(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013034
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】放射性廃液の除染方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G21F 9/12 20060101AFI20161011BHJP
G21F 9/28 20060101ALI20161011BHJP
G21F 9/06 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
G21F9/12 501J
G21F9/28 Z
G21F9/28 521A
G21F9/28 525A
G21F9/12 512C
G21F9/06 G
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-135958(P2012-135958)
(22)【出願日】2012年6月15日
(65)【公開番号】特開2014-1957(P2014-1957A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2015年5月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591172663
【氏名又は名称】荏原工業洗浄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 博司
(72)【発明者】
【氏名】塩野 俊一
(72)【発明者】
【氏名】二見 賢一
(72)【発明者】
【氏名】坂下 大地
(72)【発明者】
【氏名】下村 達夫
(72)【発明者】
【氏名】関根 智一
(72)【発明者】
【氏名】三甘 崇博
【審査官】
後藤 孝平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−107450(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0172959(US,A1)
【文献】
特開2010−203930(JP,A)
【文献】
特開2011−226822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/06
G21F 9/12
G21F 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性セシウムとアンモニウムイオンとを含む放射性廃液をOH型強塩基性アニオン交換樹脂と接触させて、当該放射性廃液のpHをアルカリ性域に調整し、セシウムイオンの吸着阻害要因となる当該放射性廃液中のアンモニウムイオンを低減させた後に、セシウムイオンを吸着できる吸着材と接触させ、当該放射性廃液中の放射性セシウムを吸着除去することを特徴とする放射性廃液の除染方法。
【請求項2】
前記放射性セシウムとアンモニウムイオンとを含む放射性廃液は、放射性セシウムで汚染された放射能汚染固体を、少なくともフッ素イオンとアンモニウムイオンとを含む酸性の処理液と接触させて、当該放射能汚染固体からセシウムイオンを液相に溶出させることによって得られる、請求項1に記載の放射性廃液の除染方法。
【請求項3】
放射性セシウムとアンモニウムイオンとを含む放射性廃液のpHを9.25未満に調整して、沈殿物を生じさせる第一pH調整工程と、
生じた沈殿物を分離する固液分離工程と、
当該沈殿物を分離した後の放射性廃液のpHを9.25以上に調整する第二pH調整工程と、
当該放射性廃液中のアンモニウムイオンを低減させた後に、セシウムイオンを吸着できる吸着材と接触させ、当該放射性廃液中の放射性セシウムを吸着除去する放射性セシウム吸着除去工程と、
を含むことを特徴とする放射性廃液の除染方法。
【請求項4】
前記放射性セシウムとアンモニウムイオンとを含む放射性廃液は、放射性セシウムで汚染された放射能汚染固体を、少なくともフッ素イオンとアンモニウムイオンとを含む酸性の処理液と接触させて、当該放射能汚染固体からセシウムイオンを液相に溶出させることによって得られる、請求項3に記載の放射性廃液の除染方法。
【請求項5】
