(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように後席用ダンパを設けた場合には、その後席用ダンパをどのようにして駆動するかが問題となる。例えば、後席用ダンパ専用のアクチュエータを設けた場合にはコストが高騰するという問題がある。
【0007】
そこで、後席用ダクトを前席用ベント通路に接続して前席用ベント通路内の空調風を後席用ダクトに流すことが考えられる。これにより、前席用のベントダンパを利用して後席用ダクトも開閉できるので、後席用ダンパを省略することができ、コストの低減は可能である。しかしながら、ベントモード時にしか後席乗員へ空調風を供給できないので、後席乗員の快適性に劣る。
【0008】
また、前席用のベント通路を開閉するダンパに、後席用ダンパを連結することによって後席用ダンパ専用のアクチュエータを省略することが考えられるが、この場合も、前席のベントダンパが開かなければ後席乗員へ空調風を供給できないので、後席乗員へ空調風を供給する場面が限定され、快適性に劣る。
【0009】
また、後席用ダクトをエアミックス空間に連通させた状態で後席用ダンパを省略し、エアミックス空間内の空調風を常時後席ダクトに流通可能にすれば、後席乗員へ空調風を供給する場面を限定せずに済むが、このようにした場合には、例えば冬季、フロントガラスに付着している霜を溶かしたいときにも後席ダクトに温風が流れることになるので、デフロスタ通路への温風量を十分に確保できず、デフロスタ性能に劣る結果となる。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、後席に空調風を供給する場合に、専用のアクチュエータを不要にして低コスト化を図り、しかも、デフロスタ性能を低下させることなく、後席への空調風の供給できる場面を多くして後席乗員の快適性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では、後席用ダンパをデフロスタダンパに連動させるようにした。
【0012】
第1の発明は、空調風を車両のフロントガラス内面に向けて供給するためのデフロスタ通路と、前席乗員に供給するためのベント通路と、
前席乗員の足下及び後席乗員の足下に供給するためのヒート通路と、後席に供給するための後席用通路とを有するとともに、上記デフロスタ通路を開閉するデフロスタダンパと、上記後席用通路を開閉する後席用ダンパとを有する車両用空調装置において、
上記デフロスタ通路、上記ベント通路及び上記ヒート通路が形成されたケーシングと、上記ケーシングとは別体とされ、上記後席用通路を形成する後席用ダクトと、上記デフロスタダンパと上記後席用ダンパとを連結して該後席用ダンパを該デフロスタダンパと連動させる連結部材
とを備え、上記後席用ダンパは、上記後席用ダクトの内部に配設されるとともに、上記デフロスタダンパが上記デフロスタ通路を開くと上記後席用通路を閉じ、上記デフロスタダンパが上記デフロスタ通路を閉じると上記後席用通路を開くように、該デフロスタダンパと連動することを特徴とするものである。
【0013】
この構成によれば、デフロスタダンパを例えばアクチュエータ等によって開閉させる際、そのアクチュエータの駆動力を利用して後席用ダンパを開閉させることが可能になるので、後席用ダンパ専用のアクチュエータは不要になる。
【0014】
デフロスタダンパが閉状態となったときに後席用ダンパを開状態にすることにより、例えばベント通路が開く吹出モードやヒート通路が開く吹出モードで後席用通路に空調風を流すことが可能になるので、後席へ空調風を供給できる場面が多くなる。
【0015】
そして、デフロスタダンパが開状態となったときに後席用ダンパを閉状態にすることにより、デフロスタ通路への温風量を十分に確保することが可能になる。
【0016】
また、例えば、後席に空調風を供給する必要が無い場合には、後席用ダクトを非装着とすることで、後席用ダンパも非装着とすることが可能になる。よって、空調装置の熱交換器等を収容している本体部分に大きな構造変更を加える必要がなくなり、後席に空調風を供給する場合と、供給しない場合とを低コストで作り分けることが可能になる。
