(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
移動体の所定位置に取り付けられ、移動体外部に配された指標を含む画像を撮像するカメラからの撮像画像を利用して、当該カメラのパン角、チルト角およびロール角における取り付け位置のずれを較正する較正処理装置であって、
前記カメラによる撮像画像に対して、移動量の目安を示すための目盛を有する較正用オブジェクトを重畳した重畳画像を生成する画像重畳部と、
前記重畳画像において、前記較正用オブジェクトが移動され、前記指標と前記較正用オブジェクトの全部又は一部が略重なるときの較正用オブジェクトの位置に基づいて、前記カメラの取り付け位置のずれを較正するパラメータを算出する演算部と、
を備えることを特徴とする較正処理装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カメラの取り付け位置のずれを較正するパラメータを取得する際には、想定画像と実画像とのずれ量を調整するために、想定画像を移動させて想定画像を実画像に一致させる必要がある。しかし、ユーザが想定画像の移動を指示してからその移動が反映されるまでにはタイムラグがあるため、想定画像の上下左右方向、および回転方向の移動指示が複数回にわたる場合には、較正処理に時間がかかるという問題があった。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、カメラを較正する際の操作が簡便となり、較正に要する時間を短縮することが可能な較正処理装置、カメラ較正装置、カメラシステム、およびカメラ較正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るカメラ較正装置は、移動体の所定位置に取り付けられ、移動体外部に配された指標を含む画像を撮像するカメラと、前記カメラによる撮像画像に対して、移動量の目安を示すための目盛を有する較正用オブジェクトを重畳した重畳画像を生成する画像重畳部と、前記重畳画像において、前記較正用オブジェクトが移動され、前記指標と前記較正用オブジェクトの全部又は一部が略重なるときの較正用オブジェクトの位置に基づいて、パン角、チルト角およびロール角における前記カメラの取り付け位置のずれを較正するパラメータを算出する演算部(後述する実施形態ではCPU124)と、を備えることを特徴とする。
【0007】
さらに、本発明に係るカメラ較正装置において、前記較正用オブジェクトの目盛の間隔は、当該較正用オブジェクトの所定回数分の移動操作に対応する量であることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係るカメラ較正装置は、移動体の所定位置に取り付けられ、移動体外部に配された指標を含む画像を撮像するカメラと、前記カメラによる撮像画像に対して、所定の幅のマーカーが付された一端調整部および他端調整部を有する較正用オブジェクトを重畳した重畳画像を生成する画像重畳部と、前記重畳画像において、前記較正用オブジェクトが移動され、前記指標の一端および他端が、それぞれ前記一端調整部および他端調整部のマーカーの所定の幅内に収まるときの較正用オブジェクトの位置に基づいて、パン角、チルト角およびロール角における前記カメラの取り付け位置のずれを較正するパラメータを算出する演算部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るカメラ較正装置は、移動体の所定位置に取り付けられ、移動体外部に配された指標を含む画像を撮像するカメラと、前記
カメラによる撮像画像に対して、一端調整部、および回転軸調整部を有する較正用オブジェクトを重畳した重畳画像を生成する画像重畳部と、前記重畳画像において、前記較正用オブジェクトが移動され、前記指標の端部が前記一端調整部と略一致した後に、前記指標の前記端部を除く部分が前記回転軸調整部と略重なるときの較正用オブジェクトの位置に基づいて、パン角、チルト角およびロール角における前記カメラの取り付け位置のずれを較正するパラメータを算出する演算部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るカメラ較正装置は、移動体の所定位置に取り付けられ、移動体外部に配された中央部にマーカーを有する指標を含む画像を撮像するカメラと、前記カメラによる撮像画像に対して、マーカー調整部、および回転軸調整部を有する較正用オブジェクトを重畳した重畳画像を生成する画像重畳部と、前記重畳画像において、前記較正用オブジェクトが移動され、前記指標のマーカーが前記マーカー調整