(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年の電子デバイス、特に半導体素子や液晶モニター用のカラーフィルター或いはTFT素子等は、IT技術の急速な発達に伴い、一層の微細化が要求されている。このような微細加工技術を支える技術の一つが、転写用マスクと呼ばれるフォトマスクを用いたリソグラフィー技術である。このリソグラフィー技術においては、露光用光源の電磁波を転写用マスクを通じてレジスト膜付きシリコンウエハーに露光することにより、シリコンウエハー上に微細なパターンを形成している。この転写用マスクは通常、ガラス基板等の表面に遮光膜等の薄膜を形成したマスクブランクにリソグラフィー技術を用いて転写パターン(マスクパターン)となるパターンを形成して製造される。ところで、マスクブランクの表面にパーティクル等の異物があると、形成されるパターンの欠陥の原因となるので、マスクブランクの表面には異物等が付着しないように清浄に保管される必要がある。
【0003】
このようなマスクブランクを収納保管し運搬するためのケースとしては、従来では例えば下記特許文献1に開示されているようなマスク運搬用ケースが知られている。すなわち、従来のマスクブランクを収納保管するケースは、キャリアなどと呼ばれている内ケースにマスクブランクを数枚乃至数十枚並べて保持させ、このマスクブランクを保持した内ケースを外箱(ケース本体)内に収容し、さらに外箱上に蓋を被せて、マスクブランクを収納する構造となっていた。
【0004】
図4乃至
図6は、特許文献1に開示されたものと同様の構造の収納ケースを示すもので、
図4は収納ケースの蓋を示す斜視図、
図5はマスクブランクを中ケースに収納する状態を示す斜視図、
図6は収納ケースのケース本体(外ケース)を示す斜視図である。
この収納ケースは、マスクブランク1を中ケース2に収納し、この中ケース2をケース本体3に収納し、このケース本体3の開口部側に蓋4を被せる構造である。
【0005】
上記中ケース2は、開口部側(上方)から底面側(下方)に向けて複数の溝21,22を一方の互いに対向する内側面に所定間隔をおいて一対をなして形成し、その溝21,22の底面側の底部と中ケース底面にはそれぞれ開口窓(図示せず)と開口部27が設けられ、さらに中ケース底面側には基板支持部26が形成され、この基板支持部26でマスクブランク1の下方端面を支持している(
図5)。そして、この中ケース2をケース本体3に収納して固定するための凹面部28,29がそれぞれ中ケースの他方の互いに対向する外側面に底面側から開口部側の途中まで形成されている。数枚のマスクブランク1を中ケース2の一対の溝21,22に沿って入れると、これらのマスクブランクは所定間隔をおいて互いに平行に並べられて収納される。
【0006】
上記ケース本体3は、上述した中ケース2の凹面部28,29と当接するに適合した突出部31,32を、互いに対向する内側面に形成し、その突出部31,32の底部はケース本体3底面とも接合している(
図6)。また、一方の対向する外側面の開口部側には凸部33,34が形成されている。そして、ケース本体3の開口縁35のやや下方の位置に続く外周面36と上記凸部33,34の凸面とは略同一面に形成されている。
【0007】
また上記蓋4は、その一方の対向する下方縁47(ケース本体へ差し込む開口部側の縁であって、
図4では上方へ向いている)の中央から延びた係合片41,42に凹部43,44を形成している。これにより、蓋4をケース本体3に被せたときに、上記凹部43,44が前記ケース本体3の凸部33,34とそれぞれ嵌合することで、蓋4とケース本体3とが固定される構造となっている。また、中ケース2の開口部側上端面25と当接して中ケース2を垂直方向において支持固定するストッパー45,46を一方の内側面に互いに対向させて形成している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年の電子デバイスの高性能化に伴って、転写用マスクに形成されるパターンも一段と微細化が要求されており、このような微細パターンを形成するためにもマスクブランクの清浄度は極めて高いものでないと許容できなくなってきている。従って、マスクブランクに異物等が付着するのを出来るだけ抑制することにより、特にレジスト膜を有するマスクブランクの保管中は出来るだけ高い清浄度に維持する必要がある。
