(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.発振回路
1−1.基本構成
図1は、本発明の実施の形態に係る発振回路10の構成を示す回路図である。発振回路10は、外付け部品である水晶振動子1、第1容量C1及び第2容量C2に接続される。より詳細には、発振回路10は、第1端子T1及び第2端子T2を有しており、それら第1端子T1及び第2端子T2が水晶振動子1の両端にそれぞれ接続される。また、第1容量C1は、第1端子T1とグランド端子との間に接続され、第2容量C2は、第2端子T2とグランド端子との間に接続される。発振回路10は、これら水晶振動子1、第1容量C1及び第2容量C2と共に動作し、それにより、クロック信号CLKを生成、出力する。
【0014】
発振回路10は、インバータ回路100、帰還抵抗300、及びコンパレータ回路400を備えている。
【0015】
インバータ回路100は、反転論理機能を有しており、入力端子101と出力端子102との間で論理反転を行う。それらインバータ回路100の入力端子101及び出力端子102は、それぞれ、第1端子T1及び第2端子T2に接続されている。尚、後述されるように、本実施の形態に係るインバータ回路100の駆動能力は可変制御可能である。
【0016】
帰還抵抗300は、第1端子T1と第2端子T2との間を接続するように設けられている。以上に説明された水晶振動子1、第1容量C1、第2容量C2、インバータ回路100及び帰還抵抗300によって、典型的な発振回路と同様に発振動作が発生する。
【0017】
コンパレータ回路400の入力は、第2端子T2(インバータ回路100の出力端子102)に接続されている。このコンパレータ回路400は、第2端子T2の電圧(発振電圧波形)に基づいてクロック信号CLKを生成し、生成したクロック信号CLKを出力する。例えば、コンパレータ回路400は、コンパレータ410及び参照電圧電源420を備えている。参照電圧電源420は、参照電圧を生成する。その参照電圧と第2端子T2の電圧がコンパレータ410に入力され、それによりクロック信号CLKが生成される。
【0018】
本実施の形態に係る発振回路10は、更に、可変容量200と制御回路500を備えている。
【0019】
可変容量200は、第1端子T1と第2端子T2の少なくとも一方に接続される。
図1に示される例では、第1可変容量200−1が第1端子T1に接続され、第2可変容量200−2が第2端子T2に接続されている。第1可変容量200−1(第2可変容量200−2)の容量値を制御することによって、第1端子T1(第2端子T2)に接続される容量値を可変に制御することができる。例えば、各々の可変容量200は、容量210とスイッチ220を備えている。容量210の容量値は、例えば10pFである。スイッチ220は、容量210と第1端子T1(第2端子T2)との間に介在しており、このスイッチ220をON/OFF制御することによって、第1端子T1(第2端子T2)に接続される容量値を可変に制御することができる。
【0020】
本実施の形態において、インバータ回路100の駆動能力と可変容量200の容量値は可変制御可能である。その制御を行うのが、制御回路500である。具体的には、制御回路500は、第1制御信号CON1をインバータ回路100に出力し、それによりインバータ回路100の駆動能力を制御する。また、制御回路500は、第2制御信号CON2を各可変容量200に出力し、それにより各可変容量200の容量値を制御する。
【0021】
制御回路500による制御は、モード信号MODEに基づいて実施される。モード信号MODEは、「第1モード」と「第2モード」のいずれかを指定する。制御回路500は、そのモード信号MODEの内容(第1モードあるいは第2モード)に応じて第1制御信号CON1及び第2制御信号CON2を出力する。すなわち、制御回路500は、モード信号MODEに応じて、インバータ回路100の駆動能力及び可変容量200の容量値を制御する。
【0022】
1−2.動作及び効果
図2は、本実施の形態に係る発振回路10の制御方法を示すタイミングチャートである。本例において、Lowレベルのモード信号MODEは第1モードを表し、Highレベルのモード信号MODEは第2モードを表すとする。
【0023】
