(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
減圧可能であって基材を設置可能な成膜室と、基材に対して成膜材料の蒸気を放出する放出開口が複数設けられた成膜材料放出部を有し、成膜材料放出部から成膜材料の蒸気を放出して基材に成膜する真空蒸着装置において、
成膜材料を蒸発させる蒸発部を複数有し、1または複数の蒸発部によって構成される一組の蒸発部グループと、複数の放出開口によって構成される一組の開口グループが接続されて一つの放出系統を形成し、前記放出系統が複数存在する流路構成を備えており、
成膜材料放出部を平面視したとき、各放出開口は略均一に分布し、
放出系統の数をNとしたとき、各放出開口に隣接する放出開口であって距離の近い順に(N−1)個の放出開口は互いに異なる放出系統に属し、且つ各放出開口に隣接する放出開口であって距離の近い順に2個の放出開口を繋ぐ図形が2等辺3角形を構成するものであり、
各放出開口に相当する位置に開口がそれぞれ設けられたシャッター部材を有し、
前記シャッター部材の開口を前記成膜材料放出部の放出開口と一致させることで、前記成膜材料放出部の放出開口が開放状態となり、
前記シャッター部材の開口を前記成膜材料放出部の放出開口からずらすことで、前記成膜材料放出部の放出開口が閉塞状態になるものであり、
前記シャッター部材の開口は、平面視したときに、前記閉塞状態において隣接する放出開口の間に位置することを特徴とする真空蒸着装置。
一の放出開口と、当該一の放出開口から距離の近い順に、前記一の放出開口と同一の放出系統に属する2個の放出開口を繋ぐ図形が正3角形を構成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の真空蒸着装置。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に、本発明の第1実施形態に係る真空蒸着装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0043】
本発明の第1実施形態の真空蒸着装置1は、
図1のように成膜室2と、成膜材料を気化して基板に向かって放出する一連の放出回路3を備えている。
【0044】
成膜室2は気密性を有するものであり、減圧手段7が備えられている。減圧手段7は成膜室2内の空間を真空状態に維持するための機器であり、公知の減圧ポンプである。
なお、ここでいう「真空状態」とは、10
-3(10のマイナス3乗)Pa以下の真空度を有する状態を指す。真空度は低ければ低いほど好ましい。本実施形態の具体的な真空度は1×10
-3(10のマイナス3乗)〜1×10
-9(10のマイナス9乗)Paの範囲であり、1×10
-5(10のマイナス5乗)〜1×10
-9(10のマイナス9乗)Paの範囲が望ましい。
【0045】
成膜室2は、基板(基材)11を搬送する基板搬送装置12を備えており、成膜室2の壁面には、図示しない搬入口と搬出口が設けられている。
基板搬送装置12は、基板11(基材)を搬送する装置であり、成膜室2に対して基板11の出し入れや、所望の成膜位置に基板11を固定する機能を有する。即ち、基板搬送装置12は、基板11を所定の成膜位置まで搬送したり、成膜室2の外部から搬入口を介して成膜室2の内部に基板11を搬入したり、成膜室2の内部から搬出口を介して成膜室2の外部へ基板11を搬入したりすることが可能である。
本実施形態では、成膜室2内に膜厚センサー27,28,29がある。
【0046】
放出回路3は、蒸発部10a〜10jと、マニホールド群6と、成膜材料放出部13と、シャッター部材8によって構成されている。なお、シャッター部材8は、実際には成膜材料放出部13に近接した位置にあるが、
図1では、作図上の理由からシャッター部材8を成膜材料放出部13から離して図示している。
【0047】
蒸発部10a(蒸発部10b〜10j)は、
図2の様に成膜材料16a(成膜材料16b〜16j)を蒸発させる装置であり、蒸発室21と、坩堝22と、加熱手段23,24とをそれぞれ備えている。
蒸発室21には、固体状又は液体状の成膜材料16a(成膜材料16b〜16j)を気体状の成膜蒸気18a(18b〜18j)に変換する蒸発空間25がある。
なお、以下の説明においては、成膜材料16a〜16jの性状を区別するため、蒸気となった成膜材料16(16a〜16j)を成膜蒸気18(18a〜18j)と称する。
【0048】
坩堝22は、所望の成膜材料16を収容する容器である。
加熱手段23は、坩堝22を加熱する部材であり、加熱手段24は、蒸発室21全体を加熱する部材である。加熱手段23,24はともに公知のヒーターを使用している。
即ち坩堝22の周りには、加熱手段23が設けられており、加熱手段23によって成膜材料16a(16b〜16j)を加熱し、気化又は昇華することが可能となっている。蒸発室21の周りにも加熱手段24が設けられており、成膜時において成膜材料16a(16b〜16j)の気化温度よりもやや高い温度に維持することができる。
【0049】
成膜材料16(16a〜16j)は、後述する有機EL装置100の各層を形成する所望の素材である。
成膜材料16の性状は、粉体やペレット状の固体や、半練り状の流動体、あるいは液体などが採用可能である。即ち、成膜材料16は、液状や粉末状、粒状の物質である。なお、本実施形態では、粉末状の成膜材料16を使用している。
【0050】
本実施形態では、10個の蒸発部10a〜10jが、3つの蒸発部グループに分かれている。即ち蒸発部10a〜10dが第1蒸発部グループに属し、蒸発部10e〜10gが第2蒸発部グループに属し、蒸発部10h〜10jが第3蒸発部グループに属する。
【0051】
次にマニホールド群6について説明する。本実施形態において、マニホールド群6は
図3、
図4、
図5、
図6の様に3個のマニホールド部66,67,68によって構成され、マニホールド群6は当該3個のマニホールド部66,67,68が高さ方向に積み重ねられたものである。
マニホールド群6を構成するマニホールド部66,67,68は、
図5の様にいずれも外形形状が略正方形であって板状の本体部37,38,39を持つ。
図6に示す様に本体部37,38,39の内部は空洞である。即ちマニホールド部66,67,68は、
図6に示すように、上板70と下板71及びこれらを繋ぐ周壁72を有し、内部に空洞部73がある。そして各マニホールド部66,67,68の上面(上板70)には、多数の延長管75,76,77が設けられている。なお作図の関係上、延長管の数は、実際よりも相当に少なく図示されている。
【0052】
図5の様に、延長管75,76,77の長さは、マニホールド部66,67,68ごとに異なる。
即ち最上部のマニホールド部(以下、上部マニホールド部)66に設けられた延長管75はいずれも短く、その下のマニホールド(以下、中間マニホールド部)67に設けられた延長管76は中程度の長さを持つ。そして最も下のマニホールド(以下、下部マニホールド部)68に設けられた延長管77は最も長い。
【0053】
各マニホールド部66,67,68は、前記した延長管75,76,77を介して上方に向かって開口している。当該延長管75,76,77の開口は、放出開口80,81,82として機能する。また各マニホールド部66,67,68の属する放出開口80,81,82は、一つの開口グループを構成している。
即ち上部マニホールド部66に付属する放出開口80は、全て第1開口グループに属し、中間マニホールド部67に付属する放出開口81は、全て第2開口グループに属し、下部マニホールド部68に付属する放出開口82は、全て第3開口グループに属する。
【0054】
また各延長管75,76,77の開口端近傍には、
図6、
図7に示すように絞り85,86,87が設けられている。絞り85,86,87の開口面積は、マニホールド部66,67,68ごとに異なる。より具体的に説明すると、第1開口グループに属する放出開口80に設けられた絞り85と、第2開口グループに属する放出開口81に設けられた絞り86と、第3開口グループに属する放出開口82に設けられた絞り87は開口径が異なる。即ち
図7の様に、第1開口グループに属する放出開口80に設けられた絞り85は、開口面積が大きく、第2開口グループに属する放出開口81に設けられた絞り86は、開口面積が中程度である。そして第3開口グループに属する放出開口82に設けられた絞り87は開口面積が小さい。