【0017】
第2の発明は、第1の発明において
、
上記デフロスタダンパを収容する
上記ケーシングと、
上記デフロスタダンパに駆動力を伝達するデフロスタダンパ動力伝達部材と、
上記後席用ダンパに駆動力を伝達する後席用ダンパ動力伝達部材とを備え、
上記デフロスタダンパ動力伝達部材は、上記ケーシングの車幅方向の一側に配置され、
上記後席用ダンパ動力伝達部材及び上記連結部材は、上記ケーシングの車幅方向の他側に配置されていることを特徴とするものである。
【0018】
この構成によれば、デフロスタダンパ動力伝達部材と、後席用ダンパ動力伝達部材及び連結部材とをケーシングの車幅方向に分けて配置しているので、製造時に互いに干渉するのを防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
第1の発明によれば、デフロスタダンパと後席用ダンパとを連動させるようにしたので、低コスト化を図ることができるとともに、後席へ空調風を供給できる場面が多くなって後席乗員の快適性を向上させることができ、しかも、デフロスタ性能を十分に確保できる。
【0020】
また、後席用通路を形成する後席用ダクトの内部に後席用ダンパを配設したので、後席に空調風を供給する空調装置と、供給しない空調装置とを低コストで作り分けることができる。
【0021】
第
2の発明によれば、デフロスタダンパ動力伝達部材と、後席用ダンパ動力伝達部材及び連結部材とをケーシングの車幅方向に分けて配置しているので、製造時に互いに干渉するのを防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0024】
図1は、本発明の実施形態にかかる車両用空調装置1を後側から見た斜視図である。車両用空調装置1が搭載される車両は、いわゆる乗用自動車であり、前席としての運転席及び助手席と、後席とが車室に設けられている。また、当該車両は、ハンドル(運転席)が左側に設けられている左ハンドル車である。
【0025】
尚、この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」といい、車両右側を単に「右」といい、車両左側を単に「左」というものとする。
【0026】
この車両用空調装置1は、自動車の車室前端部に配設されているインストルメントパネル(図示せず)内に搭載されている。
【0027】
車両用空調装置1は、図示しない送風ユニットと、空調ユニット20と、図示しない空調制御装置とを備えている。送風ユニットは、車両の助手席側(右側)に配置され、空調ユニット20は車幅方向(左右方向)中央部に配置されている。送風ユニットと空調ユニット20とは接続されている。また、送風ユニットと空調ユニット20とは、車両のダッシュパネル及びインストルメントパネルレインフォースメント等(共に図示せず)に固定されている。
【0028】
送風ユニットは、シロッコファンを備えた送風機を内蔵するとともに、内外気切替部を備えている。内外気切替部は、車室内の空気と車室外の空気との一方を選択して導入するためのものである。送風ユニットは、車室内の空気又は車室外の空気を空調ユニット20に送ることができるようになっている。
【0029】
図5に内部構造を示すように、空調ユニット20は、冷却用熱交換器としてのエバポレータ21と、加熱用熱交換器としてのヒータコア22と、エアミックスダンパ23と、デフロスタダンパ24と、ベントダンパ25と、ヒートダンパ26と、これらを収容する樹脂製のケーシング27とを備えている。
【0030】
図2〜
図4に示すように、ケーシング27は、前後方向の中間部で分割された前側ケーシング構成部材27aと、後側ケーシング構成部材27bとを備えている。
図5に示すように、前側ケーシング構成部材27aには、エバポレータ21が収容される一方、後側ケーシング構成部材27bには、ヒータコア22と、エアミックスダンパ23と、デフロスタダンパ24と、ベントダンパ25と、ヒートダンパ26が収容されるようになっている。
【0031】