時刻t0において、モード信号MODEがLowレベルからHighレベルに切り替わる。これにより、動作モードが、第1モードから第2モードに切り替わる。この場合、制御回路500は、インバータ回路100の駆動能力と可変容量200の容量値の“両方”が増加するように制御を行う。すなわち、インバータ回路100の駆動能力と可変容量200の容量値の両方が、第1モードよりも第2モードにおいて大きくなる。その結果、第2モードにおいて、発振回路の駆動電流と負荷容量が増加するため、発振回路10のノイズ耐性が大幅に向上する。
【0024】
ここで、インバータ回路100の駆動能力の増加の前に可変容量200の容量値が増加すると、駆動電流に比べて負荷容量が大きくなるために発振電圧振幅が小さくなり、発振安定性が低下してしまう。最悪の場合、発振が停止する可能性もある。発振維持の観点から、制御回路500は、第1モードから第2モードへの切り替え時に次のような制御を行うことが好適である。すなわち、制御回路500は、時刻t0の後の時刻t1において、インバータ回路100の駆動能力を増加させ、更に、時刻t1の後の時刻t2において、可変容量200の容量値を増加させる。これにより、駆動電流が増加した後に負荷容量が増加するため、発振電圧振幅が極端に小さくなることはなく、発振安定性の低下が防止される。
【0025】
時刻t3において、モード信号MODEがHighレベルからLowレベルに切り替わる。これにより、動作モードが、第2モードから第1モードに切り替わる。この場合、制御回路500は、インバータ回路100の駆動能力と可変容量200の容量値の“両方”が減少するように制御を行う。ここでも、発振維持の観点から、制御回路500は、次のような制御を行うことが好適である。すなわち、制御回路500は、時刻t3の後の時刻t4において、可変容量200の容量値を減少させ、更に、時刻t4の後の時刻t5において、インバータ回路100の駆動能力を減少させる。これにより、駆動電流が減少する前に負荷容量が減少するため、発振安定性の低下が防止される。
【0026】
以上に説明されたように、本実施の形態によれば、発振回路10の駆動電流と負荷容量の両方が、第1モードよりも第2モードにおいて大きくなる。その結果、第2モードにおいて、発振回路10のノイズ耐性が大幅に向上する。その一方、第1モードでは、負荷容量も駆動電流も小さいため、消費電力が抑えられる。つまり、第1モードは「低電力モード」であり、第2モードは「高ノイズ耐性モード」であると言うこともできる。
【0027】
発振回路10の消費電力を抑えるためには、小容量コンデンサ(C1、C2)を低電流で駆動することが有効である。この消費電力の抑制は、第1モードにより実現される。例えば、スタンバイ時に半導体装置に内蔵される時計(RTC回路)のみ動作させる場合に、動作モードを第1モードに設定することが考えられる。それにより、スタンバイ時のバッテリ駆動時間を長くすることができる。
【0028】
その一方で、そのような小容量コンデンサ(C1、C2)は、ノイズや電源電圧変動等の環境変化への耐性が低い。発振回路10が製品チップに実装された際には、そのような小容量コンデンサ(C1、C2)が、発振回路10の誤動作の原因となる可能性がある。そこで、高ノイズ耐性が望まれる際には、第2モードが利用されるとよい。駆動電流と負荷容量が増加するため、発振回路10のノイズ耐性が大幅に向上する。
【0029】
このように、第1モードと第2モードを場合に応じて使い分けることによって、低消費電力と高ノイズ耐性の両立が可能となる。
【0030】
1−3.変形例
図3は、発振回路10の変形例を示す回路図である。上述の通り、本実施の形態では、第1モードと第2モードとで、発振回路10の負荷容量が変わる。負荷容量が変わると共振条件が変わるため、発振周波数も変動してしまう。具体的には、
図4に示されるように、負荷容量が増加すると、発振周波数が低下する。発振周波数の低下は、コンパレータ回路400から出力されるクロック信号CLKの周波数の低下を意味する。すなわち、動作モードが第1モードから第2モードへ切り替わると、コンパレータ回路400から出力されるクロック信号CLKの周波数が低下する。
【0031】
そこで、動作モードに依らずクロック周波数を一定にするために、
