【実施例1】
【0017】
[中央位置検出装置]
図1は、中央位置検出装置の概念図、
図2は、センサの移動を示す説明図、
図3は、複数の測定点の座標値群を示す説明図、
図4は、コイルばねの測定点を示す断面図、
図5は、中心位置の演算イメージを示す説明図、
図6は、コイル形状の演算結果を示すグラフ、
図7は、コイル形状の演算結果を示す説明図である。
【0018】
図1のように、本発明実施例1の中央位置検出装置である中心位置検出装置1は、対象物として、例えばコイルばね3の断面中央位置である円形断面の断面中心位置を検出してコイルばね3の形状測定を行うものである。この中心位置検出装置1は、レーザー変位センサ5と、演算部7とを備えている。演算部7の演算結果は、表示部8に出力され、演算結果のコイル形状等が表示される。
【0019】
コイルばね3は、変形しない程度に治具9によって垂直に支持固定されている。
【0020】
レーザー変位センサ5は、反射型レーザー変位計で構成されている。このレーザー変位センサ5は、アクチュエータ11に昇降可能に支持されている。レーザー変位センサ5及びアクチュエータ11は、制御部13によって制御されるようになっている。レーザー変位センサ5は、制御部13により予め設定されたタイミングでレーザー光を照射し、反射光を受光して測定点の座標値を測定し、演算部7へ出力する。
【0021】
アクチュエータ11は、例えばボールねじで構成され、制御部13により予め設定されたタイミングでレーザー変位センサ5を下方から上方へ駆動し、且つアクチュエータ11自体もコイルばね3の周りを周回するように駆動される。アクチュエータ11が、ボールねじで構成されていることから、レーザー変位センサ5を下方から上方へ駆動することでボールねじのバックラッシュの影響を受けずに正確に駆動することができる。
【0022】
制御部13は、コンピュータで構成され、CPU、ROM、RAMなどを備えている。
【0023】
前記駆動により、レーザー変位センサ5は、コイルばね3の素線3aの円形断面形状の一側に沿って直線的に相対移動し、垂直方向のコイル軸方向(X軸方向)では、下方から上方へ素線3aに合わせて
図2のように各測定点を検出するように移動する。
【0024】
この相対移動により断面形状の一側から素線3aの外表面にレーザー光を照射し反射する測定点の座標値を、素線3aの円形断面形状の一側であるほぼ半円に沿って一定間隔で検出する。この検出により複数の測定点で座標値が連続的に検出される。
【0025】
円形断面形状の一側に沿った複数の測定点の座標値群は、本実施例においてコイルばね3の素線3aの円形断面の半円に対応し、例えば
図3のようになる。
【0026】
また、レーザー変位センサ5が上記のようにコイルばね3の周りを周回するように駆動されるから、ほぼ半円に対応した座標値群15は、
図4のようにコイルばね3に対する360°の範囲でコイルばね3のコイル形状に沿って座標値群15が複数群検出され、演算部7へ入力される。
【0027】
演算部7は、コンピュータで構成され、CPU、ROM、RAMなどを備えている。この演算部7は、制御部13と同一又は別々のコンピュータの何れでも構成することができる。演算部7には、後述する中央位置検出プログラムがインストールされている。
【0028】
中央位置検出プログラムは、対象物の断面中央位置を求める機能をコンピュータに実現させるものであり、本実施例では、後述のフローチャートのように、コイルばね3の断面中心位置を求め、コイル形状を演算する。
【0029】
なお、中央位置検出プログラムは、これを記録した中央位置検出プログラム記録媒体を用い、コンピュータで構成された演算部7に読み取らせることで、コイルばね3の断面中心位置を求め、コイル形状の演算を実現することもできる。
【0030】
演算部7は、
図5のように、複数の測定点の座標値群15からコイルばね3の素線3aの円形の断面形状15aを近似する。この断面形状15aから断面中心位置Oを演算する。断面中心位置Oは、素線3aのコイル形状全体に沿って演算する。この演算が座標値群15毎に複数群で行われ、素線3aに沿ったコイル形状が演算される。