なお本実施形態では、個々の開口グループに属する放出開口80,81,82に設けられた絞り85,86,87の開口径及び開口面積は同一である。
【0055】
即ち第1開口グループに属する放出開口80に設けられた絞り85は、いずれも例えば0.48平方センチメートルであり、第2開口グループに属する放出開口81に設けられた絞り86は、いずれも0.12平方センチメートルであり、第3開口グループに属する放出開口82に設けられた絞り87は、いずれも0.03平方センチメートルである。
最も大きな放出開口80と最も小さな放出開口80とは、小さな放出開口80とを基準として16倍の開きがある。両者の倍率は、2倍以上30倍以下であることが望ましい。また3段階に開きを設ける場合には、各差が2倍から6倍程度であることが適当である。
【0056】
各マニホールド部66,67,68の本体部37,38,39には、残留蒸気除去手段15が設けられている。残留蒸気除去手段15は、具体的には清掃用のハッチ30と、後記する加熱手段36である。ハッチ30は、
図8の様にネジ31で他の部分に接合されており、ネジ31を外すことにより、他の部分から分離することができる。
また本実施形態では、各マニホールド部66,67,68の全面に加熱手段35,36が設けられている。即ち各マニホールド部66,67,68の本体部37,38,39であって、ハッチ30を除く部分と、各延長管75,76,77に加熱手段35が設けられている。またハッチ30には、別の加熱手段36が設けられている。
加熱手段35,36は共に公知のヒーターを使用している。
【0057】
本実施形態では、各マニホールド部66,67,68の全面に加熱手段35,36が設けられており、成膜時において成膜材料16a(16b〜16j)の気化温度よりもやや高い温度に維持することができる。
また本実施形態では、ハッチ30に設けられた加熱手段36が、他の部位に設けられた加熱手段35から独立している。そして
図8に示すように、ハッチ30に設けられた加熱手段36は、リレー50によってオンオフされ、他の部位に設けられた加熱手段35は、リレー51によってオンオフされる。そのため、ハッチ30に設けられた加熱手段36だけを独立して停止することができる。
【0058】
3個のマニホールド部66,67,68の内、上部マニホールド部66と、その下の中間マニホールド部67には、トンネル管88,89が設けられている。トンネル管88,89は、各マニホールド部66,67の上板70と下板71とをトンネル状に繋ぐものであり、マニホールド部66,67内の空洞部73とは連通しない。
下部マニホールド部68には、トンネル管は無い。
【0059】
トンネル管88,89の数は、上部マニホールド部66の方が中間マニホールド部67よりも多い。即ち上部マニホールド部66であって、中間マニホールド部67のトンネル管89の上部にはトンネル管88があり、さらに上部マニホールド部66には、中間マニホールド部67の延長管76の上部にもトンネル管88がある。
【0060】
前記した様に、3個のマニホールド部66,67,68は、高さ方向に積み重ねられており、上部マニホールド部66に設けられた延長管75は、上部に向かって突出している。
また中間マニホールド部67に設けられた延長管76は、上部マニホールド部66のトンネル管88を通過して上部マニホールド部66の上に突出している。
さらに下部マニホールド部68に設けられた延長管77は、中間マニホールド部67に設けられたトンネル管89と上部マニホールド部66のトンネル管88を通過して上部マニホールド部66の上に突出している。従って、全てのマニホールド部66,67,68に属する放出開口80,81,82は、マニホールド群6の上側にある。また放出開口80,81,82の高さは、すべて同じである。
【0061】
成膜材料放出部13は、前記したマニホールド群6の延長管75,76,77の先端部分と、当該先端部分を固定する板体92によって構成されている。成膜材料放出部13は、板体92の上面に、マニホールド部66,67,68と連通する放出開口80,81,82が平面的な広がりをもって分布している。
【0062】
成膜材料放出部13から突出する放出開口80,81,82のレイアウトは、
図9の通りであり、1つの放出開口80と、当該放出開口80から近い順に2個の放出開口81,82を結ぶ図形が、二等辺三角形を密に並べた形状となる。すなわち、放出開口80と放出開口81を結ぶ辺と、放出開口80と放出開口82を結ぶ辺は等辺となっている。本実施形態では、
図9,
図13のように隣接する放出開口80,81,82を結ぶ図形160が、正三角形となっている。すなわち、放出開口80と放出開口81、放出開口80と放出開口82、放出開口81と放出開口82を結ぶ辺は、それぞれ等辺となっており、平面充填となっている。
なお、
図13において、1,2,3の番号は、属する開口グループを表している。
即ち番号1が付された開口は、第1グループに属する放出開口80であり、番号2が付された開口は、第2グループに属する放出開口81であり、番号3が付された開口は、第3グループに属する放出開口82である。
【0063】
従って1の番号が付された放出開口80には、開口面積が大きい絞り85が設けられており、2の番号が付された放出開口81には、開口面積が中程度の絞り86が設けられている。また3の番号が付された放出開口82には、開口面積が小さい絞り87が設けられている。
【0064】
なお作図の関係上、
図13に図示した放出開口80,81,82は、総数が36個であるが、実際には
図10の様に相当に数が多く、これらが平面的な広がりをもって分布している。
延長管75,76,77の数についても同様である。
【0065】
本実施形態においては、
図13のように一つの開口グループに属する放出開口80,81,82の周囲には、常に異なる開口グループに属する放出開口80,81,82がある。
例えば、第1開口グループに属する放出開口80に隣接する放出開口は、いずれも第2開口グループに属する放出開口81又は第3開口グループに属する放出開口82である。また第2開口グループに属する放出開口81に隣接する放出開口は、いずれも第1開口グループに属する放出開口80又は第3開口グループに属する放出開口82である。第3開口グループに属する放出開口82に隣接する放出開口は、いずれも第1開口グループに属する放出開口80又は第2開口グループに属する放出開口81である。
【0066】
さらに放出開口のレイアウトについて詳細に説明すると、
図14のように放出開口80を基準として、その周りに位置する放出開口は、放出開口81,82によって囲まれており、放出開口81,82は、放出開口80を回転軸として、3回回転対称の関係となっている。
そして、
図14に示されるように放出開口80と、当該放出開口80から距離の近い順に、2個の放出開口80を繋ぐ図形161は二等辺三角形を構成しており、本実施形態では、正三角形を構成している。また、図形161の重心には、放出開口80以外の放出開口、すなわち、放出開口81又は放出開口82が位置している。
同様に、
図15に示されるように放出開口81と、当該放出開口81から距離の近い順に、2個の放出開口81を繋ぐ図形162は二等辺三角形を構成しており、本実施形態では、正三角形を構成している。また、図形162の重心には、放出開口81以外の放出開口、すなわち、放出開口80又は放出開口82が位置している。
同様に、
図16に示されるように放出開口82と、当該放出開口82から距離の近い順に、2個の放出開口82を繋ぐ図形163は二等辺三角形を構成しており、本実施形態では、正三角形を構成している。また、図形163の重心には、放出開口82以外の放出開口、すなわち、放出開口80又は放出開口81が位置している。
このように、隣接する放出開口80,80、放出開口81,81、放出開口82,82間の距離は、いずれも等しく、同一系統に属する放出開口を面上に均等に分布することができるため、位置による膜厚の偏りが起こらず、基板にむらなく成膜することができる。
【0067】
また、
図13のように、図形160の一辺の延伸方向には、放出開口80,放出開口81,放出開口82からなるユニット165,166,167が繰り返された配列となっている。
換言すると、いずれの放出開口80,81,82も図形160の辺の延伸方向(並設方向)において両側に隣接する放出開口は、異なる放出系統に属した放出開口となっている。
