(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
減圧可能であって基材を設置可能な成膜室と、基材に対して成膜材料の蒸気を放出する成膜材料放出部と、成膜材料を蒸発させる蒸発部とを有し、前記蒸発部は成膜材料が配される蒸発空間と、成膜材料を加熱する加熱手段とを有し、前記蒸発空間と成膜材料放出部との間に主開閉弁があり、当該主開閉弁を開いて蒸発空間内で発生させた蒸気を成膜材料放出部に導入し、成膜材料放出部から成膜材料の蒸気を放出して基材に成膜する真空蒸着装置において、
蒸発空間内の圧力上昇を防止する圧力逃がし路を備え、当該圧力逃がし路は、蒸気を液化又は固化させる相変換部に接続されており、
前記相変換部は、成膜室の外部に設けられており、
前記蒸発空間と前記成膜材料放出部とを繋ぐ成膜用配管と、前記相変換部と前記成膜室を接続する吸引用流路を有し、
前記圧力逃がし路は、前記成膜用配管と前記相変換部を接続するものであり、
前記圧力逃がし路の前記相変換部側の端部は、前記吸引用流路の前記相変換部側の端部よりも相変換部の底面部側に延びていることを特徴とする真空蒸着装置。
圧力逃がし路は、蒸発部内の気体だけが存在する部位を始端としたときに、圧力逃がし路の終端は、固相又は液相が存在する部位であって、前記蒸発空間よりも低温の部位に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の真空蒸着装置。
【背景技術】
【0002】
近年、白熱灯や蛍光灯に代わる照明装置として有機EL装置が注目され、多くの研究がなされている。
【0003】
ここで、有機EL装置は、ガラス基板や透明樹脂フィルム等の基材に、有機EL素子を積層したものである。
また、有機EL素子は、一方又は双方が透光性を有する2つの電極を対向させ、この電極の間に有機化合物からなる発光層を積層したものである。有機EL装置は、電気的に励起された電子と正孔との再結合のエネルギーによって発光する。
有機EL装置は、自発光デバイスであるため、ディスプレイ材料として使用すると高コントラストの画像を得ることができる。また、発光層の材料を適宜選択することにより、種々の波長の光を発光することができる。また、白熱灯や蛍光灯に比べて厚さが極めて薄く、且つ面状に発光するので、設置場所の制約が少ない。
【0004】
代表的な有機EL装置の層構成は、
図15の通りである。
図15に示される有機EL装置200は、ガラス基板202上に、透明電極層203と、機能層205と、裏面電極層206が積層され、これらが封止部207によって封止されたものである。有機EL装置200は、ガラス基板202側から光を取り出す、いわゆる、ボトムエミッション型と称される構成である。
また、機能層205は、複数の有機化合物又は導電性酸化物の薄膜が積層されたものである。代表的な機能層205の層構成は、
図15の通りであり、ガラス基板202側から順に正孔注入層208、正孔輸送層210、発光層211、電子輸送層212、及び電子注入層215を有している。
【0005】
そして、有機EL装置200は、ガラス基板202上に、前記した層を順次成膜することによって製造される。
一般的に、上記した各層のうち、透明電極層203は、インジウム錫酸化物(ITO)等の透明導電膜で形成された層であり、主にスパッタ法又は化学気相蒸着(CVD)法によって成膜される。機能層205は、前記したように複数の有機化合物や導電性酸化物の薄膜が積層されており、各薄膜はいずれも真空蒸着法によって成膜される。裏面電極層206は、アルミニウム等の金属薄膜であり、真空蒸着法によって成膜される。
【0006】
このように、一般的な有機EL装置は、真空蒸着法が多用されて製造される。
真空蒸着法は、例えば、特許文献1に開示されたような真空蒸着装置を使用して成膜する技術である。
真空蒸着装置は、成膜対象に成膜する成膜室と、成膜材料を蒸発させる蒸発部と、成膜室と蒸発部を接続する蒸着用配管によって構成されるものである。
成膜室は、成膜対象であるガラス基板を固定するステージと、ステージに固定されたガラス基板に向かって蒸気を放出する成膜材料放出部を備えている。蒸発部は、加熱装置と、成膜材料を入れる坩堝とよって構成されている。蒸着用配管は、成膜材料放出部と蒸発部の双方に連通する配管である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように有機EL装置は、真空蒸着装置で複数の層を成膜する必要があり、なるべく多くの層を一つの成膜室内で成膜したいという要望がある。
