(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された扇風機は本体側壁の空気の排出口のすぐ内側にシロッコファンが配置されているので、排出口周囲の本体の大きさがファンを含んだ大きさになっている。したがって、排出口周囲の本体の外形、すなわち扇風機の設置面積が比較的大きくなってしまうという課題があった。さらに、シロッコファンやモータといった重量物が縦長の箱体の比較的高い位置に配置されているので、本体の重量バランスが不安定であることが懸念される。
【0007】
また、特許文献2及び3に記載された送風機及び扇風機は空気の吹き出しノズルが従来のプロペラファンを有する扇風機と同様の形態に相当するリング状になっている。したがって、吹き出しノズル周辺の本体の外形、すなわち扇風機の設置面積が比較的大きくなってしまうという課題があった。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みなされたものであり、省スペース化が図られた送風装置を提供することを目的とする。また、省スペースな占有領域で気流を発生させることが可能な送風方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の送風装置は、空気の吸込口及び吹出口を開口する本体筐体と、前記本体筐体内の下部に設けられて前記吸込口から吸い込んだ空気を前記吹出口に向かって流通させる送風機と、を備え、前記本体筐体は下方から上方に向かう柱状をなし、前記吹出口は前記本体筐体の側壁に沿った縦長の矩形をなすスリット状に形成されるとともにその少なくとも一部が略横方向に向けて空気を吹き出すように配置されていることを特徴としている。
【0010】
この構成によれば、送風機を駆動することで吸込口から吹出口まで本体筐体の内部を空気が流通する。本体筐体内に吸い込まれた空気は下方から上方に向かう柱状をなす本体筐体の側壁の吹出口から吹き出される。本体筐体が下方から上方に向かう柱状をなすとともに、吹出口のすぐ内側に送風機が配置されているわけでもないので、送風装置は外形形状が非常にコンパクトになる。
【0011】
また、上記構成の送風装置において、前記本体筐体は前記吹出口を開口する箇所の略水平なその断面の外形形状が流線形をなし、前記吹出口は前記流線形の下流端に対応する箇所に配置されていることを特徴としている。
【0012】
この構成によれば、吹出口から吹き出される気流が本体筐体の外面近傍の空気の移動を誘引する。吹出口周辺の本体筐体の外面近傍で、吹出口からの空気吹出し方向に沿った気流が発生する。送風装置が吹き出す空気が増加する。
【0013】
なお、ここで述べた「流線形」は空気抵抗の低減が図られた形であって、流れの中に置いたときに周りに渦を発生せず、流れから受ける抵抗が最も小さくなる曲線で構成される形を意味する。「流線形」は一般的には気流方向に沿って細長い形状であって、流れの上流端が丸く、下流端がとがっている。前記吹出口は本体筐体の断面の外形形状である流線形の下流端に対応する箇所から、本体筐体の外面近傍で発生する気流の下流に向かって空気を吹き出す。
【0014】
また、上記構成の送風装置において、前記本体筐体の前記吹出口を開口する箇所の前記断面の形状が紡錘形をなすことを特徴としている。
【0015】
また、上記構成の送風装置において、前記本体筐体の前記吹出口を開口する箇所の前記断面の形状が翼の断面形状をなすことを特徴としている。
【0016】
これらの構成によれば、吹出口から吹き出される気流が本体筐体の外面近傍の空気の移動を誘引し易くなる。吹出口周辺の本体筐体の外面近傍で、吹出口からの空気吹出し方向に沿った気流が発生し易くなる。送風装置が吹き出す空気が一層増加する。
【0017】
また、上記構成の送風装置において、前記吹出口は下端から上端に進むに従って空気の吹出し方向が上方を向くように湾曲することを特徴としている。この構成によれば、本体筐体の横方向からやや上方向に向けて空気が吹き出される。送風装置は広範囲に空気を吹き出す。
【0018】
また、上記構成の送風装置において、前記本体筐体内の空気中にイオンを放出するイオン発生装置を備えることを特徴としている。この構成によれば、イオンを含む空気が本体筐体の吹出口から外部に送出される。
