(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6012987
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】イメージセンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20161011BHJP
H04N 5/369 20110101ALI20161011BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20161011BHJP
H01L 21/762 20060101ALI20161011BHJP
H01L 27/08 20060101ALI20161011BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20161011BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
H01L27/14 A
H04N5/335 690
H01L21/265 F
H01L21/265 602B
H01L21/265 602C
H01L21/76 D
H01L27/08 331A
H01L27/08 102C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-43393(P2012-43393)
(22)【出願日】2012年2月29日
(65)【公開番号】特開2013-182893(P2013-182893A)
(43)【公開日】2013年9月12日
【審査請求日】2014年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100159651
【弁理士】
【氏名又は名称】高倉 成男
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100158805
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 守三
(74)【代理人】
【識別番号】100172580
【弁理士】
【氏名又は名称】赤穂 隆雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】大野 博司
(72)【発明者】
【氏名】藤井 修
(72)【発明者】
【氏名】白土 昌孝
(72)【発明者】
【氏名】本宮 佳典
【審査官】
安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−196055(JP,A)
【文献】
特開2010−278232(JP,A)
【文献】
特開2011−222747(JP,A)
【文献】
特開2011−205049(JP,A)
【文献】
特開2011−155248(JP,A)
【文献】
特開2012−009588(JP,A)
【文献】
特開2010−225962(JP,A)
【文献】
特開2005−203617(JP,A)
【文献】
特開2006−294765(JP,A)
【文献】
特開2009−141075(JP,A)
【文献】
特開2012−059900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/14−148
H01L 21/265−268
H01L 21/324
H01L 21/3205−3213
H01L 21/768
H01L 23/522−532
H01L 21/762
H01L 27/04−092
H01L 21/822−8238
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上に、撮像素子領域と、前記撮像素子領域とは異なる領域にロジック回路領域と、前記撮像素子領域と前記ロジック回路領域との間の境界領域とを形成する工程と、
前記撮像素子領域に形成される複数の撮像素子の間を分離するための素子分離部、前記境界領域内に一定ピッチで配置されるダミー素子分離部を同時に形成する工程と、
前記撮像素子領域に撮像素子を形成する工程と、
前記ロジック回路領域に回路素子を形成する工程と、
前記撮像素子領域、前記ロジック回路領域、及び前記ダミー素子分離部が形成された後に、前記基板に対して光アニール処理を施す工程と、
を含み、前記基板に対するアニール時間をtとし、前記半導体基板の温度拡散係数をαとしたときに、前記アニールの熱拡散長Lを、
L=(αt)1/2
と定義し、前記境界領域の幅を前記熱拡散長以上に設定するイメージセンサの製造方法。
【請求項2】
前記ダミー素子分離部は、前記撮像素子領域の前記素子分離部と同じ材料である請求項1に記載のイメージセンサの製造方法。
【請求項3】
半導体基板上に、撮像素子領域と、前記撮像素子領域とは異なる領域にロジック回路領域と、前記撮像素子領域と前記ロジック回路領域との間の境界領域とを形成する工程と、
