【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0052】
1.評価方法
(1)インヘレント粘度(η
0)
樹脂組成物を1,1,2,2−テトラクロロエタンに溶解し、濃度1g/dlの試料溶液を作製した。続いて、ウベローデ型粘度計を用い、25℃の温度にて試料溶液および溶媒の落下時間を測定し、以下の式を用いてインヘレント粘度を求めた。
インヘレント粘度=ln[(試料溶液の落下時間/溶媒のみの落下時間)/樹脂濃度(g/dl)]
【0053】
(2)インヘレント粘度(η
1)
用いる溶媒をフェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン=6/4(質量比)溶液に対し、酢酸ナトリウムを0.01mol/Lを配合した混合溶媒とした以外は、インヘレント粘度(η
0)と同様にして、インヘレント粘度(η
1)の測定を行った。
【0054】
(3)(η
1)/(η
0)の算出
インヘレント粘度(η
0)とインヘレント粘度(η
1)より(η
1)/(η
0)を求めた。(η
1)/(η
0)は、ポリアリレート分子鎖中の酸無水物結合存在量の程度を示す指標である。(η
1)/(η
0)が小さくなるほど、酸無水物結合の存在量が多いことを示し、(η
1)/(η
0)が1に近づくほど、酸無水物結合は殆ど存在しない。本発明においては、(η
1)/(η
0)は0.9以上であることが好ましい。
【0055】
(4)カルボキシル価 (mol/ton)
樹脂組成物を、塩化メチレンに溶解後、フェノールレッドをpH指示薬として加え、0.1Nの水酸化カリウムのベンジルアルコール溶液で滴定を行い、カルボキシル価を求めた。
【0056】
(5)荷重たわみ温度 (℃)
ISO 75−1に準拠し、厚さ4mmの試験片を用いて、荷重5.0MPaで測定した。ただし、試験片に対しては、残留歪み除去等を目的とした事前アニール処理を施さないものとする。荷重たわみ温度は耐熱性の指標である。実用的には135℃以上であることが好ましい。
【0057】
(6)バイオディーゼル燃料への浸漬試験
(6−1)浸漬溶液の調製
バイオディーゼル燃料B100(株式会社レボインターナショナル製 C−FUEL、廃食油由来)とJIS2号軽油を質量比3/7で混合した。さらにこの混合燃料(以下、B30という)と水を体積比9/1で混合し浸漬溶液を得た。
なお、浸漬溶液中、B30と水は分相する。そして水に比べB30は比重が小さいため、浸漬溶液を静置した場合、下相に水、上相にB30となる。
【0058】
(6−2)試験片の浸漬方法
各々の樹脂組成物を用い射出成形にて厚さ4mmのダンベル試験片を得た。また得られたダンベル試験片に対して、(5)で得られた各々の(荷重たわみ温度−10℃)に制御された温度条件下、3時間アニール処理を施した。
次に容積2Lであるステンレス容器を(7−1)で調整を行った浸漬溶液で満たした。また、ダンベル試験片が水には直接触れずB30に接触するように上げ底を施し、その上に金網を設置した。ダンベル試験片を金網の上に載せステンレス容器に隙間を空けて蓋をした。前記ステンレス容器を、熱風乾燥機(防爆機能付き)内で、温度90℃で、1000時間静置した。1000時間経過後、ダンベル試験片を取り出し、浸漬試験前後でのインヘレント粘度、引張降伏強度、引張破断伸度、質量の対比を行った。
【0059】
(6−3)インヘレント粘度保持率
ダンベル片より切り出した樹脂切片を用い、浸漬試験前後でのインヘレント粘度(η
0)を測定し、次式によりインヘレント粘度保持率を算出した。
インヘレント粘度保持率(%)={(浸漬試験後のインヘレント粘度)/(浸漬試験前のインヘレント粘度)}×100
【0060】
(6−4)引張降伏強度保持率
ISO 527−1、2に準拠し、浸漬試験前後での引張降伏強度を測定し、次式により引張降伏強度保持率を算出した。
引張降伏強度保持率(%)={(浸漬試験後の引張降伏強度)/(浸漬試験前の引張降伏強度)}×100
引張降伏強度保持率は70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。本試験で70%未満となる場合、実使用時において経年的に強度不足による割れが生じる懸念があり、実用性がないと判断する。
【0061】
(6−5)引張破断伸度保持率
