(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
励起光を受けて放出光を発生させるレーザ媒質、光吸収の飽和により光吸収率が小さくなる可飽和吸収体、前記励起光を透過させる第一反射部、並びに前記レーザ媒質および前記可飽和吸収体を共振光路上に有して前記放出光を共振させるレーザ共振器を前記第一反射部と共に構成する第二反射部が一体化されて成るレーザ発振部と、
前記励起光を出力する励起光源と、
前記励起光源から出力された前記励起光をファスト軸方向にコリメートするコリメートレンズと、
前記コリメートレンズを経た前記励起光をスロー軸方向にコリメートするとともに、前記励起光を反射する第三反射部と、
前記第三反射部により反射された前記励起光を前記レーザ発振部の前記レーザ媒質へ向けて集光する集光部と、
前記レーザ発振部、前記励起光源、前記コリメートレンズ、前記第三反射部、及び前記集光部を支持し、互いに直交する3軸方向において前記励起光源を位置決めし、前記第一反射部に入射する前記励起光の光軸方向と直交し且つ互いに直交する2軸方向において前記レーザ発振部を位置決めするベース部材と、
前記レーザ発振部、前記励起光源、前記コリメートレンズ、前記第三反射部、前記集光部、及び前記ベース部材を収容するとともに、前記レーザ発振部から出力されるレーザ光を通過させる光出射窓を有するパッケージと、
前記ベース部材と熱的に結合された冷却機構と
を備えることを特徴とする、レーザ装置。
前記第三反射部が、前記レーザ発振部の前記第一反射部から出力されるレーザ光の反射を防止する反射防止膜を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のレーザ装置。
前記第三反射部に入射する前記励起光の光軸と、前記第三反射部において反射された前記励起光の光軸との成す角度が鋭角であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載のレーザ装置。
前記ベース部材は、前記レーザ発振部を支持する第一部材と、前記励起光源を支持する第二部材とに分割されており、前記第一部材及び前記第二部材は互いに間隔をあけて配置されており、
前記第一部材と前記パッケージとの間に配置された第1の前記冷却機構と、
前記第二部材と前記パッケージとの間に配置された第2の前記冷却機構と、
前記第一部材上に設けられた第一温度測定部と、
前記第二部材上に設けられた第二温度測定部と
を備えることを特徴とする、請求項1に記載のレーザ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザ媒質および可飽和吸収体を備えるレーザ光源では、励起光源からレーザ媒質に励起光が供給される。この励起光は、レーザ光源から出力されたのち、ファスト軸方向およびスロー軸方向における平行化(コリメート)が為され、その後、レーザ媒質へ向けて集光される。したがって、これらのコリメート及び集光の為の光学系が必要となる。
【0005】
一方、レーザ光源の用途によっては、レーザ光源の小型化やパッケージ化が求められる。また、パッケージとしては、ハーメチックシールによって気密封止し得るもの(例えば30mm四方の小型パッケージ)が望ましい。しかしながら、上述したように、レーザ媒質および可飽和吸収体を備えるレーザ光源では、レーザ媒質および可飽和吸収体の他にコリメート及び集光の為の光学系が必要となるので、特許文献1に記載されたような従来の構成では、小型化やパッケージ化が困難である。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、レーザ媒質、可飽和吸収体、及び励起光源を備えており、小型化及びパッケージ化が可能なレーザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明によるレーザ装置は、励起光を受けて放出光を発生させるレーザ媒質、光吸収の飽和により光吸収率が小さくなる可飽和吸収体、励起光を透過させる第一反射部、並びにレーザ媒質および可飽和吸収体を共振光路上に有して放出光を共振させるレーザ共振器を第一反射部と共に構成する第二反射部が一体化されて成るレーザ発振部と、励起光を出力する励起光源と、励起光源から出力された励起光をファスト軸方向にコリメートするコリメート
レンズと、コリメート
レンズを経た励起光をスロー軸方向にコリメートするとともに、励起光を反射する第三反射部と、第三反射部により反射された励起光をレーザ発振部のレーザ媒質へ向けて集光する集光部と、レーザ発振部、励起光源、コリメート