【0010】
しかしながら、従来構造の収納ケースは、上述したように、蓋4をケース本体3に被せると、前記蓋4の凹部43,44が前記ケース本体3の凸部33,34とそれぞれ嵌合することで、蓋4とケース本体3とが固定されるようになっており、また上記蓋4やケース本体3はポリプロピレン等の樹脂で形成されているため、蓋を開閉する際に、前記蓋4の凹部43,44と前記ケース本体3の凸部33,34との擦れによるパーティクルが発生する。そして、発生したパーティクルは、たとえば蓋4を開けた際にケース内が一時的に負圧になることにより生じるケースの外から内への気流の変化の影響を受けて、ケース内に吸込まれるように進入してマスクブランクの膜表面に付着して、異物欠陥となるおそれが極めて高かった。
【0011】
また、上記のように蓋4の凹部43,44とケース本体3の凸部33,34とをそれぞれ嵌合させる構造を設けるかわりに、たとえば蓋4をケース本体3に被せたときのケース本体3の開口縁部の外周面36と蓋4の下縁部の外周面48との接合部(合わせ部)に例えば断面コ字状の固定フックを嵌めて固定する構造も知られている。しかしながら、このような固定フックをケースの端から固定位置(通常は中央の位置)まで着脱の度にいちいちスライドさせる必要があるため、固定フックをスライドさせる時のパーティクル発生による発塵が極めて大きく、この場合もたとえば蓋4を開けた際にケース内が一時的に負圧になることによりパーティクルがケース内に進入してマスクブランクの膜表面に付着するおそれがあった。
【0012】
そこで、本発明は、上記従来の問題点を解消し、収納ケースの開閉時の負圧変化を抑制することにより、ケース内に進入するパーティクルを抑制し、さらにマスクブランク、詳しくは転写用パターン形成用の薄膜が形成されている側のマスクブランク膜表面へのパーティクル付着を抑制できるようにしたマスクブランクの収納ケース、マスクブランクの収納方法、及びマスクブランク収納体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、蓋の開閉時の負圧変化によって生じるケースの外から内への空気の流れを出来るだけ小さくするようにすることで、マスクブランクへのパーティクル付着を効果的に抑制できることを見い出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0014】
すなわち、本発明は以下の構成を有するものである。
(構成1)
上方が開口したケース本体と、該ケース本体に被せて嵌め合わされる蓋体とを備え、マスクブランクを内部に縦方向に収納するマスクブランク収納ケースであって、前記ケース本体の開口縁又は前記蓋体の開口縁に、前記蓋体の開閉時における前記ケース内の負圧変化を抑制する切欠きを設けることを特徴とするマスクブランク収納ケースである。
【0015】
構成1のように、マスクブランク収納ケースを構成するケース本体と蓋体のいずれかの開口縁に、上記蓋体の開閉時における上記ケース内の負圧変化を抑制する切欠きを設けることにより、蓋の開閉時に生じるケースの外から内への空気の流れ(気流)を小さくして、蓋の開閉時の発塵によるパーティクルがケース内部に吸込まれてマスクブランク表面に付着するのを抑制することができる。特に小さな(例えば粒径が0.1μm程度以下の)パーティクルほど、蓋の開閉時におけるケース内への気流の変化の影響を受けて、ケース内部に吸込まれてマスクブランク表面に付着し易い。構成1のマスクブランク収納ケースによれば、蓋の開閉時におけるケース内の負圧変化によるケース内への気流の変化を小さくできるので、特に小さな粒径のパーティクル付着を効果的に抑制することができる。
