(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施の形態に係る半導体装置及び半導体装置の製造方法に関して、添付図面を参照して説明する。
【0018】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態に係る半導体装置の構成について説明する。
図1A、
図1B及び
図2は、本実施の形態に係る半導体装置の構成を示す断面図及び平面図である。ただし、
図1A及び
図1Bは
図2のAA’断面を示し、
図1Aは
図1Bの要部を示している。
【0019】
本実施の形態の半導体装置100は、第1配線層150と、第2配線層170と、第1トランジスタ200と、第2トランジスタ300とを具備している。第1配線層150は、第1層間絶縁層152と、第1層間絶縁層152の表面に埋設された第1配線164(、210、310)とを有している。第2配線層170は、第1配線層150上に形成され、第1配線164(、210、310)及び第1層間絶縁層152を覆うキャップ絶縁層171と、第2層間絶縁層172と、第2層間絶縁層172に埋設された第2配線188、289、389とを有している。第1トランジスタ200は、第1配線層150及び第2配線層170内に設けられ、第1導電型(例示:P型)である。第2トランジスタ300は、第1配線層150及び第2配線層170内に設けられ、第1導電型と異なる第2導電型(例示:N型)である。
【0020】
第1トランジスタ200は、第1ゲート電極210と、第1ゲート絶縁膜(171)と、第1酸化物半導体層230と、第1ハードマスク232と、第1サイドウォール240とを備えている。第1ゲート電極210は、第1配線の一つである。第1ゲート絶縁膜(171)は、第1ゲート電極210上に設けられ、キャップ絶縁層171の一部を含む。第1酸化物半導体層230は、第1ゲート絶縁膜(171)上に設けられている。第1ハードマスク232は、第1酸化物半導体層230上に設けられている。第1サイドウォール240は、第2層間絶縁層172とは別に設けられ、第1酸化物半導体層230の側面を覆い、絶縁性を有している。一方、第2トランジスタ300は、第2ゲート電極310と、第2ゲート絶縁膜(171)と、第2酸化物半導体層330と、第2ハードマスク332とを備えている。第2ゲート電極310は、第1配線の他の一つである。第2ゲート絶縁膜(171)は、第2ゲート電極310上に設けられ、第1ゲート絶縁膜(171)とつながり、キャップ絶縁層(171)の他の一部を含む。第2酸化物半導体層330は、第2ゲート絶縁膜(171)上に設けられている。第2ハードマスク332は、第2酸化物半導体層上に設けられている。第1トランジスタ200と第2トランジスタ300は、互いに逆の導電型のトランジスタであり、CMOS(Complementary Metal−Oxide Semiconductor)を構成している。
【0021】
このような構成を取ることにより、第2酸化物半導体層330を成膜するとき、予め第1ハードマスク233下の第1酸化物半導体層230の側面が第1サイドウォール240に覆われていることになる。そのため、第1酸化物半導体層230は、第2酸化物半導体層330の側面と接触することはなくなる。その結果、第1酸化物半導体層230の材料が第2酸化物半導体層330に拡散したり、第2酸化物半導体層330の材料が第1酸化物半導体層230に拡散したりするなど、第1酸化物半導体層230の特性が変質・劣化する可能性がなくなる。これにより、各酸化物半導体層の特性に影響することなくN型半導体層とP型半導体層とを同一配線層内に共存させることが可能となる。また、第1酸化物半導体層230上の絶縁膜が第1ハードマスク232の一層(膜厚d01)であり、第2酸化物半導体層330上の絶縁膜が同じく第2ハードマスク332の一層(膜厚d02)であるから、両者の膜厚を容易に概ね同じ膜厚にすることができる。ソース/ドレイン電極用のコンタクトホールの開口を同じエッチング時間で行うことができる。それにより、各酸化物半導体層のコンタクト特性を概ね同じにすることができる。
【0022】
以下、本実施の形態に係る半導体装置100について、更に説明する。
【0023】
半導体装置100は、半導体基板101と、半導体基板101上に設けられたコンタクト層130と、コンタクト層130上に設けられた配線層140とを更に備えている。半導体基板101は、トランジスタや容量素子に例示される半導体素子を備えている。この図の例では、トランジスタ121、122が形成されている。トランジスタ121、122は素子分離層120で分離されている。コンタクト層130は、半導体基板101上に設けられた層間絶縁層131と、それに埋設されたコンタクト(ソース/ドレイン電極)142とを備えている。配線層140は、層間絶縁層131上に設けられた層間絶縁層132と、それに埋設された配線144とを備えている。トランジスタ121、122のソース/ドレインは、コンタクト(ソース/ドレイン電極)142を介して、配線144に接続されている。
【0024】
第1配線層150は、配線層140上に設けられたキャップ絶縁層151と、キャップ絶縁層151上に設けられた第1層間絶縁層152とを備えている。第1配線層150は、更に、第1層間絶縁層152の表面側に設けられた上述の第1ゲート電極210及び第2ゲート電極310の他に、ビア162及び第1配線164を備えている。ビア162は、下端がキャップ絶縁層151を貫通し、配線144に接続され、上端が第1配線164に接続されている。第1配線164は、第1層間絶縁層152の表面側に設けられている。これら第1配線164、第1ゲート電極210及び第2ゲート電極310は、同じ第1配線層150に設けられている。
【0025】
第2配線層170は、第1配線層150上に設けられたキャップ絶縁層171と、キャップ絶縁層171上に設けられた第2層間絶縁層172とを備えている。第2配線層170は、更に、ビア189及び第2配線188を備えている。ビア189は、下端がキャップ絶縁層171を貫通し、第1配線164に接続され、上端が第2配線188に接続されている。第2配線188は、第2層間絶縁層172の表面側に設けられている。この図の例では、デュアルダマシン構造のビア189及び第2配線188が示されている。
【0026】
第2配線層170は、更に、キャップ絶縁層171上に設けられた第1酸化物半導体層230と、その第1酸化物半導体層230上に設けられた第1ハードマスク232と、第1酸化物半導体層230と第1ハードマスク232の積層体の周囲に設けられたサイドウォール240を備えている。第1ゲート電極210と、キャップ絶縁層171=ゲート絶縁膜と、第1酸化物半導体層230とにより、第1トランジスタ200が構成される。第2配線層170は、更に、コンタクト(ソース/ドレイン電極)289及び第2配線288を備えている。コンタクト289は、下端が第1ハードマスク232を貫通し、第1酸化物半導体層230に接続され、上端が第2配線288に接続されている。第2配線288は、第2層間絶縁層172の表面側に設けられている。この図の例では、デュアルダマシン構造のコンタクト289及び第2配線288が示されている。
【0027】
同様に、第2配線層170は、更に、キャップ絶縁層171上に設けられた第2酸化物半導体層330と、その第2酸化物半導体層330上に設けられた第2ハードマスク332とを備えている。第2ゲート電極310と、キャップ絶縁層171=ゲート絶縁膜と、第2酸化物半導体層330とにより、第2トランジスタ300が構成される。第2配線層170は、更に、コンタクト(ソース/ドレイン電極)389及び第2配線388を備えている。コンタクト389は、下端が第2ハードマスク332を貫通し、第2酸化物半導体層330に接続され、上端が第2配線388に接続されている。第2配線388は、第2層間絶縁層172の表面側に設けられている。この図の例では、デュアルダマシン構造のコンタクト389及び第2配線388が示されている。
【0028】