レンズ、第三反射部、及び集光部を支持し、互いに直交する3軸方向において励起光源を位置決めし、第一反射部に入射する励起光の光軸方向と直交し且つ互いに直交する2軸方向においてレーザ発振部を位置決めするベース部材と、レーザ発振部、励起光源、コリメート
レンズ、第三反射部、集光部、及びベース部材を収容するとともに、レーザ発振部から出力されるレーザ光を通過させる光出射窓を有するパッケージと、ベース部材と熱的に結合された冷却機構とを備えることを特徴とする。
【0008】
このレーザ装置において、励起光源から出力された励起光は、まずコリメート
レンズによってファスト軸方向にコリメートされる。次に、この励起光は、第三反射部(例えばスロー軸方向に湾曲した光反射面を有する部材)によってスロー軸方向にコリメートされるとともに、反射により光路が変更される。続いて、この励起光は、集光部(例えば集光レンズ)によってレーザ発振部のレーザ媒質へ向けて集光される。レーザ発振部では、この励起光によってレーザ媒質において放出光が発生するとともに、可飽和吸収体が受動Qスイッチとして動作することにより、第一反射部と第二反射部との間でレーザ共振が断続的に生じてパルスレーザ光が発生する。このレーザ光は、パッケージの光出射窓を通過してパッケージの外部へ出力される。
【0009】
上記レーザ装置のレーザ発振部は、レーザ媒質、可飽和吸収体、第一反射部及び第二反射部が一体化されて成る。このようなレーザ発振部によって、レーザ共振器を小型化することができる。また、上記レーザ装置では、第三反射部が励起光を反射することにより励起光の光路が折り曲げられるので、励起光の光路が直線状である場合と比較して、レーザ装置を小型化することができる。更に、上記レーザ装置では、第三反射部が、励起光の反射とスロー軸方向のコリメートとを併せて行うので、スロー軸方向のコリメートのための光学部品を省いて更に小型化することができる。このように、上記レーザ装置によれば、従来のレーザ装置と比較して格段の小型化が可能となるので、上記パッケージを、例えばハーメチックシールが可能な小型パッケージとすることも可能である。
【0010】
また、上記レーザ装置では、ベース部材が、互いに直交する3軸方向(例えば縦方向、横方向、及び深さ方向)において励起光源を位置決めするとともに、第一反射部に入射する励起光の光軸方向と直交し且つ互いに直交する2軸方向(例えば横方向及び深さ方向)においてレーザ発振部を位置決めする。これにより、小型のレーザ装置における励起光源及びレーザ発振部の位置決めを容易に且つ精度良く行うことができる。なお、レーザ発振部については、第一反射部に入射する励起光の光軸方向における位置の調整が可能であり、集光部による集光点とレーザ発振部との相対位置を合わせることができる。
【0011】
また、レーザ装置は、ベース部材上においてレーザ発振部と励起光源との間に設けられた温度測定部を更に備えることを特徴としてもよい。上述したレーザ装置では、第三反射部による励起光路の折り返しによって励起光源とレーザ発振部とが互いに近づいているので、その励起光源とレーザ発振部との間に温度測定部が設けられることにより、冷却機構による温度制御をより正確に行うことができる。
【0012】
また、レーザ装置は、第三反射部が、レーザ発振部の第一反射部から出力されるレーザ光の反射を防止する反射防止膜を有することを特徴としてもよい。これにより、第一反射部から出力されるレーザ光(戻り光)による励起光源の損傷を低減することができる。
【0013】
また、レーザ装置は、第三反射部に入射する励起光の光軸と、第三反射部において反射された励起光の光軸との成す角度が鋭角であることを特徴としてもよい。これにより、レーザ装置を更に小型化することができる。この場合、上記角度は45°以下であることが好ましい。
【0014】
また、レーザ装置は、第三反射部が、材料塊からベース部材と一体として切り出されたことを特徴としてもよい。これにより、第三反射部の位置精度を更に高めることができ、また、第三反射部を効果的に冷却することができる。
【0015】
また、レーザ装置は、ベース部材が、レーザ発振部を支持する第一部材と、励起光源を支持する第二部材とに分割されており、第一部材及び第二部材は互いに間隔をあけて配置されており、第一部材とパッケージとの間に配置された第1の冷却機構と、第二部材とパッケージとの間に配置された第2の冷却機構と、第一部材上に設けられた第一温度測定部と、第二部材上に設けられた第二温度測定部とを備えることを特徴としてもよい。このような構成によって、レーザ発振部と励起光源との間の熱的な影響を低減し、これらの温度を更に安定的に制御することができる。
