特許第6013085号(P6013085)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013085
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】樹脂製インテークマニホールド
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/104 20060101AFI20161011BHJP
   F02M 35/10 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   F02M35/104 N
   F02M35/104 A
   F02M35/10 301P
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-185400(P2012-185400)
(22)【出願日】2012年8月24日
(65)【公開番号】特開2014-43787(P2014-43787A)
(43)【公開日】2014年3月13日
【審査請求日】2015年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 皓太
(72)【発明者】
【氏名】高橋 弘信
【審査官】 安井 寿儀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−236018(JP,A)
【文献】 特開2009−221859(JP,A)
【文献】 特開2006−057509(JP,A)
【文献】 特許第4328693(JP,B2)
【文献】 米国特許第7451732(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/10
F02M 35/104
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スロットルボディが取り付けられるスロットルボディ取付部(3)と、サージタンク(5)と、多気筒エンジン(E)の吸気ポートに連通される吸気通路(7)とが吸気流れ方向下流側へ向かって順に配置接続され、上記吸気通路(7)の上流側が上記サージタンク(5)の下側から反エンジン(E)側へ延びるとともに、下流側がサージタンク(5)の反エンジン(E)側を上方へ湾曲状に延びた後、エンジン(E)側へ延びるように形成された多気筒エンジン(E)の樹脂製インテークマニホールドであって、
エンジン(E)側に位置するエンジン側マニホールド構成部材(11)と、該エンジン側マニホールド構成部材(11)の反エンジン(E)側に位置する反エンジン側マニホールド構成部材(13)と、上記エンジン側マニホールド構成部材(11)及び反エンジン側マニホールド構成部材(13)の間に位置する中間マニホールド構成部材(15)とに分割され、
上記吸気通路(7)の上流側及び上記サージタンク(5)は、上記エンジン側マニホールド構成部材(11)及び上記中間マニホールド構成部材(15)によって構成され、
上記吸気通路(7)の下流端は、前記サージタンク(5)の上方で且つエンジン(E)側に位置し、且つ上記エンジン側マニホールド構成部材(11)によって構成され、
上記エンジン側マニホールド構成部材(11)の上記吸気通路(7)上流端におけるエンジン(E)側の壁内面(11f)は、反エンジン(E)側に向かって上方に傾斜し、
上記中間マニホールド構成部材(15)は一体成形物であり、該中間マニホールド構成部材(15)の上記吸気通路(7)上流端において上記エンジン(E)側の壁内面(11f)と対向する反エンジン(E)側の壁内面(15h)は、反エンジン(E)側に向かって上方に傾斜し、且つ前記サージタンク(5)の下壁内面(5a)と繋がり、
前記サージタンク(5)の下壁内面(5a)は、前記吸気通路(7)の下流端側に向かって解放された縦断面凹形状に形成され、
前記下壁内面(5a)のエンジン(E)側及び反エンジン(E)側の両側面は、当該下壁内面(5a)の底面から開口に向かって互いに離れる方向に延びており、
前記下壁内面(5a)の両側面のうちエンジン(E)側の側面は、反エンジン(E)側に向かって下方に傾斜する傾斜面であり、
上記中間マニホールド構成部材(15)において上記サージタンク(5)の下壁内面(5a)と対向する上壁内面(5b)は、上記傾斜面と平行又は該傾斜面よりも大きな勾配で反エンジン(E)側に向かって下方に傾斜し