【0016】
(構成2)
前記ケース本体の開口縁における対向する2箇所に前記切欠きを設けることを特徴とする構成1に記載のマスクブランク収納ケースである。
構成2にあるように、前記ケース本体の開口縁における対向する2箇所に前記切欠きを設けることにより、蓋の開閉時のケース内の負圧変化によって生じるケース内への気流の変化を特に小さくできるので、マスクブランクへのパーティクル付着を抑制する効果が大きい。
【0017】
(構成3)
前記ケース本体及び前記蓋体はそれぞれに嵌合部を有して嵌め合わされ、前記ケース本体の開口縁における一方の対向する2箇所に前記嵌合部を設けるとともに、他方の対向する2箇所に前記切欠きを設けることを特徴とする構成2に記載のマスクブランク収納ケースである。
構成3のように、前記ケース本体及び前記蓋体はそれぞれに嵌合部を有して嵌め合わされ、前記ケース本体の開口縁における一方の対向する2箇所に前記嵌合部を設けるとともに、他方の対向する2箇所に前記切欠きを設けることにより、蓋の開閉操作に伴う上記嵌合部における発塵によるパーティクルがケース内部に吸込まれてマスクブランク表面に付着するのを効果的に抑制することができる。
【0018】
(構成4)
前記切欠きは、該切欠きを設ける前記開口縁の一辺の長さの1/4よりも幅広であることを特徴とする構成1乃至3のいずれかに記載のマスクブランク収納ケースである。
構成4にあるように、前記切欠きは、該切欠きを設ける前記開口縁の一辺の長さの1/4よりも幅広とすることにより、蓋の開閉時に生じるケース内の負圧変化によるケース内への気流の変化を小さくする効果が大きくなるため、マスクブランクへのパーティクル付着を抑制する効果が大きい。
【0019】
(構成5)
一方の主表面上に転写パターン形成用の薄膜を有する複数枚のマスクブランクを構成1乃至4のいずれかに記載のマスクブランク収納ケースに収納する際、前記切欠きに近い位置に収納するマスクブランクは、前記薄膜表面と反対側の主表面を前記切欠き側に向けて収納することを特徴とするマスクブランクの収納方法である。
【0020】
構成5にあるように、複数枚のマスクブランクを構成1乃至4のいずれかに記載のマスクブランク収納ケースに収納する際、前記切欠きに近い位置に収納するマスクブランクは、前記薄膜表面と反対側の主表面を前記切欠き側に向けて収納することによって、上記切欠きより気流の流れと一緒にパーティクルがケース内に入ったとしても、転写パターンに影響の少ない上記薄膜表面と反対側の主表面に付着することになるので、上記マスクブランクを使用して転写用マスクを作製したとしてもほとんど影響はない。収納された複数枚のマスクブランク全体のパーティクル付着を抑制することができ、とりわけ各マスクブランクの転写パターン形成用の薄膜へのパーティクル付着を効果的に抑制することができる。
【0021】
(構成6)
構成5に記載のマスクブランクの収納方法によりマスクブランクが収納されたことを特徴とするマスクブランク収納体である。
構成5に記載のマスクブランクの収納方法によりマスクブランクが収納されたマスクブランク収納体は、蓋の開閉時の負圧変化によって生じるケース内への気流の変化が小さいので、蓋の開閉時の発塵によるパーティクルがケース内部に吸込まれてマスクブランク表面に付着するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、マスクブランク収納ケースを構成するケース本体と蓋体のいずれかの開口縁に、上記蓋体の開閉時における上記ケース内の負圧変化を抑制する切欠きを設けることにより、蓋の開閉時に生じるケースの外から内への気流の変化を小さくできるので、蓋の開閉時の発塵によるパーティクルがケース内部に吸込まれてマスクブランク表面に付着するのを効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態を説明する。