前記撮像素子領域に複数の撮像素子を形成する工程と、
前記ロジック回路領域にゲートパターンを有する回路素子を形成すると同時に、前記境界領域内に、前記ロジック回路領域における前記ゲートパターンのピッチよりも大きいピッチでダミーゲートパターンを形成する工程と、
前記撮像素子領域、前記ロジック回路領域、及びダミーゲートパターンが形成された後に、前記基板に対して光アニール処理を施す工程と、
を含み、前記基板に対するアニール時間をtとし、前記半導体基板の温度拡散係数をαとしたときに、前記アニールの熱拡散長Lを、
L=(αt)1/2
と定義し、前記境界領域の幅を前記熱拡散長以上に設定するイメージセンサの製造方法。
【請求項4】
前記光アニールは、FLA又はLSAである請求項1〜3の何れかに記載のイメージセンサの製造方法。
【請求項5】
前記境界領域は、前記撮像素子領域と前記ロジック回路領域とを熱的に独立とするように形成される請求項1〜3の何れかに記載のイメージセンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、撮像素子領域とロジック回路領域を有するイメージセンサ
の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOSイメージセンサは、被写体から画像信号を得る撮像素子と画像処理を行うロジック回路を、同一チップ上に同一の製造プロセスで組み込むことができるため、コンパクト化に有効である。
【0003】
しかし、CMOSイメージセンサにおいては、撮像素子領域及びロジック回路領域のそれぞれの回路パターンの平均ピッチが桁で異なるという状況にあり、それが要因となって撮像素子の品質が劣化するという問題が起こりやすい。即ち、各々の領域の回路パターンの平均ピッチが大きく異なるために、製造プロセスの一つである光アニールにおいて、ロジック回路領域の方が撮像素子領域よりも高温になると予想される。これは、ロジック回路の回路パターンであるGC(Gate Conductor)のピッチが入射波長よりも小さいと、それよりもピッチが大きいものと比べ、光の吸収が高くなるためである。
【0004】
ロジック回路領域が撮像素子領域よりも高温になると、撮像素子領域のロジック回路領域に近接する箇所では、ロジック回路領域から撮像素子領域に熱が熱拡散によって流入する。これにより、撮像素子領域の周辺領域に温度ムラが発生する。このような温度ムラは、各撮像素子の特性ばらつきとなり、品質の劣化につながる。
【0005】
この問題を解決する手段として、X線リソグラフィーで撮像素子の表面に微小な凹凸を付け、反射防止構造体を設けることが考えられる。しかし、X線リソグラフィーによる反射防止膜構造を設けることは、製造コストと製造時間の増加につながる。また、X線リソグラフィーでは、凹凸の厚さの制御が難しいことが知られている。それ故、最適な厚さを持つ凹凸を形成するのが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−128539号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Hirofumi Sumi, et al.,“For the Better Image Quality of CMOS Image Sensor”, Fundamentals Review, vol.3 No.3, p.44-51, 2010
【非特許文献2】Hiroshi Ohno, et al.,“Optical interference effect on chip’s temperature distribution in the optical annealing process”, RTP 2008 (16th IEEE International Conference), 2008
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、撮像素子領域の製造時の温度ムラに起因する素子特性のばらつきを抑制することができ、品質の向上をはかり得るイメージセンサ
の製造方法を提供することである。
【0009】
また、発明が解決しようとする別の課題は、新たに製造プロセスを追加することなく、上記のイメージセンサを製造できるイメージセンサの方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態のイメージセンサの製造方法は、半導体基板上に、撮像素子領域と、前記撮像素子領域とは異なる領域にロジック回路領域と、前記撮像素子領域と前記ロジック回路領域との間の境界領域とを形成する工程と、前記撮像素子領域に形成される複数の撮像素子の間を分離するための素子分離部、前記境界領域内に一定ピッチで配置されるダミー素子分離部を同時に形成する工程と、前記撮像素子領域に撮像素子を形成する工程と、前記ロジック回路領域に回路素子を形成する工程と、前記撮像素子領域、前記ロジック回路領域、及び前記ダミー素子分離部が形成された後に、前記基板に対して光アニール処理を施す工程とを含