【0031】
この場合、演算部7は、複数の測定点の座標値の中でコイル径方向(Y軸方向)での座標値の距離の差が前に測定された座標値に対し設定された閾値を上回るときほぼ半円形の円端部候補として相対移動の最初と最後で一対特定することに基づき円形断面形状を近似する。
【0032】
この円端部候補の特定は、
図3のようにほぼ半円に対応した座標値群15の上下の端点を特定するものであり、上下では、コイル径方向(Y軸方向)での測定点の間隔が大きくなることに基づいている。したがって、予め、端点となる測定点とその前の測定点との間のY軸方向の間隔を計測し、閾値を設定することで円端部候補を特定する。
【0033】
また、演算部7は、一対の円端部候補の座標値間のX軸方向の距離が予め測定した素線3aの円形の直径に等しいか設定された閾値内にあるとき一対の円端部候補の有効データとして円形断面形状を近似する。
【0034】
この円端部候補の有効データとしての特定は、本来の半円の端点間の距離が、素線3aの円形断面の直径に等しいことに基づいている。したがって、予め素線3aの円形断面の直径をノギス等で測定し、この直径をそのまま使用するか、閾値を設定し、円端部候補を比較することにより有効データとして特定する。
【0035】
さらに演算部7は、一対の円端部候補間の中央に位置する測定点のY軸方向での座標値が最大であるとき一対の円端部候補の有効データとして前記断面形状を近似する。
【0036】
この円端部候補の有効データとしての特定は、本来の半円の端点間の中央に位置する測定点がY軸方向で半径上に位置することに基づき、Y軸方向の座標値が最大になることに基づいている。
【0037】
なお、演算部7は、円端部候補の特定等を、より正確な座標値群15の特定に供しているが、これらは、適宜組み合わせて適用することができ、省略することもできる。
【0038】
表示部8は、演算部7の演算結果により、
図6のようなコイルばねの高さ、コイル巻数、及びコイル中心半径の関係が視覚的に出力表示され、或いは
図7のようなコイルばねの形状が視覚的に出力表示される。これらの結果を印刷出力する構成としても良い。
【0039】
したがって、制御部13の制御でレーザー変位センサ5によるレーザーの照射によりコイルばね3の素線3aの断面の一側に沿って断面形状に応じた複数の測定点のデータを取得する。かかるデータから演算部7により素線3aの特定の断面におけるほぼ半円に対応した座標値群15を検出する。この座標値群15は、素線3aのコイル形状に沿って複数群検出される。各座標値群15において、
図5のように円形の断面形状15aを近似し、素線3aの円形断面の中心位置Oをコイル形状に沿って連続的に検出することができる。
[中心位置検出プログラム及び方法]
図8、
図9は、中心位置検出のフローチャート、
図10は、データ群を示す概念図、
図11は、データ群及び中心位置を示す概念図である。
【0040】
前記演算部7でのデータの処理が開始されると、
図8のステップS1(以下、各ステップをSにより略称する。)において、「データ群をX値の小さいものから測定値P
1、P
2、・・・P
n(X
n、Y
n)とし、全ての処理はP
1から順に行なう」処理が実行される。前記のように、X,Y座標軸のX軸は、コイル軸方向、Y軸は、コイル径方向に設定している。この処理により、レーザー変位センサ5が
図2、
図4のように動作し、測定点の測定が行われS2へ移行する。
【0041】
S2では、「測定値の読み込み」の処理が実行され、測定された測定値P
1−n(X
1−n、Y
1−n)が一つずつ読み込まれ、S3へ移行する。なお、測定値P
1−n(X
1−n、Y
1−n)は、P
1(X
1、Y
1)からP
n(X
n、Y
n)までの測定値を意味する。
【0042】