図3に示されるように、コンパレータ回路400の後段に分周回路600が設けられてもよい。この分周回路600は、コンパレータ回路400から出力されるクロック信号CLKの分周を行い、それによりクロック周波数の調整を行う。より詳細には、分周回路600は、第1モードと第2モードとでクロック信号CLKの周波数が等しくなるように、分周比を切り替える。
【0032】
分周回路600の分周比の切り替えを行うのは、上記の制御回路500である。制御回路500は、モード信号MODEに応じた第3制御信号CON3を分周回路600に出力し、それにより分周回路600の分周比を切り替える。具体的には、制御回路500は、第1モードと第2モードとでクロック信号CLKの周波数が等しくなるように、分周回路600の分周比を切り替える。これにより、発振回路10からは、一定周波数のクロック信号CLKが出力される。
【0033】
1−4.インバータ回路の様々な例
上述の通り、インバータ回路100の駆動能力は、第1制御信号CON1によって可変制御される。そのようなインバータ回路100の構成例としては様々考えられる。
【0034】
図5は、インバータ回路100の一構成例を示している。
図5に示される例において、インバータ回路100は、NMOSトランジスタ110と可変電流源120を備えている。NMOSトランジスタ110のゲート、ドレイン、及びソースは、それぞれ、入力端子101(第1端子T1)、出力端子102(第2端子T2)、及びグランド端子に接続されている。可変電流源120は、NMOSトランジスタ110のドレイン、すなわち出力端子102(第2端子T2)に電流を供給する。
【0035】
可変電流源120の供給電流は、制御回路500から出力される第1制御信号CON1によって制御される。具体的には、可変電流源120の供給電流は、第1モードよりも第2モードにおいて大きくなるように制御される。これにより、インバータ回路100の駆動能力が、第1モードよりも第2モードにおいて大きくなる。
【0036】
図6は、可変電流源120の構成例を示している。可変電流源120は、PMOSトランジスタ121〜125、NMOSトランジスタ126、127、及び可変抵抗128を備えている。
【0037】
PMOSトランジスタ121〜124のそれぞれのゲートは、ノードN1に共通に接続されている。PMOSトランジスタ121〜124のソースは、電源端子に接続されている。PMOSトランジスタ121のドレインは、ノードN2に接続されている。PMOSトランジスタ122のドレインは、ノードN1に接続されている。PMOSトランジスタ123のドレインは、ノードN3に接続されている。PMOSトランジスタ124のドレインは、ノードN4に接続されている。
【0038】
PMOSトランジスタ125のドレインはノードN3に接続され、そのソースはノードN4に接続されている。PMOSトランジスタ125のゲートには、第1制御信号CON1が入力される。つまり、PMOSトランジスタ125は、第1制御信号CON1によってON/OFF制御される。
【0039】
NMOSトランジスタ126のゲート及びドレインは共に、ノードN2に接続されている。NMOSトランジスタ126のソースは、グランド端子に接続されている。NMOSトランジスタ127のゲートはノードN2に接続され、そのドレインはノードN1に接続されている。NMOSトランジスタ127のソースは、可変抵抗128を介して、グランド端子に接続されている。可変抵抗128の抵抗値は、第1制御信号CON1によって可変制御される。
【0040】
このようなカレントミラー回路によって、可変電流源120が構成される。第1制御信号CON1を用いてPMOSトランジスタ125をON/OFF制御することによって、カレントミラー回路のミラー比を切り替えることができる。あるいは、第1制御信号CON1を用いて可変抵抗128の抵抗値を制御することによって、カレントミラー回路の基準電流を切り替えることができる。そのようなミラー比及び/又は基準電流の切り替えにより、可変電流源120の供給電流を切り替え可能である。
【0041】
図7は、インバータ回路100の他の構成例を示している。
図7に示される例において、インバータ回路100は、インバータ130とNANDゲート140を備えている。インバータ130の入力端子及び出力端子は、それぞれ、入力端子101(第1端子T1)及び出力端子102(第2端子T2)に接続されている。NANDゲート140の一方の入力端子は、入力端子101(第1端子T1)に接続され、他方の入力端子には、第1制御信号CON1が入力される。NANDゲート140の出力端子は、出力端子102(第2端子T2)に接続されている。