また、レーザ装置は、レーザ発振部収容溝がベース部材に形成されており、レーザ発振部がレーザ発振部収容溝に収容されていることを特徴としてもよい。
また、レーザ装置は、励起光源部収容溝がベース部材に形成されており、励起光源を搭載するブロックが励起光源部収容溝に収容されていることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、レーザ媒質、可飽和吸収体、及び励起光源を備えるレーザ装置の小型化及びパッケージ化が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明によるレーザ装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るレーザ装置10Aの構成を簡略に示す平面図である。
図1に示されるように、本実施形態のレーザ装置10Aは、マイクロチップレーザ12と、レーザダイオード14と、コリメート部としてのコリメートレンズ16と、第三反射部としての折り返しミラー18と、集光部としての集光レンズ20とを備えている。更に、レーザ装置10Aは、ベースブロック30Aと、パッケージ40とを備えている。
【0020】
マイクロチップレーザ12は、本実施形態におけるレーザ発振部であって、レーザ媒質12a、可飽和吸収体12b、第一反射部12c、及び第二反射部12dが一体化されて構成されている。なお、マイクロチップレーザ12の外形は、例えば所定の軸方向(光軸方向)に沿った中心軸線を有する円柱状であり、第一反射部12c、レーザ媒質12a、可飽和吸収体12b、及び第二反射部12dは、この順で上記所定の軸方向に並んで配置されている。
【0021】
レーザ媒質12aは、光活性物質を含有していて、レーザダイオード14から出力される励起光L1が供給されることで光活性物質が励起され、その光活性物質から放出光を発生させる。レーザ媒質12aは、Nd:YAGやYb:YAGなどの結晶であるのが好適である。レーザ媒質12aの厚さは例えば0.01mm〜1.5mmである。
【0022】
可飽和吸収体12bは、光吸収の飽和により光吸収率が小さくなるものであって、レーザ共振器において受動Qスイッチとして用いられる。すなわち、可飽和吸収体12bは、光強度が小さいときには光吸収率が大きく、光強度が或る値を超えると光吸収が飽和して光吸収率が急に小さくなる。可飽和吸収体12bはCr:YAGなどの結晶であるのが好適である。
【0023】
第一反射部12cは、励起光L1を透過させ、放出光を反射させる。第二反射部12dは、放出光の一部を透過させ残部を反射させる。放出光の波長における第二反射部12dの反射率は、例えば90%程度である。第一反射部12cおよび第二反射部12dは、誘電体多層膜であるのが好適である。第一反射部12cおよび第二反射部12dは、レーザ媒質12aおよび可飽和吸収体12bを共振光路上に有して放出光を共振させるレーザ共振器を構成している。
【0024】
このマイクロチップレーザ12は、次のように動作する。励起光L1により励起されたレーザ媒質12aで発生した放出光は、可飽和吸収体12bに達する。レーザ媒質12aで発生する放出光のパワーが小さいときは、可飽和吸収体12bの光吸収率が大きく、レーザ共振器においてレーザ発振は起こらない。やがて、レーザ媒質12aで発生する放出光のパワーが大きくなって、可飽和吸収体12bにおける光強度が或る値を超えると、可飽和吸収体12bの光吸収が飽和して光吸収率が急に小さくなる。可飽和吸収体12bの光吸収率が小さくなると、レーザ媒質12aで発生した放出光は、可飽和吸収体12bを透過することができ、第一反射部12cと第二反射部12dとの間で往復することでレーザ媒質12aにおいて誘導放出を生じさせる。これにより、レーザ共振器においてレーザ発振が起こる。
【0025】
また、このようなレーザ発振が生じると直ちに、レーザ媒質12aで発生する放出光のパワーが小さくなり、可飽和吸収体12bの光吸収率が大きくなって、レーザ共振器においてレーザ発振が終了する。以上のような動作が繰り返されることで、マイクロチップレーザ12はパルス状のレーザ光L2を出力することができる。
【0026】
