するものを含むものである。ある態様では、「酸化層」は粒子全体を被覆する連続酸化膜である。また、このような酸化層は本明細書で特定されるいずれかの特徴を有するものであり、粒子の表面の酸化反応により成長した酸化層は、別の方法により被覆された酸化膜層と識別され得るものである。また、本明細書において「より多い」、「よりし易い」等比較を表す表現は実質的な差異を意味し、機能、構造、作用効果において有意な差異を奏する程度の差異を意味する。
【0011】
以下、本発明の電子部品用軟磁性合金を用いた素体の第1の実施形態について、図1ないし図5を参照して説明する。
図1は、本実施形態の電子部品用軟磁性合金を用いた素体10の外観を示す側面図である。
本実施形態の電子部品用軟磁性合金を用いた素体10は、巻線型チップインダクタのコイルを巻回するためのコアとして用いられるものである。ドラム型のコア11は、回路基板等の実装面に並行に配設されコイルを巻回するための板状の巻芯部11aと、巻芯部11aの互いに対向する端部にそれぞれ配設された一対の鍔部11b、11bを備え、外観はドラム型を呈する。コイルの端部は、鍔部11b、11bの表面に形成された外部導体膜14に電気的に接続されている。
【0012】
本発明の電子部品用軟磁性合金を用いた素体10は、鉄(Fe)、ケイ素(Si)およびクロム(Cr)、或いは鉄(Fe)、ケイ素(Si)およびアルミニウム(Al)を主成分とする軟磁性合金の粒子群から構成され、各軟磁性体粒子の表面には、酸素を含む雰囲気中で適切に熱処理することで当該粒子が酸化されて生成された金属酸化物からなる層(以下、「酸化層」という。)が形成されるとともに、熱処理後の合金粉粒子の結晶性が上がり粒子内に結晶粒が形成されていることを特徴とする。
以下、本明細書の記載は、元素名または、元素記号にて記す。
【0013】
図2は、本発明における酸化層をわかり易く説明するために、単純化した2個の軟磁性合金粒子のモデルを用いて、模式的に示すものである。なお、図中、破線4は、次の図3において、粒子内に生成した結晶粒を拡大して模式的に示した部分を示している。
【0014】
酸化層は、粒子1の表面に、当該粒子が酸化されて生成したものであって、当該合金粒子に比較してクロム或いはアルミニウムの比率が高い酸化層である。そして、該酸化層は、好ましくは、クロムの酸化物或いはアルミニウムの酸化物を主成分とする内層2と、更にその外側に、より比抵抗の高い、鉄及びクロムの酸化物或いは鉄及びアルミニウムの酸化物を主成分とする外層3とで構成された二層構造を有している。また、前記外層3は、前記内層2より厚く形成されており、軟磁性体合金粒子1の表面は、該内層2で被覆されており、軟磁性合金粒子同士1は、(A)に示すように、酸化層の外層3同士が結合しているか、或いは、(B)に示すように、酸化層を介さずに、粒子1同士が直接結合している。
さらに、軟磁性合金粒子同士の結合に関与していない酸化層の外層が凹凸表面を有しており、粒子比表面積が熱処理前に比して大きくなっていることで、絶縁性の改善効果が高まる。
【0015】
本発明において、粒子内結晶粒は、熱処理によって粒子内部が焼結して生成されるものであり、生成された結晶粒の方位軸の違いにより、FE−SEMの反射像においては明度の差となって観察される。具体的には、粒子内結晶粒の確認方法は、対象製品を鏡面研磨後イオンミリング(CP)を施した後、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)により2000〜10000倍で撮影して、反射電子組成像を得る。反射電子組成像では、熱処理により焼結して生成した粒子内結晶粒の方位軸の違いにより、多段階の明度の差となって現われる。図3は、FE−SEMの反射電子組成像で観察される明度の差を、模式的に示すものであって、図2の破線4で囲んだ部分を拡大したものである。
これに対して、結晶粒の生成が認められないときには、粒子内の反射電子組成像は、すべて均一の明るさに見える。
【0016】
このようにして得られた微細構造を有する、軟磁性合金粒子を用いた本発明のコイル型電子部品は、高い透磁率、高い抵抗、及び低い磁気損失が得られることにより、従来に比して優れた特性を示す。
【0017】
酸化層の確認方法としては、対象製品を鏡面研磨後イオンミリング(CP)を施した後、走査型電子顕微鏡(SEM)により確認できる。
該酸化層の識別は、以下のようにして行うことができる。
まず、素体の中心を通る厚さ方向の断面が露出するように研磨し、得られた断面について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて3000倍で撮影して組成像を得る。
走査型電子顕微鏡(SEM)では、構成元素の違いにより、組成像にコントラスト(明度)の違いとして表れる。次に、上記で得られた組成像について、各画素を4段階の明度ランクに分類する。明度ランクは、上記組成像中で粒子の断面の輪郭がすべて確認できる粒子のうち、各粒子の断面の長軸寸法d1と短軸寸法d2の単純平均D=(d1+d2)/2が原料粒子(酸化層が形成されていない原料としての合金粒子)の平均粒径(d50%)より大きい粒子の組成コントラストを、基準明度ランクとすると、上記組成像中でこの明度ランクに該当する部分は粒子1と判断することができる。また、組成コントラストが上記基準明度ランクより次に暗い明度ランクの部分は、酸化層の外層3、さらに暗い明度ランクの部分は、酸化層の内層2と判断することができる(図2の模式図参照)。なお、望ましくは、複数測定する。また、上記基準明度ランクのどれよりも暗い明度ランクの部分は空孔(図示なし)と判断することができる。
【0018】
酸化層の内層2および酸化層の外層3の厚みの測定は、粒子と酸化層の内層2の境界面から、酸化層の外層3と空孔との境界面までの最短距離を酸化層の内層2および酸化層の外層3の厚みとすることにて、求めることができる。