【0042】
第1制御信号CON1がLowレベルの場合、NANDゲート140の出力は固定される。一方、第1制御信号CON1がHighレベルの場合、NANDゲート140は、インバータとして機能する。この場合、インバータ回路100全体としての駆動能力が増加する。すなわち、第1制御信号CON1に応じて、インバータ回路100全体としての駆動能力を切り替えることができる。
【0043】
図8は、インバータ回路100の更に他の構成例を示している。
図8に示される例において、インバータ回路100は、インバータ150、160、及びスイッチ170を備えている。インバータ150、160の各々の入力端子は、入力端子101(第1端子T1)に接続されている。一方、インバータ150、160の各々の出力端子は、出力端子102(第2端子T2)に接続されている。更に、インバータ160と電源端子との間には、スイッチ170が介在している。
【0044】
スイッチ170は、第1制御信号CON1によってON/OFF制御される。スイッチ170がONの場合、インバータ160は動作し、スイッチ170がOFFの場合、インバータ160は動作しない。従って、第1制御信号CON1に応じて、インバータ回路100全体としての駆動能力を切り替えることができる。
【0045】
1−5.可変容量の様々な例
既出の
図1の例では、第1可変容量200−1が第1端子T1に接続され、第2可変容量200−2が第2端子T2に接続されていた。しかし、可変容量200の配置は、これに限られない。可変容量200は、第1端子T1と第2端子T2の少なくとも一方に接続されていればよく、それによりノイズ耐性向上の効果は得られる。
【0046】
例えば、
図9に示されるように、第1可変容量200−1だけが設けられ、第2可変容量200−2は省略されてもよい。この場合、
図1の場合と比較して、発振回路10の面積が縮小される。
【0047】
また、
図10に示されるように、1つの可変容量200が第1端子T1と第2端子T2との間を接続するように設けられてもよい。このような接続構成の場合、見かけの容量値が増加する「ミラー効果」が期待され、好適である。また、可変容量200の数が減るため、面積縮小の効果も得られる。尚、可変容量200の容量値は、第2制御信号CON2により制御可能である。例えば、可変容量200は、第1端子T1と第2端子T2との間に直列に接続された容量230とスイッチ240を備えている。第2制御信号CON2でスイッチ240をON/OFF制御することにより、第1端子T1及び第2端子T2に接続される容量値を切り替えることができる。
【0048】
また、
図11に示されるように、各可変容量200の容量210が、第1容量C1及び第2容量C2と同様に、半導体チップの外部に設けられてもよい。これにより、チップ面積の増加が抑えられる。
【0049】
2.発振回路の適用例
2−1.半導体装置
図12は、本実施の形態に係る発振回路10が適用された半導体装置(半導体チップ5)の構成例を示している。半導体チップ5は、電源2に接続され、電源2から半導体チップ5には電源電圧VCC(通常電源電圧)が供給される。また、半導体チップ5は、予備電源であるバッテリ3に接続され、バッテリ3から半導体チップ5にはバッテリ電源電圧VBAT(予備電源電圧)が供給される。
【0050】
半導体チップ5は、上述の発振回路10、RTC(Real Time Clock)回路20、システムコントローラ30、論理回路40、電源切替回路50、及び電源検出回路60を備えている。
【0051】
発振回路10の第1端子T1及び第2端子T2は、それぞれ、半導体チップ5の第1ピンP1及び第2ピンP2に接続されている。第1ピンP1及び第2ピンP2は、外付け部品である水晶振動子1等に接続される。具体的には、第1ピンP1及び第2ピンP2は、水晶振動子1の両端に接続される。また、第1ピンP1は第1容量C1に接続され、第2ピンP2は第2容量C2に接続される。上述の通り、発振回路10は、クロック信号CLKを生成し、出力する。
【0052】
