前記風量調整部材は、車高方向において、前記チャンバーダクトの上面から当該チャンバーダクトの高さに対して50%から65%の位置まで延在する板材である、請求項12に記載の車両空調ダクト。
前記風量調整部材は、車幅方向において、ディフューザー内の吹き出し口から前記チャンバーダクトの幅の20%以下の長さを隔てて調和空気の下流側に設置される、請求項12から14のいずれかに記載の車両空調ダクト。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施形態1:
[車両空調ダクトを備えた鉄道車両の構成の概要]
本発明の実施形態である車両空調ダクト、及び該車両空調ダクトを備えた車両空調システムの内、特に鉄道車両について、図を参照しながら以下に説明する。尚、各図において、同一又は同様の構成部分については同じ符号を付している。
また、以下の説明では、実施形態における車両空調ダクト及び車両空調システムは、鉄道車両に装備した場合を例に採るが、鉄道車両に限定されず、公衆が利用する例えば航空機、船舶、バスなどの大型車両等に適用可能である。
【0015】
図1には、一実施形態における車両空調システム200の概略構成を図示する。この車両空調システム200は、基本的構成部分として、車両空調ダクト100と、空調装置180とを備え、本実施形態では
図2に示すように、鉄道車両10の天井部分、詳しくは客室天井19の裏側部分に設置される。
【0016】
空調装置180は、客室つまり車室内の温度調節を行う装置であり、吸引口181から車室内空気を吸い込み、この車室内空気を設定温度に調整して調和空気として吐出開口から車両空調ダクト100へ吐出する。本実施形態では
図2に示すように、空調装置180は、鉄道車両10の長手方向である車長方向11において一車両の前後に位置する各車端部15に1台ずつ設置される。尚、空調装置180の設置台数は、これに限定するものではなく、1台以上とすることができる。
【0017】
車両空調ダクト100は、天井19の裏側で車長方向11に延在して設けられ、空調装置180から吐出された上記調和空気を車室内へ導く導管であり、車室内への調和空気の吹出量を車室内区域で異ならせて不均一にする吹出不均衡構造を有する。
【0018】
従来においては上述したように、空調ダクトからの調和空気の吹出量を車長方向に渡り均一な風量とすることで、車室内温度分布の均一化を図っていた。これに対して本実施形態では、その発想を転換し、車両空調ダクト100は吹出不均衡構造を備え、意図的に、車室内への調和空気の吹出量を車室内区域で異ならせることで、車室内温度分布の均一化を達成するものである。以下には、この吹出不均衡構造について、種々の実施態様を挙げて説明する。
【0019】
[車両空調ダクトの構成]
実施形態1では、吹出不均衡構造は、車両空調ダクト100の全体から構成され、車長方向11において、車端部15に比べて車長方向中央部16へ多くの吹出量にて調和空気を吹き出すように構成した構造である。ここで車長方向中央部16とは、車長方向11における車室内の長さを例えば4等分した場合では中央部分の約2/4の領域が相当する。
車両空調ダクト100について、より詳しく以下に説明する。
【0020】
車両空調ダクト100は、
図1に示すように大きく分けて、一つのメインダクト110、2つのチャンバーダクト120(第1チャンバーダクト120−1及び第2チャンバーダクト120−2)、2つの前位分岐ダクト130(第1前位分岐ダクト130−1及び第2前位分岐ダクト130−2)、及び2つの後位分岐ダクト140(第1後位分岐ダクト140−1及び第2後位分岐ダクト140−2)を有する。
【0021】
[メインダクトの構成]
メインダクト110は、車両10の車幅方向12における中央部で車幅の例えば約3/5の幅を有し、及び車長方向11の中央部16に位置して車長方向11において車長の例えば約3/5の長さにて延在するダクトである。さらにメインダクト110は、当該メインダクト110を第1室111及び第2室112に分割する仕切り板113を有し、車端部15に設置された各空調装置180から調和空気が第1室111及び第2室112へそれぞれ吐出されるダクトである。
【0022】
仕切り板113は、車長方向11におけるメインダクト110の両端の一組の対角位置を結んでダクト内を延在する板部材である。本実施形態では、仕切り板113は、図示のように直線状に延在するが、ダクト両端の一組の対角位置を結ぶように設置される形態であれば良く、例えば
