(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の色素増感太陽電池の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0013】
<色素増感太陽電池>
(第一実施形態)
図1は、本発明の色素増感太陽電池の第一実施形態を示す概略断面図である。
本実施形態の色素増感太陽電池10は、光電極11と、対極12と、光電極11と対極12との間に配置された、電解質を含む電荷輸送層5と、光電極11と対極12の間に配置された、電荷輸送層5を封止する封止材4と、光電極11、対極12、電荷輸送層5および封止材4を含む積層体の外周であって、受光面と重ならない位置に設けられ、電荷輸送層5の粘度を増加させる物質を含有する粘度増加物質含有層13とから概略構成されている。
すなわち、粘度増加物質含有層13は、光電極11、対極12、電荷輸送層5および封止材4を含む積層体の外周であって、光電極11の受光面11a(透明基板1の導電層2と接している面とは反対側の面1a)と重ならない位置に設けられている。
【0014】
(光電極)
光電極11は、透明基板1と、導電層2と、色素が担持された酸化物半導体層3とから構成され、透明基板1、導電層2および酸化物半導体層3が、この順で積層されている。
【0015】
透明基板1は、増感色素が吸収する可視光を透過させる基板であれば特に制限されず、例えば、ガラス基板、プラスチック基板等が挙げられる。
【0016】
ガラス基板としては、特に限定されず、ソーダライムガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、バイコールガラス、無アルカリガラス、青板ガラス、白板ガラス等が挙げられる。
プラスチック基板としては、特に限定されず、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアクリル、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリイミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性に優れる点から、ポリエステル、PET、PENが好ましい。
薄く、軽く、かつフレキシブルな色素増感太陽電池を製造する観点からは、透明基板1は、PETフィルムまたはPENフィルムであることが好ましい。
【0017】
導電層2は、導電性を有し、かつ可視光を透過させるものであれば良く、公知の透明導電層を適用できる。
透明導電層の材料としては、金属酸化物、導電性高分子等が挙げられる。
【0018】
金属酸化物としては、酸化インジウム/酸化スズ(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、酸化亜鉛、酸化スズ、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、酸化インジウム/酸化亜鉛(IZO)、酸化ガリウム/酸化亜鉛(GZO)、酸化チタン等が例示できる。これらの中でも、伝導度が高いITO、耐熱性および耐候性に優れたFTOが特に好ましい。
導電層2は、単層および複数層のいずれであっても良い。導電層2が複数層の場合、すべての層が同じ材料で構成されていても良いし、各層が異なる材料で構成されていても良い。
【0019】
(酸化物半導体層)
酸化物半導体層3は、増感色素が担持された酸化物半導体からなる多孔質層(多孔質膜)である。
酸化物半導体としては、酸化チタン(TiO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)等が挙げられる。これらの中でも、多孔質層を形成した時に電子伝導性に優れる点から、酸化チタンが好ましい。
【0020】
酸化物半導体層3は透明基板1の上に製膜されたものであり、酸化物半導体層3の厚さは、1μm〜200μmであることが好ましく、2μm〜100μmであることが好ましく、5μm〜50μmであることが更に好ましい。
上記範囲の下限値以上であると、酸化物半導体層3に担持させた色素が光エネルギーを吸収する確率を一層高めることができ、色素増感太陽電池10における光電変換効率を一層向上できる。また、上記範囲の上限値以下であると、電解質(太陽電池セル内の電解質)と酸化物半導体層3内の電解質中のイオンの拡散が一層効率よく行われ、光電変換効率を一層向上できる。