既述のように、第1トランジスタ200と第2トランジスタ300は、配線層内CMOSを構成している。このCMOS(トランジスタ200、300)は、ゲート電極210、310としての第1配線を有する第1配線層150と、チャネル(酸化物半導体層230、330)及びソース/ドレイン電極(コンタクト289、389)を有する第2配線層170とに跨って形成されている。
【0029】
言い換えると、一方の導電型の第1トランジスタ200はチャネルを第1酸化物半導体層230とし、反対の導電型の第2トランジスタ300はチャネルを第2酸化物半導体層330とする。それぞれのトランジスタは、第1配線層150に形成された第1配線(Cu配線)をゲート電極210、310とし、キャップ絶縁層160をゲート絶縁膜としている。第1トランジスタ200のチャネルである第1酸化物半導体層230と第1ハードマスク232の側壁には、サイドウォール240が形成されている。サイドウォール240は、隣接するトランジスタ間で、素子分離膜の役割を果たしている。ただし、サイドウォール240は、第1ハードマスク232の側面を覆えていなくても、少なくとも第1酸化物半導体層230の側壁を覆っていればよい。
第2配線層170には、下部の第1配線(Cu配線)164との電気的接続をとるビア189が形成されている。同時に第1酸化物半導体層230との電気的接続をとるコンタクト289が第1ハードマスク232を介して形成され、第1トランジスタ200のソース/ドレイン電極となっている。同時に第2酸化物半導体層330との電気的接続をとるコンタクト389が第2ハードマスク332を介して形成され、第2トランジスタ300のソース/ドレイン電極となっている。
第1トランジスタ200がN型で第2トランジスタ300がP型、あるいは、第1トランジスタ200がP型で第2トランジスタ300がN型、のどちらの組み合わせでもよい。第1トランジスタ200と第2トランジスタ300とを直列に接続し、第1ゲート電極210と第2ゲート電極310とを電気的に接続すると、CMOSインバータが形成される。なお、ここでは、本実施の形態として、第1配線164にCu配線を用いた場合を示している。しかし、本実施の形態はその例に限定されるものではなく、Al配線を用いた場合も同様に適用可能である。
【0030】
このCMOSインバータは、例えば第2配線188、ビア189、第1配線164、ビア162、配線144及びコンタクト142を介して、半導体基板101上の半導体素子(例示:トランジスタ121、122)と接続されていても良い。それにより、そのCMOSインバータをスイッチとすることで、半導体基板101上の半導体素子のレイアウトを同一としたまま、その半導体基板を用いて互いに異なる機能を実現することができる。
【0031】
次に、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法について具体的に説明する。
図3A〜
図3Mは、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。各図は、
図2におけるAA’断面に対応している。なお、
図3A〜
図3Mにおいて、半導体基板101、コンタクト層130及び配線層140については記載を省略している。
【0032】
まず、
図3Aに示すように、第1ゲート電極210及び第2ゲート電極310としての第1配線を形成された第1配線層150上に、第1ゲート電極210及び第2ゲート電極310に接して、第1ゲート絶縁膜(171)及び第2ゲート絶縁膜(171)としてのキャップ絶縁層171を形成する工程を実行する。次に、
図3B〜
図3Dに示すように、第1ゲート電極210上方に、キャップ絶縁層171を介して、第1導電型の第1酸化物半導体層230及び第1ハードマスク層232の第1積層構造(230+232)を形成する工程を実行する。続いて、
図3Eに示すように、第1積層構造(230+232)及びキャップ絶縁層171を覆うように、絶縁膜(240)を形成する工程を実行する。その後、
図3Fに示すように、絶縁膜(240)をエッチバックして、第1酸化物半導体層230の側面を覆う第1側壁膜240を形成する工程を実行する。次に、第2ゲート電極310上方に、キャップ絶縁層171を介して、第1導電型と異なる第2導電型の第2酸化物半導体層330及び第2ハードマスク層332の第2積層構造(330+332)を形成する工程を実行する。続いて、第1積層構造(230+232)及び第2積層構造(330+332)を覆うように層間絶縁層172を形成する工程を実行する。その後、層間絶縁層172及び第1ハードマスク232及び第2ハードマスク332を介して、第1酸化物半導体層230及び第2酸化物半導体層330の各々に接続するソース/ドレイン電極(289、389)を形成する工程とを実行する。
【0033】
本実施の形態では、
図3E及び
図3Fの工程に示すように、第1トランジスタ200及び第1ハードマスク232の側面に、サイドウォール240を形成している。サイドウォール240は、露出していた第1酸化物半導体層230の側面を覆い、第1酸化物半導体層230を第2酸化物半導体層330から物理的・化学的・電気的に分離している。従って、このようなサイドウォール240の素子分離膜としての機能により、第1酸化物半導体層230の特性が、第2酸化物半導体層330や前後の工程によって変質・劣化する、ということを防止することができる。
【0034】
加えて、本実施の形態では、上記の素子分離膜を、第1積層構造(230+232)全体を覆う被覆絶縁膜(後述)それ自体ではなく、その被覆絶縁膜を更にエッチバックして形成したサイドウォール240により行う。そのため、「素子分離」後において、第1酸化物半導体層230の上部と第2酸化物半導体層330の上部との間で、ハードマスク及び被覆絶縁膜による膜厚差が発生しない。その結果、コンタクトホール形成時のドライエッチングにおいて、第1酸化物半導体層230の上部と第2酸化物半導体層330の上部とにおいて、一方をエッチングし過ぎることを抑制することができる。それにより、一方の酸化物半導体層が全て消失してしまうケースが無くなる。その結果、配線層内能動素子のCMOS形成において、コンタクト不良に伴う歩留まりの低下を防止することができる。
【0035】
以下、本実施の形態に係る半導体装置100の製造方法について、更に説明する。
【0036】
まず、
図2に示すように、半導体基板101に素子分離層120を形成する。次に、半導体基板101上に半導体素子として例えばトランジスタ121、122を形成する。続いて、コンタクト層130(層間絶縁層131、及びコンタクト142を含む)、及び配線層140(層間絶縁層132及び配線144を含む)を形成する。これらの工程は、従来知られた方法を用いることができる。
【0037】
次に、
図3Aに示すように、配線層140(図示されず)上に、Cu拡散防止用のキャップ絶縁層151、及び、第1層間絶縁層152をこの順に成膜する。キャップ絶縁層151の材料は、窒化シリコン(SiN)や窒化炭化シリコン(SiCN)に例示される。第1層間絶縁層152は、酸化シリコン(SiO
2)または酸化シリコンより誘電率が低い、低誘電率絶縁層であり、SiOC(H)膜やSiLK(登録商標)などの炭素含有膜に例示される。続いて、第1層間絶縁層152に、ビア162、第1配線164、第1ゲート電極210、及び第2ゲート電極310を、シングルダマシン法又はデュアルダマシン法を用いて埋め込む。これにより、第1配線層150が形成される。ビア162、第1配線164、第1ゲート電極210、及び第2ゲート電極310の材料としては、銅(Cu)が例示される。その後、第1層間絶縁層152、第1配線164、第1ゲート電極210、及び第2ゲート電極310を覆うようにキャップ絶縁層171を形成する。キャップ絶縁層171の材料は、窒化シリコン(SiN)や窒化炭化シリコン(SiCN)に例示される。その膜厚は10〜50nm程度である。これらの工程は、銅(Cu)配線層を有する通常の半導体装置と同様の方法で形成される。
【0038】
次に、
図3Bに示すように、キャップ絶縁層171上に、第1トランジスタ200のチャネルとなる第1酸化物半導体層230を、例えばスパッタリング法で形成する。チャネルとして好ましい材料は、InGaZnO(IGZO)層、InZnO層、ZnO層、ZnAlO層、ZnCuO層、NiO層、SnO層、SnO