上記エンジン側マニホールド構成部材(11)と上記中間マニホールド構成部材(15)との分割面(17)は、上記サージタンク(5)の下壁内面(5a)の開口に対応しており、上記サージタンク(5)の下壁内面(5a)に対応する位置で反エンジン(E)側に向かって上方に傾斜している
ことを特徴とする樹脂製インテークマニホールド。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂製インテークマニホールドにおいて、
上記吸気通路(7)の上流開口(7a)と下流端の通路中心軸(7b)とのなす角度(θ)は、0°よりも大きく90°未満である
ことを特徴とする樹脂製インテークマニホールド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の樹脂製インテークマニホールドにおいて、
前記吸気通路(7)は、一方向に並んで複数設けられ、
前記スロットルボディ取付部(3)と、該スロットルボディ取付部(3)に連通するサージタンク(5)の吸気導入口(19)とは、隣り合う前記吸気通路(7)の間に形成されている
ことを特徴とする樹脂製インテークマニホールド。
【請求項4】
請求項3に記載の樹脂製インテークマニホールドにおいて、
前記スロットルボディ取付部(3)は、前記吸気導入口(19)から反エンジン(E)側に向かって延び、且つ上方に向かって曲がっている
ことを特徴とする樹脂製インテークマニホールド。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の樹脂製インテークマニホールドにおいて、
前記吸気導入口(19)は、前記吸気通路(7)の上流端よりも下方に位置している
ことを特徴とする樹脂製インテークマニホールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多気筒エンジンの樹脂製インテークマニホールドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば特許文献1に開示されているように、直列多気筒エンジンの各吸気ポートにそれぞれ接続される複数の吸気通路を備えたインテークマニホールドを樹脂で成形することが知られている。
【0003】
特許文献1の樹脂製インテークマニホールド100は、4つの気筒が一直線状に配置された直列4気筒エンジンに装着され、スロットル弁を有するスロットルボディが取り付けられる円筒状のスロットルボディ取付部130と、このスロットルボディ取付部130内と連通するサージタンク150と、サージタンク150と連通し各気筒の吸気ポートに連通される4つの独立した吸気通路170とで一体に構成されている。
【0004】
図10に上記インテークマニホールド100の縦断面図を示す。サージタンク150はインテークマニホールド100の上下方向略中央部に配置され、このサージタンク150の上側にスロットルボディ取付部130が配置されている。4つの吸気通路170は、エンジンの気筒列方向に並んで配置され、この気筒列方向から見てサージタンク150周りに巻き付けられている。具体的には、各吸気通路170上流端がサージタンク150の下壁内面150aに開口し、各吸気通路170上流側がサージタンク150の下方を通り反エンジン側(図10において右側)へ向かって下方へ湾曲して延びている。さらに、吸気通路170の下流側がサージタンク150の反エンジン側を上方へ湾曲状に延びた後、エンジン側へ向かって湾曲状に延びている。
【0005】
この樹脂製インテークマニホールド100は、エンジン側に位置するエンジン側マニホールド構成部材111と、このエンジン側マニホールド構成部材111の反エンジン側に位置する反エンジン側マニホールド構成部材113と、これらエンジン側マニホールド構成部材111と反エンジン側マニホールド構成部材113との間に位置する中間マニホールド構成部材115とに分割されている。いずれの構成部材も射出成形品である。
【0006】