み、前記基板に対するアニール時間をtとし、前記半導体基板の温度拡散係数をαとしたときに、前記アニールの熱拡散長Lを、L=(αt)1/2と定義し、前記境界領域の幅を前記熱拡散長以上に設定する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係わるCMOSイメージセンサにおける回路配置例を示すチップ上面図。
【
図2】
図1のCMOSイメージセンサに用いた撮像素子領域の構成を示す断面図。
【
図3】
図1のCMOSイメージセンサに用いた撮像素子領域、ロジック回路領域、及び境界領域の構成を示す断面図。
【
図4】第1の実施形態のCMOSイメージセンサの製造に使用した光アニール装置の概略構成を示す断面図。
【
図5】
図3の構成に対して光アニールを行ったときの温度分布を示す特性図。
【
図6】第2の実施形態のCMOSイメージセンサに用いた撮像素子領域、ロジック回路領域、及び境界領域の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係わるCMOSイメージセンサにおける回路配置例を示す平面図である。なお、この
図1では、半導体基板10上に形成された複数個うちの1つのチップ11のみを示している。
【0014】
Si等の半導体基板10の上に、撮像素子領域20が配置され、それを囲んで複数のロジック回路領域30が配置されている。また、撮像素子領域20とロジック回路領域40との間に境界領域40が配置されている。1つのチップ11の全体の面積は、例えば10mm□である。撮像素子領域30には、複数の撮像素子21が等間隔で二次元に並んで配置されている。撮像素子21の面積形状は、例えば1辺が5μmの正方形である。各撮像素子21の中心間距離を、撮像素子21のピッチP1と呼ぶ。この撮像素子21のピッチP1は、例えば5.2μmである。
【0015】
撮像素子21は、
図2の断面図に示すような基本構造を持ち、半導体基板10内に、酸化シリコン等からなるSTI(Shallow Trench Isolation:素子分離部)23とフォトダイオード部24を有している。半導体基板10は、例えばp型とする。フォトダイオード部24において、基板10の表面部にn型領域22が形成されている。STI23は、一定の間隔で並べられている。隣接するSTI23の中心間距離又は左側面間の距離をSTI23のピッチP2と呼ぶ。これは、上述した撮像素子21のピッチP1と等しく、5.2μmである。
【0016】
図1の平面図において、AとBを通る断面図を、
図3に示した。ここで、ロジック回路領域31(ロジック回路領域30の一部)は、STI(素子分離部)33とGC(ゲートパターン)35及び図示しない回路要素(各種回路を形成するための拡散層等)を有している。GC35は、等間隔に配置されている。隣接GCの間隔、より具体的には隣接GCの中心間距離、又は隣接GCの左側面間の距離をGCのピッチP3と呼ぶ。GC35のピッチP3は、10〜100nmの範囲にあることが一般的である。但し、GC35のピッチP3は等間隔ではなく、様々なピッチを持つGC35が混在することもあり得る。その場合、それらのピッチの平均値をGCのピッチP3と呼ぶ。ここでは、GC35のピッチP3は、例えば50nmとする。
【0017】
また、ロジック回路領域30と撮像素子領域20との間には、一定の境界幅Sを持つ境界領域40が設けられている。この境界幅Sは、FLA(Flash Lamp Annealing)の熱拡散長L以上であるとする。但し、Lはアニール時間をtとし、シリコンの温度拡散係数(thermal diffusivity)をαとすると、L=(αt)
1/2 と表せる。アニール時間tを1msとすると、例えば常温(25℃)においてLは約200μmとなる。
【0018】
境界領域40には、ダミーSTI(素子分離部)43が一定ピッチで形成されている。このダミーSTI43のピッチP4は、撮像素子領域20のSTI23のピッチP2と同じに設定されている。つまり、ダミーSTIのピッチP4は、本実施形態においては5.2μmである。さらに、ダミーSTI43の材質はSTI23と同じ材質である。
【0019】
本実施形態のCMOSイメージセンサの製法に関しては、まず基板10の撮像素子領域20及びロジック回路領域30のそれぞれに、素子領域を囲むように酸化シリコン等からなるSTI23,33を形成すると共に、境界領域40に、STI43を形成する。次いで、撮像素子領域20にはn型領域形成のための不純物のイオン注入を行う。次いで、全面にゲート絶縁膜を介してポリSi膜を形成した後、これらを加工することにより、ロジック回路領域30にGC35を形成する。続いて、ロジック回路領域30にMOSトランジスタ形成のための不純物のイオン注入を行う。
【0020】
ここまでの工程で、前記
図3に示す構造が得られることになる。なお、ダミーSTI43の形成のためには、STIパターンを有する露光用マスクにダミーSTIパターンを付加しておくだけでよく、ダミーSTI43の形成のための新たなプロセスは必要としない。