部と略一致した後に、前記指標の前記マーカーを除く部分が前記回転軸調整部と略重なるときの較正用オブジェクトの位置に基づいて、パン角、チルト角およびロール角における前記カメラの取り付け位置のずれを較正するパラメータを算出する演算部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係るカメラ較正装置は、移動体の所定位置に取り付けられ、移動体外部に配された指標を含む画像を撮像するカメラと、前記カメラによる撮像画像に対して、両端調整部、および回転軸を調整するための目盛線を有する較正用オブジェクトを重畳した重畳画像を生成する画像重畳部と、前記重畳画像において、前記較正用オブジェクトが移動され、前記指標が前記目盛線と略平行になった後に、前記指標の両端部がそれぞれ前記両端調整部と略一致するときの較正用オブジェクトの位置に基づいて、パン角、チルト角およびロール角における前記カメラの取り付け位置のずれを較正するパラメータを算出する演算部と、を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係るカメラ較正装置は、移動体の所定位置に取り付けられ、移動体外部に配された指標を含む画像を撮像するカメラと、前記カメラによる撮像画像に対して、上線部、下線部、左線部、および右線部を有する較正用オブジェクトを重畳した重畳画像を生成する画像重畳部と、前記重畳画像において、前記上線部、下線部、左線部、および右線部をそれぞれ独立して移動させて、前記指標が前記上線部、下線部、左線部、および右線部によって囲まれた領域内に収まるときの較正用オブジェクトの位置に基づいて、パン角、チルト角およびロール角における前記カメラの取り付け位置のずれを較正するパラメータを算出する演算部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
また、上記課題を解決するため、本発明に係るカメラ較正方法は、移動体の所定位置に取り付けられたカメラにより、移動体外部に配された指標を含む画像を撮像するステップと、前記
カメラによる撮像画像に対して、移動量の目安を示すための目盛を有する較正用オブジェクトを重畳した重畳画像を生成するステップと、前記重畳画像において、前記較正用オブジェクトが移動され、前記指標と前記較正用オブジェクトの全部又は一部が略重なるときの較正用オブジェクトの位置座標を取得し、該位置座標から前記カメラの取り付け位置の較正パラメータを算出するステップと、を含むことを特徴とする。
【0014】
また、上記課題を解決するため、本発明に係る較正処理装置は、移動体の所定位置に取り付けられ、移動体外部に配された指標を含む画像を撮像するカメラからの撮像画像を利用して、当該カメラのパン角、チルト角およびロール角における取り付け位置のずれを較正する較正処理装置であって、前記カメラによる撮像画像に対して移動量の目安を示すための目盛を有する較正用オブジェクトを重畳した重畳画像を生成する画像重畳部と、前記重畳画像において、前記較正用オブジェクトが移動され、前記指標と前記較正用オブジェクトの全部又は一部が略重なるときの較正用オブジェクトの位置に基づいて、前記カメラの取り付け位置のずれを較正するパラメータを算出する演算部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、上記課題を解決するため、本発明に係るカメラシステムは、移動体の所定位置に取り付けられ、移動体外部に配された指標を含む画像を撮像するカメラと、前記カメラによる撮像画像に対して、移動量の目安を示すための目盛を有する較正用オブジェクトを重畳した重畳画像を生成する画像重畳部と、前記移動体内に設けられ、前記重畳画像が表示される表示部と、前記重畳画像における、前記較正用オブジェクトに対してその表示位置を移動させる指示を行う指示部と、前記指標と前記較正用オブジェクトの全部又は一部が略重なるときの較正用オブジェクトの位置に基づいて、パン角、チルト角およびロール角における前記カメラの取り付け位置のずれを較正するパラメータを算出する演算部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、カメラを較正する際の操作が簡便となり、較正に要する時間を短縮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明による一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明による一実施形態のカメラシステムを移動体(例えば、車両)に搭載したときのシステムの構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、移動体のシステムは、カメラシステム1と、システム全体の動作を制御するCPU2と、バス3と、指示部5と、センサ6とを備える。カメラシステム1は、カメラ較正装置10と、表示部4とを備える。カメラ較正装置10は、カメラ11と、較正処理装置12とを備える。較正処理装置12は、画像処理部121と、画像重畳部122と、画像出力部123と、CPU124と、記憶部125とを備える。