図19に示すように、階段形状であってもよい。
【0023】
また、メインダクト110の車長方向11に沿った側面110aでありチャンバーダクト120との隔壁には、
図1及び
図5に示すように、車長方向11に適宜な間隔で複数の送風開口114aが形成される。送風開口114aは、メインダクト110とチャンバーダクト120とを連通する。
【0024】
さらに、メインダクト110の車長方向11の前後に位置する端面110bには、空調装置180と接続される吐出開口115(
図6)が車幅方向12において本実施形態では2つ形成されている。これにより、空調装置180で生成される調和空気が吐出開口115からメインダクト110内へ、詳しくは第1室111及び第2室112へ吐出される。よって、吐出開口115からメインダクト110内へ吐出された調和空気は、送風開口114aを通りチャンバーダクト120へ流入可能である。
【0025】
[チャンバーダクトの構成]
チャンバーダクト120は、
図1及び
図3に示すように、車幅方向12においてメインダクト110の左右両側に、第1チャンバーダクト120−1と第2チャンバーダクト120−2とがそれぞれ配置され、上述のようにメインダクト110と送風開口114aを介して連通し、メインダクト110から供給された調和空気を車長方向11の中央部16の車室内へ吹き出すダクトである。つまり、チャンバーダクト120は、車長方向11への流れが強いメインダクト110内の調和空気を一旦淀ませて車室内へ供給する機能を有する。このような各チャンバーダクト120、つまり第1チャンバーダクト120−1及び第2チャンバーダクト120−2は、車長方向11においてメインダクト110の両端領域116を除いた主領域117にてメインダクト110に沿って延在する。また、各チャンバーダクト120は、車幅方向12におけるメインダクト110の幅の例えば約1/4の幅寸法を有する。
【0026】
また、各チャンバーダクト120は、車高方向13においてその下部には、
図3に示すように、ディフューザー151を有する。ディフューザー151は、客室天井19に設けられ、メインダクト110からチャンバーダクト120内へ供給された調和空気を車室内へ吹き出す部分であり、吹出口153を有する。
【0027】
[前位分岐ダクトの構成]
前位分岐ダクト130は、車長方向11において各チャンバーダクト120と同列に位置して延在し、前、後の車端部15において対角位置に配置され、車端部15における車室内への調和空気の吹き出しを行うダクトである。詳しく説明すると、上述したようにメインダクト110の第1室111及び第2室112には、各空調装置180によって車端部15から車長方向中央部16方向へ調和空気が吐出される。よって、一方の前位分岐ダクト130、つまり第1前位分岐ダクト130−1は、第1室111内を流れる調和空気の上流側に、他方の前位分岐ダクト130、つまり第2前位分岐ダクト130−2は、第2室112内を流れる調和空気の上流側に、それぞれ配置される。本実施形態では、第1チャンバーダクト120−1に隣接して第1前位分岐ダクト130−1が配置され、第2チャンバーダクト120−2に隣接して第2前位分岐ダクト130−2が配置されている。また、
図1に示すように、メインダクト110の両端領域116における側面110aであり前位分岐ダクト130との隔壁には、前位分岐ダクト130用の前位用送風開口114bが本例では一つ形成され、前位用送風開口114bは、メインダクト110と各前位分岐ダクト130とを連通する。よって、各前位分岐ダクト130は、第1室111及び第2室112とそれぞれ連通して、車端部15の車室内へ調和空気を吹き出す。また、各前位分岐ダクト130においても、チャンバーダクト120と同様に、その下部にはディフューザー151が設けられている。
尚、
図1において、チャンバーダクトと前位分岐ダクトとの車幅方向における中心線が一致するように同列に配置されているが、中心線がずれるようにチャンバーダクトや前位分岐ダクトを配置してもよいし、各ダクトを車幅方向にずらして配置してもよい。
【0028】
[前位ガイド板の構成]