この要望を満たす真空蒸着装置として、薄膜材料放出部(成膜材料放出部)に複数の蒸発部を接続し、蒸着用流路に各蒸発部に対応した開閉弁を備えた真空蒸着装置が考えられる。すなわち、開閉弁を切り換えることによって放出される蒸気の薄膜材料(成膜材料)を変更し、複数の膜を一つの成膜室内で成膜する方策が考えられる。
【0009】
しかしながら、一つの成膜材料から他の成膜材料に切り換える際に、開閉弁を閉じると、一時的に蒸発部内の蒸気圧が上昇し、蒸発部内の温度が過度に上昇する場合がある。
また、基板の成膜が終了した際に開閉弁を閉じる場合にも、一時的に蒸発部内の蒸気圧が上昇し、蒸発部内の温度が過度に上昇する場合がある。
有機EL装置を構成する薄膜は、ほとんどが有機物の材料であるため、熱に対する耐久範囲が狭く、このように蒸発部内の温度が過度に上昇した場合、有機物の材料が変質して劣化してしまうという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、開閉弁を閉じた際における蒸発部の圧力上昇に起因する温度上昇を抑制する機能を備えた真空蒸着装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための請求項1に記載の発明は、減圧可能であって基材を設置可能な成膜室と、基材に対して成膜材料の蒸気を放出する成膜材料放出部と、成膜材料を蒸発させる蒸発部とを有し、前記蒸発部は成膜材料が配される蒸発空間と、成膜材料を加熱する加熱手段とを有し、前記蒸発空間と成膜材料放出部との間に主開閉弁があり、当該主開閉弁を開いて蒸発空間内で発生させた蒸気を成膜材料放出部に導入し、成膜材料放出部から成膜材料の蒸気を放出して基材に成膜する真空蒸着装置において、蒸発空間内の圧力上昇を防止する圧力逃がし路を備え、当該圧力逃がし路は、蒸気を液化又は固化させる相変換部に接続されており、前記相変換部は、成膜室の外部に設けられ
ており、前記蒸発空間と前記成膜材料放出部とを繋ぐ成膜用配管と、前記相変換部と前記成膜室を接続する吸引用流路を有し、前記圧力逃がし路は、前記成膜用配管と前記相変換部を接続するものであり、前記圧力逃がし路の前記相変換部側の端部は、前記吸引用流路の前記相変換部側の端部よりも相変換部の底面部側に延びていることを特徴とする真空蒸着装である。
本発明は、減圧可能であって基材を設置可能な成膜室と、基材に対して成膜材料の蒸気を放出する成膜材料放出部と、成膜材料を蒸発させる蒸発部とを有し、前記蒸発部は成膜材料が配される蒸発空間と、成膜材料を加熱する加熱手段とを有し、前記蒸発空間と成膜材料放出部との間に主開閉弁があり、当該主開閉弁を開いて蒸発空間内で発生させた蒸気を成膜材料放出部に導入し、成膜材料放出部から成膜材料の蒸気を放出して基材に成膜する真空蒸着装置において、蒸発空間内の圧力上昇を防止する圧力逃がし路を備え、当該圧力逃がし路は、蒸気を液化又は固化させる相変換部に接続されている真空蒸着装置に関連する。
【0012】
本発明の構成によれば、圧力逃がし路は、蒸気を液化又は固化させる相変換部に接続されている。すなわち、成膜材料の蒸気の状態変化を利用して一時的に蒸発部内の蒸気圧が上昇して成膜材料が過剰に高温になることを防止している。
詳説すると、成膜材料の蒸気は、圧力逃がし路の下流に位置する相変換部で液体又は固体となる。状態変化により蒸気圧が降下するため、一時的に蒸発部内の蒸気圧が上昇しても、成膜材料が変質するほどの温度上昇が起こらない。
また、蒸発部内の圧力は、圧力逃がし路によって緩和されるため、安定する。
請求項
1に記載の発明は、前記蒸発空間と前記成膜材料放出部とを繋ぐ成膜用配管と、前記相変換部と前記成膜室を接続する吸引用流路を有し、前記圧力逃がし路は、前記成膜用配管と前記相変換部を接続するものであり、前記圧力逃がし路の前記相変換部側の端部は、前記吸引用流路の前記相変換部側の端部よりも相変換部の底面部側に延びていることを特徴とす
る。
【0013】
請求項
