(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
各金物の上記本体部は更に、上記緊締部材連結部と上記緊締部材の軸線方向に対峙する支持部を有し、上記回動連結部がこの支持部に連なるとともに上記当接面に対して傾斜する方向に突出することにより、各金物が屈曲形状をなすことを特徴とする請求項1に記載の継手。
上記緊締部材が少なくとも両端部に雄ねじを有するねじ鉄筋である場合に用いられる請求項1〜3のいずれかに記載の継手であって、各金物の上記緊締部材連結部が挿通孔を有し、この挿通孔に挿通されたねじ鉄筋の端部にナットが螺合されて締め付けられることにより、当該金物とねじ鉄筋が連結され、
各金物の上記本体部は更に、上記回動軸線方向に対峙する一対の側壁部を有し、これら一対の側壁部と上記緊締部材連結部と上記支持部が連なることにより収容凹部が画成され、この収容凹部に上記ナットが収容され、この収容凹部はコンクリート部材側が底壁部で塞がれ、反対側が開放されており、この底壁の外面が上記当接面の一部として提供されることを特徴とする継手。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2の
図1〜
図9に示す第1実施例の継手では、2本のねじ鉄筋の軸線の交点に2つの金物の回動軸線が位置している。そのため、補強装置をコンクリート柱に装着する際、各継手の2つの金物にそれぞれねじ鉄筋の端部を挿通させてナットで締め付けた時に、2本のねじ鉄筋の引っ張り力に起因する回動モーメントのバランスが悪く、各金物が不安定になり、装着時の作業性が悪かった。なお、この回動モーメントの議論は本発明の実施形態において詳述する。
特許文献2の
図10〜
図12の第2実施例の継手では、各金物が、コンクリート柱の側面に当たる当接板部と、この当接板部と直交する起立板部とを有してL字形をなしている。2つの金物の当接板部の端部(起立壁の反対側の他端部)同士が回動可能に連結され、各金物の起立板部にねじ鉄筋が挿通されてナットで連結される。しかし、上記当接板部は均一厚さをなし、その端部を連結する構造であるため、この回動連結部の強度を十分に確保することができず、現実的でない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、コンクリート部材を囲う環状の補強装置を組み立てるために、コンクリート部材の側面に沿う複数の細長い緊締部材を、コンクリート部材の
面取りを有する角部において連結する継手であって、
第1、第2の金物を備え、これら第1、第2の金物の各々が、上記コンクリート部材の側面に当たる当接面を有する本体部と、この本体部の一端側に一体に設けられた回動連結部とを有し、
上記本体部が、上記回動連結部から上記緊締部材の軸線方向に離れた緊締部材連結部を有し、この緊締部材連結部に上記緊締部材の端部が連結されるようになっており、
上記第1、第2の金物の回動連結部が、連結されるべき上記緊締部材の軸線方向と直交する方向に延びる回動軸線を中心にして、互いに回動可能に連結される継手において、
上記第1、第2の金物の各々において、上記回動連結部の一部が、上記当接面から上記緊締部材連結部とは反対側に突出しており、上記回動軸線が、連結されるべき上記緊締部材の軸線より上記当接面寄りに偏移していることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、コンクリート部材の角部の角度に対応して第1、第2金物の角度を変えることができるので、いかなる断面形状のコンクリート部材であっても共通構造の継手を用いることができ、継手の製造コストを抑制することができる。
しかも、回動軸線が当接面寄りに偏移しているので、補強装置をコンクリート部材に装着する際に、各金物に大きな回動モーメントが掛からず安定しており、装着作業が向上する。