【0020】
カメラ11は、CMOS,CCDなどのイメージセンサを有しており、レンズを通して入射した被写体光を電気信号に変換し、被写体の撮像画像を生成する。カメラ11は、移動体の所定位置に取り付けられる。
図17は、カメラ11を取り付けた移動体を示す図である。本実施形態では、
図17に示すように、カメラ11は移動体100後方のバンパー44付近に取り付けられ、移動体100の後方の映像を撮影する。図中の領域Aは、カメラ11によって映像が撮影される領域である。
【0021】
表示部4は、ユーザにより駐車モードが指示された場合には、カメラシステム1によって生成された映像を表示する。駐車モードとは、移動体100を運転するユーザから見えづらい移動体100後方の領域A内の映像を表示部4に表示させることによって、駐車を円滑に行えるように手助けするためのモードである。また、移動体100後方の領域A内の映像に、更に移動体100が通過する予測軌跡を重畳して表示し、より円滑に駐車を行えるようにすることもできる。
【0022】
また、ユーザによりカメラ較正モードが指示された場合にも、カメラシステム1によって生成された映像を表示する。カメラ較正モードとは、移動体100後方の領域A内に指標となる物体又は図形を配置し、カメラ11により得られる指標の映像を利用して、ユーザがカメラ11の取り付け位置を較正するためのモードである。このカメラ較正モードは、移動体100の生産ラインで移動体100にカメラ11を取り付ける際、あるいは移動体100に振動が加わるなどの理由によりカメラ11の位置がずれた際に用いられる。具体的な較正方法については後述する。
【0023】
なお、表示部4は、ユーザによりナビゲーションモードが指示された場合には、ナビゲーションシステムにより得られた目的地までのルート案内図を表示し、テレビモードが指示された場合には、テレビ受信機により得られたテレビ映像を表示することも可能である。
【0024】
指示部5は、表示部4に重畳された較正用オブジェクトの位置を調整するためのユーザインターフェースであり、指示部5を操作することにより、較正用オブジェクトの位置を上下左右方向および回転方向に移動させることができる。指示部5は、ユーザの操作により得られたオブジェクト移動信号を、バス3を介してCPU124に出力する。調整操作が終了したときには、指示部5は、調整終了信号を、バス3を介してCPU124に出力する。
【0025】
センサ6は、車速を検知する車速センサ、シフトレバーの位置を検知するギアセンサ、ステアリングの操舵角を検知する舵角センサを含む。センサ6は、各種センサから得られたセンサ信号を、バス3を介してCPU124およびCPU2に出力する。
【0026】
記憶部125には、既知の値となるカメラ11の位置座標および指標の位置座標が記憶される。
【0027】
CPU124は、指示部5により得られたオブジェクト移動信号に基づいて較正用オブジェクトの表示位置を決定し、画像重畳部122に重畳指示を行う。また、CPU124は、指示部5から較正終了の指示を受けたとき、較正終了時の較正用オブジェクトの位置座標を取得するとともに、記憶部125に記憶されているカメラ11の位置座標および指標の位置座標を取得し、これらの位置座標に基づいてカメラ11の取り付け位置のずれを較正する較正パラメータ(パン角、チルト角、およびロール角)を算出する。また、CPU124は、センサ6により得られたセンサ信号に基づいて移動体100の予測軌跡の表示位置を決定し、画像重畳部122に重畳指示を行う。
【0028】
画像処理部121は、カメラ11により生成された撮像画像に対してA/D変換、ノイズ低減処理、画像処理などを施してデジタル画像を生成し、画像重畳部122に出力する。
【0029】
画像重畳部122は、CPU124からの指示に基づいて、画像処理部121により生成されたデジタル画像上の所定の位置に画像を重畳して重畳画像を生成し、画像出力部123に出力する。重畳させる画像は、カメラ11の取り付け位置を較正する際に用いられる較正用オブジェクト、または移動体100が後退時に自身が通過する予想領域を示し、駐車のサポートに用いられる予測軌跡などである。
