特許第6013002号(P6013002)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013002
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】生体信号表示装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/08 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
   A61B5/08
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-80710(P2012-80710)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-208286(P2013-208286A)
(43)【公開日】2013年10月10日
【審査請求日】2015年3月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112602
【氏名又は名称】フクダ電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(72)【発明者】
【氏名】藤原 裕貴
【審査官】 山口 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−61814(JP,A)
【文献】 特開2003−000559(JP,A)
【文献】 特開2006−187510(JP,A)
【文献】 特開2010−148964(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/91168(WO,A1)
【文献】 特開2011−156029(JP,A)
【文献】 特開平5−154118(JP,A)
【文献】 特開平6−142071(JP,A)
【文献】 特開2000−181533(JP,A)
【文献】 国際公開第02/053209(WO,A1)
【文献】 国際公開第2004/034902(WO,A1)
【文献】 特表2011−500121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無呼吸または低呼吸の有無を確認するために測定した呼吸関連波形を表示する生体信号表示装置であって、
予め定めた時間分の呼吸関連波形のデータを取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した呼吸関連波形のデータから、予め定めた条件を満たす正常呼吸波形の振幅を算出する算出手段と、
前記呼吸関連波形のデータを予め定められた大きさを有する表示領域に表示する際の、振幅の表示倍率を決定する決定手段と、
前記決定手段が決定した表示倍率で予め定めた時間分の呼吸関連波形のデータを前記表示領域に表示する表示手段と、を有し、
前記決定手段は、前記正常呼吸波形の振幅が、前記表示領域における振幅軸の長さの80%〜100%の範囲内の定められた割合で表示されるような表示倍率を決定し、
前記取得手段が取得する呼吸関連波形のデータが更新されると、前記算出手段および前記決定手段は、前記正常呼吸波形の振幅および前記表示倍率を自動的に更新し、前記表示手段は、該更新された表示倍率で、前記更新された呼吸関連波形のデータを表示することを特徴とする生体信号表示装置。
【請求項2】
ユーザから前記呼吸関連波形のデータの表示区間を連続的に変更する指示が入力されている場合、前記表示手段は、前記取得手段が取得した前記呼吸関連波形のデータを1倍の表示倍率で前記表示領域に表示し、前記指示が入力されなくなると、前記取得手段が取得した前記呼吸関連波形のデータを前記決定手段が決定した表示倍率で前記表示領域に表示することを特徴とする請求項1記載の生体信号表示装置。
【請求項3】
前記表示領域が複数存在する場合、
前記算出手段は、前記表示領域に表示する呼吸関連波形の区間ごとに前記振幅を算出し、
前記決定手段は、前記表示領域に表示する呼吸関連波形の区間ごとに前記表示倍率を算出し、