また、回動連結部は当接面から突出しているため、回動軸線を当接面寄りに偏移させても回動連結部の強度を十分に確保することができる。回動連結部が当接面から突出していても、コンクリート部材の角部に面取りがあるため、コンクリート部材と干渉することはない。
【0010】
好ましくは、各金物の上記本体部は更に、上記緊締部材連結部と上記緊締部材の軸線方向に対峙する支持部を有し、上記回動連結部がこの支持部に連なるとともに上記当接面に対して傾斜する方向に突出することにより、各金物が屈曲形状をなす。
上記構成によれば、金物の重量を増大させることなく、回動連結部の強度を高めることができる。
【0011】
好ましくは、上記第1、第2の金物の回動連結部を回動可能に連結する軸部の少なくとも一部が、上記当接面から突出している。
上記構成によれば、軸部の径の大きさを十分確保しつつ、金物に掛かる回動モーメントをより一層低減することができる。
【0012】
上記緊締部材が少なくとも両端部に雄ねじを有するねじ鉄筋である場合に、好ましくは、各金物の上記緊締部材連結部が挿通孔を有し、この挿通孔に挿通されたねじ鉄筋の端部にナットが螺合されて締め付けられることにより、当該金物とねじ鉄筋が連結され、各金物の上記本体部は更に、上記回動軸線方向に対峙する一対の側壁部を有し、これら一対の側壁部と上記緊締部材連結部と上記支持部が連なることにより収容凹部が画成され、この収容凹部に上記ナットが収容され、この収容凹部はコンクリート部材側が底壁部で塞がれ、反対側が開放されており、この底壁の外面が上記当接面の一部として提供される。
上記構成によれば、収容凹部が当接面の反対側に開放しているので、ナットを締め付けるための工具を操作し易い。
また、収容凹部が上記一対の側壁部と支持部と緊締部材連結部により囲われており、底壁部で塞がれているので、本体部の強度が減じられない。
さらに、底壁部の外面が当接面の一部として提供されるので、当接面の面積を大きくすることができ、コンクリート部材の角部近傍の側面を安定して押さえることができる。
【0013】
好ましくは、上記収容凹部の底壁部の内面が上記一対の側壁部に向かって高くなる凹曲面をなしている。
上記構成によれば、本体部の側壁部と底壁部の境部を肉厚にすることができ、金物の強度をさらに高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、継手の製造コストを増大させずに、種々の断面形状のコンクリート部材の耐震補強を行うことができるとともに、継手強度を減じることなく補強装置のコンクリート部材への装着作業の作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の第1実施形態について
図1〜
図11を参照しながら説明する。
図1に示すように、高架橋や橋等の既設の鉄筋コンクリート柱1(コンクリート部材)には、その長手方向(垂直方向)に間隔をおいて多数の補強装置2が装着される。
【0017】
図2に示すように、コンクリート柱1は断面四角形をなし、4つの平坦な側面1aと、側面1aの交差部に位置する4つの角部1bと有している。角部1bには隣接する2つの側面1aに対して傾斜する面取り1cが形成されている。各補強装置2は、コンクリート柱1の断面形状に対応した四角形の環状をなし、コンクリート柱1を一周にわたって囲っている。
【0018】
上記補強装置2は、4本の直線状のねじ鉄筋3(緊締部材)と4つの継手4とを備えている。ねじ鉄筋3は、コンクリート柱1の4つの平坦な側面1aに沿って略水平に(コンクリート柱1の長手方向と直交する方向に)配置されている。継手4は、コンクリート柱1の角部1b毎に配置され、隣り合う2本のねじ鉄筋3の端部を連結する。
【0019】
図3〜
図5に最も良く示すように、各継手4は、それぞれ鋳物等からなる第1金物10と第2金物20とを、互いに回動可能に連結することにより構成されている。この回動軸線を符号Lで示す。
