特許第6013067号(P6013067)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ジャパンディスプレイの特許一覧

<>
  • 特許6013067-表示装置及びその製造方法 図000002
  • 特許6013067-表示装置及びその製造方法 図000003
  • 特許6013067-表示装置及びその製造方法 図000004
  • 特許6013067-表示装置及びその製造方法 図000005
  • 特許6013067-表示装置及びその製造方法 図000006
  • 特許6013067-表示装置及びその製造方法 図000007
  • 特許6013067-表示装置及びその製造方法 図000008
  • 特許6013067-表示装置及びその製造方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013067
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】表示装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/12 20060101AFI20161011BHJP
   H05B 33/04 20060101ALI20161011BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20161011BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20161011BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20161011BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20161011BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20161011BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   H05B33/12 E
   H05B33/04
   H05B33/10
   H05B33/12 B
   H05B33/14 A
   H05B33/22 Z
   G02B5/20 101
   G09F9/30 365
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-166264(P2012-166264)
(22)【出願日】2012年7月26日
(65)【公開番号】特開2014-26831(P2014-26831A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敏浩
(72)【発明者】
【氏名】豊田 裕訓
【審査官】 本田 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−212235(JP,A)
【文献】 特開2009−048835(JP,A)
【文献】 特開平06−235913(JP,A)
【文献】 特開2009−104969(JP,A)
【文献】 特開2001−183647(JP,A)
【文献】 特開2006−243171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50 − 51/56
H01L 27/32
G02B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素のそれぞれに対応して発光素子が複数形成された第1基板と、前記第1基板に対向し、前記複数の画素のそれぞれに対応してカラーフィルタが配列された第2基板とを有する表示装置において、
前記第2基板は、
前記カラーフィルタに積層された保護膜と、
前記保護膜の上に積層され、前記画素の境界に沿って配置された遮光部材と、
を備え、
前記カラーフィルタは、前記複数の画素の境界に沿って前記カラーフィルタの間を分離する分離溝を形成し、
前記分離溝は、前記保護膜を前記画素の境界に沿って分離し、
前記遮光部材は、前記分離溝の内面と前記カラーフィルタの上面の周縁部とを覆うこと、
を特徴とする表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置において、
前記保護膜は前記カラーフィルタの上面に選択的に配置され、
前記遮光部材は、前記周縁部にて前記保護膜と重なりを有すること、
を特徴とする表示装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の表示装置において、
前記画素の配列中に前記第2基板上にて前記カラーフィルタを配置しない無フィルタ画素を含み、
