(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
航空機においては、搭載される機器に関し、設置スペースの制約及び軽量化の要求が大きい。このため、航空機に設置される機器は、より小型化及び軽量化が図られることが望まれる。そして、航空機に搭載される三相交流モータについても、出力仕様を低下させることなく或いは更なる高出力仕様に設定された状態で、小型化及び軽量化を図ることが望まれる。このため、航空機に設置された機器を駆動する三相交流モータの仕様は、出力を維持しつつ小型化を図るために、回転速度は高く、トルクは低めに仕様が設定される傾向がある。
【0007】
上記の場合、制御安定性の確保のため、三相インバータ回路とPWM制御を行う制御器とを備えて三相交流モータの運転状態を制御するモータ駆動制御装置においては、スイッチング素子におけるスイッチング周波数(キャリア周波数)であるPWM周波数が高周波数化される必要がある。しかしながら、PWM周波数が高周波数になると、そのPWM周波数に応じて比例的にスイッチング素子損失が増大し、発熱量の増大を招くことになる。
【0008】
上記のような発熱量の増大に対する対策として、一般的には、強制的にモータ駆動制御装置を冷却し或いはヒートシンクにより放熱を促すことで冷却するような冷却用機器を設置することが考えられる。しかし、この対策の場合、航空機に設置される機器の重量の増大及び大型化を招いてしまうことになる。よって、モータ駆動制御装置自体の発熱の抑制が図られ、且つ、制御安定性の確保と発熱の抑制とをバランスよく両立することができるモータ駆動制御装置の実現が望まれる。
【0009】
上記に対し、2アーム制御方式による三相交流モータの駆動制御が行われることで、スイッチング動作を行うスイッチング素子の数を減らし、スイッチング素子損失の削減による発熱の抑制を図ることが考えられる。しかしながら、2アーム制御方式による三相交流モータの駆動制御が行われる場合、三相交流モータの動作点が低回転速度或いは低トルクの動作領域においては、安定した回転状態の保持が困難となり易い。即ち、上記の動作領域においては、三相インバータ回路における一相のオンオフ状態を順番に固定して他の二相のオンオフ状態を変調させる場合に、適切な順序によるスイッチング固定相の切り替えが行われず、相電流の急変等が発生し、安定した回転状態の保持が困難となる場合が生じる。
【0010】
上記の問題点に対し、特許文献2においては、スイッチング固定相を適切に切り替えるための複雑な制御アルゴリズム及び制御パラメータが用いられたモータ駆動制御装置が開示されている。より具体的には、特許文献2のモータ駆動制御装置における二相変調電圧指令値発生手段には、固定モード記憶手段、固定モード変更順序記憶手段、固定モード算出手段、変更順序判断手段、二相変調電圧指令値算出手段によって構成される複雑な制御アルゴリズム及び制御パラメータが用いられた構成が設けられている。
【0011】
これに対し、とくに、特許文献1のような用途で航空機に設置される機器を駆動するモータの駆動制御に用いられるモータ駆動制御装置(航空機搭載用モータ駆動制御装置)においては、低回転速度或いは低トルクの動作領域で三相交流モータの運転状態を制御することが少ない一方、制御安定性の確保と発熱の抑制とを高い次元でバランスよく両立できることが望まれる。更に、特許文献2に開示されたような、スイッチング固定相を適切に切り替えるための複雑な制御アルゴリズム及び制御パラメータが不要な簡素な構成によって、制御性能の確保と発熱の抑制とを両立できるモータ駆動制御装置が望まれる。
【0012】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、モータ駆動制御装置自体の発熱の抑制を図ることができ、且つ、スイッチング固定相を適切に切り替えるための複雑な制御アルゴリズム及び制御パラメータが不要な簡素な構成によって、制御性能の確保と発熱の抑制とを高い次元でバランスよく両立することができる、航空機搭載用モータ駆動制御装置を提供することを目的とする。また、その航空機搭載用モータ駆動制御装置を備える航空機アクチュエータの油圧システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明のある局面に係る航空機搭載用モータ駆動制御装置は、航空機に設置された機器を駆動するために当該航空機に搭載された三相交流モータを駆動し当該三相交流モータの運転状態を制御する、航空機搭載用モータ駆動制御装置に関する。そして、本発明のある局面に係る航空機搭載用モータ駆動制御装置は、スイッチング素子を有して前記三相交流モータを駆動する三相インバータ回路と、前記三相インバータ回路のパルス幅変調制御を行う制御器と、を備え、前記制御器は、前記三相交流モータに印加する電圧指令値として三相変調電圧指令値を生成する三相変調電圧指令値生成部と、前記電圧指令値として、前記三相インバータ回路における一相のスイッチング素子のオンオフ状態を順番に固定させるとともに他の二相のスイッチング素子のオンオフ状態を変調させる二相変調電圧指令値を生成する二相変調電圧指令値生成部と、前記三相交流モータの回転速度及びトルク電流成分のうちのいずれかの値として判定対象となる判定値に基づいて、前記三相変調電圧指令値及び前記二相変調電圧指令値の一方から他方に前記電圧指令値を切り替えて設定するための電圧指令切替部と、前記三相変調電圧指令値或いは前記二相変調電圧指令値として生成された前記電圧指令値に基づいて前記三相インバータ回路のパルス幅変調制御を行うためのPWM信号を生成し、当該PWM信号を前記三相インバータ回路に出力するPWM信号出力部と、を含み、前記電圧指令切替部は、前記三相交流モータが回転を開始して以降最初に前記判定値が所定の第1閾値に達するまでの間は前記電圧指令値を前記三相変調電圧指令値に設定し、前記判定値が前記第1閾値以上となったときには前記電圧指令値を前記二相変調電圧指令値に切り替え、前記判定値が前記第1閾値よりも小さい所定の第2閾値未満となったときには前記電圧指令値を前記三相変調電圧指令値に切り替える。
【0014】
この構成によると、電圧指令切替部の作動により、三相交流モータの回転速度及びトルク電流成分のうちのいずれかに関する判定値に基づき、三相変調電圧指令値及び二相変調電圧指令値の一方から他方に電圧指令値が切り替えられて設定される。そして、電圧指令切替部は、運転開始後最初に判定値が第1閾値に達するまでは電圧指令値を三相変調電圧指令値に設定し、判定値が第1閾値以上となったときは電圧指令値を二相変調電圧指令値に切り替え、判定値が第1閾値よりも小さい第2閾値未満となったときには電圧指令値を三相変調電圧指令値に切り替える。このため、運転開始後の僅かな時間の領域である低回転速度或いは低トルクの動作領域の間においては、モータ駆動制御装置によって、いわゆる3アーム制御方式による三相交流モータの駆動制御が行われる。しかし、判定値が第1閾値に達すると、電圧指令値が二相変調電圧指令値に切り替えられて設定される。そして、その後、判定値が第2閾値未満とならない限りは、モータ駆動制御装置によって、2アーム制御方式による三相交流モータの駆動制御が継続して行われることになる。このため、スイッチング動作を行うスイッチング素子の数を減らし、スイッチング素子損失の削減による発熱の抑制が図られることになる。また、とくに、航空機において特許文献1に示されるような用途で設置された機器を駆動する三相交流モータの駆動制御に用いられるモータ駆動制御装置においては、低回転速度或いは低トルクの動作領域で三相交流モータの運転状態を制御することが少ないため、一旦三相交流モータの運転が開始されて以降の大半の運転状態においては、2アーム制御方式による三相交流モータの駆動制御が行われることになる。この場合、大半の運転状態において、スイッチング動作を行うスイッチング素子の数を減らし、スイッチング素子損失の削減による発熱の抑制が図られることになる。このように、上記の構成によると、モータ駆動制御装置自体の発熱の抑制を図ることができ、且つ、制御性能の確保と発熱の抑制とを高い次元でバランスよく両立することができる。また、三相交流モータの回転速度及びトルク電流成分のうちのいずれかに関する判定値に基づき、三相変調電圧指令値及び二相変調電圧指令値の一方から他方に電圧指令値が切り替えられて設定される簡素な構成によって、制御性能の確保と発熱の抑制とが高い次元でバランスよく両立されることになる。即ち、特許文献2に開示されたような複雑な制御アルゴリズム及び制御パラメータが不要となる。