図6にも示すように、後側ケーシング構成部材27bは、左右方向の中間部で分割された左側ケーシング構成部材27cと右側ケーシング構成部材27dとを備えている。つまり、ケーシング27は4分割構造である。後側ケーシング構成部材27bの分割面W(
図4に仮想線で示す)は略鉛直に延びる仮想面である。
【0032】
左側ケーシング構成部材27cにおける右側ケーシング構成部材27dとの結合側の端部(右端部)は全面に亘って開口している。また、右側ケーシング構成部材27dにおける左側ケーシング構成部材27cとの結合側の端部(左端部)も全面に亘って開口している。
【0033】
図4や
図6に示すように、右側ケーシング構成部材27dの左端部には、ビスB1がねじ込まれる複数のケーシング締結用ボス5が間隔をあけて形成されている。各ケーシング締結用ボス5は、左右方向に延びる柱状に形成されている。各ケーシング締結用ボス5の内部には、その左端面に開口して右側へ延びるビス螺合孔(図示せず)が形成されている。従って、ビスB1は、ケーシング締結用ボス5に対して左側から螺合することになる。
【0034】
また、左側ケーシング構成部材27cの右端部には、右側ケーシング構成部材27dのケーシング締結用ボス5に対応する部位にビス挿通孔(図示せず)が形成されている。このビス挿通孔がケーシング締結用ボス5のビス螺合孔の左側に位置した状態で、ビス螺合孔と一致するようになっている。ビスB1をビス挿通孔に挿通してケーシング締結用ボス5のビス螺合孔にねじ込むことで左側ケーシング構成部材27cと右側ケーシング構成部材27dとが互いに締結されて一体化する。
【0035】
前側ケーシング構成部材27a及び後側ケーシング構成部材27bも同様にビス(図示せず)を用いて互いに締結固定されている。
【0036】
図5に示すように、ケーシング27の内部には、空調用空気が流通する空気通路Rが形成されている。エバポレータ21は、前側ケーシング構成部材27aの内部において空気通路R内に収容されている。
【0037】
空気通路Rの一部を構成している冷却通路R1内を流れる空調用空気がエバポレータ21を通過することによって冷媒と空調用空気とが熱交換し、空調用空気が冷却され、この時にエバポレータ21の表面に結露した結露水は、チューブやフィンを伝って下方へ流れる。
【0038】
図2に示すように、ケーシング27の底壁部には、エバポレータ21に結露して滴下した結露水を収集して排出するためのドレン部Dが設けられている。ドレン部Dには、結露水を車室外へ排出するためのドレンホースHが接続されている。
【0039】
図5に示すように、ケーシング27のエアミックス空間R3の上方には、デフロスタ通路R4が形成されている。デフロスタ通路R4は、エアミックス空間R3に連通している。デフロスタ通路R4の下流端は、ケーシング27の上壁部において前後方向中央部近傍に開口するデフロスタ吹出口32である。このデフロスタ吹出口32には、図示しないがインストルメントパネルのデフロスタノズルまで延びるデフロスタダクトが接続されている。デフロスタノズルは、フロントガラスの内面に向けて空調風を供給するためのものである。
【0040】
また、ケーシング27のエアミックス空間R3の上方には、デフロスタ通路R4よりも後側に、ベント通路R5が形成されている。ベント通路R5もエアミックス空間R3に連通している。ベント通路R5の下流端は、ケーシング27の上壁部においてデフロスタ吹出口32よりも後側に開口するベント吹出口34である。このベント吹出口34には、図示しないがインストルメントパネルのベントノズルまで延びるベントダクトが接続されている。ベントノズルは、乗員の主に上半身に空調風を供給するためのものであり、インストルメントパネルの左右両端部と左右方向中央部とにそれぞれ設けられている。
【0041】
ケーシング27内部の後側には、ヒート通路R6が形成されている。ヒート通路R6もエアミックス空間R3に連通している。ヒート通路R6は、ケーシング27の下側へ向かって延びている。ヒート通路R6の下流端には、ケーシング27の後部に形成された前席用ヒート吹出口35と後席用ヒート吹出口36とが連通している。前席用ヒート吹出口35には、前席乗員の足下近傍まで延びる前席用ヒートダクト(図示せず)が接続される。また、後席用ヒート吹出口36には、後席乗員の足下近傍まで延びる後席用ヒートダクト(図示せず)が接続される。