前記表示手段は、前記表示領域に表示する呼吸関連波形の区間ごとの前記表示倍率で前記呼吸関連波形のデータを表示する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の生体信号表示装置。
【請求項4】
前記呼吸関連波形が、口呼吸波形、鼻呼吸波形、胸部および/または腹部の呼吸努力波形、および胸骨上窩波形の少なくとも1つであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の生体信号表示装置。
【請求項5】
前記算出手段は、上に凸の波形と下に凸の波形とが交互に存在し、かつ、所定の最低基準振幅の所定割合以上の振幅を有する波形のうち、最大振幅を有する波形を除く波形を前記正常呼吸波形として抽出し、前記正常呼吸波形の振幅を算出することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の生体信号表示装置。
【請求項6】
前記算出手段は、前記所定の最低基準振幅を、前記抽出した前記正常呼吸波形の振幅にもとづいて順次更新することを特徴とする請求項5に記載の生体信号表示装置。
【請求項7】
無呼吸または低呼吸の有無を確認するために測定した呼吸関連波形を表示する生体信号表示装置の制御方法であって、
前記生体信号表示装置の算出手段が、前記生体信号表示装置の取得手段が取得した、予め定めた時間分の呼吸関連波形のデータから、予め定めた条件を満たす正常呼吸波形の振幅を算出する算出ステップと、
前記生体信号表示装置の決定手段が、前記呼吸関連波形のデータを予め定められた大きさを有する表示領域に表示する際の、振幅の表示倍率を決定する決定ステップと、
前記生体信号表示装置の表示手段が、前記決定手段が決定した表示倍率で予め定めた時間分の呼吸関連波形のデータを前記表示領域に表示する表示ステップと、を有し、
前記決定ステップでは、前記正常呼吸波形の振幅が、前記表示領域における振幅軸の長さの80%〜100%の範囲内の定められた割合で表示されるような表示倍率を決定し、
前記取得手段が取得する呼吸関連波形のデータが更新されると、前記算出手段および前記決定手段は、前記算出ステップおよび前記決定ステップを自動的に実行し、前記表示手段は、該更新された表示倍率で、前記表示ステップを実行することを特徴とする生体信号表示装置の制御方法。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1乃至請求項の何れか1項に記載の生体信号表示装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体信号表示装置およびその制御方法に関し、特には生体信号の波形表示技術に関する。
【背景技術】
【0002】
睡眠時無呼吸(低呼吸)症候群(Sleep Apnea (Hypopnea) Syndrome: SASまたはSAHS)は、睡眠の分断による過度の日中傾眠を伴い、睡眠時に10秒以上連続した無呼吸が5回/時間又は30回/7時間以上発生する疾患である。以下では便宜上、SASとSAHSを併せて単にSASと呼ぶ。
【0003】
SASは大きく分けて閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)、中枢型睡眠時無呼吸症候群(CSAS)及びこれらの混合型である混合型睡眠時無呼吸症候群(MSAS)に分類されると考えられている。なお、MSASはCSASからOSASに移行していくため、OSASと見なされる場合もある。
【0004】
このうち、OSASは、睡眠が深くなると気道の筋が弛緩し、舌が自重で沈下して気道を塞ぐことにより発生するものと考えられている。閉塞状態では酸欠状態に陥るため、睡眠が浅くなり(断眠)、起動の筋が緊張して閉塞及び酸欠が緩和もしくは解消する。すると睡眠が深くなり、再度閉塞状態に陥る。このようなサイクルを睡眠中何度も繰り返すため、本人は睡眠時間を十分取ったつもりでも実際には十分な睡眠が得られておらず、結果として非睡眠時に強烈な眠気に襲われ、業務に支障を来したりする。
【0005】