図1および
図2は、本発明に係る収納ケースの一実施の形態を示すものであり、
図1の(a)は、本発明に係る収納ケースの蓋体をケース本体に被せる前の状態の正面図、同図(b)はその側面図であり、
図2の(a)は、本発明に係る収納ケースの蓋体をケース本体に被せた状態の正面図、同図(b)はその側面図である。
【0025】
本実施の形態に係るマスクブランク収納ケースは、上方が開口したケース本体7と、該ケース本体7に被せる蓋体6とを備えて、内部にマスクブランクを収納するマスクブランクの収納ケースである。上記蓋体6及びケース本体7は、その全体的な形状は、従来構造の収納ケース(すなわち
図4に示す蓋4及び
図6に示すケース本体3)と同様の形状を有している。また、
図1および
図2には示していないが、前述の従来構造の収納ケースのようにマスクブランクを複数枚保持するための中ケース2(
図5参照)を用いる構成とすることができる。上記中ケースを使用せずに、マスクブランクをケース本体7に直接溝等を設けて収納する形態とすることもできるが、中ケースを使用すると、数枚乃至数十枚のマスクブランクをまとめて中ケースに入れた状態で取り扱えるので便利である。
【0026】
本実施の形態の収納ケースは、主表面が四角形状(例えば矩形状、正方形状)のガラス基板の一主表面上にクロム膜等の遮光性薄膜を成膜し、さらにその上にレジスト膜を形成したレジスト膜付きマスクブランクを従来構造と同様の中ケースに収納し、この中ケースをケース本体7に収納し、このケース本体7の開口部側に蓋体6を被せる構造である(
図2(a)、(b)参照)。ケース本体7の上から蓋体6を被せると、蓋体6の下方縁に続くやや外方に拡開した側壁部61とケース本体7の開口縁71とが前後に重なり合うと同時に、蓋体6の下方縁の側壁部61とケース本体7の開口縁71の下方に形成されたやや外方に拡開した側壁部72とが同一面上に重なり合って蓋体6とケース本体7とが接合される。
【0027】
また、上記ケース本体7は、その一方の対向する外周面の開口縁71側には凸部73が形成されている。そして、ケース本体7の開口縁71のやや下方の位置に形成された上記側壁部72と上記凸部73の凸面とは略同一面に形成されている。
【0028】
また上記蓋体6は、その一方の対向する上記側壁部61の中央から延びた係合片62の内側に凹部63を形成している。これにより、蓋体6をケース本体7に被せたときに、その一方の対向する2箇所において、上記係合片62の凹部63がケース本体7の上記凸部73とそれぞれ嵌合することで、蓋体6とケース本体7とが閉じた状態で固定される構造となっている(
図2(a)参照)。なお、
図1(a)においては、蓋体6の上記係合片62及び凹部63と、ケース本体7の上記凸部73のいずれも一方が示されているが、これと対向する反対側にも蓋体6に上記係合片62及び凹部63が、ケース本体7に上記凸部73がそれぞれ形成されている。
【0029】
また、本実施の形態の収納ケースにおいては、上記のとおり上記ケース本体7の外周面の開口縁71側における一方の対向する2箇所に上記凸部73が設けられているが、上記開口縁71における他方の対向する2箇所には切欠き74が形成されている(
図1(b)参照)。なお、
図1(b)においては一方の上記切欠き74が示されているが、これと対向する反対側にも開口縁71に切欠き74が形成されている。また、上記したように、ケース本体7の上から蓋体6を被せると、蓋体6の側壁部61とケース本体7の開口縁71とが前後に重なり合うと同時に、蓋体6の側壁部61とケース本体7の側壁部72とが同一面上に重なり合って蓋体6とケース本体7とが接合されるため、ケース本体7に蓋体6を被せた状態では、ケース本体7の開口縁71に設けた上記切欠き74は外からは見えない(
図2(b)参照)。
【0030】
