特許第6013101号(P6013101)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日野自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6013101-排気浄化装置 図000002
  • 特許6013101-排気浄化装置 図000003
  • 特許6013101-排気浄化装置 図000004
  • 特許6013101-排気浄化装置 図000005
  • 特許6013101-排気浄化装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013101
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/24 20060101AFI20161011BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20161011BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20161011BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20161011BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20161011BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   F01N3/24 EZAB
   F01N3/035 E
   F01N3/08 B
   F01N3/28 301F
   B01D53/86 222
   B01D53/94 222
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-204908(P2012-204908)
(22)【出願日】2012年9月18日
(65)【公開番号】特開2014-58920(P2014-58920A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】今井 伸介
【審査官】 石川 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2006/057305(WO,A1)
【文献】 特開2001−190916(JP,A)
【文献】 特開平07−024259(JP,A)
【文献】 特開2000−018026(JP,A)
【文献】 特表2003−516492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスを浄化するためのDPF及び触媒を有する排気浄化装置であって、
外側排気管及び内側排気管を有する二重排気管部と、
前記外側排気管及び前記内側排気管のうち一方の排気管出口と他方の排気管入口とを接続する戻り排気管と、を備え、
前記内側排気管の内部には前記DPFが配置され、
前記外側排気管と前記内側排気管の間には前記触媒が配置され、前記触媒は前記内側排気管の周方向で複数に分割されており、
前記戻り排気管は、前記外側排気管の外で前記外側排気管に沿って直線状に延在する直線部を有し、
前記外側排気管は断面形状が円の一部が直線で切り取られた形状であり、前記内側排気管は断面形状が円形状であり、
前記複数に分割された触媒の形状は、円筒を周方向に分割してなる形状であり、
前記外側排気管の断面形状が直線の部分と前記内側排気管との間には、前記触媒を配置せず、前記排気ガスが通り抜けることを防ぐように充填剤が配置されていることを特徴とする排気浄化装置。
【請求項2】
前記触媒は、前記内側排気管の周方向で二分割又は四分割されていることを特徴とする請求項1に記載の排気浄化装置。
【請求項3】
前記外側排気管の断面形状は、円のうち前記戻り排気管側の一部が直線で切り取られた形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の排気浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガスを浄化する排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の排気ガスを浄化する排気浄化装置として、排気ガス中のPM(微粒子状物質)を捕集するDPF[Diesel particulate filter]と、排気ガス中のCO(一酸化炭素)やHC(炭化水素)を浄化する酸化触媒と、を備えたものが知られている(特許文献1,2参照)。
【0003】
また、特許文献1には、より厳しい排気ガス規制に適合するため、排気ガス中のNOx(窒素酸化物)を浄化するNOx浄化用触媒として、尿素SCR[Selective Catalytic Reduction]触媒を更に設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−071189号公報