【0015】
従って、上記の構成によると、モータ駆動制御装置自体の発熱の抑制を図ることができ、且つ、スイッチング固定相を適切に切り替えるための複雑な制御アルゴリズム及び制御パラメータが不要な簡素な構成によって、制御性能の確保と発熱の抑制とを高い次元でバランスよく両立することができる、航空機搭載用モータ駆動制御装置を提供することができる。
【0016】
また、上記の航空機搭載用モータ駆動制御装置において、前記電圧指令切替部は、前記三相変調電圧指令値における三相のうちの二相の電圧指令値の電圧差がゼロとなるタイミングで、前記電圧指令値を前記三相変調電圧指令値から前記二相変調電圧指令値に切り替えることが好ましい。
【0017】
この構成によると、三相変調電圧指令値における三相のうちの二相の電圧指令値の電圧差がゼロとなるタイミングで、電圧指令値が三相変調電圧指令値から二相変調電圧指令値に切り替えられる。このため、電圧指令値を三相変調電圧指令値から二相変調電圧指令値に切り替える際における波形歪を発生し難くすることができ、瞬時過電流の発生及び電磁干渉(EMI:Electro-Magnetic Interference)の発生を抑制することができる。
【0018】
また、上記目的を達成するための本発明のある局面に係る航空機アクチュエータの油圧システムは、航空機に設置された可動機構を駆動する油圧作動式のアクチュエータを有するとともに当該アクチュエータに対して圧油を供給する、航空機アクチュエータの油圧システムに関する。そして、本発明のある局面に係る航空機アクチュエータの油圧システムは、前記航空機の機体側に設置された油圧源である機体側油圧源からの圧油が供給されることで作動し、前記可動機構を駆動する前記アクチュエータと、前記機体側油圧源の機能の喪失又は低下が発生したときに前記アクチュエータに対して圧油を供給可能なバックアップ用油圧ポンプと、前記バックアップ用油圧ポンプを駆動する三相交流モータと、前記バックアップ用油圧ポンプを駆動するために前記航空機に搭載された前記三相交流モータを駆動し当該三相交流モータの運転状態を制御する、航空機搭載用モータ駆動制御装置と、を備え、前記航空機搭載用モータ駆動制御装置は、スイッチング素子を有して前記三相交流モータを駆動する三相インバータ回路と、前記三相インバータ回路のパルス幅変調制御を行う制御器と、を備え、前記制御器は、前記三相交流モータに印加する電圧指令値として三相変調電圧指令値を生成する三相変調電圧指令値生成部と、前記電圧指令値として、前記三相インバータ回路における一相のスイッチング素子のオンオフ状態を順番に固定させるとともに他の二相のスイッチング素子のオンオフ状態を変調させる二相変調電圧指令値を生成する二相変調電圧指令値生成部と、前記三相交流モータの回転速度及びトルク電流成分のうちのいずれかの値として判定対象となる判定値に基づいて、前記三相変調電圧指令値及び前記二相変調電圧指令値の一方から他方に前記電圧指令値を切り替えて設定するための電圧指令切替部と、前記三相変調電圧指令値或いは前記二相変調電圧指令値として生成された前記電圧指令値に基づいて前記三相インバータ回路のパルス幅変調制御を行うためのPWM信号を生成し、当該PWM信号を前記三相インバータ回路に出力するPWM信号出力部と、を含み、前記電圧指令切替部は、前記三相交流モータが回転を開始して以降最初に前記判定値が所定の第1閾値に達するまでの間は前記電圧指令値を前記三相変調電圧指令値に設定し、前記判定値が前記第1閾値以上となったときには前記電圧指令値を前記二相変調電圧指令値に切り替え、前記判定値が前記第1閾値よりも小さい所定の第2閾値未満となったときには前記電圧指令値を前記三相変調電圧指令値に切り替える。
【0019】
この構成によると、機体側油圧源の機能の喪失又は低下時であっても、バックアップ用油圧ポンプから圧油が供給されてアクチュエータを駆動することができる油圧システムが構築される。そして、その油圧システムにおいて、航空機に設置される機器としてのバックアップ用油圧ポンプを駆動する三相交流モータを駆動してその運転状態を制御するモータ駆動制御装置(航空機搭載用モータ駆動制御装置)が、前述した本発明のある局面に係る航空機搭載用モータ駆動制御装置と同様に構成される。よって、上記の構成によると、航空機搭載用モータ駆動制御装置を備える航空機アクチュエータの油圧システムにおいて、モータ駆動制御装置自体の発熱の抑制を図ることができ、且つ、スイッチング固定相を適切に切り替えるための複雑な制御アルゴリズム及び制御パラメータが不要な簡素な構成によって、制御性能の確保と発熱の抑制とを高い次元でバランスよく両立することができる。
【0020】
また、上記の構成によると、モータ駆動制御装置において、制御性能の確保と発熱の抑制とを高い次元でバランスよく両立できるため、三相交流モータの仕様を高回転速度及び高トルクの仕様に設定でき、三相交流モータの小型化及び軽量化を図ることができる。更に、これに伴い、バックアップ用油圧ポンプの小型化及び軽量化も図ることができる。
【0021】
また、上記の航空機アクチュエータの油圧システムにおいて、前記三相交流モータは、永久磁石が用いられた同期モータとして設けられ、前記三相交流モータの停止動作時には、前記航空機搭載用モータ駆動制御装置は、前記PWM信号出力部から前記三相インバータ回路への前記PWM信号の出力動作を停止して当該三相インバータ回路から前記三相交流モータへの電気エネルギーの供給を遮断し、当該三相交流モータをフリーラン停止させることが好ましい。
【0022】
この構成によると、三相交流モータの停止動作時に三相交流モータがフリーラン停止されるため、モータ駆動制御装置においては、三相交流モータの停止動作時における減速制御が不要となる。よって、2アーム制御方式による三相交流モータの駆動制御が行われている状態から停止動作が行われる場合であっても、適切な順序によるスイッチング固定相の切り替えができずに安定した減速制御が不能となるような事態の発生がそもそも生じないことになる。また、三相交流モータが、永久磁石が用いられた同期モータとして構成されるため、フリーラン停止時には、機械的摩擦に加え、永久磁石の吸引力による電気的損失によって、短い時間で三相交流モータの回転が停止する。即ち、上記の同期モータの場合、永久磁石の吸引力がリラクタンストルクとして働き、通電されていなくても同期モータ内で損失として消費される。このため、上記の同期モータは、フリーラン停止時であっても、機械的摩擦による制動力のみしか作用しない誘導モータとは異なり、速やかに停止することになる。これにより、フリーラン停止時に三相交流モータが長時間に亘って停止しない状態が発生することを防止することができる。
【0023】
また、上記の航空機アクチュエータの油圧システムにおいて、前記バックアップ用油圧ポンプは、可変容量式の油圧ポンプとして設けられ、前記判定値は、前記三相交流モータの回転速度の値であり、前記航空機搭載用モータ駆動制御装置は、前記三相交流モータの回転を開始させた後、当該三相交流モータを一定回転速度で回転させるように制御することが好ましい。
【0024】