2に記載の発明は、圧力逃がし路は、蒸発部内の気体だけが存在する部位を始端としたときに、圧力逃がし路の終端は、固相又は液相が存在する部位であって、前記蒸発空間よりも低温の部位に接続されていることを特徴とする請求項
1に記載の真空蒸着装置である。
本発明は、圧力逃がし路は、蒸発部内の気体だけが存在する部位を始端とし、圧力逃がし路の終端は、固相又は液相が存在する部位に接続されていることに関連する。
【0014】
本発明によれば、圧力逃がし路内は、気体だけが存在する。すなわち、圧力逃がし路内で固体又は液体状の成膜材料が存在しないため、圧力逃がし路に成膜材料が詰まらない。
【0015】
請求項
3に記載の発明は、前記蒸発空間と前記成膜材料放出部とを繋ぐ成膜用配管を有し、前記成膜用配管は、その中途に前記主開閉弁が設けられており、前記圧力逃がし路は、前記成膜用配管と前記相変換部を接続するものであって、前記蒸発空間と前記主開閉弁との間に接続されており、前記圧力逃がし路には補助開閉弁が設けられており、前記補助開閉弁は、前記主開閉弁が閉じられる際の前後の時期に開放され、その後に閉止されることを特徴とする請求項1
又は2に記載の真空蒸着装置である。
本発明は、圧力逃がし路には補助開閉弁が設けられており、補助開閉弁は、主開閉弁が閉じられる際の前後の時期に開放され、その後に閉止されることに関連する。
【0016】
本発明の構成によれば、補助開閉弁は、主開閉弁が閉じられる際の前後の時期に開放され、その後に閉止される。すなわち、蒸発部内の圧力が上昇する時期だけ補助開閉弁を開くため、蒸発部内の圧力を逃がすことができる。
請求項
4に記載の発明は、前記蒸発空間と前記成膜材料放出部とを繋ぐ成膜用配管を有し、前記成膜用配管は、その中途に前記主開閉弁が設けられており、前記圧力逃がし路は、前記成膜用配管と前記相変換部を接続するものであって、前記蒸発空間と前記主開閉弁との間に接続されており、前記圧力逃がし路の流路内径は、前記成膜用配管の流路内径よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至
3のいずれかに記載の真空蒸着装置である。
【0017】
本発明は、成膜材料放出部に連通し蒸発空間から蒸気を排出する主排出口があり、前記圧力逃がし路の流路面積は、主排出口の開口面積よりも小さく、当該圧力逃がし路は、蒸発空間よりも低圧の部位に接続されていることに関連する。
【0018】
この構成によれば、圧力逃がし路は、流路面積が狭い流路であるため、圧力逃がし路を通過する成膜材料は少量となる。すなわち、成膜材料が圧力逃がし路から大量に漏れ出ることはない。
【0019】
本発明は、圧力逃がし路は、成膜室に接続されていることに関連する。
【0020】
この構成によれば、成膜室は蒸発部に比べて低圧であるため、蒸発部内の圧力を下げることができる。
【0021】
本発明は、圧力逃がし路は、蒸発空間よりも低温の部位に接続されていることに関連する。
【0022】
この構成によれば、圧力逃がし路は、蒸発空間よりも低温の部位に接続されているため、相変換部で蒸気を固化させることができる。そのため、圧力逃がし路の中途などの要らぬところに膜が付着しない。それ故に、圧力逃がし路が詰まりにくい。
請求項
5に記載の発明は、前記相変換部は、筐体部と、蓋部を有し、前記筐体部と前記蓋部が一体となることによって外気から密閉された変換空間を形成するものであり、前記蓋部と前記筐体部は、着脱可能であることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれかに記載の真空蒸着装置である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の真空蒸着装置によれば、開閉弁を閉じた際における蒸発部の圧力上昇に起因する温度上昇を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の第1実施形態に係る真空蒸着装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
本発明の第1実施形態の真空蒸着装置1は、
図1のように、成膜室2と、複数の蒸発部10a,10b,10cを備えており、これらが接続部3によって接続されている。
【0027】