【0021】
増感色素は、特に限定されず、通常の色素増感太陽電池で使用されているもので良い。具体的には、シス−ジ(チオシアナト)−ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)ルテニウム(II)、シス−ジ(チオシアナト)−ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボン酸)ルテニウム(II)のビス−テトラブチルアンモニウム塩(以下、N719と略記する)、トリ(チオシアナト)−(4,4’,4’ ’−トリカルボキシ−2,2’:6’,2’ ’−ターピリジン)ルテニウムのトリス−テトラブチルアンモニウム塩(ブラックダイ)等のルテニウム系色素が例示できる。また、クマリン系色素、ポリエン系色素、シアニン系色素、ヘミシアニン系色素、チオフェン系色素、インドリン系色素、キサンテン系色素、カルバゾール系色素、ペリレン系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、メロシアニン系色素、カテコール系色素、スクアリリウム系色素等の各種有機色素が挙げられる。さらに、これらの色素を組み合わせたドナー−アクセプター複合色素等が挙げられる。
酸化物半導体層3に担持されている増感色素は、1種のみでも良いし、2種以上でも良い。2種以上の場合、その組み合わせおよび比率は、目的に応じて適宜選択すれば良い。
【0022】
(対極)
対極12は、基板7と、導電層6と、触媒層8とから構成され、基板7、導電層6および触媒層8が、この順で積層されている。
基板7および導電層6は、不透明、透明の何れであってもよいが、透明であることが好ましい。具体的には、前述の光電極11の材料として例示したものが、同様に適用可能である。その中でも、基板7の材料としては、ポリエチレンナフタレート(PEN)が好ましく、導電層6の材料としては、酸化インジウム/酸化スズ(ITO)が好ましい。
【0023】
触媒層8は、導電層6上において、電荷輸送層5と接する領域に設けられている。
触媒層8は、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等の炭素材料を含むバインダー樹脂からなる層である。
触媒層8を対極12の表面に配置することにより、電解質との電子授受を促進することができる。
触媒層8の厚さは特に制限されず、例えば0.1μm〜10μmとすることができる。
【0024】
(電荷輸送層)
電荷輸送層5は少なくとも電解質を含むものである。電荷輸送層5は、溶媒を含んでいても良いし、含んでいなくても良い。また、必要に応じてゲル化剤等を含んでいても良い。電荷輸送層5の状態は、液体、ゲル、固体のいずれの状態であっても良い。
【0025】
(溶媒)
溶媒としては、電解質を溶解可能であれば特に制限されず、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、アセトニトリル、メトキシプロピオニトリル等のニトリル化合物が挙げられる。ニトリル化合物は、ヨウ素およびヨウ化物塩からなる電解質を溶解することが可能であり、イオン電導性に優れているので好ましい。
また、溶媒の主成分または添加剤として、イオン液体を用いても良い。イオン液体としては、例えば、t−ブチルピリジンを含む常温溶融塩、メチルプロピルイミダゾリウム、ジメチルプロピルイミダゾリウムを含む常温溶融塩、グアニジウムチオシアナート、N−アルキルベンズイミダゾール等を含む常温溶融塩等が挙げられる。
【0026】
(ゲル化剤)
ゲル化剤としては、高分子ゲル化剤および低分子ゲル化剤を例示できる。これらの中でも、特にゾル−ゲル転移点以上での粘度が低く、流動性の高い電解質が得られる、低分子ゲル化剤が好ましい。ここで低分子ゲル化剤とは、分子量が1000以下のゲル化剤を指す。
【0027】
低分子ゲル化剤としては、種々の公知のものが使用可能であり、例えば、12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸類、ジベンジリデンソルビトール(新日本理化株式会社製、商品名「ゲルオールD」)等の糖誘導体、ヘキサトリアコンタン等の炭化水素類、その他アミド類等が挙げられる。