【0030】
画像出力部123は、画像重畳部122により生成された重畳画像を、表示部4の表示デバイスに適したフォーマット(例えば、NTSCなど)に変換し、表示部4に出力する。
【0031】
図2は、ユーザにより駐車モードが指示された場合に、表示部4に表示される画像の一例を示す図である。表示部4には、指標41と、較正用オブジェクト42とが表示される。また、カメラ11が
図12に示すようにバンパー43付近に取り付けられた場合には、バンパー43の端部も表示される。
【0032】
指標41は、移動体100を予め定められた停止位置に正確に停止した場合における移動体100の後端から所定の距離(例えば、1m)に配置される物体又は図形であり、例えば、長方形状の板、または路面上に描かれた白線である。つまり、カメラ11の取り付け角度が正確であれば、移動体100と指標41との位置関係が特定されているため、カメラ11により撮影された指標41は表示部4の画面上必ず特定位置に映ることとなる。もし、指標41が特定位置からずれた位置に映る場合には、指示部5により、較正用オブジェクト42を指標41まで移動させることにより、カメラ11のカメラ取り付け角度のずれを特定する較正パラメータを取得することができる。
【0033】
図3は、指示部5の外観図の一例を示す図である。
図2に示すように、指示部5は、上指示部51と、左指示部52と、下指示部53と、右指示部54と、左回転部55と、右回転部56とを有する。上指示部51、左指示部52、下指示部53、右指示部54、右回転部55、及び左回転部56は車両内の表示部4近傍に設けた機械スイッチであってもよいし、表示部4に重ねて配されるタッチパネル上に表示されるオブジェクトであってもよい。上指示部51は較正用オブジェクト42を上方向に移動させる際に用いられ、左指示部52は較正用オブジェクト42を左方向に移動させる際に用いられ、下指示部53は較正用オブジェクト42を下方向に移動させる際に用いられ、右指示部54は較正用オブジェクト42を右方向に移動させる際に用いられ、左回転指示部55は較正用オブジェクト42を反時計回り方向に回転移動させる際に用いられ、右回転指示部56は較正用オブジェクト42を時計回り方向に回転移動させる際に用いられる。
【0034】
ここで、左指示部52又は右指示部54の1回押下に対し例えば0.5度のオフセットを対応づけた場合には、左指示部52又は右指示部54を1回押下すると、カメラ11の撮像方向をパン(左右)方向に0.5度だけ向きを変えるときに生じる撮影画像の移動分量に等しい画素数分だけ、較正用オブジェクト42を移動させることになる。上下(チルト)方向においても、ロール(回転)方向においても同様である。
【0035】
次に、カメラシステム1によるカメラの較正動作を説明する。
図4は、カメラシステム1によるカメラの較正動作を示すフローチャートである。
図5は、カメラの較正動作時に表示部4に表示される画像を示す図である。
【0036】
ユーザは、較正用オブジェクト42を左右方向に移動させ、較正用オブジェクト42の左右方向の位置を指標41に合わせる(ステップS101)。
図5(a)は、左指示部52が押下され、較正用オブジェクト42が左方向に移動した状態を示している。
【0037】
次に、ユーザは、較正用オブジェクト42を上下方向に移動させ、較正用オブジェクト42の上下方向の位置を指標41に合わせる(ステップS102)。
図5(b)は、上指示部51が押下され、較正用オブジェクト42が上方向に移動した状態を示している。
【0038】
次に、ユーザは、較正用オブジェクト42を回転方向に移動させ、較正用オブジェクト42の回転方向の位置を指標41に合わせる(ステップS102)。
図5(c)は、左回転指示部55が押下され、較正用オブジェクト42が反時計回り方向に回転移動した状態を示している。
【0039】
図2,5に示した較正用オブジェクト42は、等間隔に付された目盛を有する。目盛は移動量の目安を示すためのものであり、目盛の間隔は当該較正用オブジェクトの所定回数分の移動操作に対応する。例えば、目盛の間隔を、左指示部52又は右指示部54を5回押下したときの移動距離とする。目盛を付加することにより、ユーザは、較正用オブジェクト42の移動量の目安を得ることができる。例えば、指標41に対して、較正用オブジェクト42が右方向に約1目盛分だけずれていた場合には、左指示部52を連続して5回押下することにより、較正用オブジェクト42を一気に1目盛分左に移動させることができる。ユーザが指示部5による移動指示を行った後に、表示部4上で較正用オブジェクト42の移動が反映されるまでには、バス3を経由してCPU124に信号を送付した後、CPU124での各種画像処理が完了して再び表示部4における表示が更新されることを待つ必要があるため多少の時間を要するが、較正用オブジェクト42の目盛を利用した場合には表示の更新を待たずとも指示部5の押下回数を推定することが出来る。そのため、推定に基づいた押下回数を表示更新を待たずに指示し、早期に意図した較正用オブジェクトの移動を行うことができ、ひいては操作時間を短縮させることが可能となる。これは左右(パン)方向だけではなく、上下(チルト)方向や回転(ロール)についても同様に行うこともできる。例を