放射性セシウムとアンモニウムイオンとを含む放射性廃液のpHを9.25未満に調整する第一pH調整槽と、その後、放射性廃液のpHを9.25以上に調整する第二pH調整槽と、を含むpH調整槽と、
アンモニウムイオンが低減された当該放射性廃液中の放射性セシウムを吸着材に接触させて吸着する放射性セシウム吸着塔と、
を具備することを特徴とする放射性廃液の除染装置。
【請求項6】
放射性セシウムで汚染された放射能汚染固体と、フッ素イオン及びアンモニウムイオンを含む酸性の処理液と、を接触させて、セシウムイオンを液相中に溶出させて放射性セシウムとアンモニウムイオンとを含む放射性廃液を形成させる処理容器と、
当該放射性廃液を固液分離する固液分離装置と、
当該放射性廃液のpHを9.25未満に調整する第一pH調整槽と、pHを9.25以上に調整する第二pH調整槽と、を含むpH調整槽と、
アルカリ性域に調整された当該放射性廃液からセシウムイオンを吸着除去する放射性セシウム吸着塔と、
を具備する放射性廃液の除染装置。
【請求項7】
前記第一pH調整槽は、前記固液分離装置の上流に位置づけられており、
前記第二pH調整槽は、前記固液分離装置の下流に位置づけられている、請求項6に記載の放射性廃液の除染装置。
【請求項8】
さらに、前記放射性セシウム吸着塔の上流に、pH調整槽にてアルカリ性域に調整された放射性廃液からアンモニウムイオンを除去するアンモニアストリッピング装置が位置づけられている、請求項6又は7に記載の放射性廃液の除染装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性セシウムを含む放射性廃液の除染方法及び装置に関し、特に、放射性セシウムで汚染された放射能汚染固体の除染により発生する放射性廃液の処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
2011年3月に発生した東日本大震災による福島第一原子力発電所の事故により飛散した放射性セシウムが土壌に蓄積していることから、土壌除染処理技術が種々提案されている。典型的な土壌除染処理は、土壌を酸水溶液に加えて、酸水溶液中にセシウムイオンを溶出させ、次いでセシウムイオンを吸着材に吸着して除去する。本発明者らは、放射性セシウム汚染土壌の除染方法として、フッ素イオンとアンモニウムイオン又はカリウムイオンとを含む処理液と接触させて、セシウムイオンを溶出させて除去する除染方法を提案している(非特許文献1)。
【0003】
セシウム汚染土壌の除染方法においては、溶出したセシウムイオンを含む放射性廃液が発生する。かかる放射性廃液からセシウムイオンを除去するために、吸着材が用いられる。セシウムに対する選択的吸着性に優れる吸着材として、ゼオライトやブルシアンブルーが知られている。中でもプルシアンブルーナノ粒子吸着材は、他の吸着材に比べて、ナトリウムイオンやカリウムイオンなどの陽イオンが混在する場合でもセシウムイオンを選択的に吸着できるとされている(非特許文献2)。しかし、土壌除染処理において発生する溶出液中に含まれるセシウムイオンはきわめて微量であるため、選択性が高い吸着材といえども、大量に含まれるカリウムイオンなどのセシウムイオンと同程度のイオン半径を有する陽イオンにより、セシウムイオンの吸着が阻害されてしまう。
【0004】
したがって、大量の放射性廃液からセシウムイオンを吸着するためには大量の吸着剤が必要となり、結果的に放射性セシウムを吸着した放射性廃棄吸着材が発生してしまうことになる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「土壌からの放射性セシウム除去技術の開発(第1報)」二見賢一ら、第1回環境放射能除染研究発表会要旨集、2012年5月19日〜21日、p34
【非特許文献2】独立行政法人産業技術総合研究所ウェブサイト<研究紹介・成果>2011年8月31日発表http://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2011/pr20110831/pr20110831.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
