特許第6013073号(P6013073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝三菱電機産業システム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6013073-電動機駆動装置及びその運転方法 図000002
  • 特許6013073-電動機駆動装置及びその運転方法 図000003
  • 特許6013073-電動機駆動装置及びその運転方法 図000004
  • 特許6013073-電動機駆動装置及びその運転方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013073
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】電動機駆動装置及びその運転方法
(51)【国際特許分類】
   H02P 5/46 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
   H02P5/46 K
   H02P5/46 H
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-174695(P2012-174695)
(22)【出願日】2012年8月7日
(65)【公開番号】特開2014-36453(P2014-36453A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2014年11月26日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107928
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正則
(72)【発明者】
【氏名】青木 淳一
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 雅徳
【審査官】 上野 力
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−274677(JP,A)
【文献】 特開2010−233419(JP,A)
【文献】 特開2008−017559(JP,A)
【文献】 特開平07−015804(JP,A)
【文献】 特開2011−195049(JP,A)
【文献】 特表2003−517253(JP,A)
【文献】 特開平06−014405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 5/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2台の蓄電池と、
これら2台の蓄電池の電圧を夫々検出する2台の電圧検出器と、
前記蓄電池に各々接続され、直流電力を交流電力に変換する2台のインバータと、
前記インバータにより夫々駆動され、共通の負荷を駆動する2台の交流電動機と、
前記交流電動機の回転速度を検出する回転検出器と、
前記2台のインバータの各々に電流指令を与える共通制御部と
を具備し、
前記共通制御部は、
前記回転検出器から出力される回転速度検出値と回転速度指令との偏差が小さくなるように制御する速度制御手段と、
前記速度制御手段の出力である全電流指令を、前記2台のインバータに夫々分配すると共に、前記2台の電圧検出器の検出電圧に対応する夫々のインバータの許容最大電流を算定する手段を備えた電流指令分配手段と
を有し、
前記電流指令分配手段は、
前記2台の電圧検出器の検出電圧のうち高い方の電圧を検出した蓄電池に接続された前記インバータに与える前記全電流指令の分配率を50%以上とし、且つ
当該インバータの許容最大電流の前記全電流指令に対する比率が100%以上のとき、当該インバータに与える前記全電流指令の分配率を100%以上として力行運転し、低い方の電圧を検出した蓄電池に接続された前記インバータを回生運転するようにしたことを特徴とする電動機駆動装置。
【請求項2】
前記電流指令分配手段は、
前記2台の電圧検出器の検出電圧のうち高い方の電圧を検出した蓄電池に接続された前記インバータの許容最大電流の、前記速度制御手段の出力である全電流指令に対する比率が50%未満であるときは警報発生等の異常処理を行うようにしたことを特徴とする請求項1に記載の電動機駆動装置。
【請求項3】
回生運転する前記インバータの電流指令を一定にすることにより、一定電流で蓄電池を充電するようにしたことを特徴とする請求項に記載の電動機駆動装置。
【請求項4】
前記電動機を多相巻線とし、前記インバータを多相出力とすることを特徴とする請求項1乃至請求項の何れか1項に記載の電動機駆動装置。
【請求項5】
2台の蓄電池と、
これら2台の蓄電池の電圧を夫々検出する2台の電圧検出器と、
前記蓄電池に各々接続され、直流電力を交流電力に変換する2台のインバータと、
前記インバータにより夫々駆動され、共通の負荷を駆動する2台の交流電動機と、
前記交流電動機の回転速度を検出する回転検出器と、
前記2台のインバータの各々に電流指令を与える共通制御部と
を具備し、
前記共通制御部は、
前記回転検出器から出力される回転速度検出値と回転速度指令との偏差が小さくなるように制御する速度制御手段と、
前記速度制御手段の出力である全電流指令を、前記2台のインバータに夫々分配すると共に、前記2台の電圧検出器の検出電圧に対応する夫々のインバータの許容最大電流を算定する手段を備えた電流指令分配手段と
を有する電動機駆動装置の運転方法であって、
前記電流指令分配手段は、
前記2台の電圧検出器の検出電圧のうち高い方の電圧を検出した蓄電池に接続された前記インバータに与える前記全電流指令の分配率を50%以上とし、且つ