【0019】
また、上記構成の送風装置において、前記吹出口からの空気の吹出し方向を横方向に移動させる変位装置を備えることを特徴としている。この構成によれば、本体筐体の横方向の広範囲に空気が吹き出される。
【0020】
また、上記の課題を解決するため、本発明の送風方法は、本体筐体の内部に設けられた送風機を駆動させて吸込口から前記本体筐体内に吸い込んだ空気を吹出口から吹き出す送風方法であって、下方から上方に向かう柱状をなす前記本体筐体の側壁に沿って配置された縦長の矩形をなすスリット状に形成された前記吹出口から略横方向に向けて空気を吹き出すことを特徴としている。
【0021】
この方法によれば、送風機を駆動することで吸込口から吹出口まで本体筐体の内部を空気が流通する。本体筐体内に吸い込まれた空気は下方から上方に向かう柱状をなす本体筐体の側壁の吹出口から吹き出される。
【0022】
また、上記構成の送風方法において、前記吹出口を横方向に移動させながら前記吹出口から空気を吹き出すことを特徴としている。この方法によれば、本体筐体の横方向の広範囲に空気が吹き出される。
【発明の効果】
【0023】
本発明の構成によれば、送風装置は下方から上方に向かう柱状をなす本体筐体の側壁の吹出口から空気を吹き出す。このように、省スペース化が図られた送風装置を提供することが可能である。また、省スペースな占有領域で気流を発生させることが可能な送風方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係る送風装置を
図1〜
図9に基づき説明する。
【0026】
最初に、本発明の実施形態に係る送風装置について、
図1〜
図4を用いてその構造の概略を説明する。
図1は送風装置の外観斜視図、
図2は送風装置の正面図、
図3は送風装置の背面図、
図4は
図3に示す送風装置のIV−IV線における垂直断面図である。
【0027】
送風装置1は、
図1〜
図4に示すように柱状をなす本体筐体2と、本体筐体2の内部に設けられた送風機3とを備えている。
【0028】
本体筐体2は下方から上方に向かうに従って徐々に先細りとなる柱状をなして設置面上に立設されている。本体筐体2は下部に吸込口4aを開口する吸込部4を備え、上部に吹出口5aを開口する吹出部5を備えている。
【0029】
本体筐体2の下部正面には操作部6が設けられている。本体筐体2の最下方には本体筐体2が上面に載置されてこれを支持する円形の台座部7が設けられている。
【0030】
送風機3は本体筐体2の背面側であって下部の吸込部4に設けられている。吸込部4と吹出部5とは送風機3から延びるフレキシブルダクト8で接続され、空気の流通が可能になっている。そして、送風機3は吸込口4aから吸い込んだ空気を吹出口5aに向かって流通させる。
【0031】
送風機3の付図示の排気口の箇所であって送風機3とフレキシブルダクト8との間にはイオン発生装置20が配置されている。また、本体筐体2の内部には不図示の制御基板が設けられている。また、送風装置1は不図示のバッテリーまたは電源プラグを備え、バッテリーまたは商用交流電源から電力の供給を受け、動作する。
【0032】
続いて、送風装置1の詳細な構成について、
図1〜
図4に加えて
図5〜
図9を用いて説明する。
図5はイオン発生装置20の外観斜視図、
図6はイオン発生装置20の回路図、
図7は
図3に示す送風装置1のVII−VII線における水平断面図、
図8は送風装置1の構成を示すブロック図、
図9は送風装置1の動作時の気流を示す模式図である。
【0033】
本体筐体2の吸込部4は、
図3及び
図4に示すように本体筐体2の下部に設けられ、略水平な断面が円形をなす円筒形状で構成されている。吸込部4は内部に空気通路としての空間を擁し、その背面に吸込口4aを備えている。吸込口4aは径方向に向かって開口して吸込部4の内部と外部とを連通させている。吸込口4aのすぐ内側には吸い込んだ空気に含まれる塵埃を捕集するためのネットフィルタ9が設置されている。
【0034】
操作部6は吸込部4の正面に設けられている。操作部6は