この構成によると、三相交流モータが一定回転速度で回転するように制御される。そして、三相交流モータからバックアップ用油圧ポンプに出力されるトルクが変動する場合であっても、可変容量式のバックアップ用油圧ポンプにおいてポンプ吐出流量が調整されることになる。このため、三相交流モータの運転が開始されて回転速度値としての判定値が第1閾値に達した後は、特段の状況変化が無い限り、2アーム制御方式による三相交流モータの駆動制御が行われる状態を継続することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によると、モータ駆動制御装置自体の発熱の抑制を図ることができ、且つ、スイッチング固定相を適切に切り替えるための複雑な制御アルゴリズム及び制御パラメータが不要な簡素な構成によって、制御性能の確保と発熱の抑制とを高い次元でバランスよく両立することができる、航空機搭載用モータ駆動制御装置を提供することができる。また、その航空機搭載用モータ駆動制御装置を備える航空機アクチュエータの油圧システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明の実施形態は、航空機に設置された機器を駆動するために当該航空機に搭載された三相交流モータを駆動し当該三相交流モータの運転状態を制御する、航空機搭載用モータ駆動制御装置、及びその航空機搭載用モータ駆動制御装置を含む航空機アクチュエータの油圧システムとして広く適用することができるものである。
【0028】
図1は、本発明の一実施の形態に係る航空機アクチュエータの油圧システム1が設置された航空機100の一部を示す模式図である。尚、
図1は、航空機100の機体101の後部の部分と一対の水平尾翼(102、102)とを図示したものであり、機体101の後部の垂直尾翼についての図示を省略している。また、
図2は、航空機アクチュエータの油圧システム1を含む油圧回路を模式的に示す模式図である。
【0029】
図1及び
図2に示す航空機アクチュエータの油圧システム1は、航空機100に設置された可動機構の一例としての動翼103を駆動する油圧作動式のアクチュエータ11aを有するとともにこのアクチュエータ11aに対して圧油を供給する油圧システムとして構成されている。尚、本実施形態において航空機アクチュエータの油圧システム1が適用される動翼103は、適用対象としての可動機構の例示である。航空機アクチュエータの油圧システム1は、動翼に限らず、動翼以外の他の可動機構に関して適用されてもよい。例えば、航空機アクチュエータの油圧システム1が、ランディングギア(降着装置)等の脚(航空機の機体を地上で支持する機構)として構成された可動機構に関して適用されてもよい。
【0030】
また、
図2に示すように、航空機アクチュエータの油圧システム1には、本発明の一実施の形態に係る航空機搭載用モータ駆動制御装置2が備えられている。航空機搭載用モータ駆動制御装置2は、航空機100に設置された機器の一例としてのバックアップ用油圧ポンプ12を駆動するために航空機100に搭載された三相交流モータ13を駆動しこの三相交流モータ13の運転状態を制御するモータ駆動制御装置として構成されている。尚、本実施形態において航空機搭載用モータ駆動制御装置2が適用されるバックアップ用油圧ポンプ12は、適用対象としての機器の例示である。航空機搭載用モータ駆動制御装置2は、バックアップ用油圧ポンプに限らず、バックアップ用油圧ポンプ以外の他の機器に関して適用されてもよい。例えば、航空機搭載用モータ駆動制御装置2が、動翼を駆動する電動アクチュエータ、或いは、ランディングギア等の脚などの機器に関して適用されてもよい。
【0031】
以下の説明においては、まず、航空機アクチュエータの油圧システム1(以下、単に「油圧システム1」とも称する)について説明し、次いで、航空機搭載用モータ駆動制御装置2(以下、単に「モータ駆動制御装置2」とも称する)について説明する。
【0032】
また、本実施形態においては、油圧システム1が適用される動翼103として、航空機100における翼の例示である水平尾翼102に設けられた舵面であるエレベータ(昇降舵)としての動翼103を例にとって説明する。以下、動翼103について、エレベータ103とも称する。尚、油圧システム1の適用対象の可動機構である動翼としては、エレベータに加え、補助翼(エルロン)、方向舵(ラダー)等の舵面として構成される主操縦翼面、或いは、フラップ、スポイラー等として構成される二次操縦翼面が挙げられる。
【0033】
航空機100における一対の水平尾翼(102、102)には、航空機100の舵面として構成された動翼であるエレベータ103がそれぞれ設けられている。そして、各水平尾翼102におけるエレベータ103は、
図1に例示するように、複数(例えば、2つ)のアクチュエータ(11a、11b)によって駆動されるように構成されている。各水平尾翼102の内部には、各エレベータ103を駆動するアクチュエータ(11a、11b)と、そのうちの一方のアクチュエータ11aに対して圧油を供給するように構成されたバックアップ用油圧ポンプ12とが設置されている。
【0034】
本実施形態の油圧システム1は、アクチュエータ11a、バックアップ用油圧ポンプ12、三相交流モータ13、モータ駆動制御装置2、等を備えて構成されている。そして、油圧システム1は、航空機100における一対の水平尾翼(102、102)のそれぞれに対応して設けられている。即ち、各水平尾翼102に対して1つの油圧システム1が対応して設置されている。各油圧システム1に含まれるバックアップ用油圧ポンプ12、三相交流モータ13及びモータ駆動制御装置2は、各水平尾翼102の内部に設置されている。
【0035】
また、本実施形態においては、一対の水平尾翼(102、102)のそれぞれに設置されるアクチュエータ(11a、11b)及びバックアップ用油圧ポンプ12は同様に構成されている。そして、各水平尾翼102にそれぞれ設置される油圧システム1も同様に構成されている。そこで、以下の説明においては、一方の水平尾翼102に設置されるアクチュエータ(11a、11b)及びバックアップ用油圧ポンプ12と、そのうちのアクチュエータ11a及びバックアップ用油圧ポンプ12を含む油圧システム1とについて説明する。そして、他方の水平尾翼102に設置されるアクチュエータ(11a、11b)及びバックアップ用油圧ポンプ12と、そのうちのアクチュエータ11a及びバックアップ用油圧ポンプ12を含む油圧システム1とについての説明を省略する。
【0036】
図2は、一方の水平尾翼102に設けられたエレベータ103を駆動するアクチュエータ(11a、11b)と、そのうちの一方のアクチュエータ11aを備えるとともにそのアクチュエータ11aに対して圧油を供給するように構成された油圧システム1とを含む油圧回路を示す油圧回路図として図示されている。この
図2に示すように、アクチュエータ(11a、11b)のそれぞれは、シリンダ14、ピストン15aが設けられたロッド15、等を備え、シリンダ14内がピストン15aによって2つの油室(14a、14b)に区画されて構成されている。
【0037】
そして、アクチュエータ11aのシリンダ14における各油室(14a、14b)は、制御弁16aを介して第1機体側油圧源104及びリザーバ回路106と連通可能に構成されている。一方、アクチュエータ11bのシリンダ14における各油室(14a、14b)は、制御弁16bを介して第2機体側油圧源105及びリザーバ回路107と連通可能に構成されている。尚、2つの油室(14a、14b)は、シリンダ14内においては連通していない。
【0038】
第1機体側油圧源104及び第2機体側油圧源105のそれぞれは、圧油を供給する油圧ポンプを有し、互いに独立した系統として機体101側に(機体101の内部に)設置された油圧源として設けられている。そして、第1及び第2機体側油圧源(104、105)のそれぞれからの圧油が供給されることで、エレベータ103を駆動するアクチュエータ(11a、11b)とエレベータ103以外の各舵面を駆動するアクチュエータ(図示省略)とが作動するように構成されている。
【0039】