さらに各前位分岐ダクト130は、前位ガイド板131(第1前位ガイド板131−1及び第2前位ガイド板131−2)を有する。前位ガイド板131は、空調装置180からメインダクト110へ、詳しくは第1室111及び第2室112へ吐出される調和空気を、前位用送風開口114bを通ってそれぞれの前位分岐ダクト130へ引き込む部材である。本実施形態では、第1室111へ吐出される調和空気が、第1前位ガイド板131−1によって前位用送風開口114bを通って第1前位分岐ダクト130−1に引き込まれ、第2室112へ吐出される調和空気が、第2前位ガイド板131−2によって前位用送風開口114bを通って第2前位分岐ダクト130−2に引き込まれる。
【0029】
このような前位ガイド板131は、
図1、
図6及び
図7に示すように、車高方向13においてメインダクト110の高さに一致する高さを有し、メインダクト110の側面110aに立設され、前位分岐ダクト130からメインダクト110内へ突出する。よって、それぞれの前位ガイド板131は、
図6に示すように、空調装置180から調和空気が吐出される2つの吐出開口115の内の一方に対して、車長方向11において隙間をあけて、一方の吐出開口115を次の割合で覆うように配置される。その被覆割合は、一方の吐出開口115の面積を車幅方向12において35%から60%で覆う割合である。
このように構成される前位ガイド板131を有することで、各前位分岐ダクト130には、空調装置180から吐出された調和空気が効率的に引き込まれる。
【0030】
本実施形態では、
図7等に示すように、前位ガイド板131は、円弧形状を有するが、その形状は、これに限定するものではない。
図8に示すように、前位ガイド板131は、例えば、実線で図示するL字形状や、点線で図示する直線形状等であってもよい。要するに、吐出開口115から吐出される調和空気を、前位用送風開口114bを通して効率的に前位分岐ダクト130へ引き込める形状であればよい。
【0031】
また、車高方向13において前位ガイド板131の高さ寸法も、メインダクト110の高さに一致させる必要はない。つまり、吐出開口115に対する上述の被覆割合を満足する条件の下で、前位ガイド板131は、
図9に示すように、車幅方向12において吐出開口115を全て覆い、車高方向13においてメインダクト110の上面から下面へ向かって所定高さを有することができる。ここで所定高さとは、吐出開口115の面積を車高方向13において35%から60%で覆う高さである。勿論、
図9の図示とは逆に、前位ガイド板131は、車高方向13においてメインダクト110の下面から上面へ向かって上記所定高さを有してもよい。
【0032】
[後位分岐ダクトの構成]
次に、それぞれの後位分岐ダクト140は、上述した前位分岐ダクト130と同様に、車長方向11において各チャンバーダクト120と同列に位置して延在し、前、後の車端部15において対角位置に配置され、車端部15における車室内への調和空気の吹き出しを行うダクトである。しかしながら、調和空気に対する後位分岐ダクト140の配置は、前位分岐ダクト130の場合とは相違する。つまり、一方の後位分岐ダクト140に相当する第1後位分岐ダクト140−1は、第1室111内を流れる調和空気の上流側ではなく下流側に、他方の後位分岐ダクト140に相当する第2後位分岐ダクト140−2においても、第2室112内を流れる調和空気の下流側に、それぞれ配置される。
尚、
図1において、チャンバーダクトと後位分岐ダクトとの車幅方向における中心線が一致するように同列に配置されているが、中心線がずれるようにチャンバーダクトや後位分岐ダクトを配置してもよいし、各ダクトを車幅方向にずらして配置してもよい。
【0033】
[ディフューザーの構成]
また、
図1に示すように、メインダクト110の両端領域116における側面110aであり後位分岐ダクト140との隔壁には、後位分岐ダクト140用の後位用送風開口114cが本例では一つ形成され、後位用送風開口114cは、メインダクト110と各後位分岐ダクト140とを連通する。よって、各後位分岐ダクト140は、第1室111及び第2室112とそれぞれ連通して、車端部15の車室内へ調和空気を吹き出す。また、各後位分岐ダクト140においても、チャンバーダクト120及び前位分岐ダクト130と同様に、その下部にはディフューザー151が設けられている。
【0034】
このように、車長方向11における前、後の各車端部15では、
図4に示すように、空調装置180を車幅方向12において両側から挟むようにして、上述の前位分岐ダクト130と、今説明した後位分岐ダクト140とが配置されることになる。本実施形態では、