前記画素の境界のうち前記無フィルタ画素に接する部分において前記遮光部材は前記カラーフィルタの側面と上面の縁部とを覆うこと、
を特徴とする表示装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の表示装置において、
前記第1基板には複数の前記発光素子の相互間を分離する画素分離領域が設けられ、
前記遮光部材は、平面的に見て前記画素分離領域と重畳する位置に平面形状を有すること、
を特徴とする表示装置。
【請求項5】
複数の画素のそれぞれに対応して第1基板上に複数の発光素子を形成する発光素子形成工程と、
前記複数の画素のそれぞれに対応して第2基板上にカラーフィルタを形成するカラーフィルタ形成工程と、
前記カラーフィルタに保護膜を積層する保護膜積層工程と、
前記保護膜の上に遮光膜を積層する遮光膜積層工程と、
前記保護膜により前記カラーフィルタを保護しながら前記遮光膜をパターニングし、前記画素の境界に沿って選択的に残された前記遮光膜からなる遮光部材を形成する遮光部材形成工程と、
前記発光素子形成工程後の前記第1基板と前記遮光部材形成工程後の前記第2基板とを、対向させて貼り合わせる貼り合わせ工程と、
を有し、
前記保護膜積層工程と前記遮光膜積層工程との間にて、前記画素の境界に沿った領域に積層された前記保護膜及び前記カラーフィルタをパターニングして、前記カラーフィルタ間を分離する分離溝を形成する分離溝形成工程を有し、
前記遮光部材形成工程は、前記分離溝形成工程によって前記カラーフィルタの上面に選択的に残された前記保護膜の周縁部と重なりを有し、かつ前記分離溝の内面を覆う前記遮光部材を形成すること、
を特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の表示装置の製造方法において、
前記表示装置は、前記画素の配列中に前記第2基板上にて前記カラーフィルタを配置しない無フィルタ画素を含み、
前記遮光部材形成工程は、前記無フィルタ画素に接する前記画素の境界においては前記カラーフィルタの側面と上面の縁部とを覆う前記遮光部材を形成すること、
を特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項7】
複数の画素のそれぞれに対応して第1基板上に複数の発光素子を形成する発光素子形成工程と、
前記複数の画素のそれぞれに対応して第2基板上にカラーフィルタを形成するカラーフィルタ形成工程と、
前記カラーフィルタに保護膜を積層する保護膜積層工程と、
前記保護膜の上に遮光膜を積層する遮光膜積層工程と、
前記保護膜により前記カラーフィルタを保護しながら前記遮光膜をパターニングし、前記画素の境界に沿って選択的に残された前記遮光膜からなる遮光部材を形成する遮光部材形成工程と、
前記発光素子形成工程後の前記第1基板と前記遮光部材形成工程後の前記第2基板とを、対向させて貼り合わせる貼り合わせ工程と、
を有し、
前記カラーフィルタ形成工程は、前記画素の境界に沿った領域に積層された前記カラーフィルタをパターニングして、前記カラーフィルタ間を分離する分離溝を形成する分離溝形成工程を含み、
前記遮光部材形成工程は、前記保護膜の積層後における前記分離溝の内面を覆い、かつ前記カラーフィルタの上面の周縁部にて前記保護膜と重なりを有する前記遮光部材を形成し、
前記表示装置は、前記画素の配列中に前記第2基板上にて前記カラーフィルタを配置しない無フィルタ画素を含み、
前記遮光部材形成工程は、前記無フィルタ画素に接する前記画素の境界においては前記カラーフィルタの側面と上面の縁部とを覆う前記遮光部材を形成すること、
を特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項8】
請求項5から請求項7のいずれか1つに記載の表示装置の製造方法において、
前記発光素子形成工程は、前記複数の発光素子を相互間に画素分離領域を設け互いに分離して配置し、
前記遮光部材形成工程は、前記画素分離領域に対応した平面形状を有する前記遮光部材を形成すること、
を特徴とする表示装置の製造方法。
【請求項9】
複数の画素のそれぞれに対応して発光素子が複数形成された第1基板に、前記複数の画素のそれぞれに対応してカラーフィルタが配列された表示装置において、
前記カラーフィルタに積層された保護膜と、
前記保護膜の上に積層され、前記画素の境界に沿って配置された遮光部材と、
を備え、
前記カラーフィルタは、前記複数の画素の境界に沿って前記カラーフィルタの間を分離する分離溝を形成し、
前記分離溝は、前記保護膜を前記画素の境界に沿って分離し、
前記遮光部材は、前記分離溝の内面と前記カラーフィルタの上面の周縁部とを覆うこと、
を特徴とする表示装置。
【請求項10】
請求項9に記載の表示装置において、
前記保護膜は前記カラーフィルタの上面に選択的に配置され、
前記遮光部材は、前記周縁部にて前記保護膜と重なりを有すること、
を特徴とする表示装置。
【請求項11】