【0068】
ユニット165,166,167のそれぞれの延伸方向においては、どのユニット165,165間、ユニット166,166間、ユニット167,167間の放出開口80,80、放出開口81,81、放出開口82,82の距離も等しくなっており、均等に分布されている。
【0069】
シャッター部材8は、前記した各放出開口80,81,82に相当する位置に開口93が設けられた板体であり、エアシリンダー95等の動力源によって水平方向に移動される。
シャッター部材8は、
図12の様に成膜材料放出部13の略全面を覆い得るだけの面積を持っている。またシャッター部材8には、図示しない加熱手段が設けられており、成膜時においては、成膜材料16a(16b〜16j)の気化温度よりもやや高い温度に維持される。
【0070】
次に放出回路の各部材間を繋ぐ接続流路5について説明する。
接続流路5は、
図1のように上部マニホールド部66に成膜蒸気18a〜18dを供給する第1供給流路32と、中間マニホールド部67に成膜蒸気18e〜18gを供給する第2供給流路33と、下部マニホールド部に成膜蒸気18h〜18jを供給する第3供給流路34と、各蒸発部10a〜10jと接続される分岐流路41a〜41jとを有している。
【0071】
また分岐流路41a〜41jの中途には、主開閉弁40a〜40jが設けられている。言い換えると、分岐流路41a〜41jの成膜蒸気18a〜18jの流れ方向の中流には、主開閉弁40a〜40jが位置している。この様に、本実施形態では、蒸発部10a〜10jごとに主開閉弁40a〜40jがある。
主開閉弁40a〜40jは、公知の開閉弁であり、制御装置26の命令を受けて開閉可能となっている。
【0072】
本実施形態の真空蒸着装置1は、3系統の放出系統を備えている。
即ち真空蒸着装置1には、第1蒸発部グループに属する蒸発部10a〜10dと上部マニホールド部66とが第1供給流路32を介して接続され、上部マニホールド部66と、上部マニホールド部66に付随する第1開口グループの放出開口80とが接続されて成る第1放出系統57がある。
また真空蒸着装置1には、第2蒸発部グループの蒸発部10e〜10gと中間マニホールド部67とが第2供給流路33を介して接続され、中間マニホールド部67と、中間マニホールド部67に付随する第2開口グループの放出開口81とが接続されて成る第2放出系統58がある。
さらに真空蒸着装置1には、第3蒸発部グループの蒸発部10h〜10jと下部マニホールド部68とが第3供給流路34を介して接続され、下部マニホールド部68と、中間マニホールド部67に付随する第3開口グループの放出開口82とが接続されて成る第3放出系統59がある。
【0073】
接続流路5には、図示しない加熱手段が取り付けられており、成膜時においては成膜材料16の気化温度以上に加熱されている。そのため、接続流路5内を気体状の成膜蒸気18が通過しても状態変化が起こらず、気体状態のまま各マニホールド部66,67,68まで流れることが可能となっている。それ故に、接続流路5をなす配管の内側面に成膜蒸気18a〜18jが固化して成膜材料16が固着することを抑制することができる。
【0074】
真空蒸着装置1では、
図1のように上部マニホールド部66に膜厚確認用の放出開口46が接続されており、膜厚センサー27に対して成膜材料の蒸気を放出することができる。また中間マニホールド部67に膜厚確認用の放出用開口47が接続され、膜厚センサー28に対して成膜材料の蒸気を放出することができる。さらに下部マニホールド部68に放出用開口48が接続されており、膜厚センサー29に対して成膜材料の蒸気を放出することができる。
そして、真空蒸着装置1は、膜厚センサー27,28,29で読み取った情報を制御装置26に送信される構造となっている。
膜厚センサー27,28,29は、公知の膜厚センサーであり、成膜される膜厚に寄与する情報を制御装置26に送信可能となっている。
制御装置26は、主開閉弁40a〜40jの開閉制御が可能な装置であり、膜厚センサー27,28,29の情報などに合わせて主開閉弁40a〜40jに開閉命令を送信可能となっている。
【0075】
次に、成膜室2と、放出回路3の位置関係について説明する。
本実施形態の真空蒸着装置1では、放出回路3の大部分が成膜室2の外にある。
即ち本実施形態の真空蒸着装置1では、
図1の様に、3個のマニホールド部66,67,68の本体部37,38,39が全て成膜室2の外に設けられている。
そして各マニホールド部66,67,68に付属する延長管75,76,77の先端側と、成膜材料放出部13だけが成膜室2の中に設けられている。
成膜材料放出部13の板体92は水平姿勢に配置されており、放出開口80,81,82はいずれも基板11の方向に向いている。
また膜厚センサー27,28,29は、成膜室2の中にあり、基板11と同一の真空環境に置かれる。
【0076】
また、基板搬送装置12は、
図1のように成膜材料放出部13の放出面から放出方向に所定の距離だけ離れた位置に配されており、シャッター部材8は、その間に配されている。具体的には、シャッター部材8は、基板搬送装置12と成膜材料放出部13の間に設けられている。
前記した様にシャッター部材8は、エアシリンダー95によって水平方向に移動させることができる。また前記した様にシャッター部材8は、成膜材料放出部13の略全面を覆い得るだけの面積を持ち、且つ放出開口80,81,82に相当する位置に開口93が設けられているから、
図12(a)の様にシャッター部材8の開口93を成膜材料放出部13の放出開口80,81,82に一致させると、成膜材料放出部13の全ての放出開口80,81,82が開放状態となる。またエアシリンダー95を動作させてシャッター部材8をずらすと、
図12(b)の様にシャッター部材8の開口93が、成膜材料放出部13の放出開口80,81,82を外れ、成膜材料放出部13の全ての放出開口80,81,82が閉塞状態となる。
【0077】
次に、本発明の真空蒸着装置1を用いて行う有機EL装置100(
図24参照)の成膜方法について説明するが、成膜手順の説明に先立って、成膜開始時の真空蒸着装置1の各部位の状態について説明する。
まず成膜室2について説明すると、成膜室2は、減圧手段7によって常に減圧されており、超高真空状態になっている。ここでいう「超高真空状態」とは、真空度が10
-5Pa以下の状態を表す。
本実施形態の真空蒸着装置1では、成膜室2の外にマニホールド部66,67,68の大部分があるから、成膜室2の容積が小さく、「超高真空状態」に至らせるまでに要する時間は比較的短い。
主開閉弁40a〜40jは、いずれも閉状態になっている。また、それぞれの蒸発部10a〜10jの坩堝22内には所望の成膜材料16a〜16jが充填されている。
【0078】
ここで本実施形態では、坩堝22に入れられる成膜材料16a〜16jは、必要な膜厚が近似するものが同一グループの蒸発部10a〜10jに入れられる様に配慮されている。
図1に示す実施形態では、蒸発部10a〜10jを10個有しており、最大で10種類の組成が違う成膜蒸気18a〜18jを放出することができる。
そのためには、10種類の成膜材料16a〜16jを蒸発部10a〜10jの坩堝22に入れることとなるが、その際に、基板11に要求される膜厚を検討する。そして必要な膜厚が厚い成膜材料グループ(以下、厚膜グループ)と、必要な膜厚が中間的な成膜材料グループ(以下、中間厚膜グループ)と、必要な膜厚が薄い成膜材料グループ(以下、薄膜グループ)にグループ分けする。
【0079】
そして厚膜グループに属する成膜材料16を第1グループの蒸発部10a〜10dに入れる。また中間厚膜グループに属する成膜材料16を第2グループの蒸発部10e〜10gに入れ、薄膜グループに属する成膜材料16を第3グループの蒸発部10h〜10jに入れる。
そして坩堝22の周りに設けられた加熱手段23によって成膜材料16a(16b〜16j)を加熱し、成膜材料16a(16b〜16j)を気化又は昇華させる。また蒸発室21の周りに設けられた加熱手段24によって、蒸発室21内を成膜材料16a(16b〜16j)の気化温度よりもやや高い温度に維持する。
【0080】
また図示しない接続流路5の加熱手段に通電し、接続流路5を成膜材料16a(16b〜16j)の気化温度よりもやや高い温度に保温する。同様に、各マニホールド部66,67,68に設けられた加熱手段35,36に通電し、ハッチ30とその他の本体部37,38,39及び各延長管75,76,77を加熱する。