図1に示すように、一方の車端部15では、第1空調装置180−1を挟んで、第1前位分岐ダクト130−1と、第2後位分岐ダクト140−2とが配置され、他方の車端部15では、第2空調装置180−2を挟んで、第2前位分岐ダクト130−2と、第1後位分岐ダクト140−1とが配置されている。
よって本実施形態では、車幅方向12において空調装置180及びメインダクト110の一方側には、車長方向11において第1前位分岐ダクト130−1、第1チャンバーダクト120−1、及び第1後位分岐ダクト140−1が配列され、他方側には、第2後位分岐ダクト140−2、第2チャンバーダクト120−2、及び第2前位分岐ダクト130−2が配列される。
【0035】
車端部15において、車幅方向12の両側に配置される前位分岐ダクト130及び後位分岐ダクト140は、各ディフューザー151から車室内へ同じ風量の調和空気を吹き出すのではなく、前位分岐ダクト130のディフューザー151から車室内への吹出量は、後位分岐ダクト140のディフューザー151から車室内への吹出量よりも多い。これは、上述したように、前位分岐ダクト130は、メインダクト110の第1室111及び第2室112における調和空気の上流側に位置し、かつ、調和空気を引き込む前位ガイド板131を有することに起因する。このような構成によって、後位分岐ダクト140からの少ない吹出量を、前位分岐ダクト130の吹出量で補うことで、車長方向11における車室内温度分布の均一化を達成する一因とすることができる。
尚、この場合の、前位分岐ダクト130と後位分岐ダクト140との吹出量の割合については、下記の空調動作説明箇所にて説明する。
【0036】
[空調動作]
以上説明したように構成した、吹出不均衡構造とした車両空調ダクト100による空調
動作について説明する。
車長方向11における前、後に設置された第1空調装置180−1及び第2空調装置1
80−2は、それぞれの空調装置180に備わる
吸引口181から車室内空気を吸い込み
、該車室内空気を設定温度に調整して調和空気として、吐出開口115からメインダクト
110内へ吐出する。つまり、
図1では一例として、図示の左側の第1空調装置180−
1から吐出開口115を通してメインダクト110の第1室111へ調和空気が吐出され
、図示の右側の第2空調装置180−2から吐出開口115を通してメインダクト110
の第2室112へ調和空気が吐出される。
【0037】
また、既に説明したように、車長方向11において、メインダクト110の大部分を占め車長方向中央部16に位置する主領域117に対応して各チャンバーダクト120を設けており、かつ、メインダクト110の両端領域116のみで連通して前位分岐ダクト130及び後位分岐ダクト140を設けたことから、車両空調ダクト100は、車室内への調和空気の吹出量を車室内区域で異ならせて不均一にする。即ち、車両空調ダクト100は、車端部15に比べて車長方向中央部16へ、より多くの風量で調和空気を吹き出すことができる。
【0038】
具体的には、車長方向11において車室内へ均一に調和空気を吹き出す状態の均一風量に対して、各チャンバーダクト120は、車長方向中央部16へ105%から120%の風量を吹き出し、各前位分岐ダクト130及び各後位分岐ダクト140は、残りの風量を車端部15へ吹き出す。
【0039】
また、車端部15のみに注目した場合でも、上述したように、車幅方向12における左右において、つまり前位分岐ダクト130と、後位分岐ダクト140とは、吹き出し風量を異にし、前位分岐ダクト130の方が多くの調和空気を車室内へ吹き出す。その割合は、車端部15において前位分岐ダクト130及び後位分岐ダクト140からの合計風量を、床面積に応じて均一に風量配分した場合の70%から95%とすればよい。例えば、後位分岐ダクト140の風量が床面積に応じて均一に風量配分した場合の60%の場合には、前位分岐ダクト130の風量は、床面積に応じて均一に風量配分した場合の80%から130%を確保すればよい。
【0040】
従来の車両空調システムでは、ダクト内の流れに起因して、車長方向11への速度成分を有する調和空気は、車端部において偏りが生じていたが、本実施の形態の車両空調ダクト100によれば、調和空気の車端部15への偏りを低減することができるので、車室内温度分布の均一化を図ることができる。
