(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013057
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】グレーチング及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
E03F 5/04 20060101AFI20161011BHJP
E03F 5/06 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
E03F5/04 D
E03F5/06 Z
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-158466(P2012-158466)
(22)【出願日】2012年7月17日
(65)【公開番号】特開2014-20074(P2014-20074A)
(43)【公開日】2014年2月3日
【審査請求日】2015年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】593206931
【氏名又は名称】株式会社オーミ
(74)【代理人】
【識別番号】100098936
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100098888
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明子
(72)【発明者】
【氏名】大平 守一
【審査官】
竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】
登録実用新案第3119043(JP,U)
【文献】
特開2007−126932(JP,A)
【文献】
特開昭58−044926(JP,A)
【文献】
特開2002−045934(JP,A)
【文献】
特開平10−204973(JP,A)
【文献】
特開2011−106101(JP,A)
【文献】
特開2005−344372(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 5/04−5/06
E02D 29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と下面とに開口部をもつ多数の連通穴が形成された金属製のグレーチングにおいて、天板と前記天板の縁に連なり下方へ延びる上側周壁と前記天板に対向する上側開口を有する上側部材と、底板と前記底板の縁に連なり上方へ延びる下側周壁と前記底板に対向する下側開口を有する下側部材とを有し、前記下側周壁が前記上側開口へ嵌め込まれ、前記天板と前記底板が互いに間隔を開けて対向し、且つ前記上側周壁と下側周壁の少なくとも一部どうしが重なり合う重なり部が形成され、前記重なり部をかしめて前記上側部材と下側部材とを連結するかしめ部が形成されており、前記上側部材には前記天板に一体に形成され前記上面の開口部の縁から下方へ延びる上側筒部が形成され、前記下側部材には前記底板に一体に形成され前記下面の開口部の縁から上方へ延びる下側筒部が形成されており、前記上側筒部の下端面と前記下側筒部の上端面とが接合して、前記上側筒部と前記下側筒部とによって連通穴が構成されていることを特徴とするグレーチング。
【請求項2】
請求項1に記載したグレーチングにおいて、下側周壁には下穴が形成され、前記かしめ部は前記下穴に上側周壁の一部がくい込むように形成されていることを特徴とするグレーチング。
【請求項3】
請求項1または2に記載したグレーチングを製造するグレーチング製造方法において、
金属製の平板にプレス加工を施して、天板の縁に連なる上側周壁形成と前記天板に対向する上側開口を形成し、上側部材を製作する上側部材製作工程と、
バーリング加工によって前記上側部材の天板に開口部と前記開口部の縁から下方へ延びる上側筒部を形成する上側筒部形成工程と、
金属製の平板にプレス加工を施して、底板の縁に連なる下側周壁と前記底板に対向する下側開口を形成し、下側部材を製作する下側部材製作工程と、
バーリング加工によって前記下側部材の底板に開口部の前記開口部の縁から上方へ延びる下側筒部を形成する下側筒部形成工程と、
前記下側部材の下側周壁の上端側から前記上側部材の開口へ嵌め込み、前記天板と前記底板が互いに間隔を開けて対向し、且つ前記上側周壁と下側周壁の少なくとも一部どうしが重なり合う状態に組付けると共に、前記上側筒部の下端面と前記下側筒部の上端面とを接合させて連通穴を形成する組付け工程と、