酸化層の厚みは、具体的には以下のように求めることができる。素体10の厚さ方向の断面を、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて1000倍ないし3000倍で撮影し、得られた組成像の1粒子について画像処理ソフトウェアを用いて重心を求め、その重心点から半径方向にEDS(エネルギー分散型X線分析装置)で線分析を行う。酸素濃度が重心点での酸素濃度の3倍以上の領域を酸化物と判定し(即ち、測定のブレを考慮し3倍を閾値としそれ未満は非酸化層と判定するということであり、実際の酸化層の酸素濃度は100倍以上にもなり得る)、粒子外周部までを、内層、外層2つの酸化層の合計厚みとして測長する。ここで、前記のように明度の違いから酸化層の外層3の厚みを求め、それを酸化層の合計厚みから差し引いた値を酸化層の内層2の厚みとする。
なお、酸化層の合計厚みは、上記方法で同定した粒子1の表面に存在する酸化層の粒子1の表面からの厚さの最厚部の厚さと最薄部の厚さの単純平均から求めた平均厚さとする。また、酸化層の外層3の厚さは、上記方法で同定した酸化層の内層2の表面に存在する酸化層の外層3の内層の表面からの厚さの最厚部の厚さと最薄部の厚さの単純平均から求めた平均厚さとする。
【0019】
本発明において、酸化層の内層2及び外層3の厚みは、粒子間でもばらつくが、内層2の好ましい範囲は、5〜50nmであり、外層3の好ましい範囲は、50〜500nmである。
合金粒子の表面に形成された酸化層の厚みは、1つの合金粒子においても、部分により異なる厚みとすることができる。
態様として、全体として、合金粒子表面の酸化層(空孔に隣接する酸化層)よりも厚い酸化層で結合されている合金粒子同士とすることで、高強度の効果を得られる。
また別の態様として、全体として、合金粒子表面の酸化層(空孔に隣接する酸化層)よりも薄い酸化層で結合されている合金粒子同士とすることで、高透磁率の効果を得られる。
また、ある態様では、酸化層を有する軟磁性体粒子の平均粒径は、原料粒子(成形、熱処理前の粒子)の平均粒径と実質的にあるいはほぼ同じである。
【0020】
本発明においては、前記二層構造の酸化層のうち、内層2は、クロムの酸化物、或いはアルミニウムの酸化物を主成分とする酸化層であり、外層3は、鉄およびクロムの酸化物、或いは鉄およびアルにニウムの酸化物を主成分とする酸化層である。
この二層構造は、EDS(エネルギー分散型X線分析装置)にて確認でき、飽和磁束密度の低下を抑制する効果が得られる。
【0021】
上記電子部品用軟磁性合金を用いた素体(以下、「電子部品用軟磁性合金素体」ということもある。)における粒子の組成比は、次のようにして確認することができる。
まず、原料粒子を粒子の中心を通る断面が露出するように研磨し、得られた断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて3000倍で撮影した組成像について、粒子の中心付近の組成をエネルギー分散型X線分析(EDS)によりZAF法で算出する。次に、上記電子部品用軟磁性合金素体のほぼ中心を通る厚さ方向の断面が露出するように研磨し、得られた断面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて3000倍で撮影した組成像中から、粒子の断面の輪郭がすべて確認できる粒子のうち各粒子の断面の長軸寸法d1と短軸寸法d2の単純平均D=(d1+d2)/2が原料粒子の平均粒径(d50%)より大きい粒子を抽出し、その長軸と短軸の交点付近の組成をエネルギー分散型X線分析(EDS)によりZAF法で算出し、これを上記原料粒子における組成比と対比することで上記電子部品用軟磁性合金を用いた素体中の合金粒子の組成比を知ることができる(原料粒子の組成は公知であるためZAF法で算出された組成同士を比較することで素体中の合金粒子の組成を求めることができる)。
【0022】
本発明の素体10は、複数の軟磁性合金粒子1と、粒子1の表面に生成された酸化層、好ましくは内層2と外層3とからなる二層構造を有する酸化層を備えており、軟磁性合金粒子1は、クロム2〜8wt%、ケイ素1.5〜7wt%、鉄88〜96.5wt%の組成、或いはアルミニウム2〜8wt%、ケイ素1.5〜12wt%、鉄80〜96.5wt%の組成であり、軟磁性体粒子の算術平均粒径は、30μm以下であることが望ましい。酸化層の内層2及び外層3は、少なくともクロム或いはアルミニウムを含み、走査型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分析による鉄に対するクロム或いは鉄に対するアルミニウムのピーク強度比R2およびR3が、いずれも粒子における鉄に対するクロム或いは鉄に対するアルミニウムのピーク強度比R1よりも実質的に大きい。また、酸化層の外層は鉄及びクロムの酸化物或いは鉄及びアルミニウムの酸化物を主成分とするのに対して、酸化層の内層は、クロムの酸化物或いはアルミニウムの酸化物を主成分としているので、酸化層の内層2における鉄に対するクロム或いは鉄に対するアルミニウムのピーク強度比R2は、前記酸化層の外層3における鉄に対するクロム或いは鉄に対するアルミニウムのピーク強度比R3よりも大きい。
さらに、複数の粒子間には、空孔が存在する箇所もある。
【0023】
なお、上記電子部品用軟磁性合金素体について、鉄(Fe)、ケイ素(Si)およびクロム(Cr)を主成分とする軟磁性合金である場合を例にすると、前記粒子1における鉄に対するクロムの強度比R1、酸化層の内層2における鉄に対するクロムのピーク強度比R2、及び前記酸化層の外層3における鉄に対するクロムのピーク強度比R3は、それぞれ次のようにして求めることができる。