成膜室2は気密性を有するものであり、減圧手段7と、シャッター14が備えられている。減圧手段7は成膜室2内の空間を真空状態に維持する部材であり、公知の減圧ポンプである。
なお、ここでいう「真空状態」とは、10
-3Pa以下の真空度を有する状態を指す。真空度は低ければ低いほど好ましい。本実施形態の具体的な真空度は1×10
-3〜1×10
-9Paの範囲であり、1×10
-5〜1×10
-9Paの範囲が望ましい。
【0028】
成膜室2は、基板6を搬送する基板搬送装置5を備えており、成膜室2の壁面には、図示しない搬入口と搬出口が設けられている。
基板搬送装置5は、基板6(基材)を搬送する装置であり、成膜室2に対して基板6の出し入れや、成膜位置に基板6を固定する機能を有する。すなわち、基板搬送装置5は、基板6を所定の成膜位置まで搬送したり、成膜室2の外部から搬入口を介して成膜室2の内部に基板6を搬入したり、成膜室2の内部から搬出口を介して成膜室2の外部へ基板6を搬入したりすることが可能である。
【0029】
シャッター14は、可動式シャッターであり、成膜材料放出部12の噴霧孔17を隠す閉塞姿勢と、成膜材料放出部12の噴霧孔17を開放する開放姿勢を取ることが可能となっている。
【0030】
蒸発部10a〜10cは、
図1のように成膜材料16a,16b,16cを蒸発させる部位であり、蒸発室30と、坩堝31と、加熱手段32,33とを備えている。
蒸発室30は、後述する成膜用配管8を介して成膜室2と連通されており、成膜室2と別個の筐体となっている。
蒸発室30は、固体状又は液体状の成膜材料16a,16b,16cを気体状の成膜蒸気18a,18b,18cに変換する蒸発空間29を内蔵している。
なお、以下の説明においては、成膜材料16a,16b,16cの性状を区別するため、蒸気となった成膜材料16a,16b,16cを成膜蒸気18a,18b,18cとして表す。
【0031】
坩堝31は、所望の成膜材料16a,16b,16cを収容する容器である。
加熱手段32は、坩堝31を加熱する部材であり、加熱手段33は、蒸発室30全体を加熱する部材である。加熱手段32,33はともに公知のヒーターを使用している。
【0032】
成膜材料16a,16b,16cは、例えば上記した有機EL装置を形成する所望の成膜材料である。
成膜材料16a,16b,16cの性状は、粉体やペレット状の固体や、半練り状の流動体、あるいは液体などが採用可能である。すなわち、成膜材料16a,16b,16cは、液状や粉末状、粒状の物質である。なお、本実施形態では、粉末状の成膜材料16a,16b,16cを使用している。
【0033】
続いて、接続部3について説明する。
接続部3は、
図1のように成膜用配管8と、本発明の特徴たるバイパス配管11a〜11cと、加熱手段15を有している。
成膜用配管8は、各蒸発部10a〜10cと、成膜材料放出部12とを繋ぐ配管であり、蒸着時に蒸気となった成膜材料16a,16b,16c(成膜蒸気18a,18b,18c)が通過する配管である。
具体的には、成膜用配管8は、主管路25と、主管路25に接続された複数の分岐管路26a〜26cから形成されており、主管路25と成膜材料放出部12が接続されており、それぞれの分岐管路26a〜26cには、それぞれ対応する蒸発部10a〜10cが接続されている。
また、成膜用配管8の一部は、成膜室2内に入り込んでいる。すなわち、主管路25の端部は、成膜室2の内部で成膜材料放出部12に接続されており、分岐管路26a〜26cのそれぞれの端部は、成膜室2の外部で、対応する蒸発部10a〜10cと接続されている。
【0034】
成膜材料放出部12は、
図2のように噴霧面が長方形状をしており、複数の噴霧孔17を有している。噴霧孔17は、噴霧面上をまんべんなく均等に分布されており、隣接する噴霧孔17,17間の距離(噴霧孔17の中心間の距離)は、それぞれ等しくなっている。
成膜材料放出部12は、成膜用配管8の主管路25から供給された成膜蒸気18a,18b,18cを噴霧孔17から放出可能となっている。
【0035】
加熱手段15は、成膜用配管8を加熱可能な部材であり、公知の加熱ヒーターである。
すなわち、主管路25及び分岐管路26a,26b,26cのすべてに加熱手段15が取り付けられている。
【0036】
分岐管路26a〜26cは、