前記重なり部にかしめ部を形成して、前記上側部材と下側部材とを連結させるかしめ工程とから成ることを特徴とするグレーチング製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載したグレーチング製造方法において、下側部材の下側周壁に下穴を形成する下穴形成工程を具備し、かしめ工程で前記下穴に上側周壁の一部をくい込ませてかしめ部を形成することを特徴とするグレーチング製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグレーチング及びその製造方法に係り、特に複数の部材をかしめによって連結した構成のグレーチング及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
側溝等の蓋に使用されるグレーチングとして、例えば特許文献1に示すものがある。このグレーチングは、金属の帯板を複数組み合わせて格子状に配設し、接合部を溶接固定して構成されている。
【0003】
また、特許文献2に開示されたグレーチングはメインバーとサイドバーとをかしめによって連結している。具体的には、メインバーの側端部に、拡開変形加工後にサイドバーの肉厚内に収まる長さの接合用突縁を突成し、帯板状のサイドバーに、メインバーの接合用突縁が嵌入される嵌入口と、この嵌入口の口縁に連成されてサイドバーの外側面に開口する窪み部とを備えた接合用口部をサイドバーに形成し、嵌入口に接合用突縁を嵌入した状態で、この接合用突縁の端部を加圧部材で加圧して接合用口部の窪み部内で嵌入口の横幅以上に拡開変形させた拡開変形部によって、メインバーとサイドバーとを接合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−281057号公報
【特許文献2】特開2010−229695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のグレーチングは複数の帯板を溶接によって連結しているため、帯板の連結作業が煩雑となってしまう。
【0006】
特許文献2のグレーチングは、かしめを行うためにサイドバーやメインバーを複雑な形状に前加工する必要があり、しかもサイドバーとメインバーとの組み立て作業が煩雑である。
従って、特許文献1、2のグレーチングは、いずれも製造に手間がかかるばかりか、部品点数が多いという問題がある。
【0007】
本発明は、グレーチングを2枚の金属板によって構成することを目的とする。更に、製造のための手間を最小限に抑えることができ、高い強度をもつグレーチングとその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、請求項1の発明は、上面と下面とに開口部をもつ多数の連通穴が形成された金属製のグレーチングにおいて、天板と前記天板の縁に連なり下方へ延びる上側周壁と前記天板に対向する上側開口を有する上側部材と、底板と前記底板の縁に連なり上方へ延びる下側周壁と前記底板に対向する下側開口を有する下側部材とを有し、前記下側周壁が前記上側開口へ嵌め込まれ、前記天板と前記底板が互いに間隔を開けて対向し、且つ前記上側周壁と下側周壁の少なくとも一部どうしが重なり合う重なり部が形成され、前記重なり部をかしめて前記上側部材と下側部材とを連結するかしめ部が形成されて
おり、前記上側部材には前記天板に一体に形成され前記上面の開口部の縁から下方へ延びる上側筒部が形成され、前記下側部材には前記底板に一体に形成され前記下面の開口部の縁から上方へ延びる下側筒部が形成されており、前記上側筒部の下端面と前記下側筒部の上端面とが接合して、前記上側筒部と前記下側筒部とによって連通穴が構成されていることを特徴とするグレーチングである。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載したグレーチングにおいて、下側周壁には下穴が形成され、前記かしめ部は前記下穴に上側周壁の一部がくい込むように形成されていることを特徴とするグレーチングである。
【0011】
請求項
3の発明は、請求項1
または2に記載したグレーチングを製造するグレーチング製造方法において、金属製の平板にプレス加工を施して、天板の縁に連なる上側周壁形成と前記天板に対向する上側開口を形成し、上側部材を製作する上側部材製作工程と、
バーリング加工によって前記上側部材の天板に開口部と前記開口部の縁から下方へ延びる上側筒部を形成する上側筒部形成工程と、金属製の平板にプレス加工を施して、底板の縁に連なる下側周壁と前記底板に対向する下側開口を形成し、下側部材を製作する下側部材製作工程と、
バーリング加工によって前記下側部材の底板に開口部の前記開口部の縁から上方へ延びる下側筒部を形成する下側筒部形成工程と、前記下側部材の下側周壁の上端側から前記上側部材の開口へ嵌め込み、前記天板と前記底板が互いに間隔を開けて対向し、且つ前記上側周壁と下側周壁の少なくとも一部どうしが重なり合う状態に組付け
ると共に、前記上側筒部の下端面と前記下側筒部の上端面とを接合させて連通穴を形成する組付け工程と、前記重なり部にかしめ部を形成して、前記上側部材と下側部材とを連結させるかしめ工程とから成ることを特徴とするグレーチング製造方法である。