低分子ゲル化剤および高分子ゲル化剤の濃度は、使用するゲル化剤の種類および電荷輸送層に含まれる他の成分(電解質、溶媒等)によって適宜調整される。
【0028】
(電解質)
電荷輸送層5に含まれる電解質は、従来公知の色素増感太陽電池で使用されるものが適用できる。
電解質としては、ヨウ素分子(I
2)とヨウ化物の組み合わせまたは臭素分子(Br
2)と臭素化合物の組み合わせが好適に用いられる。
ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化リチウム(LiI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化カリウム(KI)等の金属ヨウ化物、またはテトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等のヨウ素塩が、好適なものとして挙げられる。
臭素物としては、例えば、臭化リチウム(LiBr)、臭化ナトリウム(NaBr)、臭化カリウム(KBr)等の金属臭化物、またはテトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイド、イミダゾリウムブロマイド等の臭素塩が、好適なものとして挙げられる。
これらの電解質の中でも、ヨウ素分子とLiI、またはヨウ素分子とイミダゾリウムヨーダイドを組み合わせた酸化還元対が好ましい。
【0029】
ピリジニウムヨーダイドおよびイミダゾリウムヨーダイドを構成するピリジニウム環およびイミダゾール環に結合する水素原子は、アルキル基で置換されていても良い。具体的には、1−ブチル−4―メチルピリジニウムヨーダイド、1−メチル−3―プロピルイミダゾリウムヨーダイド等が挙げられる。これらのヨウ化物塩を使用する場合、N−メチルベンゾイミダゾール等を添加剤として用いても良い。
また、電解質は一種を単独で用いても良いし、複数種を混合して用いてもよい。
【0030】
電解質(酸化還元対)としては、酸化型のイオン種(酸化種)、酸化種および還元種と平衡反応を生じる物質(平衡反応種)、および還元型のイオン種(還元種)の組み合わせで構成されるものが好ましい。例えば、ヨウ素イオン(I
−)/ヨウ素分子(I
2)/三ヨウ化物イオン(I
3−)の組み合わせからなる電解質、臭素イオン(Br
−)/臭素素分子(Br
2)/三臭素化物イオン(Br
3−)の組み合わせからなる電解質が挙げられる。これらの中でも、一般的に使用されている色素に対して、酸化還元電位が適した高さにあるヨウ素イオン(I
−)/ヨウ素分子(I
2)/三ヨウ化物イオン(I
3−)の組み合わせからなる電解質が好ましい。平衡反応種であるヨウ素分子(I
2)は、還元種であるヨウ素イオン(I
−)と反応して、酸化種である三ヨウ化物イオン(I
3−)を生じる。つまり、ヨウ素分子は、三ヨウ化物イオンおよびヨウ素イオンと平衡反応を生じる。
その他、チオシアネート系(SCN
−/(SCN)
3−)、金属系(Co(II)/Co(III)、Cu(I)/Cu(II)等)等の電解質が使用できる。
【0031】
電解質(酸化還元対)として、ヨウ素イオン(I
−)と、ヨウ素分子(I
2)と、三ヨウ化物イオン(I
3−)との組み合わせを使用する場合、その混合比率は、電解質中に加えるヨウ化物イオン(I
−)とヨウ素(I
2)の比率により決定できる。ヨウ素はヨウ化物イオンと反応し、ほぼ定量的に三ヨウ化物イオン(I
3−)になると考えてよい。
また、別途三ヨウ化物イオンまたはヨウ化物イオンを含むイオン液体等を電解質に添加する場合は、その混合比率も考慮する。
【0032】
電荷輸送層5における電解質中の、ヨウ素イオン(I
−)を含有するヨウ化物塩等の還元種を含む塩類の濃度は、好ましくは0.1〜10mol/L(以下、この単位をMと記載することがある。)であり、より好ましくは0.5〜5mol/Lである。上記範囲の下限値以上であると酸化還元反応を充分に行うことができる。上記範囲の上限値以下であると、逆電子移動反応による性能低下を充分に抑制できる。また、電荷輸送層5にヨウ素(I
2)を添加する場合の好ましいヨウ素の濃度は0.001〜1mol/Lである。
【0033】
(封止材)