上記中間マニホールド構成部材115には、上記サージタンク150の反エンジン側を構成するサージタンク構成部115aが形成されている。このサージタンク構成部115aは、エンジンの気筒列方向から見てエンジン側に開口しており、サージタンク150の上壁内面150bがエンジン側に向かって上方に傾斜した後に平坦に延びる一方、下壁内面150aがエンジン側に向かって下方に傾斜している。この中間マニホールド構成部材115を成形する際には、固定型と上記サージタンク構成部115aに対応する形状の凸部が設けられた可動型との間に形成されるキャビティに溶融樹脂を射出充填し、溶融樹脂を冷却固化させて射出成形品を成形した後に可動型を図10の白抜き矢印方向に後退させ、その後、射出成形品を脱型する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4328693号公報(第5〜6頁、図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、エンジンの種類等により、サージタンクの容量と吸気通路の容量及び長さとを任意に設定しながらもコンパクトにしたいという要求がある。この要求を満たすために、サージタンクの形状を工夫しつつ、エンジンの気筒列方向から見て、各吸気通路のサージタンクに巻き付く角度(以下、「巻き付き角度」とする)を270°よりも大きくしなければならない場合がある。
【0009】
上記樹脂製インテークマニホールド100において巻き付き角度を270°よりも大きくする場合、吸気通路170下流端が接続するエンジンの吸気ポートの位置が定まっているため、当該下流端を延長することはできない。したがって、吸気通路170上流端を上方に延長せざるを得ない。
【0010】
吸気通路170上流端を延長するには、例えば、上記下壁内面150aの吸気通路170側端部を上方に湾曲させることにより、エンジン側マニホールド構成部材111及び中間マニホールド構成部材115によって吸気通路170の延長部分を形成することが考えられる。しかしながら、上記下壁内面150aを上方に湾曲させると、サージタンク構成部115aがアンダーカット形状となり、中間マニホールド構成部材115の製造に手間がかかるという問題がある。
【0011】
また、上記両構成部材111,115で吸気通路170の上流端を延長するのではなく、この上流端からサージタンク150に臨む筒状の別部材を設けることも考えられる。しかしながら、別部材を設けると、部品点数が増え、製造に手間がかかるとともに製造コストが高くなるという問題がある。
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、部品点数を抑え、かつ中間マニホールド構成部材のサージタンク構成部がアンダーカット形状になるのを回避しつつ、コンパクトな樹脂製インテークマニホールドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、本発明は、エンジン側マニホールド構成部材及び中間マニホールド構成部材において、サージタンク及び吸気通路を構成する部分の構造を工夫したものである。
【0014】
具体的には、本発明は、スロットルボディが取り付けられるスロットルボディ取付部と、サージタンクと、多気筒エンジンの吸気ポートに連通される吸気通路とが吸気流れ方向下流側へ向かって順に配置接続され、上記吸気通路の上流側が上記サージタンクの下側から反エンジン側へ延びるとともに、下流側がサージタンクの反エンジン側を上方へ湾曲状に延びた後、エンジン側へ延びるように形成された多気筒エンジンの樹脂製インテークマニホールドを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0015】
第1の発明は、インテークマニホールドが、エンジン側に位置するエンジン側マニホールド構成部材と、該エンジン側マニホールド構成部材の反エンジン側に位置する反エンジン側マニホールド構成部材と、上記エンジン側マニホールド構成部材及び反エンジン側マニホールド構成部材の間に位置する中間マニホールド構成部材とに分割された構成を有する。上記吸気通路の上流側及び上記サージタンクは、上記エンジン側マニホールド構成部材及び上記中間マニホールド構成部材によって構成されている。上記吸気通路の下流端は、前記サージタンクの上方で且つエンジン側に位置し、且つ上記エンジン側マニホールド構成部材によって構成されている。上記エンジン側マニホールド構成部材の上記吸気通路上流端におけるエンジン側の壁内面は、反エンジン側に向かって上方に傾斜している。上記中間マニホールド構成部材は一体成形物であり、該中間マニホールド構成部材の上記吸気通路上流端において上記エンジン側の壁内面と対向する反エンジン側の壁内面は、反エンジン側に向かって上方に傾斜し、且つ前記サージタンクの下壁内面と繋がっている。前記サージタンクの下壁内面は、前記吸気通路の下流端側に向かって解放された縦断面凹形状に形成されている。