即ち加熱手段36によってハッチ30を成膜材料16a(16b〜16j)の気化温度よりもやや高い温度に保温する。また加熱手段36によって本体部37,38,39の他の部分及び各延長管75,76,77が加熱され、各マニホールド部66,67,68全体が、成膜材料16a(16b〜16j)の気化温度よりもやや高い温度に維持される。
【0081】
次に、本実施形態の真空蒸着装置1によって実施する有機EL装置100(
図24参照)の成膜手順について説明する。
真空蒸着装置1を用いて有機EL装置100を製造する場合には、図示しない予備室から成膜室2に基板11を搬送する。
ここで図示しない予備室は、予め真空状態となっており、この状態で成膜室2の搬入口(図示せず)を開いて成膜室2に基板11を搬入する。
ここで予備室は、真空状態であるとは言うものの、「超高真空状態」と言える程には減圧されていない。そのため成膜室2の搬入口(図示せず)を開くことによって、成膜室2の真空度が若干低下する場合もある。
【0082】
しかしながら、少なくとも成膜を開始するまでの間は、減圧手段7を運転し続けるので、成膜室2の真空度は「超高真空状態」に回復する。特に本実施形態の真空蒸着装置1では、成膜室2の外にマニホールド部66,67,68の大部分があり、成膜室2の容積が比較的小さいから、低下した真空度を「超高真空状態」に回復するのに多くの時間を要しない。
【0083】
基板搬送装置12によって成膜室2に搬入された基板11は、成膜材料放出部13の噴出面に対向するように固定される。
なお搬送される基板11は、あらかじめ別工程によって透明導電膜などが成膜されており、この状態の基板11が真空蒸着装置1に搬入される。基板上に透明導電膜を成膜する方策としては、スパッタ等の公知手段がある。
【0084】
そして
図12(b)の様にシャッター部材8を閉塞姿勢にすることによって成膜材料放出部13の全ての放出開口80,81,82を閉塞状態とする。即ちシャッター部材8の開口93を成膜材料放出部13の放出開口80,81,82からずらし、成膜材料放出部13の全ての放出開口80,81,82が閉塞状態とする。
【0085】
その後、いずれかの主開閉弁40a〜40jを開く、ここで主開閉弁40a〜40jは蒸発部10a〜10jごとに設けられているから、いずれかの主開閉弁40a〜40jを開くことによって、蒸発部10a〜10jのいずれかで生成された成膜蒸気18a〜18jが、いずれかのマニホールド部66,67,68に導入され、いずれかの開口グループの放出開口80,81,82から放出される。例えば、第1蒸発部グループに属する蒸発部10aに係る主開閉弁40aを開き、他の主開閉弁40b〜40jの閉状態を維持させると、蒸発部10aで作られた成膜蒸気18aだけが、接続流路5の第1供給流路32を経由して上部マニホールド部66に入り、第1開口グループに属する放出開口80の全てから放出される。
【0086】
即ち蒸発部10a内の坩堝22内から気化又は昇華した成膜材料16a(成膜蒸気18a)は、蒸発部10aから主開閉弁40aを通過して分岐流路41aに流れ、さらに第1供給流路32を通過して、上部マニホールド部66に至り、放出開口80の全てから放出される。
【0087】
ここで主開閉弁40aを開いた当初は、放出開口80から放出される成膜蒸気18aが不安定であり、シャッター部材8によって基板11側に至ることが阻止されている。
そして放出開口80から放出される成膜蒸気18aが所定時間Aの経過と共に安定状態となれば、エアシリンダー95によってシャッター部材8を水平方向に移動させ、
図12(a)の様に放出開口80,81,82にシャッター部材8の開口を合わせて成膜材料放出部13の全ての放出開口80,81,82を開放する。しかしながら、前記した様に、本実施形態では、蒸発部10a〜10jごとに主開閉弁40a〜40jがあり、主開閉弁40a〜40jは、選択的に開かれるから、複数設けられた放出開口80,81,82の特定の開口(放出開口80)から特定の成膜蒸気18aが噴射されることとなる。
【0088】
より具体的には、放出開口80,81,82は、3グループに分かれているが、その内の第1開口グループに属する放出開口80からのみ蒸気が放出され、他のグループに属する放出開口81,82からは蒸気は出ない。
また放出開口80から放出される成膜蒸気18は、蒸発部10aによって生成された成膜蒸気18aに限られ、他の蒸発部10b〜10j内の成膜蒸気18b〜18jは放出されない。そのため放出開口80,81,82を全て開放するものの、基板11に蒸着されるのは、蒸発部10aによって生成された成膜蒸気18aに限られる。
【0089】
前記した所定時間A(シャッター部材8を開くまでの待ち時間)は、1秒から10秒であることが好ましい。
シャッター部材8を開放状態とすることによって、基板11に成膜蒸気18aが到達し、基板11に成膜される。
【0090】
ここで成膜蒸気18aを生成する蒸発部10aは、最終的に必要な膜厚が厚い成膜材料グループ(厚膜グループ)に属する成膜材料が導入されている。そして蒸発部10aは、第1蒸発部グループに属し、第1開口グループに連通している。また前記した様に、第1開口グループの放出開口80には、開口面積が最も広い絞り85が設けられている。そのため成膜蒸気18aは、単位時間当たりに放出される量が多い。
従って成膜後の膜厚が厚いものとなり、要求に適合する。
【0091】
成膜時においては、膜厚センサー27によって膜厚に関する情報(成膜量など)を監視しており、常時制御装置26に当該情報を送信している。
膜厚センサー27は、成膜室2内にあり、基板11と同一の真空条件にさらされている。また膜厚センサー27に至る成膜蒸気18は、基板11に成膜されるものと同一であり、かつ同一のマニホールド部66から供給される。そのため膜厚センサー27に付着する膜は、基板11に成膜される膜と強い相関関係があり、基板11の膜厚を正確に反映する。そのため制御装置26は、成膜状況を正確に把握することができる。
【0092】
所望の膜厚まで成膜材料16aが基板11に成膜されると(成膜終了)、
図12(b)の様にシャッター部材8を閉じ、さらに主開閉弁40aを閉じる。
【0093】
そして本実施形態では、シャッター部材8を閉じる動作と前後してマニホールド部66のハッチ30を加熱する加熱手段36だけを停止する。即ち前記した様に、ハッチ30だけが他とは別の加熱手段36によって加熱されており、電源回路も他から独立している。そのため
図8に示すリレー50をオフすることによってハッチ30の加熱手段36だけを停止することができる。
【0094】
その結果、ハッチ30の部位だけが急激に温度が低下し、ハッチ30の部位の温度だけが成膜材料16a(16b〜16j)の気化温度よりも低い温度に低下する。そのためマニホールド部66の本体部37内に残留する成膜蒸気18aが、ハッチ30の部位に触れて固化し、本体部37内に残留する成膜蒸気18aが除去される。即ち本実施形態によると、ハッチ30と加熱手段36とによって構成される残留蒸気除去手段15によって成膜材料の蒸気を冷却して固化又は液化し、成膜材料の蒸気を除去することができる。
ハッチ30を加熱する加熱手段36は、一定時間が経過した後に再起動される。
【0095】
つづいて、他の主開閉弁40を開き、他の蒸発部10内の成膜蒸気18を放出する。例えば主開閉弁40fを開き、蒸発部10f内の成膜蒸気18fを中間マニホールド部67に導入し、第2グループの放出開口81から放出する。この場合も、主開閉弁40fを開いた当初は、シャッター部材8が閉じられており、基板11側に至ることが阻止されている。
所定時間Aが経過するとエアシリンダー95によってシャッター部材8を水平方向に移動させ、放出開口80,81,82にシャッター部材8の開口を合わせて成膜材料放出部13の全ての放出開口80,81,82を開放する。
この場合も、主開閉弁40f以外は閉じられているから、複数設けられた放出開口80,81,82の特定の開口(放出開口81)から、特定の成膜蒸気18fが噴射されることとなる。
【0096】
より具体的には、第2グループに属する放出開口81からのみ蒸気が放出され、他のグループに属する放出開口80,82からは蒸気は出ない。