まず、上記組成像における粒子1の内部の長軸d1と短軸d2とが交わる点における組成をSEM−EDSで求める。次に、上記組成像における粒子1の表面の酸化層の合計厚み、および外層3の、それぞれの最厚部の厚さt1と最薄部の厚さt2を測定する。測定値から、それぞれの平均厚さ(T=(t1+t2)/2)を求め、酸化層の合計厚みの平均厚さから、外層3の平均厚さを差し引いた値を、酸化層の内層2の平均厚みとする。次に、内層2の平均厚み及び外層3の平均厚みに相当するそれぞれの酸化層の厚さの部位を探し、その中心点における組成についてSEM−EDSで求める。そして、粒子1の内部における鉄の強度C1FeKa、クロムの強度C1CrKaより、鉄に対するクロムのピーク強度比R1=C1CrKa/C1FeKaを求めることができる。また、酸化層の内層2の厚さの中心点における鉄の強度C2FeKa、クロムの強度C2CrKaより、鉄に対するクロムのピーク強度比R2=C2CrKa/C2FeKaを求めることができる。さらに、酸化層の外層3の厚さの中心点における鉄の強度C3FeKa、クロムの強度C3CrKaより、鉄に対するクロムのピーク強度比R3=C3CrKa/C3FeKaを求めることができる。
【0024】
本発明の電子部品用軟磁性合金を用いた素体において、粒子1の表面に生成された酸化層の内層2により粒子が被覆されるとともに、粒子1の酸化層の外層3同士が結合している(図2(A)参照)。本発明において、隣接する粒子1の表面に生成された二層構造の酸化層の内層2により粒子が被覆されるとともに、該酸化層の外層3同士が結合されていることは、電子部品用軟磁性合金を用いた素体の磁気特性、強度の向上として現れる。
また、本発明の酸化層は、後で詳述するとおり、粒子1と熱可塑性樹脂などの結合剤を攪拌混合して得られた造粒物を圧縮成形して成形体を形成した後、熱処理することにより粒子1の表面に形成されるが、成形体の成形圧力を高くした場合には、酸化層を介さずに粒子1同士が直接結合される(図2(B)参照)ことが、SEM観察した結果から確認することができる。
また、軟磁性合金粒子同士に結合に関与していない酸化層の外表層が凹凸表面を有しており、粒子比表面積が熱処理前に比して大きくなっていることで、絶縁性の改善効果が高まる。
【0025】
本発明の電子部品用軟磁性合金を用いた素体を製造するには、態様の一つとして、最初に、クロム、ケイ素および鉄、或いはアルミニウム、ケイ素および鉄を含有する原料粒子に、例えば熱可塑性樹脂などの結合剤を添加し、攪拌混合させて造粒物を得る。次に、この造粒物を圧縮成形して成形体を形成し、得られた成形体を、大気中にて、500〜900で熱処理する。この大気中での熱処理を行うことで、混合した熱可塑性樹脂を脱脂するとともに、もともと粒子中に存在し熱処理により表面に移動してきたクロム或いはアルミニウムと、粒子の主成分である鉄を酸素と結合させながら、金属酸化物からなる酸化層を粒子表面に生成させ、かつ隣接する粒子の表面の酸化層同士を結合させるとともに、粒子内部が焼結して粒子内結晶粒を生成する。粒子表面に生成された酸化層(金属酸化物層)は、好ましくは、合金粒子表面に形成されたクロムの酸化物或いはアルミニウムの酸化物を主成分とする内層と、更にその外側に、より比抵抗の高い、鉄およびクロムを含む酸化物、或いは鉄およびアルミニウムを含む酸化物を主成分とする外層とからなる二層構造を有しており、外層は、内層より厚く形成されている。そして、軟磁性体粒子の表面は、前記内層で被覆されており、少なくとも一部の軟磁性体粒子同士は、外層を介して結合されているので、粒子間の絶縁を確保した電子部品用軟磁性合金を用いた素体を提供することができる。
原料粒子の例としては、水アトマイズ法で製造した粒子、原料粒子の形状の例として、球状、扁平状があげられる。
【0026】
本発明において、酸素雰囲気下にて熱処理温度をあげると結合剤は分解し、軟磁性合金体は酸化されるとともに、粒子内部が焼結して粒子内結晶粒を生成する。
該粒子内結晶粒を形成するための成形体の熱処理条件として、大気中、昇温速度30〜300℃/時間で500〜900℃まで昇温し、更に、1〜10時間滞留させることが望ましい。この温度範囲内及びこの昇温速度で熱処理を行うことで、粒子内部が焼結して粒子内結晶粒を生成するとともに、前記の好ましい二層構造の酸化層を形成することができる。より好ましくは、600〜800℃である。大気中以外の条件、例えば、酸素分圧が大気と同程度の雰囲気中で熱処理してもよい。還元雰囲気又は非酸化雰囲気では、熱処理により金属酸化物からなる酸化層の生成が行われないため、粒子同士が焼結し体積抵抗率は著しく低下する。
雰囲気中の酸素濃度、水蒸気量については特に限定されないが、生産面から考慮すると、大気あるいは乾燥空気であることが望ましい。
熱処理温度が500℃を越えると、優れた強度と優れた体積抵抗率を得ることができる。一方、熱処理温度が、900℃を超えると、強度は増加するものの、体積抵抗率の低下が発生する。
さらに、昇温速度が300℃/時間より速すぎると、粒子内結晶粒の生成は行われず、一層の酸化層となってしまう。
【0027】
熱処理により、粒子1の周囲に成長する酸化層表面は、常に凹凸があり、この凹凸は、昇温速度がゆっくりの方が出やすく、粒子同士が酸化層の外層を介して結合しているところでは吸収されるが、結合に関与しないところ(空孔に隣接するところ)では残ることとなる。この粒子表面に形成された凹凸により、表面抵抗が増加し、絶縁性の改善効果が高まることとなる。
【0028】
さらに、上記熱処理温度での滞留時間は、1時間以上とすることにより、粒子内結晶粒が生成されやすく、また、鉄とクロム或いは鉄とアルミニウムの金属酸化物からなる酸化層の外層3が生成されやすい。酸化層厚は一定値で飽和するため保持時間の上限はあえて設定しないが、生産性を考慮し10時間以下とすることが妥当である。