前記下壁内面のエンジン側及び反エンジン側の両側面は、当該下壁内面の底面から開口に向かって互いに離れる方向に延びている。前記下壁内面の両側面のうちエンジン側の側面は、反エンジン側に向かって下方に傾斜する傾斜面である。上記中間マニホールド構成部材において上記サージタンクの下壁内面と対向する上壁内面は、上記傾斜面と平行又は該傾斜面よりも大きな勾配で反エンジン側に向かって下方に傾斜している。そして、第1の発明は、上記エンジン側マニホールド構成部材と上記中間マニホールド構成部材との分割面が、上記サージタンクの下壁内面の開口に対応しており、上記サージタンクの下壁内面に対応する位置で反エンジン側に向かって上方に傾斜していることを特徴とする。
【0016】
第2の発明は、第1の発明の樹脂製インテークマニホールドにおいて、上記吸気通路の上流開口と下流端の通路中心軸とのなす角度、0°よりも大きく90°未満であることを特徴とする。
【0017】
第3の発明は、第1又は第2の発明の樹脂製インテークマニホールドにおいて、前記吸気通路が、一方向に並んで複数設けられた構成を有する。そして、第3の発明は、前記スロットルボディ取付部と、該スロットルボディ取付部に連通するサージタンクの吸気導入口とが、隣り合う前記吸気通路の間に形成されていることを特徴とする。
【0018】
第4の発明は、第3の発明の樹脂製インテークマニホールドにおいて、前記スロットルボディ取付部が、前記吸気導入口から反エンジン側に向かって延び、且つ上方に向かって曲がっていることを特徴とする。
【0019】
第5の発明は、第3又は第4の発明の樹脂製インテークマニホールドにおいて、前記吸気導入口が、前記吸気通路の上流端よりも下方に位置していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
第1の発明によれば、吸気通路の上流側がエンジン側マニホールド構成部材及び中間マニホールド構成部材によって構成されている。このうちエンジン側マニホールド構成部材には、吸気通路上流端のエンジン側の壁内面が形成され、中間マニホールド構成部材には、このエンジン側の壁内面と対向する反エンジン側の壁内面が形成され、この反エンジン側の壁内面が反エンジン側に向かって上方に傾斜している。さらに、中間マニホールド構成部材には、サージタンクの下壁内面が縦断面凹形状に形成されており、このサージタンク下壁内面が上記の反エンジン側の壁内面と繋がっていて、当該下壁内面の両側面が底面から開口に向かって離れる方向に延びており、そのうちエンジン側の側面が反エンジン側に向かって下方に傾斜した傾斜面とされている。したがって、吸気通路の上流端をサージタンク側に延ばすことができる。よって、吸気通路の巻き付き角度を270°以上にすることができる。これにより、吸気通路の上流端に別途部材を設けることなく、吸気通路の上流端を延長することができる。
【0021】
また、中間マニホールド構成部材において、サージタンクの上壁内面及び下壁内面が互いに平行又は反エンジン側に向かって互いに接近するように形成され、さらに、エンジン側マニホールド構成部材と中間マニホールド構成部材との分割面におけるサージタンクに対応する部位が反エンジン側に向かって上方に傾斜している。そうすると、エンジン側に行くに従って上方に傾斜する方向から見て、サージタンクを構成する部分がアンダーカット形状にならない。したがって、このサージタンクを構成する部分に対応する形状のスライド型を用意し、射出成形時にこのスライド型を斜め上方にスライドさせることにより、中間マニホールド構成部材を簡単に製造することができる。
【0022】
第2の発明によれば、巻き付き角度が270°より大きく、360°未満の吸気通路を形成することができる。したがって、コンパクトな樹脂製インテークマニホールドを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る樹脂製インテークマニホールドを反エンジン側から見た全体斜視図である。
図2図1のII-II線矢視断面図である。
図3】エンジン側マニホールド構成部材の全体斜視図である。
図4】中間マニホールド構成部材の全体斜視図である。
図5】反エンジン側マニホールド構成部材の全体斜視図である。
図6】中間マニホールド構成部材の成形型を模式的に示した図である。
図7】樹脂製インテークマニホールドの分解斜視図である。
図8】エンジン側マニホールド構成部材を中間マニホールド構成部材に溶着する工程を示す断面図である。