図8に示す運転スイッチ6a、イオンスイッチ6b、首振りスイッチ6c、風量切替スイッチ6d、温風スイッチ6eなどのスイッチ類を備えるとともに、運転情報を表示する表示部6fを備えている。表示部6fは例えば小型の多色LEDランプで構成されているが、液晶画面などを用いて詳細な運転情報を表示するようにしても良い。
【0035】
台座部7は吸込部4の下方であって本体筐体2の最下方に設けられている。台座部7は送風装置1の首振り動作を可能にするために設けられている。台座部7は、
図4に示すようにその回転軸7aを本体筐体2の底面の径方向中心に挿入して本体筐体2を回転可能に支持している。
【0036】
台座部7を用いて送風装置1の首振り動作を可能にする変位装置である首振り装置7bは吸込部4の内部に設けられている。首振り装置7bは、例えばカム付きのギアモータであり、回転動作を往復動作に変換して本体筐体2を回転軸7aの周りに左右に反復回動させる首振り動作を実現する。
【0037】
送風機3は例えばシロッコファンで構成され、
図4に示すように吸込部4の内部に設けられている。送風機3は不図示の吸気口が吸込部4の空気通路側に対向し、不図示の排気口が吸込部4の天井部に設けられた接続部4bに接続されている。接続部4bにはフレキシブルダクト8が接続され、送風機3を駆動させると、吸込口4aから吸い込んだ外部の空気を吸込部4内に流通させてフレキシブルダクト8を介して吹出部5に向かって送り出す。本実施形態では送風機3をシロッコファンとしたが、プロペラファンやターボファン形式の送風機であっても良い。
【0038】
イオン発生装置20は吸込部4の接続部4bの箇所、すなわち送風機3に対して空気流通方向下流側に配置されている。イオン発生装置20はイオンを放出するための放電に用いる放電電極21やその他電子部品がハウジングに設けられ、例えば
図5に示すようにパッケージ化されている。イオン発生装置20は空気通路に臨む一対の放電電極21a、21bを有し、接続部4b内を流通する空気に対して放電電極21a、21bで放電により発生させたイオンを含ませるように放出する。
【0039】
イオン発生装置20は例えば
図6に示す回路で構成されている。イオン発生装置20は回路部22とイオン発生部23a、23bを備えている。回路部22は外部から電力供給を受けて高圧の電気パルスを生成する高圧電気発生回路を備えている。
【0040】
イオン発生部23aは放電電極21aと誘導電極24aとを備え、イオン発生部23bは放電電極21bと誘導電極24bとを備えている。放電電極21a、21bは各々針状に形成されて所定の間隔で並べて配置されている。誘導電極24aは放電電極21aを中心とする環状に形成され、放電電極21aに対向している。同様に、誘導電極24bは放電電極21bを中心とする環状に形成され、放電電極21bに対向している。
【0041】
イオン発生部23a、23bは同じ構造であり、各々の放電電極21a、21bに高圧電気発生回路で生成された高電圧が供給されて各々誘導電極24a、24bとの間で放電を発生させ、イオンを放出する。
【0042】
ここで、イオン発生装置20の放電電極21a、21bには交流波形またはインパルス波形から成る電圧が印加される。放電電極21aには正電圧が印加され、コロナ放電による水素イオンが空気中の水分と結合して主としてH
+(H
2O)mから成るプラスイオンを発生する。放電電極21bには負電圧が印加され、コロナ放電による酸素イオンが空気中の水分と結合して主としてO
2−(H
2O)nから成るマイナスイオンを発生する。ここで、m、nは任意の自然数である。H
+(H
2O)m及びO
2−(H
2O)nは空気中の浮遊菌や臭い成分の表面で凝集してこれらを取り囲む。
【0043】
そして、式(1)〜(3)に示すように、衝突により活性種である[・OH](水酸基ラジカル)やH
2O
2(過酸化水素)を微生物等の表面上で凝集生成して浮遊菌や臭い成分を破壊する。ここで、m’、n’は任意の自然数である。したがって、プラスイオン及びマイナスイオンを発生して吹出口5aから吹き出すことにより、例えば室内の除菌及び脱臭を行うことができる。
【0044】
H
+(H
2O)m+O
2−(H
2O)n→・OH+1/2O
2+(m+n)H