本実施の形態に係るマスクブランク収納ケースは、以上説明したように、ケース本体7の開口縁71に、上記蓋体6の開閉時における上記収納ケース内の負圧変化を抑制する大きさの上記切欠き74を設けている。これにより、蓋の開閉時に、ケース本体の開口縁付近で生じるケースの外から内への空気の流れ(気流)を小さくして、ゆっくりとした空気の流れを生じさせるようにして、蓋の開閉時の発塵によるパーティクルがケース内部に吸込まれてマスクブランク表面に付着するのを抑制することができる。例えば粒径がサブミクロン(0.1μm程度以上0.5μm以下)のパーティクルについては、蓋の開閉時におけるケース内への気流の変化の影響を受けて、ケース内部に吸込まれてマスクブランク表面に付着しやすくなるが、本実施の形態のマスクブランク収納ケースによれば、蓋の開閉時におけるケース内への気流の変化を小さくできるので、粒径がサブミクロンのパーティクル付着を効果的に抑制することができる。
【0031】
本実施の形態においては、ケース本体7の開口縁71における対向する2箇所に前記切欠き74を設けている。少なくとも1箇所に上記切欠きを設けることにより上記作用効果が得られるが、ケース本体7の開口縁71における対向する2箇所に切欠き74を設けることにより、蓋の開閉時に生じるケース内への気流の変化を特に小さくすることができ、しかもケースのいずれの位置においても気流の変化を均一にできるので、マスクブランクへのパーティクル付着を抑制する効果が大きく好適である。
【0032】
また、本実施の形態においては、上記のとおり、ケース本体7の開口縁71における一方の対向する2箇所に蓋体6との嵌合部(凸部73)を設けるとともに、他方の対向する2箇所に前記切欠き74を設けることにより、蓋の開閉操作に伴う上記嵌合部における発塵によるパーティクルがケース内部に吸込まれてマスクブランク表面に付着するのを効果的に抑制することができる。
【0033】
なお、上記切欠き74は、該切欠きを設ける上記ケース本体の開口縁71の一辺の長さの1/4よりも幅広とすることにより、蓋の開閉時に生じるケース内の負圧変化によるケース内への気流の変化を小さくする効果が大きくなるため、マスクブランクへのパーティクル付着を抑制する効果が大きい。また、上記切欠き74の幅があまり広いと、該切欠きを設ける上記ケース本体の開口縁71での強度が低下するおそれがあるので、該切欠きを設ける上記ケース本体の開口縁71の一辺の長さの9/10よりも幅狭とすることが望ましい。上記切欠き74は、好ましくは、該切欠きを設ける上記ケース本体の開口縁71の一辺の長さの1/4よりも幅広で、3/4よりも幅狭とすることが望ましい。
【0034】
また、一方の主表面上に転写パターン形成用の薄膜を有する複数枚のマスクブランクを上記マスクブランク収納ケースに収納する際、前記切欠き74に近い位置に収納するマスクブランクは、上記薄膜形成膜面と反対側の主表面を前記切欠き74側に向けて収納することが好ましい。
図3は、複数枚のマスクブランクを中ケース5に入れて、さらにケース本体7に収納した状態を示す平面図である。ここでは、一例として5枚のマスクブランク1を収納した場合を示しており、符号Fは各マスクブランク1の薄膜形成面を、符号Gはガラス面を示す。なお、マスクブランクは、上記転写パターン形成用の薄膜上に、レジスト膜を形成したレジスト膜付マスクブランクであっても良い。
【0035】
図3に示すように、複数枚のマスクブランク1を本実施の形態のマスクブランク収納ケースに収納する際、前記ケース本体7の切欠き74に近い位置に収納するマスクブランク1は、上記薄膜形成面Fと反対側の主表面のガラス面Gを前記切欠き74側に向けて収納することにより、収納された複数枚のマスクブランク全体のパーティクル付着を抑制することができ、とりわけ各マスクブランクの薄膜形成面Fへのパーティクル付着を効果的に抑制することができる。
上記切欠き74より、気流の流れと一緒にパーティクルが収納ケース内に入ったとしても、転写パターンに影響の少ない上記薄膜表面と反対側の主表面に付着することになるので、上記マスクブランクを使用して転写用マスクを作製したとしてもほとんど影響はない。