またさらに、上記昇温速度で昇温する過程で一定温度に保持する時間があってもよく、例えば、熱処理温度が700℃である場合、上記昇温速度で500〜600℃まで昇温した後、この温度で1時間保持した後、さらに上記の昇温速度で700℃まで昇温する等があってもよい。
以上のとおり、熱処理条件を、上記範囲とすることで優れた強度と優れた体積抵抗率を同時に満たし、酸化層を有する軟磁性合金を用いた素体とすることができる。
つまり、熱処理温度、熱処理時間、熱処理雰囲気中の酸素量等により、粒子内結晶粒及び酸化層の形成を制御している。
【0029】
本発明の電子部品用軟磁性合金素体においては、上記の処理を鉄−ケイ素−クロム或いは鉄−ケイ素−アルミニウムの合金粉に適用することで、高い透磁率と高い飽和磁束密度とを得ることができる。そして、この高い透磁率により、従来に比べてより小型の軟磁性合金素体でより大きい電流を流すことが可能な電子部品を得ることができる。
そして、軟磁性合金の粒子を樹脂またはガラスで結合させたコイル部品と異なり、樹脂もガラスも使わず、大きな圧力をかけて成形することもないので低コストにて生産することができる。
また、本実施形態の電子部品用軟磁性合金素体においては、高い飽和磁束密度を維持しつつ、大気中の熱処理後においても、素体表面へのガラス成分等の浮き出しが防止され、高い寸法安定性を有する小型のチップ状電子部品を提供することができる。
【0030】
次に、本発明の電子部品の第1の実施形態について、図1図2図4および図5を参照して説明する。図1および図2は先の電子部品用軟磁性合金素体の実施形態と重複するので説明を省略する。図4は、本実施形態の電子部品を示す一部を透視した側面図である。また、図5は、本実施形態の電子部品の内部構造を示す縦断面図である。本実施形態の電子部品20は、コイル型電子部品として巻線型チップインダクタである。上述した電子部品用軟磁性合金を用いた素体10であるドラム型のコア11と、前記素体10からなり、ドラム型のコア11の両鍔部11b、11b間をそれぞれ連結する図示省略した一対の板状コア12,12を有する。コア11の鍔部11b、11bの実装面には一対の外部導体膜14,14がそれぞれ形成されている。また、コア11の巻芯部11aには絶縁被覆導線からなるコイル15が巻回されて巻回部15aが形成されるとともに、両端部15b、15bが鍔部11b、11bの実装面の外部導体膜14,14にそれぞれ熱圧着接合されている。外部導体膜14,14は、素体10の表面に形成された焼付導体層14aと、この焼付導体層14a上に積層形成されたNiメッキ層14b、およびSnメッキ層14cを備える。上述した板状コア12,12は、樹脂系接着剤によりドラム型のコア11の鍔部11b、11bに接着されている。
【0031】
本実施形態の電子部品20は、鉄(Fe)、ケイ素(Si)およびクロム(Cr)を主成分とする軟磁性合金である場合を例にすると、クロム、ケイ素、鉄を含有する複数の粒子と、該粒子の表面に生成され、少なくとも鉄及びクロムを含み、走査型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分析によりZAF法で算出した鉄に対するクロムのピーク強度比が前記粒子における鉄に対するクロムのピーク強度比よりも大きい酸化層と、を備え、隣接する前記粒子の表面に生成された酸化層同士が結合されている上述した電子部品用軟磁性合金を用いた素体10をコア11として備える。また、素体10の表面には、少なくとも一対の外部導体膜14,14が形成されている。本実施形態の電子部品20における電子部品用軟磁性合金を用いた素体10については上述と重複するので説明を省略する。
【0032】
コア11は、少なくとも巻芯部11aを有し、巻芯部11aの断面の形状は、板状(長方形)、円形、楕円をとることができる。
さらに、前記巻芯部11aの端部に少なくとも鍔部11を有することが好ましい。
鍔部11があると、巻芯部11aに対するコイルの位置を鍔部11で制御しやすくなり、インダクタンスなどの特性が安定する。
コア11の態様は、一つの鍔を有する態様、二つ鍔を有する態様(ドラムコア)、巻芯部11aの軸長方向を実装面に対して垂直に配置する態様、水平に配置する態様がある。
特に、巻芯部11aの軸の一方のみに鍔を有し、巻芯部11aの軸長方向を実装面に対して垂直に配置した態様は、低背化をするのに好ましい。
【0033】
外部導体膜14は、電子部品用軟磁性合金を用いた素体10の表面に形成されており、前記外部導体膜14に前記コイルの端部が接続されている。
外部導体膜14は、焼き付け導体膜、樹脂導体膜がある。電子部品用軟磁性合金素体10への焼き付け導体膜の形成例としては、銀にガラスを添加したペーストを、所定の温度で焼き付ける方法がある。電子部品用軟磁性合金を用いた素体10への樹脂導体膜の形成例としては、銀とエポキシ樹脂とを含有するペーストを塗布し、所定の温度処理する方法がある。焼き付け導体膜の場合、導体膜形成後、熱処理できる。
【0034】
コイルの材質としては、銅、銀がある。コイルに絶縁被膜を施すことが好ましい。
コイルの形状としては、平角線、角線、丸線がある。平角線、角線の場合、巻き線間の隙間を小さくできるため、電子部品の小型化をするのに好ましい。
【0035】
本実施形態の電子部品20における電子部品用軟磁性合金を用いた素体10の表面の外部導体膜14,14の焼付導体膜層14aは、具体的な例としては、以下のようにして形成することができる。
上述した素体10であるコア11の鍔部11b、11bの実装面に、金属粒子とガラスフリットとを含む焼付型の電極材料ペースト(本実施例では焼付型Agペースト)を塗布し、大気中で熱処理を行うことで、素体10の表面に直接電極材を焼結固着させる。またさらに、形成された焼付導体膜層14aの表面に電解メッキでNi,Snの金属メッキ層を形成してもよい。
【0036】