(6−4)引張降伏強度保持率を得た場合と同様にして、引張破断伸度の測定を行い、次 式により引張降伏強度保持率を算出した。
引張破断伸度保持率(%)={(浸漬試験後の引張破断伸度)/(燃料浸漬試験前の引張破断伸度)}×100
引張破断伸度保持率は40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。本試験で40%未満となる場合、実使用時において経年的に靱性不足による割れが生じる懸念があり、実用性がないと判断する。
【0062】
(6−6)質量変化率
電子天秤を用い、浸漬試験前後でのダンベル片1個の質量を測定し、次式により質量変化率を算出した。
質量変化率(%)=[1−{(浸漬試験後の質量)/(浸漬試験前の質量)}]×100
質量変化率は1.0%以下であることが好ましく、0.7%以下であることがより0.5%以下であることが好ましい。本試験では質量変化率が1.0%を超える場合、実使用において、質量変化に伴う寸法変化により、勘合部の緩みによる漏れ、締付けによる割れ等が懸念され、実用性がないと判断する。
【0063】
(6−7)外観変化
ダンベル片を目視確認し、浸漬試験前後の対比により、下記の基準で評価した。△、×であるものは実用性がないと判断した。以下でいう視認性とは、例えばフィルター容器として使用した際、内容物の有無が確認できる程度の透明性を有することを言う。 ◎:透明性に変化なし。完全に透明であり、視認性を有する。
○:透明性に変化なし。視認性を有する。
△:試験片表面にチョーキング発生または微細なクラックが生じる。視認性が低下する。
×:試験片表面は平滑だが、試験片内部を含む全体が白化し、視認性を全く失う。
【0064】
(7)耐候性試験
各々の樹脂組成物を用い射出成形にて厚さ3mmのプレート状試験片を得た。サンシャインウェザーメーター(スガ試験機株式会社製S80HB型、光源;カーボンアーク灯)の内に、プレート状試験片を設置し、ブラックパネル温度63℃、降水サイクル18min/120minに設定し、1000、5000時間処理した後、視認性評価、色差の測定を行った。
【0065】
(7−1)視認性評価
プレート状試験片を目視で確認し、下記の基準で評価した。×であるものは実用性がないと判断した。以下でいう視認性とは、例えばフィルター容器として使用した際、内容物の有無が確認できる程度の透明性を有することを言う。実用的には、◎、○であることが好ましい。
◎:透明性に変化なし。完全に透明であり、視認性を有する。
○:透明性に変化なし。視認性を有する。
△:試験片表面の一部にチョーキングが発生するものの、視認性は有する。
×:試験片表面の全面に対しチョーキングが発生または微細なクラックが生じる。
その結果、視認性を全く失う。
【0066】
(7−2)色差(△E*ab)
プレート状試験片をJIS Z8722に準拠し、分光色差計(日本電色株式会社製SE−6000型、光源;D−65、視野角;2°)を用い透過条件にて△E*abを測定した。なお、前記(7−1)視認性評価にて◎および○の評価であったもののみ測定を実施した。色差(△E*ab)は、10以下であることが好ましく、5以下であることがより好ましい。
【0067】
(8)耐アルコール性
各々の樹脂組成物を用い射出成形にて、長さ127mm×幅13mm×厚さ3.2mmである板状試験片を得た。得られた板状試験片に対し、(5)で得られた各々の(荷重たわみ温度−10℃)に制御された温度条件下、3時間アニール処理を施した。得られた板状試験片の長さ方向の中心に歪み率が1.5%となるよう歪みを与えながら3点支持型の鉄製治具へ装着した。イソプロパノール(試薬)含浸した脱脂綿を、前記歪みを与えた部位に接触させ静置した。イソプロパノールの揮発を抑制する目的で、ポリエチレン袋で全体を覆い密封した。常温下で24時間放置後、鉄製治具から板状試験片を取り外し脱脂綿除去後、歪みを与えた部位の観察を行い下記の基準で評価した。
本試験で△、×となるものについては、バイオディーゼル燃料の洗浄剤として多用されるアルコール成分に対する耐性が不足していると判断されるため、実用性に欠けると判断した。
○:異常なし。
△:クラック、クレーズが生じるか、常温静置後24時間以内に破断する。
×:溶解もしくは膨潤する。
【0068】
(9)離型性