睡眠時無呼吸低呼吸症候群の診断には、口鼻呼吸、いびき、動脈血酸素飽和度(SPO2)、呼吸努力運動、脳波、眼球運動、頤筋筋電図、心電図、体位などの測定を終夜行う終夜睡眠ポリグラフ(Poly-Somno-Graphy:PSG)検査が必要である。しかしながら、終夜睡眠ポリグラフ検査は、通常、病院での宿泊を要し、また多数のセンサ類を装着する必要があるため、被検者の負担が比較的大きい。そのため、終夜睡眠ポリグラフ検査を行う前に、より簡便なスクリーニング検査(簡易PSG検査)を行うことが多い。例えば特許文献1には、無呼吸及び低呼吸の有無、回数やSpO2値、いびき、呼吸努力運動といったスクリーニング検査に用いる睡眠時無呼吸検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−320732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
SASの診断には、無呼吸や低呼吸の存在を確認することが重要である。通常、無呼吸や低呼吸の検出は、呼吸関連波形の測定結果に基づいて行われる。測定される呼吸関連波形としては、口呼吸波形、鼻呼吸波形、呼吸努力波形(腹部および/または胸部の運動波形)、胸骨上窩波形などがある。鼻/口呼吸波形は、鼻カニューレに接続された圧力センサや、口や鼻の近傍に取り付けられた温度センサ等によって測定するのが一般的である。また、呼吸努力波形は、呼吸努力運動による胸囲および/または腹囲の変化を、加速度センサや圧電素子などを用いて電気抵抗の変化として測定するのが一般的である。また、胸骨上窩波形は、胸骨の動きを加速度センサや圧力センサなどで測定するのが一般的である。
【0008】
従来、測定した呼吸関連波形を表示する機能を提供する生体信号表示装置においては、得られた呼吸関連波形の振幅の大小に関わらず、所定の基準倍率で呼吸関連波形を表示していた。すなわち、時間軸については、予め画面内に設定された表示領域の長さ方向(通常は水平方向)の幅が、予め定められた表示区間(例えば1分〜60分程度)を表す表示倍率で、振幅については、測定される呼吸関連波形において想定される最大振幅が表示領域の高さ方向(通常は垂直方向)の幅の95〜100%程度となるように予め設定された表示倍率で、それぞれ表示していた。
【0009】
呼吸関連波形の表示は、例えば測定装置が自動検出した無呼吸区間や低呼吸区間が本当に無呼吸区間や低呼吸区間なのかを波形を目視して確認したり、装置が検出しなかった無呼吸区間や低呼吸区間の有無を波形を目視して確認するために用いられることが多い。
【0010】
しかしながら、呼吸関連波形の振幅は、センサの装着状態や睡眠中の体位はもちろん、鼻カニューレに接続された圧力センサを用いる場合には口呼吸の影響も受ける。また、呼吸の大きさは個人差が大きい。そのため、特に、全体的に振幅が小さい場合、基準倍率での表示では、無呼吸区間や低呼吸区間を目視で確認することが難しくなる。
【0011】
従来、このような問題に対応するため、表示領域に倍率変更用のGUIを設け、振幅の表示倍率を基準倍率からユーザが手動で変更可能にした生体信号表示装置も存在する。しかしながら、複数種の呼吸関連波形について、それぞれの振幅が適切になるように倍率を調整することは手間がかかる。
【0012】
また、同一種の呼吸関連波形であっても、睡眠中の体位の変動などにより、測定された時刻によって振幅が大きかったり小さかったりする。そのため、ある表示区間についてユーザが手動で表示倍率を変更した場合、異なる区間を表示する際に、変更後の表示倍率を維持するようにしても、基準倍率に戻すようにしても、適切な表示倍率とはならない可能性がある。この場合には、再度表示倍率を手動で調整する必要がある。さらに、元の表示区間に戻す場合であっても、同様に再調整が必要となる。
【0013】
このような手動調整を、さまざまな呼吸関連波形について逐次行うことは、非常に煩雑である。特に、睡眠時無呼吸低呼吸症候群のスクリーニングや診断を目的として呼吸関連波形を測定する場合、測定時間は7〜24時間といった長時間となるため、表示区間の変更は頻繁に行われうる。そのため、上述した表示倍率の調整に係る手間の問題が特に大きくなる。
【0014】