放射性セシウムで汚染された土壌等の放射能汚染固体の除染処理によって発生する放射性廃液からのセシウムイオンの吸着率を向上させ、二次汚染物となるセシウム汚染吸着材の発生量を削減することが求められている。したがって、本発明の目的は、放射性セシウムに加えてアンモニウムイオンを含む放射性廃液からの二次汚染物の発生量を削減できる除染方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、鋭意研究した結果、放射性セシウムに加えて高濃度のアンモニウムイオンを含む放射性廃液のpHをアルカリ性域に調整することによって、アンモニウムイオン濃度を低減させた後に、吸着材に放射性廃液を接触させることで、当該吸着材がセシウムイオンを選択的に効率よく吸着でき、吸着材の使用量を削減できることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0008】
また、放射性廃液のpH調整のために、一般的な水酸化ナトリウムなどのアルカリ剤を用いるのではなく、OH型陰イオン交換樹脂を用いることで、吸着を阻害する陽イオンを増加させることなく、吸着効率を低下させないことを見出した。
【0009】
具体的には、本発明によれば、放射性セシウムに加えてアンモニウムイオンを含む放射性廃液をアルカリ性域に調整して、当該放射性廃液中のアンモニウムイオンを低減させた後に、当該放射性廃液中の放射性セシウムを吸着除去する、放射性廃液の除染方法が提供される。
【0010】
放射性セシウムに加えてアンモニウムイオンを含む放射性廃液をOH型強塩基性アニオン交換樹脂と接触させて、当該放射性廃液をアルカリ性域に調整することができる。
前記放射性廃液は、放射性セシウムで汚染された放射能汚染固体を、少なくともフッ素イオンとアンモニウムイオンとを含む酸性の処理液と接触させて、当該放射能汚染固体からセシウムイオンを液相に溶出させることによって得られる放射性廃液であることが好適である。
【0011】
本発明の除染方法は、前記放射性廃液のpHを9.25未満に調整して、沈殿物を生じさせる第一pH調整工程と、生じた沈殿物を分離する固液分離工程と、固体を分離した後の放射性廃液のpHを9.25以上に調整する第二pH調整工程と、を含むことが好ましい。
【0012】
また本発明によれば、放射性セシウムに加えてアンモニウムイオンを含む放射性廃液をアルカリ性に調整するpH調整槽と、アンモニウムイオンが低減された当該放射性廃液中の放射性セシウムを吸着する放射性セシウム吸着塔と、を具備する、放射性廃液の除染装置が提供される。
【0013】
前記pH調整槽は、前記放射性廃液のpHを9.25未満に調整する第一pH調整槽と、その後、放射性廃液のpHを9.25以上に調整する第二pH調整槽と、を含むことが好ましい。
【0014】
さらに本発明によれば、放射性セシウムで汚染された放射能汚染固体と、フッ素イオン及びアンモニウムイオンを含む酸性の処理液と、を接触させて、セシウムイオンを液相中に溶出させて放射性廃液を形成させる処理容器と、当該放射性廃液を固液分離する固液分離装置と、当該放射性廃液のpHをアルカリ性域に調整するpH調整槽と、アルカリ性の当該放射性廃液からセシウムイオンを吸着除去する放射性セシウム吸着塔と、を具備する放射性廃液の除染装置が提供される。
【0015】
前記pH調整槽は、前記放射性廃液のpHを9.25未満に調整する第一pH調整槽と、pHを9.25以上に調整する第二pH調整槽と、を含むことが好ましい。
前記第一pH調整槽は、前記固液分離装置の上流に位置づけられており、前記第二pH調整槽は、前記固液分離装置の下流に位置づけられていることが好適である。
【0016】
さらに、前記放射性セシウム吸着塔の上流に、pH調整槽にてアルカリ性域に調整された放射性廃液からアンモニウムイオンを除去するアンモニアストリッピング装置が位置づけられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、放射性セシウムとアンモニウムイオンを含む放射性廃液をゼオライトやプルシアンブルーなどのセシウムを選択的に吸着できる吸着材と接触させることにより放射性セシウムを吸着する前に、放射性廃液のpHをアルカリ性域に調整することで、セシウムイオンの吸着阻害要因となるアンモニウムイオンを低減させ、セシウムを吸着材に効率よく吸着させることができるため、最終的な放射性廃棄物を大幅に減容化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の放射性廃液の除染方法の一実施形態を示す概略処理フローである。