当該インバータの許容最大電流の前記全電流指令に対する比率が100%以上のとき、当該インバータに与える前記全電流指令の分配率を100%以上として力行運転し、低い方の電圧を検出した蓄電池に接続された前記インバータを回生運転するようにしたことを特徴とする電動機駆動装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、2台の異なる電源で電動機を駆動する電動機駆動装置及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車輌、船舶などの分野に使用される電動機駆動装置では、共通の負荷を複数台の電動機で駆動し、これらの電動機を個別の電力変換器で駆動することがある。そして、これら各々の電力変換器の電源は、絶縁された別々の電源から供給される場合がある。このような例として、定格出力の異なる大小2台の電動機を備え、それぞれの電動機の運転範囲を低速領域と高速領域に分離する方法が提案されている(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2003−517253号公報(全体)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示された手法においては、2台の電動機を異なる定格出力とし、運転領域に応じて負荷分担を行っているため、直流電源を個別に設けた場合、電圧が低い方の電源を低速領域側の電動機に接続することにより好適な運転が可能となる。しかし、同程度の定格出力の電動機を備え、同一運転領域で2台の電動機を同時運転するような装置の場合の運転方法については言及されておらず、また、直流電源の電圧に応じて接続切換をする場合は、一旦装置を停止させる必要がある。電源として電池などの直流電源が使われる場合、各装置の運転状況により電源電圧にアンバランスが発生する。アンバランスが発生すると、電圧が低くなった電源側の装置では、電動機の高速回転領域の運転ができなくなる。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、電源電圧が低い側の装置に運転領域が制限されることのない電動機駆動装置および運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の電動機駆動装置及び運転方法は、2台の蓄電池と、これら2台の蓄電池の電圧を夫々検出する2台の電圧検出器と、前記蓄電池に各々接続され、直流電力を交流電力に変換する2台のインバータと、前記インバータにより夫々駆動され、共通の負荷を駆動する2台の交流電動機と、前記交流電動機の回転速度を検出する回転検出器と、前記2台のインバータの各々に電流指令を与える共通制御部とを具備し、前記共通制御部は、前記回転検出器から出力される回転速度検出値と回転速度指令との偏差が小さくなるように制御する速度制御手段と、前記速度制御手段の出力である全電流指令を、前記2台のインバータに夫々分配すると共に、前記2台の電圧検出器の検出電圧に対応する夫々のインバータの許容最大電流を算定する手段を備えた電流指令分配手段とを有し、前記電流指令分配手段は、前記2台の電圧検出器の検出電圧のうち高い方の電圧を検出した蓄電池に接続された前記インバータに与える前記全電流指令の分配率を50%以上とし、且つ当該インバータの許容最大電流の前記全電流指令に対する比率が100%以上のとき、当該インバータに与える前記全電流指令の分配率を100%以上として力行運転し、低い方の電圧を検出した蓄電池に接続された前記インバータを回生運転するようにしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電圧が低い側の装置に運転領域が制限されることのない電動機駆動装置及び運転方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例1に係る電動機駆動装置のブロック構成図。
図2】本発明の実施例1に係る電動機駆動装置の電流指令分配部のブロック構成図。
図3】本発明の実施例1に係る電動機駆動装置の電流指令分配部の動作フローチャートの一例。
図4】本発明の実施例2に係る電動機駆動装置の電流指令分配部のブロック構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0010】
以下、本発明の実施例1に係る電動機駆動装置を図1乃至図3を参照して説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施例1に係る電動機駆動装置のブロック構成図であり、図2は本発明の実施例1に係る電動機駆動装置の電流指令分配部のブロック構成図である。
【0012】
図1において、交流電動機1A、1Bは、夫々インバータ12A、12Bの出力によって駆動され、同一出力軸で連結された共通の負荷3を駆動する。交流電動機1A、1Bの回転速度は同一となり回転検出器2により回転速度が検出される。
【0013】
インバータ12A、12Bは、夫々直流電源11A、11Bから与えられる直流電力を交流電力に変換する。インバータ12A、12Bは、共通制御部13の電流指令分配部22から与えられる夫々の電流指令を元に電流制御を行う。
【0014】
共通制御部13の速度制御部23は、図示しない速度指令と、回転検出器2から与えられる回転速度フィードバックとの偏差を減少させるように全電流指令を生成する。また、電圧検出器21A、21Bは直流電源11A、11Bの電圧を夫々検出し、電流指令分配部22にその検出電圧値を与える。電流指令分配部22は直流電源11A、11Bの各々の電圧と両者の電圧差、全電流指令の大きさ等から、インバータ12A、12Bに与える電流指令値(全電流指令の配分比率)を決定する。
【0015】
例えば、直流電源11A、11Bとして電池などを使用した場合、負荷の片寄りがあると2台の電源電圧にアンバランスが生じてくる。直流電源11Bより直流電源11Aの電圧の方が低い場合は、電源電圧が高い方のインバータ11Aへの電流指令値を大きくし、電源電圧が低い方のインバータ11Bへの電流指令値を小さくすることにより、両者の電圧差を縮めることができる。