また、本実施形態の電子部品20は、態様の一つとして以下の製造方法によっても得ることができる。
具体的な組成の例として、クロム2〜8wt%、ケイ素1.5〜7wt%および鉄88〜96.5wt%、或いはアルミニウム2〜8wt%、ケイ素1.5〜12wt%および鉄80〜96.5wt%を含有する原料粒子と結合剤とを含む材料を成形し、得られた成形体の少なくても実装面となる表面に金属粉末とガラスフリットを含む焼付型の電極材料ペーストを塗布した後、得られた成形体を大気中400〜900℃で熱処理する。またさらに、形成された焼付導体層上に金属メッキ層を形成してもよい。この方法によれば、粒子の表面に酸化層が生成されるとともに隣接する粒子の表面の酸化層同士が結合された電子部品用軟磁性合金素体とこの素体の表面の導体膜の焼付導体層とを同時に形成することができ、製造プロセスを簡略化することができる。
鉄よりもクロム或いはアルミニウムの方が酸化しやすいので、純鉄に比較して、酸化雰囲気で熱を加えたときに、鉄の酸化が進みすぎることを抑制できる。
【0037】
次に、本発明の電子部品用軟磁性合金素体の実施形態の変形例について、図6を参照して説明する。図6は、変形例の一例の電子部品用軟磁性合金を用いた素体10’を示す内部構造の透視図である。本変形例の素体10’は、外観が直方体状を呈し、内部には蔓巻螺旋状に巻回された内部コイル35が埋設されており、内部コイル35の両端部の引出部がそれぞれ素体10’の互いに対向する一対の端面に露出されている。素体10’は、内部に埋設された内部コイル35とともに積層体チップ31を構成する。本変形例の電子部品用軟磁性合金素体10’は、鉄(Fe)、ケイ素(Si)およびクロム(Cr)を主成分とする軟磁性合金である場合を例にすると、先の第1の実施形態の電子部品用軟磁性合金素体10と同様に、クロム、ケイ素および鉄を含有する複数の粒子と、粒子の表面に生成され、少なくとも鉄及びクロムを含み、走査型電子顕微鏡を用いたエネルギー分散型X線分析による鉄に対するクロムのピーク強度比が粒子における鉄に対するクロムのピーク強度比よりも大きい酸化層と、を備え、隣接する粒子の表面に生成された酸化層同士が結合されていることを特徴とする。
本変形例の電子部品用軟磁性合金素体10’においても、先の第1の実施形態の電子部
品用軟磁性合金素体10と同様の作用・効果を有する。
【0038】
次に、本発明の電子部品の実施形態の変形例について、図7を参照して説明する。図7は、変形例の一例の電子部品40を示す内部構造の透視図である。本変形例の電子部品40は、上述した変形例の電子部品用軟磁性合金を用いた素体10’の互いに対向する一対の端面およびその近傍に、内部コイル35の露出された引出部と接続するように形成された一対の外部導体膜34、34を備える。外部導体膜34,34は、図示省略するが、先の第1の実施形態の電子部品20の外部導体膜14,14と同様に、焼付導体層と、この焼付導体層上に積層形成されたNiメッキ層、Snメッキ層を備える。本変形例の電子部品40においても、先の第1の実施形態の電子部品20と同様の作用・効果を有する。
【0039】
本発明における電子部品用軟磁性合金素体を構成する複数の粒子の組成は、鉄(Fe)、ケイ素(Si)およびクロム(Cr)を主成分とする軟磁性合金である場合、2≦クロム≦8wt%で、かつ、1.5≦ケイ素≦7wt%、88≦鉄≦96.5%を含有とすることが好ましい。この範囲のとき、本発明の電子部品用軟磁性合金素体は、さらに、高い強度と高い体積抵抗率を示す。
一般的に、軟磁性合金はFe量が多いほど高飽和磁束密度のため直流重畳特性に有利であるものの、高温多湿時に錆が発生やその錆の脱落等が磁性素子としての使用時に問題となっている。
また、磁性合金へのクロム添加が耐食性に効果があることはステンレス鋼に代表されるようによく知られている。しかしながら、クロムを含有する上記合金粉末を用いて非酸化性雰囲気中で熱処理を行った圧粉磁心では、絶縁抵抗計で測定した比抵抗が10−1Ω・cmと粒子間での渦電流損失が発生しない程度の値は有しているものの、外部導体膜を形成するには10Ω・cm以上の比抵抗が必要であり、外部導体膜の焼付導体層上への金属メッキ層を形成することができなかった。
【0040】
そこで、本発明では、上記組成を有する原料粒子と結合剤とを含む成形体を、酸化雰囲気中で、所定条件下で熱処理することで粒子の表面に金属酸化物層からなる二層構造の酸化層を生成させ、かつ該酸化層の内層で粒子の表面を被覆するとともに該酸化層の外層により少なくとも一部の隣接する粒子の表面の酸化層同士を結合させことで、高い強度を得るものである。得られた電子部品用軟磁性合金素体の体積抵抗率ρvは、10Ω・cm以上と大幅に向上し、素体の表面に形成された外部導体膜の焼付導体層上へのNi、Sn等の金属メッキ層を、メッキ延びを生じさせることなく形成することが可能となった。
【0041】
さらに好ましい形態の本発明の電子部品用軟磁性合金素体において、組成を限定する理由を説明する。
複数の粒子の組成中のクロムの含有量が、2wt%未満では、体積抵抗率は低く、外部導体膜の焼付導体層上への金属メッキ層をメッキ延びを生じさせることなく形成することができない。
【0042】
また、クロムが8wt%より多い場合にも、体積抵抗率は低く、外部導体膜の焼付導体層上への金属メッキ層をメッキ延びを生じさせることなく形成することができない。
【0043】
上記電子部品用軟磁性合金素体において、複数の粒子の組成中のSiは体積抵抗率の改善の作用を有するが、1.5wt%未満ではその効果は得られず、一方、7wt%より大きい場合にも、その効果は十分でなく、その体積抵抗率は10Ω・cmに満たないため、外部導体膜の焼付導体層上への金属メッキ層をメッキ延びを生じさせることなく形成することができない。また、Siは透磁率の改善の作用も有するが、7wt%より大きい場合には、Fe含有量の相対的低下による飽和磁束密度の低下と成形性の悪化に伴う透磁率および飽和磁束密度の低下が生じる。