図9】エンジン側マニホールド構成部材及び中間マニホールド構成部材の組立体に反エンジン側マニホールド構成部材を溶着する工程を示す断面図である。
図10】従来の樹脂製インテークマニホールドを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る多気筒エンジンの樹脂製インテークマニホールド1全体を示す斜視図である。図2は、図1のII-II線矢視断面図である。このインテークマニ
ホールド1は、4本の気筒が一直線状に配置された直列4気筒エンジンEに装着される。インテークマニホールド1は、スロットル弁を有するスロットルボディ(図示せず)が取り付けられる円筒状のスロットルボディ取付部3と、このスロットルボディ取付部3内と連通するサージタンク5と、このサージタンク5と連通してエンジンEの各気筒の吸気ポート(図示せず)に連通される4つの独立した吸気通路7とで一体に構成されている。
【0026】
上記サージタンク5は、インテークマニホールド1の上下方向中央部上側に配置され、このサージタンク5の反エンジンE側に上記スロットルボディ取付部3が配置されている。また、4つの吸気通路7は、エンジンEの気筒列方向に並んで配置されている。この気筒列方向から見て、各吸気通路7の上流開口7aと下流端の通路中心軸7bとのなす角度θは、0°より大きく、90°よりも小さい。すなわち、各吸気通路7がサージタンク5に巻き付く巻き付き角度が270°より大きく、360°よりも小さいため、インテークマニホールド1をコンパクトにすることができる。上記巻き付き角度は、好ましくは10°よりも大きく、80°よりも小さく、より好ましくは20°よりも大きく、70°よりも小さい。
【0027】
各吸気通路7の上流端は、図2に示すように、サージタンク5の下壁内面5aに開口し、この吸気通路7の上流側はサージタンク5の下方を通り反エンジンE側へ向かって下方へ湾曲して延びている。さらに、この吸気通路7の下流側はサージタンク5の反エンジンE側を上方へ湾曲状に延びた後、エンジンE側に向かって湾曲状に延びている。上記吸気通路7の上流側は互いに隣接する一方、下流側はエンジンEの気筒の間隔に対応して互いに離間して配置されている。
【0028】
上記吸気通路7の下流端にはエンジンEの側面に締結される取付部としてのフランジ9が設けられ、このフランジ9によりインテークマニホールド1がエンジンEに取り付けられるようになっている。そして、エンジンEに取り付けられたインテークマニホールド1には、スロットルボディからの吸気がスロットルボディ取付部3内を介してサージタンク5に流入し、このサージタンク5に流入した吸気は各吸気通路7に分流してエンジンEの各吸気ポートに供給される。
【0029】
上記インテークマニホールド1は、図2等に示すように、エンジンE側に位置するエンジン側マニホールド構成部材11と、このエンジン側マニホールド構成部材11の反エンジンE側に位置する反エンジン側マニホールド構成部材13と、これらエンジン側マニホールド構成部材11と反エンジン側マニホールド構成部材13との間に位置する中間マニホールド構成部材15とに分割されている。これらマニホールド構成部材11,13,15は、樹脂の射出成形品である。
【0030】
図3〜5は上記マニホールド構成部材を示す斜視図であり、図3はエンジン側マニホールド構成部材11を示し、図4は中間マニホールド構成部材15を示し、図5は反エンジン側マニホールド構成部材13を示している。
【0031】
上記エンジン側マニホールド構成部材11は、図3に示すように、上記フランジ9と、上記吸気通路7の下流端近傍を構成する4つの下流端構成部11aと、上記サージタンク5のエンジンE側を構成する第1タンク構成部11bと、上記吸気通路7の上流側下部を構成する4つの第1通路構成部11cとで一体成形されている。上記フランジ9は、エンジンEの側面に沿って上下方向に延びる厚肉板状に形成され、周縁に締結部材(図示せず)が挿通する挿通孔9aが複数形成されている。
【0032】
上記下流端構成部11aは、上記フランジ9から反エンジンE側へ突出する大略角筒状に形成され、吸気通路7の並び方向に互いに間隔をあけて配置されている。下流端構成部11a内部の吸気通路7はエンジンEの吸気ポート(図示せず)に連通している。下流端構成部11aの反エンジンE側の端部には、上記中間マニホールド構成部材15と振動溶着される溶着面11dが形成されている。
【0033】