【
図2】
図2は、実施例及び比較例における平衡吸着等温線を示すグラフである。
【0019】
本発明の放射性廃液の除染方法は、特に本発明者らが提案した放射性セシウム汚染固体の除染方法において発生する放射性廃液の処理に適する。以下、放射性セシウム汚染土壌の除染方法を例にして、本発明を詳細に説明する。
【0020】
放射性セシウム汚染土壌をフッ素イオン及びアンモニウムイオン、カリウムイオン又はナトリウムイオンなどの陽イオンを含む酸性の処理液と接触させて、セシウムイオンを液相に溶出させる場合、液相中の初期陽イオンは合計で0.1g/L以上の高濃度で存在させることが好ましい。このような高濃度の陽イオンは、セシウムイオンを吸着材に吸着させる際に阻害要因となる。たとえば、アンモニウムイオンNH
4+は水溶液中で以下の式(1)に示す平衡状態で存在している。
【0021】
【化1】
ここで、[H
+]=10
−9.25MすなわちpH9.25であると仮定すると、
【0022】
【化2】
すなわち、pH9.25の時に[NH
3]:[NH
4+]=1:1となる。
【0023】
同様に[H
+] = 10
-10.25MすなわちpH10.25であると仮定すると、
【0024】
【化3】
すなわち、pH10.25の時に[NH
3]:[NH
4+]=10:1となる。
【0025】
式(1)〜(3)より、pHをアルカリ性域、特に9.25以上とすることで、処理液中のアンモニウムイオン濃度を低下させ、処理液中の陽イオンを低減させて放射性廃液中のセシウムの吸着容量を向上させることができる。
【0026】
また、アンモニウムイオンが高pH条件下で移行するアンモニアNH
3は揮発性であり、アンモニアストリッピングによって液中から除くことができる。アンモニアストリッピングの操作を加えることで、式(1)左辺の分子の値を更に小さくし、アンモニウムイオン濃度を更に効率的に低減させることができる。
【0027】
この場合、中性から弱アルカリ性の領域において、土壌から溶解した成分の一部が処理液中から析出し、沈殿してくる。この沈殿物は土壌由来の成分であるため、土壌と類似のセシウム吸着性能を有しており、アンモニウムイオンが存在すると沈殿物へのセシウムの移行が阻害される。このため、沈殿物はアンモニウムイオン濃度が低下する前、すなわちpHが9.25よりも高くなる前に除去しておく必要がある。沈殿物を除去せずにpHを9.25よりも高くし、さらにアンモニアストリッピングを行うと、放射性セシウムが沈殿物のほうに移行吸着し、新たな放射性廃棄物を発生させることになる。なお、pHの上昇によって沈殿物が発生しない場合には、上記の新たな放射性廃棄物の問題は生じない。
【0028】
本発明では、目的とする吸着容量にもよるが、吸着材と接触させる際の放射性廃液中のアンモニウムイオン濃度を500mg/L以下とすることが好ましい。このため、放射性廃液のpHは一般のアンモニアストリッピング法で使用される値(例えばpH10程度)が好ましい。
【0029】
一般に、薬品添加によりアルカリ性域にする場合は、水酸化ナトリウムや水酸化カルシウムが用いられる。水酸化ナトリウムを用いると、ナトリウムイオンはアンモニウムイオンやカリウムイオンに比べてセシウムイオンに対する吸着阻害性は低いものの、陽イオンであるため吸着阻害の要因となる。また、水酸化カルシウムを用いると、炭酸カルシウムや硫酸カルシウムなどの沈殿物が発生する。特に、放射能汚染固体の除染処理液として、硫酸を使用する場合には大量の硫酸カルシウムが発生することになる。これらの問題を解決するためには、薬品を添加せずに放射性廃液のpHをアルカリ性域に調整することが望ましい。本発明では、OH型の陰イオン交換樹脂と接触させることが好適である。
【0030】
放射性廃液から放射性セシウムを吸着させるために用いるセシウム吸着剤としては、選択性の高いゼオライトやプルシアンブルーなどが好適である。
[放射性廃液の除染フロー]
次に、
図1を参照しながら、本発明による放射性廃液の除染方法を説明する。
図1上段はアンモニアストリッピングを用いる除染フローであり、