請求項9又は請求項10に記載の表示装置において、
前記画素の配列中に前記カラーフィルタを配置しない無フィルタ画素を含み、
前記画素の境界のうち前記無フィルタ画素に接する部分において前記遮光部材は前記カラーフィルタの側面と上面の縁部とを覆うこと、
を特徴とする表示装置。
【請求項12】
請求項9から請求項11のいずれか1つに記載の表示装置において、
前記第1基板には複数の前記発光素子の相互間を分離する画素分離領域が設けられ、
前記遮光部材は、平面的に見て前記画素分離領域と重畳する位置に平面形状を有すること、
を特徴とする表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエレクトロルミネッセンスを用いた表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄型で軽量な発光源として、OLED(organic light emitting
diode)、すなわち有機EL(electro luminescent)素子が注目を集めており、多数の有機EL素子を備える画像表示装置が開発されている。有機EL素子は、有機材料で形成された少なくとも一層の有機薄膜を画素電極と対向電極とで挟んだ構造を有する。
【0003】
エレクトロルミネッセンスを用いた画像表示装置は典型的には、画素に対応してマトリクス状に有機EL素子が配列された素子基板と、素子基板に対向するように配置された対向基板とからなる。対向基板には、画素に対応してマトリクス状に配列されたカラーフィルタ等からなる構造が形成される。有機EL素子から発した光は、素子基板から対向基板へ向かい、カラーフィルタを透過して出射する。カラーフィルタの境界には、隣接する有機EL素子からの光を混合させないためのブラックマトリクスが通常設けられる。
【0004】
カラーフィルタは光選択透過性の樹脂材料等から作られる。ブラックマトリクスはカラーフィルタ下部又は上部に積層した遮光膜を例えば、フォトリソグラフィ技術を用いてパターニングして形成される。すなわち、ブラックマトリクスは遮光膜を画素境界以外の領域からエッチングする等のパターニング処理で選択的に形成される。遮光膜は例えば、クロム(Cr)等の金属材料からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−104969号公報
【特許文献2】特開2002−299044号公報
【特許文献3】特開2007−220395号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ブラックマトリクスをカラーフィルタの上に形成する際は、ブラックマトリクスとなる遮光膜をエッチングする処理はカラーフィルタも浸食し得るという問題があった。当該エッチング処理はカラーフィルタのエッチング量を抑えるようにエッチング時間等を制御されるものの、カラーフィルタの浸食を完全に防ぐことは難しく、例えば、カラーフィルタの厚みのばらつきを生じ、表示装置の画質が低下するおそれがあった。またマスクCVD等で選択的にブラックマトリクスを形成する際には、プラズマの影響でカラーフィルタがダメージを受け、光透過性能が悪化するおそれがあった。
【0007】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、遮光膜の処理におけるカラーフィルタの浸食等のダメージを防止し、画質低下が防止された表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る表示装置は、画素に対応して発光素子が複数形成された第1基板に、前記画素に対応して複数のカラーフィルタが配列された第2基板を貼り合わせてなるものであって、前記第2基板は、前記カラーフィルタに積層された保護膜と、前記保護膜の上に積層された遮光膜をパターニングして形成され、前記画素の境界に沿って配置された遮光部材と、を備え、前記保護膜は前記遮光膜のパターニングに対して保護層となる材料からなる。
【0009】
(2)上記(1)に記載された表示装置において、前記複数のカラーフィルタ及び前記保護膜は、前記画素の境界に沿って前記カラーフィルタ間を分離する分離溝を形成し、前記遮光部材は、前記分離溝の内面と前記カラーフィルタの上面の周縁部とを覆うことを特徴としてもよい。
【0010】
(3)上記(2)に記載された表示装置において、前記保護膜は前記カラーフィルタの上面に選択的に配置され、前記遮光部材は、前記周縁部にて前記保護膜と重なりを有することを特徴としてもよい。
【0011】
(4)上記(2)又は(3)に記載された表示装置において、前記画素の配列中に前記第2基板上にて前記カラーフィルタを配置しない無フィルタ画素を含み、前記遮光部材は前記無フィルタ画素に接する前記画素の境界においては前記カラーフィルタの側面と上面の縁部とを覆うことを特徴としてもよい。
【0012】