また放出開口81から放出される蒸気は、蒸発部10fによって生成された成膜蒸気18fに限られ、他の蒸発部10a〜10e、蒸発部10g〜10j内の成膜蒸気18は放出されない。そのため放出開口80,81,82を全て開放するものの、基板が蒸着されるのは、蒸発部10fによって生成された成膜蒸気18fに限られる。
【0097】
ここで成膜蒸気18fを生成する蒸発部10fは、最終的に必要な膜厚が中程度の成膜材料グループ(中間厚膜グループ)に属する成膜材料が導入されている。そして蒸発部10fは、第2蒸発部グループに属し、第2開口グループに連通している。また前記した様に、第2開口グループの放出開口81には、開口面積が中程度の絞り86が設けられている。そのため成膜蒸気18fは、単位時間当たりに放出される量が中程度である。
従って成膜後の膜厚が中程度となり、要求に適合する。
【0098】
所望の膜厚まで成膜材料16fが基板11に成膜されると(成膜終了)、
図12(b)の様にシャッター部材8を閉じ、さらに主開閉弁40fを閉じる。
【0099】
そして先と同様に、シャッター部材8を閉じる動作と前後してマニホールド部67のハッチ30を加熱する加熱手段36だけを停止し、ハッチ30の部位だけを低下させる。その結果、マニホールド部67の本体部38内に残留する成膜蒸気18fが、ハッチ30の部位に触れて固化し、本体部38内に残留する成膜蒸気18fが除去される。
ハッチ30を加熱する加熱手段36は、一定時間が経過した後に再起動される。
【0100】
また例えば主開閉弁40jを開くと、蒸発部10J内の成膜蒸気18jが、第3グループの放出開口82から放出される。成膜蒸気18jを生成する蒸発部10jは、最終的に必要な膜厚が薄い成膜材料グループ(薄膜グループ)に属する成膜材料が導入されている。そして第3開口グループの放出開口82には、開口面積が最も小さい絞り87が設けられているから、成膜蒸気18jは、単位時間当たりに放出される量が少ない。
従って成膜後の膜厚が薄いものとなり、要求に適合する。
【0101】
本実施形態の真空蒸着装置1は、3系統の放出系統を備えているが、有機EL装置100は、多数の薄膜層が積層されたものであるから、各放出系統を複数回使用して基板11に成膜する必要がある。
ここで本実施形態の真空蒸着装置1は、マニホールド部66,67,68の一部(ハッチ30)だけを温度低下させることによってマニホールド部66,67,68内に残留する成膜蒸気18を除去することができる。そのため、一つの有機EL装置100を製造するための工程中、同一の放出系統を複数回使用したり、同一の放出系統を連続して使用しても、マニホールド部66,67,68内で成膜蒸気18が混じることはない。即ち本実施形態は、マニホールド部66,67,68内に異なる成膜蒸気18を導入するが、コンタミを起こす懸念はない。
【0102】
所定層に渡って成膜を終えると、図示しない搬出口を開き、基板搬送装置12によって基板11を搬出する。成膜室2の搬出口(図示せず)を開くことによって、成膜室2の真空度が若干低下する場合もある。
しかしながら、次の基板11が搬入されるまでの間は、減圧手段7を運転し続けるので、成膜室2の真空度は「超高真空状態」に回復する。特に本実施形態の真空蒸着装置1では、本実施形態の真空蒸着装置1では、成膜室2の外にマニホールド部66,67,68の大部分があり、成膜室2の容積が比較的小さいから、低下した真空度を「超高真空状態」に回復するのに多くの時間を要しない。
【0103】
上記した実施形態では、主開閉弁40a〜40jの一つを選択的に開いて基板11に成膜を行った。この方策によると、1つの成膜材料の成分のみで1つの層が蒸着される。即ち前記した方策によると、単蒸着が行われる。
しかしながら本実施形態の真空蒸着装置1の用途は単蒸着に限定されるものではなく、真空蒸着装置1を使用して共蒸着を行うこともできる。即ち、複数の主開閉弁40a〜40jを選択し、これを同時に開くことによって基板11に共蒸着を行うことができる。
例えば、主開閉弁40bと、主開閉弁40gを開き、蒸発部10bによって生成された成膜蒸気18bと蒸発部10gによって生成された成膜蒸気18gを同時に放出して基板11に蒸着を行うことにより、共蒸着を行うことができる。
この場合には、第1グループに属する放出開口80から成膜蒸気18bが放出され、第2グループに属する放出開口81から成膜蒸気18gが放出される。
【0104】
すなわち、共蒸着工程においては、単一の放出系統(第1放出系統57)に属する単一の蒸発部10bで主成膜材料を蒸発させて前記放出系統57に属する放出開口80から主成膜材料の蒸気を放出し、第1放出系統57とは異なる単一の放出系統(第2放出系統58)に属する単一の蒸発部10gで従成膜材料を蒸発させて第2放出系統58に属する放出開口81から従成膜材料の蒸気を放出する。
【0105】
この場合、各膜厚センサー27,28,29には、それぞれ単独のマニホールド部66,67,68から成膜蒸気が放出されるので、共蒸着を実施する際の主成膜材料と従成膜材料の放出量を個別に検知することができる。
【0106】
また同一グループに属する蒸発部10の主開閉弁40を2以上選択して開き、グループに属するマニホールド部66,67,68内で成膜蒸気18を混合して放出しても、共蒸着を行うことができる。
【0107】
次に、有機EL装置100の推奨される層構成について説明する。
有機EL装置100は、
図24のように、透光性を有した基板102上に、第1電極層103と機能層105と第2電極層106が積層し、封止層130によって封止したものである。
【0108】
また、機能層105の構成は、例えば、
図24のように、第1電極層103側から順に、第1正孔注入層107、第1正孔輸送層108、青色発光層109、及び第1電子輸送層110から構成される青色発光ユニットと、第2正孔注入層114、第2正孔輸送層115、赤色発光層116、緑色発光層117、第2電子輸送層118、及び電子注入層119から構成される赤緑発光ユニットとを、第1接続層111、第2接続層112、及び第3接続層113から構成される接続層で電気的に接続(コネクト)したタンデム構造とすることができる。ここで、本発明の真空蒸着装置を用いて、高生産性、かつ、高材料使用効率で、本発明の効果である面内膜厚均一性の効果を十分に引き出す観点からは、各発光ユニットの合計膜厚は50nm〜300nm程度とすることが好ましく、また、各発光層の膜厚は5nm〜50nm程度とすることが好ましい。
【0109】
ここで、青色発光層109をホスト材料に青色蛍光材料をドープした層とし、赤色発光層116、及び緑色発光層117をホスト材料に各々の色の燐光材料をドープした層とすることで、蛍光燐光ハイブリッド構造とすることが、高輝度、高演色性、及び長寿命な有機EL素子を得る観点から好ましい。また、青色発光層109をホスト材料に青色の燐光材料をドープした層とすることも高輝度を得る観点からは好ましい。
このようなタンデム構造の有機EL素子においては、各発光層の膜厚は、各色の発光スペクトル強度と直接関係しており、また、各発光層は、膜厚方向に直列接続され、かつ、膜厚方向に比べて面内方向のキャリアの移動が極端に制限されているので、各発光層の膜厚は、他色の発光スペクトルとも密接に関係する。
また、寿命が長い三重項励起子の発光である燐光を用いるハイブリッド構造の有機EL素子、特に赤色、及び緑色の発光層が隣接していたり、一層からなる場合には、発光が長波長側にレッドシフトしがちであり、各発光層の膜厚を設計通りに制御することが重要となる。
従って、このようなタンデム構造の有機EL素子においては、特に本発明の真空蒸着装置で機能層105を成膜することが有効である。
【0110】
第1正孔注入層107、及び第1正孔輸送層108と、第2正孔注入層114、及び第2正孔輸送層115は、各々、1層の正孔注入輸送層とすることができ、また、各々、正孔輸送材料からなる層、又は、有機p型ドーパントをドープした正孔輸送材料からなる層とすることができる。
【0111】
また、例えば、第1接続層111を有機n型ドーパントをドープした有機電子輸送材料からなる層、第2接続層112を有機電子輸送材料からなる層、第3接続層113を有機p型ドーパントをドープした有機正孔輸送材料からなる層とすることができる。