【0042】
さらに、
図5及び
図6に示すように、ケーシング27の後壁部には、車両の後席へ供給する空調風が吹き出す後席用吹出口37が形成されている。後席用吹出口37は、ケーシング27の後壁部の上部近傍に開口しており、エアミックス空間R3に連通している。後席用吹出口37は左右方向に細長い形状となっており、左側ケーシング構成部材27cから右側ケーシング構成部材27dに亘っている。ケーシング27の後壁部における後席用吹出口37の周囲には、環状に延びる凹条部37aが後席用吹出口37を囲むように形成されている。
【0043】
ケーシング27の後壁部には、後席用吹出口37の外方において該吹出口37の左端部及び右端部近傍に左側及び右側係合孔31a,31bが形成されている。左側及び右側係合孔31a,31bには、後述する後席用ダクト50の左側及び右側係合爪(係合部)55a,55bがそれぞれ係合する。左側及び右側係合孔31a,31bは、凹条部37aよりも外方に位置しており、前後方向に貫通する貫通孔で構成されている。また、左側及び右側係合孔31a,31bは上下方向に長い略矩形状とされている。
【0044】
図6に示すように、ケーシング27の後壁部には、後述の後席用ダクト50を締結固定するためのダクト締結用ボス6が上側と下側とにそれぞれ形成されている。各ダクト締結用ボス6は、ケーシング締結用ボス5と同様に左右方向に延びる柱状に形成され、その左端面に開口して右側へ延びるビス螺合孔6aを有している。また、各ダクト締結用ボス6は、左側ケーシング構成部材27cと右側ケーシング構成部材27cdとの分割面Wよりも右側に位置している。つまり、ダクト締結用ボス6は、分割面Wに対し左右方向にオフセット配置されている。
【0045】
図5に示すように、空気通路Rの冷却通路R1の下流部は、後側ケーシング構成部材27b内において上下に分岐しており、後側ケーシング構成部材27b内の隔壁38の上側に形成された上側開口部29と、隔壁38の下側に形成された下側開口部28とに連通している。
【0046】
下側開口部28には、空調用空気を加熱する加熱通路R2が接続されている。この加熱通路R2も空気通路Rの一部を構成するものである。上側開口部29には、空気通路Rの一部を構成しているエアミックス空間R3が接続されている。加熱通路R2の下流側は、エアミックス空間R3に接続されている。
【0047】
エアミックスダンパ23は、左右方向に延びる回動軸23aを有している。回動軸23aの両端部は、ケーシング27の左右両側壁を貫通しており、該ケーシング27に回動可能に支持されている。
【0048】
エアミックスダンパ23は、回動軸23a周りに回動して上側開口部29及び下側開口部28を開閉するとともに、加熱通路R2の下流端開口30も開閉するように構成されており、上側開口部29を全開にした状態で下側開口部28及び加熱通路R2の下流端開口30を全閉にし、一方、上側開口部29を全閉にした状態で下側開口部28及び加熱通路R2の下流端開口30を全開にする。
【0049】
図1及び
図2に示すように、エアミックスダンパ23の回動軸23aの左端部には、リンク40が固定されている。このリンク40は、回動軸23aの径方向に延びている。
【0050】
ケーシング27の左側壁部には、エアミックスダンパ23を駆動するためのエアミックス用アクチュエータ41が取り付けられている。エアミックス用アクチュエータ41の出力軸には、アーム(図示せず)が固定されており、このアームが、エアミックスダンパ23のリンク40に係合している。
【0051】
従って、エアミックス用アクチュエータ41の出力はアームを介してリンク40に伝達し、エアミックスダンパ23を回動させるように作用する。エアミックス用アクチュエータ41は、空調制御装置に接続されており、空調制御装置によって制御され、エアミックスダンパ23による各開口部28,29,30の開度を任意に変更できるようになっている。