【0021】
次に、後述する光アニール装置を用いて基板表面部に熱処理を施すことにより、撮像素子領域20及びロジック回路領域30に設けた拡散層等の活性化を行う。これ以降は、基板表面上に層間絶縁膜を形成した後に必要な配線を形成することにより、CMOSイメージセンサが完成することになる。
【0022】
図4は、本実施形態のCMOSイメージセンサの製造に用いた光アニール装置を示す概略構成図である。
【0023】
チャンバ50内には、半導体基板10を載置するためのサセプタ51と、基板10の表面に光を照射するための光源52が設置されている。光源52による照射光の照射時間は数秒以下であり、これによって半導体基板10の表面温度が瞬時に高温に達し、アニーリングされるようになっている。
【0024】
ここで、光アニールの方式としては、FLAとする。このとき、光源52は、例えばキセノンランプとするか、或いはキセノンランプと同等の強度スペクトルを持つものとする。なお、キセノンランプは黒体輻射の温度で6000Kから6500Kの間の強度スペクトルを持つが、このときの波長を、以下ではλ(例えば450nm)とする。また、照射時間は数msであり、1秒を超えるものではない。ここでは、例えば1msとする。
【0025】
次に、本実施形態における作用効果について説明する。
【0026】
CMOSイメージセンサの製造においては、拡散層の活性化のためにアニール処理を施す必要がある。本実施形態では、アニール処理を前記
図3の状態で行うことを特徴としている。
【0027】
図3において、撮像素子領域20のSTI23は、例えば酸化シリコンで形成される。酸化シリコンの複素屈折率はシリコンのものとは異なる。そのため、撮像素子領域20の光吸収率は、シリコンのみで構成される半導体基板10の光吸収率よりも10〜20%程度高くなると計算できる。ちなみに、シリコンの半導体基板10の光吸収率は、RCWA(Rigorous Coupled Wave Analysis)法を用いた計算によると、約58%である。
【0028】
一方、境界領域40にはダミーSTI43が形成されており、ダミーSTI43はSTI23と同じ材質であるため、両者は同じ複素屈折率を持つ。また、n型領域22と半導体基板10の複素屈折率はほぼ同じであり、ダミーSTI43のピッチP4とSTI23のピッチP2も同じであるため、境界領域40と撮像素子領域20の複素屈折率分布は等しくなる。そのため、境界領域40と撮像素子領域20のそれぞれの光吸収率は等しくなる。つまり、境界領域40と撮像素子領域20の両領域内で、光吸収率は一様になる。
【0029】
しかし、ロジック回路領域30では、GC35のピッチP3が非常に狭く、光吸収率が撮像素子領域20と比べて数10%程度高くなることが一般的である。また、この光吸収率はGC35のピッチP3に依存する。但し、ロジック回路領域30において、回路があるまとまりを持って回路集団を形成し、まばらに配置されている場合(つまり、ピッチP3を持つ各回路集団がまばらに配置されている場合)、ロジック回路領域30の平均的な光吸収率は撮像素子領域20よりも低くなる場合もある。若しくは、ロジック回路領域30のSTI33のピッチが撮像素子領域20のSTI23のピッチよりも非常に大きいときは、ロジック回路領域30においてGC35のみが光吸収を高めることになる。そのとき、GC35のピッチも大きいと、ロジック回路領域30の光吸収率は撮像素子領域20よりも小さくなる可能性がある。以上より、一般に、ロジック回路領域30の光吸収率と、境界領域40及び撮像領域20の両領域内における光吸収率とは、異なると考えられる。これにより、ロジック回路領域30の温度と、境界領域40及び撮像素子領域20の両領域内における温度も異なると考えられる。
【0030】
このとき、ロジック回路領域30の温度が、境界領域40の温度よりも高い場合、熱拡散により境界領域40に熱が流入する。しかし、境界幅Sは熱拡散長L以上にとってあるので、境界領域40に流入してくる熱は撮像素子領域20には殆ど到達しない。これは、境界領域40の熱吸収が撮像素子領域20の熱吸収と等しいからである。また、逆に、ロジック回路領域30の温度が、境界領域40の温度よりも低い場合、熱拡散により境界領域40から熱がロジック回路領域30に逃げる。しかし、境界幅Sは熱拡散長L以上にとってあるので、境界領域40内からのみ熱が放出され、撮像素子領域20からは殆ど放出されない。
【0031】
実際、
図5にチップ11の面内の温度分布の計算結果を示し、AB間を通る境界領域15の温度分布をプロットした。横軸はAB上の位置を表し、縦軸は温度を表している。この
図5より、境界領域40でのみ温度が変化し、撮像素子領域20では温度はほぼ一様であることが分かる。以上より、撮像素子領域20内では温度は均一化され、温度ムラを低減することができる。
【0032】