また、第1機体側油圧源104は、一方の水平尾翼102に設置されたアクチュエータ11aと他方の水平尾翼102に設置されたアクチュエータ11bとに対して圧油を供給可能に接続されている。一方、第2機体側油圧源105は、一方の水平尾翼102に設置されたアクチュエータ11bと他方の水平尾翼102に設置されたアクチュエータ11aとに対して圧油を供給可能に接続されている。
【0040】
リザーバ回路106は、圧油として供給された後にアクチュエータ11aから排出される油(作動油)が流入して戻るタンク(図示省略)を有している。そして、リザーバ回路106は、第1機体側油圧源104に連通するように構成されている。また、リザーバ回路106から独立した系統として構成されるリザーバ回路107は、圧油として供給された後にアクチュエータ11bから排出される油(作動油)が流入して戻るタンク(図示省略)を有している。そして、リザーバ回路107は、第1機体側油圧源104から独立した系統として構成される第2機体側油圧源105に連通するように構成されている。
【0041】
尚、リザーバ回路106は、一方の水平尾翼102に設置されたアクチュエータ11aと他方の水平尾翼102に設置されたアクチュエータ11bとに接続されている。更に、リザーバ回路106は、第1機体側油圧源104にも接続されている。これにより、リザーバ回路106に戻った油が第1機体側油圧源104で昇圧され、所定のアクチュエータ(11a、11b)に供給される。一方、リザーバ回路107は、一方の水平尾翼102に設置されたアクチュエータ11bと他方の水平尾翼102に設置されたアクチュエータ11aとに接続されている。更に、リザーバ回路107は、第2機体側油圧源105にも接続されている。これにより、リザーバ回路107に戻った油が第2機体側油圧源105で昇圧され、所定のアクチュエータ(11a、11b)に供給される。
【0042】
制御弁16aは、第1機体側油圧源104に連通する供給通路104a及びリザーバ回路106に連通する排出通路106aと、アクチュエータ11aの油室(14a、14b)との接続状態を切り替えるバルブ機構として設けられている。また、制御弁16bは、第2機体側油圧源105に連通する供給通路105a及びリザーバ回路107に連通する排出通路107aと、アクチュエータ11bの油室(14a、14b)との接続状態を切り替えるバルブ機構として設けられている。制御弁16aは、例えば、電磁切換弁として構成され、アクチュエータ11aの動作を制御するアクチュエータコントローラ17aからの指令信号に基づいて駆動される。また、制御弁16bは、例えば、電磁切換弁として構成され、アクチュエータ11bの動作を制御するアクチュエータコントローラ17bからの指令信号に基づいて駆動される。
【0043】
上記のアクチュエータコントローラ17aは、エレベータ103の動作を指令する上位のコンピュータであるフライトコントローラ18からの指令信号に基づいてアクチュエータ11aを制御する。また、アクチュエータコントローラ17bは、フライトコントローラ18からの指令信号に基づいてアクチュエータ11bを制御する。
【0044】
また、前述した制御弁16aがアクチュエータコントローラ17aからの指令に基づいて切り替えられることで、供給通路104aからシリンダ14の油室(14a、14b)の一方に圧油が供給され、油室(14a、14b)の他方から排出通路106aに油が排出される。これにより、シリンダ14に対してロッド15が変位し、エレベータ103が駆動される。尚、制御弁16bについては、上述した制御弁16aと同様に構成されるため、説明を省略する。
【0045】
バックアップ用油圧ポンプ12は、斜板を有する可変容量式の油圧ポンプとして構成されている。そして、バックアップ用油圧ポンプ12は、水平尾翼102の内部に設置され、エレベータ103を駆動する油圧作動式のアクチュエータ11aに対して圧油を供給するように構成されている。
【0046】
また、バックアップ用油圧ポンプ12は、その吸込み側が排出通路106aに連通するように接続され、その吐出側が逆止弁19を介して供給通路104aに圧油を供給可能に連通するように接続されている。そして、バックアップ用油圧ポンプ12は、第1機体側油圧源104における油圧ポンプの故障或いは油漏れ等によって第1機体側油圧源104の機能(圧油供給機能)の喪失又は低下が発生したときにアクチュエータ11aに対して圧油を供給可能な油圧ポンプとして設けられている。
【0047】
また、供給通路104aにおけるバックアップ用油圧ポンプ12の吐出側が接続する箇所の上流側(第1機体側油圧源104側)には、アクチュエータ11aへの圧油の流れを許容してその逆方向の油の流れを規制する逆止弁20が設けられている。そして、排出通路106aにおけるバックアップ用油圧ポンプ12の吸込み側が接続する箇所の下流側(リザーバ回路106側)には、アクチュエータ11aから排出された油の圧力が上昇した際にリザーバ回路106へ圧油を排出するリリーフ弁21が設けられている。
【0048】
また、上記のリリーフ弁21には、供給通路104aに連通するとともにバネが配置されたパイロット圧室が設けられている。供給通路104aから供給される圧油の圧力が所定の圧力値よりも低下すると、パイロット圧油として供給通路104aから上記のパイロット圧室に供給されている圧油の圧力(パイロット圧)も所定の圧力値より低下し、排出通路106aがリリーフ弁21によって遮断されることになる。第1機体側油圧源104の機能の喪失時又は低下時には、上述した逆止弁(19、20)及びリリーフ弁21が設けられていることにより、アクチュエータ11aから排出された油がリザーバ回路106に戻ることなくバックアップ用油圧ポンプ12で昇圧され、その昇圧された圧油がアクチュエータ11aに供給されることになる。
【0049】
尚、バックアップ用油圧ポンプ12は、前述のように、可変容量式の油圧ポンプとして構成されている。このため、後述するように、バックアップ用油圧ポンプ12が所定の一定回転速度で回転しても、バックアップ用油圧ポンプ12においては、斜板の角度が変更されて容量が変更されることで、アクチュエータ11aに対して供給される圧油の流量が制御されるように構成されている。
【0050】
図2に示す三相交流モータ13は、バックアップ用油圧ポンプ12に対して、カップリングを介して連結され、このバックアップ用油圧ポンプ12を駆動する電動モータとして構成されている。即ち、三相交流モータ13は、航空機100に設置された本実施形態の機器であるバックアップ用油圧ポンプ12を駆動するために航空機100に搭載された本実施形態の三相交流モータを構成している。
【0051】
また、本実施形態では、三相交流モータ13は、回転子に永久磁石が用いられた同期モータとして設けられている。尚、三相交流モータ13は、同期モータとして構成されているため、固定子の回転磁界に対する回転子の回転速度の遅れであるすべりがある誘導モータとして構成される場合に比して、効率の向上を図ることができる。また、三相交流モータ13は、同期モータとして構成されているため、後述するように、フリーラン停止時に、誘導モータとして構成される場合に比して、短い時間で回転を停止させることができる。
【0052】
また、三相交流モータ13には、その回転速度(回転数)を指標する回転角を検出する回転角センサ13aが設けられている。この回転角センサ13aは、例えば、ロータリーエンコーダ、レゾルバ、タコジェネレータ等によって構成されている。
【0053】
次に、三相交流モータ13を駆動しこの三相交流モータ13の運転状態を制御する、本実施形態のモータ駆動制御装置2について説明する。
図3は、モータ駆動制御装置2の構成を示すブロック図である。
【0054】
図2及び