封止材4は、光電極11と対極12の間に配置された電荷輸送層5を封止することが可能な材料からなるものであれば特に制限されず、例えば、光硬化性樹脂、紫外線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の材料からなる封止材が挙げられる。
封止材4を形成する方法としては、例えば、前記の樹脂を含む溶液を光電極11または対極12の所定の部位に塗布し、硬化させる方法が挙げられる。また、別の方法としては、予め硬化させた前記の樹脂を所定のサイズに成形した部材を封止材4として準備し、これを光電極11と対極12の間に配置して接着させる方法も例示できる。
【0034】
封止材4の厚さは、特に限定されないが、光電極11と対極12が所定の間隔を置いて離隔し、かつ、電荷輸送層5が必要とされる厚さとなるように適宜調整される。
【0035】
(粘度増加物質含有層)
粘度増加物質含有層13は、電荷輸送層5を構成する電解液と接触すると、電解液の粘度を増加させる物質を含有する層である。電解液の粘度を増加させるとは、電解液を固体化もしくは擬固体化することである。
粘度増加物質含有層13は、光電極11、対極12、電荷輸送層5および封止材4を含む積層体の外周であって、受光面と重ならない位置に設けられている。光電極11と封止材4の界面における剥離や、対極12と封止材4の界面における剥離が生じることによって、あるいは、光電極11や対極12が損傷して、亀裂等が生じることによって、その剥離した箇所や亀裂から電荷輸送層5を構成する電解液が外部に漏洩する場合が多いことから、粘度増加物質含有層13は、光電極11、対極12、電荷輸送層5および封止材4を含む積層体の外周に設けられることが好ましい。
【0036】
電解液の粘度を増加させる物質としては、例えば、低分子ゲル化剤が挙げられる。低分子ゲル化剤としては、種々の公知のものが使用可能であり、例えば、12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸類、ジベンジリデンソルビトール(新日本理化株式会社製、商品名「ゲルオールD」)等の糖誘導体、ヘキサトリアコンタン等の炭化水素類、その他アミド類等が挙げられる。
【0037】
粘度増加物質含有層13の形成方法としては、例えば、低分子ゲル化剤を分散させた分散溶液をフィルム上に塗工し、溶媒を乾燥させて、低分子ゲル化剤からなる層が形成されたフィルムで光電極11、対極12、電荷輸送層5および封止材4を含む積層体の外周を囲むことにより、太陽電池セルとフィルムの間に粘度増加物質含有層13を形成する方法、表面に低分子ゲル化剤をまぶしたフィルムで光電極11、対極12、電荷輸送層5および封止材4を含む積層体の外周を囲むことにより、太陽電池セルとフィルムの間に粘度増加物質含有層13を形成する方法、低分子ゲル化剤を分散させた分散溶液を収容した袋状の容器で光電極11、対極12、電荷輸送層5および封止材4を含む積層体の外周を囲むことにより、太陽電池セルとフィルムの間に粘度増加物質含有層13を形成する方法等が挙げられる。
【0038】
粘度増加物質含有層13の厚さは、特に限定されないが、電荷輸送層5を構成する電解液の量に応じて適宜調整される。
【0039】
本実施形態の色素増感太陽電池10によれば、粘度増加物質含有層13は、光電極11、対極12、電荷輸送層5および封止材4を含む積層体の外周であって、光電極11の受光面11aと重ならない位置に設けられているので、光電極11と封止材4の界面における剥離や、対極12と封止材4の界面における剥離が生じて、その剥離した箇所から、前記の界面に沿って、電荷輸送層5を構成する電解液が漏洩した場合、あるいは、光電極11や対極12が破損して、亀裂等が生じて、その亀裂から、電荷輸送層5を構成する電解液が漏洩した場合、電解液と粘度増加物質含有層13に含まれる低分子ゲル化剤が接触し、電解液を固体化もしくは擬固体化するため、電解液が色素増感太陽電池10の外部に漏洩することを防止できる。また、粘度増加物質含有層13を設けることにより、電解液の漏洩を防止するために、電荷輸送層5を固体化もしくは擬固体化する必要がなく、色素増感太陽電池10の変換効率を低下することがない。
【0040】
(第二実施形態)
図2は、本発明の色素増感太陽電池の第二実施形態を示す概略断面図である。
図2において、
