(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、狭窄した血管の再建を目的として、バルーンカテーテル(例えば、特許文献1を参照)を用いて血管内の狭窄部を拡張する血管形成術が行われている。
【0003】
血管形成術は、次のような手順で行われる。まず、狭窄部を通過して挿入されたガイドワイヤーに沿わせて、バルーンを膨らませていない状態のバルーンカテーテルを狭窄部位に挿入する。次に、バルーンカテーテルの一端に接続されたシリンジによって生理食塩水等の液体を注入することにより、バルーンを膨張させ、狭窄部を拡張させる。
【0004】
次に、シリンジによって生理食塩水等の液体を吸引することにより、バルーンを収縮させ、バルーンカテーテルを引き抜く。その際、ガイドワイヤーは残したままにする。この状態で冠動脈造影撮影を行い、血管の拡張がきちんと行われているかどうかを確認する。もし、血管の拡張が不十分であれば、径の大きいバルーンに交換して再び拡張を行う。一方、血管の拡張が十分に確認できれば、ガイドワイヤーを引き抜く。
【0005】
現在、血管形成術中における、バルーンを膨張させるために液体を注入する際の注入圧力、液体を注入している注入時間、および、液体を注入する際の心電図が測定され記録されている。これは、医師が、記録された各種情報を術後に確認することで、血管形成術の検証を行い、今後の血管形成術の向上を図るためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の血管形成術では、注入圧力、注入時間および心電図の測定および記録は、別々に行われていた。つまり、注入圧力については、シリンジとバルーンカテーテルとの間に設けられた圧力計の値を技師や看護師(以下、「技師等」と称する)が参照し、看護記録などに記録していた。また、注入時間については、技師等が液体の注入開始および注入終了のタイミングを把握した上でタイマ測定し、測定した注入時間を看護記録などに記録していた。また、心電図については、ポリグラフによる測定処理および記録処理によって自動的に行われていた。そのため、技師等にとっては、測定および記録が別々に行われた血管形成術関連情報(注入圧力、注入時間および心電図)を集計するのに手間がかかり、統合的に管理することが困難であった。
【0008】
本発明は、血管形成術の検証を行うために必要な血管形成術関連情報を容易に統合管理することが可能な血管形成術関連情報記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る血管形成術関連情報記録装置は、バルーンカテーテルのバルーンを膨張させるための流体の注入
圧力を取得する注入
圧力取得部と、
心電図を取得する心電図取得部と、
前記注入条件取得部により取得された
注入圧力が所定圧力を上回ってから当該所定圧力を下回るまでの、前記注入圧力と前記心電図を互いに関連づけて記録するように制御する記録制御部と、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、1つの装置上において、流体の注入条件および心電図が自動的(すなわち、ユーザが関与せずに)かつ一元的に取得され、互いに関連づけて記録される。そのため、血管形成術の検証を行うために必要な血管形成術関連情報(注入条件および心電図)を集計するのに手間がかからず、血管形成術関連情報を容易に統合管理することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本実施の形態における記録システム100の構成例を示すブロック図である。
図1に示すように、記録システム100は、バルーンカテーテル120、心電図測定部140および記録装置160を備えて構成されている。
【0013】
バルーンカテーテル120は、狭窄した血管の再建を目的として、血管内の狭窄部を拡張するために使用される。バルーンカテーテル120には、バルーンを膨らませるために液体(例えば、生理食塩水等)を注入するシリンジが一端に接続されている。バルーンカテーテル120とシリンジとの間には、圧力測定回路130が設けられている。
【0014】
圧力測定回路130は、記録装置160にケーブルで接続されており、バルーンを膨張させるために液体を注入する際の注入圧力を逐次測定する。そして、圧力測定回路130は、逐次測定した注入圧力を記録装置160に出力する。
【0015】
心電図測定部140は、ポリグラフ(図示せず)に備えられ、標準12誘導の心電図を測定する。具体的には、心電図測定部140は、患者の四肢に装着される四肢用心電図電極と、患者の胸部に装着される胸部用心電図電極とを用いて、公知の標準12誘導法により、I誘導、II誘導、III誘導、aVR誘導、aVL誘導、aVF誘導、V1誘導、V2誘導、V3誘導、V4誘導、V5誘導およびV6誘導を測定する。そして、心電図測定部140は、標準12誘導法による測定結果を示す心電図を記録装置160に出力する。