図3に示すモータ駆動制御装置2は、その上位のコンピュータであるフライトコントローラ18からの指令信号に基づいて、作動する。尚、フライトコントローラ18は、エレベータ103等の動翼の作動を制御するコンピュータとして設けられるとともに、モータ駆動制御装置2に対して、三相交流モータ13の回転速度を指令するための速度指令信号を含む各種指令信号を送信する。このフライトコントローラ18からの速度指令信号に基づいて、三相交流モータ13の運転状態が、モータ駆動制御装置2によって制御される。尚、フライトコントローラ18は、例えば、図示しないCPU(Central Processing Unit)、メモリ、インターフェース等を備えて構成されている。
【0055】
また、フライトコントローラ18は、第1機体側油圧源104の吐出圧力又は供給通路104aを通過する圧油の圧力を検知する圧力センサ(図示省略)に対して、その圧力センサで検知された圧力検知信号が入力されるように接続されている。そして、フライトコントローラ18は、上記の圧力検知信号に基づいて、第1機体側油圧源104の機能の喪失又は低下を検知するように構成されている。
【0056】
そして、フライトコントローラ18にて第1機体側油圧源104の機能の喪失又は低下が検知されると、このフライトコントローラ18からの指令信号に基づいて、モータ駆動制御装置2の制御により、三相交流モータ13の運転が開始される。これにより、バックアップ用油圧ポンプ12が作動し、アクチュエータ11aに対する圧油の供給が行われることになる。
【0057】
また、フライトコントローラ18からは、一定の回転速度で三相交流モータ13を運転させる速度指令信号が送信される。上記の一定の回転速度の速度指令信号は、例えば、三相交流モータ13をその定格回転速度で回転させるとともに、バックアップ用油圧ポンプ12をその定格回転速度で回転させるための速度指令信号として構成されている。このため、モータ駆動制御装置2は、三相交流モータ13の回転を開始させた後、三相交流モータ13を一定回転速度で回転させるように制御する。そして、バックアップ用油圧ポンプ12は、起動された後は、その定格仕様の一定の回転速度及びその近傍の回転速度で運転を継続することになる。
【0058】
また、バックアップ用油圧ポンプ12は、第1機体側油圧源104の機能の喪失又は低下が検知される際に加え、航空機100が離陸する際及び着陸する際にも、起動される。即ち、航空機100の離着陸の際、フライトコントローラ18からの指令信号に基づくモータ駆動制御装置2の制御によって、三相交流モータ13の運転が開始され、バックアップ用油圧ポンプ12が起動される。例えば、航空機100が離陸動作を開始するタイミングから巡航速度に達するまでの間と、航空機100が着陸姿勢に入ったタイミングから着陸するまでの間とにおいて、バックアップ用油圧ポンプ12の運転が行われる。この場合、離着陸段階で急激に第1機体側油圧源104の機能の喪失又は低下が生じても、既にバックアップ用油圧ポンプ12が作動しているため安全な飛行を確保することができる。
【0059】
図3に示すように、モータ駆動制御装置2は、DC電源(直流電源)22、インバータ23、制御器24、等を備えて構成されている。尚、DC電源22の代わりに、例えば、航空機100の機体側に設置された交流電源から供給される交流を直流に整流して変換する整流器(コンバータ)が設けられていてもよい。
【0060】
三相インバータ回路23は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のスイッチング素子を有し、制御器24からの指令に基づいて、DC電源22からの電力によって三相交流モータ13を駆動するように構成されている。
図4は、三相インバータ回路23におけるスイッチング素子の概略構成について三相交流モータ13及びDC電源22とともに示す模式図である。
【0061】
図4に示すように、三相インバータ回路23には、U相インバータ37、V相インバータ38、W相インバータ39が設けられている。そして、U相インバータ37には、上アーム側スイッチング素子37a及び下アーム側スイッチング素子37bが備えられている。また、V相インバータ38には、上アーム側スイッチング素子38a及び下アーム側スイッチング素子38bが備えられている。また、W相インバータ39には、上アーム側スイッチング素子39a及び下アーム側スイッチング素子39bが備えられている。
【0062】
また、
図3に示すように、三相インバータ回路23と三相交流モータ13とを接続する駆動線に流れる電流の電流値については、電流センサ25にて検出され、制御器24に入力されるように構成されている。
【0063】
図3に示す制御器24は、三相インバータ回路23のパルス幅変調制御(PWM制御)を行う制御回路として設けられている。この制御器24は、フライトコントローラ18から送信されて三相交流モータ13の回転速度を指令する速度指令信号と、回転角センサ13aで検出された回転角検出値とに基づいて、三相交流モータ13の回転速度を制御する。そして、制御器24は、速度制御部26、電流制御部27、等を備えて構成されている。
【0064】
速度制御部26は、フライトコントローラ18から送信されてモータ駆動制御装置2に入力される三相交流モータ13の速度指令信号と、回転角センサ13aでの回転角検出値とに基づいて、三相交流モータ13の回転速度のフィードバック制御を行うように構成されている。
【0065】
電流制御部27は、速度制御部26による三相交流モータ13の回転速度のフィードバック制御に基づいて、三相交流モータ13に作用する負荷に応じ、三相交流モータ13の電流を制御する。そして、電流制御部27は、直流電圧指令生成部28、電圧指令切替部29、二相三相変換部30、PWM信号出力部31、dq変換部32、を備えて構成されている。
【0066】
dq変換部32は、電流センサ25で検出された電流検出値を励磁電流成分及びトルク電流成分に変換して出力する。即ち、dq変換部32は、電流センサ25で検出されたU相電流値、V相電流値及びW相電流値から励磁電流成分及びトルク電流成分を演算し、その演算結果としての励磁電流成分及びトルク電流成分を出力する。
【0067】
直流電圧指令生成部28は、速度制御部26からの指令信号と、dq変換部32から入力される三相交流モータ13の励磁電流成分及びトルク電流成分と、回転角センサ13aで検出された回転角検出値とに基づいて、直流電圧指令を生成する。即ち、直流電圧指令生成部28は、d軸電圧指令(電機子電圧のd軸成分の指令)とq軸電圧指令(電機子電圧のq軸成分の指令)とを生成する。
【0068】
二相三相変換部30は、二相変調電圧指令値生成部33と三相変調電圧指令値生成部34とを備えて構成されている。そして、二相三相変換部30は、直流電圧指令生成部28で生成されたd軸電圧指令及びq軸電圧指令と、回転角センサ13aで検出された回転角検出値とに基づいて、三相交流モータ13に印加する電圧指令値を生成する。また、二相三相変換部30は、後述する電圧指令切替部29による設定に基づいて、三相交流モータ13に印加する電圧指令値を生成する。
【0069】
三相変調電圧指令値生成部34は、三相交流モータ13に印加する電圧指令値として三相変調電圧指令値を生成する。一方、二相変調電圧指令値生成部33は、三相交流モータ13に印加する電圧指令値として、三相インバータ回路23における一相のスイッチング素子のオンオフ状態を順番に固定させるとともに他の二相のスイッチング素子のオンオフ状態を変調させる二相変調電圧指令値を生成する。また、三相変調電圧指令値生成部34は、電圧指令切替部29によって電圧指令値として三相変調電圧指令値を生成するように設定されたときにのみ、三相変調電圧指令値を生成する。そして、二相変調電圧指令値生成部33は、電圧指令切替部29によって電圧指令値として二相変調電圧指令値を生成するように設定されたときにのみ、二相変調電圧指令値を生成する。
【0070】
電圧指令切替部29は、三相交流モータ13の回転速度の値として判定対象となる判定値に基づいて、上記の三相変調電圧指令値及び二相変調電圧指令値の一方から他方に電圧指令値を切り替えて設定するために設けられている。そして、電圧指令切替部29は、切替設定部35、切替判定部36を有している。