(5)上記(1)から(4)に記載された表示装置において、前記複数の発光素子は相互間に設けられた画素分離領域により分離して配列され、前記遮光部材は前記画素分離領域に対応した平面形状を有することを特徴としてもよい。
【0013】
(6)本発明に係る表示装置の製造方法は、画素に対応して第1基板上に複数の発光素子を形成する発光素子形成工程と、前記画素に対応して第2基板上に複数のカラーフィルタを形成するカラーフィルタ形成工程と、前記カラーフィルタに保護膜を積層する保護膜積層工程と、前記保護膜の上に遮光膜を積層する遮光膜積層工程と、前記保護膜をダメージ保護層として前記遮光膜をパターニングし、前記画素の境界に沿って選択的に残された前記遮光膜からなる遮光部材を形成する遮光部材形成工程と、前記発光素子形成工程後の前記第1基板と前記遮光部材形成工程後の前記第2基板とを、対向させて貼り合わせる貼り合わせ工程と、を有する。
【0014】
(7)上記(6)に記載された表示装置の製造方法において、前記保護膜積層工程と前記遮光膜積層工程との間にて、前記画素の境界に沿った領域に積層された前記保護膜及び前記カラーフィルタをパターニングして、前記カラーフィルタ間を分離する分離溝を形成する分離溝形成工程を有し、前記遮光部材形成工程は、前記分離溝形成工程によって前記カラーフィルタの上面に選択的に残された前記保護膜の周縁部と重なりを有し、かつ前記分離溝の内面を覆う前記遮光部材を形成することを特徴としてもよい。
【0015】
(8)上記(6)に記載された表示装置の製造方法において、前記カラーフィルタ形成工程は、前記画素の境界に沿った領域に積層された前記カラーフィルタをパターニングして、前記カラーフィルタ間を分離する分離溝を形成する分離溝形成工程を含み、前記遮光部材形成工程は、前記保護膜の積層後における前記分離溝の内面を覆い、かつ前記カラーフィルタの上面の周縁部にて前記保護膜と重なりを有する前記遮光部材を形成することを特徴としてもよい。
【0016】
(9)上記(7)又は(8)に記載された表示装置の製造方法において、前記表示装置は、前記画素の配列中に前記第2基板上にて前記カラーフィルタを配置しない無フィルタ画素を含み、前記遮光部材形成工程は、前記無フィルタ画素に接する前記画素の境界においては前記カラーフィルタの側面と上面の縁部とを覆う前記遮光部材を形成することを特徴としてもよい。
【0017】
(10)上記(6)から(9)に記載された表示装置の製造方法において、前記発光素子形成工程は、前記複数の発光素子を相互間に画素分離領域を設け互いに分離して配置し、前記遮光部材形成工程は、前記画素分離領域に対応した平面形状を有する前記遮光部材を形成することを特徴としてもよい。
【0018】
(11)他の本発明に係る表示装置は、画素に対応して発光素子が複数形成された第1基板に、前記画素に対応して複数のカラーフィルタが配列されたものであって、前記カラーフィルタに積層された保護膜と、前記保護膜の上に積層された遮光膜をパターニングして形成され、前記画素の境界に沿って配置された遮光部材と、を備え、前記保護膜は前記遮光膜のパターニングに対して保護層となる材料からなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、遮光膜のエッチング処理においてカラーフィルタの浸食等のダメージが防止され、画質の低下が防止された表示装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態である表示装置の模式的な斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態である表示装置の図1に示すII−II線に沿った模式的な垂直断面図である。
図3】本発明の第1の実施形態である表示装置の製造方法を説明する概略のプロセスフロー図である。
図4】本発明の第1の実施形態において分離溝の断面形状を矩形に形成した第2基板の模式的な垂直断面図である。
図5】本発明の第2の実施形態である表示装置における第2基板の模式的な垂直断面図である。
図6】本発明の第3の実施形態である表示装置の一例の模式的な垂直断面図である。
図7】本発明の第3の実施形態である表示装置の他の例の模式的な垂直断面図である。
図8】本発明の第4の実施形態である表示装置の模式的な垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)について、図面に基づいて説明する。
【0022】
[第1の実施形態]
図1は第1の実施形態である表示装置2の模式的な斜視図であり、図2図1に示すII−II線に沿った表示装置2の模式的な垂直断面図である。
【0023】