2層、CuO層、Cu
2O層、Ta
2O
5層、及びTiO
2層に例示される。その膜厚は10〜50nm程度である。続いて、この第1酸化物半導体層230上に、第1ハードマスク232を、例えばプラズマCVD法で形成する。第1ハードマスク232の材料は、酸化シリコン(SiO
2)、酸化炭化シリコン(SiOC)、炭素(C)、及び窒化シリコン(SiN)のような絶縁膜やそれらの組み合わせに例示される。その膜厚は30〜200nm程度であることが好ましい。
【0039】
次に、
図3Cに示すように、第1酸化物半導体層230及び第1ハードマスク232を、通常のフォトリソグラフィ及びドライエッチングを用いてパターニングする。それにより、第1トランジスタ200の素子形状に第1酸化物半導体層230及び第1ハードマスク232が成形される。すなわち、第1トランジスタ200用のチャネルとなる第1酸化物半導体層230が島状に形成される(
図2参照)。その後、
図3Dに示すように、第1ハードマスク232上のレジストを除去する。それにより、表面には、キャップ絶縁層171及び第1ハードマスク232が露出している他、第1ハードマスク232下の島状の第1酸化物半導体層230の側面も露出している。
【0040】
次に、
図3Eに示すように、キャップ絶縁層171及び第1ハードマスク232上に、サイドウォール240となる絶縁膜(以下、被覆絶縁膜240ともいう)を、例えばCVD法により形成する。被覆絶縁膜240(サイドウォール240となる絶縁膜)の材料としては、酸化シリコン(SiO
2)や窒化シリコン(SiN)に例示される。その膜厚は10〜200nm程度である。被覆絶縁膜240は、キャップ絶縁層171及び第1ハードマスク232の表面だけでなく、露出していた第1酸化物半導体層230の側面も覆っている。
【0041】
次に、
図3Fに示すように、被覆絶縁膜240に、全面エッチバックを行う。それにより、第1酸化物半導体層230及び第1ハードマスク232の側面にサイドウォール240が形成される。サイドウォール240は、島状の第1酸化物半導体層230の露出していた側面を覆い、他の膜やプロセスの影響を受けないように保護している。その役割を考慮すると、サイドウォール240は、第1ハードマスク232の側面を覆えていなくても、少なくとも第1酸化物半導体層230の側壁を覆っていればよい。ただし、
図3Lに示すように、安全のために、エッチバックする膜厚を減らして、第1酸化物半導体層230及び第1ハードマスク232の側面にサイドウォール240を形成するときに、キャップ絶縁層171及び第1ハードマスク232上に僅かに被覆絶縁膜240を残存させても良い。
【0042】
次に、
図3Gに示すように、キャップ絶縁層171、第1ハードマスク232、及びサイドウォール240上に、第2トランジスタ300のチャネルとなる第2酸化物半導体層330を、例えばスパッタリング法で形成する。チャネルとして好ましい材料は、InGaZnO(IGZO)層、InZnO層、ZnO層、ZnAlO層、ZnCuO層、NiO層、SnO層、SnO
2層、CuO層、Cu
2O層、Ta
2O
5層、及びTiO
2層に例示される。その膜厚は10〜50nm程度である。続いて、この第2酸化物半導体層330上に、第2ハードマスク332を、例えばプラズマCVD法で形成する。第2ハードマスク332の材料は、酸化シリコン(SiO
2)、酸化炭化シリコン(SiOC)、炭素(C)、及び窒化シリコン(SiN)のような絶縁膜やそれらの組み合わせに例示される。その膜厚は30〜200nm程度であることが好ましい。
【0043】
次に、
図3Hに示すように、第2酸化物半導体層330及び第2ハードマスク332を、通常のフォトリソグラフィ及びドライエッチングを用いてパターニングする。それにより、第2トランジスタ300の素子形状に第2酸化物半導体層330及び第2ハードマスク332が成形される。すなわち、第2トランジスタ300用のチャネルとなる第2酸化物半導体層330が島状に形成される(
図2参照)。その後、
図3Iに示すように、第2ハードマスク332上のレジストを除去する。それにより、キャップ絶縁層171上には、第1トランジスタ200の第1ハードマスク232、第1酸化物半導体層230及びサイドウォール240と、第2トランジスタ300の第2ハードマスク332及び第2酸化物半導体層330が形成される。
【0044】
次に、
図3Jに示すように、キャップ絶縁層171、第1ハードマスク232、サイドウォール240、及び第2ハードマスク332を覆うように、第2層間絶縁層172を形成する。第2層間絶縁層172は、酸化シリコン(SiO
2)または酸化シリコンより誘電率が低い、低誘電率絶縁層であり、SiOC(H)膜やSiLK(登録商標)などの炭素含有膜に例示される。続いて、
図3Kに示すように、第2層間絶縁層172に、ビア189、コンタクト(ソース/ドレイン電極)289、389、及び第2配線188、288、388を、シングルダマシン法又はデュアルダマシン法を用いて埋め込む。これにより、第2配線層170が形成される。ビア189、コンタクト289、389、及び第2配線188、288、388の材料としては、バリア膜としてチタニウム(Ti)/窒化チタニウム(TiN)またはTa/TaNを用いた銅(Cu)が例示される。図示していないが、第2層間絶縁層172に、ビアを形成した後にビアに埋め込まれ第2層間絶縁層172上にも形成されたTiN/Al/TiN/Tiから構成されるパッド電極を用いても良い。
【0045】
以上の工程により、本実施の形態に係る半導体装置100が製造される。
【0046】
なお、
図3Fの代わりに
図3Lに示すように、第1酸化物半導体層230及び第1ハードマスク232の側面にサイドウォール240を形成するとき、キャップ絶縁層171及び第1ハードマスク232上に僅かに被覆絶縁膜240を残存させた場合、最終的な半導体装置100は
図3Kの代わりに
図3Mのようになる。
【0047】
本実施の形態に係る半導体装置の製造方法では、
図3E及び
図3Fの工程に示すように、第1酸化物半導体層230及び第1ハードマスク232の側面に、サイドウォール240を形成している。しかし、そのようなサイドウォール240を形成しないで半導体装置を製造する方法も考えられる。例えば、以下のような方法が考えられる。
【0048】
図4A〜
図4Bは、サイドウォール240を形成しない場合での半導体装置の製造方法(一部)を示す断面図である。
図3Dの工程の後、
図4Aに示すように、直ちに、キャップ絶縁層171、第1酸化物半導体層230、及び第1ハードマスク232上に、第2酸化物半導体層330及び第2ハードマスク332をこの順で成膜する。次に、
図4Bに示すように、第2酸化物半導体層330及び第2ハードマスク332を、通常のフォトリソグラフィ及びドライエッチングを用いてパターニングする。その後は、
図3J及び
図3Kの工程と同じである。
【0049】
上記の
図4A及び
図4Bの工程を用いる製造方法は、
図3E及び
図3Fの工程が無い分だけ工程が簡素化される。しかし、第2酸化物半導体層330を成膜するとき、第1ハードマスク232下の第1酸化物半導体層230の側面が一部露出している(
図4AのP1)。そのため、第2酸化物半導体層330は、第1酸化物半導体層230の側面と接触する。その結果、第2酸化物半導体層330の材料が第1酸化物半導体層230に拡散したり、第1酸化物半導体層230の材料が第2酸化物半導体層330に拡散したり、エッチング残留物によりN型およびP型が接触した領域が残るなど、第1酸化物半導体層230の特性が変質・劣化する可能性がある。
【0050】
そのため、本実施の形態の工程では、
図3E及び
図3Fの工程に示すように、キャップ絶縁層171及び第1ハードマスク232の側面に、サイドウォール240を形成することとしている。サイドウォール240は、露出していた第1酸化物半導体層230の側面を覆い、第1酸化物半導体層230を他の膜(例示:第2酸化物半導体層330)から物理的・化学的・電気的に分離している。従って、このようなサイドウォール240の素子分離膜としての機能により、第1酸化物半導体層230の特性が変質・劣化することを防止することができる。