図1に示した色素増感太陽電池10と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の色素増感太陽電池20が、上述の色素増感太陽電池10と異なる点は、光電極11、対極12および封止材4の側面を囲むように、粘度増加物質含有層21が配置されている点である。
【0041】
粘度増加物質含有層21の厚さは、特に限定されないが、電荷輸送層5を構成する電解液の量に応じて適宜調整される。
【0042】
粘度増加物質含有層21を構成する電解液の粘度を増加させる物質としては、上述の第一実施形態と同様のものが用いられる。
【0043】
本実施形態の色素増感太陽電池20によれば、光電極11、対極12および封止材4の側面を囲むように粘度増加物質含有層21が配置されているので、光電極11と封止材4の界面における剥離や、対極12と封止材4の界面における剥離が生じて、その剥離した箇所から、前記の界面に沿って、電荷輸送層5を構成する電解液が漏洩した場合、電解液と粘度増加物質含有層21に含まれる低分子ゲル化剤が接触し、電解液を固体化もしくは擬固体化するため、電解液が色素増感太陽電池20の外部に漏洩することを防止できる。また、粘度増加物質含有層21を設けることにより、電解液の漏洩を防止するために、電荷輸送層5を固体化もしくは擬固体化する必要がなく、色素増感太陽電池20の変換効率を低下することがない。
【0044】
(第三実施形態)
図3は、本発明の色素増感太陽電池の第三実施形態を示す概略断面図である。
図3において、
図1に示した色素増感太陽電池10と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の色素増感太陽電池30が、上述の色素増感太陽電池10と異なる点は、封止材4には、光電極11と接する面から厚さ方向に凹む溝状の凹部4aと、対極12と接する面から厚さ方向に凹む凹部4bとが設けられ、凹部4a、4b内に、電荷輸送層5の粘度を増加させる物質を含有する粘度増加物質含有層31が設けられている点である。すなわち、粘度増加物質含有層31は、封止材4の凹部4a、4b内に充填された電解液の粘度を増加させる物質によって形成されている。
【0045】
封止材4に形成される凹部4a、4bの形状、大きさ(深さ、平面視した場合の面積)は、特に限定されないが、電荷輸送層5を構成する電解液の量に応じて適宜調整される。
また、凹部4a、4bは、封止材4の幅方向に沿って、間隔を置いて形成された2つ以上の溝状をなしていてもよい。
【0046】
粘度増加物質含有層31を構成する電解液の粘度を増加させる物質としては、上述の第一実施形態と同様のものが用いられる。
【0047】
本実施形態の色素増感太陽電池30によれば、封止材4には、光電極11と接する面から厚さ方向に凹む溝状の凹部4a内に粘度増加物質含有層31が設けられ、対極12と接する面から厚さ方向に凹む凹部4b内に粘度増加物質含有層31が設けられているので、光電極11と封止材4の界面における剥離や、対極12と封止材4の界面における剥離が生じて、その剥離した箇所から、前記の界面に沿って、電荷輸送層5を構成する電解液が漏洩した場合、電解液と粘度増加物質含有層31に含まれる低分子ゲル化剤が接触し、電解液を固体化もしくは擬固体化するため、電解液が色素増感太陽電池30の外部に漏洩することを防止できる。また、粘度増加物質含有層31を設けることにより、電解液の漏洩を防止するために、電荷輸送層5を固体化もしくは擬固体化する必要がなく、色素増感太陽電池30の変換効率を低下することがない。
【0048】
(第四実施形態)
図4は、本発明の色素増感太陽電池の第四実施形態を示す概略断面図である。
図4において、
図1に示した色素増感太陽電池10と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の色素増感太陽電池40が、上述の色素増感太陽電池10と異なる点は、封止材4には、その厚さ方向に貫通する貫通孔4cが設けられ、貫通孔4c内に電荷輸送層5の粘度を増加させる物質を含有する粘度増加物質含有層41が設けられている点である。すなわち、粘度増加物質含有層41は、封止材4の貫通孔4c内に充填された電解液の粘度を増加させる物質によって形成されている。
【0049】
封止材4に形成される貫通孔4cの形状、大きさ(幅)は、特に限定されないが、電荷輸送層5を構成する電解液の量に応じて適宜調整される。