表示装置2は有機ELディスプレイであり、第1基板10上に形成された複数の有機EL素子(発光素子)12を備える。表示装置2は有機EL素子12を含む積層構造が形成された第1基板10と、カラーフィルタ14を含む積層構造が形成された第2基板20とを貼り合わせた構造を有する。本実施形態の表示装置2はカラー画像を表示し、カラー画像における画素は例えば、赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)のように互いに異なる色を表現する複数のサブピクセルで構成される。表示装置2ではサブピクセルが構成上の単位であり、サブピクセルごとに有機EL素子12やカラーフィルタ14が形成される。そこで以下の説明では、基本的にサブピクセルを画素と扱う。
【0024】
第1基板10上には駆動回路チップDrが配置され、またフレキシブル回路基板FPCが接続される。第1基板10は第2基板20よりも大きく、第1基板10の第2基板と重ならない位置に駆動回路チップDrが配置され、フレキシブル回路基板FPCが接続される。駆動回路チップDrは、表示装置2の外部からフレキシブル回路基板FPCを介して画像データを供給され、また、第1基板10上に形成したデータ線DLを介して各画素に表示データを供給している。各画素は画素回路を備え、画素回路は図示しない走査線により選択データを供給され、選択された画素は表示データに基づいて発光する。
【0025】
第1基板10上の積層構造は画素回路22、絶縁膜24、反射層26、画素電極28、発光機能層30、対向電極32及び充填剤34を含む。
【0026】
画素回路22は有機EL素子12それぞれに給電して発光させるため電子回路であり、TFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)などの回路素子からなり、第1基板10の表面に形成される。
【0027】
絶縁膜24は画素回路22を覆って第1基板10表面に積層され、画素ごとに設けられる画素回路22相互間や、反射層26と画素回路22との間などを電気的に絶縁する。絶縁膜24は例えばSiOやSiN等で形成される。
【0028】
反射層26は絶縁膜24の上に形成される。反射層26は発光機能層30から発せられた光を、画像表示面側、つまり第2基板20へ向けて反射するために設けられる。よって反射層26は光反射率が高い材料で形成することが好適であり、例えば、アルミニウムや銀等を利用することができる。
【0029】
有機EL素子12は画素電極28、発光機能層30及び対向電極32から構成される。画素電極28は画素に対応してマトリクス状に配列される。画素電極28は反射層26上に積層される。画素電極28はコンタクトホール36を介して画素回路22と電気的に接続され、画素回路22から供給される駆動電流を発光機能層30に注入する。画素電極28は例えばITO(Indium Tin Oxide)等の透光性及び導電性を有する材料で作られる。各画素電極28の間にはバンク層25が形成され、バンク層25が隣接する画素電極28同士の接触を防止している。また、バンク層25が在ることによって画素電極28と対向電極32との直接接触を防止している。特に、発光機能層30が画素毎に形成される場合は、画素電極28の周辺部をバンク層が覆うことで、画素電極28の端部と対向電極32との間の漏れ電流を防止できる。
【0030】
発光機能層30は画素電極28の上に配置される。発光機能層30は少なくとも有機発光層を含み、有機発光層は正孔と電子とが結合することによって発光する有機EL物質から構成されている。本実施形態では発光機能層30は白色光を発する。
【0031】
対向電極32は発光機能層30の上に形成される。対向電極32は複数の有機EL素子12の発光機能層30に共通に接触する共通電極である。対向電極32は例えばITO等の透光性及び導電性を有する材料で作られる。
【0032】
充填剤34は対向電極32の上に、第1基板10の全面を覆うように積層される。充填剤34は例えばエポキシ樹脂等である。
【0033】
第2基板20は画像表示面側に位置し、有機EL素子12が発した光を透過する必要がある。そのため第2基板20は例えばガラスや石英、プラスチックなどの透光性材料で作られる。一方、第1基板10は表示装置2の背面側に位置し、透光性を有する必要はない。
【0034】
第2基板20上の積層構造はカラーフィルタ14、保護膜40、遮光部材42及びオーバーコート層44を含む。
【0035】
カラーフィルタ14は第2基板20の表面に積層される。本実施形態ではカラーフィルタ14は下地層46を介在して第2基板20の表面に積層される。カラーフィルタ14は光透過性の樹脂材料等で形成され、顔料等により複数の色に着色される。例えば、本実施形態ではカラーフィルタ14として赤色(R)フィルタ14R、緑色(G)フィルタ14G及び青色(B)フィルタ14Bを有する。カラーフィルタ14は画素に対応してマトリクス状に配列される。
【0036】
本実施形態ではカラーフィルタ14はストライプ配列であり、図2に示す断面に沿う方向(x方向)に各色のフィルタ14R,14G,14Bが周期的に配列され、当該断面に直交する方向(y方向)には同じ色のカラーフィルタ14が一列に並ぶ。