【0051】
また、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法では、
図3E及び
図3Fの工程に示すように、キャップ絶縁層171及び第1ハードマスク232上に被覆絶縁膜240を形成後、それをエッチバックしてサイドウォール240を形成している。しかし、そのようなエッチバックを行わず、被覆絶縁膜240をそのまま残して半導体装置を製造する方法も考えられる。例えば、以下のような方法が考えられる。
【0052】
図5A〜
図5Dは、サイドウォール用の被覆絶縁膜を残す場合での半導体装置の製造方法(一部)を示す断面図である。
図5A(
図3Eと同じ)の工程の後、
図5Bに示すように、エッチバックを行わずに、直ちに被覆絶縁膜240上に、第2酸化物半導体層330及び第2ハードマスク332をこの順で成膜する。次に、
図5Cに示すように、第2酸化物半導体層330及び第2ハードマスク332を、通常のフォトリソグラフィ及びドライエッチングを用いてパターニングする。その後、
図5Dに示すように、被覆絶縁膜240及び第2ハードマスク332を覆うように第2層間絶縁層172を形成し、第2層間絶縁層172にビア189、コンタクト289、389、及び第2配線188、288、388をシングルダマシン法又はデュアルダマシン法を用いて埋め込む。
【0053】
上記の
図5A乃至
図5Dの工程を用いる製造方法は、
図3Fの工程が無い分だけ工程が簡素化される。加えて、第2酸化物半導体層330を成膜するとき、第1ハードマスク232下の第1酸化物半導体層230の側面は、被覆絶縁膜240に覆われているので、
図4A及び
図4Bの工程で起こり得る第1酸化物半導体層230の特性の変質・劣化を防止できる(
図5BのP2)。すなわち、被覆絶縁膜240は素子分離膜の役割を果たしている。しかし、この製造方法は、以下に示すような問題点が存在する。
【0054】
図5Dに示されるように、第1酸化物半導体層230上部には、第1ハードマスク232と被覆絶縁膜240の積層構造が形成されている(膜厚d1)。一方、第2酸化物半導体層330上部には、第2ハードマスク332のみが形成されている(膜厚d2)。従って、第1トランジスタ200と第2トランジスタ300との間で、酸化物半導体層上の絶縁膜に膜厚差が発生している(Δd1=d1−d2)。このような膜厚差Δd1は、コンタクト289、389のコンタクトホールをエッチングで形成するとき、適正なエッチングをできなくするおそれがある。例えば、コンタクト289用のコンタクトホールに深さを合わせると、コンタクト389のコンタクトホールを掘り過ぎて、第2酸化物半導体層330を突き抜ける可能性がある。また、コンタクト389用のコンタクトホールに深さを合わせると、コンタクト289のコンタクトホールを十分に掘れず、第1酸化物半導体層230に達しない可能性がある。
【0055】
同時に、
図5Dに示されるように、第1トランジスタ200のゲート絶縁膜は、キャップ絶縁層171のみである(膜厚d3)。一方、第2トランジスタ300のゲート絶縁膜は、キャップ絶縁層171と被覆絶縁膜240の積層構造である(膜厚d4)。従って、第1トランジスタ200と第2トランジスタ300との間で、ゲート絶縁膜に膜厚差が発生している(Δd2=d4−d3)。このような膜厚差Δd2は、第1トランジスタ200と第2トランジスタ300とをCMOSインバータとして用いる場合、適切なオン・オフ動作ができない可能性がある。
【0056】
これらの膜厚差Δd1、Δd2は、
図5Dに示すように、被覆絶縁膜240が酸化物半導体層(チャネル)の上部に存在するか、下部に存在するかで発生している。ゲート絶縁膜の膜厚差Δd2は、後述の本実施の形態の変形例などの製造方法を応用することで、解消することが可能である。そして、各酸化物半導体の導電型に最適化したゲート絶縁膜を選ぶことが可能である。一方で、酸化物半導体層上の絶縁膜の膜厚差Δd1に関しては、解消することが困難である。
【0057】
しかし、本実施の形態に係る半導体装置の製造方法により、その問題を解消することができる。
図6は、
図5Dの構造と本実施の形態の構造との相違を示す表である。ここで、「B」は
図5Dの構造を示し、「A」は本実施の形態の構造を示す。また、「NMOS上」は第1酸化物半導体層230上の絶縁層の膜厚を示し、「PMOS上」は第2酸化物半導体層330上の絶縁層の膜厚を示す。「NMOS−HM」は第1ハードマスク232形成時を示す。「NMOS加工」は、チャネル形状に第1ハードマスク232を加工したときを示す。「素子分離」は被覆絶縁膜240の形成時又はその後のエッチバックによるサイドウォール240の形成時を示す。「PMOS−HM」は第2ハードマスク332形成時を示す。「PMOS加工」は、チャネル形状に第2ハードマスク332を加工したときを示す。「ILD」は層間絶縁層1720の形成時を示す。
【0058】
図5Dの構造(「B」)では、先に形成された第1トランジスタ200(「NMOS上」)には、加工後のハードマスク(HM)の残膜(60nm)と素子分離の被覆絶縁膜240(50nm)の積層構造が残る。その結果、第1酸化物半導体230上の膜の膜厚は110nmとなる(「素子分離」)。その後、形成された第2トランジスタ300(「PMOS上」)には、加工後のハードマスク(HM)の残膜(60nm)が残る。その結果、第2酸化物半導体330上の膜の膜厚は60nmとなる(「PMOS加工」)。従って、第1酸化物半導体層230上部と第2酸化物半導体層330上部との間で膜厚差Δd1が生じていた(この表の例では50nm)。このために、コンタクトホール形成時のドライエッチング時間を、第1酸化物半導体層230の上部(NMOS上)に合わせると、第2酸化物半導体層330の上部(PMOS上)でエッチングし過ぎるおそれがある。
【0059】
一方、本実施の形態の構造(「A」)では、素子分離を、被覆絶縁膜240そのものではなく、被覆絶縁膜240をエッチバックして形成したサイドウォール240により行う。そのため、「素子分離」後においても、第1酸化物半導体層230上部と第2酸化物半導体層330上部との間で膜厚差が発生しない。その結果、コンタクトホール形成時のドライエッチング時間が第1酸化物半導体層230上部と第2酸化物半導体層330上部とで同じにすることができる。それにより、一方の酸化物半導体層(この表の例ではPMOS側)が全て消失してしまうケース(コンタクトホールが酸化物半導体層を突き抜けるケース)が無くなる。その結果、配線層内能動素子のCMOS形成において、コンタクト不良に伴う歩留まりの低下を防止することができる。
【0060】
(第1変形例)
図7は、本実施の形態に係る半導体装置の構成の第1変形例を示す断面図である。この
図7の場合を
図1Aの場合と比較すると、第1ハードマスク232及び第1酸化物半導体層230の側面にサイドウォール240を有しているだけでなく、第2ハードマスク332及び第2酸化物半導体層330の側面にもサイドウォール340を有している点で、
図1Aの場合と相違する。以下、相違点について、主に説明する。
【0061】
このような構成は、上記
図3A〜
図3Kの半導体装置の製造方法において、
図3Iの工程と
図3Jの工程との間に、以下の工程を追加すればよい。まず、
図3Eの工程と同様に、キャップ絶縁層171、第1ハードマスク232、サイドウォール240、及び第2ハードマスク332上に、サイドウォール340となる絶縁膜を、例えばCVD法により形成する。次に、
図3Fの工程と同様に、サイドウォール340となる絶縁膜に、全面エッチバックを行う。それにより、第2酸化物半導体層330及び第2ハードマスク332の側面にサイドウォール340が形成される。この場合、サイドウォール240の側面に更にサイドウォール241が残る場合もある。
【0062】
本変形例の場合にも、
図1A、
図1B及び
図2の場合と同様の効果を得ることができる。