図1下段はアンモニアストリッピングを用いない除染フローを示す。共に、放射性廃液は、放射能汚染土壌をフッ素イオン及びアンモニウムイオンを含む処理液で除染処理した結果発生する放射性セシウム及びアンモニウムイオンを含む。
【0031】
図1上段において、放射性セシウム及びアンモニウムイオンを含む放射性廃液は、第一pH調整槽にて9.25未満のpHとなるように調整される。この際、土壌由来の沈殿物が形成されるため、固液分離装置にて沈殿物を除去する。固液分離装置にて分離された液相である放射性廃液は、第二pH調整槽にて9.25以上のpHとなるように調整される。pH調整により、アンモニウムイオン[NH
4+]がアンモニア[NH
3]になるため、放射性廃液中のアンモニウムイオンは低減される。次いで、アンモニアを含む放射性廃液をアンモニアストリッピング塔の上部から導入して、アンモニアストリッピング塔下部から導入するスチームと接触させ、放射性廃液中のアンモニアを除去する。アンモニウムストリッピングによりアンモニアが除去され、アンモニウムイオンが低減された放射性廃液を、放射性セシウム吸着塔にて吸着材と接触させて、セシウムイオンを吸着除去する。なお、アンモニアストリッピング塔にて除去されたアンモニアは、スチームと共に塔上部から排気され、冷却塔(図示せず)で凝縮されてアンモニア水として回収することができる。回収したアンモニア水は、除染薬品として再利用することもできる。
【0032】
第一pH調整槽及び第二pH調整槽におけるpH調整には、OH型のアニオン交換樹脂を用いることが好ましい。OH型のアニオン交換樹脂は、アルカリ性でもアニオン交換が可能な強塩基性のものが好ましい。具体的には、実施例で用いたマクロポーラス形タイプI型でスチレン−ジビニルベンゼンを母体としてトリメチルアミンを交換基とする樹脂であるダウ・ケミカル日本(株)製、DOWEX MONOSPIRE 550ANが好ましく、さらには再生効率や物理的安定性の観点からマクロポーラス形タイプII型でスチレン−ジビニルベンゼンを母体としてジメチルエタノールアミンを交換基とする樹脂であるダウ・ケミカル日本(株)製、ダウエックスMSA-2もしくはレバチット(製)MP-600がより好ましい。また、第一pH調整槽においてはpHを1〜9.25未満に調整するのに適切な量の樹脂が必要であり、第二pH調整槽ではpHを9.25〜11程度に調整するのに適切な量の樹脂が必要である。この樹脂の使用量は樹脂の種類、処理する土壌の種類や土質、水質により異なる。アニオン交換樹脂は使用により交換性能が低下するため、アルカリ剤で再生することが必要になり、別途再生装置を用いることが好ましい。再生は回分的に行ってもよいし、連続的に再生する装置を用いてもよい。アニオン交換樹脂にはセシウムイオンは吸着されないので、再生前に水洗浄をすることだけでセシウムイオンを洗い流すことができ、アニオン交換樹脂の再生廃液の放射能濃度は問題とならない。
【0033】
セシウム吸着剤はゼオライト系の吸着剤やプルシアンブルーのようなフェロシアン化物がセシウム選択性が高く好適である。ゼオライト系の化合物は、種類により性能が大きく異なるものの、液性にあった吸着剤を選択すればよい。なお、フッ素イオンを含む処理液による汚染土壌の除染で発生する放射性廃液には、ゼオライトよりプルシアンブルーのセシウム吸着能力が優れている。放射性セシウム吸着処理後の処理水は、処理プロセスの中で再利用してもよいし、クリアランスレベルまで放射能濃度を低減した後は環境中に放流することができる。
【0034】
[放射性廃液除染装置]
本発明の放射性廃液除染装置は、放射性セシウムに加えてアンモニウムイオンを含む放射性廃液をアルカリ性に調整するpH調整槽と、アンモニウムイオンが低減された当該放射性廃液中の放射性セシウムを吸着する放射性セシウム吸着塔と、を具備する。
【0035】
また、本発明の放射性廃液除染装置は、放射性セシウムで汚染された放射能汚染固体と、フッ素イオン及びアンモニウムイオンを含む酸性の処理液と、を接触させて、セシウムイオンを液相中に溶出させて放射性廃液を形成させる処理容器と、当該放射性廃液を固液分離する固液分離装置と、当該放射性廃液のpHをアルカリ性域に調整するpH調整槽と、アルカリ性の当該放射性廃液からセシウムイオンを吸着除去する放射性セシウム吸着塔と、を具備する。
【0036】