2O ・・・(1)
H
+(H
2O)m+H
+(H
2O)m’+O
2−(H
2O)n+O
2−(H
2O)n’
→ 2・OH+O
2+(m+m'+n+n')H
2O ・・・(2)
H
+(H
2O)m+H
+(H
2O)m’+O
2−(H
2O)n+O
2−(H
2O)n’
→ H
2O
2+O
2+(m+m'+n+n')H
2O ・・・(3)
【0045】
なお、本実施形態ではイオン発生装置20によってプラスイオン及びマイナスイオンを発生しているが、プラスイオンのみまたはマイナスイオンのみを発生しても良い。
【0046】
また、本発明において、イオンには帯電微粒子水も含むものとする。このとき、イオン発生装置20は静電霧化装置からなり、静電霧化装置によってラジカル成分を含む帯電微粒子水が生成される。すなわち、静電霧化装置に設けた放電電極をペルチェ素子により冷却することで放電電極の表面に結露水が生じる。次に、放電電極にマイナスの高電圧を印加すると、結露水から帯電微粒子水が生成される。また、放電電極からは帯電微粒子水とともに空気中に放出されるマイナスイオンも発生する。
【0047】
なお、イオン発生装置20の空気流通方向下流側にはイオン検知センサ10が設けられている(
図8参照)。イオン検知センサ10はイオンの発生を確認してイオン発生装置20の運転状況を監視する。
【0048】
フレキシブルダクト8は蛇腹状をなし、
図3及び
図4に示すように送風装置1の背面側であって吸込部4と吹出部5との間の箇所に配置されている。フレキシブルダクト8は略垂直をなす姿勢で配置されている。これにより、送風機3から送り出された気流は吹出部5の長手方向とほぼ平行に吹出部5に流入する。
【0049】
フレキシブルダクト8は空気流通方向上流端8aが吸込部4の接続部4bに接続され、下流端8bが吹出部5に着脱可能に接続されている。フレキシブルダクト8は下流端8bが吹出部5から取り外すことができ、上流端8aから引き延ばして曲げることができる。そして、引き延ばしてフレキシブルダクト8の下流端8bに不図示の付属品を装着することにより、送風装置1を様々な用途に使用することもできる。
【0050】
フレキシブルダクト8には例えば2種類のものがあり、収納時と使用時とで長さをあまり変化させることができない種類のものと長さを大きく変化させることができる種類のものとがある。送風用としてはいずれの種類のものも採用可能である。ただし、本発明の送風装置1のフレキシブルダクト8ように長さを変化できるほうが多くの用途に使用することができる。
【0051】
本体筐体2の吹出部5は、
図1、
図2及び
図4に示すように本体筐体2の上部に設けられ、前述のように下方から上方に向かうに従って徐々に先細りとなる柱状をなしている。吹出部5は内部に空気通路としての空間を擁し、その正面に吹出口5aを備えている。吹出口5aは本体筐体2の側壁に沿った縦長の矩形をなすスリット状に形成されるとともに下側の大半部分が略横方向に向けて空気を吹き出すように配置されている。
【0052】
そして、吹出口5aは設置面に対して鉛直ではなく、下端から上端に進むに従って空気の吹出し方向が上方を向くように湾曲している。これにより、送風装置1は前方及び斜め上方に空気を吹き出す。なお、吹出口5aは必ずしも下端から上端に進むに従って空気の吹出し方向が上方を向くように湾曲しなければならないわけではなく、設置面に対して鉛直であっても良い。
【0053】
吹出口5aのスリット幅および長さは、送出すべき風量によって決定される。例えば、本実施形態では吹出口5aのスリット幅を約8mmとした。吹出口5aから吹き出す気流によって吹出口5aの周囲の空気を引き寄せるためには気流速度が速い方が有利であり、スリット幅は1cm以下が好ましい。その上で様々な風量に対応するには、吹出口5aから吹き出す気流速度を一定とすると、大風量用の送風装置では吹出口5aの長さを長くし、小風量用の送風装置では吹出口5aの長さを短くするのが一般的である。つまり、大風量用では吹出部5が長くなり、小風量用では吹出部5が短くなる。なお、吹出口5aはスリット幅を所定の幅に保つために縦方向の途中数か所にスペーサ部5bを設けている。
【0054】