レーザダイオード14は、本実施形態における励起光源であって、レーザ媒質12aに含有される光活性物質を励起するための励起光L1を出力する。レーザダイオード14の電極には、駆動部22が電気的に接続されている。レーザダイオード14は、駆動部22から供給される駆動電流によって駆動されることにより、パルス波若しくは連続波の励起光L1を出力する。例えば、レーザ媒質12aがNd:YAGの結晶である場合、励起光L1の波長は808nmであり、放出光及びレーザ光L2の波長は1064nmである。
【0027】
コリメートレンズ16は、本実施形態におけるコリメート部である。コリメートレンズ16は、レーザダイオード14と折り返しミラー18との間に配置され、レーザダイオード14から出力された励起光L1をファスト軸方向にコリメート(平行化)する。
【0028】
折り返しミラー18は、本実施形態における第三反射部である。折り返しミラー18は、コリメートレンズ16を通過した励起光L1を反射する反射面18aを有する。反射面18aに入射する励起光L1の光軸と、反射面18aにおいて反射された後の励起光L1の光軸との成す角度θは、鋭角(すなわち入射角が45°未満)であることが好ましく、45°以下(すなわち入射角が22.5°以下)であることがより好ましい。
【0029】
折り返しミラー18は、更に励起光L1をスロー軸方向にコリメートする。具体的には、励起光L1のスロー軸を含む面内で反射面18aが湾曲しており、その曲率は、反射後の励起光L1がスロー軸方向にコリメートされるように設定されている。なお、反射面18aは、励起光L1の波長域において高い反射率(例えば90%以上)を有する誘電体多層膜によって構成されてもよい。
【0030】
また、折り返しミラー18の反射面18aには、マイクロチップレーザ12の第一反射部12cから出力されるレーザ光(戻り光)の反射を防止する反射防止膜18bが設けられてもよい。これにより、第一反射部12cからの戻り光によるレーザダイオード14の損傷を低減することができる。なお、この反射防止膜18bは、励起光L1の波長域の光を反射し、戻り光の波長域の光を通過させるダイクロイックミラーを構成するとよい。
【0031】
集光レンズ20は、本実施形態における集光部である。集光レンズ20は、折り返しミラー18によって反射された励起光L1を入力し、その励起光L1を収斂させてレーザ媒質12aにおいて集光させる。これにより、レーザ媒質12aにおいて励起光L1のエネルギ密度が大きくなって、後述する短パルス化が容易となる。
【0032】
ベースブロック30Aは、本実施形態におけるベース部材である。ベースブロック30Aは、マイクロチップレーザ12、レーザダイオード14、コリメートレンズ16、折り返しミラー18、及び集光レンズ20を支持する部材である。
【0033】
パッケージ40は、マイクロチップレーザ12、レーザダイオード14、コリメートレンズ16、折り返しミラー18、集光レンズ20、及びベースブロック30Aを収容する容器である。パッケージ40の側壁には光出射窓41が設けられており、マイクロチップレーザ12から出力されるレーザ光L2は、この光出射窓41を通過してパッケージ40の外部へ出力される。
【0034】
このレーザ装置10Aにおいて、レーザダイオード14から出力された励起光L1は、まずコリメートレンズ16によってファスト軸方向にコリメートされる。なお、励起光L1のファスト軸方向の拡がり角は例えば40°と大きいので、このように先ずファスト軸方向のコリメートを行う。次に、この励起光L1は、折り返しミラー18によってスロー軸方向にコリメートされるとともに、反射によりその光路が変更される。なお、励起光L1のスロー軸方向の拡がり角は例えば7°である。続いて、この励起光L1は、集光レンズ20によってマイクロチップレーザ12のレーザ媒質12aへ向けて集光される。マイクロチップレーザ12では、この励起光L1によってレーザ媒質12aにおいて放出光が発生するとともに、可飽和吸収体12bが受動Qスイッチとして動作することにより、第一反射部12cと第二反射部12dとの間でレーザ共振が断続的に生じてパルスレーザ光L2が発生する。このレーザ光L2は、パッケージ40の光出射窓41を通過してパッケージ40の外部へ出力される。
【0035】
図2は、本実施形態に係るレーザ装置10Aの詳細な構成を示す分解斜視図である。
図3は、
図2に示されたレーザ装置10Aを異なる角度から見た分解斜視図である。
図4は、
図2に示されたレーザ装置10Aのマイクロチップレーザ12、コリメートレンズ16、折り返しミラー18、及び集光レンズ20を省略した分解斜視図である。
図5は、レーザ装置10Aの斜視図である。なお、