【0036】
なお、本実施の形態の収納ケースは、蓋体6を閉じる際、上記本体ケース7の開口縁71と蓋体6の側壁部61とが嵌め合わされるが、蓋体6を閉じた収納ケースの密閉性を高めるために、蓋体6を閉じた際にケース本体7の開口縁71に嵌め込まれるような適当な大きさの環状の弾性部材(図示せず)を蓋体6の側壁部61の内側に取り付けてもよい。この弾性部材としては、雰囲気の温度、気圧等の変動があっても化学成分ガスの放出が少ない材料が好ましく、例えば、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマーが挙げられる。
【0037】
また、上述のケース本体7及び蓋体6の材質は、樹脂材料で形成されるが、例えばポリプロピレン、アクリル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチルサルファイト、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、シクロオレフィンポリマー(COP)等の樹脂から適宜選択されることが好ましい。これらの中でも、雰囲気の温度、気圧等の変動があっても化学成分ガスの放出が少ない材料が特に好ましく、例えばポリカーボネート、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、シフロオレフィンポリマー(COP)が好ましい。なお、マスクブランクの保管中にチャージが溜まると、マスク製造過程において放電破壊を起こし、パターン欠陥となる場合があるので、たとえばケース本体7の構成樹脂にカーボン等を混ぜ込んで導電性を付与するようにしてもよい。
【0038】
なお、上記の実施の形態では、ケース本体7の開口縁71に上記切欠き74を設ける構成としたが、本発明はこれに限らず、例えば蓋体6の下方に開口縁を形成し、この開口縁に切欠きを設ける構成としてもよい。また、本発明のマスクブランク収納ケースは、蓋体及びケース本体の外観に関しては、上記
図1及び
図2に示すものには限定されない。また、中ケースに関しても、
図5に示すような従来構造のものを適用することができる。
【0039】
本発明に係る収納ケースに収納されるマスクブランクの一構成例は、基板の主表面上に転写パターンとなる薄膜(転写パターン形成用の薄膜)を形成してなるもの、あるいはさらに該薄膜の表面にレジスト膜を形成してなるものである。
上記基板としては、マスクブランクがバイナリマスクブランクや位相シフト型マスクブランク等の透過型マスクブランクの場合、露光光に対して透光性を有する基板材料を使用し、例えば合成石英ガラス基板が使用される。また、マスクブランクがEUV露光用等の反射型マスクブランクの場合、低熱膨張の特性を有する基板材料を使用し、SiO
2−TiO
2系ガラス(2元系(SiO
2−TiO
2)及び3元系(SiO
2−TiO
2−SnO
2等))や、例えばSiO
2−Al
2O
3−Li
2O系の結晶化ガラスの基板が使用される。また、マスクブランクがナノインプリントプレート用マスクブランクの場合、例えば合成石英ガラス基板が使用される。また、基板及びマスクブランク1の形状は、矩形状、円形状何でもよい。
【0040】
上記透過型マスクブランクは、上記基板の主表面上に、転写パターン形成用の薄膜として遮光膜を形成することによりバイナリマスクブランクが得られる。また、上記基板の主表面上に、転写パターン形成用の薄膜として位相シフト膜、あるいは位相シフト膜及び遮光膜を形成することにより、位相シフト型マスクブランクが得られる。また、基板彫り込み型のレベンソン位相シフト型マスクブランクにおいては、基板の主表面上に、転写パターン形成用の薄膜として遮光膜を形成することにより得られる。また、クロムレスタイプの位相シフト型マスクブランクや、ナノインプリントプレート用マスクブランクにおいては、基板の主表面上に、転写パターン形成用の薄膜としてエッチングマスク膜を形成することにより得られる。