また、貫通孔4cは、封止材4の幅方向に沿って、間隔を置いて形成された2つ以上の貫通孔であってもよい。
【0050】
粘度増加物質含有層41を構成する電解液の粘度を増加させる物質としては、上述の第一実施形態と同様のものが用いられる。
【0051】
本実施形態の色素増感太陽電池40によれば、封止材4には、その厚さ方向に貫通する貫通孔4c内に粘度増加物質含有層41が設けられているので、光電極11と封止材4の界面における剥離や、対極12と封止材4の界面における剥離が生じて、その剥離した箇所から、前記の界面に沿って、電荷輸送層5を構成する電解液が漏洩した場合、電解液と粘度増加物質含有層41に含まれる低分子ゲル化剤が接触し、電解液を固体化もしくは擬固体化するため、電解液が色素増感太陽電池40の外部に漏洩することを防止できる。また、粘度増加物質含有層41を設けることにより、電解液の漏洩を防止するために、電荷輸送層5を固体化もしくは擬固体化する必要がなく、色素増感太陽電池40の変換効率を低下することがない。
【0052】
(第五実施形態)
図5は、本発明の色素増感太陽電池の第五実施形態を示す概略断面図である。
図5において、
図1に示した色素増感太陽電池10と同一の構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
本実施形態の色素増感太陽電池50が、上述の色素増感太陽電池10と異なる点は、透明基板1の導電層2と接している面とは反対側の面に、粘度増加物質含有層51が設けられている点である。
【0053】
粘度増加物質含有層51の厚さは、特に限定されないが、電荷輸送層5を構成する電解液の量に応じて適宜調整される。
【0054】
粘度増加物質含有層51を構成する電解液の粘度を増加させる物質としては、上述の第一実施形態と同様のものが用いられる。
【0055】
本実施形態の色素増感太陽電池50によれば、粘度増加物質含有層51は、透明基板1の導電層2と接している面とは反対側の面に設けられているので、色素増感太陽電池50の断面が鋭利なもの等で破損し、その破損した箇所から、電荷輸送層5を構成する電解液が漏洩した場合、電解液と粘度増加物質含有層51に含まれる低分子ゲル化剤が接触し、電解液を固体化もしくは擬固体化するため、電解液が色素増感太陽電池50の外部に漏洩することを防止できる。また、粘度増加物質含有層51を設けることにより、電解液の漏洩を防止するために、電荷輸送層5を固体化もしくは擬固体化する必要がなく、色素増感太陽電池50の変換効率を低下することがない。
【実施例】
【0056】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0057】
[実施例1]
(光電極作製)
透明基板として、予め一方の面にITOからなる導電層が形成されたPEN基板(ITO−PEN基板、シート抵抗15Ω/cm
2、ペクセル社製)を用いた。
そのPEN基板上に、低温焼成酸化チタン(TiO
2)ペースト(ペクセル社製)をドクターブレード法により塗布し、大気雰囲気下、150℃にて30分間加熱して焼成することにより、膜厚10μmの酸化物半導体層を形成した。
次いで、アセトニトリル/tert−ブタノール(1/1、体積比)の混合溶媒に濃度が0.3mMとなるように色素N719を溶解させたN719色素溶液を調製した。
次いで、前記酸化物半導体層が形成された基板を、前記N719色素溶液に20時間浸漬させ、光電極を作製した。
【0058】
(対極基板作製)
基板として、予め一方の面にITOからなる導電層が形成されたPEN基板(ITO−PEN基板、シート抵抗15Ω/cm
2、ペクセル社製)を用いた。
次いで、導電層上に、カーボンペーストをスクリーン印刷法により塗布し、大気雰囲気下、120℃にて20分間加熱して焼成することにより、膜厚8μmの触媒層を形成した。
【0059】
(封止)
光電極と対極基板を、厚さ50μmの封止材(ハイミラン)、厚さ30μmの不織布(セパレータ)および厚さ50μmの封止材(ハイミラン)をこの順に積層したものを介して対向させた後、熱プレスを行うことにより、光電極と対極基板を貼り合わせた。
