(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0012】
===第1実施形態===
本発明の第1実施形態に係る風向表示装置1000の全体構成を
図1〜
図4、
図8を参照しながら説明する。
本実施形態に係る風向表示装置1000は、例えば、製鉄所で発生する高炉ガスやコークス炉ガス等の各種副生ガスを燃料として発電する火力発電所内に設置される。そして本実施形態に係る風向表示装置1000は、火力発電所内で各種設備の点検や工事等を行う作業者に対して、昼夜を問わず、風上や風下を的確に知らせることが可能である。
【0013】
<<全体構成>>
本実施形態に係る風向表示装置1000は、
図1及び
図2に示すように、支柱100と、支柱100に軸支されて回転する本体200と、本体200に軸支されて回転する風車300と、本体200に装着される風向表示板250及び整流板240と、発電機400と、を備えて構成される。
【0014】
<支柱>
支柱100は、火力発電所に燃料ガスを輸送するための母管の交換や点検等が行われる作業場所の近傍に設置される。支柱100は、作業場所に応じて適宜移設あるいは移動可能にしておくことが好ましい。
支柱100内には第1回動軸110が鉛直方向に形成されている。そしてこの第1回動軸110に本体200がベアリング120を介して軸支される。
【0015】
<本体>
本体200は、ベアリング120を介して第1回動軸110に回動可能に軸支される。そして本体200は、第1回動軸110を中心にして水平方向に360°回動することができる。また本体200には、風車300を軸支するための第2回動軸220が形成されている。本体200は、この第2回動軸220が水平方向を向くように支柱100に取り付けられる。
また本体200には、後述する風向表示板250や整流板240が形成されている。
【0016】
<風車>
風車300は、本体200の第2回動軸220に軸支されている。風車300は、複数枚の羽根310を有して構成され、風を受けると、風圧により第2回動軸220を中心に回転すると共に、風車300の正面を風上に向ける。このため風車300は、風を受けると第2回動軸220が風向きと平行になるように本体200を、第1回動軸110を中心に回動させる。
また風車300には、第2回動軸220の周りにフライホイール320が装着されている。これにより、風車300の回転速度を安定化させることができる。
【0017】
<風向表示板>
風向表示板250は、本体200から立設される指示棒251と、指示棒251の先端部に形成される平面部252とを有して構成されている。
指示棒251は、本体200が支柱100に取り付けられた際に、本体200からさらに鉛直上方に延伸するように本体250に装着される。
平面部252は、一方の面を風上に向け、他方の面を風下に向けるように、指示棒251の先端部に設けられる。
また平面部252は、
図3及び
図4に示すように、風上を向く上記一方の面に第1発光部500が装着され、風下を向く上記他方の面に第2発光部600が装着されている。
【0018】
第1発光部500は、複数のLED(Light Emitting Diode)510を有して構成される。
図3に示すように、これらの複数のLED510は、平面部252の一方の面にリング状(第1態様、第1の形状)に配置されている。
第2発光部600は、複数のLED610を有して構成される。
図4に示すように、これらの複数のLED610は、平面部252の他方の面に、X字状(放射状に複数の直線が延伸する形状。第2態様、第2の形状)に配置されている。
【0019】
このため、作業者が風上から風向表示板250を見ると、第1発光部500から放射されるリング状の光を視認することができる。このように、第1発光部500は、複数のLED510を第1態様で点灯させることにより、風上であることが分かるようなメッセージを表示する。
同様に、作業者が風下から風向表示板250を見ると、第2発光部600から放射されるX字状の光を視認することができる。このように、第2発光部600は、複数のLED610を第1態様とは異なる第2態様で点灯させることにより、風下であることが分かるようなメッセージを表示する。
さらに、LED510やLED610の点灯によりメッセージが表示されるので、たとえ夜間であっても、風上を示すメッセージや風下を示すメッセージを視認することができる。
【0020】
<整流板>
整流板240は、本体200の近傍を風上から風下に向かって通過する風を整流すべく本体200に形成されている。そして
図1に示すように、整流板240の側面には、風向きに直交する水平方向に向けて光を放射する第3発光部700が装着されている。
【0021】
第3発光部700は、複数のLED710を有して構成される。これらのLED710は、風上から風下へ向かう矢印の形状(第3態様)に配置されている。
このため火力発電所内の作業者は、整流板240を見れば、たとえ夜間であっても、この第3発光部700から放射される矢印状(第3態様)の光を視認することで、現在の風向きを知ることができる。このように、第3発光部700が、複数のLED710を第1態様とも第2態様とも異なる第3態様で点灯させることにより、風向きを示すメッセージを表示する。
なおもちろん、
図1に示す整流板240の裏側にも同様に、風上から風下へ向かう矢印の形状(第3態様)に複数のLED710を配置して構成される第3発光部700が装着されている。