【0071】
切替判定部36は、上記の判定値と所定の第1閾値及び第2閾値とを比較し、上記の判定値が所定の第1閾値以上であるか或いは所定の第2閾値未満であるかを判定する。また、切替設定部35は、切替判定部36による判定結果に基づいて、三相変調電圧指令値及び二相変調電圧指令値の一方から他方に電圧指令値を切り替えて設定する。
【0072】
更に具体的には、電圧指令切替部29は、三相交流モータ13が起動されて回転を開始して以降最初に上記の判定値が所定の第1閾値に達するまでの間は電圧指令値を三相変調電圧指令値に設定する。即ち、回転角センサ13aによって検出される三相交流モータ13の回転速度の値としての判定値(以下、「モータ回転数」とも称する)が、三相交流モータ13の起動後最初に第1閾値(以下、「2アーム選択速度」とも称する)に達したと切替判定部36によって判定されるまでは、切替設定部35によって電圧指令値が三相変調電圧指令値に設定されている。尚、2アーム選択速度は、例えば、三相交流モータ13及びバックアップ用油圧ポンプ12の定格回転速度と同じ速度に、或いは、三相交流モータ13及びバックアップ用油圧ポンプ12の定格回転速度よりも少し小さい速度に設定される。
【0073】
そして、判定値であるモータ回転数が第1閾値以上(2アーム選択速度以上)となったと切替判定部36によって判定されたときには、切替設定部35によって電圧指令値が三相変調電圧指令値から二相変調電圧指令値に切り替えられるように設定される。更に、判定値であるモータ回転数が2アーム選択速度よりも小さい所定の第2閾値(以下、「3アーム選択速度」とも称する)未満となったと切替判定部36によって判定されたときには、切替設定部35によって電圧指令値が二相変調電圧指令値から三相変調電圧指令値に切り替えられるように設定される。尚、3アーム選択速度は、例えば、2アーム制御方式による三相交流モータ13の駆動制御が誤動作なく実行される大きさの電圧指令値が得られる最低速度、或いは、その最低速度よりも少し大きい速度に設定される。
【0074】
図4は、電圧指令切替部29によって電圧指令値が三相変調電圧指令値に切り替えられるように設定された際、即ち、3アーム制御方式による三相交流モータ13の駆動制御が行われる際の三相インバータ回路23におけるスイッチング素子の切り替え処理について説明する模式図である。電圧指令値が三相変調電圧指令値に設定されている状態では、
図4に示すように、U相インバータ37、V相インバータ38、及びW相インバータ39の三相全てのスイッチング素子(37a、37b、38a、38b、39a、39b)のオンオフ状態が常時切り替えられる。
【0075】
図5は、電圧指令切替部29によって電圧指令値が二相変調電圧指令値に切り替えられるように設定された際、即ち、2アーム制御方式による三相交流モータ13の駆動制御が行われる際の三相インバータ回路23におけるスイッチング素子の切り替え処理について説明する模式図である。電圧指令値が二相変調電圧指令値に設定されている状態では、
図4に示すように、U相インバータ37、V相インバータ38、及びW相インバータ39の三相のうち一相のスイッチング素子のオンオフ状態が順番に常時固定され、他の二相のスイッチング素子のオンオフ状態が常時切り替えられる。
【0076】
尚、
図5では、U相インバータ37が、スイッチング素子(37a、37b)のオンオフ状態が固定されたスイッチング固定相として設定され、V相インバータ38及びW相インバータ39のスイッチング素子(38a、38b、39a、39b)のオンオフ状態が常時切り替えられる状態が、模式的に図示されている。また、
図5では、U相インバータ37において、上アームスイッチング素子37aが常時オン状態で固定され、下アームスイッチング素子37bが常時オフ状態で固定された状態が模式的に図示されている。
【0077】
また、電圧指令切替部29は、三相変調電圧指令値における三相のうちの二相の電圧指令値の電圧差がゼロとなるタイミングで、即ち、相電圧の交差タイミングで、電圧指令値を三相変調電圧指令値から二相変調電圧指令値に切り替えるように構成されている。例えば、U相インバータ37及びV相インバータ38の電圧指令値の電圧差がゼロとなるタイミング、又は、V相インバータ38及びW相インバータ39の電圧指令値の電圧差がゼロとなるタイミング、或いは、W相インバータ39及びU相インバータ37の電圧指令値の電圧差がゼロとなるタイミング、において、電圧指令値が三相変調電圧指令値から二相変調電圧指令値に切り替えられる。
【0078】
PWM信号出力部31は、二相三相変換部30にて生成された電圧指令値に基づいて三相インバータ回路23のパルス幅変調制御を行うためのPWM信号を生成し、このPWM信号を三相インバータ回路23に出力する。即ち、PWM信号出力部31は、三相変調電圧指令値或いは二相変調電圧指令値として生成された電圧指令値に基づいて三相インバータ回路23のパルス幅変調制御を行うためのPWM信号を生成して出力する。
【0079】
図6は、3アーム制御方式による三相交流モータ13の駆動制御が行われる際のPWM信号の生成処理について説明する模式図である。電圧指令値が三相変調電圧指令値に設定されている状態では、
図6に例示するように、位相が120°ずつずれた正弦波としてのU相電圧指令値、V相電圧指令値、及びW相電圧指令値が、三相変調電圧指令部34にて生成される。尚、
図6では、U相電圧指令値は実線で、V相電圧指令値は破線で、W相電圧指令値は一点鎖線で図示されている。
【0080】
一方、PWM信号出力部31は、所定のスイッチング周波数(キャリア周波数)の三角波としてのPWM搬送波(キャリア波)を生成する。そして、
図6に示すように、PWM信号出力部31は、U相電圧指令値とPWM搬送波との比較を行い、U相インバータ37のスイッチング波形信号としてのU相PWM信号を生成する。同様に、PWM信号出力部31は、V相電圧指令値とPWM搬送波との比較を行い、V相インバータ38のスイッチング波形信号としてのV相PWM信号を生成する。更に、PWM信号出力部31は、W相電圧指令値とPWM搬送波との比較を行い、W相インバータ39のスイッチング波形信号としてのW相PWM信号を生成する。これらのPWM信号に基づいて、三相インバータ回路23における各相インバータ(37、38、39)のスイッチング素子(37a、37b、38a、38b、39a、39b)の切り替え処理が行われる。
【0081】
図7は、2アーム制御方式による三相交流モータ13の駆動制御が行われる際のPWM信号の生成処理について説明する模式図である。電圧指令値が二相変調電圧指令値に設定されている状態では、
図7に例示するように、位相が120°ずつずれたU相電圧指令値、V相電圧指令値、及びW相電圧指令値が、二相変調電圧指令部33にて生成される。尚、
図7では、U相電圧指令値は実線で、V相電圧指令値は破線で、W相電圧指令値は一点鎖線で図示されている。
【0082】
そして、電圧指令値が二相変調電圧指令値に設定されている状態では、三相インバータ回路23における一相のスイッチング素子のオンオフ状態を順番に固定させるための電圧指令値が生成される。即ち、
図7に例示するように、U相、V相及びW相インバータ(37、38、39)のスイッチング素子(37a、37b、38a、38b、39a、39b)のオンオフ状態を順番に固定させるためのU相電圧指令値、V相電圧指令値、及びW相電圧指令値が、生成される。尚、
図7では、U相電圧指令値、V相電圧指令値、及びW相電圧指令値において、スイッチング素子のオンオフ状態を固定するための指令部分を細い破線で囲んで示している。
【0083】
一方、PWM信号出力部31は、所定のスイッチング周波数(キャリア周波数)の三角波としてのPWM搬送波(キャリア波)を生成する。そして、