【0052】
図5に示すように、デフロスタダンパ24は、デフロスタ通路R4を開閉するものであり、左右方向に延びる回動軸24aを有している。回動軸24aの両端部は、ケーシング27の左右両側壁を貫通しており、該ケーシング27に回動可能に支持されている。
【0053】
図3に示すように、デフロスタダンパ24の回動軸24aの右端部には、リンク(デフロスタダンパ動力伝達部材)42が固定されている。リンク42は、デフロスタダンパ24に駆動力を伝達するための部材である。
【0054】
このリンク42は、回動軸24aの径方向に延びている。デフロスタダンパ24は、回動軸24a周りに回動することでデフロスタ通路R4を閉状態と開状態とに切り替えるようになっている。デフロスタダンパ24の開方向は、左側から見たとき(
図2に示す)、時計回りであり、閉方向は、同方向から見たときに反時計回りである。
【0055】
図2に示すように、デフロスタダンパ24の回動軸24aの左端部には、後述する後席用ダンパ57に駆動力を伝達するための連結リンク(後席用ダンパ動力伝達部材)44が固定されている。
【0056】
この連結リンク44も右側のリンク42と同様に回動軸24aの径方向に延びている。連結リンク44の先端部には、係合孔44aが形成されている。連結リンク44は、デフロスタダンパ24がその回動範囲内にあればどの回動位置にあるときにも下方向へ延びるようになっている。
【0057】
図5に示すように、ベントダンパ25は、ベント通路R5を開閉するものであり、左右方向に延びる回動軸25aを有している。回動軸25aの両端部は、ケーシング27の左右両側壁を貫通しており、該ケーシング27に回動可能に支持されている。ベントダンパ25の回動軸25aの右端部には、リンク(図示せず)が固定されている。このリンクは、回動軸25aの径方向に延びている。ベントダンパ25は、回動軸25a周りに回動することでベント通路R5を閉状態と開状態とに切り替えるようになっている。
【0058】
ヒートダンパ26は、ヒート通路R6を開閉するものであり、左右方向に延びる回動軸26aを有している。回動軸26aの両端部は、ケーシング27の左右両側壁を貫通しており、該ケーシング27に回動可能に支持されている。ヒートダンパ26の回動軸26aの右端部には、リンク(図示せず)が固定されている。このリンクは、回動軸26aの径方向に延びている。ヒートダンパ26は、回動軸26a周りに回動することでヒート通路R6を閉状態と開状態とに切り替えるようになっている。
【0059】
図3に示すように、ケーシング27の右側壁部には、吹出モード切替用のメインリンク47が設けられている。メインリンク47は、円に近い形状の板材からなり、ケーシング27の右側壁部に回動可能に取り付けられている。メインリンク47は、デフロスタダンパ24、ベントダンパ25及びヒートダンパ26のリンク42に係合する溝47aを有している。
【0060】
また、ケーシング27の右側壁部には、吹出モード切替用アクチュエータ48が取り付けられている。吹出モード切替用アクチュエータ48は空調制御装置に接続されている。吹出モード切替用アクチュエータ48の出力軸には、上記メインリンク47が固定されている。従って、吹出モード切替用アクチュエータ48の出力は、メインリンク47を介してデフロスタダンパ24、ベントダンパ25及びヒートダンパ26のリンク42に伝達し、デフロスタダンパ24、ベントダンパ25及びヒートダンパ26を回動させるように作用する。
【0061】
メインリンク47の溝47aの形状によってデフロスタダンパ24、ベントダンパ25及びヒートダンパ26の回動角度や回動タイミング等が設定されるようになっている。
【0062】