【0044】
上記電子部品用軟磁性合金素体において、複数の粒子の組成中の鉄の含有量が88wt%未満では飽和磁束密度の低下と成形性の悪化に伴う透磁率および飽和磁束密度の低下が生じる。また、鉄の含有量が96.5wt%より大きい場合には、クロム含有量、ケイ素含有量の相対的低下により体積抵抗率が低下する。
【0045】
また、アルミニウムを用いた場合は、アルミニウム2〜8wt%、ケイ素1.5〜12wt%、鉄80〜96.5wt%が好ましい。
複数の粒子の組成中のアルミニウムの含有量が、2wt%未満では、体積抵抗率は低く、外部導体膜の焼付導体層上への金属メッキ層をメッキ延びを生じさせることなく形成することができない。また、アルミニウムの含有量が、8wt%より大きい場合には、Fe含有量の相対的低下による飽和磁束密度の低下が生じる。
【0046】
本発明において、さらに、複数の粒子の平均粒径は原料粒子の平均粒子径d50%(算術平均)に換算したときに5〜30μmであることがより望ましい。また、上記複数の粒子の平均粒径は、素体の断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて3000倍で撮影した組成像中から、粒子の断面の輪郭がすべて確認できる粒子について、各粒子の断面の長軸寸法d1と短軸寸法d2の単純平均D=(d1+d2)/2の総和を上記粒子の個数で割った値で近似することもできる。
【0047】
合金金属粒子群は、粒度分布を持ち、必ずしも真球でなくいびつな形状をとなっている。
また、立体である合金金属粒子を2次元(平面)でみるとき、どこの断面で観察するかで見かけ大きさが異なる。
このため、本発明の平均粒径では、測定する粒子数を多くすることで、粒子径を評価する。
このため、少なくても下記条件にて該当する粒子数を少なくとも100以上測定することが望ましい。
具体的方法は、粒子断面にて最大となる径を長軸とし、長軸の長さを2等分した点を求める。その点が含まれ粒子断面にて最小となる径を短軸とする。これを長軸寸法、短軸寸法と定義する。
測定する粒子は、粒子断面にて最大となる径が大きい粒子を大きい順に順番に並べ、粒子断面の累計比率が、走査型電子顕微鏡(SEM)の画像から、粒子の断面の輪郭がすべて確認できない粒子と、空孔と、酸化層を除いた面積の95%になる大きさのものを測定する。
上記平均粒径がこの範囲内にあると、高い飽和磁束密度(1.4T以上)と高い透磁率(27以上)を得られるともに、100kHz以上の周波数においても、粒子内で渦電流損失が生じるのが抑制される。
なお、本明細書において、開示する具体的数値は、ある態様では約そのような数値であること意味し、また、範囲の記載において上限および・または下限の数値はある態様では範囲に含まれており、ある態様では含まれていない。また、ある態様では数値は平均値、典型値、中央値等を意味する。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0049】
電子部品用軟磁性合金を用いた素体の磁気特性の良し悪しを判断するのに、原料粒子の充填率が80体積%となるように成形圧力を6〜12ton/cmの間で調整して外径14mm、内径8mm、厚さ3mmのトロイダル状に成形し、大気中で熱処理を施したのち、得られた素体に直径0.3mmのウレタン被覆銅線からなるコイルを20ターン巻回して試験試料とした。透磁率μの測定は、Lクロムメーター(アジレントテクノロジー社製:4285A)を用いて測定周波数100kHzで測定した。また、磁気損失Pcvの測定は、上記熱処理したトロイダル素体に直径0.3mmのウレタン被覆銅線からなる1次コイルと2次コイルを各5ターン巻回した試験試料について、交流BHアナライザ(岩崎通信機製SY-8232,SY-301)を用いて周波数1MHZ、磁束密度50mTで測定した。
【0050】
電子部品用軟磁性合金を用いた素体の強度の良し悪しを判断するのに、図8に示す測定方法を用いて以下の通り、3点曲げ破断応力を測定した。3点曲げ破断応力を測定するための試験片は、原料粒子の充填率が80体積%となるように成形圧力を6〜12ton/cmの間で調整して長さ50mm、幅10mm、厚さ4mmの板状の成形体に成形したのち、大気中で熱処理を施したものである。
【0051】
さらに、電子部品用軟磁性合金を用いた素体の体積抵抗率の良し悪しを判断するのに、図9に示すように、JIS−K6911に準じて測定を行った。体積抵抗率を測定するための試験片は、原料粒子の充填率が80体積%となるように成形圧力を6〜12ton/cmの間で調整して直径100mm、厚さ2mmの円板状に成形したのち、大気中で熱処理を施したものである。
【0052】
(実施例1)
電子部品用軟磁性合金素体を得るための原料粒子として、平均粒子径(d50%)が10μmの水アトマイズ粉で、組成比がクロム:5wt%、ケイ素:3wt%、鉄:92wt%の合金粉(エプソンアトミックス(株)社製 PF-20F)を用いた。上記原料粒子の平均粒子径d50%は、粒度分析計(日機装社製:9320HRA)を用いて測定した。また、上記粒子を粒子の中心を通る断面が露出するまで研磨し、得られた断面を走査型電子顕微鏡(SEM:日立ハイテクノロジー社製S−4300SE/N)を用いて3000倍で撮影した組成像について、粒子の中心付近と表面近傍それぞれの組成をエネルギー分散型X線分析(EDS)によりZAF法で算出し、粒子の中心付近における上記の組成比と粒子の表面近傍における上記の組成比とがほぼ等しいことを確認した。
次に、上記粒子とポリビニルブチラール(積水化学社製:エスレックBL:固形分30wt%濃度溶液)を湿式転動攪拌装置にて混合し造粒物を得た。