【0020】
上記第1金物10は、平面長方形をなす扁平な本体部11と、この本体部11の一端側一体に連なる回動連結部12とを有している。同様に第2金物20も、平面長方形をなす扁平な本体部21と、この本体部21の一端側に一体に連なる回動連結部22とを有している。
【0021】
上記第1金物10の回動連結部12は、本体部11の端部においてその幅方向中央に1つだけ突出形成され、第2金物20の回動連結部22は、本体部21の端部においてその幅方向に対峙して一対形成されている。そして、回動連結部12を一対の回動連結部22間に入れ、これら回動連結部12,22にそれぞれ形成された軸穴12a,22a(軸受部)に連結ピン30(軸部)を貫通させることにより、金物10,20が回動可能に連結されている。なお、本実施形態では連結ピン30はボルトにより形成されており、ボルトの先端部にはナット31が螺合されている。
【0022】
上記第1金物10の本体部11は、平坦な当接面11aを有するとともに、支持部11bと、鉄筋連結部11c(緊締部材連結部)と、一対の側壁部11dとを一体に有している。当接面11aは、コンクリート柱1の側面1aに当接するようになっている。
【0023】
上記支持部11bと鉄筋連結部11cは、後述するように、連結されるべきねじ鉄筋3の軸線3x方向(上記回転軸線Lと直交する方向)に離れて対峙している。鉄筋連結部11cは、中心軸線が回動軸線Lと直交する穴11yを有しており、この穴11yにねじ鉄筋3が挿通されるようになっている。なお、鉄筋連結部11cにおいて支持部11bと対向する面は、穴11yの中心軸線と直交する平坦面となっている。
【0024】
上記一対の側壁部11dは回動軸線L方向に離間対峙し、上記支持部11bと鉄筋連結部11cを連ねている。
上記支持部11b,鉄筋連結部11c,一対の側壁部11dで囲われるようにして収容凹部11zが形成されている。この収容凹部11zは平面矩形をなし、一方側(コンクリート柱1側)は底壁11eで塞がれ、他方側が開放されている。この底壁11eの外面は、上記当接面11aの一部として提供されている。
【0025】
図8に示すように上記底壁11eの内面すなわち収容凹部11zの底面は、中心軸線が上記回動軸線Lと直交する円弧面(一対の側壁部11dに向かって高くなるような凹曲面)をなしている。
【0026】
上記第2金物20の本体部21は、第1金物10の本体部11と同一形状をなしており、当接面21a、支持部21b、穴21yを有する鉄筋連結部21c、一対の側壁部21d、底壁21e、収容凹部21zを有している。
【0027】
上記第1金物10において、上記支持部11bに上記回動連結部12が連なっている。この回動連結部12は、本体11と鈍角をなし当接面11aに対して傾斜方向に突出しており、これにより第1金物10は屈曲形状をなしている。回動連結部12の一部は当接面11aから、上記支持部11b、鉄筋連結部11cの反対方向に突出している。この突出量を
図5において符号Tで示す。これに伴い、回動連結部12における連結ピン30を通す軸穴12aの軸線が鉄筋連結部11cの
穴11yの軸線から外れ、当接面11a寄りに偏移している。
上記第2金物20も第1金物10と同様に屈曲形状をなし、回動連結部22の一部が当接面21aから突出し、上記回動連結部22の軸穴22aが
穴21yの軸線から外れ当接面21a寄りに偏移している。
その結果、金物10,20を連結ピン30で連結し、これら金物10,20に2本のねじ鉄筋3をそれぞれ連結した状態では、回動軸線Lは2本のねじ鉄筋3の軸線3xの交点より内方向に偏移することになる。
【0028】
本実施形態では、第1金物10において、回動連結部12の軸穴12aを当接面11aの延長面が横切っている。第2金物20も同様である。その結果、これら軸穴12a、22aに支持される連結ピン30の一部が当接面11aから突出することになる。
【0029】