いずれの除染装置においても、pH調整槽は、前記放射性廃液のpHを9.25未満に調整する第一pH調整槽と、その後、放射性廃液のpHを9.25以上に調整する第二pH調整槽と、を含むことが好ましい。さらに、第一及び第二のpH調整槽には、OH型の強塩基性アニオン交換樹脂が充填されていることが好ましい。また、放射性セシウム吸着塔には、プルシアンブルー又はゼオライトなどのセシウム吸着材が充填されていることが好ましい。
【0037】
また、いずれの除染装置においても、放射性セシウム吸着塔の上流にアンモニアストリッピング塔を設けることが、好ましく、第二pH調整槽の下流に設けることがより好ましい。
【0038】
pH調整槽で発生する固形物の固液分離装置としては、特に限定されず通常の固液分離装置を用いることができ、例えばカートリッジフィルター、砂ろ過装置、膜ろ過装置、遠心分離装置があるが、装置の運転管理の容易さの観点から傾斜板つき重力沈殿装置が好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[放射性廃液の調製]
1wt%の酸性フッ化アンモン(NH
4F・HF)と8.7wt%の塩化アンモニウム(NH
4Cl)を含む処理液中に、3wt%のスラリー濃度となるように放射性セシウム汚染土壌の細粒分(75μm以下)を入れて約10分攪拌処理して、放射性セシウムを液相に抽出した後に、ろ過して土壌細粒分を除き、放射性廃液を得た。この放射性廃液のpHは約3.5であった。
【0040】
[実施例1]
調製した放射性廃液に、第一pH調整槽にてOH型のアニオン交換樹脂(ダウ・ケミカル日本(株)製、DOWEX MONOSPIRE 550AN)を放射性廃液1kgあたり1200ml添加してpH9.04のアルカリ性にした後に、樹脂および発生した沈殿物をろ紙(Whatman製、GF/B)でろ過して除去し、そのろ液に、第二pH調整槽にてOH型のアニオン交換樹脂(ダウ・ケミカル日本(株)製、DOWEX MONOSPIRE 550AN)を放射性廃液1kgあたり1100ml添加してpH10.93のアルカリ性にしてから、エアバブリングによりアンモニアを飛ばしたものをアンモニアストリッピング水として吸着試験に供した。
【0041】
吸着試験は、放射性廃液約100mlに対して、液/吸着剤倍率が表に示す所定の比率となるように吸着剤を添加し、吸着平衡に達するまで数時間以上ビーカ内で攪拌した。吸着試験後にろ過して吸着剤を分離し、ろ液の放射能を測定した。吸着試験の条件及び放射能測定結果を表1に示す。
【0042】
吸着剤は、ゼオライト(ユニオン昭和(株)製 IE−96)もしくはプルシアンブルー(大日精化工業(株)製 MILORIBLUE905)を粉砕して用いた。
【0043】
【表1】
表1に示される総NH
3は実測値であり、アンモニア(NH
3)とアンモニウムイオン(NH
4+)の合計値である。当該pHにおけるNH
4+の理論存在濃度を括弧内に示す。
【0044】
吸着材としてプルシアンブルーを使用した場合、放射性廃液100mlに対し0.1gの添加でCs137が42Bq/kg、Cs134が35Bq/kg、全放射能濃度が77Bq/kgまで低下し、排水基準(Cs137:90Bq/kg、Cs134:60Bq/kg)以下とすることができた。吸着材としてゼオライトを使用した場合、放射性廃液100mlに対し1gの添加で排水基準以下とすることができた。
【0045】
[実施例2]
調製した放射性廃液に水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)を5.53g添加して、放射性廃液をアルカリ性にした後に、発生した沈殿物をろ過して除去し、そのろ液を吸着試験に供した。吸着試験の条件及び放射能測定結果を表2に示す。
【0046】
【表2】
表2に示される総NH
3は実測値であり、アンモニア(NH
3)とアンモニウムイオン(NH
4+)の合計値である。当該pHにおけるNH
4+の理論存在濃度を括弧内に示す。
【0047】
吸着材としてプルシアンブルーを使用した場合、放射性廃液100mlに対し0.17gの添加でCs137が50Bq/kg、Cs134が38Bq/kg、全放射能濃度が88Bq/kgまで低下し、排水基準(Cs137:90Bq/kg、Cs134:60Bq/kg)以下とすることができた。吸着材としてゼオライトを使用した場合、放射性廃液100mlに対し1gの添加で排水基準以下とすることができた。