本願発明はこのような従来技術の課題に鑑みなされたものであり、その主な目的は、呼吸関連波形から無呼吸区間や低呼吸区間を目視により判別するために適切な表示倍率を自動的に設定可能な生体信号表示装置およびその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述の目的は、無呼吸または低呼吸の有無を確認するために測定した呼吸関連波形を表示する生体信号表示装置であって、予め定めた時間分の呼吸関連波形のデータを取得する取得手段と、取得手段が取得した呼吸関連波形のデータから、予め定めた条件を満たす正常呼吸波形の振幅を算出する算出手段と、呼吸関連波形データを予め定められた大きさを有する表示領域に表示する際の、振幅の表示倍率を決定する決定手段と、決定手段が決定した表示倍率で予め定めた時間分の呼吸関連波形のデータを表示領域に表示する表示手段と、を有し、決定手段は、正常呼吸波形の振幅が、表示領域における振幅軸の長さの80%〜100%の範囲内の定められた割合で表示されるような表示倍率を決定し、取得手段が取得する呼吸関連波形のデータが更新されると、算出手段および決定手段は、正常呼吸波形の振幅および表示倍率を自動的に更新し、表示手段は、更新された表示倍率で、更新された呼吸関連波形のデータを表示することを特徴とする生体信号表示装置によって達成される。
【発明の効果】
【0016】
このような構成により、本発明の生体信号表示装置によれば、呼吸関連波形から無呼吸区間や低呼吸区間を目視により判別するために適切な表示倍率を自動的に設定可能である。そのため、例えば睡眠時無呼吸低呼吸症候群のスクリーニングや診断を目的としたような長時間かつ複数種測定された呼吸関連波形を目視確認するための手間が大幅に減少し、ユーザの使い勝手を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る生体信号表示装置の一例としての生体信号測定装置の構成例を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る生体信号測定装置における呼吸関連波形の表示動作の例を説明するためのフローチャートである。
図3】本発明の実施形態に係る生体信号測定装置における呼吸関連波形の表示例を模式的に示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る生体信号測定装置における呼吸関連波形の表示動作の変形例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明をその好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る生体信号表示装置の一例としての、生体信号測定装置100の構成例を示すブロック図である。なお、本実施形態の生体信号測定装置は、表示に供される呼吸関連波形データを直接被検者から取得するための構成を有している。しかしながら、本発明において呼吸関連波形データを直接被検者から取得するための構成は必須で無い。本発明に係る生体信号表示装置は、予め測定された呼吸関連波形データを、例えば直接またはネットワークを介して接続された記憶装置や記憶媒体から取得するなど、任意の方法で取得可能であればよい。
【0019】
(構成)
本実施形態に係る生体信号測定装置100において、SpO2センサ101は、動脈血酸素飽和度(SpO2)を例えば被検者の指先で測定する反射式のセンサである。カニューレ102は、被検者の鼻孔近傍に開口を有し、接続された圧力センサ106によって、被検者の鼻呼吸波形や、いびき音を検出するために用いられる。胸部・腹部センサ103は、被検者の呼吸努力運動を検出するためのセンサである。
【0020】
心電図電極104は、主に心拍数を検出するために心電図を取得するための電極であり、例えば単極または双極2チャンネルの心電図を検出するための電極である。加速度センサ105は、体位(例えば、右側臥位、左側臥位、仰臥位、伏臥位、および立位)を測定するためのセンサである。
【0021】
メモリ107は、制御部110が作業用に用いる。なお、装置の設定値などが記憶される不揮発性の領域を有してもよい。表示部108は例えば液晶ディスプレイ(LCD)を有し、装置の動作状況、測定波形、ユーザ情報、GUIなどの表示に用いる。
【0022】
制御部110は、生体信号測定装置100の動作を制御する。制御部110は例えばCPUと、CPUが実行する制御プログラムを記憶する不揮発性メモリと、CPUが不揮発性メモリから読み出したプログラムを実行するために用いるRAMを有する。なお、不揮発性メモリおよびRAMは、メモリ107であってもよい。
【0023】