図1のようにそれぞれ主管路25と蒸発部10a〜10cとの間に、蒸発部10a〜10c側から順にバイパス配管11a〜11c、成膜用開閉弁40a〜40cが接続されている。言い換えると、成膜時における成膜蒸気18a,18b,18cの流れ方向において、分岐管路26a〜26cの中流にバイパス配管11a〜11cが接続されており、さらにその下流側に成膜用開閉弁40a〜40cが接続されている。
【0037】
成膜用開閉弁40は、絞り装置として機能するものである。具体的には、成膜用開閉弁40は、耐熱性を有した固定絞り又は可動絞りの開閉弁であり、本実施形態では自動で開閉ができる。また、開度を調整できるものでもよい。
【0038】
本発明の特徴たるバイパス配管11a〜11cは、相変換部20a〜20cを経由して成膜室2と蒸発部10a〜10cを接続する配管であり、成膜用配管8(分岐管路26a〜26c)を経由して成膜用開閉弁40a〜40cの開閉時の蒸発部10a〜10c内の圧力を緩和させる流路である。
バイパス配管11a〜11cは、
図1のように成膜用配管8と相変換部20a〜20cを接続する圧力逃がし流路35と、相変換部20a〜20cと成膜室2を接続する吸引用流路36から形成されている。
バイパス配管11a〜11cは、成膜用配管8の中途に接続されており、
図3に示されるバイパス配管11a(11b,11c)の流路内径R1は、成膜用配管8の流路内径R2よりも小さくなっている。バイパス配管11a(11b,11c)の流路内径R1は、成膜用配管8の流路内径R2の1/10〜1/2であることが好ましく、1/10〜1/5であることが特に好ましい。また、バイパス配管11a(11b,11c)の流路面積は、成膜材料放出部12の噴霧孔17(
図2参照)の開口面積の総和よりも小さい。
【0039】
そして、前記したように成膜室2と蒸発部10a〜10cの間には、相変換部20a〜20cが設けられている。
【0040】
圧力逃がし流路35の中途には、バイパス開閉弁41a〜41cが設けられている。
バイパス開閉弁41a〜41cは、成膜用配管8から相変換部20a〜20cへの気体の流れを制限する弁であり、公知の電磁弁等が使用できる。
【0041】
相変換部20a〜20cは、成膜材料16a,16b,16cの蒸気(成膜蒸気18a,18b,18c)を液化又は固化させる部位である。すなわち、相変換して性状を変化させる機能を有する。
具体的には、相変換部20a〜20cは、
図4,
図5,
図6のように気体状の成膜蒸気18a,18b,18cが通過し固体状又は液体状に相変換する本体部21と、本体部21に連通し外部から空気を吸引可能な開放配管37と、本体部21に連通して本体部21から気体を吸引可能な吸引配管38とを備えている。
【0042】
本体部21の形状について具体的に説明すると、本体部21は、
図4,
図5のように筐体部45と蓋部46から形成されており、筐体部45と蓋部46が一体となることによって外気から密閉された変換空間47を形成する。変換空間47は、その空間内を通過する成膜蒸気18a,18b,18cの性状を変換する空間である。
筐体部45と蓋部46は、通常使用時には、
図4のようにボルト等の公知の一時締結要素49によって一体化されている。筐体部45は、当該一時締結要素49を取り外すことによって、蓋部46に対して着脱可能となっている。
筐体部45は、円筒状の筐体であり、
図5,
図6のように底面部50と、周壁部51と、フランジ部52から形成されており、底面部50と周壁部51の周りには、冷却手段53(
図1参照)が取り付けられている。
【0043】
周壁部51は、
図6のように底面部50の縁から上方に向けて立設しており、フランジ部52は、周壁部51の突出方向先端から外側(変換空間47に対して離反する方向)に向かって突出している。
冷却手段53は、
図1のように変換空間47を冷却する部材であり、公知の冷凍サイクルを備えた熱交換器が採用できる。また公知の冷却ジャケットや単なるフィンでもよい。
【0044】
蓋部46は、円板状の部材であり、
図4,
図5のように圧力逃がし流路35と、吸引用流路36と、開放配管37と、吸引配管38とが接続されている。また、
図6のように筐体部45に取り付けた際には、筐体部45のフランジ部52と面接触可能となっている。
【0045】