更に、このサイドウォール340は、露出していた第2酸化物半導体層330の側面を覆っている。従って、このサイドウォール340により、第2酸化物半導体層330が他の膜やプロセスの影響を受けないように保護することができる。
【0063】
(第2変形例)
図8は、本実施の形態に係る半導体装置の構成の第2変形例を示す断面図である。この
図8の場合を
図1Aの場合と比較すると、キャップ絶縁層171の膜厚が、第1トランジスタ200の位置と第2トランジスタ300の位置とで異なっている点で、
図1Aの場合と相違する。以下、相違点について、主に説明する。
【0064】
Cu拡散防止用のキャップ絶縁層171は、第1酸化物半導体層230の存在しない領域において、第1酸化物半導体層230が存在する領域よりも膜厚差Δdだけ薄くなっている。このような構成は、第1酸化物半導体層230と第2酸化物半導体層330との材料特性の相違から、第1トランジスタ200と第2トランジスタ300との間でゲート絶縁膜の膜厚に差を設けたい場合に有効である。
【0065】
図9A及び
図9Bは、第1の実施の形態に係る半導体装置の第2変形例の製造方法(一部)を示す断面図である。
図3Eの工程後、
図9A(
図3Fと同じ)に示すように、第1酸化物半導体層230及び第1ハードマスク232の側面にサイドウォール240を形成した後に、
図9Bに示すように、更にオーバーエッチ時間を設ける。それにより、第1酸化物半導体層230の存在しない領域のキャップ絶縁層171を選択的に薄くすることが出来る。その後の工程は、
図3G以降の工程と同じである。また、この際の全面エッチバックのオーバーエッチにより、第1ハードマスク232の膜厚を調整することが可能である。
【0066】
本変形例の場合にも、
図1A、
図1B及び
図2の場合と同様の効果を得ることができる。
更に、第1トランジスタ200と第2トランジスタ300との間でゲート絶縁膜の膜厚を互いに異なるように変更が可能となる。
【0067】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態に係る半導体装置の構成について説明する。
図10は、本実施の形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。本実施の形態の半導体装置は、第2トランジスタ300のゲート絶縁膜が2層構造になっている点で、第1の実施の形態の特に第2変形例(
図8、
図9A〜
図9B)の半導体装置と相違する。以下、相違点について、主に説明する。
【0068】
Cu拡散防止用のキャップ絶縁層171は、第1の実施の形態の第2変形例と同様に、第1酸化物半導体層230の存在しない領域において、第1酸化物半導体層230が存在する領域よりも膜厚差Δdだけ薄くなっている。しかし、本実施の形態では、薄くなったキャップ絶縁層171と第2酸化物半導体層330との間に、第2上方ゲート絶縁膜320が形成されている。それにより、例えば、第1トランジスタ200のゲート絶縁膜(171)が
図9Bのようにオーバーエッチングになる場合でも、第1トランジスタ200のゲート絶縁膜と第2トランジスタ300のゲート絶縁膜とを概ね同じ膜厚にすることができる。また、例えば、第2トランジスタ300のゲート絶縁膜を所望の材料(例示:high−k膜)及び膜厚にすることができる。
【0069】
このような構成は、以下の工程により実現できる。まず、第1の実施の形態の第2変形例の
図9Bの工程の後、
図3Gの工程(第2酸化物半導体層330の形成)の前に、第2上方ゲート絶縁膜320を形成する。第2上方ゲート絶縁膜320の材料は、例えば酸化シリコン(SiO
2)、窒化シリコン(SiN)、酸化アルミニウム(AlOx)に例示される。続いて、
図3Gの工程として、更に第2上方ゲート絶縁膜320の上部に第2酸化物半導体層330及び第2ハードマスク332を順次形成する。その後、
図3H及び
図3Iの工程として、第2上方ゲート絶縁膜320、第2酸化物半導体層330、及び第2ハードマスク332に対して、第2トランジスタ300のチャネル形状にパターニングを行う。その際に、第2上方ゲート絶縁膜320も同じ形状に加工する。なお、第2上方ゲート絶縁膜320はパターニングせず、略前面に残存させておいても良い。以降の工程については、
図3J及び
図3Kの工程と同様である。
【0070】
本実施の形態の場合にも、第1の実施の形態の場合と同様の効果を得ることができる。
また、第2酸化物半導体層330の下部に第2上方ゲート絶縁膜320を配置することにより、第1酸化物半導体層230と第2酸化物半導体層330のそれぞれに対して最適な(所望の)ゲート絶縁膜を配置することが可能となる。これにより、ゲートリークの低減、トランジスタの閾値制御、信頼性の向上などを実現することが可能となる。特に、第2トランジスタ300に対しては、材料、膜厚を最適にすることができる。
【0071】
(第3の実施の形態)
第3の実施の形態に係る半導体装置の構成について説明する。
図11は、本実施の形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。本実施の形態の半導体装置は、第1トランジスタ200のゲート絶縁膜及び第2トランジスタ300のゲート絶縁膜がいずれも2層構造になっている点で、第1の実施の形態の半導体装置と相違する。以下、相違点について、主に説明する。
【0072】
Cu拡散防止用のキャップ絶縁層171は、第1配線層150上に均一な膜厚で形成されている。しかし、第1酸化物半導体層230の下部には第1上方ゲート絶縁膜220、第2酸化物半導体層330の下部には第2上方ゲート絶縁膜320が形成されている。従って、例えば、第1トランジスタ200のゲート絶縁膜及び第2トランジスタ300のゲート絶縁膜を、それぞれ所望の材料及び膜厚にすることができる。すなわち、それぞれのゲート絶縁膜を個々に最適化することが可能となる。
【0073】
このような構成は、以下の工程により実現できる。まず、第1の実施の形態の
図3Aの工程の後、
図3Bの工程(第1酸化物半導体層230の形成)の前に、第1上方ゲート絶縁膜220を形成する。続いて、
図3B〜
図3Dの工程において、第1酸化物半導体層230及び第1ハードマスク232をパターニングする際に、第1上方ゲート絶縁膜220も同じ形状に加工する。次に、
図3E〜
図3Fの工程の後、
図3Gの工程(第2酸化物半導体層330の形成)の前に、第2上方ゲート絶縁膜320を形成する。その後、
図3G〜
図3Iの工程において、第2酸化物半導体層330及び第2ハードマスク332をパターニングする際に、第2上方ゲート絶縁膜320も同じ形状に加工する。以降の工程については、
図3J及び
図3Kの工程と同様である。
【0074】
本実施の形態の場合にも、第1の実施の形態の場合と同様の効果を得ることができる。
また、第1酸化物半導体層230の下部に第1上方ゲート絶縁膜220、第2酸化物半導体層330の下部に第2上方ゲート絶縁膜320を配置することにより、第1酸化物半導体層230と第2酸化物半導体層330のそれぞれに対して最適な(所望の)ゲート絶縁膜を配置することが可能となる。これにより、ゲートリークの低減、トランジスタの閾値制御、信頼性の向上などを実現することが可能となる。特に、第1トランジスタ200及び第2トランジスタ300に対して、それぞれ独立に材料、膜厚を最適にすることができる。
【0075】
(第4の実施の形態)
第4の実施の形態に係る半導体装置の構成について説明する。
図12は、本実施の形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。本実施の形態の半導体装置は、第1トランジスタ200及び第2トランジスタ300のゲート絶縁膜の形状が酸化物半導体の形状よりも平面視で広い点で、第3の実施の形態の半導体装置と相違する。以下、相違点について、主に説明する。
【0076】
Cu拡散防止用のキャップ絶縁層171は、第1配線層150上に均一な膜厚で形成されている。しかし、第1酸化物半導体層230と第1ハードマスク232の側面にサイドウォール240が形成されているだけでなく、第2酸化物半導体層330と第2ハードマスク332の側面にもサイドウォール340が形成されている。更に、第1酸化物半導体層230とそれを囲むサイドウォール240との形状に合わせて、その形状の下部に第1上方ゲート絶縁膜220が形成されている。同様に、第2酸化物半導体層330とそれを囲むサイドウォール340との形状に合わせて、その形状の下部に第2上方ゲート絶縁膜320が形成されている。