入力部109は、ユーザが各種の指示や設定を入力するために用いられる。入力部109はユーザが指示や設定を入力可能な任意の入力機器を有することができる。入力機器にはスイッチ、ボタン、ダイヤル、タッチパネル等、機械的な入力を行う機器はもちろん、音声認識などの非機械的な入力を受け付ける機器であってもよい。入力部109からの入力は制御部110に与えられ、制御部110は入力に応じた動作を実現させる。
【0024】
なお、スピーカ等の発音手段を設け、装置の動作状態やエラー発生、操作手順などを音声などによってユーザに報知するように構成してもよい。
【0025】
記録部111は測定したデータを記録媒体に記録したり、記録媒体に記録された測定済みのデータを読み出したりする。記録部の構成は使用する記録媒体によって異なり、使用する記録媒体に特に制限は無いが、小型化や低消費電力等の観点から、半導体メモリカードを好適に用いることができる。
【0026】
出力部112は外部装置と通信するためのインタフェースである。接続可能な外部機器の種類や通信プロトコルに特に制限は無く、また、通信媒体も有線、無線のいずれであってもよい。
【0027】
(測定・記録動作)
各種のセンサ101〜105が被検者の所定部位に装着され、入力部109から測定開始の指示が入力されると、生体信号測定装置100は生体信号の測定・記録を開始する。制御部110は、各種のセンサ101,103〜106からの入力信号に対して例えばA/D変換やフィルタ処理など予め定められた処理を適用し、測定時刻と対応付けてメモリ107に順次書き込んでゆく。なお、鼻/口鼻呼吸波形はカニューレ102に接続された圧力センサ106から取得される。なお、カニューレが鼻カニューレであれば鼻呼吸波形が、口の近傍にも開口を有する口鼻カニューレであれば口鼻呼吸波形が得られる。また、呼吸努力波形は胸部・腹部センサから得られる。なお、本実施形態では胸骨上窩波形は測定していないが、胸部上窩波形を取得するように構成してもよい。なお、圧力センサ106の出力からはいびきの有無についても検出可能である。
【0028】
制御部110は、各種波形や測定値を順次メモリに書き込むとともに、測定データの解析処理を行う。解析処理では、無呼吸や低呼吸区間の有無、継続期間および回数、体位とその変化、SpO2の所定%以上の低下の有無、継続期間および回数、脈拍数(最大、最小、平均)などを取得する。
【0029】
制御部110は、メモリに書き込んだ各種波形や測定値を記録部111に供給し、記録媒体に順次所定のファイル形式で記録する。解析で得られた情報もまた、記録部111で記録する。
【0030】
(呼吸波形の表示)
次に、本実施形態の生体信号測定装置100における呼吸波形表示動作について、図2に示すフローチャートを用いて説明する。なお、以下では、本発明に特徴的な呼吸波形の表示動作についてのみ説明するが、他の測定波形や測定値などの表示を併せて実行してもよいことは言うまでもない。
S101で制御部110は、記録部111から、記録された測定済みの呼吸関連波形データ(口鼻呼吸波形、鼻呼吸波形、呼吸努力波形(腹部および/または胸部の運動波形)、胸骨上窩波形などの1つ以上)を所定量読み出し、メモリ107に書き込む。ここで、読み出すデータ量は表示領域に表示する区間以上とすることが好ましい。
【0031】
S103で制御部110は、読み出した呼吸関連波形データから、正常呼吸波形を抽出する。
ここで、正常呼吸波形とは、被検者の正常時の呼吸波形であり、制御部110は例えば次のような条件を満たす波形を正常呼吸波形として抽出する。
・呼吸波形と推定される波形であること
・所定の最低基準振幅の所定割合(例えば30〜50%)以上の振幅を有すること
【0032】
なお、呼吸波形と推定される波形は、山(上に凸の波形)と谷(下に凸の波形)のペア(山と谷が交互に存在するもの)であり、所定値を超える振幅(山と谷のピーク間距離)を有する波形とする。この所定値は直前の所定時間内(例えば数分間)の呼吸波形振幅の絶対値平均の所定割合(例えば20〜30%の範囲から選択された値)とし、順次更新する。ただし、最初の所定時間については予め定めた固定値を用いるものとする。
また、検出精度を向上させるために、ペアとなる山と谷の時間幅(ピークの時間差)や、隣接する山の時間幅などの条件をさらに適用してもよい。
【0033】