S3では、「判断対象の測定値を前後の測定値と比較し、異常値はないか?」の判断処理により、異常値であると判断されれば(No)、S4へ移行し、異常値ではないと判断されれば(Yes)、その測定値の記憶が行われS5へ移行する。異常値か否かの判断では、例えば予め測定した素線3aの直径から、ある測定値Y
mの前後の測定点のY方向の測定値Y
m−1、Y
m+1、とその間の測定点の測定値Y
mとの間の差の閾値a
m−1、閾値a
m+1を設定する。測定値Y
m−1、Y
m+1間の比較も同様に行い、精度を向上させることができる。この閾値a
m−1、閾値a
m+1と実際の測定値間の差とを比較することで判断対象の測定値が前後の測定値に対し異常値か否かが判断される。なお、異常値判断の閾値は一定の値とすることもできる。レーザー変位センサ5を構成する反射型レーザー変位計では、測定原理的に、測定する表面の状態などにより異常値となる場合が存在する。この異常値を予め排除し、より精度の高い近似を行わせることができる。
【0043】
S4では、「測定値を、前後の測定値の平均値とする」の処理により、前後の二つの測定点の測定値の平均が測定値として記憶されステップS5ヘ移行する。例えば、測定値P
1、P
3の平均値をP
2とし、同様に、順次前後の平均により、P
3、・・・P
n−1(X
n−1、Y
n−1)を決める。このように、異常値を取り除き、測定値を前後の二つの測定点の座標値の平均とすることで、測定値のばらつきが抑制され、より精度の高い近似を行わせることができる。なお、測定値P
1、P
2の平均値を測定値P
1とし、同様に、順次前後の平均により、測定値P
2、・・・P
n-1(X
n-1、Y
n-1)を決定することもできる。
【0044】
S5では、「全ての測定値について上記処理を行ったか?」の判断処理が行われ、全ての測定値P
1−n(X
1−n、Y
1−n)について処理が完了していなければ(No)、S2へ戻り、S2,S3,S4,S5の処理が繰り返される。素線3aのほぼ半円の測定値群が、素線3aに沿って
図4で示す間隔により測定された複数群が全ての測定値となる。S5において、全ての測定値について処理が完了したと判断されれば(Yes)、S6へ移行する。
【0045】
したがって、例えば
図10にXY座標で概念的に示すようなほぼ半円に対応する測定値群をコイルばね3の素線3aに沿って複数群得ることができる。なお、
図10に示されている左右傾斜の線は、治具9の外径形状を表している。
【0046】
S6では、「測定値の読み込み」の処理により、測定値が順に読み込まれ、S7へ移行する。
【0047】
S7では、「前後の測定値を比較し、一定距離以上の差があるか?」の判断処理により、前後の測定値間のY軸方向の距離が予め設定した閾値Dを基準に判断され、一定距離以上であれば(Yes)、S8へ移行し、一定距離Dを下回ると判断されれば(No)、そのままS9へ移行する。半円のX軸方向の直径上にある両端点のY軸方向の座標値は、その前の測定点のY軸方向の座標値との間の距離が、他の測定点間の座標値距離よりも大きく、これを区別するものとして閾値Dが設定される。
【0048】
S8では、「円端部の候補点とする」の処理により、S7で判断された測定値が円端部の候補点として記憶され、S9へ移行する。すなわち、順次検出する複数の測定点が直線的に連続する方向に直交する方向での前後の距離の差が閾値Dを上回るとき後の測定点を半円の円端部候補とする。順次検出する複数の測定点が直線的に連続する方向とは、素線3aの断面形状の一側に沿って
図1のようにレーザー変位センサ5が直線的に相対移動する方向である。直交する方向とは、レーザー変位センサ5が直線的に相対移動する方向に直交する方向である。
【0049】
S9では、「全ての測定値について上記処理を行ったか?」の判断処理が行われ、前記前後の測定値の平均として特定された全ての測定値P
1-n(X
1-n、Y
1-n)について処理が完了していなければ(No)、S6へ戻り、S6,S7,S8,S9の処理が繰り返される。全ての測定値は、S5とは異なり、一つ少なくなっている。S9において、全ての測定値について処理が完了したと判断されれば(Yes)、