【0012】
請求項5の発明は、請求項4に記載したグレーチング製造方法において、下側部材の下側周壁に下穴を形成する下穴形成工程を具備し、かしめ工程で前記下穴に上側周壁の一部をくい込ませてかしめ部を形成することを特徴とするグレーチング製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、グレーチングを2枚の金属板によって構成することが可能となる。更に、製造のための手間を最小限に抑えることができるようになる。しかも、グレーチングは高い強度をもつことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第一の実施の形態に係るグレーチングの斜視図である。
【
図3】
図1のグレーチングの構成を説明するための分解斜視図である。
【
図4】
図3の下側部材(上側部材)製作工程を説明するための図である。
【
図5】下側(上側)筒部形成工程を説明するための斜視図である。
【
図6】下側(上側)筒部形成工程を説明するための断面図である。
【
図7】
図3の上側部材のB−B断面図と下側部材のC−C断面図である。
【
図8】第一の実施の形態に係るグレーチングのかしめ工程を説明するための断面図である。
【
図9】第二の実施の形態に係るグレーチングの下側部材の斜視図である。
【
図10】第二の実施の形態に係るグレーチングのかしめ工程を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1から
図8に示す本発明の第一の実施の形態に係るグレーチング1を説明する。
金属製のグレーチング1は、下側部材2と上側部材3とが連結されることによって構成されている。
【0017】
下側部材2の構成について説明する。
符号4は底板を示し、この底板4にはその縁に連なり上方へ延びる下側周壁5が形成されている。従って、下側部材2には下側開口6が形成される。また、底板4には円形の開口部7が56ヶ所形成されており、これらの開口部7は下側周壁5に沿うようにして縦横に整列して配置されている。開口部7には、その縁から上方へ延びる円筒状の下側筒部8がそれぞれ形成されている。下側筒部8の上端面9は下側周壁5の上端面と同じ高さとなっている。
【0018】
上側部材3の構成について説明する。
符号10は天板を示し、この天板10には下側部材2と同様に天板10の縁に連なり下方へ延びる上側周壁11が形成されている。従って、上側部材3には上側開口12が形成される。また、天板10には底板4の開口部7と対応する位置に円形の開口部13が形成されており、開口部13には、その縁から下方へ延びる円筒状の上側筒部14がそれぞれ形成されている。
上側部材3の天板10は、下側部材2の底板4より若干大きく形成され、上側周壁11は上側筒部14の下端面15より下方向に長く延びている。
【0019】
下側筒部8の上端面9と上側筒部14の下端面15は接合されており、開口部7から開口部13に連通する連通穴25が形成されている。また、底板4と天板10との間は空洞部26が形成されている。
【0020】
上側開口12には下側周壁5が嵌め込まれ、下側周壁5と上側周壁11の少なくとも一部が重なり合う重なり部27が形成される。重なり部27には重なり部27の上側周壁11の一部が内側へ突出した凸部28aと、下側周壁5の一部が凸部28aに沿うように突出した凸部28bが形成されている。凸部28a、28bによってかしめ部28が構成されている。
このかしめ部28は30mm間隔で形成され、下側部材2と上側部材3が連結されている。
【0021】
グレーチング1の製造方法について説明する。
グレーチング1の製造方法は、下側部材製作工程、上側部材製作工程、下側部材2と上側部材3を組付ける組付け工程及び下側部材2と上側部材3とを連結させるかしめ工程から成る。
【0022】
下側部材製作工程について説明する。
図4(a)に示す金属製の平板29を、
図4(b)に示す凹部31を有する固定型30に配置する。そして、固定型30の凹部31と対応した凸部33を有する可動型32によって平板29をプレス加工すると、底板4と下側周壁5が成形され、
図4(c)に示す下側開口6を有する箱型に形成される。
【0023】
次に、下側部材2の下側筒部8を形成する下側筒部形成工程について説明する。
底板4に
図5(a)、
図6に示す多数の小径の丸穴34を形成する。
次いで、
図6(b)に示すように底板4を、先端に凸部を有する略円錘形の上部37を備えたパンチ金型36の上に丸穴34を略同心円上に配置する。
そして、
図6(c)に示すように下側に円筒状の凹部39を有するダイ金型38を下降させると、丸穴34を拡げながら、その周縁部が立ち上げるバーリング加工が行われて、