【0077】
このような構成は、以下の工程により実現できる。
図13A及び
図13Cは、第3の実施の形態に係る半導体装置の製造方法(一部)を示す断面図である。まず、第1の実施の形態の
図3Aの工程の後、
図3Bの工程(第1酸化物半導体層230の形成)の前に、第1上方ゲート絶縁膜220を形成する。続いて、
図3B〜
図3Dの工程において、第1酸化物半導体層230及び第1ハードマスク232をパターニングする際に、第1上方ゲート絶縁膜220は加工しない(
図13A)。次に、
図3E〜
図3Fの工程の後(
図13B)、
図3Gの工程(第2酸化物半導体層330の形成)の前に、第1上方ゲート絶縁膜220を、第1ハードマスク232とサイドウォール240の形状にエッチングで加工する(
図13C)。それにより、第1トランジスタ200側の島状の積層構造が形成される。次に、その積層構造及びキャップ絶縁層171を覆うように、第2上方ゲート絶縁膜320を形成する。続いて、
図3G〜
図3Iの工程において、第2酸化物半導体層330及び第2ハードマスク332をパターニングする際に、第2上方ゲート絶縁膜320は加工しない。
図3Iの工程の後、
図3Jの工程(第2層間絶縁層172の形成)の前に、
図3Eの工程と同様に、第2上方ゲート絶縁膜320及び第2ハードマスク332上に、サイドウォール340となる絶縁膜を、例えばCVD法により形成する。次に、
図3Fの工程と同様に、サイドウォール340となる絶縁膜に、全面エッチバックを行う。それにより、第2酸化物半導体層330及び第2ハードマスク332の側面にサイドウォール340が形成される(この場合、サイドウォール240の側面に更にサイドウォール241が残る場合もある)。その後、第2上方ゲート絶縁膜320を、第2ハードマスク332とサイドウォール340の形状にエッチングで加工する。それにより、第2トランジスタ300側の島状の積層構造が形成される。以降の工程については、
図3J及び
図3Kの工程と同様である。
【0078】
本実施の形態の場合にも、第3の実施の形態の場合と同様の効果を得ることができる。
加えて、ゲート絶縁膜(2層分)をチャネル(酸化物半導体層)より広く取ることが可能となる。上記構造を適用することにより、ゲート絶縁膜端面でのリーク等が大幅に低減し、信頼性の高いデバイスを作製することが可能となる。
【0079】
なお、サイドウォール240、340下の絶縁膜がキャップ絶縁層171の1層分でも良い場合なら、ハードマスク232、332、酸化物半導体層230、330及びゲート絶縁膜220、320を一気にエッチングし、その後にサイドウォール240を形成してもよい。
【0080】
(第5の実施の形態)
第5の実施の形態に係る半導体装置の構成について説明する。
図14は、本実施の形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。本実施の形態は、P型の酸化物半導体層をチャネルとして用いるP型のトランジスタに関するものであり、このようなトラジスタは第1〜第4の実施の形態の半導体装置のトランジスタとして適用可能である。更に、本実施の形態は、それらの半導体装置のトランジスタとしてだけでなく、広くP型の酸化物半導体層と金属との電気的接続や、ワイドバンドギャップ半導体と金属との電気的接続に対しても同様に適用可能である。
【0081】
図14は本実施の形態に係る半導体装置としてのトランジスタの構成の一例を示している。そのトランジスタは、ゲート電極10と、ゲート絶縁膜20と、酸化物半導体層30と、サイドウォール40と、ソース/ドレイン電極(コンタクト)50とを備えている。ただし、酸化物半導体層30はP型である。P型の酸化物半導体層30としては、不純物をドープしたZnO層、ZnAlO層、ZnCuO層、NiO層、SnO層、及びCu
2O層が例示される。また、ソース/ドレイン電極50は、この図に例示されるように、2層構造であっても良い。その場合、ソース/ドレイン電極50は、酸化物半導体層30と接触する第1層50aと、第1層50a上に設けられた第2層50bとを含む。ソース/ドレイン電極50が酸化物半導体層30とオーミック接触可能であれば、第1層50aの膜厚は薄くても良い。ソース/ドレイン電極50の材料については後述される。
【0082】
このトランジスタを上記の各実施の形態に適用する場合、各構成の対応は、例えば以下のようになる。ゲート電極10は、ゲート電極210又は310に対応する。ゲート絶縁膜20は、キャップ絶縁層171(又は171+220又は171+320)に対応する。酸化物半導体層30は、酸化物半導体層230又は330に対応する。サイドウォール40は、サイドウォール240又は340に対応する。ソース/ドレイン電極50は、コンタクト289又は389に対応する。なお、この図では、ハードマスク232又は332の記載は省略している。
【0083】
上記の第1〜第4の実施の形態では、配線層に能動素子(配線能動素子)を設けている。その場合、配線能動素子を用いて回路の全部または一部を形成するためには、N型の配線能動素子及びP型の配線能動素子が必要である。N型の配線能動素子としてはInGaZnOをチャネルとして用いた配線能動素子が例示される。P型の配線能動素子としてはSnOが例示される。ここで、P型の配線能動素子を実現するためには、P型の導電性を有する酸化物半導体が必要であるが、これらは主として2eV以上のバンドギャップを有するワイドギャップ半導体である。一般に、ワイドギャップ半導体では、伝導帯端が真空準位から見て深さ4eV前後に位置するのに対して、価電子帯端は6〜7.5eVに位置する。一方で、通常の金属は、3.8〜5.65eV程度の仕事関数を有する。これよりP型ワイドギャップ半導体と金属とを接触すると、通常はショットキー障壁を生じる。一方、ワイドギャップ半導体を用いたP型電界効果トランジスタやP/N接合利用デバイスにおいて、P型半導体とコンタクト用の金属との間にオーミック接触を形成することは、デバイスの寄生抵抗低減のために重要である。
【0084】
特許文献2及び非特許文献3には、P型酸化物半導体SnOを用いたP型の電界効果トランジスタが開示されている。このトランジスタは、YSZ基板上に形成されたP型酸化物半導体SnOをチャネルとし、その上部に形成されたa−Al
2Oxをゲート絶縁膜とし、NiとAuを積層にした金属をソース/ドレイン電極及びゲート電極としている。また、非特許文献4には、P型酸化物半導体SnOを用いたP型の電界効果トランジスタが開示されている。このトランジスタは、ゲート電極を兼ねるn
+−Si基板上に形成されたSiNx層をゲート絶縁膜とし、その上部に形成されたP型酸化物半導体SnOをチャネルとし、SnOに接する形態で形成されたPt金属をソース/ドレイン電極としている。
【0085】
上記特許文献2、非特許文献3、及び非特許文献4の電界効果トランジスタでは、金属としては仕事関数が5eVより大きいNiやAuやPtを用い、P型酸化物半導体SnOに対する接触抵抗を低減しようとしている。しかし、発明者が検討したところ、今回新たに以下の事実を見出した。すなわち、P型酸化物半導体に、上記の金属をコンタクト用の金属として用いた場合、コンタクト用の金属とP型酸化物半導体との間に大きな接触抵抗すなわちショットキー障壁による寄生抵抗が発生し、様々なP型半導体特性を測定するための障害となっている。そのため、コンタクト用の金属とP型酸化物半導体との間の接触抵抗を最小限にする材料・プロセスの実現が課題となっている。
【0086】
そこで、本実施の形態では、P型の酸化物半導体層30と接続するコンタクト用の金属として、導電性酸化物を用いる。すなわち、ソース/ドレイン電極50の少なくとも第1層50a用の材料として、導電性酸化物を用いる。導電性酸化物は、価電子帯がP型の酸化物半導体の価電子帯とほぼ同位置に存在するため、オーミックコンタクトを形成するのに適しているからである。これにより、P型の酸化物半導体への低接触抵抗が実現できる。なお、第2層50bの材料は、第1層50aの材料と同じでも良いし、第1層50aの材料とオーミック接触が可能な他の導電性酸化物又は金属材料であってもよい。