上記第1タンク構成部11bは、フランジ9よりもエンジンE側へ膨出するように形成されている。この第1タンク構成部11bの縦断面は、反エンジンE側に開放する略台形状をなしている。また、この第1タンク構成部11bの横断面は反エンジンE側に開放する略C字状に形成されていて全体として矩形椀状をなしている。第1タンク構成部11bの周縁には、上記溶着面11dと連続し上記中間マニホールド構成部材15が振動溶着される溶着面11eが形成されている。
【0034】
上記各第1通路構成部11cは、第1タンク構成部11bの下部に連続していて、エンジンE側へ窪んで上方から下方へ延びる凹部により形成されている。従って、図2に示すように、エンジン側マニホールド構成部材11の縦断面は、第1タンク構成部11bと第1通路構成部11cとにより略C字状をなしている。そして、第1通路構成部11cの吸気通路7上流端に対応する部分には、図2に示すように、反エンジンE側に向かって上方に傾斜するエンジンE側の壁内面11fが形成されている。また、上記第1通路構成部11cは吸気通路7の並び方向に隣接していて、エンジン側マニホールド構成部材11の下部は全体として波状をなしている。上記第1通路構成部11cの上縁及び反エンジンE側の縁部には、図3に示すように、上記中間マニホールド構成部材15と振動溶着される溶着面11gが形成され、第1通路構成部11cの上縁の溶着面11gは上記溶着面11eと連続している。
【0035】
上記中間マニホールド構成部材15は、図2及び図4に示すように、サージタンク5の反エンジンE側を構成する第2タンク構成部15aと、図4に示すように、各吸気通路7の延びる方向に湾曲して形成された4つの湾曲部15bとを備えている。図2に示すように、第2タンク構成部15aの縦断面は、上記第1タンク構成部11bに対応するようにエンジンE側に開放する略コ字状をなしている。また、第2タンク構成部15aの横断面もエンジンE側に開放する略コ字状をなしている。この第2タンク構成部15aの下壁内面5aは、反エンジンE側に向かって下方に傾斜している。この下壁内面5aと対向する上壁内面5bは、下壁内面5aと平行になっている。また、図2に示すように、第2タンク構成部15aのエンジンE側の端面15cは、上記エンジン側マニホールド構成部材11及び中間マニホールド構成部材15との分割面17における上記サージタンク5に対応する部位であり、この端面15cは、反エンジンE側に向かって上方に傾斜している。そして、この第2タンク構成部15aの周縁には、上記第1タンク構成部11b周縁の溶着面11eに振動溶着される溶着面15d(図4参照)が形成されている。尚、第2タンク構成部15aの上記吸気通路7の並び方向一方側の側壁には、エンジンEからの排気の一部をサージタンク5に戻す図示しない排気通路が取り付けられる排気通路取付部15eが設けられている。
【0036】
上記湾曲部15bは、吸気通路7の上流側に対応する下側部分が第2タンク構成部15aの下壁から下方へ離間した板状をなし、下流側に対応する上側部分が第2タンク構成部15aの上壁に一体成形されている。従って、これら湾曲部15bと第2タンク構成部15aの下壁との間には、エンジンE側から反エンジンE側に向かって順に空間R1,R2,R3,R4が形成されている。
【0037】
各湾曲部15bの吸気通路7上流側には、吸気通路7の一部を構成する下側環状部15fが下方へ突出するように一体成形されている。各湾曲部15bの下側環状部15fよりも吸気通路7上流側の部分が第2通路構成部15g(図4参照)とされ、この第2通路構成部15gは、上記エンジン側マニホールド構成部材11の第1通路構成部11c上側に重合され該第1通路構成部11cとともに吸気通路7の上流側を構成するものである。この第2通路構成部15gには、図2に示すように、吸気通路7上流側の反エンジンE側の壁内面15hが形成されている。この反エンジンE側の壁内面15hは、反エンジンE側に向かって上方に傾斜して上記サージタンク5の下壁内面5aと繋がっているとともに、上記第1通路構成部11cのエンジンE側の壁内面11fと対向している。尚、第2通路構成部15gの周縁には、第1通路構成部11cの溶着面11gに溶着される溶着面15iが形成されている。
【0038】