図6(d)に示すように開口部7と、底板4から上方へ延びる下側筒部8が形成される。
以上が、下側部材製作工程である。
【0024】
上側部材製作工程について説明する。
上側部材製作工程は下側部材製作工程と、上側部材3の材料となる金属製の平板が下側部材2の材料となる平板より一回り大きい点と、プレス加工で使用する固定型の凹部と可動型の凸部が下側部材製造工程で使用した固定型30の凹部31と可動型32の凸部33より若干大きい点とを除いて同様であるので、その概要のみを説明する。
上側部材製作工程は上側部材3の材料となる平板に対し、固定型と可動型によってプレス加工を施した後、小径の丸穴を形成し、パンチ金型36とダイ金型38とによって、丸穴を拡げながら、その周縁部を立ち上げるバーリング加工を行い、開口部13と、天板10から下方へ延びる上側筒部14を形成する。
以上が上側筒部製作工程である。
【0025】
次に、組付け工程について説明する。
図7に示す下側開口6を上に向けた状態で下側部材2を、上側部材3の上側開口12に嵌め込む。
図2に示すように底板4と天板10は互いに間隔を空けて対向し、上端面9と下端面15が接合する。そして、上側周壁11と下側周壁5の少なくとも一部が重なり合い、この重なり合った部分に重なり部27が形成される。
【0026】
次いで、かしめ工程について説明する。
重なり部27に、
図8(a)に示す錘状の先端を有するかしめ具40によって重なり部27にかしめ部28を形成する。
すなわち、
図8(b)、(c)に示すように、かしめ具40を上側周壁11の外周面から打ち込む。すると、上側周壁11の一部が内側へ突出するように変形して凸部28aが形成され、更に凸部28aに対応する下側周壁5の一部が内側へ突出するように変形して凸部28bが形成される。これにより上側周壁11の一部が下側周壁5の一部に食い込むかしめ部28が形成される。
これと同様にして、グレーチング1の周壁の重なり部27に30mm間隔でかしめ部28を形成して、上側部材3と下側部材2とを連結させる。
【0027】
第二の実施の形態に係るグレーチングとその製造方法について説明する。
第二の実施の形態に係るグレーチングは、下側部材42に下穴43を形成する下穴形成工程を経てから、かしめ工程へ移行する点を除いて、第一の実施の形態に係るグレーチング1及びその製造方法と同様なので、その相違点についてのみ説明し、第一の実施の形態で用いた符号を引用する。
下穴形成工程では、かしめ部47に対応する下側周壁5の位置に小さな丸穴状の下穴43を形成する。
かしめ工程では、かしめ具40を上側周壁11の外周面から打ち込む。すると、上側周壁11が内側へ突出するように変形して凸部47aが形成され、上側周壁11の一部が下側周壁5の下穴43に食い込み、更に下側周壁5が変形して凸部47bが形成される。これにより上側周壁11の一部が下側周壁5の一部に食い込むかしめ部47が形成される。
このように下穴43を形成しているので、それほど大きな力を加えなくてもかしめ部47を形成でき、確実に下側周壁5と上側周壁11を連結することができる。
【0028】
上記のようにグレーチングは、下側部材と上側部材の2つの部品で構成されているため、部品点数が少なく組み立てが容易である。
また、下側部材2と上側部材3の成形はプレス加工やバーリング加工によって製作するので、加工が簡単で、製造のための手間を最小限に抑えることができる。
下側部材2と上側部材3とを単純なかしめによって連結しているので、作業の手間を最小限が抑えることができる。
また、グレーチング1は下側筒部8の上端面9と上側筒部14の下端面15とが接合しているため、高い強度を得ることができる。しかも、グレーチング1は空洞部26を有しているので、軽量であり運搬等において有利である。
【0029】
以上、本発明の実施の形態について詳述してきたが、具体的構成は、この実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計の変更などがあっても発明に含まれる。
例えば、本発明の実施の形態では開口部7、13は略真円状をしているが、三角形や四角形などの他の形状でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
グレーチング製造業で利用できる可能性を有する。
【符号の説明】
【0031】
1…グレーチング 2…下側部材 3…上側部材 4…底板
5…下側周壁 6…下側開口 7…開口部 8…下側筒部 9…上端面
10…天板 11…上側周壁 12…上側開口 13…開口部
14…上側筒部 15…下端面 25…連通穴 26…空洞部
27…重なり部 28…かしめ部 28a…凸部 28b…凸部
29…平板 30…固定型 31…凹部 32…可動型 33…凸部
34…丸穴 36…パンチ金型 37…上部 38…ダイ金型
39…凹部 40…かしめ具 42…下側部材 43…下穴
47…かしめ部 47a…凸部 47b…凸部