RTC回路20は、発振回路10によって生成されたクロック信号CLKを受け取り、そのクロック信号CLKに基づいて動作する。
【0053】
システムコントローラ30は、半導体チップ5全体の動作を制御する。例えば、システムコントローラ30は、半導体チップ5の動作モードに応じて上述のモード信号MODEを生成し、そのモード信号MODEを発振回路10に出力する。これにより、発振回路10は、モード信号MODEに応じた動作を行う。
【0054】
論理回路40は、電源電圧VCCに基づいて動作し、所定の機能を提供する。
【0055】
発振回路10及びRTC回路20は、時計に用いられるため、常に動作することが要求される。従って、例えば電源電圧VCCが低下した場合には、電源電圧VCCの代わりにバッテリ電源電圧VBATが発振回路10及びRTC回路20に供給される。すなわち、発振回路10及びRTC回路20に供給される電源電圧(以下、「RTC電源電圧VRTC」と参照される)は、状況に応じて、電源電圧VCCとバッテリ電源電圧VBATとで切り替え可能である。そのようなRTC電源電圧VRTCの自動切り替えのために、電源切替回路50及び電源検出回路60が設けられている。
【0056】
電源切替回路50は、電源電圧VCC及びバッテリ電源電圧VBATを受け取り、それらのうちいずれか一方をRTC電源電圧VRTCとして発振回路10及びRTC回路20に供給する。そのRTC電源電圧VRTCは、電源切替信号SWによって指定される。すなわち、電源切替回路50は、電源切替信号SWに応じて、RTC電源電圧VRTCを電源電圧VCCとバッテリ電源電圧VBATとで切り替える。
【0057】
電源検出回路60は、電源電圧VCCをモニタする。電源電圧VCCが所定の閾値以下になった場合、電源検出回路60は、電源低下信号をシステムコントローラ30に出力する。その電源低下信号に応答して、システムコントローラ30は、電源切替信号SWを電源切替回路50に出力し、電源切り替えを制御する。具体的には、システムコントローラ30は、RTC電源電圧VRTCが電源電圧VCCからバッテリ電源電圧VBATに切り替わるように、電源切替回路50を制御する。
【0058】
一方、電源電圧VCCが所定の閾値以上になった場合、電源検出回路60は、電源回復信号をシステムコントローラ30に出力する。その電源回復信号に応答して、システムコントローラ30は、電源切替信号SWを電源切替回路50に出力し、電源切り替えを制御する。具体的には、システムコントローラ30は、RTC電源電圧VRTCがバッテリ電圧VBATから電源電圧VCCに切り替わるように、電源切替回路50を制御する。
【0059】
2−2.隣接ピンを用いたエミュレーション
発振回路10は、小電流で微弱な発振を行う回路である。そのため、発振回路10及び水晶振動子1に接続される第1ピンP1に隣接するピンPA(
図12参照)に入力される信号が、発振回路10の動作に影響を与えてしまう可能性がある。従って、その隣接ピンPAは、最終製品では使用されないようなピンであることが望ましい。例えば、隣接ピンPAは、半導体チップ5のエミュレーションを行う「デバッグモード」において用いられるピンであることが望ましい。
【0060】
図13は、デバッグモード時の状態を示している。隣接ピンPAは、外部のエミュレータ(図示されない)に接続される。そのエミュレータを用いることにより、隣接ピンPAを通してデバッグが行われる。この時、
図13に示されるように、隣接ピンPAにつながる配線と発振回路10との間でカップリングが発生する。従って、デバッグモード時の隣接ピンPAのノイズによって、発振回路10の誤動作(クロック抜け等)が発生するおそれがある。
【0061】
このようなデバッグモード時の隣接ピンPAのノイズに対して、本実施の形態に係る発振回路10は有効である。すなわち、高ノイズ耐性モードである第2モードが、エミュレーションを行うデバッグモードに対応付けられるとよい。一方、低電力モードである第1モードは、エミュレーションが行われないモードである。デバッグモードであるか否かを示すモード信号MODEは、以下、「デバッグモード信号XMOD」と参照される。デバッグモード信号XMODは、システムコントローラ30から発振回路10に供給される。すなわち、動作モードの切り替えは、システムコントローラ30によって自動的に制御される。
【0062】