上記構成をなす補強装置2の作用を説明する。最初に
図2に示すような断面正方形をなすコンクリート柱1の耐震補強に用いられる場合について説明する。
コンクリート柱1の下端において、補強装置2を組み立てる。すなわち、4本のねじ鉄筋3をコンクリート柱1の側面に沿って配置し、4つの継手4をコンクリート柱1の角部に配置する。
【0030】
各継手4を第1、第2金物10,20が直角をなすように折り曲げ、これら第1金物10と第2金物20に、隣り合うねじ鉄筋3の端部をそれぞれ連結する。具体的には、ねじ鉄筋3の端部を金物10,20の鉄筋連結部11c,21cの穴11y、21yに挿通させるとともに、収容凹部11z、21zに突出させる。さらにこの収容凹部11z、21zにおいて、ねじ鉄筋3の端部に締付ナット41とロックナット42を螺合する。
【0031】
上記のようにして補強装置2はコンクリート柱1を一周にわたって囲うようにして略正方形の環状をなして組み立てられるが、その周長はコンクリート柱1の外周長より大きく、コンクリート柱1を緩く囲んでいる。
【0032】
次に、補強装置2をコンクリート柱1に沿って装着位置まで上方に移動し、この装着位置で、4つの継手4における締付ナット41を締め付けて、ねじ鉄筋3に引っ張り力を付与し、継手4の第1金物10、第2金物20の当接面11a、21aを強い力でコンクリート柱1の側面に密着させる。さらに、ロックナット42を締め付けて締付ナット41の緩みを防止する。なお、ロックナット42を用いる代わりに接着剤により締付ナット41をねじ鉄筋3に固定してもよい。
【0033】
なお、
図8に示すように上記収容凹部11z、21zは当接面11a、21a
の反対側が開放されているので、上記ナット41,42の締め付けの際にスパナ50(工具)の操作がし易い。また、上記収容凹部11z、21zの底面が円弧面をなしているので、当接面11a,21aと一対の側壁部11d、21dの境を厚肉にできるにも拘わらず、スパナ50の回動操作に支障をきたさない。
【0034】
上記補強装置2の装着作業の際、ナット41の締め付け時に、各継手4の金物10,20には、2本のねじ鉄筋3からの引っ張り力に起因した回動モーメントが掛かる。以下、
図6を参照しながら、第1金物10に掛かる回動モーメントについて説明する。
【0035】
コンクリート柱1の側面1aと面取り1cの交点Aを支点として、第1金物10には、第2金物20に連結されたねじ鉄筋3からの引っ張り力F2に起因する時計回り方向の回動モーメントM2が付与される。この回動モーメントM2は、連結ピン30を作用点として第1金物10に働くから、下記式で表すことができる。
M2=H2×F2 (1)
ただし、H2は、力F2と直交する方向での支点Aと回動軸線Lとの間の距離である。
【0036】
他方、第1金物10には、第1金物10に連結されたねじ鉄筋3からの引っ張り力F1に起因する反時計回り方向の回動モーメントM1が付与される。この回動モーメントM1は、下記式で表すことができる。
M1=H1×F1 (2)
ただし、H1は、力F1と直交する方向での支点Aとねじ鉄筋3の軸線3xとの間の距離である。
【0037】
第1金物10は、回動モーメントM2が回動モーメントM1より大きくその差が大きいほど、不安定になる。本実施形態では、回動軸線Lが、第2金物20に連結されたねじ鉄筋3の軸線3xから当接面21a寄りに偏移しているため、上記距離H2を小さくすることができるので、回動モーメントM1、M2の差、すなわち第1金物10に掛かる時計回り方向の回動モーメントを減じることができ、安定して保持できる。
【0038】
比較のために、回動軸線Lがねじ鉄筋3の軸線3x上に位置する場合について説明する。この場合には、時計回りの回動モーメントM2は、下記式で表されるように大きくなり、第1金物10が不安定化する。
M2=Ha×F2 (3)
ただし、Haは、力F2と直交する方向での支点Aとねじ鉄筋3の軸線3xとの間の距離である。