図6の一部に示す。
【0040】
図6は、目盛を有する較正用オブジェクト42の他の例を示す図である。
図6(a)は、較正用オブジェクト42の目盛を除く部分(主部)に対して、目盛が略水平方向および略垂直方向に付されている。そのため、ユーザは、左右方向および上下方向について移動量の目安を得ることができる。
【0041】
図6(b)は、主部に対して、目盛が水平方向および垂直方向に加え、回転方向にも付されている。そのため、ユーザは、左右方向および上下方向に加え、回転方向についても移動量の目安を得ることができる。
図6(c)に示すように、主部に対して、目盛を碁盤目状に付してもよい。また、目盛の形状は線状に限られるものではなく、例えば
図6(d)に示すように山型であってもよい。また、
図6(e)に示すように、較正用オブジェクト42を目盛のみとしてもよい。この場合には、左端の目盛から右端の目盛までの長さを指標41と同一の長さとする。
【0042】
図7は、所定の幅のマーカーが付された一端調整部および他端調整部を有する較正用オブジェクト42の例を示す図である。
図7(a)(b)に示すマーカーは、指標41の一端および他端が、それぞれ一端調整部および他端調整部のマーカーの所定の幅内に収まるまで較正用オブジェクト42を移動させればよいことを示す。特に
図7(b)の場合には大きい「く」の字状のマーカー4つと小さい「く」の字状のマーカー4つとにより構成されており、大きい「く」の字状のマーカーを目安におおまかに指標41に対する位置決めを行いつつ、小さい「く」の字状のマーカーにより位置決め精度を高める、という2ステップ較正により素早く高精度な指標41への位置決めを行うことができる。
【0043】
また、
図7(c)に示すように、目盛を有する較正用オブジェクト42の両端にマーカーを付してもよいのは勿論である。この場合には両端のマーカーにより較正用オブジェクト42自体に多少の短手方向の幅が生じるため、較正用オブジェクト42が指標41に対して大きくずれている場合には、この短手方向における幅を見ながら指標41に対しての位置決めをおおまかに行うことが出来、やはり素早く高精度な指標41への位置決めを行うことができる。
【0044】
また、
図7(d)に示すように、マーカーの数を増やし、外周、中周、内周の3層、各層4つのマーカーを有する多数のマーカーにより構成し、指標41がマーカーによって囲まれた領域内に収まるまで較正用オブジェクト42を移動させるようにしてもよい。
図7(d)の場合には最も外側の4つのマーカーにておおまかな位置決め、内側のマーカーで高精度の位置決めを行うことができ、ずれ量が大きい場合でも素早く高精度な指標41への位置決めを行うことができる。
【0045】
較正用オブジェクト42を指標41の位置に移動させる際に、両者は完全に重ならなくても較正パラメータを算出することができるが、ユーザにはどの程度の誤差までであれば較正パラメータの算出に影響を与えないかを知る方法はなかった。そこで、マーカーの幅は、許容される誤差量を示す。しかし、
図7に示すマーカーが付された較正用オブジェクト42を使用すれば、指標41の一端および他端が、それぞれ一端調整部および他端調整部のマーカーの所定の幅内に収まれば操作を終了できるので、調整時間を短縮させることができる。
【0046】
図8は、一端調整部および回転軸調整部を有する較正用オブジェクト42の例を示す図である。
図8(a)に示す較正用オブジェクト42を用いる場合、まず、
図8(a)中の矢印で示すように、円形の一端調整部を指標41の一端まで移動させる。
図8(b)は、指標41の端部が較正用オブジェクト42の一端調整部と略一致した状態を示している。その後、較正用オブジェクト42を
図8(b)中の矢印で示すように回転させ、指標41の端部を除く部分が較正用オブジェクト42の回転軸調整部と略重なるまで移動させる。このとき、回転の中心点を一端調整部の中心点とすることで、回転移動によって指標41と較正用オブジェクト42とがずれることを防止できる。したがって、回転移動後にさらに較正用オブジェクト42を上下左右方向に移動させて微調整する必要がなくなり、調整時間を短縮させることができる。