開放配管37は、相変換部20a〜20cの掃除等のメンテナンスの際に、本体部21内の変換空間47を大気開放する配管であり、
図1のように開放配管37の中途には、大気開放弁43が設けられている。大気開放弁43は、公知の開閉弁であり、電磁弁等が採用できる。
吸引配管38は、メンテナンス等の後に本体部21内を真空引きする配管であり、
図1のように本体部21と減圧手段55を繋ぐ配管である。吸引配管38は、本体部21と減圧手段55との間に減圧用開閉弁44が設けられている。
減圧手段55は、本体部21内を真空状態にする部材であり、公知の減圧ポンプである。減圧用開閉弁44は、公知の開閉弁であり、電磁弁等が採用できる。
【0046】
本実施形態の真空蒸着装置1における各部材の位置関係について説明する。
【0047】
成膜室2に注目すると、成膜室2の角部近傍には、
図1のように減圧手段7が配されている。バイパス配管11の吸引用流路36は、当該減圧手段7の近傍に接続されている。
主管路25は、成膜室2の内外に挿通し、その一部が成膜室2の内壁面に対して立設されている。具体的には、主管路25の一部は、成膜時における基板6の面に対して直交する方向に突設されている。
主管路25の突出方向の端部には、成膜材料放出部12が配されている。そして、成膜材料放出部12は、成膜時に基板6に向かって平行になるように配設されている。具体的には、成膜材料放出部12の噴霧面(噴霧孔17が設けられている面)は、成膜時における基板6の面に対して平行となっている。
また、基板搬送装置5は、成膜材料放出部12の噴霧面から噴霧方向に所定の距離だけ離れた位置に配されている。
シャッター14は、基板搬送装置5と成膜材料放出部12の噴霧面との間に設けられている。
【0048】
上記したように成膜用配管8の周りには加熱手段15が取り付けられている。具体的には、主管路25及び分岐管路26の両方に加熱手段15が取り付けられている。そして、主管路25及び分岐管路26は、成膜時においては成膜材料16の気化温度以上に加熱されている。そのため、成膜用配管8内を気体状の成膜蒸気18a〜18cが通過しても状態変化が起こらず、気体状態のまま成膜材料放出部12まで流れることが可能となっている。それ故に、成膜用配管8内側面に成膜蒸気18a〜18cが固化して成膜材料16が固着することを抑制することができる。
【0049】
蒸発部10a〜10cに注目すると、
図1のように蒸発室30の上部に成膜用配管8の分岐管路26a〜26cが接続されており、当該接続部位の下方には、坩堝31が配されている。坩堝31には、それぞれ成膜材料16a〜16cが充填されている。坩堝31の周りには、加熱手段32が設けられている。すなわち、加熱手段32によって成膜材料16a〜16cを加熱し、気化又は昇華することが可能となっている。蒸発室30の周りにも加熱手段33が設けられており、成膜時において成膜材料16a〜16cの気化温度よりもやや高い温度に維持している。
【0050】
以下、本発明の真空蒸着装置1を用いた有機EL装置の製造手順について説明するが、製造手順の説明に先立って、成膜開始時の真空蒸着装置1の各部位の状態について説明する。
成膜室2は、減圧手段7によって常に減圧されており、超高真空状態になっている。ここでいう「超高真空状態」とは、真空度が10
-5Pa以下の状態を表す。
成膜用開閉弁40a〜40c、バイパス開閉弁41a〜41c、大気開放弁43、減圧用開閉弁44は、
図7のようにいずれも閉状態になっており、成膜室側開閉弁42a〜42cは、いずれも開状態となっている。また、それぞれの蒸発部10a〜10cの坩堝31内には所望の成膜材料16a〜16cが充填されている。
成膜室側開閉弁42a〜42cが開状態となっているため、本体部21内は成膜室2とほぼ同等の超高真空状態になっている。すなわち、相変換部20a〜20cの内圧は、蒸発部10a〜10cの内圧よりも低圧となっている。
【0051】
相変換部20a〜20cの変換空間47は、冷却手段53によって冷却されており、成膜材料16a〜16cの蒸発部10a〜10c内での気化温度よりもかなり低い温度になっている。
具体的には、蒸発部10a〜10c内での内部圧力によって依存するが、成膜材料16a〜16cの蒸発部10a〜10c内での(気化温度−摂氏50度)程度の温度にされている。