吹出口5aのすぐ内側には吹出口5aから均等に空気を送出させるための整流フィルタ11が設けられている。整流フィルタ11は通気性とともに適度な空気抵抗を備える構造体であって、吹出部5の内部を適切な静圧に維持する。このようにすることで送風機3から送り出された空気が有する速度エネルギーを静圧エネルギーに変換するとともに、送り出される空気の整流を行う。送風機3から送り出された空気が有する速度エネルギーを静圧エネルギーに変換することにより、吹出口部5の内部には均等に静圧がかかる。静圧は至る箇所で、またあらゆる面に垂直に且つ均等に働くので、吹出口5aの長手方向に沿って均等に空気を吹き出させることが可能である。
【0055】
また、吹出口5aのスリット状の幅を狭くすることによって、適度の空気抵抗を得るように構成することも可能である。この場合には、整流フィルタ11を省略することができる。
【0056】
本体筐体2は、
図7に示すように吹出口5aを開口する箇所の略水平なその断面の外形形状が流線形をなしている。この流線形とは空気抵抗の低減が図られた形であって、流れの中に置いたときに周りに渦を発生せず、流れから受ける抵抗が最も小さくなる曲線で構成される形状である。また、流線形とは本体筐体2の外面近傍で発生すると想定した気流の流れの方向に沿って細長い形状であって、流れの上流端が丸く、下流端がとがっている。吹出口5aは本体筐体2の断面の外形形状である流線形の下流端に対応する箇所に配置され、本体筐体2の外面近傍で発生する気流の下流に向かって空気を吹き出す。
【0057】
また、
図7に示すように、本体筐体2の吹出口5aを開口する箇所の略水平なその断面は吹出口5aからの空気の吹き出し方向の長さをLとし、空気の吹き出し方向と直角をなす方向の幅をWとすると、W<Lとなるように構成されている。吹出口5aに接続する本体筐体2の側面の部分の形状は、吹出口5aの周囲の空気が吹出口5aから吹き出される気流に引き寄せられて移動することを妨げないような形状をなしている。
【0058】
ここで、本体筐体2内に設けられた不図示の制御基板は送風装置1の動作制御のため、不図示のCPUやその他の電子部品で構成された制御部12を備えている(
図8参照)。制御部12はそのCPUを中央演算処理装置として利用して記憶部(不図示)などに記憶、入力されたプログラム、データに基づき送風機3やイオン発生装置20、首振り装置7bなどといった構成要素を制御して一連の送風運転やイオン送出運転を実現する。また、制御部12は計時部13を備え、システムのクロック周期を基準として様々な時間を計測することができる。
【0059】
上記構成の送風装置1において操作部6の運転スイッチ6aが操作されて送風運転が指示されると、送風機3及びイオン発生装置20が駆動される。これにより、本体筐体2は吸込口4aから送風装置1の外部の空気を吸い込む。吸込口4aから吸い込まれた空気は吸込部4の内部の空気通路を経て、送風機3に流入する。
【0060】
送風機3から排出される空気には吸込部4の接続部4bの箇所においてイオン発生装置20が放出するイオンが含まれる。イオンを含む気流はフレキシブルダクト8に流入する。フレキシブルダクト8を通過した空気は吹出部5に流入する。そして、本体筐体2の側壁に沿って設けられた吹出口5aから略横方向に向けてイオンを含む空気が吹き出される。
【0061】
なお、イオン発生装置20が放出したイオンをイオン検知センサ10が検知し、制御部12はイオン検知センサ10の出力に基づいてイオン量が規定値に達していることを確認する。イオン量の検知は送風装置1の起動時、または予め定めた時間の経過後に一定の時間イオン量の測定を行う。イオン量が規定値以下である場合、異常である旨を表示部6fに表示する、若しくは警報して送風装置1は運転を停止する。
【0062】
また、制御部12はイオン発生装置20の積算運転時間も監視している。イオン発生装置20の積算運転時間があらかじめ定めた時間を超過した場合、イオン発生装置20の寿命が尽きた旨を表示部6fに表示する、若しくは警報して送風装置1は運転を停止する。送風装置1はイオン発生装置20の寿命が尽きて新たなイオン発生装置に交換されると、警報のリセットが行われて通常運転が再開される。