図2〜
図5では、理解の容易のためパッケージの上蓋の図示が省略されている。
【0036】
図2〜
図5に示されるように、本実施形態のパッケージ40は、放熱性の良い金属(例えばコバール)から成る略立方体状の容器である。一例では、パッケージ40はHHLパッケージである。パッケージ40は、平面矩形状の側壁42と、該側壁42の下端を塞ぐ底板43とを有しており、側壁42には、前述した光出射窓41が設けられている。光出射窓41は、マイクロチップレーザ12から出力されるレーザ光の波長に対して透明な材料からなる。パッケージ40の内部には、ベースブロック30Aと、ベースブロック30A上に配置されたマイクロチップレーザ12、レーザダイオード14、コリメートレンズ16、折り返しミラー18、集光レンズ20、及びベースブロック30Aとが収容され、側壁42の上端を上蓋(不図示)が塞ぐことによって気密封止される。
【0037】
また、
図2〜
図5に示されるように、本実施形態のベースブロック30Aは、一つの材料塊(金属ブロック)から切り出された部材であって、例えば放熱性が良い金属から成り、一例では無酸素銅から成る。ベースブロック30Aは、略立方体状のパッケージ40に収容される為に、略矩形状といった平面形状を有している。
【0038】
ベースブロック30Aの主面(パッケージ40の上蓋と対向する側の面)には、マイクロチップレーザ12、レーザダイオード14、コリメートレンズ16、折り返しミラー18、及び集光レンズ20を支持するための精密な加工が施されている。具体的には、
図3及び
図4に示されるように、ベースブロック30Aの主面には、マイクロチップレーザ12を収容して支持するための凹部であるレーザ発振部収容溝31と、レーザダイオード14を搭載する直方体状のブロック15を収容して支持するための凹部である励起光源部収容溝32と、コリメートレンズ16を収容して支持するための凹部であるコリメート部収容溝33と、集光レンズ20を収容して支持するための凹部である集光部収容溝34と、折り返しミラー18を支持するための凸部である台座35とが形成されている。
【0039】
レーザ発振部収容溝31は、マイクロチップレーザ12の形状に合わせてその断面形状が半円状となっており、マイクロチップレーザ12に入射される励起光L1の光軸方向に沿った方向に延びている。マイクロチップレーザ12は、このレーザ発振部収容溝31に収容されることで、励起光L1の光軸方向と直交し且つ互いに直交する2軸方向(具体的には、励起光L1の光軸方向と直交する水平方向および深さ方向)において位置決めされる。その位置決め精度は、レーザ発振部収容溝31の加工精度と同等であり、極めて高い。なお、励起光L1の光軸方向におけるマイクロチップレーザ12の位置決めは、集光レンズ20による励起光L1の集光点がレーザ媒質12a内に位置するように、組み立ての際に調整される。
【0040】
励起光源部収容溝32は、直方体状のブロック15の形状に合わせてその断面形状が長方形状となっている。ブロック15の一側面は、励起光源部収容溝32の延伸方向に沿った側面に当接することで位置決めされる。また、ブロック15の該一側面に対して垂直な別の一側面は、励起光源部収容溝32の延伸方向に垂直な端面に当接することで位置決めされる。ブロック15上に搭載されるレーザダイオード14は、これらの構造によって互いに直交する2軸方向に位置決めされる。更に、これらの2軸方向と直交する方向(励起光源部収容溝32の深さ方向)におけるレーザダイオード14の位置決めは、該方向におけるブロック15の厚さと、励起光源部収容溝32の深さとによって行われる。すなわち、レーザダイオード14の位置決め精度は、励起光源部収容溝32の側面、端面および底面の加工精度、並びにブロック15の厚さの加工精度と同等であり、極めて高い。
【0041】
なお、ブロック15上には、絶縁体上に金属膜(パッド)が形成されて成る部材24が配置されており、この部材24の金属膜とレーザダイオード14のカソード電極とは、ワイヤボンディングによって互いに電気的に接続されている。また、この部材24の金属膜からは、励起光源部収容溝32の延伸方向に沿って棒状の電極23が延びている。レーザダイオード14は、励起光源部収容溝32の延伸方向と交差する方向(一例では直交する方向)に、励起光L1を出射する。
【0042】