【0037】
保護膜40はカラーフィルタ14に積層される。保護膜40は、引き続いて積層される遮光膜をフォトリソグラフィ技術でパターニングして遮光部材42を形成する際に、カラーフィルタ14を遮光膜のエッチング処理から保護する。この目的から保護膜40は、遮光膜のエッチング処理に対するエッチングレートが小さい材料で形成する。また、保護膜40の厚みは、エッチング残りをなくすように遮光膜をオーバーエッチングしても保護膜40に穴が開かないように設定される。
【0038】
カラーフィルタ14及び保護膜40は、画素の境界に沿ってカラーフィルタ14間を分離する分離溝48を形成する。本実施形態では、保護膜40は分離溝48の内面には積層されず、保護膜40はカラーフィルタ14の表面に選択的に配置される。なお、各画素において、有機EL素子12が発した光は遮光膜が除去された開口部からカラーフィルタ14へ入射する。当該開口部は各カラーフィルタ14の表面の平面形状に包含される形状であり、当該開口部の位置に積層される保護膜40は透過性を有した材料で形成される。例えば、遮光膜はCr等の金属で形成され、保護膜40は、当該遮光膜のエッチングに対するストッパとして機能し、かつ光透過性を有する材料として、SiO、SiO又はSiNを用いて形成される。
【0039】
遮光部材42は遮光膜をパターニングして形成される。当該遮光膜は、カラーフィルタ14及び保護膜40に分離溝48が形成された第2基板20に積層される。遮光部材42は分離溝48の内面と、カラーフィルタ14の表面に積層された保護膜40の周縁部とを覆う。つまり、保護膜40の周縁部は遮光部材42と重なりを有する。一方、保護膜40の内側領域には遮光部材42の開口部が設けられる。
【0040】
オーバーコート層44は、上述したカラーフィルタ14、保護膜40及び遮光部材42が積層された第2基板20の表面を覆う。オーバーコート層44は例えばアクリル樹脂等の透明な樹脂材料で作られる。
【0041】
それぞれ積層構造が形成された第1基板10及び第2基板20は、互いの積層構造を向き合わせて接合され一体化される。
【0042】
遮光部材42は各有機EL素子12から発した光が隣接する画素のカラーフィルタ14に入射することを防止し、混色等による視野角特性の劣化を抑制する。具体的には、遮光部材42はその平面形状でのカラーフィルタ14間における幅に応じて隣接画素への光の混入を抑制する効果を有する。さらに、本実施形態の遮光部材42は分離溝48内に入り込むことで、隣接画素間の光の混入をより好適に抑制する。この分離溝48内の遮光部材42による光混入抑制の効果は、分離溝48が深く、また遮光部材42が分離溝48に深く入り込むほど、基本的に大きくなる。そこで、本実施形態では分離溝48をカラーフィルタ14の厚みと同等の深さとし、遮光部材42がその底まで入り込む構造として、光混入抑制の効果を大きくしている。また、遮光部材42を分離溝48内に形成することにより、遮光部材42の平面形状での幅を縮小しても光混入抑制の効果を確保することが可能である。すなわち、遮光部材42の開口部の面積を大きくして輝度の向上を図ることができる。
【0043】
また、本実施形態では分離溝48の垂直断面はV字型に形成される。これにより、遮光部材42は分離溝48内にて斜め前方を向いた面を形成する。当該面に入射した有機EL素子12からの光50は遮光部材42により隣のカラーフィルタ14に入射することを阻止されると共に、遮光部材42により前方へ反射され表示光52となる。よって、混色が防止されると共に輝度が向上する。
【0044】
図3は表示装置2の製造方法を説明する概略のプロセスフロー図であり、同図は第2基板20の積層構造の主な製造工程における模式的な垂直断面図を示している。当該垂直断面図は図1のII−II線に沿った断面に相当する。なお、図3の第2基板20の積層構造は図2とは上下を逆向きに表している。
【0045】
第2基板20はその表面に各色のカラーフィルタ14を順次形成される。例えば、赤色のフィルタ膜を第2基板20に積層し、これをフォトリソグラフィ技術でパターニングしてRフィルタ14Rを形成する。次に、緑色のフィルタ膜を第2基板20に積層し、これをパターニングしてGフィルタ14Gを形成する。同様に、青色フィルタ膜を積層・パターニングしてBフィルタ14Bを形成する。なお、図3では下地層46は省略している。各色のカラーフィルタ14を形成した後、その表面に保護膜60を形成する(工程a)。
【0046】
次に保護膜40の表面にフォトレジストを塗布し、露光・現像処理によりパターニングして、画素境界に沿って開口が形成されたフォトレジスト膜62を形成する(工程b)。
【0047】
フォトレジスト膜62をマスクとして保護膜60及びカラーフィルタ14をエッチングして、画素境界に沿って分離溝48を形成する(工程c)。また、保護膜60のうちカラーフィルタ14の上面に残る部分が、図2に示したカラーフィルタ14の上面に選択的に配置された保護膜40となる。