この実施形態では、デフロスタダンパ24を開いてベントダンパ25及びヒートダンパ26を閉じるデフロスタモード、ベントダンパ25を開いてデフロスタダンパ24及びヒートダンパ26を閉じるベントモード、ヒートダンパ26を開いてデフロスタダンパ24及びベントダンパ25を閉じるヒートモード、デフロスタダンパ24及びヒートダンパ26を開いてベントダンパ25を閉じるデフヒートモード、ベントダンパ25及びヒートダンパ26を開いてデフロスタダンパ24を閉じるバイレベルモード等の吹出モードに切り替え可能となっている。吹出モードの切替は、乗員が空調コントロールパネルの操作によって行うことができる他、空調制御装置が室温や設定温度等に基づいて切り替えることもできるようになっている。
【0063】
また、
図2に示すように、ヒータコア22は、加熱通路R2に配設されている。ヒータコア22の内部にはエンジン冷却水が循環するようになっている。このエンジン冷却水と加熱通路R2内を流れる空調用空気とが熱交換することによって空調用空気が加熱される。
【0064】
図1に示すように、後席用吹出口37には、後席用ダクト50が接続される。
図7〜
図9に示すように後席用ダクト50は全体として略上下方向に延びており、
図5に示すように内部の通路は後席用ベント通路(後席用通路)R7とされている。この後席用ベント通路R7は、後席用吹出口37を介してエアミックス空間R3に連通している。
【0065】
図8に示すように、後席用ダクト50の左右方向の寸法は上部が最も長く、下側へ行くほど短くなるように設定されており、下部が最も短い。また、
図9に示すように、後席用ダクト50の前後方向の寸法は、上部が最も短く設定され下部が最も長く設定されている。
【0066】
図8に示すように、後席用ダクト50の前壁部の上部には、後席用吹出口37に接続される上側開口部53が形成されている。上側開口部53は、後席用吹出口37に対応して左右方向に細長い形状となっている。上側開口部53の周囲には、前方へ突出して上側開口部53を囲むように環状に延びる突条部53aが形成されている。この突条部53aは、上記ケーシング27の凹条部37aに嵌入するようになっている。突条部53aが凹条部37aに嵌入することにより空調風の漏れが抑制される。
【0067】
後席用ダクト50の前壁部の上部には、左右両端部にそれぞれ左側及び右側係合爪55a,55bが前方へ向けて突出するように形成されている。左側係合爪55aは、突条部53aの左縁部よりも左側へ突出しており、ケーシング27の左側係合孔31aに対応するように配置されている。右側係合爪55bは、突条部53aの右縁部よりも右側へ突出しており、ケーシング27の右側係合孔31bに対応するように配置されている。
【0068】
左側及び右側係合爪55a,55bは、左側及び右側係合孔31a,31bに後側から挿入された状態で左側及び右側係合孔31a,31bの周縁部に係合する。これにより、後席用ダクト50が仮保持されるようになっている。
【0069】
図9に示すように、後席用ダクト50の下部は後方へ屈曲し、後側に開口する下側開口部54(
図7等に示す)を有している。下側開口部54には、図示しないフロアダクトの上流端部が接続されるようになっている。このフロアダクトはフロアの上面に沿って後席近傍まで延び、開口している。
【0070】
図7や
図8に示すように、後席用ダクト50は、後側ケーシング構成部材27bと同様に左右方向の中間部において左側ダクト構成部材51と右側ダクト構成部材52とに分割されている。
【0071】
右側ダクト構成部材52の左端部には、複数の係合爪52aが間隔をあけて設けられている。一方、左側ダクト構成部材51の右端部には、右側ダクト構成部材52の係合爪52aが係合する複数の係合孔51aが形成されている。
【0072】
また、右側ダクト構成部材52の上端部及び下端部には、ケーシング27に締結される右側締結板52bがそれぞれ形成されている。右側締結板52bは、前後方向に延びるとともに、後席用ダクト50外へ向けて延びている。右側締結板52bには、左右方向に貫通するビス挿通孔52cが形成されている。このビス挿通孔52cは、ダクト締結用ボス6のビス螺合孔6aと一致するようになっている。
【0073】
また、
図7に示すように、左側ダクト構成部材51の上端部及び下端部には、ケーシング27に締結される左側締結板51bがそれぞれ形成されている。左側締結板51bは、右側ダクト構成部材52の右側締結板52bに沿って延びている。左側締結板51bには、左右方向に貫通するビス挿通孔51cが右側ダクト構成部材52のビス挿通孔52cと一致するように形成されている。