【0047】
なお、本明細書において、指標の一部と校正用オブジェクトの一部が「一致する」とは、両者の面積が異なる場合、一方が他方を含む関係も包含するものとする。また、指標の全部又は一部と校正用オブジェクトの全部又は一部が「重なる」とは、両者の幅が異なる場合、一方が他方を含む関係も包含するものとする。
【0048】
図9は、指標41がマーカーを有する場合の較正用オブジェクト42の例を示す図である。指標41がマーカーを有する場合、
図9(a)に示すように、マーカー調整部および回転軸調整部を有する較正用オブジェクト42を使用することができる。まず、
図9(a)中の矢印で示すように、較正用オブジェクト42の円形のマーカー調整部を指標41のマーカーまで移動させる。
図9(b)は、指標41のマーカーが較正用オブジェクト42のマーカー調整部と略一致した状態を示している。その後、較正用オブジェクト42を
図9(b)中の矢印で示すように回転させ、指標41のマーカーを除く部分が較正用オブジェクト42の回転軸調整部と略重なるまで移動させる。このとき、回転の中心点をマーカーの中心点とすることで、回転移動によって指標41と較正用オブジェクト42とがずれることを防止できる。したがって、回転移動後にさらに較正用オブジェクト42を上下左右方向に移動させて微調整する必要がなくなり、調整時間を短縮させることができる。
【0049】
図10は、両端調整部、および回転軸を調整するための複数の互いに平行な目盛線を有する較正用オブジェクト42の例を示す図である。
図10(a)に示す較正用オブジェクト42を用いる場合、まず、
図10(a)中の矢印で示すように、較正用オブジェクト42の目盛線のいずれかを指標41と平行になるまで回転させる。このとき較正用オブジェクト42も目盛線の回転とともに回転する。
図10(b)は、指標41が較正用オブジェクト42の目盛線の一つと略平行になった状態を示している。その後、較正用オブジェクト42を
図10(b)中の矢印で示すように、指標41の両端部がそれぞれ較正用オブジェクト42の両端調整部と略一致するまで左上方向に移動させる。したがって、上下左右方向に移動させた後にさらに較正用オブジェクト42を回転移動する必要がなくなり、調整時間を短縮させることができる。
【0050】
図11は、上線部、下線部、左線部、および右線部を有する較正用オブジェクト42の例を示す図である。
図11(a)に示す較正用オブジェクト42を用いる場合、まず、
図11(a)中の矢印で示すように、較正用オブジェクト42の上線部、下線部、左線部、および右線部を予め四隅に表示させておき、これらをそれぞれ独立して移動させ、指標41が上線部、下線部、左線部、および右線部によって囲まれた領域内に収まるまで移動させる。
図11(b)は、指標41が較正用オブジェクト42の上線部、下線部、左線部、および右線部によって囲まれた領域内に収まった状態を示している。指標41を、較正用オブジェクト42の上線部、下線部、左線部、および右線部によって囲まれた領域内に収めることにより、指標41の2箇所の頂点の位置が定まるため、回転移動が不要となり、調整時間を短縮させることができる。このとき、指標41の傾斜が右下がりなのか左下がりなのかについてのみ別途指示する必要がある。直接いずれの傾斜状態なのかを入力してもよいし、あるいは指標41の画面左側寄りの一端を下線部と左線部で指定し、他端を上線部と右線部で指定するよう規定することで特定してもよい。
【0051】
図12は、カメラ11の較正動作時における、CPU124の動作を示すフローチャートである。CPU124は、指示部5からオブジェクト移動信号を受信すると(ステップS201−Yes)、画像重畳部122に重畳指示を行う(ステップS202)。CPU124は、指示部5からオブジェクト移動信号を受信しない場合(ステップS201−No)、指示部5からの較正終了信号を受信するまでの間、指示部5からの移動指示を受け付ける(ステップS203−No)。指示部5からの調整終了信号を受信すると(ステップS203−Yes)、較正パラメータ(パン角、チルト角、およびロール角)を算出する(ステップS204)。
【0052】
次に、ステップS204における較正パラメータの算出方法について説明する。
図13は、較正パラメータの算出方法を説明する図であり、移動体100に設置されるカメラ11と指標41の位置関係を示している。指標41の両端の点をそれぞれP
1,P