また、最低基準振幅についても、直前の所定時間内(例えば数分間)の正常呼吸波形の振幅の平均値に基づいて順次更新する。ただし、最初の所定時間については予め定めた固定値を用いるものとする。
また、検出精度を向上させるために、直前の所定時間内で検出された正常呼吸の数に応じて、平均する振幅を変更してもよい。例えば、正常呼吸の数が多ければ(所定数以上であれば)、2番目に大きな振幅からn(n≧3)番目に大きな振幅までの平均値とし、正常呼吸の数が所定数未満であれば、全ての振幅の平均値とすることができる。なお、前者において最大振幅を除外しているのは、ノイズなどの影響により極端に大きな振幅が含まれる可能性を考慮しているためである。
【0034】
S105で制御部110は、S103で抽出した正常呼吸波形の振幅から、表示倍率を決定する。
図3(a)は、呼吸関連波形の一例としての口鼻呼吸波形の表示領域の例を示す図である。表示領域は、呼吸関連波形を表示する波形表示領域300を有し、制御部110は、波形表示領域の幅301とほぼ等しい時間軸が表す時間分(表示区間)の波形データを、時間軸方向について、波形表示領域300の時間軸の縮尺に応じた表示倍率で表示する。制御部110は、まず、時間軸方向の表示倍率を、波形表示領域300の幅(画素数)と、設定された表示区間の長さ(例えば1〜60分)とに応じて決定する。このように、時間軸方向の表示倍率は、正常呼吸波形の振幅とは独立した表示倍率であり、表示区間の長さが固定の場合には固定値を用いることができる。また、表示区間の長さが可変の場合でも、前回表示した際から変化が無ければ、前回用いた表示倍率をそのまま用いることができる。
【0035】
一方、振幅については、波形表示領域の高さ302とほぼ等しい振幅軸に設定された基準の縮尺に対応する表示倍率を1倍(×1)として、正常呼吸波形の振幅に基づいて動的に決定する。
なお、波形表示領域の左側には、呼吸関連波形の種類とともに、振幅の表示倍率を手動で調整するためのボタン303と、現在の振幅の表示倍率が表示されている。なお、振幅の表示倍率を上下させることは測定感度を上下させることと見た目上類似であるため、振幅の表示倍率を表示感度と呼ぶこともできる。
【0036】
振幅軸の基準の縮尺は、表示する呼吸関連波形について、一般的に得られる最大振幅値を統計的に求め、この最大振幅値が振り切れずに表示できるように、波形表示領域の高さ(画素数)に応じて決定される。そのため、測定値のレベルが全体的に低い場合、基準の表示倍率では無呼吸区間や低呼吸区間を波形表示から判別することが難しい場合がある。
【0037】
例えば、図3(b)は、全体的にレベルが低い呼吸関連波形データを、基準表示倍率で表示した状態を模式的に示している。この表示区間には、生体信号測定装置の波形解析により、低呼吸区間と判定された区間が含まれているが、基準表示倍率での表示では、低呼吸区間と判定されていない他の区間(正常呼吸波形)の振幅との差異がわかりにくく、装置の自動解析結果が正しいのかどうかの判断が付けにくい。
【0038】
本実施形態において、制御部110は、表示区間の呼吸関連波形データに含まれる正常呼吸波形の振幅を求め、その最大振幅値が振幅軸の長さ(高さ)302の80〜100%、好ましくは85〜98%、さらに好ましくは90〜95%の範囲から選択された所定割合となるように振幅の表示倍率を決定する。
【0039】
所定割合は固定値であってもよいし、範囲の中で、0.5倍単位の表示倍率に対応する値として動的に決定してもよい。例えば、ボタン303による表示倍率の調整単位(例えば0.5倍単位や1倍単位)と同じ単位の表示倍率となるように、上述の範囲から決定することができる。
【0040】
なお、振幅の表示倍率を決定する際に用いる正常呼吸波形の振幅は、表示区間の呼吸関連波形データに含まれる全ての正常呼吸波形の振幅のうちの最大値であってもよいし、最大振幅から3ないし5番目までの振幅の平均値であってもよい。また、最大値はノイズである可能性を考慮し、最大振幅は用いないようにしてもよい。
【0041】
S107で制御部110は、S105で決定した表示倍率で、呼吸関連波形を表示部108の表示領域に表示する。図3(c)は、図3(b)の呼吸関連波形を、正常呼吸波形の振幅に基づいて、1倍単位となるように決定した振幅の表示倍率(×4)で表示した状態を模式的に示している。これにより、波形解析により低呼吸区間と判定された区間が、正しく判定されていることが分かる。