図14は、本例における発振回路10の制御方法を示すタイミングチャートである。本例において、Lowレベルのデバッグモード信号XMODは第1モードを表し、Highレベルのデバッグモード信号XMODは第2モード(デバッグモード)を表すとする。
【0063】
時刻t0において、デバッグモード信号XMODがLowレベルからHighレベルに切り替わる。これにより、動作モードが、第1モードから第2モード(デバッグモード)に切り替わる。この場合、制御回路500は、インバータ回路100の駆動能力と可変容量200の容量値の“両方”が増加するように制御を行う。具体的には、制御回路500は、時刻t0の後の時刻t1において、インバータ回路100の駆動能力を増加させ、更に、時刻t1の後の時刻t2において、可変容量200の容量値を増加させる。
【0064】
これにより、発振回路10の駆動電流と負荷容量が増加するため、隣接ピンPAとのカップリングの影響が小さくなる。例えば、第1端子T1につながる容量値が3pFから12pFに増加した場合、隣接ピンPAとのカップリングの影響はほぼ1/4に低減される。その結果、隣接ピンPAのノイズによる発振回路10の誤動作が効果的に抑制される。そして、時刻t2以降、隣接ピンPAを用いたエミュレーションが許可される。
【0065】
エミュレーションの終了後、時刻t3において、デバッグモード信号XMODがHighレベルからLowレベルに切り替わる。これにより、動作モードが、第2モード(デバッグモード)から第1モードに切り替わる。この場合、制御回路500は、インバータ回路100の駆動能力と可変容量200の容量値の“両方”が減少するように制御を行う。具体的には、制御回路500は、時刻t3の後の時刻t4において、可変容量200の容量値を減少させ、更に、時刻t4の後の時刻t5において、インバータ回路100の駆動能力を減少させる。これにより、消費電力が低減される。
【0066】
尚、エミュレーションに用いられる隣接ピンPAは第1ピンP1に隣接しているため、ノイズ源に近い第1ピンP1側の第1可変容量200−1だけが設けられていてもよい(
図9参照)。この場合であっても、かなりの高ノイズ耐性が得られる。また、第2ピンP2側の第2可変容量200−2を省略することによって、面積縮小効果が得られる。
【0067】
2−3.電源電圧の切り替え
上述の通り、電源切替回路50、電源検出回路60及びシステムコントローラ30によって、RTC電源電圧VRTCの切り替えが自動的に行われる(
図12参照)。このRTC電源電圧VRTCの切り替えについて、
図15を参照してより詳しく説明する。
【0068】
最初、RTC電源電圧VRTCは、電源電圧VCCである。時刻t10において、電源電圧VCCが低下し始める。時刻t11において、電源電圧VCCが所定の閾値Vtを下回る。これに応答して、システムコントローラ30は、電源切替信号SWを電源切替回路50に出力し、RTC電源電圧VRTCを電源電圧VCCからバッテリ電源電圧VBATに切り替える。但し、実際には応答遅延が発生するため、RTC電源電圧VRTCが電源電圧VCCからバッテリ電源電圧VBATに切り替わるのは、時刻t11の後の時刻t12である。
【0069】
時刻t12の後、RTC電源電圧VRTCは、バッテリ電源電圧VBATである。その後、電源電圧VCCが上昇し始める。時刻t21において、電源電圧VCCが所定の閾値Vtを上回る。これに応答して、システムコントローラ30は、電源切替信号SWを電源切替回路50に出力し、RTC電源電圧VRTCをバッテリ電源電圧VBATから電源電圧VCCに切り替える。但し、実際には応答遅延が発生するため、RTC電源電圧VRTCがバッテリ電源電圧VBATから電源電圧VCCに切り替わるのは、時刻t21の後の時刻t22である。
【0070】
このように、電源切り替え時、RTC電源電圧VRTCはしばらくの間、電源電圧VCCのレベルから低下する。特に、電源電圧VCCが低下する時刻t10〜t12の期間は、RTC電源電圧VRTCも大きく低下する。これらのことが、発振回路10の誤動作(クロック抜け等)の原因となる。
【0071】