上記遮光膜は、単層でも複数層(例えば遮光層と反射防止層との積層構造)としてもよい。また、遮光膜を遮光層と反射防止層との積層構造とする場合、この遮光層を複数層からなる構造としてもよい。また、上記位相シフト膜、エッチングマスク膜、吸収体膜についても、単層でも複数層としてもよい。
【0041】
透過型マスクブランクとしては、例えば、クロム(Cr)を含有する材料により形成されている遮光膜を備えるバイナリマスクブランク、遷移金属とケイ素(Si)を含有する材料により形成されている遮光膜を備えるバイナリマスクブランク、タンタル(Ta)を含有する材料により形成されている遮光膜を備えるバイナリマスクブランク、ケイ素(Si)を含有する材料、あるいは遷移金属とケイ素(Si)を含有する材料により形成されている位相シフト膜を備える位相シフト型マスクブランクなどが挙げられる。上記遷移金属とケイ素(Si)を含有する材料としては、遷移金属とケイ素を含有する材料のほかに、遷移金属及びケイ素に、さらに窒素、酸素及び炭素のうち少なくとも1つの元素を含む材料が挙げられる。具体的には、遷移金属シリサイド、または遷移金属シリサイドの窒化物、酸化物、炭化物、酸窒化物、炭酸化物、あるいは炭酸窒化物を含む材料が好適である。遷移金属には、モリブデン、タンタル、タングステン、チタン、クロム、ハフニウム、ニッケル、バナジウム、ジルコニウム、ルテニウム、ロジウム、ニオブ等が適用可能である。この中でも特にモリブデンが好適である。
【0042】
さらに上記バイナリマスクブランクや位相シフト型マスクブランクにおいて、遮光膜上に、エッチングマスク膜を備えても構わない。エッチングマスク膜の材料は、遮光膜をパターニングする際に使用するエッチャントに対して耐性を有する材料から選択される。遮光膜の材料がクロム(Cr)を含有する材料の場合、エッチングマスク膜の材料としては、例えば上記ケイ素(Si)を含有する材料が選択される。また、遮光膜の材料がケイ素(Si)を含有する材料や、遷移金属とケイ素(Si)を含有する材料の場合、エッチングマスク膜の材料としては、例えば上記クロム(Cr)を含有する材料が選択される。
【0043】
また、反射型マスクブランクとしては、基板上に、EUV光に対して反射する多層反射膜、さらに、転写用マスクの製造工程におけるドライエッチングやウェット洗浄から多層反射膜を保護するため、保護膜が形成された多層反射膜付き基板として、上記多層反射膜や保護膜上に、転写パターン形成用の薄膜として吸収体膜を備える反射型マスクブランクが挙げられる。
【0044】
EUV光の領域で使用される多層反射膜としては、Mo/Si周期多層膜のほかに、Ru/Si周期多層膜、Mo/Be周期多層膜、Mo化合物/Si化合物周期多層膜、Si/Nb周期多層膜、Si/Mo/Ru周期多層膜、Si/Mo/Ru/Mo周期多層膜、Si/Ru/Mo/Ru周期多層反射膜が挙げられる。
また、上記保護膜の材料としては、例えば、Ru、Ru−(Nb、Zr、Y、B、Ti、La、Mo)、Si−(Ru、Rh、Cr、B)、Si、Zr、Nb、La、B等の材料から選択される。これらのうち、Ruを含む材料を適用すると、多層反射膜の反射率特性がより良好となる。
【0045】
また、上記吸収体膜の材料としては、例えば、Ta単体、Taを主成分とする材料が用いられる。Taを主成分とする材料は、通常、Taの合金である。このような吸収体膜の結晶状態は、平滑性、平坦性の点から、アモルファス状又は微結晶の構造を有しているものが好ましい。Taを主成分とする材料としては、例えば、TaとBを含む材料、TaとNを含む材料、TaとBを含み、更にOとNの少なくともいずれかを含む材料、TaとSiを含む材料、TaとSiとNを含む材料、TaとGeを含む材料、TaとGeとNを含む材料などを用いることができる。また例えば、TaにB、Si、Ge等を加えることにより、アモルファス構造が容易に得られ、平滑性を向上させることができる。さらに、TaにN、Oを加えれば、酸化に対する耐性が向上するため、経時的な安定性を向上させることができる。