【0074】
右側ダクト構成部材52の右側締結板52b及び左側ダクト構成部材51の左側締結板51bは、ビスB2によってダクト締結用ボス6に締結されるようになっている。
【0075】
図5に示すように、後席用ダクト50の内部には、後席用ダンパ57が収容されている。後席用ダンパ57は、後席用ダクト50の上側開口部53と下側開口部54との間において上側開口部53に近い部位に設けられており、左右方向に延びる回動軸57aと、回動軸57aの径方向両側へ延びる2枚の閉塞板部57b,57bとを有している。回動軸57aは、後席用ダクト50の左右両側壁部を貫通した状態で該両側壁部に回動可能に支持されている。
【0076】
後席用ダンパ57は、閉塞板部57b,57bが上下方向に延びる姿勢となったときに(
図5に示す)後席用ベント通路R7を開き、閉塞板部57b,57bが斜め上下方向に延びる姿勢となったときに後席用ベント通路R7を閉じる。
【0077】
図1及び
図2に示すように、後席用ダンパ57の回動軸57aの左端部には、リンク60が固定されている。リンク60は、回動軸57aの径方向に延びている。リンク60の先端部には、係合孔60aが形成されている。リンク60は、後席用ダンパ57がその回動範囲内にあればどの回動位置にあるときにも下方向へ延びるようになっている。
【0078】
後席用ダンパ57の回動方向は、デフロスタダンパ24の回動方向と反対である。すなわち、開方向は、左側から見たとき(
図2に示す)反時計回りであり、閉方向は、同方向から見たときに時計回りである。
【0079】
図1や
図2に示すように、この空調装置1には、後席用ダンパ57のリンク60とデフロスタダンパ24の連結リンク44とを連結してデフロスタダンパ24の開閉力を後席用ダンパ57に伝達して後席用ダンパ57をデフロスタダンパ24と連動させるためのロッド(連結部材)61が設けられている。
【0080】
ロッド61は、デフロスタダンパ24の開閉力によっては容易に変形しない程度の剛性を有する金属製であり、ほぼ直線状に延びている。ロッド61の一端部は、デフロスタダンパ24の連結リンク44の係合孔44aに挿入されて該係合孔44aから抜けないように係合している。一方、ロッド61の他端部は、後席用ダンパ57のリンク60の係合孔60aに挿入されて該係合孔60aから抜けないように係合している。
【0081】
ロッド61は、デフロスタダンパ24が開状態にあるときに、後席用ダンパ57を閉状態にし、かつ、デフロスタダンパ24が閉状態にあるときに、後席用ダンパ57を開状態にするように長さが設定されている。これにより、後席用ダンパ専用のアクチュエータを設けることなく、吹出モード切替用アクチュエータ48を利用して後席用ダンパ57を開閉させることができる。
【0082】
次に、上記のように構成された車両用空調装置1の動作について説明する。
【0083】
送風ユニットから送風された空調用空気は、ケーシング27の空気通路Rにおける冷却通路R1に流入してエバポレータ21を通過する。また、エアミックスダンパ23の回動位置に応じて加熱通路R2に流入する空気量が決定される。加熱通路R2に流入した空気はヒータコア22を通過して加熱されてエアミックス空間R3に流入し、一方、加熱通路R2に流入しなかった空気は冷却通路R1からエアミックス空間R3へ直接流入する。
【0084】
エアミックス空間R3内で生成された調和空気はデフロスタ通路R4、ベント通路R5、ヒート通路R6及び後席用ベント通路R7へ向かって流れる。このとき、デフロスタダンパ24、ベントダンパ25及びヒートダンパ26の開閉状態によって吹出モードが設定されているので、その吹出モードに応じて車室の各部に調和空気が供給される。
【0085】
例えば、デフロスタモードとされている場合には、デフロスタダンパ24が開くことになるが、このデフロスタダンパ24の動きに連動して後席用ダンパ57は閉じる。これにより、エアミックス空間R3の空調風が後席用ベント通路R7へ流れなくなるので、デフロスタ吹出口32へ向かう空調風の量を多く確保でき、従って、フロントウインドの内面に十分な量の空調風を供給でき、高いデフロスタ性能を得ることができる。