コリメート部収容溝33は、励起光L1の光軸に垂直なコリメートレンズ16の断面の形状に合わせてその断面形状が長方形状となっており、レーザダイオード14から出射される励起光L1の光軸方向に沿った方向に延びている。コリメート部収容溝33の延伸方向と、レーザ発振部収容溝31の延伸方向との成す角度は、鋭角であることが好ましく、45°以下であることがより好ましい。
【0043】
コリメートレンズ16は、このコリメート部収容溝33に収容されることで、励起光L1の光軸方向と直交し且つ互いに直交する2軸方向(具体的には、励起光L1の光軸方向と直交する水平方向および深さ方向)において位置決めされる。なお、励起光L1の光軸方向におけるコリメートレンズ16の位置決めは、コリメートされた励起光L1が所望の幅を有するように、組み立ての際に調整される。
【0044】
集光部収容溝34は、マイクロチップレーザ12に入射する励起光L1の光軸方向に沿った方向に延びており、レーザ発振部収容溝31と連続して形成されている。集光レンズ20は、マイクロチップレーザ12と同軸になるようにこの集光部収容溝34に収容される。
【0045】
台座35は、レーザダイオード14から出射されてコリメートレンズ16を通過する励起光L1の光軸と、集光レンズ20を通過してマイクロチップレーザ12に入射する励起光L1の光軸とが互いに交差する位置、換言すれば、レーザ発振部収容溝31及び集光部収容溝34の中心軸線と、コリメート部収容溝33の中心軸線とが互いに交差する位置に形成されている。折り返しミラー18は、この台座35上に搭載され、且つ台座35に設けられた突起または凹部に折り返しミラー18の凹部または突起が嵌合することにより、深さ方向と直交し且つ互いに直交する2軸方向に位置決めされる。
【0046】
なお、折り返しミラー18は、ベースブロック30Aが形成される際に材料塊からベースブロック30Aと一体として切り出されてもよい。すなわち、材料塊の切削によりベースブロック30Aのレーザ発振部収容溝31、励起光源部収容溝32、コリメート部収容溝33、及び集光部収容溝34が形成される際に、折り返しミラー18も併せて形成されてもよい。
【0047】
図2及び
図4に示されるように、レーザ装置10Aは、冷却機構50を更に備えている。冷却機構50は、ベースブロック30Aと熱的に結合され、例えばパッケージ40の底板43とベースブロック30Aの裏面との間に配置される。冷却機構50は、ベースブロック30Aからパッケージ40へ熱の移動を行うことにより、ベースブロック30A上のマイクロチップレーザ12及びレーザダイオード14を冷却する。冷却機構50は、例えば電子冷却素子(ペルチェ素子)によって構成され、パッケージ40の外部に設けられる温度制御回路から駆動電流の供給を受けることにより動作する。なお、本実施形態の冷却機構50はパッケージ40とベースブロック30Aの裏面との間に配置されているが、冷却機構は、パッケージ40の外部、例えば底板43の底面上に設けられても良い。その場合、冷却機構50は、ベースブロック30Aからパッケージ40を介して熱を吸収し、パッケージ40の外部へ熱の放出を行うことにより、ベースブロック30A上のマイクロチップレーザ12及びレーザダイオード14を冷却する。
【0048】
また、レーザ装置10Aは、温度測定部60を更に備えている。温度測定部60は、温度に応じた電気信号を出力する素子であって、ベースブロック30Aの温度を測定することにより、マイクロチップレーザ12及びレーザダイオード14の温度を間接的に測定する。温度測定部60から出力された電気信号は、上述した温度制御回路に送られ、冷却機構50の制御に用いられる。本実施形態の温度測定部60は、ベースブロック30A上においてマイクロチップレーザ12とレーザダイオード14との間(換言すれば、レーザ発振部収容溝31と励起光源部収容溝32との間)に設けられている。
【0049】
以上の構成を備えるレーザ装置10Aによって得られる効果について説明する。レーザ装置10Aのマイクロチップレーザ12は、レーザ媒質12a、可飽和吸収体12b、第一反射部12c及び第二反射部12dが一体化されて成る。このようなマイクロチップレーザ12によって、レーザ共振器を小型化することができる。また、上記レーザ装置10Aでは、折り返しミラー18が励起光L1を反射することにより励起光L1の光路が折り曲げられるので、励起光L1の光路が直線状である場合と比較して、レーザ装置10Aを小型化することができる。更に、上記レーザ装置10Aでは、折り返しミラー18が、励起光L1の反射とスロー軸方向のコリメートとを併せて行うので、スロー軸方向のコリメートのための光学部品を省いて励起光路を短縮し、更に小型化することができる。
【0050】