このようなドーパントや発光材料をドープしたホスト材料からなる共蒸着組成となる層の成膜においては、このようなホスト材料等を本発明に係る主成膜材料とし、このようなドーパントや発光材料を本発明に係る従成膜材料として、大きな本発明に係る絞りを有する開口グループに接続される蒸発部グループに属する蒸発部に主成膜材料を、好ましくは、単独で割り当て、小さな本発明に係る絞りを有する開口グループに接続される蒸発部グループに属する蒸発部に従成膜材料を、好ましくは、単独で割り当てることが好ましく、共蒸着組成を精度良く、安定的に制御可能となる。
【0112】
上述のようなタンデム構造の有機EL素子においては、このような共蒸着組成となる層を複数含むので、本発明の構成により、本発明の効果である、真空を維持したまま、共蒸着の組み合わせの変更の自由度が高い真空蒸着装置を用いて機能層105を形成することは、極めて有効である。
上述の燐光発光層は、本発明に係る主成膜材料であるホスト材料、本発明に係る従成膜材料に含まれ、第1従成膜材料とされる発光性ドーパントを含む、少なくとも2種類の化合物が共蒸着されてなる層とすることが好ましい。これらに加えてさらに、電子、及び/又は、正孔輸送性増強ドーパントとして第2従成膜材料を含む少なくとも3種類の化合物が共蒸着されてなる層とすることも好ましい。第1従成膜材料の好ましい含有量は1〜30重量%であり、より好ましくは1〜10重量%であり、第2従成膜材料の好ましい含有量は1〜30重量%であり、より好ましくは10〜30重量%である。
このような、主成膜材料に対応した開口グループである主開口グループ、第1従成膜材料に対応した開口グループである第1従開口グループ、及び第2従成膜材料に対応した開口グループである第2従開口グループの3つを有する成膜室を含む真空蒸着装置は、機能層として燐光発光層を含む有機EL装置を成膜する装置として、制御性に優れ、かつ、安価であり、好ましい実施態様である。
【0113】
各開口グループに接続される蒸発部グループに複数の蒸発部を属せしめ、好ましくは単独の、蒸発部を切り替えることで、蒸着、及び、複数の開口グループから共蒸着することで、有機機能層の全ての層を一の成膜室で成膜することが、本発明の有機EL装置の製造方法として、好ましい実施態様である。
【0114】
また、異なる方向に放出する2群以上の開口グループを有する真空蒸着装置とし、各グループが3組の開口グループを有するようにすることもできる。同一の本発明に係る蒸発部を本発明に係る供給切替え手段を介して複数の開口グループに接続することで、一の本発明の真空蒸着装置で機能層105の全てを成膜することが好ましい。即ち、前述の電子輸送材料や正孔輸送材料は、異なる層を構成する場合も、同一の蒸発部から同一の材料を蒸発することで供給可能とすることが好ましい。
【0115】
そして、機能層105を構成する各層及び第2電極層106は、真空蒸着装置1によって形成される。
【0116】
基板102は、透光性及び絶縁性を有したものである。基板102の材質については特に限定されるものではなく、例えば、フレキシブルなフィルム基板やプラスチック基板などから適宜選択され用いられる。特にガラス基板や透明なフィルム基板は透明性や加工性の良さの点から好適である。
基板102は、面状に広がりをもっている。具体的には、多角形又は円形をしており、四角形であることが好ましい。本実施形態では、四角形状の基板を採用している。
基板102の最短辺(最短軸)は、300mm以上となっており、350mm以上となっていることが好ましく、500mm以上となっていることが特に好ましい。
基板102の面積は、900cm
2 (平方センチメートル)以上、40000cm
2 (平方センチメートル)以下となっており、1200cm
2 以上、15000cm
2 以下となっていることが好ましく、2500cm
2 以上、11000cm
2 以下となっていることが特に好ましい。
【0117】
第1電極層103の素材は、透明であって、導電性を有していれば、特に限定されるものではなく、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)、インジウム亜鉛酸化物(IZO)、酸化錫(SnO
2 )、酸化亜鉛(ZnO)等の透明導電性酸化物などが採用される。機能層105内の発光層から発生した光を効果的に取り出せる点では、透明性が高いITOあるいはIZOが特に好ましい。本実施形態では、ITOを採用している。
【0118】
第1正孔注入層107,第2正孔注入層114の材料としては、公知の物質を使用することができる。例えば、1,3,5−トリカルバゾリルベンゼン、4,4’−ビスカルバゾリルビフェニル、ポリビニルカルバゾール、m−ビスカルバゾリルフェニル、4,4’−ビスカルバゾリル−2,2’−ジメチルビフェニル、4,4’,4”−トリ(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン、1,3,5−トリ(2−カルバゾリルフェニル)ベンゼン、1,3,5−トリス(2−カルバゾリル−5−メトキシフェニル)ベンゼン、ビス(4−カルバゾリルフェニル)シラン、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(α−NPD)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(1−ナフチル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(NPB)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−co−N−(4−ブチルフェニル)ジフェニルアミン)(TFB)またはポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−co−ビス−N,N−フェニル−1,4−フェニレンジアミン(PFB)等を用いることができる。
【0119】
第1正孔輸送層108,第2正孔輸送層115の材料としては、公知の物質を使用することができる。例えばベンジン、スチリルアミン、トリフェニルメタン、ポルフィリン、トリアゾール、イミダゾール、オキサジアゾール、ポアリールアルカン、フェニレンジアミン、アリールアミン、オキサゾール、アントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、およびこれらの誘導体、ポリシラン化合物、ビニルカルバゾール化合物、チオフェン化合物、アニリン化合物などの複素環式共役系のモノマーやオリゴマー、ポリマーなどが採用できる。
【0120】
青色発光層109の材料としては、ジスチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体、およびそれらの重合体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などを採用できる。なかでも高分子材料のポリビニルカルバゾール誘導体、ポリパラフェニレン誘導体やポリフルオレン誘導体などが好ましい。
【0121】
赤色発光層116の材料としては、クマリン誘導体、チオフェン環化合物、およびそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などが採用できる。なかでも高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリフルオレン誘導体などが好ましい。
【0122】
緑色発光層117の材料としては、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体、およびそれらの重合体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などが採用できる。なかでも高分子材料のポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体などが好ましい。
【0123】
第1電子輸送層110,第2電子輸送層118の材料としては、公知の物質を使用することができる。例えば、ベンジン、スチリルアミン、トリフェニルメタン、ポルフィリン、トリアゾール、イミダゾール、オキサジアゾール、ポアリールアルカン、フェニレンジアミン、アリールアミン、オキサゾール、アントラセン、フルオレノン、ヒドラゾン、スチルベン、およびこれらの誘導体、ポリシラン化合物、ビニルカルバゾール化合物、チオフェン化合物、アニリン化合物などの複素環式共役系のモノマーやオリゴマー、ポリマーなどが採用できる。