【0022】
<発電機>
発電機400は、風車300の回転エネルギーから交流電力を生成する。本実施形態に係る発電機400は、本体200の内部に設けられる設置台210に装着されている。
また本体200内には、発電機400により生成された交流電力を直流電力に変換する制御回路410が装着されている。制御回路410の構成を
図8に例示する。
【0023】
制御回路410は、発電機400により生成された交流電力を、ダイオード411により整流し、その後コンデンサ412により平滑化することで直流電力に変換する。
制御回路410により生成された直流電力は、第1発光部500、第2発光部600、第3発光部700に供給され、LED510、LED610、LED710を点灯させるために使用される。
【0024】
これにより、外部電源やバッテリ等を用いなくても第1発光部500、第2発光部600、第3発光部700を発光させることができるため、風向表示装置1000のメンテナンスが容易になると共に、停電等の障害が発生した場合であっても、風が吹いている場合には、確実に作業者に対して風上、風下、風向きを知らせることが可能となる。
【0025】
なお、無風時(風速が所定速度以下の場合)には風車300が回転しないため、第1発光部500、第2発光部600、第3発光部700を発光させるための電力は得られないが、そもそも無風時には風上や風下、風向きが定まらないため、第1発光部500、第2発光部600、第3発光部700を発光させないようにする。
このようにすることにより、無風時には、無風であるというメッセージも作業者に知らせることが可能となり、より正確な情報を作業者に知らせることができる。
【0026】
なお、制御回路410は、
図8に例示したような電子回路により構成される他にも、例えば、CPU(Central Processing Unit)やメモリ等の素子を備えた回路により構成され、メモリに記憶されたプログラムをCPUが実行することにより様々な制御を行うようにしてもよい。
【0027】
===第2実施形態===
次に本発明の第2実施形態に係る風向表示装置1000の全体構成を
図5〜
図8を参照しながら説明する。
【0028】
<<全体構成>>
第2実施形態に係る風向表示装置1000は、
図5〜
図7に示すように、支柱100と、支柱100に軸支されて回転する本体200と、本体200に軸支されて回転する風車300と、本体200に装着される整流板240と、発電機400と、を備えて構成される。
支柱100や風車300、発電機400の構成は、第1実施形態と同様である。
【0029】
<ディフューザ>
第2実施形態に係る風向表示装置1000の本体200には、ディフューザ230が形成されている。
ディフューザ230は、
図5に示すように、本体200の第2回動軸220の周りに沿って風車300を取り囲むように側面が形成された略円筒形の整流装置である。ディフューザ230は、本体200から延伸するディフューザ支柱231により本体200に取り付けられている。
【0030】
またディフューザ230は、
図6に示すように、風上側から風下側に向かって流路面積が漸次拡大するように側面を傾斜させる形状をしている。ディフューザ230をこのような形状にすることにより、ディフューザ230内の風車300を通過する風速を上昇させて発電量の増大を図ることができる。
【0031】
具体的には、ディフューザ230を装着することにより、単位時間に風車300を通過する風量を1.3倍〜1.5倍にすることができ、単位時間あたりの発電量も2倍〜3倍に高めることができる。
【0032】
またこのように発電効率が向上するため、風向表示装置1000を小型化することも可能となる上、風車300への飛来物の衝突を防止する保護カバーとしての機能も果たすことができる。さらには、作業者が過まって風車300の羽根310に接触するような事故を防止することもできるため、作業者に対する視覚的安心感も与えることができる。
【0033】
本実施形態に係る風向表示装置1000は、
図5に示すように、風上側に向けて傾斜するディフューザ230の外側面の周囲にリング状に第1発光部500が装着されている。
第1発光部500は、第1実施形態と同様に複数のLED510を有して構成され、これらのLED510は、ディフューザ230の外側面の周囲にリング状(第1態様、第1の形状)に配置されている。
【0034】
このため、作業者が風上からディフューザ230を見ると、第1発光部500から放射されるリング状の光を視認することができる。このように、第1発光部500は、複数のLED510を第1態様で点灯させることにより、風上であることが分かるようなメッセージを表示する。
さらに、LED510を点灯させることによりメッセージが表示されるので、たとえ夜間であっても、風上を示すメッセージを視認することができる。
【0035】
<整流板>
整流板240は、本体200の近傍を風上から風下に向かって通過する風を整流すべく本体200に形成されている。そして整流板240は、
図7に示すように、第2回動軸220を中心として放射状に(本実施形態ではX字型に)延伸するように形成されている。
【0036】
そして
図6及び