【0046】
なお、以上は、基板上に転写パターン形成用の薄膜を有するマスクブランク、あるいは前記薄膜上にさらにレジスト膜を有するマスクブランクを収納する収納ケースについて説明したが、本発明に係る収納ケースは、マスクブランク用基板や、上記マスクブランクを用いて製造された転写用マスクの収納ケースとしても好ましく用いることができる。
【実施例】
【0047】
以下、具体的な実施例により本発明を説明する。
(実施例1)
合成石英基板(6インチ×6インチの大きさ)上にスパッタ法で、表層に反射防止機能を有するクロム膜(遮光膜)を形成し、その上にスピンコート法でポジ型の化学増幅型レジストである電子線描画用レジスト膜を形成してレジスト膜付きマスクブランクを製造した。
【0048】
このようにして製造した5枚のレジスト膜付きマスクブランクを1ケースに収納した。収納ケースとして、前述の
図1及び
図2に示す実施の形態に係る収納ケースを用いた。なお、前述の
図3に示すように、ケース本体の開口縁に設けた2箇所の切欠き74に近い位置のマスクブランクについては、そのレジスト膜面とは反対側のガラス面を切欠き74に向けて収納した。また、蓋体の材質は、ポリカーボネート、ケース本体の材質はポリカーボネート、中ケースの材質はポリプロピレンを用いた。収納作業は所定の清浄度に調節されたクリーンルーム内で行った。
【0049】
そして、同じくクリーンルーム内で、蓋体を開け、再び蓋体を閉じるという蓋の開閉動作を連続して20回行った。
そして、このような蓋の開閉動作を行った後、収納ケースからマスクブランクを取り出し、欠陥検査装置(レーザーテック社製:M2350)を用いて、マスクブランクのレジスト膜上の付着異物による欠陥(0.1μm以上の大きさの欠陥)個数を測定した。なお、評価は、収納ケースに収納する前の欠陥個数を予め上記と同様に測定しておき、これに対する蓋の開閉動作後の欠陥個数の増加個数で行った。その結果、本実施例では、増加欠陥個数は、平均(5枚の平均)して0.1個であり、蓋体の開閉動作によるマスクブランクへのパーティクル付着を効果的に抑制することが可能であることが確認できた。
【0050】
(比較例)
実施例1と同様に製造したレジスト膜付きマスクブランクを収納するケースとして、前述の
図4乃至
図6に示す従来構造の収納ケースを用いたこと以外は実施例1と同様にしてマスクブランクの収納を行った。但し、実施例1とは異なり、5枚とも、そのレジスト膜面を同じ方向に向けて収納した。なお、蓋の材質は、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ケース本体の材質はポリプロピレン、中ケースの材質はポリプロピレンを用いた。
そして、実施例1と同様にクリーンルーム内で、蓋体を開け、再び蓋体を閉じるという蓋の開閉動作を連続して20回行った。
【0051】
そして、このような蓋の開閉動作を行った後、実施例1と同様に、マスクブランクのレジスト膜に関し、収納ケースに収納する前の欠陥個数に対する蓋の開閉動作後の欠陥個数の増加個数を測定した。その結果、本比較例では、増加欠陥個数は、平均(5枚の平均)して7.5個と非常に多く、蓋体の開閉動作によるマスクブランクへのパーティクル付着を抑制することができない。特に、蓋4の凹部43,44とケース本体3の凸部33,34との嵌合部の近傍であるケースの略中央に収納されたマスクブランクの増加欠陥個数が多かった。
これは、従来構造の収納ケースの場合、ケース本体の開口縁には切欠きは設けられておらず、蓋の開閉動作に伴う発塵によるパーティクル(特に小粒径のパーティクル)が、蓋の開閉時の気流の変化の影響を受けてケース内部に吸込まれてマスクブランク表面に付着し易いことが要因であると考えられる。