具体的な数値を挙げると、真空雰囲気下での変換空間47内の温度は、気化温度以下で摂氏25度(常温)程度となっている。
【0052】
以下、成膜手順について説明すると、基板搬送装置5によって、成膜室2に基板6を搬入し、基板6が成膜材料放出部12の噴出面に対向するように固定する。
なお、本実施形態では、あらかじめ別工程によって基板上にスパッタ等の公知の手法によって透明導電膜等を成膜し、この状態の基板6を真空蒸着装置1に搬入している。
【0053】
その後、
図8のようにシャッター14によってこの基板6の成膜面を覆い、蒸発部10aの成膜用開閉弁40aを開放する(予備動作)。
このとき、坩堝31内から気化又は昇華した成膜材料16a,16b,16c(成膜蒸気18a,18b,18c)が成膜用配管8を通過して成膜材料放出部12に至り、シャッター14に噴霧される。
また、このとき、蒸発部10b,10cの成膜用開閉弁40b,40cは、ともに閉状態を維持している。
【0054】
その後、
図14に示される予備動作から所定時間Aが経過すると、シャッター14を開放姿勢とし、
図9のように成膜材料放出部12から基板6に気体状の成膜蒸気18aが噴霧される(成膜開始)。
所定時間Aは、1秒から10秒であることが好ましい。
【0055】
所望の膜厚まで成膜材料16aが基板6に成膜されると(成膜終了)、成膜された基板6に対してシャッター14を閉塞姿勢とし、本発明の特徴たる圧力安定化動作を行って、使用する蒸発部10a〜10cを切り替える。
具体的には、
図10のように成膜用開閉弁40aを開状態のままでバイパス開閉弁41aを開状態にし、この状態で
図14に示される成膜終了から所定時間Bが経過すると、
図11のように成膜用開閉弁40aを閉状態にする。
このとき、上記したように相変換部20aの内圧は、成膜室2の内圧と同圧となっており、相変換部20aの内圧が蒸発室30の内圧よりも低圧であるため、蒸発室30内の気体状態の成膜蒸気18aの一部が、蒸発空間29から圧力逃がし流路35を介して相変換部20aに流れ、蒸発室30の内圧が下がる。そのため、成膜室2と蒸発室30との圧力差が小さくなる。それ故に、成膜用開閉弁40aを閉じても、一時的に蒸発室30内の蒸発空間29の蒸気圧が上昇せず、蒸発室30内の蒸発空間29の温度が過度に上昇することもない。これが圧力安定化動作の機能である。
所定時間Bは、1秒から10秒であることが好ましい。
また、相変換部20aでは、変換空間47内が成膜材料16aの気化温度よりも低温になっているため、気体状の成膜蒸気18aの性状が変化し、固化又は液化して相変換部20aの筐体部45内に溜まる。
【0056】
その後、
図14に示される圧力安定化動作から所定時間Cが経過すると、
図12のようにバイパス開閉弁41を再び閉状態にし、成膜の必要に応じて、
図13のように蒸発部10bの成膜用開閉弁40bを開放する(蒸発部切替)。
【0057】
このとき、
図13のように蒸発部10bの坩堝31内から気化又は昇華した成膜蒸気18bが成膜用配管8を通過して成膜材料放出部12に至り、シャッター14に噴霧される。また、蒸発部10a,10cの成膜用開閉弁40a,40cは、閉状態を維持している。
なお、所定時間Cは、1秒から10秒であることが好ましい。
【0058】
その後、再び予備動作から所定時間(所定時間Aに相当)が経過すると、シャッター14を開放姿勢にし、成膜材料放出部12から基板6に気体状の成膜蒸気18bが噴霧される。
【0059】
このように蒸発部10a〜10cを切り替えて、前記と同様の工程を繰り返し、基板6に成膜していく。そして、所望の成膜材料16a〜16cが成膜されると、基板搬送装置5が基板6を成膜室2の外部に搬出する。
以上が、真空蒸着装置1を使用した場合の成膜手順である。
【0060】
ところで、本実施形態の真空蒸着装置1は、上記したように長期間に亘って使用すると、相変換部20a〜20cの筐体部45には、固体又は液体状の成膜材料16a〜16cが溜まる。そのため、メンテナンス時には、相変換部20a〜20cの筐体部45を蓋部46から取り外し、洗浄する。
このときの着脱方法について説明する。蒸発部10aに接続された相変換部20aについて説明し、他の蒸発部10b,10cに接続された相変換部20b,20cについては、同様であるため説明を省略する。