図7に示すように、PWM信号出力部31は、U相電圧指令値とPWM搬送波との比較を行い、U相インバータ37のスイッチング波形信号としてのU相PWM信号を生成する。同様に、PWM信号出力部31は、V相電圧指令値とPWM搬送波との比較を行い、V相インバータ38のスイッチング波形信号としてのV相PWM信号を生成する。更に、PWM信号出力部31は、W相電圧指令値とPWM搬送波との比較を行い、W相インバータ39のスイッチング波形信号としてのW相PWM信号を生成する。
【0084】
また、U相、V相、及びW相の各電圧指令値には、スイッチング素子のオンオフ状態を順番に固定するための期間(スイッチング停止期間)の指令値がそれぞれ含まれている。このため、PWM信号出力部31にて生成されるU相、V相、及びW相の各PWM信号は、スイッチング停止期間においてスイッチング素子のオンオフ状態を固定する波形信号として構成される。尚、
図7では、各PWM信号におけるスイッチング停止期間について両端矢印で示している。
【0085】
そして、電圧指令値が二相変調電圧指令値に設定されている状態においては、スイッチング停止期間を含む上記のPWM信号に基づいて、三相インバータ回路23における各相インバータ(37、38、39)のスイッチング素子(37a、37b、38a、38b、39a、39b)の切り替え処理が行われる。
【0086】
次に、3アーム制御方式と2アーム制御方式との切り替えを行って三相交流モータ13の駆動制御を行うモータ駆動制御装置2における処理を
図8に示すフローチャートに沿って説明する。
【0087】
三相交流モータ13を起動させるモータ起動指令信号がフライトコントローラ18からモータ駆動制御装置2に送信されて入力されると、モータ駆動制御装置2は、三相交流モータ13を起動させ、三相交流モータ13の運転を開始させる(ステップS101)。そして、フライトコントローラ18から送信された一定の回転速度(三相交流モータ13の定格回転速度)の速度指令信号に基づいて、その回転速度に達するまで、例えば、数秒程度、三相交流モータ13の加速制御が行われる(ステップS102)。
【0088】
三相交流モータ13の加速制御が開始された際は、三相変調電圧指令値として生成された電圧指令値に基づくPWM信号が、三相インバータ回路23に出力される。これにより、3アーム制御方式による三相交流モータ13の駆動制御が行われる(ステップS102)。そして、モータ回転数(三相交流モータ13の回転速度の値としての判定値)が2アーム選択速度(第1閾値)以上であるか否かが判定される(ステップS103)。モータ回転数が2アーム選択速度未満である場合(ステップS103、No)、即ち、モータ回転数が2アーム選択速度に達するまでは、3アーム制御方式による三相交流モータ13の駆動制御が行われる(ステップS102)。
【0089】
モータ回転数が2アーム選択速度以上である場合(ステップS103、Yes)は、三相交流モータ13の制御状態が、加速制御から、三相交流モータ13の定格回転速度での定速制御に移行したか否かが判定される(ステップS104)。そして、三相交流モータ13の制御状態が定速制御に移行していない場合(ステップS104、No)は、ステップS102及びステップS103の処理が繰り返される。
【0090】
一方、三相交流モータ13の制御状態が定速制御に移行した場合(ステップS104、Yes)は、電圧指令値が三相変調電圧指令値から二相変調電圧指令値に切り替えられる。即ち、モータ回転数が2アーム選択速度以上であって(ステップS、Yes)、三相交流モータ13の制御状態が定速制御に移行した場合(ステップS104、Yes)は、二相変調電圧指令値として生成された電圧指令値に基づくPWM信号が、三相インバータ回路23に出力される。これにより、2アーム制御方式による三相交流モータ13の駆動制御が行われる(ステップS105)。尚、ステップS104の処理は、必ずしも実行されなくてもよい。
【0091】
2アーム制御方式による三相交流モータ13の駆動制御が開始されると、モータ回転数が3アーム選択速度(第2閾値)未満であるか否かが判定される(ステップS106)。モータ回転数が3アーム選択速度以上である場合(ステップS106、No)、次いで、フライトコントローラ18から送信される指令信号であって三相交流モータ13の運転を停止させる停止指令信号がモータ駆動制御装置2に入力されているか否かが判定される(ステップS107)。停止指令信号の入力が無い場合(ステップS107、No)は、モータ回転数が3アーム選択速度以上である限り(ステップS106、No)、2アーム制御方式による三相交流モータ13の駆動制御が行われる(ステップS105)。
【0092】
モータ駆動制御装置2に停止指令信号の入力がある場合(ステップS107、Yes)は、三相交流モータ13の停止動作が行われる。この場合、モータ駆動制御装置2は、三相交流モータ13の制御信号をオフの状態とし、全アームのスイッチング素子(37a、37b、38a、38b、39a、39b)の信号がオフの状態とする(ステップS108)。即ち、三相交流モータ13の停止動作時には、モータ駆動制御装置2は、PWM信号出力部31から三相インバータ回路23へのPWM信号の出力動作を停止してこの三相インバータ回路23から三相交流モータ13への電気エネルギーの供給を遮断する。これにより、三相交流モータ13の停止動作時には、モータ駆動制御装置2は、三相交流モータ13をフリーラン停止させる(ステップS110)。
【0093】
一方、ステップS106において、モータ回転数が3アーム選択速度未満であると判定された場合(ステップS106、Yes)は、モータ駆動制御装置2及び三相交流モータ13に異常が発生していないか否かが判断される(ステップS109)。異常発生の有無の判断としては、例えば、過電流の発生の有無の判断、或いは、異常温度上昇の発生の有無の判断が行われる。過電流の発生の有無の判断は、例えば、電流センサ25による電流検出値に基づいて、モータ駆動制御装置2において判断される。また、異常温度上昇の有無の判断は、例えば、モータ駆動制御装置2或いは三相交流モータ13に取り付けられた温度センサ(図示省略)での検出結果に基づいて、モータ駆動制御装置2において判断される。
【0094】
モータ駆動制御装置2及び三相交流モータ13に異常が発生していないと判断された場合(ステップS109、Yes)は、電圧指令値が三相変調電圧指令値から二相変調電圧指令値に切り替えられる。そして、二相変調電圧指令値として生成された電圧指令値に基づくPWM信号が、三相インバータ回路23に出力される。これにより、3アーム制御方式による三相交流モータ13の駆動制御が行われる(ステップS102)。電圧指令値が二相変調電圧指令値に切り替えられて2アーム制御方式による三相交流モータ13の駆動制御が開始されると(ステップS102)、ステップS103以降の処理が繰り返される。
【0095】
一方、モータ駆動制御装置2及び三相交流モータ13に異常が発生していると判断された場合(ステップS109、No)は、モータ駆動制御装置2は、三相交流モータ13の制御信号をオフの状態とする(ステップS108)。即ち、モータ駆動制御装置2は、PWM信号の出力動作を停止して三相インバータ回路23から三相交流モータ13への電気エネルギーの供給を遮断する。これにより、モータ駆動制御装置2は、三相交流モータ13をフリーラン停止させる(ステップS110)。
【0096】
以上説明したように、モータ駆動制御装置2によると、電圧指令切替部29の作動により、三相交流モータ13の回転速度に関する判定値(モータ回転数)に基づき、三相変調電圧指令値及び二相変調電圧指令値の一方から他方に電圧指令値が切り替えられて設定される。そして、電圧指令切替部29は、運転開始後最初に判定値が第1閾値(2アーム選択速度)に達するまでは電圧指令値を三相変調電圧指令値に設定し、判定値が第1閾値以上となったときは電圧指令値を二相変調電圧指令値に切り替え、判定値が第1閾値よりも小さい第2閾値(3アーム選択速度)未満となったときには電圧指令値を三相変調電圧指令値に切り替える。このため、運転開始後の僅かな時間の領域である低回転速度の動作領域の間においては、モータ駆動制御装置2によって、3アーム制御方式による三相交流モータ13の駆動制御が行われる。しかし、判定値が第1閾値に達すると、電圧指令値が二相変調電圧指令値に切り替えられて設定される。そして、その後、判定値が第2閾値未満とならない限りは、モータ駆動制御装置2によって、2アーム制御方式による三相交流モータ13の駆動制御が継続して行われることになる。