図7に示すように、整流板240の風下側の端部には、風下に向けて光を放射する第2発光部600が装着されている。この第2発光部600は、第1実施形態と同様に複数のLED610を有して構成されており、これらのLED610が整流板240の風下側の端部に風下に向けて発光するように取り付けられているため、第2発光部600は、X字状(放射状に複数の直線が延伸する形状。第2態様、第2の形状)に発光する。
【0037】
このため、作業者が風下から風向表示板250を見ると、第2発光部600から放射されるX字状の光を視認することができる。このように、第2発光部600は、複数のLED610を第1態様とは異なる第2態様で点灯させることにより、風下であることが分かるようなメッセージを表示する。
さらに、LED610の点灯によりメッセージが表示されるので、たとえ夜間であっても風下を示すメッセージを視認することができる。
【0038】
さらに、
図6に示すように、整流板240の側面には、風向きに直交する水平方向に向けて光を放射する第3発光部700が装着されている。
第3発光部700は、複数のLED710を有して構成される。これらのLED710は、風上から風下へ向かう矢印の形状。第3態様)に配置されている。
【0039】
これにより、作業者は、整流板240に装着された第3発光部700を見れば、たとえ夜間であっても、この第3発光部700から放射される矢印状(第3態様、第3の形状)の光を視認することで、現在の風向きを知ることができる。このように、第3発光部700が、複数のLED710を第1態様とも第2態様とも異なる第3態様で点灯させることにより、風向きを示すメッセージを表示する。
【0040】
なおもちろん、
図6に示す整流板240の反対側にも同様に、風上から風下へ向かう矢印の形状(第3態様、第3の形状)に複数のLED710を配置して構成される第3発光部700が装着されている。
【0041】
===その他の実施形態===
風向表示装置1000は、風が吹いているときに発電機400が生成した電力を蓄積しておく適宜な蓄電装置(不図示)を備える構成としてもよい。
【0042】
この場合、風向表示装置1000は、発電機400が生成した電力をこの蓄電装置に蓄えておき、無風時には、この蓄電装置に蓄えておいた電力を用いて、第1発光部500、第2発光部600、第3発光部700を、第1態様とも第2態様とも第3態様とも異なる第4態様(例えば三角形や水平方向の直線(−)、あるいは点滅させる)で発光させることにより、無風であることを示すメッセージを表示するようにすることもできる。
このようにすることにより、無風時であっても、無風であるというメッセージを、LED510、610、710を発光させることにより明示的に作業者に表示することが可能となるので、夜間であってもより的確に風の状態を作業者に知らせることができる。
【0043】
その他、風向表示装置1000は、適宜な風速計(不図示)を備えるようにしてもよい。この場合、風向表示装置1000は、この風速計を用いて風速を計測し、風速計から得られるデータ(風速情報)を基に、制御回路410が、第1発光部500、第2発光部600、第3発光部700に風速を表す数字を表示するようにすることもできる。この場合、例えば、第1発光部500は第1の色(例えば白色)で発光し、第2発光部600は第1の色とは異なる第2の色(例えば赤色)で発光し、第3発光部700は第1の色とも第2の色とも異なる第3の色(例えば緑色)で発光するようにする。
このようにすれば、作業者は風上、風下、風向きを発光色により知ることができるのみならず、風速値も知ることが可能となる。
【0044】
また風向表示装置1000に、風車300の回転速度を検出する速度検出センサを設け、制御回路410が、この速度検出センサから取得した風車300の回転速度を示すデータに基づいて風速を算出し、第1発光部500、第2発光部600、第3発光部700に風速を表す数字を表示するようにしてもよい。
【0045】
以上、本実施形態の風向表示装置1000について説明したが、本実施形態に係る風向表示装置1000によれば、夜間であっても、風上や風下を的確に周囲に知らせることが可能となる。
【0046】
なおこれらの実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0047】
例えば、第1発光部500は風上を示す第1態様で発光し、第2発光部600は風下を示す第2態様で発光し、第3発光部700は風向を示す第3態様で発光し、また無風時には、第1発光部500、第2発光部600、第3発光部700ともに第4態様で発光するとした例を説明したが、例えばこの場合、これらの各態様を、それぞれ、発光面の形状(リング形状、X形状、三角形等)を異ならしめることにより区別するようにすることもできるし、発光色(赤色、白色、緑色、黄色、オレンジ、青色等)を異ならしめることにより区別するようにすることもできるし、様々な点滅パターンを異ならしめることにより区別するようにすることもできる。
【0048】
あるいは、第1発光部500、第2発光部600、第3発光部700に、ひらがなやカタカナ、漢字、アルファベット等の文字を表示させることにより、各態様を区別するようにすることもできる。例えば、第1発光部500を構成するLED510を「風上」と漢字で表示されるように点灯させることもできる。同様に第2発光部600を構成するLED610を「風下」と漢字で表示されるように点灯させることもできる。
このようにすれば、風上や風下を、より分かりやすく表示することが可能となる。