このように、上記レーザ装置10Aによれば、従来のレーザ装置と比較して格段の小型化が可能となるので、パッケージ40を、例えばハーメチックシールが可能な小型パッケージとすることも可能である。
【0051】
また、レーザ装置10Aでは、折り返しミラー18による励起光路の折り返しによって、レーザダイオード14の位置とマイクロチップレーザ12の位置とを互いに近づけることができる。一つの冷却機構50によってマイクロチップレーザ12及びレーザダイオード14の双方を冷却する場合、これらの距離が離れていると各々の温度を精度良く制御することは難しいが、本実施形態ではレーザダイオード14の位置とマイクロチップレーザ12の位置とが互いに近づけられるので、各々の温度を精度良く制御することが可能となる。
【0052】
また、レーザ装置10Aでは、ベースブロック30Aが、互いに直交する3軸方向(例えば縦方向、横方向、及び深さ方向)においてレーザダイオード14を位置決めするとともに、第一反射部12cに入射する励起光L1の光軸方向と直交し且つ互いに直交する2軸方向(例えば横方向及び深さ方向)においてマイクロチップレーザ12を位置決めする。これにより、小型のレーザ装置10Aにおけるレーザダイオード14及びマイクロチップレーザ12の位置決めを容易に且つ精度良く行うことができる。また、本実施形態のように、金属製のベースブロック30A上にマイクロチップレーザ12及びレーザダイオード14が固定されることにより、マイクロチップレーザ12及びレーザダイオード14から発生する熱を効率良く放熱することができる。
【0053】
また、従来のレーザ装置では、電極の絶縁や温度測定部(ペルチェ素子)の組み付け、Oリングによる気密封止などの構造を全てレーザ装置の製造時に組み立てる必要があるので、多くの工程が必要となる。これに対し、本実施形態のレーザ装置10Aによれば、ハーメチックシール技術を用いた小型パッケージ内にマイクロチップレーザ12やレーザダイオード14等を封止することができるので、組み立てが容易であり、工程数を少なくすることができる。
【0054】
また、上述したように、小型パッケージ内に各部品を気密封止できるので、各部品を窒素雰囲気に閉じ込めることができる。したがって、レーザダイオード14や光学薄膜の劣化を抑え、レーザ装置10Aの信頼性を高めることができる。
【0055】
また、本実施形態のように、レーザ装置10Aは、ベースブロック30A上においてマイクロチップレーザ12とレーザダイオード14との間に設けられた温度測定部60を備えるとよい。本実施形態のレーザ装置10Aでは、折り返しミラー18による励起光路の折り返しによってレーザダイオード14とマイクロチップレーザ12とが互いに近づいているので、そのレーザダイオード14とマイクロチップレーザ12との間に温度測定部60が設けられることにより、温度測定部60が一つのみであってもこれらの温度を精度良く測定し、冷却機構50による温度制御をより正確に行うことができる。なお、更に好適には、温度測定部60はマイクロチップレーザ12とレーザダイオード14とを結ぶ直線上に配置されるとよい。
【0056】
また、本実施形態のように、折り返しミラー18に入射する励起光L1の光軸と、折り返しミラー18において反射された励起光L1の光軸との成す角度θは鋭角(つまり入射角が45°未満)であることが好ましい。これにより、レーザダイオード14とマイクロチップレーザ12との距離を短くし、レーザ装置10Aを更に小型化することができる。また、折り返しミラー18への入射角が45°より大きい場合、十分なコリメート作用を得るために、反射面18aをシリンドリカル面ではなく放物面とすることが望まれる。これに対し、折り返しミラー18への入射角が45°より小さい場合、反射面18aがシリンドリカル面であっても励起光L1のスロー軸を近似的にコリメートできるので、折り返しミラー18の加工を容易にすることができる。
【0057】
そして、折り返しミラー18への励起光L1の入射角が小さいほど、反射面18aがシリンドリカル面であっても励起光L1のスロー軸を精度良くコリメートすることができる。したがって、折り返しミラー18への入射角は例えば22.5°(すなわち角度θが45°以下)であることが更に好ましい。
【0058】
また、前述したように、折り返しミラー18は、ベースブロック30Aが形成される際に材料塊からベースブロック30Aと一体として切り出されてもよい。これにより、折り返しミラー18の位置精度を更に高めることができ、また、折り返しミラー18を効果的に冷却することができる。