【0087】
コンタクト用の材料である導電性酸化物としては、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化ルテニウム(RuO
2)、酸化チタニウム(TiOx)、酸素欠損した酸化物半導体、金属などをドープした酸化物半導体が例示される。この場合での酸化物半導体は、チャネルとして使用可能な上述の酸化物半導体について、酸素欠損の程度が異なるものや、金属の種類やドーピングの程度が異なるものを含んでいる。また、その酸化物半導体は、価電子帯が深いP型酸化物半導体が好ましく、価電子帯が酸化物半導体層30の酸化物半導体よりも深いことがより好ましい。
【0088】
ここで、N型の酸化物半導体に対しては、コンタクト用の材料として、上記のような導電性酸化物ではなく、金属を用いることができる。従って、N型の配線能動素子及びP型の配線能動素子の両方を用いる回路(例示:第1〜第4の実施の形態)では、N型の配線能動素子とP型の配線能動素子とは、コンタクト用の材料として互いに異なる材料を用いることになる。
【0089】
本実施の形態の半導体装置を製造する場合、以下のような方法が考えられる。すなわち、N型の配線能動素子及びP型の配線能動素子の両方を用いる回路を製造する場合、コンタクト形成において作り分けプロセスを導入する。具体的には、例えば、上記第1〜第4の実施の形態の場合、上記
図3Kの工程において、P型の酸化物半導体層へのソース/ドレイン電極の形成時に、N型の酸化物半導体層の側はハードマスクなどによりマスキングを行う。同様に、N型の酸化物半導体層へのソース/ドレイン電極の形成時に、P型の酸化物半導体層の側はハードマスクなどによりマスキングを行う。また、ソース/ドレイン電極50として、第1層50aと第2層50bの積層構造を用いる場合、第1層50a用の膜と第2層50b用の膜の積層膜を形成する。
【0090】
図15は、コンタクト用の材料と酸化物半導体層との接触の特性を示すグラフである。縦軸はコンタクト用の材料と酸化物半導体層(例示:SnO)との間の電流を示し、横軸はコンタクト用の材料と酸化物半導体層との間の電圧を示す。図に示されるように、コンタクト用の材料として金(Au)を用いた場合、電流と電圧とは比例関係にあるが、接触抵抗が大きく、電流が小さいことが分かる。これは、ショットキー障壁の影響と考えられる。一方、コンタクト用の材料として導電性酸化物の一つである酸化ルテニウム(RuO
2)を用いた場合、電流と電圧とは比例関係にあり、かつ、接触抵抗が小さく、同じ電圧でも電流が大きいことが分かる。すなわち、接触抵抗の小さい良好なオーミック接触が得られていることが分かる。この場合、ソース/ドレイン電極50として、一層の酸化ルテニウム(RuO
2)を用いていることになる。
【0091】
本実施の形態の構造では、導電性酸化物をP型の酸化物半導体層30へのコンタクト形成に用いることにより、酸化物同士のバンド構造で価電子帯をアラインすることが可能となる。それにより、P型の酸化物半導体層へのオーミックコンタクトを形成することが可能となる。また、このような導電性酸化物は、2eV以上のバンドギャップを有するワイドギャップ半導体(例示:GaN、SiC)にも適用可能である。
【0092】
(第6の実施の形態)
第6の実施の形態に係る半導体装置の構成について説明する。
図16は、本実施の形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。本実施の形態の半導体装置は、ソース/ドレイン電極(コンタクト)として、界面層50cを用いる点で、第5の実施の形態の半導体装置と相違する。以下、相違点について、主に説明する。
【0093】
本実施の形態では、ソース/ドレイン電極50(少なくとも第1層50a)の材料として、酸化物半導体層30の酸化物半導体との間で界面層50cを形成する材料を用いる。そのような材料としては、チタニウム(Ti)のような金属が例示される。そのような材料を用いてソース/ドレイン電極(コンタクト)を形成すると、ソース/ドレイン電極50と酸化物半導体層30との界面において、ショットキー効果を低減可能又はオーミック接触を形成可能な界面層50cが形成される。それにより、P型の酸化物半導体層30への低接触抵抗が実現できる。
【0094】
例えば、そのような材料(例示:Tiのような金属)は、P型の酸化物半導体(例示:SnO)と接触すると、以下のような現象が生じると考えられる。その接触部分において、その材料に酸化物半導体から微量の酸素を引き抜き、酸化物半導体を若干還元する。その結果、酸化物半導体側には、その還元作用により、金属的に改質された層(メタリックな層)が形成される(例示:Sn)。一方、その材料側には、引き抜いた酸素による酸化作用により、金属酸化物層が形成される(例示:TiOx)。このような界面構造により、例えば、酸化物半導体の空乏化が抑制されて、バンド曲がりが低減されることで、ショットキー効果の低減が起こる、などのメカニズムの発生が考えられる。従って、そのような材料は、オーミックコンタクトを形成するのに適している。この場合、金属的に改質された層と金属酸化物層とを併せた界面構造を界面層50cと見ることができる。
【0095】
従って、界面層50cは、ソース/ドレイン電極の材料と酸化物半導体層の材料とが何らかの反応をした層ということができる。具体的には、例えば、ソース/ドレイン電極側の材料中の元素の一部、及び、酸化物半導体側の材料中の元素の一部、の一方又は両方が相手側に拡散して、ソース/ドレイン電極や酸化物半導体が部分的に変質した層、ということもできる。もしくは組成が徐々に変化するような組成のグラデーションがある層という場合もあり得る。その界面層50cは、ソース/ドレイン電極側にあっても良いし、酸化物半導体側にあっても良いし、両側にあっても良い。
【0096】
本実施の形態の半導体装置を製造する場合、第5の実施の形態と同様の方法を用いることができる。その場合、コンタクト用の材料としては、上述のような酸化物半導体との間で界面層50cを形成する材料を用いる。必要に応じて、加熱処理等を行い、界面層50cの形成を促しても良い。
【0097】
図17は、コンタクト用の材料と酸化物半導体層との接触の特性を示すグラフである。縦軸はコンタクト用の材料と酸化物半導体層(例示:SnO)との間の電流を示し、横軸はコンタクト用の材料と酸化物半導体層との間の電圧を示す。図に示されるように、コンタクト用の材料として金(Au)を用いた場合、電流と電圧とは比例関係にあるが、接触抵抗が大きく、電流が小さいことが分かる。これは、ショットキー障壁の影響と考えられる。一方、コンタクト用の材料として導電性酸化物の一つであるチタニウム(Ti)/酸化ルテニウム(RuO
2)を用いた場合、電流と電圧とは比例関係にあり、かつ、接触抵抗が小さく、同じ電圧でも電流が大きいことが分かる。すなわち、接触抵抗が小さく良好なオーミック接触が得られていることが分かる。この場合、ソース/ドレイン電極50として、第1層50aのチタニウム(Ti)と第2層50bの酸化ルテニウム(RuO
2)という2層構造を用いていることになる。そして、チタニウム(Ti)と酸化物半導体層(SnO)との境界に界面層50cが形成される。
【0098】
本実施の形態の構造では、界面層50cをP型の酸化物半導体層30へのコンタクト部分に導入することにより、酸化物の還元などにより、ショットキー効果を低減することができる。それにより、P型の酸化物半導体層へのオーミックコンタクトを形成することが可能となる。また、このような導電性酸化物は、2eV以上のバンドギャップを有するワイドギャップ半導体(例示:GaN、SiC)にも適用可能である。
【0099】
(第7の実施の形態)
第7の実施の形態に係る半導体装置の構成について説明する。本実施の形態の半導体装置は、ソース/ドレイン電極として、N型の酸化物半導体とP型の酸化物半導体とで製造時に同じ材料を用いる点で、第6の実施の形態の半導体装置と相違する。以下、相違点について、主に説明する。