2とする。カメラ11の位置(カメラ座標の原点)は、ワールド座標で(tx,ty,tz)と表される。また、カメラ11の位置を基準として、カメラ11から見た相対的な位置関係はカメラ座標系で表現することができる。カメラ座標系は、ワールド座標系に対する平行移動および回転移動で表すことができる。
【0053】
図14は、ワールド座標系の回転移動を示す図である。
図14(a)に示すように、Zwを軸とする回転をパン、
図14(b)に示すようにYwを軸とする回転をロール、
図14(c)に示すようにXwを軸とする回転をチルトとする。パンの回転角度(パン角)α、ロールの回転角度(ロール角)β、チルトの回転角度(チルト角)γのとき、ワールド座標系の座標(xw
1,yw
1,zw
1)で表される点P
1は、カメラ座標系では式(1)で表すことができる。
【0055】
図15は、カメラ画像における指標41の座標を示す図である。指標41の座標は、上述したように較正オブジェクトを移動させることで得られる。指標41の一端P
1の位置を、カメラ画像の中心点を原点とする座標で(x
i,z
i)としたとき、カメラ11のセンサ面上の像高hは、センサのピクセルピッチdを用いて式(2)で表される。
【0057】
さらに、レンズの入射角θ
iとセンサ面上の像高hの関係は、レンズの焦点距離f、およびレンズのディストーションdistを用いて、式(3)で表すことができる。
【0059】
図16は、カメラ座標系における指標41の両端P
1,P
2の座標を示す図である。点P
1に対するカメラ11の入射角θ
iは、式(4)で表される。
【0061】
カメラ11から点P
1までの距離s、すなわちカメラ座標原点から指標41の点P
1までの距離は既知であるので、式(2),(3)から求まる角度θ
iと、式(5)で表される角度φ
iとを用いて、(xc
1,yc
1,zc
1)を式(6),(7),(8)により算出することができる。
【0063】
同様に、点P
2についても式(9)の関係が算出される。
【0065】
指標41を、移動体100後端から所定の距離に移動体100後端と平行になるように配置し、指標41の厚みを一定とすることにより、以下の式(10),(11)が成立する。
【0066】
yw
1=yw
2 (10)
zw
1=zw
2 (11)
【0067】
較正点のワールド座標系での座標は既知であるので、較正指示装置により入力した2つの較正点の画像上の座標が決まれば、式(1),(9),(10),(11)より、パン角α,ロール角β,およびチルト角γを算出することができる。つまり、式(10),(11)の条件を満たすことにより、CPU124は、2点の較正用オブジェクトの座標を取得すれば、較正パラメータを算出することができる。
【0068】
カメラ11からの撮像画像は、CPU124により較正パラメータが算出された後は、当該較正パラメータに対応する量をオフセットさせて出力される。これにより、結果的に画像重畳部122は、画像処理部121により生成されたデジタル画像上に予測軌跡などの画像を重畳して重畳画像を生成する際に、較正パラメータが算出される以前の重畳位置からオフセットして重畳されることとなるため、例えば駐車時により高精度な車両通過予測軌跡を表示することができる。
【0069】
上述したように、本発明による較正処理装置12、カメラ較正装置10、カメラシステム1、およびカメラ較正方法において、較正用オブジェクト42の第1の態様は、移動量の目安を示すための目盛を有する。較正用オブジェクト42の第2の態様は、所定の幅のマーカーが付された一端調整部および他端調整部を有する。較正用オブジェクト42の第3の態様は、一端調整部、および回転軸調整部を有する。較正用オブジェクト42の第4の態様は、マーカー調整部、および回転軸調整部を有する。較正用オブジェクト42の第5の態様は、両端調整部、および回転軸を調整するための目盛線を有する。較正用オブジェクト42の第6の態様は、上線部、下線部、左線部、および右線部を有し、それぞれ独立して移動可能とする。このように較正用オブジェクト42の形状を工夫したことにより、本発明による較正処理装置12、カメラ較正装置10、カメラシステム1、およびカメラ較正方法によれば、カメラ11を較正する際の操作が簡便となり、較正に要する時間を短縮することができる。
【0070】
上述の実施形態は、代表的な例として説明したが、本発明の趣旨および範囲内で、多くの変更および置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、指標41の左端と右端の2点の座標を取得するようにしたが、座標の取得位置は、指標41何の予め決めておいた点とすることができる。