また、車端部15において、後位分岐ダクト140から供給される吹出量は少ないが、前位分岐ダクト130から供給される吹出量により不足分を補うことができるので、車端部15への調和空気の供給量不足を防ぐことができる。
【0041】
実施形態2:
[実施形態2の吹出不均衡構造]
この実施形態2では、上記吹出不均衡構造は、それぞれの空調装置180に備わる吸引口181に近接する車室内区域に設けられて調和空気の車室内への吹き出しを遮る遮断部材を有する構造である。それ以外の構成については実施形態1と同様であり、説明を省略する。即ち、
図10から
図13に示すように、空調装置180が設置される車端部15において、前位分岐ダクト130及び後位分岐ダクト140の調和空気吹出口153には、空調装置180の吸引口181に対応して遮断部材182が設置されている。
【0042】
これは、空調装置180の吸引口181の近傍においても前位分岐ダクト130及び後
位分岐ダクト140から調和空気を吹き出した場合には、調和空気が車室内空気と十分に
混合する前に
吸引口181に吸引されてしまい、車室内の温度調節が適切に行われない場
合も生じる。このような現象を防止するため、前位分岐ダクト130及び後位分岐ダクト
140に遮断部材182を設置している。
また、このような遮断部材182によれば、車長方向11において少なくとも吸引口1
81の区域では、前位分岐ダクト130及び後位分岐ダクト140から調和空気は吹き出
されず、調和空気の吹出不均衡が形成されることになる。
【0043】
[遮断部材の構成]
遮断部材182は、例えば板材である。遮断部材182は、車長方向11において、空調装置180の吸引口181の車長方向11における長さL以上で、長さLの最大で前後±30%(160%)以下の長さを有する。すなわち、遮断部材182の車長方向の長さは、吸引口181の長さLに対して100%以上160%以下である。
また、車幅方向12における遮断部材182の幅は、前位分岐ダクト130及び後位分岐ダクト140のそれぞれにおいて、車幅方向12の2つの吹出口153を覆う大きさである。このような遮断部材182は、
図10に示すように、車長方向11において吸引口181の長さLの領域は必ずカバーするように配置され、遮断部材182が長さLを超える長さを有する場合には、吸引口181の車長方向11における前、後の少なくとも一方へ延在させて配置される。その設置場所は、
図11及び
図12に示すように、前位分岐ダクト130及び後位分岐ダクト140の内側で、ディフューザー151の吹出口153に通じる入口開口152を塞ぐ場所である。あるいは、その設置場所は、
図13に示すように、前位分岐ダクト130及び後位分岐ダクト140の外側で、吹出口153を塞ぐ場所である。
【0044】
以上説明したように、前位分岐ダクト130及び後位分岐ダクト140に遮断部材182を設けることで、吹出口153から車室内へ吹き出された調和空気が空調装置180の吸引口181へ直接に流れることを防ぐことができ、調和空気と車室内空気とを効果的に混合させることができ、車室内温度分布を均一化することが可能となる。
【0045】
本実施形態では、上述のように、前位分岐ダクト130及び後位分岐ダクト140の両方の調和空気吹出口153において、空調装置180の吸引口181に対応して遮断部材182を設置した構成を示す。しかしながら、この構成に限定されず、遮断部材182は、前位分岐ダクト130及び後位分岐ダクト140における少なくとも一つの吹出口153に設置してもよい。
【0046】
実施形態3:
[実施形態3の吹出不均衡構造]
この実施形態3では、上記吹出不均衡構造は、実施形態1における空調ダクト100の構造を採り、さらに、それぞれのチャンバーダクト120は、
図14及び
図15に示すように、その内側に風量調整部材161を有する構造である。それ以外の構成については実施形態1と同様であり、説明を省略する。
【0047】