【0016】
記録装置160は、バルーンカテーテル120を用いて血管内の狭窄部を拡張する血管形成術を行う際、その血管形成術を後で検証するために必要な各種情報を記録する。本実施の形態では、記録装置160は、心電図測定部140と同様、ポリグラフ(図示せず)に備えられる。
【0017】
次に、記録装置160の構成について説明する。
図1に示すように、記録装置160は、注入圧力取得部200、心電図取得部220、注入時間取得部240、記録制御部260および記憶部280を備えて構成されている。なお、注入圧力取得部200および注入時間取得部240は、注入条件取得部として機能する。
【0018】
注入圧力取得部200は、バルーンカテーテル120のバルーンを膨張させるために液体が注入される場合、圧力測定回路130から出力された注入圧力を取得する。そして、注入圧力取得部200は、取得した注入圧力が所定圧力を上回ったか否か(つまり、液体の注入が開始したか否か)について判定する。もし、所定圧力を上回ったと判定した場合、注入圧力取得部200は、その旨を心電図取得部220に通知する。一方、所定圧力を上回っていないと判定した場合、注入圧力取得部200は、心電図取得部220に何も通知しない。
【0019】
また、注入圧力取得部200は、注入圧力が所定圧力を上回ったと判定した後、圧力測定回路130から取得した注入圧力が所定圧力を下回ったか否か(つまり、液体の注入が終了したか否か)について判定する。もし、所定圧力を下回ったと判定した場合、注入圧力取得部200は、その旨を心電図取得部220に通知する。さらに、注入圧力取得部200は、圧力測定回路130から取得した注入圧力が所定圧力を上回ったと判定してから当該所定圧力を下回ったと判定するまでの時間を注入時間として注入時間取得部240に出力する。一方、所定圧力を下回っていないと判定した場合、注入圧力取得部200は何もしない。
【0020】
また、注入圧力取得部200は、所定圧力を上回ってから当該所定圧力を下回るまでに、圧力測定回路130から取得した注入圧力を記録制御部260に出力する。
【0021】
心電図取得部220は、心電図測定部140から出力された心電図を取得する。また、心電図取得部220は、所定圧力を
上回ったと判定した旨の通知を注入圧力取得部200から受けた後、所定圧力を下回ったと判定した旨の通知を注入圧力取得部200から受けるまでの間に心電図測定部140から取得した心電図を記録制御部260に出力する。
【0022】
注入時間取得部240は、注入圧力取得部200から出力された注入時間を取得する。そして、注入時間取得部240は、取得した注入時間を記録制御部260に出力する。
【0023】
記録制御部260は、注入圧力取得部200から出力された注入圧力、注入時間取得部240から出力された注入時間、および心電図取得部220から出力された心電図を互いに関連づけて記憶部280に記録する。なお、注入圧力、注入時間および心電図はそれぞれ血管形成術関連情報である。
【0024】
次に、本実施の形態における記録装置160の動作について説明する。
図2は、本実施の形態における記録装置160の動作例を示すフローチャートである。
図2に示すフローチャートは、記録装置160の電源が投入されることにより開始する。
【0025】
まず、注入圧力取得部200は、圧力測定回路130から出力された注入圧力を取得する(ステップS100)。次に、注入圧力取得部200は、取得した注入圧力が所定圧力を上回ったか否か(つまり、液体の注入が開始したか否か)について判定する(ステップS120)。もし、所定圧力を上回っていない(つまり、液体の注入が開始していない)と注入圧力取得部200にて判定した場合(ステップS120にてNO)、処理はステップS100に遷移する。
【0026】
一方、所定圧力を上回った(つまり、液体の注入が開始した)と注入圧力取得部200にて判定した場合(ステップS120にてYES)、注入圧力取得部200は、その旨を心電図取得部220に通知するとともに、直近で取得した注入圧力を記録制御部260に出力する。次に、心電図取得部220は、心電図測定部140から出力された心電図を取得して記録制御部260に出力する(ステップS140)。
【0027】
次に、注入圧力取得部200は、圧力測定回路130から出力された注入圧力を取得して記録制御部260に出力する(ステップS160)。次に、注入圧力取得部200は、ステップS160にて取得した注入圧力が所定圧力を下回ったか否か(つまり、液体の注入が終了したか否か)について判定する(ステップS180)。
【0028】