【0042】
S109で制御部110は、入力部109を通じてユーザから呼吸関連波形の表示区間の変更が指示されているかどうか確認する。表示区間の変更指示が入力されている場合、制御部110は表示区間を更新してS101からの処理を実行する。表示区間の変更指示が入力されていなければ、制御部110は変更指示の入力を待機する。なお、S109においては、表示区間の変更入力以外の入力が検出されれば、制御部110はその処理を実行する。例えば、予め定められた指示の入力、例えばボタン303の操作による振幅表示倍率の手動調整入力が検出された場合、制御部110はボタン303の押下に基づいて振幅表示倍率を変更する。
【0043】
なお、ここでは、説明および理解を容易にするため、表示領域が1つであり、表示される呼吸関連波形も1種類である場合を説明した。しかし、表示領域が複数存在する場合に、上述の自動的な表示倍率の決定ならびに表示動作が、表示領域ごと(表示区間ごと)に実行されうることは容易に理解されよう。
【0044】
このように、本実施形態によれば、呼吸関連波形を表示する際、振幅が小さい呼吸関連波形については表示倍率を自動的に上げて表示するため、呼吸関連波形から無呼吸区間や低呼吸区間を確認する際に、手動で表示倍率を調整する手間が省け、使い勝手のよい生体信号表示装置が実現できる。
【0045】
また、呼吸関連波形の表示倍率は表示区間が更新されると動的に決定されるため、測定された呼吸関連波形のレベルが経時的に変化する場合であっても、常に適切な表示倍率で表示される。そのため、睡眠時無呼吸低呼吸症候群のスクリーニング検査のような、長時間にわたっての測定であり、また測定中にセンサの取り付け状況が変化したり体位が変化したりしたことにより、測定レベルが変動しうる呼吸関連波形を表示する場合に特に好適である。
【0046】
(変形例)
なお、呼吸関連波形の表示区間の変更指示が連続的に入力されている場合には、固定の表示倍率で波形表示を行い、表示区間の変更指示が入力されなくなった時点で表示倍率の決定および決定した表示倍率での波形表示を実行するように構成することもできる。これは、表示区間の変更指示が連続的に入力されている場合、ユーザが波形表示区間を連続適に変更させながら、目視で確認したい部分を探索している可能性が高く、表示倍率を自動的に調整して表示するより、表示区間の変更をスムーズに実行したほうが利便性が高いと考えられるからである。
【0047】
この場合、表示処理の動作は、図4に示すフローチャートのように変更される。図4において、図2と同じ動作ステップについては参照数字を共通とし、説明を省略する。
S102で制御部110は、表示区間の変更が連続して指示されているか判別する。これは、例えば入力部109の特定のキーが連続して押下されているかどうかの判別であってよい。
【0048】
表示区間の変更が連続して指示されている場合、制御部110はS106で振幅の表示倍率を基準表示倍率に設定する。表示区間の変更が連続して指示されていない場合には、図2で説明したように、S103からの処理を実行し、表示区間に含まれる正常呼吸波形の振幅に応じた振幅倍率の決定と表示を行う。
【0049】
これにより、入力部109の特定のキーの押下が解除されると、その時点における表示区間の波形表示について、正常呼吸波形の振幅に基づく表示倍率での表示が行われる。
【0050】
変形例によれば、ユーザが波形表示をブラウジングしている場合には基準表示倍率での表示を行い、表示区間が決定した時点で表示倍率を決定するため、スムーズなブラウジング(表示区間の連続的な変更)と、波形の目視に適した倍率での表示とを両立することが可能となり、ユーザの使い勝手がより向上する。
【0051】
なお、本発明に係る生体信号表示装置は、一般的に入手可能な、パーソナルコンピュータのような汎用情報処理装置に、図2図4の表示動作を実行させるプログラム(アプリケーションソフトウェア)として実現することもできる。従って、このようなプログラムおよび、プログラムを格納した記憶媒体(CD−ROM、DVD−ROM等の光学記録媒体や、磁気ディスクのような磁気記録媒体、半導体メモリカードなど)もまた本発明を構成する。
図1
図2
図4
図3