このようなRTC電源電圧VRTCの切り替え時の電圧低下に対して、本実施の形態に係る発振回路10は有効である。すなわち、高ノイズ耐性モードである第2モードが、RTC電源電圧VRTCの切り替えを“許可”するモードに対応付けられるとよい。一方、低電力モードである第1モードは、RTC電源電圧VRTCの切り替えを“禁止”するモードに対応付けられる。切り替えの許可/禁止を示すモード信号MODEは、以下、「電源切替許可信号XVOL」と参照される。電源切替許可信号XVOLは、システムコントローラ30から発振回路10に供給される。すなわち、動作モードの切り替えは、システムコントローラ30によって自動的に制御される。
【0072】
図16は、本例における発振回路10の制御方法を示すタイミングチャートである。本例において、Lowレベルの電源切替許可信号XVOLは第1モード(切り替え禁止)を表し、Highレベルの電源切替許可信号XVOLは第2モード(切り替え許可)を表すとする。
【0073】
RTC電源電圧VRTCが電源電圧VCCからバッテリ電源電圧VBATに切り替わる際の制御は、次の通りである。
【0074】
時刻t30において、電源切替許可信号XVOLがLowレベルからHighレベルに切り替わる。これにより、動作モードが、第1モードから第2モードに切り替わる。この場合、制御回路500は、インバータ回路100の駆動能力と可変容量200の容量値の“両方”が増加するように制御を行う。具体的には、制御回路500は、時刻t30の後の時刻t31において、インバータ回路100の駆動能力を増加させ、更に、時刻t31の後の時刻t32において、可変容量200の容量値を増加させる。結果として、RTC電源電圧VRTCの低下が発振回路10の動作に与える影響が小さくなる。
【0075】
時刻t33において、電源切替許可信号XVOLがHighレベルからLowレベルに切り替わる。これにより、動作モードが、第2モードから第1モードに切り替わる。この場合、制御回路500は、インバータ回路100の駆動能力と可変容量200の容量値の“両方”が減少するように制御を行う。具体的には、制御回路500は、時刻t33の後の時刻t34において、可変容量200の容量値を減少させ、更に、時刻t34の後の時刻t35において、インバータ回路100の駆動能力を減少させる。これにより、消費電力が低減される。
【0076】
ここで、上記の時刻t32〜t34の期間が、RTC電源電圧VRTCの切り替えが許される電源切替許可期間である。そこで、システムコントローラ30は、その電源切替許可期間にRTC電源電圧VRTCが切り替えられるよう電源切替信号SWを切り替える。言い換えれば、システムコントローラ30は、電源切替信号SWの切り替えに先立って、電源切替許可信号XVOLをLowレベルからHighレベルに切り替える。また、システムコントローラ30は、電源切替信号SWの切り替えの後に、電源切替許可信号XVOLをHighレベルからLowレベルに切り替える。
【0077】
RTC電源電圧VRTCがバッテリ電源電圧VBATから電源電圧VCCに切り替わる際の制御は、次の通りである。
【0078】
時刻t40において、電源切替許可信号XVOLがLowレベルからHighレベルに切り替わる。これにより、動作モードが、第1モードから第2モードに切り替わる。この場合、制御回路500は、インバータ回路100の駆動能力と可変容量200の容量値の“両方”が増加するように制御を行う。具体的には、制御回路500は、時刻t40の後の時刻t41において、インバータ回路100の駆動能力を増加させ、更に、時刻t41の後の時刻t42において、可変容量200の容量値を増加させる。結果として、RTC電源電圧VRTCの低下が発振回路10の動作に与える影響が小さくなる。
【0079】
時刻t43において、電源切替許可信号XVOLがHighレベルからLowレベルに切り替わる。これにより、動作モードが、第2モードから第1モードに切り替わる。この場合、制御回路500は、インバータ回路100の駆動能力と可変容量200の容量値の“両方”が減少するように制御を行う。具体的には、制御回路500は、時刻t43の後の時刻t44において、可変容量200の容量値を減少させ、更に、時刻t44の後の時刻t45において、インバータ回路100の駆動能力を減少させる。これにより、消費電力が低減される。
【0080】