【0059】
(第2の実施の形態)
図6は、本発明の第2実施形態に係るレーザ装置10Bの構成を示す分解斜視図である。なお、
図6においても、
図2〜
図5と同様にパッケージの上蓋の図示が省略されている。
【0060】
本実施形態に係るレーザ装置10Bと、前述した第1実施形態に係るレーザ装置10Aとの相違点は、ベース部材の構成である。本実施形態のレーザ装置10Bは、第1実施形態のベースブロック30Aに代えて、ベースブロック30Bを備えている。このベースブロック30Bは、本実施形態におけるベース部材であり、マイクロチップレーザ12を支持する第一部材36と、レーザダイオード14を支持する第二部材37とに分割されている。そして、第一部材36及び第二部材37は、パッケージ40の内部において互いに間隔をあけて配置されている。具体的には、マイクロチップレーザ12、集光レンズ20、及び折り返しミラー18が第一部材36上に配置されており、レーザダイオード14を搭載するブロック15およびコリメートレンズ16が第二部材37上に配置されている。
【0061】
また、本実施形態のレーザ装置10Bは、第1実施形態の冷却機構50に代えて、第1の冷却機構51と、第2の冷却機構52とを備えている。第1の冷却機構51は、第一部材36の裏面とパッケージ40の底板43との間に配置され、第一部材36からパッケージ40へ熱の移動を行うことにより、第一部材36上のマイクロチップレーザ12を冷却する。また、第2の冷却機構52は、第二部材37の裏面とパッケージ40の底板43(
図2、
図4を参照)との間に配置され、第二部材37からパッケージ40へ熱の移動を行うことにより、第二部材37上のレーザダイオード14を冷却する。第1の冷却機構51および第2の冷却機構52は、例えば電子冷却素子(ペルチェ素子)によって構成され、パッケージ40の外部に設けられる温度制御回路から駆動電流の供給を受けることにより動作する。
【0062】
また、レーザ装置10Aは、第1実施形態の温度測定部60に代えて、第一温度測定部61および第二温度測定部62を備えている。第一温度測定部61および第二温度測定部62は、温度に応じた電気信号を出力する素子である。第一温度測定部61は、第一部材36上に設けられており、第一部材36の温度を測定することによって、マイクロチップレーザ12の温度を間接的に測定する。また、第二温度測定部62は、第二部材37上に設けられており、第二部材37の温度を測定することによって、レーザダイオード14の温度を間接的に測定する。第一温度測定部61から出力された電気信号は、温度制御回路に送られ、第1の冷却機構51の制御に用いられる。同様に、第二温度測定部62から出力された電気信号は、温度制御回路に送られ、第2の冷却機構52の制御に用いられる。
【0063】
本実施形態では、ベースブロック30Bが、マイクロチップレーザ12を支持する第一部材36と、レーザダイオード14を支持する第二部材37とに分割されているので、マイクロチップレーザ12とレーザダイオード14との間の熱的な影響を低減することができる。加えて、マイクロチップレーザ12の冷却の為に第1の冷却機構51及び第一温度測定部61が設けられ、レーザダイオード14の冷却の為に第2の冷却機構52及び第二温度測定部62が設けられているので、マイクロチップレーザ12及びレーザダイオード14の温度を更に安定的に制御することができる。これにより、レーザダイオード14から出力される励起光L1の光強度及び波長が安定するとともに、縦単一モードでの発振が可能となる。
【0064】
本発明によるレーザ装置は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では励起光L1がレーザダイオード14からマイクロチップレーザ12に達するまでに一回だけ反射されて、励起光L1の光路がV字状となっている。励起光の光路の形状はこれに限らず、例えば反射部が更に追加されることにより複数回反射するような形状であってもよい。
【0065】
また、上記実施形態ではレーザ発振部としてマイクロチップレーザが例示されているが、レーザ媒質、可飽和吸収体、第一反射部及び第二反射部を備えるものであれば、これに限られない。また、上記実施形態では励起光源としてレーザダイオードが例示されているが、励起光を出力し得るものであれば、これに限られない。また、上記実施形態ではコリメート部としてコリメートレンズが例示されているが、励起光をファスト軸方向にコリメートし得るものであれば、これに限られない。