【0100】
本実施の形態では、一例としてCMOS構造において、N型電界効果型トランジスタ(NFET)チャネルとなるN型の酸化物半導体層30としてInGaZnOを用い、P型電界効果型トランジスタ(PFET)チャネルとなるP型の酸化物半導体層30としてSnOを用いている。そして、N型の酸化物半導体層30のInGaZnO及びP型の酸化物半導体層30のSnOのいずれのソース/ドレイン電極50としても、製造時にチタニウム(Ti)/アルミニウム(Al)又はアルミニウム合金(AlCu)を用いる。この場合、第1層50aがチタニウム(Ti)であり、第2層50bがアルミニウム(Al)又はアルミニウム合金(AlCu)である。
【0101】
本実施の形態の半導体装置を製造する場合、第1〜第4の実施の形態と同様であり、第5〜第6の実施の形態のようなコンタクト形成で作り分けプロセスを導入する必要はない。すなわち、N型の酸化物半導体層30及びP型の酸化物半導体層30のいずれのソース/ドレイン電極50としても、製造時にチタニウム(Ti)/アルミニウム(Al)を形成する。
【0102】
この場合、発明者の検討から、以下の知見が明らかとなった。製造後において、N型の酸化物半導体層30のInGaZnOと第1層50aのTiとの界面では、Ti/AlのTiはメタリックに保たれる。すなわち、界面層50cは、第1層50aと同じTiということができる。そのため、InGaZnOへの低抵抗コンタクトが可能となっている。一方、P型の酸化物半導体層30のSnOと第1層50aのTiとの界面については以下のようになる。
図18は、本実施の形態に係る半導体装置のP型酸化物半導体層とソース/ドレイン電極との界面の組成を模式的に示す断面図である。この図は、その界面をXPS(X線光電子分光法)により評価した図である。この図に示すように、P型酸化物半導体層30(SnO)とソース/ドレイン電極50(Ti/Al)との界面おいて、Ti/AlのSnO側にあるTiは、SnOから部分的に酸素を引き抜き、SnOを低抵抗化すると共に、自身を酸化してTiOxとなることが分かった。そして、界面層50cは、第1層50aと異なり、TiOx/SnOx(x<1)遷移層ということができる。TiOx/SnOx遷移層では、TiOxとSnOxとの比率と酸化数が徐々に変化し、SnOの還元とTiOx/SnOxの共存が見られた。Tiに近い側では、TiOxが支配的であり、上記第6の実施の形態のようにTiOxはP型の酸化物半導体への低抵抗コンタクトに有効であるため、このプロセスによりSnOへの低抵抗コンタクトが可能となる。
【0103】
これらのコンタクト用の材料について、以下のように評価を行った。
図19は、本実施の形態に係る半導体装置の特性を計測した素子構造を示す断面図である。ここでは、コンタクト用の材料の特性を評価するために、この図のような素子構造に基づいて、CV特性を測定している。その素子構造は、SiO
2膜付きSi基板上に、P型酸化物半導体としてSnO膜(100nm)を設け、その上にゲート絶縁膜としてSiO
2膜(50nm)を設けている。ゲート絶縁膜上には、一方の電極としてゲート電極のAu膜を設けている。また、SnO膜上には更に他方の電極として、本実施の形態に係るコンタクト材料の膜(Metal)を設けている。
【0104】
図20は、本実施の形態に係る半導体装置の特性(評価結果)を示すグラフである。
図19において、縦軸は容量を示し、横軸は電圧を示している。図に示されるように、コンタクト材料の膜(Metal)として、Au(金)の膜を用いた場合と比較して、Ti(第1層50a)/AlCu(第2層50b)を用いた場合の方が、容量Cの値を高くすることができる。これは、接触部分での寄生抵抗成分が減少して、容量Cの値が回復したためと考えられる。なお、第5の実施の形態で説明した酸化物導電体であるIn(ITO)を用いた場合でも、同様の理由から容量Cの値を高くすることができる。
【0105】
このように、本実施の形態では、N型の酸化物半導体とP型の酸化物半導体とにおいて、製造時には、コンタクト用の材料として同じ材料を用いるが、製造後に検査すると、コンタクト用の材料として異なる材料となっていることが分かる。すなわち、本実施の形態では、P型酸化物半導体へのコンタクトをN型酸化物半導体へのコンタクトと同じ材料(例示:Ti)を用いて形成する。しかし、結果として、P型酸化物半導体へのコンタクトはN型酸化物半導体のコンタクトとは別の材料(例示:Tiに対してTiOx)となっている。言い換えると、互いに異なる酸化物半導体(例示:InGaZnOとSnO)に対して異なる挙動(例示:TiとTiOx)を示す材料(例示:Ti)を用いている。それにより、作り分けプロセスを導入しなくても、両者に対してそれぞれ適した低抵抗コンタクト(P型酸化物半導体へのオーミックコンタクトを含む)形成が可能である。
【0106】
第5〜第7の実施の形態部は、以下の付記のようにも記載され得るが、以下には限定されない。
(付記1)
CMOSを構成する一方のトラジスタとしての第1導電型の第1トランジスタ(200)と、
前記CMOSを構成する他方のトランジスタとしての前記第1導電型と異なる第2導電型の第2トランジスタ(300)と
を具備し、
前記第1トランジスタ(200)と前記第2トランジスタ(300)とは、ソース/ドレイン電極(289/389)の材料又は特性が異なる
半導体装置。
(付記2)
付記1に記載の半導体装置において、
前記第1トランジスタ(200)及び前記第2トランジスタの各々は、
ゲート電極(210/310)と、
前記ゲート電極(210、310)上に設けられたゲート絶縁膜(171)と、
前記ゲート絶縁膜(171)上に設けられた酸化物半導体層(230/330)と、
前記酸化物半導体層(230/330)上に設けられた前記ソース/ドレイン電極(289/389)と
を備え、
前記第1トランジスタ(200)及び前記第2トランジスタ(300)のうちのいずれか一方であるP型トランジスタにおける前記ソース/ドレイン電極(289/389)は、前記P型トランジスタのP型酸化物半導体層としての前記酸化物半導体層(230/330)と接触する部分が、導電性酸化物又は他のP型酸化物半導体を含む
半導体装置。
(付記3)
付記2に記載の半導体装置において、
前記接触する部分が、酸化ルテニウム、酸化インジウムスズ及び酸化チタニウムの群から選択される少なくとも一つの材料を含む
半導体装置。
(付記4)
付記1に記載の半導体装置において、
前記第1トランジスタ(200)及び前記第2トランジスタの各々は、
ゲート電極(210/310)と、
前記ゲート電極(210、310)上に設けられたゲート絶縁膜(171)と、
前記ゲート絶縁膜(171)上に設けられた酸化物半導体層(230/330)と、
前記酸化物半導体層(230/330)のソース/ドレイン電極(289/389)と
を備え、
前記第1トランジスタ(200)及び前記第2トランジスタ(300)のうちのいずれか一方であるP型トランジスタにおける前記ソース/ドレイン電極(289/389)は、前記P型トランジスタのP型酸化物半導体層としての前記酸化物半導体層(230/330)と接触する部分が、前記酸化物半導体層及び前記ソース/ドレイン電極(289/389)の少なくとも一方を部分的に変質した界面層(50c)を生成する金属を含む
半導体装置。
(付記5)
付記4に記載の半導体装置において、
前記接触する部分が、酸化チタニウムを含む
半導体装置。
(付記6)
付記5に記載の半導体装置において、
前記第1トランジスタ(200)及び前記第2トランジスタ(300)のうちの他方であるN型トランジスタにおける前記ソース/ドレイン電極(289/389)は、前記N型トランジスタのN型酸化物半導体層としての前記酸化物半導体層(230/330)と接触する部分が、チタニウムを含む
半導体装置。
【0107】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、各実施の形態及びその変形例の技術は、技術的矛盾の発生しない限り、他の実施の形態にも適用可能である。