次いで、予め対極基板の一部に設けておいた貫通孔から電解液(1.0Mの1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージド、0.005Mのヨウ素、0.1Mのチオシアン酸グアニジン メトキシプロピオニトリル電解液)を注入し、最後に貫通孔を光硬化性樹脂で封止した。
【0060】
(ラミネート)
厚さ50μmのPEN基板の一方の面に、12−ヒドロキシステアリン酸をまぶして、光電極、対極基板および封止材からなる積層体の対極基板側の外側に、12−ヒドロキシステアリン酸をまぶした側が対極側になるようにPEN基板を配置し、積層体の光電極側には50μmのPEN基板を配置して、前記の積層体をラミネートし、実施例1の色素増感太陽電池を得た。
【0061】
[実施例2]
(光電極作製)
実施例1と同様にして、光電極を作製した。
【0062】
(対極基板作製)
実施例1と同様にして、対極基板を作製した。
【0063】
(封止)
光電極の酸化物半導体層の外周部分および対極基板の触媒層の外周部分に、間隔を空けて、マスクを用いて、12−ヒドロキシステアリン酸をまぶした。この光電極と対極を、厚さ50μmの封止材(ハイミラン)、厚さ30μmの不織布(セパレータ)および厚さ50μmの封止材(ハイミラン)をこの順に積層したものを介して対向させた後、熱プレスを行うことにより、光電極と対極基板を貼り合わせた。このとき、前記の封止材は、12−ヒドロキシステアリン酸を覆うように配置した。
次いで、予め対極基板の一部に設けておいた貫通孔から電解液(1.0Mの1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージド、0.005Mのヨウ素、0.1Mのチオシアン酸グアニジン メトキシプロピオニトリル電解液)を注入し、最後に貫通孔を光硬化性樹脂で封止し、実施例2の色素増感太陽電池を得た。
【0064】
[実施例3]
(光電極作製)
実施例1と同様にして、光電極を作製した。
【0065】
(対極基板作製)
実施例1と同様にして、対極基板を作製した。
【0066】
(封止)
光電極の酸化物半導体層の外周部分および対極基板の触媒層の外周部分のそれぞれに、予め二重の枠状となるように成形した、厚さ50μmの封止材(ハイラミン)を配置した。この上から、マスクを用いて、それぞれの二重の枠の中間部分に、12−ヒドロキシステアリン酸をまぶした。このような積層体と対極を、厚さ30μmの不織布(セパレータ)および厚さ50μmの同じく二重の枠状となるように成形した封止材(ハイラミン)介して対向させた後、熱プレスを行うことにより、光電極と対極基板を貼り合わせた。
次いで、予め対極基板の一部に設けておいた貫通孔から電解液(1.0Mの1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージド、0.005Mのヨウ素、0.1Mのチオシアン酸グアニジン メトキシプロピオニトリル電解液)を注入し、最後に貫通孔を光硬化性樹脂で封止し、実施例3の色素増感太陽電池を得た。
【0067】
[比較例]
12−ヒドロキシステアリン酸をまぶしたPEN基板により、光電極、対極基板および封止材からなる積層体の側面を囲まなかったこと以外は実施例と同様にして、比較例の色素増感太陽電池を得た。
【0068】
[評価]
(1)出力測定
実施例1〜3および比較例の色素増感太陽電池について、出力を測定した。
光源として、Xeランプを用い、色素増感太陽電池に擬似太陽光を照射して、各電圧における電流を実測することにより、色素増感太陽電池の出力を得た。なお、Xeランプからの擬似太陽光の強度は100W/cm
2であった。
測定の結果、実施例1の色素増感太陽電池の出力は2.1W/cm
2、実施例2の色素増感太陽電池の出力は2.3W/cm
2、実施例3の色素増感太陽電池の出力は2.2W/cm
2であった。一方、比較例の色素増感太陽電池の出力は2.1W/cm
2であった。
【0069】
(2)電解液の飛散状態
また、実施例1〜3および比較例の色素増感太陽電池を、カッターを用いて物理的に破断させて、電解液の飛散状態を目視にて確認した。
その結果、比較例の色素増感太陽電池では、破断後の電解液の漏れが顕著であった。
一方、実施例1〜3の色素増感太陽電池では、破断後に電解液が漏れたものの、比較例と比べて電解液の漏れ量が少なかった。なお、実施例1〜3の色素増感太陽電池では、電解液の漏れ量が少なかったが、実施例1においては電解液の漏れ量が特に少なかった。