【0061】
まず、成膜用開閉弁40a〜40c、バイパス開閉弁41a〜41c、成膜室側開閉弁42a〜42c、減圧用開閉弁44を閉状態にし、大気開放弁43を開状態にする。このとき、外部から外気が本体部21内の変換空間47内に吸引され、変換空間47と外圧が同圧となる。そのため、変換空間47内への引力が小さくなっており、蓋部46から筐体部45を取り外し易くなっている。
【0062】
その後、一時締結要素49を取り外して、蓋部46から筐体部45を取り外し、筐体部45内を洗浄する。
このとき、バイパス開閉弁41a〜41c、成膜室側開閉弁42a〜42cが閉状態であるため、成膜室2及び蒸発部10が大気に暴露されることはない。
そして、筐体部45の洗浄が終わると、筐体部45のフランジ部52を蓋部46に重ね合わせて取り付け、一時締結要素49で一体化する。このとき、変換空間47が形成される。
【0063】
その後、成膜用開閉弁40a〜40c、バイパス開閉弁41a〜41c、成膜室側開閉弁42a〜42cの閉状態を維持しつつ、大気開放弁43を閉状態にし、さらに減圧用開閉弁44を開状態にする。すなわち、減圧手段55によって変換空間47内の空気を吸引し、変換空間47内を真空状態にする。
変換空間47内が真空状態になると、成膜室側開閉弁42aを開状態にし、減圧用開閉弁44を閉状態にする。
このように、取り外し動作及び取り付け動作のいずれにおいても成膜室2及び蒸発部10aが大気に暴露されることはないため、成膜室2及び蒸発部10aの雰囲気を維持したまま、相変換部20aを洗浄することができる。
【0064】
本実施形態の真空蒸着装置1によれば、1つの成膜室2内で複数の層を成膜することができる。
【0065】
本実施形態の真空蒸着装置1によれば、圧力逃がし流路35によって相変換部20a〜20cに蒸発空間29内の成膜蒸気18a〜18cの一部が逃げるため、成膜用開閉弁40a,40b,40cを閉じた際における蒸発部10a,10b,10cの圧力上昇に起因する温度上昇を抑制することができる。それ故に、坩堝31内の成膜材料16a〜16cの劣化を抑制することができる。
【0066】
上記した実施形態では、蒸発部を3つ内蔵したものについて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、蒸発部の個数は問わない。4つ以上内蔵したものでもよいし、1又は2つ内蔵したものでもよい。
【0067】
上記した実施形態では、蒸発部1つに対して、1つの膜を成膜したが、本発明はこれに限定されるものではなく、共蒸着のように複数の蒸発部に対して1つの膜を成膜してもよい。
【0068】
上記した実施形態では、噴霧孔17が面上に広がりをもって分布したいわゆる、エリアソースと呼ばれる手法によって成膜したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ライン状の噴霧孔が設けられたラインソースと呼ばれる手法によって成膜してもよい。
【0069】
上記した実施形態では、蓋部46に圧力逃がし流路35、吸引用流路36、開放配管37、吸引配管38を直接取り付けたが、本発明はこれに限定されるものではなく、マニホールドで分岐して接続してもよい。
【0070】
上記した実施形態では、使用する蒸発部10a〜10cを切り替える際に圧力安定化動作を行ったが、本発明はこれに限定されるものではなく、成膜中に圧力安定化動作を行ってもよい。このとき、バイパス配管11a(11b,11c)の流路内径R1が成膜用配管8の流路内径R2よりも小さいため、成膜蒸気18a(18b,18c)の大半は成膜用配管8に流れるため、成膜の妨げになりにくい。
【0071】
上記した実施形態では、冷却手段53によって相変換部20a〜20cの変換空間47を所定の温度に制御したが、本発明はこれに限定されるものではなく、相変換部20a〜20cの変換空間47に対応する部位のみ加熱手段を設けず、自然冷却(放熱)で相変換部20a〜20cの変換空間47の温度を低くしてもよい。
【0072】
上記した実施形態では、蒸発室30内に坩堝31を設け、その内部に成膜材料16を充填し、加熱手段32によって加熱したが、本発明はこれに限定されるものではなく、
図16のように蒸発室30内に直接成膜材料16を導入して加熱手段33によって加熱してもよい。