このように、吸気通路7の上流側がエンジン側マニホールド構成部材11及び中間マニホールド構成部材15によって構成されている。そのうちエンジン側マニホールド構成部材11には、吸気通路7上流側のエンジンE側の壁内面11fが形成され、中間マニホールド構成部材15には、このエンジンE側の壁内面11fと対向する、反エンジンE側の壁内面15hが形成されている。そして、この反エンジンE側の壁内面15hが前述のように反エンジンE側に向かって上方に傾斜している。さらに、中間マニホールド構成部材15にサージタンク5の下壁内面5aが形成され、この下壁内面5aが前述のように反エンジンE側の壁内面15hと繋がっていて、反エンジンE側に向かって下方に傾斜している。したがって、吸気通路7の上流端をサージタンク5側に延ばすことができる。よって、吸気通路7の巻き付き角度を前述のように270°以上にすることができる。これにより、吸気通路7の上流端に別途部材を設けることなく、吸気通路7の上流端を延長することができる。
【0039】
各湾曲部15bの下側環状部15fよりも吸気通路7下流側は、該吸気通路7下流側において反エンジンE側に突出するように上下方向に湾曲状に延びる部分のエンジンE側を構成する第3通路構成部15jとされている。この第3通路構成部15jは、第2タンク構成部15aの反エンジンE側を上方へ延びた後、上記エンジン側マニホールド構成部材11の下流端構成部11aまで延びるように形成されている。第3通路構成部15jの周縁には、上記反エンジン側マニホールド構成部材13に振動溶着される溶着面15kが形成されている。
【0040】
各湾曲部15bの吸気通路7下流側端部には、吸気通路7の一部を構成する上側環状部15lが上方へ突出するように形成されている。この上側環状部15lのエンジンE側には、上記下流端構成部11aの溶着面11dに振動溶着される溶着面15mが形成され、反エンジンE側には上記反エンジン側マニホールド構成部材13に振動溶着される溶着面15nが形成されている。
【0041】
また、上記吸気通路7の並び方向で上記排気通路取付部15e側の2つの湾曲部15b,15bの間に位置する第2タンク構成部15aの上壁には、図4にも示すように、該上壁を貫通して上記スロットルボディ取付部3内に連通する吸気導入口19が形成されている。
【0042】
次に、上記構成を備える中間マニホールド構成部材15の製造要領について図6を参照して説明する。図6は、中間マニホールド構成部材15成形用の成形型21の模式図である。この成形型21は、中間マニホールド構成部材15の反エンジンE側を成形する固定型23と、エンジンE側を成形する可動型25と、上記第2タンク構成部15aを成形する第1スライド型27と、上記下側環状部15fの外面を成形する第2スライド型29と、上記空間R1〜R4を成形する第3スライド型33と、を備えている。
【0043】
固定型23及び可動型25を型締めした状態で、上記4つの型の間に形成されたキャビティ31内に溶融樹脂を射出充填し、溶融樹脂を冷却固化させて射出成形品を成形する。次に、第1〜第3スライド型27,29,33を後退させる。尚、第3スライド型33については、固定型23及び可動型25の対向方向と直交する方向、すなわち図6の紙面直交方向に後退させる。このとき、中間マニホールド構成部材15では、吸気通路7上流端の反エンジンE側の壁内面15hが反エンジンE側に向かって上方に傾斜し、これと繋がる上記下壁内面5aが反エンジンE側に向かって下方に傾斜しているため、エンジンE側から見てアンダーカット形状となっている。しかしながら、この中間マニホールド構成部材15では、上記下壁内面5a及び上壁内面5bが互いに平行に形成され、さらに、エンジン側マニホールド構成部材11との分割面17におけるサージタンク5に対応する部位が反エンジンE側に向かって上方に傾斜している。したがって、エンジンE側に行くに従って上方に傾斜する方向から見て、第2タンク構成部15aはアンダーカット形状となっていない。よって、前述のように第1スライド型27を後退させることができる。最後に、可動型25を後退させ、可動型25に設けられた図示しないエジェクタピンによって射出成形品を脱型する。このように、上記中間マニホールド構成部材15を簡単に製造することができる。
【0044】
上記反エンジン側マニホールド構成部材13は、図5に示すように、上記第3通路構成部15jの反エンジンE側に重合されて該第3通路構成部15jと共に吸気通路7の下流側を構成する4つの第4通路構成部13aを備えている。各第4通路構成部13aの縦断面形状は略U字状に形成されるとともに横断面形状は略半円弧状に形成され、第4通路構成部13aの周縁には上記第3通路構成部15jの溶着面15k及び上記上側環状部15lの溶着面15nに振動溶着される溶着面13bが形成されている。
【0045】