得られた造粒粉を、複数の粒子の充填率が80体積%となるように、成形圧力を8ton/cmとし、長さ50mm、幅10mm、厚さ4mmの角板状の成形体と、直径100mm、厚さ2mmの円板状の成形体と、外径14mm、内径8mm、厚さ3mmのトロイダル状の成形体、および巻芯部(幅1.0mm×高さ0.36mm×長さ1.4mm)の両端に角鍔(幅1.6mm×高さ0.6mm×厚さ0.3mm)を有するドラム型のコア成形体と、一対の板状コア成形体(長さ2.0mm×幅0.5mm×厚さ0.2mm)を得た。
上記で得られた円板状の成形体、トロイダル状の成形体、ドラム型の成形体、一対の板状成形体について、大気中、100℃/時間の昇温速度で700℃に昇温し、3時間の熱処理を行った。
【0053】
上記円板状の成形体の熱処理により得られた円板状の素体について、透磁率μ、3点曲げ破断応力、及びJIS−K6911に準じた体積抵抗率、及び磁気損失Pcvの測定を行い、結果を表1に示した。
また、上記ドラム型の成形体の熱処理で得られたドラム型の素体について、鏡面研磨後イオンミリング(CP)を施した後、電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)により反射電子組成像を観察して、粒子内結晶粒が生成されていることを確認した。
さらに、巻芯部のほぼ中心を通る厚さ方向の断面が露出するように研磨し、その断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて3000倍で撮影し組成像を得た。次に、上記で得られた組成像について、各画素を4段階の明度ランクに分類し、上記組成像中で粒子の断面の輪郭がすべて確認できる粒子のうち、各粒子の断面の長軸寸法d1と短軸寸法d2の単純平均D=(d1+d2)/2が原料粒子の平均粒径(d50%)より大きい粒子の組成コントラストを基準明度ランクとし、上記組成像中でこの明度ランクに該当する部分を粒子1と判断した。また、組成コントラストが、上記基準明度ランクより次に暗い明度ランクの部分を、酸化層の外層3、さらに暗い明度ランクの部分を、酸化層の内層2と判断した。また、もっとも暗い明度ランクの部分を空孔(図示なし)と判断した。この結果、隣接する粒子1の表面に生成された酸化層の外層3同士が結合していることが確認することができた。次に、上記で得られた組成像について、この結果、隣接する粒子1の表面に生成された酸化層同士が結合していることが確認することができた。
【0054】
次に、上記組成像中から、粒子の断面の輪郭がすべて確認できる粒子のうち各粒子の断面の長軸寸法d1と短軸寸法d2の単純平均D=(d1+d2)/2が原料粒子の平均粒径(d50%)より大きい粒子を抽出し、その長軸と短軸の交点付近の組成をエネルギー分散型X線分析(EDS)によりZAF法で算出し、これを上記原料粒子における組成比と対比して、上記素体における複数の粒子の組成比が原料粒子の組成比とほぼあるいは実質的に等しいことを確認した。
【0055】
次に、上記組成像における粒子1の内部の長軸d1と短軸d2とが交わる点における組成をSEM−EDSで求めた。次に、上記組成像における粒子1の表面の酸化層の最厚部の厚さt1と最薄部の厚さt2から平均厚さT=(t1+t2)/2に相当する酸化層厚さの部位における酸化層の厚さの中心点における組成についてSEM−EDSで求めた。
【0056】
以上の結果より、本実施例1の電子部品用軟磁性合金素体は、クロム5wt%、ケイ素3wt%、鉄92wt%を含有する複数の粒子1と、粒子1の表面に生成された、二層構造の酸化層を備え、酸化層の内層2は、クロムの酸化物を主成分とする、平均40nmの厚さを有するものであり、酸化層の外層3は、鉄とクロムの酸化物を主成分とする、平均70nmの厚さを有するものであることを確認した。
【0057】
得られた結果を表1に示した。
この結果、透磁率μが59、素体の強度(破断応力)が14kgf/mm、体積抵抗率が4.2×10Ω・cm、磁気損失Pcvが9.8×10W/mと、それぞれ良好な測定結果が得られた。
次に、上記ドラム型素体の巻芯部に絶縁被覆導線からなるコイルを巻回するとともに両端部をそれぞれ前記外部導体膜に熱圧着接合し、さらに、上記板状成形体の熱処理で得られた板状の素体を前記ドラム型の素体の鍔部の両側にそれぞれ樹脂系接着剤で接着して巻線型チップインダクタを得た。
【0058】
(実施例2)
原料粒子の組成比を、クロム:3wt%、ケイ素:5wt%、鉄:92wt%とした以外は、実施例1と同様にして、評価試料を作成し、得られた結果を表1に示した。
表1に示すとおり、透磁率μが53で、素体の強度(破断応力)が9kgf/mm、体積抵抗率が2.0×10Ω・cm、磁気損失Pcvが1.1×10W/mと、実施例1と同様、良好な測定結果が得られた。
また、実施例1と同様の、FE−SEM観察、SEM観察及びSEM−EDSによる分析の結果、熱処理により、粒子内結晶粒が形成されるとともに、粒子表面に金属酸化物(酸化層)が形成され、形成された酸化層は、クロムの酸化物から形成された内層2(平均厚さ30nm)と、鉄およびクロムの酸化物から形成された外層3(平均厚さ66nm)とからなる二層構造を有し、該酸化層の外層3同士が結合していることが確認できた。
【0059】
(実施例3)
原料粒子の組成比を、クロム:6wt%、ケイ素:2wt%、鉄:92wt%とした以外は、実施例1と同様にして、評価試料を作成し、得られた結果を表1に示した。
表1に示すとおり、透磁率μが49で、素体の強度(破断応力)が14kgf/mm、体積抵抗率が7.0×10Ω・cm、磁気損失Pcvが2.0×10W/mと、実施例1と同様、良好な測定結果が得られた。
また、実施例1と同様のFE−SEM観察、SEM観察及びSEM−EDSによる分析の結果、熱処理により、粒子内結晶粒が形成されるとともに、粒子表面に金属酸化物(酸化層)が形成され、形成された酸化層は、クロムの酸化物から形成された内層2(平均厚さ50nm)と、鉄およびクロムの酸化物から形成された外層3(平均厚さ80nm)とからなる二層構造を有し、該酸化層の外層3同士が結合していることが確認できた。