【0063】
そして、送風装置1は上記のように送風運転とイオン送出運転とを同時に実行できるほか、送風運転とイオン送出運転とを各々単独で実行することも可能である。イオン発生装置20の運転を選択可能に構成することは利便性向上の面で好ましく、操作部6のイオンスイッチ6bでイオン送出運転のオン、オフを行うことができる(
図8参照)。イオン発生装置20に不具合が発生した場合や寿命が尽きた場合、単に送風機能のみを使用することが可能になる。
【0064】
また、操作部6の首振りスイッチ6c(
図8参照)がオンにされていると、送風機3の運転に合わせて首振り装置7bが首振り動作を開始する。ここで、送風装置1は吹出口5aが縦長のスリット状であるので、吹出口5aから送出される気流も縦長の帯状気流となる。これにより、例えば首振り装置7bを備えていない場合、吹出口5aの正面にある対象だけに気流が当たる状態となって快適性が減少する。したがって、気流やイオンを拡散させるためには適度な範囲で往復動作できる首振り装置7bが必要である。
【0065】
本実施形態の送風装置1の吹出口5aから送出される気流は非常に幅が狭く、速度が速いので、その気流を人が受けると爽快感が得られる。さらに、送風装置1が首振り動作を実行しているとき、縦長の線状の強い気流が体表を右から左、または左から右に走査するように移動して一層清涼感が得られる。
【0066】
また、送風機3の出力を可変にして風量を変更できるようにすることも好ましい。風量の変更幅は吹出口5aの大きさによって適宜定められる。吹出口5aの大きさに対してあまり風量が多い場合、吹き出し気流の速度が速くなりすぎて不快な騒音を発生させる原因となる。また、逆に風量が少なすぎる場合、気流の到達距離が制限されてしまう。風量の変更手段については多くの分野で実用化されている手段に沿えば良く、操作部6に風量切替スイッチ6dが設けられている(
図8参照)。
【0067】
また、吸込口4aから吹出口5aに至る空気流通経路中に、本体筐体2内を流通する空気の加熱装置(不図示)を設けることも好ましい。一般に人が感じる空気温度、つまり体感温度は気流の風速が1m/s速くなるごとに1℃低下すると言われている。室内の気温が20℃の場合、吹出口5aを出た直後の気流の風速が10m/sであるとすると体感温度は10℃前後となり、夏場のエアコンの吹出口を出た直後の気流の温度に近くなる。そのため、送風装置1に内部を流通する空気の加熱装置を設けて使用者が肌寒さを感じないようにすることが好ましい。操作部6の温風スイッチ6eで空気の加熱運転のオン、オフを行うことができる(
図8参照)。
【0068】
そして、
図9は送風装置1の動作時の本体筐体2周辺の気流を模式的に示している。本発明の実施形態に係る送風装置1は空気を吹き出す構造及び吹出口5aを有する吹出部5(本体筐体2)の形状に特徴がある。
【0069】
送風装置1は吹出部5の内部で均等な静圧を維持しているので、
図9に示すように吹出口5aからその長手方向(上下方向)の全域にわたって均等な層流の気流Bを送出する。気流Bが吹出口5aから送出された時点で比較的速い速度を有するので、ベルヌーイの定理に従って気流B自体の圧力が低下して縮流が発生する。これにより、吹出口5a近傍の空気が気流Bに誘引される。吹出口5a近傍の空気が気流Bとともに移動することにより、さらにその周辺の空気が引き寄せられるということが連続して起こる。
【0070】
そのように引き寄せられて移動する気流が
図9に示した気流A1、A4であるとすると、それら気流A1、A4によってさらに吹出部5の背面側からも空気が引き寄せられて移動を始めて気流A2、A3が生じる。吹出部5の側面に沿った吹出部5周辺の空気の移動である気流A1〜A4が時間の経過とともに安定し、吹出口5aから吹き出される気流Bと一体となって大きな気流を形成する。
【0071】
言い換えれば、吹出部5は気流の中に障害物として存在することになり、気流を切り裂くような状態になっている。吹出部5の両側面に沿って気流が通過するので、吹出部5の水平断面形状は空気の抵抗が少ない形状であることが好ましい。さらに、その形状は吹出口5aの長さ方向(上下方向)の全域にわたって構成されていることが好ましい。