【0039】
次に、
図7を参照しながら、第2金物10に掛かる回動モーメントについて説明する。
コンクリート柱1の側面1aと面取り1cの交点Bを支点として、第2金物20には、第1金物10に連結されたねじ鉄筋3からの引っ張り力F1に起因する反時計回り方向の回動モーメントM1’が付与される。この回動モーメントM1’は、連結ピン30を作用点として第2金物10に働くから、下記式で表すことができる。
M1’=H1’×F1 (4)
ただし、H1’は、力F1と直交する方向での支点Bと回動軸線Lとの間の距離である。
【0040】
他方、第2金物10には、第2金物10に連結されたねじ鉄筋3からの引っ張り力F2に起因する時計回り方向の回動モーメントM2’も付与される。この回動モーメントM2’は、下記式で表すことができる。
M2’=H2’×F2 (5)
ただし、H2’は、力F2と直交する方向での支点Bとねじ鉄筋3の軸線3xとの間の距離である。
【0041】
第2金物10は、回動モーメントM1’が回動モーメントM2’より大きくその差が大きいほど、不安定になる。本実施形態では、回動軸線Lがねじ鉄筋3の軸線3xより当接面11x寄りに偏移しているため、上記距離H1’を小さくすることができるので、回動モーメントM1’、M2’の差、すなわち反時計回り方向の回動モーメントを減じることができる。そのため、第2金物20も安定して維持できる。
【0042】
比較のために、回動軸線Lがねじ鉄筋3の軸線3x上に位置する場合について説明する。この場合には、反時計回りの回動モーメントM1’は、下記式で表されるように、大きくなり、第2金物10が不安定化する。
M1’=Hb×F1 (6)
ただし、Hbは、力F1と直交する方向での支点Bとねじ鉄筋3の軸線3xとの間の距離である。
【0043】
上記のように、金物10,20に掛かる回動モーメントを低減でき、その保持が容易であるので、補強装置2の装着作業を円滑に行うことができる。
上記回動連結部12,22は、当接面11a,21aから突出するので、回動軸線Lが当接面11a,21a寄りに偏移しても、連結ピン30を囲む軸穴12a,22a周壁の肉厚を十分に確保でき、必要な強度を確保することができる。
なお、回動連結部12,22が当接面11a,21aから突出しても、コンクリート柱1の角部1bには面取り1cが形成されているので、この突出部がコンクリート柱1の角部1bと干渉することはない。
【0044】
また、金物10,20が屈曲形状をなし、回動連結部12,22が傾斜することにより当接面11a,21aから突出するので、余分な材料を省くことができ、金物10,20を軽量化できる。
【0045】
更に本実施形態では、連結ピン30の一部も金物10,20の当接面11a,21aから突出しているので、連結ピン30の径を十分に確保しつつ、回動軸線Lをねじ鉄筋3の軸線3aからより一層偏移させることができる。
【0046】
上記のようにして、補強装置2を上から順々に間隔をおいて装着し、
図1のような耐震補強構造が完成する。
本実施形態では、金物10,20が、本体部11,21の底壁部11e、21eを含む広い面積の当接面11a,21aにより、コンクリート柱1の角部1b近傍の側面1aを面接触状態で押圧するので、地震の際のコンクリート柱1の断面積の膨らみを確実に抑制することができ、その破壊を防止できる。
【0047】
本発明の補強装置2は、4つの角部が直角をなす正方形のコンクリート柱1のみならず、非正方形のコンクリート柱の補強にも用いることができる。以下、例を挙げて説明する。
図9に示すコンクリート柱1’は、図において左上の角部1bと左下の角部1bが直角をなすものの、右上の角部1bが鋭角をなし、右下の角部1bが鈍角をなしている。
【0048】
上記コンクリート柱1’の鋭角をなす角部1bでは、