【0086】
一方、ベントモードや、ヒートモード、バイレベルモードでは、デフロスタダンパ24が閉じることになるが、このとき、デフロスタダンパ24の動きに連動して後席用ダンパ57は開く。これにより、複数の吹出モードで後席へ空調風を供給することが可能になるので、後席乗員の快適性を向上させることができる。
【0087】
以上説明したように、この実施形態にかかる車両用空調装置1によれば、デフロスタダンパ24を吹出モード切替用アクチュエータ48によって開閉させる際、そのアクチュエータ48の駆動力を利用して後席用ダンパ57を開閉させることが可能になるので、後席用ダンパ専用のアクチュエータは不要になる。そして、デフロスタダンパ24が閉状態となったときに後席用ダンパ57を開状態にすることにより、複数の吹出モードで後席に空調風を供給することができるので、後席へ空調風を供給できる場面が多くなる。さらに、デフロスタダンパ24が開状態となったときに後席用ダンパ57を閉状態にすることにより、デフロスタ通路R4への温風量を十分に確保することが可能になる。
【0088】
したがって、車両用空調装置1の低コスト化を図ることができるとともに、後席へ空調風を供給できる場面が多くなって後席乗員の快適性を向上させることができ、しかも、デフロスタ性能を十分に確保できる。
【0089】
また、後席に空調風を供給する必要が無い車両用空調装置1の場合には、後席用ダクト50を非装着とすることで、後席用ダンパ57も非装着とすることが可能になる。この場合、ケーシング27の後席用吹出口37は不要になるが、ケーシング27の成形型に入れ子を設けて後席用吹出口37を成形しないようにすればよい。よって、空調装置1のエバポレータ21、ヒータコア22等を収容しているケーシング27には大きな構造変更を加える必要がなくなり、後席に空調風を供給する車両用空調装置1と、供給しない車両用空調装置1とを低コストで作り分けることができる。
【0090】
また、デフロスタダンパ24のリンク42をケーシング27の右側に配置し、連結リンク44及びロッド61をケーシング27の左側に配置している。このように、デフロスタダンパ24のリンク42と、連結リンク44及びロッド61とを車幅方向に分けて配置しているので、製造時に互いに干渉するのを防止することができる。
【0091】
尚、上記実施形態では、金属製のロッド61を用いて後席用ダンパ57をデフロスタダンパ24と連動させるようにしているが、これに限らず、例えば、樹脂製のリンクや、プッシュプルワイヤ等を用いて後席用ダンパ57をデフロスタダンパ24と連動させるようにしてもよい。
【0092】
また、デフロスタダンパ24のリンク42をケーシング27の左側に配置し、連結リンク44及びロッド61をケーシング27の右側に配置してもよい。また、リンク42、連結リンク44及びロッド61をケーシング27の左側にまとめて配置してもよいし、右側にまとめて配置してもよい。
【0093】
また、上記実施形態では、車両が左ハンドル車の場合について説明したが、右ハンドル車の場合には、車両用空調装置1を左右対称に構成すればよい。この場合、後席用ダクト50は左右対称形状に成形しておくことで、左ハンドル車用の車両用空調装置1にも、右ハンドル車用の車両用空調装置1にも同じ後席用ダクト50を使用することができ、低コスト化を図ることができる。
【0094】
また、上記実施形態では、後席用ダクト50を左右2分割構造にしているが、これに限らず、一体成形品であってもよい。
【0095】
また、本発明は、送風機、熱交換器が車幅方向中央部にまとめて配設されたフルセンタ型の車両用空調装置に別体のダクトを組み付ける場合にも適用することができる。
【0096】
また、上記実施形態では、デフロスタダンパ24を吹出モード切替用アクチュエータ48によって駆動するようにしているが、これに限らず、例えば、乗員の操作力をワイヤ等によって伝達することにより駆動するようにしてもよい。