もし、所定圧力を下回っていない(つまり、液体の注入が終了していない)と注入圧力取得部200にて判定した場合(ステップS180にてNO)、処理はステップS140に遷移する。一方、所定圧力を下回った(つまり、液体の注入が終了した)と注入圧力取得部200にて判定した場合(ステップS180にてYES)、注入圧力取得部200は、その旨を心電図取得部220に通知するとともに、ステップS120にて注入圧力が所定圧力を上回ったと判定してから、ステップS180にて注入圧力が当該所定圧力を下回ったと判定するまでの時間を注入時間として注入時間取得部240に出力する。
【0029】
次に、注入時間取得部240は、注入圧力取得部200から出力された注入時間を取得し、取得した注入時間を記録制御部260に出力する(ステップS200)。最後に、記録制御部260は、注入圧力取得部200から出力された注入圧力、注入時間取得部240から出力された注入時間、および心電図取得部220から出力された心電図を互いに関連づけて記憶部280に記録する。ステップS220の処理が完了することによって、記録装置160は
図2における処理を終了する。
【0030】
以上詳しく説明したように、本実施の形態の記録装置160は、バルーンカテーテル120のバルーンを膨張させるための液体の注入圧力を取得する注入圧力取得部200と、液体の注入時間を取得する注入時間取得部240と、液体が注入されている際の心電図を取得する心電図取得部220と、注入圧力取得部200により取得された注入圧力、注入時間取得部240により取得された注入時間、および心電図取得部220により取得された心電図を互いに関連づけて記録するように制御する記録制御部260とを備えている。
【0031】
このように構成した本実施の形態によれば、1つの装置上において、注入圧力、注入時間および心電図が自動的(すなわち、ユーザが関与せずに)かつ一元的に取得され、互いに関連づけて記録される。そのため、血管形成術の検証を行うために必要な血管形成術関連情報(注入圧力、注入時間および心電図)を集計するのに手間がかからず、当該各種情報を容易に統合管理することができる。さらに言えば、注入圧力、注入時間および心電図の測定および記録にユーザが一切関わらないため、測定の際に誤測定したり、記録する際に誤って転記したりする等のヒューマンエラーを防止することができるという副次的効果も得られる。
【0032】
以上に説明した実施の形態による記録装置160の機能は、ソフトウェアによって実現される。実際には、記録装置160がCPUあるいはMPU、RAM、ROMなどを備えたコンピュータとして構成され、RAMやROMに記憶されたプログラムが動作することによって実現できる。なお、本実施の形態の機能を果たすように動作させるプログラムを例えばCD−ROMのような記録媒体に記録し、記録装置160に読み込ませることによって実現することも可能である。
【0033】
なお、上記実施の形態では、圧力測定回路130から出力された注入圧力が所定圧力を上回ってから当該所定圧力を下回るまでの時間を注入時間として取得する例について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、バルーンカテーテル120とシリンジとの間に、液体の注入流量を測定する流量測定回路を設ける。そして、流量測定回路によって測定された注入流量が所定流量を上回ってから(つまり、液体の注入が開始してから)当該所定流量を下回るまで(つまり、液体の注入が終了するまで)の時間を注入時間として取得するようにしても良い。
【0034】
また、上記実施の形態では、注入圧力が所定圧力を上回った後に、心電図測定部140から心電図を取得して記録制御部260に出力する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、注入圧力が所定圧力を上回る前から心電図を逐次取得し、注入圧力が所定圧力を上回った後に取得した心電図を記録制御部260に逐次出力しても良い。また、注入圧力が所定圧力を上回ってから所定圧力を下回るまで心電図を逐次取得しておき、所定圧力を下回った後に、注入圧力が所定圧力を上回ってから当該所定圧力を下回るまでの注入圧力を記録制御部260にまとめて出力しても良い。
【0035】
また、上記実施の形態では、注入圧力、注入時間および心電図を互いに関連づけて記録する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、注入量、注入時間および心電図を互いに関連づけて記録しても良い。
【0036】
また、上記実施の形態では、心電図測定部140と心電図取得部220とを別体として構成する例について説明したが、心電図測定部140と心電図取得部220とを一体として構成しても良い。
【0037】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。