【0048】
フォトレジスト膜62を除去した後(工程d)、表面に遮光膜64を形成する(工程e)。遮光膜64は例えば、スパッタ、化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)、蒸着等の手法で第2基板20の積層構造の表面に被着される。
【0049】
遮光膜64の上にフォトレジストを塗布、パターニングして、遮光部材42を形成する画素境界部分を覆うフォトレジスト膜66を形成する(工程f)。ここで、フォトレジスト膜66はカラーフィルタ14上面の保護膜40の周縁部に重なるように形成される。このようにフォトレジスト膜66を形成することで、遮光部材42は保護膜40の周縁部と重なる部分を有する。この重なり幅は遮光部材42の加工精度を考慮して定められる。例えば、フォトレジスト膜66のパターンのエッジを分離溝48とカラーフィルタ14上面との境界に一致するように設計すると、目合わせずれにより当該エッジが分離溝48内に位置しやすくなる。その結果、分離溝48内面に遮光部材42で覆われない部分が生じ、上述した光混入抑制や前方への反射の効果が弱まる。また、保護膜40は分離溝48の内面に設けられないので、分離溝48の内面にフォトレジスト膜66で覆われない部分が生じると、遮光膜64のエッチングにてカラーフィルタ14が分離溝48から浸食される。そこで、フォトレジスト膜66のパターンの位置ずれや遮光膜64のエッチングでの側方への後退などにより、遮光部材42のエッジが分離溝48内に位置することがないように上述の重なり幅が設定される。
【0050】
フォトレジスト膜66をマスクとして遮光膜64をエッチングして、カラーフィルタ14の上面に開口部を有した遮光部材42を形成する(工程g)。フォトレジスト膜66は遮光部材42の形成後、除去される。
【0051】
ここで、保護膜40は遮光膜64のエッチングに対するストッパとして機能し、当該エッチングにてカラーフィルタ14は浸食されない。
【0052】
遮光部材42が形成された第2基板20の積層構造の表面にはオーバーコート層44が成膜される(工程h)。
【0053】
一方、第1基板10の積層構造も別途形成される。そして、それぞれ積層構造が作られた第1基板10及び第2基板20が接合される。
【0054】
上述したV字型の分離溝48は画素間の光の混入防止の効果に加え、分離溝48の内面を覆う遮光部材42での反射光を前方に導く効果を有する。一方、図4に示すように断面形状を矩形に形成した分離溝48によって画素間の光の混入防止を図ることもできる。
【0055】
また、遮光膜64をエッチングして遮光部材42を形成する際の保護膜40のエッチングストッパとしての機能は、遮光部材42の断面形状に依らず有効である。例えば、カラーフィルタ14の境界に分離溝48を形成せず当該境界に遮光部材42を平らに形成する場合においても保護膜40を設けることで遮光膜64のエッチングからカラーフィルタ14を保護することができる。
【0056】
遮光部材42の平面形状での幅を縮小することで、遮光部材42の開口部の面積を大きくすることができる一方、隣接画素への光混入が起こりやすくなる。ここで各有機EL素子12から発した光が遮光部材42の開口を透過する割合は、当該開口の面積が有機EL素子12の面積を超えて大きくなると飽和する。よって、遮光部材42の幅が狭くなると、開口率を上げるメリットがデメリットに比べて小さくなる。そこで、例えば、遮光部材42は、有機EL素子12の相互間を分離する画素分離領域に対応した平面形状とすることで、開口率向上による輝度向上と隣接画素への光混入抑制との調和を図ることができる。例えば図2に示すように、遮光部材42とバンク25とを重ねて配置することで、発光機能層30から出射された光を効率的に利用でき、また光が対応する画素の色以外のカラーフィルタに入射することを抑制できる。
【0057】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態について上記実施形態との相違点を中心に説明する。なお、上記実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明の簡素化を図る。図5は本実施形態の表示装置2における第2基板の垂直断面図である。
【0058】
第1の実施形態では保護膜60は分離溝48の形成前にカラーフィルタ14上に積層される(図3の工程a〜c参照)。これに対し、本実施形態では保護膜60はカラーフィルタ14に分離溝48を形成した後、その表面に積層される。よって、保護膜60は分離溝48の内部にも形成される。そして、その表面に遮光膜64を積層してパターニングし、分離溝の内面とカラーフィルタの上面の周縁部とを覆う遮光部材42を形成する。なお、この構成では、遮光膜64の積層時における分離溝の内面は当初の分離溝48の内面を覆う保護膜60の表面で規定される。
【0059】