特に、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq3)、トリス(5−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(Almq3)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]−キノリナト)ベリリウム(BeBq2)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)−4−フェニルフェノラト−アルミニウム(BAlq)などキノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体等を好ましく用いることができる。また、この他ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾオキサゾラト]亜鉛(Zn(BOX)2)、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−ベンゾチアゾラト]亜鉛(Zn(BTZ)2)などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体なども用いることができる。さらに、金属錯体以外にも、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(OXD−7)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ)、3−(4−tert−ブチルフェニル)−4−(4−エチルフェニル)−5−(4−ビフェニリル)−1,2,4−トリアゾール(p−EtTAZ)、バソフェナントロリン(BPhen)、バソキュプロイン(BCP)なども用いることができる。
【0124】
電子注入層119の材料としては、公知の物質を使用することができる。例えば、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF
2 )等のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属の化合物等が採用できる。また、上記電子注入層として、電子輸送性を有する物質からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属を含有させたもの、例えばAlq3中にマグネシウム(Mg)を含有させたもの等も好ましく用いることができる。
【0125】
第2電極層106の材料は、特に限定されるものではなく、例えば銀(Ag)やアルミニウム(Al)などの金属が挙げられる。
【0126】
本実施形態の真空蒸着装置1によれば、1つの成膜室2内で有機EL装置100のほぼ全層(基板102、第1電極層103、並びに封止層130を除く)を成膜することができる。
【0127】
以上説明した実施形態では、蒸発部10a〜10jは、蒸発室21の中に坩堝22が配されたものであるが、蒸発室21の全体が坩堝の機能を兼ねるものであってもよい。
【0128】
以上説明した実施形態では、いずれも成膜材料放出部13を水平に配置したが、本発明は、この構成に限定されるものではなく、成膜材料放出部13を垂直姿勢に配置してもよい。
【0129】
以上説明した実施形態では、マニホールド部66,67,68に延長管75,76,77を設けたが、例えば最も上段のマニホールド部66については、本体部37に直接放出開口80を設けてもよい。
【0130】
以上説明した実施形態では、マニホールド部66,67,68を3個設けた例を示したが、マニホールド部の数は任意であり、4個以上であってもよい。また3個未満であってもよい。
【0131】
以上説明した実施形態では、10個の蒸発部10a〜10jを有する構成を例示したが、蒸発部10a〜10jの数は任意である。しかしながら、蒸発部10の数は、9個以上であることが望ましく、13個であることがより好ましい。実際には、12個から20個程度が適当である。
【0132】
以上説明した実施形態では、坩堝22に入れられる成膜材料16a〜16jは、必要な膜厚が近似するものが同一グループの蒸発部10a〜10jに入れられる様に配慮したが、これに代わって又はこれに加えて、個々の成膜材料についての蒸気の単位時間あたりの目標放出量や、成膜室内の蒸気の目標分圧を基準としてこれらが近似するものが同一グループの蒸発部10a〜10jに入れられる様に選定してもよい。また放出開口の開口端近傍における蒸気の目標圧力が近似するものが一つのグループとなる様に選択することも推奨される。
【0133】
以上説明した実施形態では、コンタミを防止するために、残留蒸気除去手段15を設けた。即ち真空蒸着装置1では、マニホールド部66,67,68を保温する加熱手段35,36を複数系統とし、マニホールド部66,67,68の一部に故意に低温部分を作ることによって、成膜蒸気18a〜18jを除去した。これをさらに発展させて、マニホールド部66,67,68の一部を強制的に冷却し、残留する成膜蒸気18a〜18jを捕捉してもよい。
【0134】
また上記した実施形態では、低温部分をマニホールド部66,67,68の本体部37,38,39に形成させたが、他の部位に低温部分を作ってもよい。
例えば、
図17、
図18に示す真空蒸着装置62では、他の構成の残留蒸気除去手段78が採用されている。残留蒸気除去手段78は、本体部37,38,39とは別にトラップ空間63を設けたものである。トラップ空間63は常時、マニホールド部66,67,68に比べて低温に保持する。そしてトラップ空間63と本体部37,38,39との間を配管接続する。トラップ空間63と本体部37,38,39には開閉弁64a,b,cを設けることが望ましい。
【0135】
また開閉弁64a,b,cを設ける場合には、トラップ空間63に別途減圧手段65を設け、トラップ空間63を成膜室2と同程度に減圧しておくことが望ましい。
図17、
図18に示す真空蒸着装置62では、一回の成膜を終えるごとに開閉弁64a,b,cを開き、マニホールド部66,67,68とトラップ空間63とを連通させる。その結果、マニホールド部66,67,68からトラップ空間63側に流れ込んだ成膜蒸気18a〜18jが、トラップ空間63内で温度低下して固化し、捕捉される。そのため同一の放出系統を複数回使用したり、同一の放出系統を連続して使用しても、マニホールド部66,67,68内で成膜蒸気18が混じることはない。
【0136】
図17、
図18では、複数のマニホールド部66,67,68に対して一つのトラップ空間63を設けた構成を例示したが、各マニホールド部66,67,68に個別にトラップ空間63を設けてもよい。個別のトラップ空間63を設ける場合には、開閉弁64a,b,cや減圧手段65を設ける必要はない。ただし個別のトラップ空間63を設ける場合には、前記したハッチ30と同様に、別途の加熱手段を設けることが推奨され、成膜を終えた後にトラップ空間63の温度だけを低下させることが望ましい。
【0137】
以上説明した真空蒸着装置1は、3個のマニホールド部66,67,68を持ち、この本体部37,38,39の全てを成膜室2の外に配置した。しかしながら本発明は、この構成に限定されるものではなく、例えば
図19に示す真空蒸着装置96の様に成膜室43内に上部マニホールド部66を配し、他のマニホールド部67,68を成膜室43外に配置してもよい。
また
図20に示す真空蒸着装置97の様に成膜室45内に上部マニホールド部66の本体部37と、中間マニホールド部67の本体部38の上部を配し、中間マニホールド部67の本体部38の下部以下を成膜室45外に配置してもよい。
さらに
図27に示す真空蒸着装置90の様に、マニホールド群6の全てが成膜室91内にあってもよい。
【0138】
本実施形態の真空蒸着装置1,62,96,97は、成膜室2,43,45が小さく、真空引きに要する時間が短い。また配管系統の多くが成膜室2,43,45の外にあるから、メンテナンスも容易である。
特に清掃用のハッチ30が成膜室2,43,45の外にあるから、ハッチ30に付着した成膜材料を除去する作業が容易である。
【0139】
上記した実施形態では、隣接する放出開口80,81,82を結んだ図形が正三角形である場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、結んだ図形が、二等辺三角形であればよい。例えば、直角二等辺三角形の場合でもよい。