このように本実施形態では、撮像素子領域域20とロジック回路領域30との間の境界領域40にダミーSTI43を設け、このダミーSTI43のピッチP4を撮像素子領域20のSTI23のピッチP2と等しく形成することで、撮像素子領域20内での温度ムラを低減することができる。従って、温度ムラに起因する素子特性のばらつきを抑制することができ、品質の向上をはかることができる。しかも、ダミーSTI43は撮像素子領域20のSTI23と同時に形成することができるので、新たに製造プロセスを追加する必要もない。
【0033】
(第2の実施形態)
図6は、第2の実施形態のCMOSイメージセンサに用いた撮像素子領域、ロジック回路領域、及び境界領域の構成を示す断面図である。なお、
図3と同一部分には同一符号を付して、その詳しい説明は省略する。
【0034】
本実施形態が先に説明した第1の実施形態と異なる点は、境界領域40にダミーSTI43を設ける代わりに、ダミーGC(ダミーゲートパターン)45を設けたことにある。即ち、境界領域40の表面上には、GC35と同じ材料からなるダミーGC45が等間隔で配置されている。ダミーGC45のピッチP5は、ロジック回路領域30におけるGC35のピッチP3よりも十分大きいものとする。また、ダミーGC45は何れの回路要素にも接続されず、フローティング状態となっている。
【0035】
光吸収率の上昇は、基板上にGCを設けること、更にはGCのピッチを狭くすることによって達成される。従って、境界領域40にダミーGC45を設け、そのピッチP5をGC35よりも広くすることにより、境界領域40における光吸収率を上昇させ、撮像素子領域20における光吸収率に等しく、又は近付けることができる。
【0036】
なお、ダミーGC45のピッチP5をGC35のピッチP3と等しくすると、境界領域40の光吸収率がロジック回路領域30の光吸収率と等しくなり、ロジック回路領域での温度ムラは防止できるものの、撮像素子領域20における温度ムラを防止できなくなる。境界領域40の光吸収率を撮像素子領域20の光吸収率と等しくすると、ロジック回路領域での温度ムラは生じるものの、撮像素子領域20における温度ムラは防止できる。ロジック回路領域40における温度ムラは殆ど問題とならず、撮像素子領域20の温度ムラは素子特性に大きな影響を及ぼす。従って、境界領域40の光吸収率を撮像素子領域20の光吸収率と等しくすることに大きな意味があるのである。
【0037】
このように本実施形態によれば、境界領域40内にダミーGC45を設けることにより、光アニールにおける撮像素子領域20と境界領域40との温度差を少なくすることができる。従って、撮像素子領域20内での温度ムラを低減することができ、素子特性のばらつきを抑制することができ、品質の向上をはかることができる。しかも、ダミーGC45はロジック回路領域30のGC35と同時に形成することができるので、新たに製造プロセスを追加する必要もない。
【0038】
(変形例)
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではない。光アニール装置は、前記
図4に示す構造に何ら限定されるものではなく、数msでの光アニールを実現できるものであればよい。さらに、アニール手法は必ずしもFLAに限らず、LSA(Laser Spike Annealing)を用いることも可能である。
【0039】
実施形態では、境界領域におけるダミー素子分離部のピッチを撮像素子領域における素子分離部のピッチと等しくしたが、厳密に同じである必要はない。同じであるのが最も望ましいが、ダミー素子分離部のピッチが撮像素子領域の素子分離部のピッチよりも極端に違わない限り、境界領域と撮像素子領域における光吸収率を近付ける効果は得られる。
【0040】
また、実施形態ではCMOSイメージセンサに適用した例を説明したが、必ずしもCMOSイメージセンサに限らず、撮像素子領域とロジック回路領域を同じチップ上に配置したイメージセンサであれば同様に適用することができる。さらに、ロジック回路領域は必ずしも撮像素子領域の周辺を囲むように配置される必要はなく、撮像素子領域に近接して配置されたものであればよい。
【0041】
また、撮像素子領域及びロジック回路領域の各部の製造方法は何ら限定されるものではなく、
図3に示すように、撮像素子領域、ロジック回路領域、及び境界領域のダミー素子分離部が形成された状態で、又は前記
図6に示すように、撮像素子領域、ロジック回路領域、及び境界領域のダミーゲートパターンが形成された状態で、光アニールを行うようにすればよい。
【0042】
本発明の幾つかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0043】
10…半導体基板
11…チップ
20…撮像素子領域
21…撮像素子
22…n型領域
23…STI(撮像素子領域の素子分離部)
24…フォトダイオード部
30…ロジック回路領域
35…GC(ゲートパターン)
33…STI(ロジック回路領域の素子分離部)
40…境界領域
45…ダミーGC(ダミーゲートパターン)
50…チャンバ
51…サセプタ
52…光源