【0016】
図2に示す、電流指令分配部22の内部構成において、電流指令比率演算部31は、電圧検出器21A、21Bの各々の検出電圧と、全電流指令値から、インバータ12A、12Bのそれぞれに与える電流指令の分担比率を演算し、その演算結果の比率を、速度制御部23から出力される全電流指令値に乗算することにより、インバータ12A、12Bに与える電流指令を生成する。このように、2台のインバータの電流指令を調整することにより、負荷分担を調整して、2台の直流電源電圧のバランスをとることができる。
【0017】
図3は上記電流指令の分担比率を求めるフローチャートの一例である。このフローチャートによって、図2の電流指令比率演算部31の内部動作の一例を説明する。
【0018】
まず、2台の直流電源のDC電圧及び全電流指令値It*の値を読み込む(ステップST1)。次に、2台のインバータのうち、高いDC電圧のインバータの許容最大電流Ihmを算定する(ステップST2)。この算定は、基本的にはDC電圧値から演算で概略値を求めることが可能であるが、予め容易したテーブルを参照して求めても良い。次に、許容最大電流Ihmの値が全電流指令値It*の何%になるのかを演算し、この比率Rを求める(ステップST3)。次に、上記比率Rが50%以上か判定する(ステップST4)。更に上記比率Rが100%以上か判定する(ステップST5)。ステップST4で上記比率Rが50%未満である場合は運転継続困難であるので警報発生等の何らかの異常処理を行って終了する(ステップST6)。尚、この異常処理は、ステップST1で、高い方のDC電圧の値が所定値以下であることで判定するようにしても良い。
【0019】
ステップST5で比率Rが100%以下である場合は、2台の直流電源21A、21BのDC電圧の差分に応じて2台のインバータ12A、12Bの電流配分率を決定する(ステップST7)。この決定方法は、例えばDC電圧の差分に比例して高いDC電圧のインバータの50%以上の分担比率の上乗せ分を決めるようにしても良く、DC電圧の差分が所定値以上のとき、高いDC電圧のインバータの分担比率を上記比率Rまたはそれに近い一定値とするようにしても良い。
【0020】
ステップST5で比率Rが100%超である場合は、回生運転を行うかどうかを確認する(ステップST8)。この確認は、例えばそのような操作信号があるかどうかで行っても良く、或いは、低いDC電圧のインバータの電圧値が所定値以下であるかどうかによって自動判定しても良い。ステップST8で、回生運転を行わない場合は、ステップST7に進み、回生運転を行う場合は、両インバータの電圧差、比率R等に基づいて充電電流の比率αを定め、高いDC電圧のインバータの電流指令の分担比率を(100+α)%、低いDC電圧のインバータの分担比率を(−α)%として、低いDC電圧のインバータを回生運転することによって蓄電池を充電する。
【実施例2】
【0021】
以下本発明の実施例2に係る電動機駆動装置について図4も参照して説明する。
【0022】
図4は、本発明の実施例2に係る電動機駆動装置の電流指令分配部のブロック構成図である。この実施例2の各部について、図2の本発明の実施例2に係る電動機駆動装置の電流指令分配部の各部と同一部分は同一符号で示し、その説明は省略する。この実施例2が実施例1と異なる点は、電流指令分配部22Aにおいて、モード切替器32、充電電流基準設定器33A、33B及び電流基準切替器34A、34Bを設ける構成とした点である。
【0023】
実施例1で説明したように、2台の直流電源11A、11Bが蓄電池のとき、比率Rが100%超であり、電源電圧の高い方のインバータを力行運転し、電源電圧の低い方のインバータを回生運転する場合、充電電流が一定とならない場合がある。一般に蓄電池の充電は充電電流を一定にすることが好ましいので、図4に示すように、電源電圧の低い方のインバータを回生運転する条件が整ったとき、電流基準比率演算器31Aは、モード切替器32に電源電圧の低い方のインバータを回生運転する指令を与える。モード切替器32はこの指令に従って、電流基準切替器34A、34Bの何れかを充電電流基準設定器33A、33B側に切り替える。これにより、充電電流基準設定器33Aまたは33Bにより設定された一定の電流で電源電圧の低い方のインバータの蓄電池は充電される。
【0024】
尚、図2の電流指令分配部22のままであっても、電源電圧の低い方のインバータを回生運転する条件が整ったときには一定の電流分担比率とするようにすれば上記機能は達成可能である。
【0025】
以上本発明のいくつかの実施例を説明したが、これらの実施例は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施例やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0026】
例えば、1台の電動機にインバータが2台以上接続されていても良い。この場合は、同じ電動機に接続されたN台のインバータへの電流指令を各々N分の1と同一にすることにより、図1に示した2台のインバータの場合と同様の制御を行うことができる。
【0027】
また、電動機の巻線構成を3相巻線に限らず、多相巻線とし、インバータを多相出力としてもよく、同様の制御をすることができる。
【0028】
更に、ノイズ等の影響を防止するために、電流指令分配部からの前回の分担比率を記憶し、その前回値からの変動分についての指令を与えるようにしても良く、この変動分を1次遅れ回路等のフィルタを介して与えるようにしても良い。
【符号の説明】
【0029】
1A、1B 交流電動機
2 回転検出器
3 負荷
11A、11B 直流電源
12A、12B インバータ
13 共通制御部
21A、21B 電圧検出器
22、22A 電流指令分配部
23 速度制御部
31、31A 電流基準比率演算器
32 モード切換器
33A、33B 固定電流基準生成器
図1
図2
図3
図4