【0097】
また、航空機100に設置された機器であるバックアップ用油圧ポンプ12を駆動する三相交流モータ13の駆動制御に用いられるモータ駆動制御装置2においては、低回転速度の動作領域で三相交流モータ13の運転状態を制御することが少ないため、一旦三相交流モータ13の運転が開始されて以降の大半の運転状態においては、2アーム制御方式による三相交流モータ13の駆動制御が行われることになる。このため、大半の運転状態において、スイッチング動作を行うスイッチング素子の数を減らし、スイッチング素子損失の削減による発熱の抑制が図られることになる。これにより、モータ駆動制御装置2自体の発熱の抑制を図ることができ、且つ、制御性能の確保と発熱の抑制とを高い次元でバランスよく両立することができる。また、三相交流モータ13の回転速度に関する判定値に基づき、三相変調電圧指令値及び二相変調電圧指令値の一方から他方に電圧指令値が切り替えられて設定される簡素な構成によって、制御性能の確保と発熱の抑制とが高い次元でバランスよく両立されることになる。即ち、特許文献2に開示されたような複雑な制御アルゴリズム及び制御パラメータが不要となる。
【0098】
従って、本実施形態によると、モータ駆動制御装置2自体の発熱の抑制を図ることができ、且つ、スイッチング固定相を適切に切り替えるための複雑な制御アルゴリズム及び制御パラメータが不要な簡素な構成によって、制御性能の確保と発熱の抑制とを高い次元でバランスよく両立することができる、航空機搭載用モータ駆動制御装置2を提供することができる。
【0099】
また、モータ駆動制御装置2によると、三相変調電圧指令値における三相のうちの二相の電圧指令値の電圧差がゼロとなるタイミングで、電圧指令値が三相変調電圧指令値から二相変調電圧指令値に切り替えられる。このため、電圧指令値を三相変調電圧指令値から二相変調電圧指令値に切り替える際における波形歪を発生し難くすることができ、瞬時過電流の発生及び電磁干渉(EMI:Electro-Magnetic Interference)の発生を抑制することができる。
【0100】
また、航空機アクチュエータの油圧システム1によると、機体側油圧源(104、105)の機能の喪失又は低下時であっても、バックアップ用油圧ポンプ12から圧油が供給されてアクチュエータ11aを駆動することができる油圧システム1が構築される。そして、その油圧システム1において、航空機100に設置される機器としてのバックアップ用油圧ポンプ12を駆動する三相交流モータ13を駆動してその運転状態を制御するモータ駆動制御装置2が、上述した効果を奏する。よって、本実施形態によると、油圧システム1において、モータ駆動制御装置2自体の発熱の抑制を図ることができ、且つ、スイッチング固定相を適切に切り替えるための複雑な制御アルゴリズム及び制御パラメータが不要な簡素な構成によって、制御性能の確保と発熱の抑制とを高い次元でバランスよく両立することができる。
【0101】
また、油圧システム1によると、モータ駆動制御装置2において、制御性能の確保と発熱の抑制とを高い次元でバランスよく両立できるため、三相交流モータ13の仕様を高回転速度の仕様に設定でき、三相交流モータ13の小型化及び軽量化を図ることができる。更に、これに伴い、バックアップ用油圧ポンプ12の小型化及び軽量化も図ることができる。
【0102】
また、油圧システム1によると、三相交流モータ13の停止動作時に三相交流モータ13がフリーラン停止されるため、モータ駆動制御装置2においては、三相交流モータ13の停止動作時における減速制御が不要となる。よって、2アーム制御方式による三相交流モータ13の駆動制御が行われている状態から停止動作が行われる場合であっても、適切な順序によるスイッチング固定相の切り替えができずに安定した減速制御が不能となるような事態の発生がそもそも生じないことになる。また、三相交流モータ13が、永久磁石が用いられた同期モータとして構成されるため、フリーラン停止時には、機械的摩擦に加え、永久磁石の吸引力による電気的損失によって、短い時間で三相交流モータの回転が停止する。即ち、上記の同期モータの場合、永久磁石の吸引力がリラクタンストルクとして働き、通電されていなくても同期モータ内で損失として消費される。このため、上記の同期モータは、フリーラン停止時であっても、機械的摩擦による制動力のみしか作用しない誘導モータとは異なり、速やかに停止することになる。これにより、フリーラン停止時に三相交流モータ13が長時間に亘って停止しない状態が発生することを防止することができる。
【0103】
また、油圧システム1によると、三相交流モータ13が一定回転速度で回転するように制御される。そして、三相交流モータ13からバックアップ用油圧ポンプ12に出力されるトルクが変動する場合であっても、可変容量式のバックアップ用油圧ポンプ12においてポンプ吐出流量が調整されることになる。このため、三相交流モータ13の運転が開始されて回転速度値としての判定値が第1閾値に達した後は、特段の状況変化が無い限り、2アーム制御方式による三相交流モータ13の駆動制御が行われる状態を継続することができる。
【0104】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができる。例えば、次のように変更して実施することができる。
【0105】
(1)上述の実施形態では、モータ駆動制御装置によって駆動制御が行われる三相交流モータが駆動する機器として、バックアップ用油圧ポンプを例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。即ち、バックアップ用油圧ポンプ以外の機器を駆動する三相交流モータの駆動制御を行うモータ駆動制御装置が実施されてもよい。
【0106】
例えば、機体側油圧源の油圧ポンプがモータによって駆動される電動式の油圧ポンプとして構成されている場合に、航空機に設置される機器としての上記油圧ポンプを駆動する三相交流モータの駆動制御を行うモータ駆動制御装置が実施されてもよい。また、動翼を駆動するアクチュエータが電動アクチュエータとして構成されている場合に、航空機に設置される機器としての電動アクチュエータを駆動する三相交流モータの駆動制御を行うモータ駆動制御装置が実施されてもよい。また、航空機に設置される機器としてのランディングギア等の脚を駆動する三相交流モータの駆動制御を行うモータ駆動制御装置が実施されてもよい。
【0107】
(2)上述の実施形態では、油圧システムにおけるアクチュエータによって駆動される可動機構として、動翼を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。即ち、油圧システムにおけるアクチュエータが動翼以外の可動機構を駆動する形態が実施されてもよい。例えば、油圧システムにおけるアクチュエータが、航空機に設置された可動機構としてのランディングギア等の脚を駆動する形態が実施されてもよい。
【0108】
(3)上述の実施形態では、電圧指令切替部が、三相交流モータの回転速度の値として判定対象となる判定値に基づいて、三相変調電圧指令値及び二相変調電圧指令値の一方から他方に電圧指令値を切り替えて設定する形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。三相交流モータのトルク電流成分の値として判定対象となる判定値に基づいて、三相変調電圧指令値及び二相変調電圧指令値の一方から他方に電圧指令値を切り替えて設定するための電圧指令切替部が設けられた形態が実施されてもよい。