【0140】
そこで、以下、近接する放出開口を結んだ図形が直角二等辺三角形の場合のレイアウトについて説明する。
成膜材料放出部13から突出する放出開口80,81,82,155のレイアウトは、
図21の通りであり、1つの放出開口80と、当該放出開口80から近い順に2個の放出開口81,82を結ぶ図形170は、放出開口80を頂角とする直角二等辺三角形となっており、1つの放出開口80と、当該放出開口80から近い順に2個の放出開口82,155を結ぶ図形171は、放出開口80を頂角とする直角二等辺三角形となっている。すなわち、図形170と図形171は、放出開口80,82を結ぶ辺を共通の斜辺としている。そして、2個の図形170と2個の図形171が合わさった放出開口82,81,82,155を結ぶ図形172は菱形の一つである正方形となっている。
すなわち、放出開口80と放出開口81、放出開口80と放出開口82、放出開口80と放出開口155、放出開口80と放出開口82を結ぶ辺は、互いに等辺となっており、平面充填となっている。また、放出開口80の周りに位置する放出開口81と放出開口82、放出開口82と放出開口155、放出開口155と放出開口82、放出開口82と放出開口81も互いに等辺となっている。
なお
図21において、1,2,3,4の番号は、属する開口グループを表している。
即ち、番号1が付された開口は、第1グループに属する放出開口80であり、番号2が付された開口は、第2グループに属する放出開口81であり、番号3が付された開口は、第3グループに属する放出開口82であり、番号4が付された開口は、第4グループに属する放出開口155である。
【0141】
本実施形態においては、一つの開口グループに属する放出開口80,81,82,155の周囲には、常に異なる開口グループに属する放出開口80,81,82,155がある。
例えば、第1開口グループに属する放出開口80の周りを囲む放出開口は、いずれも第2開口グループに属する放出開口81、第3開口グループに属する放出開口82、第4開口グループに属する放出開口155である。
また第2開口グループに属する放出開口81の周りを囲む放出開口は、いずれも第1開口グループに属する放出開口80、第3開口グループに属する放出開口82、第4開口グループに属する放出開口155である。
第3開口グループに属する放出開口82の周りを囲む放出開口は、いずれも第1開口グループに属する放出開口80、第2開口グループに属する放出開口81、第4開口グループに属する放出開口155である。
第4開口グループに属する放出開口155の周りを囲む放出開口は、いずれも第1開口グループに属する放出開口80、第2開口グループに属する放出開口81、第3開口グループに属する放出開口82である。
【0142】
さらに放出開口のレイアウトについて詳細に説明すると、
図21のように、横方向(図形172の放出開口155と放出開口81を繋ぐ方向)においては、放出開口80,放出開口81,放出開口82,放出開口155のユニット176,177が繰り返された配列となっている。
換言すると、いずれの放出開口80,81,82,155も図形172の辺の横方向において両側に隣接する放出開口は、異なる放出系統に属した放出開口となっている。
また、図形170の斜辺の延伸方向には、放出開口80,放出開口81,放出開口82,放出開口155のユニット173,174が繰り返された配列となっている。
換言すると、いずれの放出開口80,81,82,155も図形170の辺の斜辺方向において両側に隣接する放出開口は、異なる放出系統に属した放出開口となっている。
縦方向(横方向に対して直交する方向,同一の放出系統に属する放出開口のうち、最も近接する放出開口間を繋いだ直線方向)では、放出開口80,放出開口82からなるユニット178又は,放出開口81,放出開口155からなるユニット179が繰り返された配列となっている。
このように、放出開口のレイアウトは、縦・横・斜め方向のいずれの方向においても所定のユニットの繰り返しとなっており、ユニット間の同一系統に属する放出開口は等間隔となっている。
そのため、縦・横・斜め方向のいずれの方向においても、同一の放出系統間で膜厚の分布は生じない。
【0143】
また、上記した実施形態では、放出開口80,81,82がそれぞれ、異なる3つの放出系統に属した場合や放出開口80,81,82,155がそれぞれ、異なる4つの放出系統に属した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、放出系統の数は限定されない。例えば、放出開口が6つの放出系統(
図22)に属していてもよいし、放出開口が7つの放出系統(
図23)に属していてもよい。
【0144】
本実施形態の真空蒸着装置1,62,96,90,97では、放出系統57,58,59ごとに絞り85,86,87の大きさを変え、放出系統57,58,59によって成膜蒸気の放出状態を異ならしめた。そして成膜材料の特性に応じて放出系統57,58,59を選定することとしたので、各薄膜層を望ましい成膜条件で成膜することができる。そのため膜の厚さのばらつきが生じ難いという効果がある。
【0145】
また本実施形態の真空蒸着装置1,62,96,90,97で採用するシャッター部材8,120,130,140を採用すると、成膜材料放出部13に大きな逃げしろを確保する必要がなく、放出開口80,81,82を密に配置することができる。
【0146】
最後に上記した実施形態の放出開口のレイアウトについて、本発明の特徴構成を当てはめて説明すると、
図13の場合には、放出系統の数がN=3となり、各放出開口80(番号1)に隣接する放出開口81,82(番号2,3)であって距離の近い順に(3−1)=2個の放出開口81,82(番号2,3)は互いに異なる放出系統に属する。そして、各放出開口80(番号1)に隣接する放出開口81,82(番号2,3)であって距離の近い順に2個の放出開口を繋ぐ図形が2等辺3角形を構成している。
また、
図21の場合には、放出系統の数がN=4となり、各放出開口80に隣接する放出開口(番号2〜4)であって距離の近い順に(4−1)=3個の放出開口(番号2〜4)は互いに異なる放出系統に属する。そして、各放出開口80(番号1)に隣接する放出開口(番号2〜4)であって距離の近い順に2個の放出開口(例えば、番号2,3)を繋ぐ図形が2等辺3角形を構成している。
また、
図22の場合には、放出系統の数がN=6となり、各放出開口(番号1)に隣接する放出開口(番号2〜6)であって距離の近い順に(6−1)=5個の放出開口(番号2〜6)は互いに異なる放出系統に属する。そして、各放出開口(番号1)に隣接する放出開口(番号2〜6)であって距離の近い順に2個の放出開口(例えば、番号3,6)を繋ぐ図形が2等辺3角形を構成している。
また、
図23の場合には、放出系統の数がN=7となり、各放出開口(番号7)に隣接する放出開口(番号1〜6)であって距離の近い順に(7−1)=6個の放出開口(番号1〜6)は互いに異なる放出系統に属する。そして、各放出開口(番号7)に隣接する放出開口(番号1〜6)であって距離の近い順に2個の放出開口(例えば、番号1,3)を繋ぐ図形が2等辺3角形を構成している。
【0147】
以上説明した実施形態では、3系統の放出系統57,58,58を備えており、各放出系統に加熱手段23,24,35,36が設けられている。これらの加熱手段23,24,35,36は、いずれもヒータであり、昇温機能だけを持つものであるが、これに加えて冷却機能を備えたものであってもよい。
例えば
図25の様に、各マニホールド部66,67,68に熱媒体配管198を設けたり、
図26の様に熱媒体ジャケット199を設ける等の方策により、各マニホールド部66,67,68の温度調節を行う構成も推奨される。本実施形態では、熱媒体配管198や熱媒体ジャケット199が熱媒体流路となり、これに高温又は低温の熱媒体を通過させ、各マニホールド部66,67,68の温度調節を行うことができる。
そのためマニホールド部66,67,68の温度を成膜材料に適した温度に調節することができる。そのため気化温度が高い成膜材料を放出し、これに続いて同一の放出系統を利用して気化温度が低い成膜材料を放出する様な場合に、放出系統を冷却することもでき、低温で気化する成膜材料の蒸着の開始を早期に行うことができ、放出させる成膜材料の切り替え時間を短縮することができる。