図10に示すように、この角部1bに対応して継手4の第1金物10と第2金物20の角度を鋭角にすることができ、その当接面11a、21aをコンクリート柱1の側面1aに面接触させることができ、ひいてはねじ鉄筋3をコンクリート1’の側面1aに沿って配置することができる。
【0049】
上記コンクリート柱1’の鈍角をなす角部1bでは、
図11に示すように、この角部1bに対応して継手4の第1金物10と第2金物20の角度を鈍角にすることができ、その当接面11a、21aをコンクリート柱1の側面1aに面接触させることができ、ひいてはねじ鉄筋3をコンクリート1’の側面1aに沿って配置することができる。
【0050】
図9のコンクリート柱1’に補強装置を装着する場合にも、前述したように各継手4の金物10,20を安定して保持できることは勿論である。
【0051】
図9のコンクリート柱1’は2つの角度が直角であったが、全ての角度が直角でないコンクリート柱の耐震補強にも、上記継手4を適用できることは、容易に理解できるところである。
【0052】
なお、
図9の断面形状のコンクリート柱1’の場合、直角の角部では特許文献1と同様に2つの本体部を一体に有する直角のアングル継手を用いてねじ鉄筋3を連結してもよい。
【0053】
上述のように、コンクリート柱1の角部がいかなる角度であっても、同一構造の継手4を用いることができるので、継手4の製造コストを抑えることができ、ひいては補強装置2のコストを抑えることができる。
【0054】
図12は、断面四角形のコンクリート柱1”の補強のために用いられる、他の補強装置2”を示す。この補強装置2”では、2本のほぼL字形に折り曲げられたねじ鉄筋3A、3Bを用いる。
ねじ鉄筋3A,3Bの端部は、第1実施形態と同様の継手4により、コンクリート柱1”の2つの角部において連結される。他の2つの角部では、これら角部と同角度をなすねじ鉄筋3A,3Bの折り曲げ部を、これら角部と同角度をなすアングル金物6A,6Bにより支持する。このアングル金物6A,6Bは、ねじ鉄筋3A,3Bの折り曲げ部を収容する溝を有して横断面U字形をなしている。
【0055】
図13は第2実施形態の継手104を示す。この継手104では、第1金物110と第2金物120は同一形状をなしている。これら金物110,120の本体部111,121は、前述した金物10,20の本体部11,21と同様の構造であるので説明を省略する。
【0056】
上記第1金物110は、回動軸線L方向に偏移した一対の回動連結部112を有し、第2金物120も同様の一対の回動連結部122を有している。これら回動連結部112,122を噛み合わせた状態で、連結ピン30を貫通させることにより、金物110,120が回動可能に連結されている。
この継手104は、第1、第2の金物110,120が同一形状であるので、製造コストをさらに下げることができる。
回動連結部112,122と本体部111,121の当接面との関係は第1実施形態と同様である。
【0057】
また、
図14に示す第3実施形態のように、金物110(及び/又は120)に、穴150を形成してもよい。これら穴150からコンクリート釘やビスをコンクリート柱へ打ち込んで、補強装置をコンクリート柱に固定する。
【0058】
図15、
図16は第4実施形態の継手4Aを示す。この継手4Aは、金物10,20の鉄筋連結部11c、21cにそれぞれ凸部15、25を形成した点を除いて第1実施形態の継手4と同様である。この凸部15,25は、
図15に示すように収容凹部11z、21zに向かって突出し、
図16に示すように例えば逆U字形をなし、鉄筋3の軸線と直交する平坦な受面を有している。この受面にナット41の上部(コンクリート柱1の側面から遠い方の部分)が当たるようになっている。ナット41の下部(コンクリート柱1の側面に近い方の部分)は凸部15,25の当接面に当たらない。
【0059】
上記構成によれば、継手4でのナット41による締め付けの際に、継手4の金物10,20をより安定して保持することができる。その理由を、第1金物10を例にとって説明する。