各々の樹脂組成物を用い射出成形機(FANUC社製S−2000i−100B型)にて、外形30mmφ、内径28mmφ、深さ20mm、底面肉厚1mmのカップ型試験片を得た。射出成形にあたり、抜き勾配4/100で、200μmφのピンポイントゲートを有する金型を使用した。成形条件は、シリンダ温度360℃、金型温度140℃とした。射出圧力100MPa、射出速度100mm/秒、冷却時間25秒、1サイクル30秒により、200個の連続成形を行い、良品が得られた割合(エジェクター部の変形が発生するもの、脱離できないものを不良品とした)で判定した。
【0069】
2.原料
(1)ポリアリレート樹脂
・(a−1):ビスフェノールA/テレフタル酸/イソフタル酸=50/25/25(mol%)であって、インヘレント粘度(η
0)が0.72dl/g、Tgが197℃であるポリアリレート樹脂。(η
1)/(η
0)が1.00、カルボキシル価10mol/t。
・(a−2):ビスフェノールA/テレフタル酸/イソフタル酸=50/25/25(mol%)であって、インヘレント粘度(η
0)が0.54dl/g、Tgが195℃であるポリアリレート樹脂。(η
1)/(η
0)が1.00、カルボキシル価10mol/t。
・(a−3):ビスフェノールA/テレフタル酸/イソフタル酸=50/25/25(mol%)であって、インヘレント粘度(η
0)が0.65dl/g、Tgが195℃であるポリアリレート樹脂。(η
1)/(η
0)が0.85、カルボキシル価10mol/t。
・(a−4):ビスフェノールA/テレフタル酸/イソフタル酸=50/25/25(mol%)であって、インヘレント粘度(η0)が0.55dl/g、Tgが194℃であるポリアリレート樹脂。(η1)/(η0)が0.99、カルボキシル価30mol/t。なお、(a−4)は、(a−3)に対し下記、製造例1の手順により処理して得た。
【0070】
(2)カルボジイミド化合物
・(b−1):芳香族型モノポリカルボジイミド
N,N´−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド(ラインケミー社製「スタバックゾールI」)
・(b−2):脂肪族型モノカルボジイミド
ジイソプロピルカルボジイミド(試薬)
・(b−3):脂環族型モノカルボジイミド
ジシクロヘキシルカルボジイミド(試薬)
・(b−4):脂環族型ポリカルボジイミド
ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)(日清紡社製「LA−1」)
・(b−5):芳香族型ポリカルボジイミド
(ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)カルボジイミド)(ラインケミー社製「スタバックゾールP」、数平均分子量約700)
・(b−6):芳香族型ポリカルボジイミド
(ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)カルボジイミド)(ラインケミー社製「スタバックゾールP−400」、数平均分子量約6400)
【0071】
(3)酸化防止剤
・(c−1):ヒンダードフェノール系酸化防止剤
ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオナート](BASFジャパン社製「Irganox1010」)
・(c−2):ホスファイト系酸化防止剤
ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(ADEKA社製「アデカスタブPEP−36」)
・(c−3):チオエーテル系酸化防止剤
ペンタエリスリトールテトラキス(3−ドデシルチオプロピオネート)(シプロ化成社製「SEENOX412S」)
【0072】
(4)離型剤
・(d−1):ジペンタエリスリトール系化合物
ジペンタエリスリトールヘキサステアレート(エメリーオレオケミカル社製VPG−2571)
・(d−2):ペンタエリスリトール系化合物
ペンタエリスリトールテトラステアレート(エメリーオレオケミカル社製VPG−861)
・(d−3):パラフィンワックス(日本精蝋製LUVAX#1226)
・(d−4):グリセリン系化合物
グリセリンモノステアレート(エメリーオレオケミカル社製LOXIOL#8312)
【0073】
(5)その他樹脂成分
・(e−1):非晶性ポリアミド樹脂(EMS社製TR55)
【0074】
製造例1