【0072】
通常、物体が空気中を高速で移動するのに適した形状は、水滴のような形状や翼の断面形状などといった所謂流線形をなし、気流の上流側から見た障害物の前面投影面積が小さいほど良く、気流が直接当たる先端部の形状係数が小さいほど良い。さらに、前面投影面積が障害物の気流方向の長さに比べて小さいことが好ましいとされる。これにより、本実施形態では吹出口5aの長手方向に対して直角をなす断面、すなわち水平断面を流線形とした。
【0073】
このように流体中で抵抗の少ない断面形状は一般的に流線形や紡錘形と呼ばれている。流線形や紡錘形は流体の流れと平行な方向の長さが、流れと直角をなす方向の長さよりも数倍大きいものが高速流体に対しても抵抗が少なくなる。また、流線形や紡錘形は流線に沿った上流側及び下流側の両端が抵抗を少なくするために細くなり、流線に沿った中央部が流線と直角をなす方向に膨らんだ形状となっている。なお、厳密には流線形と紡錘形とは少し異なるが、流体中で抵抗を減らすために同じように用いられることがある。魚類の体型や飛行機の翼などの断面形状が流線形や紡錘形の一例である。そして、本体筐体2の吹出口5aを開口する箇所の略水平な断面形状は紡錘形や翼の断面形状に限定されるわけではない。
【0074】
上記のように、送風装置1は下部に送風機3が設けられた本体筐体2が下方から上方に向かうに従って徐々に先細りとなる柱状をなし、吹出口5aが本体筐体2の側壁に沿った縦長の矩形をなすスリット状に形成されるとともに略横方向に向けて空気を吹き出す。本体筐体2が下方から上方に向かうに従って徐々に先細りとなる柱状をなすとともに、吹出口5aのすぐ内側に送風機3が配置されているわけでもないので、送風装置1は外形形状を非常にコンパクトにすることができ、本体筐体2の占有空間を小さくすることができる。すなわち、送風装置1は設置時の占有面積もより小さくすることができる。また、送風機3が本体筐体2の下部に配置されているので、送風装置1は重量バランスが安定して倒れ難くなっている。
【0075】
また、本体筐体2は吹出口5aを開口する箇所の略水平なその断面の外形形状が流線形をなし、吹出口5aはその流線形の下流端に対応する箇所に配置されているので、吹出口5aから吹き出される気流が本体筐体2の外面近傍の空気の移動を誘引する。これにより、吹出口5a周辺の本体筐体2の外面近傍で、吹出口5aからの空気吹出し方向に沿った気流を発生させることができる。したがって、送風装置1が吹き出す空気を増加させることが可能である。
【0076】
そして、本体筐体2は吹出口5aを開口する箇所の略水平なその断面の外形形状が紡錘形若しくは翼の断面形状をなすので、吹出口5aから吹き出される気流が本体筐体2の外面近傍の空気の移動を誘引し易くなる。これにより、吹出口5a周辺の本体筐体2の外面近傍で、吹出口5aからの空気吹出し方向に沿った気流を発生し易くすることができる。したがって、送風装置1が吹き出す空気を一層増加させることが可能である。
【0077】
また、吹出口5aは下端から上端に進むに従って空気の吹出し方向が上方を向くように湾曲しているので、本体筐体2の横方向からやや上方向に向けて空気が吹き出される。これにより、送風装置1は広範囲に空気を吹き出すことが可能になる。
【0078】
また、送風装置1は本体筐体2内の空気中にイオンを放出するイオン発生装置20を備えているので、イオンを含む空気が本体筐体2の吹出口5aから外部に送出される。これにより、送風装置1は、例えば室内の除菌及び脱臭を行うことができる。
【0079】
そして、送風装置1は吹出口5aからの空気の吹出し方向を横方向に移動させる変位装置である首振り装置7bを備えているので、本体筐体2の横方向の広範囲に空気が吹き出される。このようにして横方向に流れる気流を受けることにより使用者は一層清涼感が得られ、快適性が高められる。
【0080】
そして、本発明の上記実施形態の構成によれば、省スペース化が図られた送風装置1を提供することが可能である。また、省スペースな占有領域で気流を発生させることが可能な送風方法を提供することができる。
【0081】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。