第2金物20に連結されたねじ鉄筋3からの引っ張り力F2に起因する時計回り方向の回動モーメントM2は、最初の実施形態と同じく前述の式(1)で表される。
【0060】
他方、第1金物10に連結されたねじ鉄筋3からの引っ張り力F1に起因する反時計回り方向の回動モーメントM1は、下記式で表すことができる。
M1=Hx×F1 (7)
ただし、Hxは、力F1と直交する方向での支点Aと引っ張り力F1の作用点との間の距離である。この作用点は、ナット41の上部が凸部15の受面に当たるため、鉄筋3の軸線3xよりコンクリート1の側面から離れる方向に偏移しており、そのため、距離Hxは前述の式(2)の距離H1(支点Aとねじ鉄筋3の軸線3aとの間の距離)より大きくなる。その結果、上記式(7)で得られる反時計回り方向の回動モーメントM1が(1)式で得られる回動モーメントM1より大きくなるため、回動モーメントM1,M2の差がさらに小さくなり、第1金物10をより一層安定して保持することができる。
【0061】
第1金物10についての議論は、第2金物20に働く支点Bでの回動モーメントについても適用される。
図15の凸部15,25の代わりに、鉄筋連結部11cにおいてナット41が当たる受面を緩やかな傾斜面としてもよい。この傾斜面は当接面11aから離れるにしたがって支持部11に近づくように傾斜する。
【0062】
本発明は上記実施形態に制約されず、種々の形態を採用可能である。例えば、第1、第2金物をヒンジ結合する連結ピンとして、ねじ鉄筋を用いてもよい。この場合、第1、第2金物の回動連結部を貫通するねじ鉄筋の両端突出部にナットが螺合される。
また、連結ピンは丸棒形状であってもよい。この場合、回動連結部を貫通する連結ピンの両端突出部に、連結ピンと直交する小径のロックピンを貫通させて連結ピンの脱落を防止する。一端にヘッド部を有する丸棒形状の連結ピンを用いる場合には、他端部だけにロックピンを貫通させる。
また、一端にヘッド部を有する丸棒形状の連結ピンを用いる場合、連結ピンの他端部外周の環状溝および金物の軸穴内周の環状溝に嵌るCリングを用いて、連結ピンの脱落を防止してもよい。
【0063】
コンクリート部材の長手方向に間隔をおいて配置される多数の補強装置の連結ピンとして、コンクリート部材の角部に沿って配置された共通の長尺の棒材を用いてもよい。長尺部材として例えば丸棒やねじ鉄筋を用いることができる。丸棒を用いる場合には、各組の第1、第2金物の上下または下側において、丸棒にロックピンを貫通させることにより、これら第1、第2金物が長尺棒材に沿って移動するのを阻止する。また、ねじ棒を用いる場合には、各組の第1、第2金物の上下または下側において、ねじ棒にナットを螺合させることにより、第1、第2金物が長尺棒材に沿って移動するのを阻止する。なお、長尺部材に設けられるロックピンやナットを省くこともできる。この場合、ねじ鉄筋をナットで締めることにより、第1、第2金物がコンクリート部材に当たり、その上下移動が阻止される。
【0064】
また、第1、第2金物を回動可能に連結する連結ピンを省き、その代わりにこれら金物の回動連結部に形成された凹凸を互いに嵌めることにより、ヒンジ結合してもよい。すなわち、一方の金物の回動連結部に軸部(凸部)を一体に形成し、他方に軸受(凹部)を形成するのである。
【0065】
ねじ鉄筋は、周知のように圧延により全長にわたって外周にねじ節を形成したもののみならず、両端部に機械ねじを形成したものを含む。
緊締部材としてねじ鉄筋以外の鉄筋を用いてもよい。この場合、ナットの代わりに溶接等の固定手段が用いられる。
補強装置において、断面四角形のコンクリート柱の少なくとも1つの角部に本発明の継手を配してもよい。
コンクリート柱は、断面四角形以外の多角形であってもよい。
補強されるコンクリート部材は、柱等のように垂直に延びるものに限らず、水平に延びるものであってもよい。