ここで、上記の時刻t42〜t44の期間が、RTC電源電圧VRTCの切り替えが許される電源切替許可期間である。そこで、システムコントローラ30は、その電源切替許可期間にRTC電源電圧VRTCが切り替えられるよう電源切替信号SWを切り替える。言い換えれば、システムコントローラ30は、電源切替信号SWの切り替えに先立って、電源切替許可信号XVOLをLowレベルからHighレベルに切り替える。また、システムコントローラ30は、電源切替信号SWの切り替えの後に、電源切替許可信号XVOLをHighレベルからLowレベルに切り替える。
【0081】
このように、電源切替許可期間中、発振回路10の駆動電流と負荷容量が増加する。よって、その電源切替許可期間中にRTC電源電圧VRTCを切り替えることによって、その切り替えが発振回路10の動作に与える影響を最小限にすることができる。
【0082】
2−4.その他の適用例
例えば、半導体チップ5がノイズを発生しやすい機能ブロックを含んでいる場合を考える。その機能ブロックの動作開始時及び動作停止時に、発振回路10の動作モードが第2モードに設定されるとよい。これにより、機能ブロックからのノイズが発振回路10の動作に与える影響を最小限にすることができる。
【0083】
3.コンパレータ回路について
以下、ノイズ耐性を高めるためのコンパレータ回路400の様々な構成例を説明する。
【0084】
図17に示される例において、コンパレータ回路400は、差動型のコンパレータ410を備えている。そのコンパレータ410の2つの入力は、それぞれ、第1端子T1及び第2端子T2に接続されている。この場合、コンパレータ410は差動動作を行うため、第1端子T1と第2端子T2との間に少しでも電位差があれば出力が得られる。また、第1端子T1と第2端子T2に同相のノイズが印加された場合、それらはキャンセルされ、クロック信号CLKへ影響を及ぼすことはない。本例のコンパレータ回路400は、特に、電源電圧の切り替え(第2−3節参照)の場合に効果的である。
【0085】
図18は、容量結合方式のコンパレータ回路400を示している。より詳細には、コンパレータ回路400は、コンパレータ430、容量440、抵抗450、参照電圧電源460、及び容量470を備えている。コンパレータ430の2つの入力は、それぞれ、ノード401及びノード402に接続されている。容量440は、ノード401とインバータ回路100の出力端子102との間に接続されている。抵抗450は、ノード401とノード402との間に接続されている。参照電圧電源460は、ノード402に接続され、ノード402に参照電圧を供給する。容量470は、ノード402とグランド端子との間に接続されている。コンパレータ430の入力の容量結合により、何らかの理由でDC動作点(発振の中心電圧)がずれてしまった場合でも、問題なく出力が得られる。
【0086】
図19は、ハイブリッド方式のコンパレータ回路400を示している。より詳細には、
図1で示されたコンパレータ回路400と
図18で示されたコンパレータ回路400の両方が設けられている。
図1で示されたコンパレータ回路400は、第1クロック信号CLK1を生成する。一方、
図18で示されたコンパレータ回路400は、第2クロック信号CLK2を生成する。選択回路480は、第1クロック信号CLK1及び第2クロック信号CLK2を受け取り、それらのうち一方をクロック信号CLKとして出力する。動作モードに応じて、第1クロック信号CLK1と第2クロック信号CLK2のうち適切な方を選択して用いることができ、好適である。
【0087】
4.電源ラインについて
図20は、電源切り替えに対するノイズ耐性を向上させるための他の構成例を示している。
図20に示される例では、発振回路10にRTC電源電圧VRTCを供給するための電源ライン上に、ローパスフィルタ70が設けられている。ローパスフィルタ70は、可変抵抗71と容量72を備えている。
【0088】
RTC電源電圧VRTCの切り替え時、電源切替許可信号XVOLに応じて、ローパスフィルタ70の可変抵抗71の抵抗値が切り替えられる。具体的には、上述の電源切替許可期間においてローパスフィルタ70の可変抵抗71の抵抗値が増加する。これにより、RTC電源電圧VRTCの変動勾配が緩やかになり、結果として、発振回路10の誤動作の発生が抑制される。
【0089】
尚、矛盾しない範囲で、上述の例同士を組み合わせることも可能である。
【0090】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。