【0060】
(実施例4)
原料粒子の組成比を、クロム:6wt%、ケイ素:4wt%、鉄:94wt%とした以外は、実施例1と同様にして、評価試料を作成し、得られた結果を表1に示した。
表1に示すとおり、透磁率μが50で、素体の強度(破断応力)が14kgf/mm、体積抵抗率が8.0×10Ω・cm、磁気損失Pcvが1.2×10W/mで、実施例1と同様、良好な測定結果が得られた。
また、実施例1と同様のFE−SEM観察、SEM観察及びSEM−EDSによる分析の結果、熱処理により、粒子内結晶粒が形成されるとともに、粒子表面に金属酸化物(酸化層)が形成され、形成された酸化層は、クロムの酸化物から形成された内層2(平均厚さ40nm)と、鉄およびクロムの酸化物から形成された外層3(平均厚さ75nm)とからなる二層構造を有し、該酸化層の外層3同士が結合していることが確認できた。
【0061】
(実施例5)
原料粒子の組成比を、クロム:4wt%、ケイ素:2wt%、鉄:89wt%とした以外は、実施例1と同様にして、評価試料を作成し、得られた測定結果を表1に示した。
表1に示すとおり、透磁率μが49で、素体の強度(破断応力)が18kgf/mm、体積抵抗率が5.1×10Ω・cm、磁気損失Pcvが2.3×10W/mと、実施例1と同様、良好な測定結果が得られた。
また、実施例1と同様のFE−SEM観察、SEM観察及びSEM−EDSによる分析の結果、熱処理により、粒子内結晶粒が形成されるとともに、粒子表面に金属酸化物(酸化層)が形成され、形成された酸化層は、クロムの酸化物から形成された内層2(平均厚さ35nm)と、鉄およびクロムの酸化物から形成された外層3(平均厚さ70nm)とからなる二層構造を有し、該酸化層の外層3同士が結合していることが確認できた。
【0062】
(実施例6)
成形圧力を12ton/cmとした以外は、実施例1と同様にして、評価試料を作成し、得られた測定結果を表1に示した。
表1に示すとおり、透磁率μが59で、素体の強度(破断応力)が15kgf/mm、体積抵抗率が4.2×10Ω・cm、磁気損失Pcvが9.2×10W/mと、実施例1と同様、良好な測定結果が得られた。
また、実施例1と同様のFE−SEM観察、SEM観察及びSEM−EDSによる分析の結果、熱処理により、粒子内結晶粒が形成されるとともに、粒子表面に金属酸化物(酸化層)が形成され、形成された酸化層は、クロムの酸化物から形成された内層2(平均厚さ35nm)と、鉄およびクロムの酸化物から形成された外層3(平均厚さ65nm)とからなる二層構造を有していることが確認された。
また、実施例1と同様のSEM観察の結果、粒子同士が、酸化層を介さずに直接結合しているものが存在することが分かった。これは、成形圧力を高くしたことにより、粒子同士の接触面積が増加したためと思われる。
【0063】
(実施例7)
原料粒子の組成比を、アルミニウム:5.5wt%、ケイ素:9.5t%、鉄:85wt%とした以外は、実施例1と同様にして、評価試料を作成し、得られた測定結果を表1に示した。
表1に示すとおり、透磁率μが45で、素体の強度(破断応力)が9kgf/mm、体積抵抗率が4.2×10Ω・cm、磁気損失Pcvが9.5×10W/mで、実施例1と同様、良好な測定結果が得られた。
【0064】
(比較例1)
熱処理における昇温速度を、400℃/時間とした以外は、実施例1と同様にして、評価試料を作成し、得られた測定結果を表1に示した。
表1に示すとおり、透磁率μが45で、素体の強度(破断応力)が7.4kgf/mm、体積抵抗率が4.2×10Ω・cm、磁気損失Pcvが5.3×10W/mで、いずれも実施例1〜6の測定結果より優れたものは得られなかった。
また、実施例1と同様のSEM観察及びSEM−EDSによる分析の結果、熱処理により粒子表面に形成された金属酸化物(酸化層)により粒子同士が結合されていたが、該酸化層は、鉄及びクロムの酸化物からなる一層だけであることが確認できた。
【0065】
(比較例2)
熱処理における昇温速度を、400℃/時間とした以外は、実施例7と同様にして、評価試料を作成し、得られた測定結果を表1に示した。
表1に示すとおり、透磁率μが32で、素体の強度(破断応力)が1.4kgf/mm、体積抵抗率が8.0×10Ω・cm、磁気損失Pcvが3.9×10W/mで、いずれも実施例1〜6の測定結果より優れたものは得られなかった。
また、実施例1と同様のSEM観察及びSEM−EDSによる分析の結果、熱処理により粒子表面に形成された金属酸化物(酸化層)により粒子同士が結合されていたが、該酸化層は、鉄及びアルミニウムの酸化物からなる一層だけであることが確認できた。
【0066】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の電子部品用軟磁性合金素体および該素体を用いた電子部品は、回路基板上への
面実装が可能な小型化された電子部品に好適である。特に、大電流を流すパワーインダクタに用いた場合、部品の小型化に好適である。
【符号の説明】
【0068】
1:粒子
2:酸化層の内層
3:酸化層の外層
10,10’:電子部品用軟磁性合金を用いた素体
11:ドラム型のコア
11a:巻芯部
11b:鍔部
12:板状コア
14:外部導体膜
14a:焼付導体膜層
14b:Niメッキ層
14c:Snメッキ層
15:コイル
15a:巻回部
15b:端部(接合部)
20:電子部品(巻線型チップインダクタ)
31:積層体チップ
34:外部導体膜
35:内部コイル
40:電子部品(積層型チップインダクタ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9