各チャンバーダクト120は、上述したように、車高方向13におけるその下部にディフューザー151を有し、ディフューザー151は、メインダクト110から流入した調和空気を車幅方向12における車外側18と車内側17とに分岐して吹き出す。この構成において、風量調整部材161は、チャンバーダクト120内に設けられ、ディフューザー151における車外側18及び車内側17における調和空気の吹き出しを均衡させる部材である。即ち、調和空気は、メインダクト110から送風開口114aを通り各チャンバーダクト120内へ流入することから、ディフューザー151の車内側17に位置する吹出口153aよりも車外側18に位置する吹出口153bからの方が吹出量が多くなる傾向にある。そこで、風量調整部材161を設けることで、ディフューザー151における車外側18及び車内側17における調和空気の吹き出しを均衡させる。この場合、車内側17及び車外側18における吹出口153a、吹出口153bからの調和空気の吹出量は、50%ずつとなるのが好ましいが、45%から55%の間であれば車室内温度分布に大きな偏りは発生しない。
【0048】
[風量調整板の構成]
このような風量調整部材161は、例えば板材であり、本実施形態3では
図15に示すように、車高方向13において、チャンバーダクト120の上面123から下方へ、チャンバーダクト120の高さHに対して例えば50%から65%の位置hまで延在する。また、風量調整部材161は、車幅方向12において、ディフューザー151の車内側17の吹出口153aに通じるチャンバーダクト120内の入口開口152aから、チャンバーダクト120の幅Wの例えば20%以下の長さgを隔てて、チャンバーダクト120内での調和空気の下流側つまり車外側18に配置される。さらに、車長方向11において、風量調整部材161は、チャンバーダクト120の送風開口114aの長さと一致又は略一致する長さを有し、各送風開口114aに対応した位置に配置される。
【0049】
以上説明した風量調整部材161を上述の場所に位置決めすることで、各チャンバーダクト120のディフューザー151の各吹出口153a、153bから、車内側17及び車外側18へ均等もしくは略均等に調和空気を吹き出すことが可能となる。よって、車室内温度分布の均一化を図ることができる。
【0050】
実施形態4:
[実施形態4の吹出不均衡構造]
この実施形態4では、上記吹出不均衡構造は、実施形態3で説明した風量調整部材161の変形例としての構造を採る。それ以外の構成については実施形態1と同様であり、説明を省略する。
図16から
図18に示すように、各チャンバーダクト120内のディフューザー151における車外側18の吹出口153bに通じる入口開口152bに、風量調整部材161としての閉止板162(
図17)あるいは多孔板163(
図18)を配置する。このように車外側18に対応する入口開口152bに閉止板162あるいは多孔板163を設けることで、入口開口152bの開口率を調整して、ディフューザー151における車内側17及び車外側18における調和空気の吹き出しを均衡させる。
【0051】
図17に示すように、閉止板162は、例えば板材であり、車長方向11において入口開口152bの一部を塞ぐ部材である。
図17では、入口開口152bの両端部分に閉止板162を設けているが、設置場所はこれに限定しない。また、
図17及び
図18において入口開口152a,152bは、それぞれ、各チャンバーダクト120内において車長方向11において連続する1本で形成され、あるいは
図12に示すように車長方向11に沿って所定間隔で飛び飛びに複数個が形成されてもよい。
また、
図18に示す多孔板163は、一例を示すものであり、孔の配置、配列を限定しているものではない。
【0052】
また、上述の説明では、閉止板162及び多孔板163は、チャンバーダクト120内の入口開口152bに配置する形態を例に採ったが、チャンバーダクト120外で、ディフューザー151における車外側18の吹出口153bに配置してもよい。
【0053】
以上説明したような閉止板162、多孔板163を設けることで、チャンバーダクト120のディフューザー151における車内側17及び車外側18での調和空気の吹き出しバランスを調整して均衡させることができる。よって、車室内温度分布の均一化を図ることができる。
【0054】
以上説明した各実施形態における車両空調ダクト100を有する車両空調システム200では、各空調装置180は、車長方向11における各車端部15に設置した形態であるが、
図20に示す車両空調システム201のように、例えば車長方向中央部16に1台の空調装置180を配置した構成を採ることもできる。
【0055】
また、以上説明した各実施形態における構成を適宜、組み合わせて構成することもできる。