図9のS10へ移行する。
【0050】
S10では、「円端部の候補点の測定値の読み込み」の処理により、S8で記憶された円端部の候補点の測定値が順に読み込まれ、S11へ移行する。
【0051】
S11では、「隣り合う円端部候補点間の距離が、測定した円形状構造物の直径と大きく違わないか?」の判断処理により、直径と大きく違わないときは(Yes)、S12へ移行し、直径と大きく異なるときは(No)、S14へ移行する。この場合の円形状構造物とは、コイルばね3を構成する断面円形の素線3aである。円端部候補点間の距離は、検出した半円に対応する座標値群15の上下両端の点を円端部候補点とすると、この点間の距離に対応する。この判断処理により円端部候補点が、X軸方向の直径を基準に決定される。
【0052】
S12では、「円端部候補点間のデータのY軸最大値が、円端部候補点の中心付近にあるか?」の判断処理により、一対の円端部候補間の中央に位置する測定点のコイル径方向一側での座標値が最大であるとき(Yes)、S13へ移行し、最大ではないとき(No)、S14へ移行する。この判断処理により、円端部候補点が、Y軸方向の半径を基準に決定される。
【0053】
S13では、「隣り合う円端部候補点間のデータを有効データとする」の処理により、隣り合う一対の円端部候補点が記憶され、S15へ移行する。
【0054】
S11,S12の判断処理を加えることで、一対の円端部候補点の決定の精度を向上させることができる。
【0055】
S14では、「全ての円端部候補点について上記処理を行ったか?」の判断処理が行われ、全て終了すれば(Yes)、S15ヘ移行し、終了していなければ(No)、S10へ戻り、S10〜S14の処理が繰り返される。
【0056】
S15では、「有効データ群に対し、円近似を行う」の処理により、
図3のように得られたほぼ半円形の座標値群15に対し、
図5のようにコイルばね3の素線3aの円形の断面形状15aを近似し断面中心位置Oを演算し、S16へ移行する。
【0057】
S16では、「全ての有効データに対し処理を行ったか?」の判断処理により、座標値群15の複数群に対し円形の断面形状15aの近似が全て行われ、断面中心位置Oの演算が終了すると(Yes)、データ処理が終了し、座標値群15の複数群全てに対し、処理が終了していなければ(No)、S15が繰り返され、素線3aに沿って連続する複数の断面中心位置Oが決定される。
【0058】
したがって、例えば
図11にXY座標で概念的に示すようなほぼ半円の座標値群からコイルばね3の素線3aに沿って中心座標O
1(X
1,Y
1)、O
2(X
2,Y
2)・・・を連続的に得ることができる。なお、
図11に示されている左右傾斜の線は、治具9の外径形状を表している。
【0059】
このような処理により、前記
図6、
図7のような出力結果を得ることができる。
【0060】
本発明実施例の中心位置検出装置1は、レーザー光を照射し反射する測定点の座標値を複数の測定点で検出した座標値群15から断面形状を近似し断面中心位置を演算することができ、画像処理を不要とし、処理を簡単且つ確実に行わせることができる。
【0061】
レーザー変位センサ5を使用するから、撮影画像からの測定に比較してより高精度な測定ができ、角度特性も良い。
[その他]
上記実施例では、レーザー変位センサ5側を、固定したコイルばね3の周囲に回転移動させるようにしたが、レーザー変位センサ5を固定し、コイルばね3を自転する構成にすることもできる。
【0062】
上記実施例では、コイルばね3の素線3aに沿った断面中心位置を特定したが、他の対象物、例えばクリップ等についても同様に適用することができ、単一の断面中心位置を検出する構成にすることもできる。対象物の断面は、楕円形状等にも適用することができる。円形断面以外については、断面中央位置の特定となる。
【0063】
上記実施例では、立体のコイルばねについて適用したが、パイプを曲げたものや、平面に巻かれたもの等にも適用することができる。