各第4通路構成部13aは、大略上下方向に延び上下方向の中間部が反エンジンE側へ向かって湾曲するように形成されている。第4通路構成部13aは互いに吸気通路7の並び方向に離間している。吸気通路7の並び方向で上記排気通路取付部15e側2つの第4通路構成部13aの間には、これら第4通路構成部13aを連結する連結壁部13cが形成されている。この連結壁部13cは、上記中間マニホールド構成部材15の第2タンク構成部15aの上壁に外側から重合している。
【0046】
上記連結壁部13cには、上記スロットルボディ取付部3の上流側が上下方向に延びるように一体成形されている。図5に示すように、スロットルボディ取付部3の下端は連結壁部13cを開口している。このスロットルボディ取付部3の下端開口は上記第2タンク構成部15aの吸気導入口19と一致していて、スロットルボディ取付部3内とサージタンク5とは吸気導入口19を介して連通している。
【0047】
次に、上記のように構成されたインテークマニホールド1の製造要領について図7〜9を参照して説明する。図7はインテークマニホールド1の分解斜視図であり、図8はエンジン側マニホールド構成部材11を中間マニホールド構成部材15に溶着する工程を示す断面図であり、図9はエンジン側マニホールド構成部材11及び中間マニホールド構成部材15の組立体に反エンジン側マニホールド構成部材13を溶着する工程を示す断面図である。
【0048】
先ず、図示しない振動溶着機を用いて、図8に示すように、エンジン側マニホールド構成部材11の溶着面11d、11e、11gと、中間マニホールド構成部材15の溶着面15m、15d、15iとをそれぞれ圧接させて、一方の構成部材を他方の構成部材に対し振動させる。こうすると、第1タンク構成部11bと第2タンク構成部15aとが振動溶着されてサージタンク5が構成され、また、第1通路構成部11cに第2通路構成部15gが重合された状態で振動溶着されて吸気通路7の上流側が構成される。さらに、振動溶着機を用いて、図9に示すように、中間マニホールド構成部材15の溶着面15k、15nと、反エンジン側マニホールド構成部材13の溶着面13bとを圧接させて、一方の構成部材を他方の構成部材に対し振動させる。こうすると、第3通路構成部15jに第4通路構成部13aが重合された状態で振動溶着されて吸気通路7の下流側が構成される。これにより、エンジン側マニホールド構成部材11と中間マニホールド構成部材15と反エンジン側マニホールド構成部材13とが一体化してインテークマニホールド1となる。そして、エンジン側マニホールド構成部材11のフランジ9をエンジンEに取り付けることで、インテークマニホールド1がエンジンEに取り付けられた状態となる。
【0049】
尚、上記実施形態では、反エンジン側マニホールド構成部材13と中間マニホールド構成部材15とを溶着してから、該中間マニホールド構成部材15をエンジン側マニホールド構成部材11に溶着するようにしてもよいし、これら3つの構成部材11,13,15を同時に溶着するようにしてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、中間マニホールド構成部材15の第2タンク構成部15aに形成された上壁内面5bと下壁内面5aとが互いに平行であったが、これに限定されず、例えば、上壁内面5bが下壁内面5aよりも大きな勾配で反エンジンE側に向かって下方に傾斜してもよい。これにより、第2タンク構成部15aを成形する第1スライド型27が移動しやすくなる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上説明したように、本発明に係る樹脂製インテークマニホールドは、部品点数を抑え、かつ中間マニホールド構成部材のサージタンク構成部がアンダーカット形状になるのを回避しつつ、コンパクトな樹脂製インテークマニホールドを提供する用途等に適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 インテークマニホールド
3 スロットルボディ取付部
5 サージタンク
5a 下壁内面
5b 上壁内面
7 吸気通路
7a 上流開口
7b 下流開口
11 エンジン側マニホールド構成部材
11f エンジン側の壁内面
13 反エンジン側マニホールド構成部材
15 中間マニホールド構成部材
15h 反エンジン側の壁内面
17 分割面
E エンジン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10