【0048】
実施例2では、アンモニアストリッピングを行っていないため、吸着試験に供した放射性廃液中の総NH
3濃度は、実施例1の放射性廃液と比較して30倍近く高い。しかし、放射性廃液のpHを12.21と実施例1よりも高く設定したことでNH
4+濃度は低く抑えることができた。
【0049】
[比較例1]放射性廃液のpHを調製せず、アンモニアストリッピングも行わない場合の除染効果
放射性廃液のpHを調整せず、直接吸着材と接触させた。条件及び結果を表3に示す。
【0050】
【表3】
放射性廃液100mlに対して吸着材を10g添加しても、排水基準を満足できなかった。
【0051】
[比較例2]放射性廃液のpHをアルカリ性域に調製しない場合の除染効果
放射性廃液に水酸化カルシウム(Ca(OH)
2)を0.87g添加して中和し、発生した沈殿を除去した後、吸着試験に供した。条件及び結果を表4に示す。
【0052】
【表4】
表4に示される総NH
3は実測値であり、アンモニア(NH
3)とアンモニウムイオン(NH
4+)の合計値である。当該pHにおけるNH
4+の理論存在濃度を括弧内に示す。
【0053】
吸着材としてゼオライトを使用した場合、放射性廃液100mlに対して10g添加することで、排水基準を満足できなかった。吸着材としてプルシアンブルーを使用した場合、放射性廃液100mlに対して10g添加することで排水基準以下とすることができた。
【0054】
実施例1〜2及び比較例1〜2において吸着材としてプルシアンブルーを使用した場合の平衡吸着等温線を
図2に示す。実施例では、放射性セシウムの吸着量が大きくなる傾向が顕著であり、同量の放射性セシウムを吸着除去するために使用する吸着剤の量を削減できることがわかる。
【0055】
[実施例3]
放射性廃液からの沈殿物へのセシウム移行とpHとの関係を把握するため、pH調整後の沈殿物の放射能濃度を測定した。
【0056】
放射性廃液にOH型のアニオン交換樹脂(ダウ・ケミカル日本(株)製、DOWEX MONOSPIRE 550AN)を添加してpHを所定の値(pH8、9および11)に調整した後、アニオン交換樹脂と発生した沈殿物を篩(目開き125μm)で分け、それぞれ、ろ紙(Whatman製、GF/B)でろ過して、アニオン交換樹脂および沈殿物の放射能濃度を測定した。結果を表5に示す。
【0057】
【表5】
表5に示される総NH
3はpH調整後のろ液の実測値であり、アンモニア(NH
3)とアンモニウムイオン(NH
4+)の合計値である。当該pHにおけるNH
4+の理論存在濃度を括弧内に示す。
【0058】
放射性廃液からの沈殿物発生はpH5付近から生じ始め、pH8までにほぼ完了した。pH8及びpH9に調整した放射性廃液から回収した沈殿物の放射能濃度は、pH11に調整した放射性廃液から回収した沈殿物の放射能濃度の1/30〜1/40程度である。この時の分離後のろ液の理論的アンモニウムイオン(NH
4+)存在濃度はpH8およびpH9ではそれぞれ22000mg/L、12000mg/L、pH11では260mg/Lである。共存するアンモニウムイオン(NH
4+)濃度が高い場合、固形物(沈殿物)への放射性セシウムの吸着は阻害されるが、アンモニウムイオン(NH
4+)濃度の低い場合、放射性セシウムの固形物への吸着が促進されることがわかる。25℃におけるアンモニウムイオンとアンモニアの存在割合は、pH9.25を越えるとアンモニウムイオンの存在割合がアンモニアよりも極端に低くなっていくので、その結果として本実施例に示すように、pH9を超える条件までpHを上昇させてから沈殿物を回収すると、沈殿物が放射能で再汚染されてしまうことが確認された。すなわち、第一pH調整槽におけるpHは9.25未満とすることが望ましいことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の除染方法によれば、プルシアンブルーやゼオライトなどの放射性セシウム吸着材の吸着効率を低下させずに少量の吸着材で十分に吸着できるので、二次放射性廃棄物としての放射性吸着材の発生量を大幅に低減することができ、放射性セシウム汚染物の除染方法として有用である。