(a−3)のポリアリレート樹脂を、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタン=6/4(質量比)混合溶媒に対し、酢酸ナトリウムを0.01mol/Lを配合した溶媒に溶解させ、3時間静置させた。その後、メタノール中にてポリマーを再沈殿させ、得られたポリマーをメタノール中で2日間浸漬させることで洗浄して得た。
【0075】
実施例1
ポリアリレート樹脂(a−1)100質量部、カルボジイミド化合物(b−1)1質量部、酸化防止剤(c−1)0.05質量部を均一混合した後、総仕込み量3kgをロスインウェイト式連続定量供給装置(クボタ社製CE−W−1型)を用いて、スクリュー径26mmの二軸押出機(東芝機械社製TEM26SS型)の主供給口に供給し溶融混練を行った。途中、ベント減圧度−0.099MPa(ゲージ圧)で脱気を行い、ダイスからストランド状に引き取り温浴槽にて冷却固化し、ペレタイザでカッティングした後、樹脂組成物ペレットを得た。溶融混練は、押出機のバレル温度設定340℃、吐出量20kg/h、スクリュー回転数300rpmの条件で行った。得られた樹脂組成物ペレットを100℃で12時間、熱風乾燥することにより十分に乾燥した。
得られた乾燥樹脂組成物ペレットを用い、射出成形機(東芝機械社製EC−100型)を用い、シリンダ温度350℃、金型温度140℃で射出成形を行い、各種試験片を得た後各種評価を行った。その結果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
実施例2〜12
表1記載の配合に従う以外は、実施例1と同様にして各種試験片を得た後各種評価を行った。その結果を表1に示す。
【0078】
実施例13〜26
表2記載の配合に従う以外は、実施例1と同様にして各種試験片を得た後各種評価を行った。その結果を表2に示す。
【0079】
【表2】
【0080】
比較例1〜12
表3記載の配合に従う以外は、実施例1と同様にして各種試験片を得た後各種評価を行った。その結果を表3に示す。
【0081】
【表3】
【0082】
比較例13
非晶性ポリアミド樹脂(e−1)100質量部、カルボジイミド化合物(b−1)1質量部、酸化防止剤(c−1)0.05質量部を均一混合した後、総仕込み量3kgをロスインウェイト式連続定量供給装置(クボタ社製CE−W−1型)を用いて、スクリュー径26mmの二軸押出機(東芝機械社製TEM26SS型)の主供給口に供給し溶融混練を行った。途中、ベント減圧度−0.099MPa(ゲージ圧)で脱気を行い、ダイスからストランド状に引き取り温浴槽にて冷却固化し、ペレタイザでカッティングした後、樹脂組成物ペレットを得た。溶融混練は、押出機のバレル温度設定280℃、吐出量20kg/h、スクリュー回転数300rpmの条件で行った。得られた樹脂組成物ペレットを100℃で16時間、熱風乾燥することにより十分に乾燥した。
得られた乾燥樹脂組成物ペレットを用い、射出成形機(東芝機械社製EC−100型)を用い、シリンダ温度290℃、金型温度80℃で射出成形を行い、各種試験片を得た後各種評価を行った。その結果を表3に示す。
【0083】
比較例14
表3記載の配合に従う以外は、実施例12と同様にして各種試験片を得た後各種評価を行った。その結果を表3に示す。
【0084】
実施例1〜26は、本願所定の配合に従ったため、耐熱性、機械的特性、成形性に優れた樹脂組成物とすることができた。また、バイオディーゼル燃料耐性、耐候性、耐アルコール性も兼ね備えていた。
【0085】
比較例1〜4は、カルボジイミド化合物、酸化防止剤の配合を行わなかったため、バイオディーゼル燃料耐性、耐候性が劣った。
【0086】
比較例5〜8は、酸化防止剤を配合しなかったため、バイオディーゼル燃料耐性が劣った。
【0087】
比較例9は、カルボジイミド化合物の配合が下限値未満であったので、バイオディーゼル燃料耐性が劣った。
【0088】
比較例10は、カルボジイミド化合物の配合が上限値を超えたため、バイオディーゼル燃料耐性が劣った。
【0089】
比較例11は、酸化防止剤の配合が下限値未満であったので、バイオディーゼル燃料耐性が劣った。
【0090】
比較例12は、酸化防止剤の配合が上限値を超えたため、バイオディーゼル燃料耐性が劣った。また、樹脂組成物が著しく黄変したものであった。
【0091】
比較例13、14は、ポリアリレート樹脂に代えて非晶性ポリアミド樹脂を用いた
ため、バイオディーゼル燃料耐性、耐候性、耐アルコール性が劣った。