本実施形態においても、遮光膜64のエッチングにおいてカラーフィルタ14の上面は保護膜60で保護されるので、カラーフィルタ14の浸食が防止される。
【0060】
なお、図5にはV字型の分離溝48を示したが、第1の実施形態で述べたように矩形の分離溝48としても画素間の光の混入防止を図ることができる。
【0061】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態について上記実施形態との相違点を中心に説明する。なお、上記実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明の簡素化を図る。図6及び図7はそれぞれ本実施形態の表示装置2の垂直断面図の例であり、第1の実施形態の図2に示す垂直断面図に相当する図である。
【0062】
第1及び第2の実施形態ではカラーフィルタ14はRGBのストライプ配列である例を説明した。これに対し、本実施形態では画素の配列中に第2基板20上にカラーフィルタを配置しない無フィルタ画素を含む。具体的には、図6図7に示す例では、Bフィルタ14Bの右隣の画素及びRフィルタ14Rの左隣の画素が無フィルタ画素である。無フィルタ画素は有機EL素子12が発した白色光を基本的にそのまま出射する。
【0063】
無フィルタ画素を含む表示装置2においても、カラーフィルタ14相互間の遮光部材42は第1の実施形態や第2の実施形態と同様に構成することができる。一方、無フィルタ画素とカラーフィルタ14を有する画素との境界における遮光部材42bは少なくともカラーフィルタ14の側面と上面の縁部とを覆うように形成される。遮光部材42と遮光部材42bとは垂直断面の形状は相違するが、平面形状は共通とすることができる。
【0064】
例えば、図6に示す例では、遮光部材42bは無フィルタ画素側に第2基板20に平行に配置される部分70を備え、当該部分70の幅はBフィルタ14BやRフィルタ14Rに沿う部分72の平面形状における幅と同じに設定される。これにより、遮光部材42bは遮光部材42と同じ幅に形成される。例えば、遮光部材42,42bは、有機EL素子12の相互間を分離する画素分離領域に対応した平面形状とすることができる。
【0065】
また図7に示す例では、Bフィルタ14BやRフィルタ14Rを画素分離領域側に拡大すると共に、それらフィルタの上面に沿う部分74を拡大して、遮光部材42bの幅を遮光部材42と同じにしている。
【0066】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態について上記実施形態との相違点を中心に説明する。なお、上記実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付して説明の簡素化を図る。図8は本実施形態の表示装置2の垂直断面図である。本発明はカラーフィルタ上のブラックマトリクス形成に係わるものであり、図8に示す第1基板10上にカラーフィルタ14を同時形成する、いわゆるカラーフィルタ・オン・アレイの構造に対しても効果があることは言うまでもない。
【0067】
図8に示すカラーフィルタ・オン・アレイ構造の場合、第1基板10上に画素回路22とカラーフィルタ14が形成される。カラーフィルタ・オン・アレイ構造では、発光機能層30の発光部とカラーフィルタ14との距離は前述の実施形態と比べて短くなる。
【0068】
第1基板10の対向電極32の上には、平坦化膜68、カラーフィルタ下地膜70、カラーフィルタ層14が順次形成される。カラーフィルタ層14の上部には充填剤34が配置され、その上に第2基板20である封止基板が配置される。
【0069】
この構成ではカラーフィルタ14と対向電極32との間に充填剤が存在しないため、発光機能層30の発光部とカラーフィルタ14との距離を短くできる。その結果、隣接画素のカラーフィルタへの光混入を抑制する効果は向上する。
【0070】
上述した本発明に係る表示装置は例えば、スマートフォン、タブレットPCやノートPCなどの携帯型のパーソナルコンピュータ、デスクトップ型のパーソナルコンピュータのモニター、テレビ、カーナビなどの電子機器に利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
2 表示装置、10 第1基板、12 有機EL素子、14 カラーフィルタ、14R 赤色フィルタ、14G 緑色フィルタ、14B 青色フィルタ、20 第2基板、22 画素回路、24 絶縁膜、26 反射層、28 画素電極、30 発光機能層、32 対向電極、34 充填剤、36 コンタクトホール、40,60 保護膜、42 遮光部材、44 オーバーコート層、46 下地層、48 分離溝、62,66 フォトレジスト膜、64 遮光膜、68 平坦化膜、70 カラーフィルタ下地膜。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8