【特許文献2】特表2008−530446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、DPFに加えて酸化触媒やNOx浄化用触媒を設けるためには、十分な搭載スペースを車両が有する必要がある。搭載スペースは車種によって異なっており、搭載スペースの大きさや形状によっては従来のNOx浄化用触媒等を配置できない場合があった。このため、搭載スペースに合わせて触媒の筐体形状を変更すると、NOx浄化用触媒も新たな形状に作り直す必要が生じ、大幅なコストアップとなる。
【0006】
そこで、本発明は、多様な搭載スペースへの適応が容易な排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、排気ガスを浄化するためのDPF及び触媒を有する排気浄化装置であって、外側排気管及び内側排気管を有する二重排気管部と、外側排気管及び内側排気管のうち一方の排気管出口と他方の排気管入口とを接続する戻り排気管と、を備え、内側排気管の内部にはDPFが配置され、外側排気管と内側排気管の間には触媒が配置され、触媒は内側排気管の周方向で複数に分割されており、戻り排気管は、外側排気管の外で外側排気管に沿って直線状に延在する直線部を有し、外側排気管は断面形状が円の一部が直線で切り取られた形状であり、内側排気管は断面形状が円形状であり、複数に分割された触媒の形状は、円筒を周方向に分割してなる形状であり、外側排気管の断面形状が直線の部分と内側排気管との間には、触媒を配置せず、排気ガスが通り抜けることを防ぐように充填剤が配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る排気浄化装置によれば、外側排気管と内側排気管の間に配置された触媒が周方向で複数に分割されているので、車種ごとの搭載スペースに合わせて外側排気管の形状(高さや幅)を変更する必要が生じても、新たな形状の触媒を作り直すことなく、分割された触媒の配置や個数を変えることで容易に適応することができる。従って、この排気浄化装置によれば、外側排気管の形状変更の度に新たな形状の触媒を作成する場合と比べて、多様な搭載スペースへの適応が容易になり、コスト低減に有利である。しかも、この排気浄化装置によれば、触媒の一部に製造不良があっても、触媒全体ではなく分割した一部を交換すれば良く、触媒材料の歩留まりを向上させることができる。
【0009】
上記排気浄化装置において、触媒は、内側排気管の周方向でニ分割又は四分割されていてもよい。
この排気浄化装置によれば、例えば触媒全体を四分割し、排出ガスへの接触面積を最大にしてNOx低減率を向上させる場合には四つ全ての触媒を使用し、搭載スペースの制限により外側排気管の高さや幅を変更する場合には四分割された触媒の二つを使用してニ分割とすることで、車種に応じた搭載スペースに容易に適応することができる。
【0010】
上記排気浄化装置において、外側排気管の断面形状は、円のうち戻り排気管側の一部が直線で切り取られた形状であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、多様な搭載スペースへの適応が容易な排気浄化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1の実施形態に係る排気浄化装置を示す図である。
図2図1のII−II線に沿った端面図である。
図3】第2の実施形態に係る排気浄化装置を示す端面図である。
図4】第3の実施形態に係る排気浄化装置を示す端面図である。
図5】第4の実施形態に係る排気浄化装置を示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
[第1の実施形態]
図1及び図2に示されるように、第1の実施形態に係る排気浄化装置1は、ディーゼルエンジンから排出される排気ガスのPM(微粒子状物質)やNOx(窒素酸化物)等を浄化するための装置である。
【0015】
排気浄化装置1は、DPF[Diesel particulate filter]2及び触媒3〜5が収容される二重排気管部(筐体)6を備えている。二重排気管部6は、内側排気管7及び外側排気管8からなる二重管構造を有しており、内側排気管7及び外側排気管8は、戻り排気管9を介して接続されている。図2に示されるように、内側排気管7及び外側排気管8は、排気ガスの流れ方向に垂直なII−II線に沿った断面が円形状を成しており、入口側や出口側を除いて円管状に形成されている。
【0016】
図1及び図2に示されるように、内側排気管7の内部には、排気ガス中のPM(微粒子状物質)を除去するDPF2と、排気ガス中のCOやHC等を浄化するためのディーゼル用酸化触媒[DOC:Diesel Oxidation Catalyst]3が設けられている。DPF2は内側排気管7の出口7b側に充填されており、ディーゼル用酸化触媒3は内側排気管7の入口7a側に充填されている。
【0017】
DPF2は、金属やセラミクス製のハニカム体で構成されており、排気ガス中のPMを捕集する。また、ハニカム体の表面には排気ガスの浄化効率を高めるための触媒が塗布されている。なお、触媒が塗布されていないDPFを用いてもよい。ディーゼル用酸化触媒3は、金属やセラミクス製の触媒キャリアを備えており、COやHC、NOを酸化反応により浄化(無害化)する。
【0018】
内側排気管7の入口7aは、ディーゼルエンジンの排気マニホールドに接続されており、入口7aから入り込んだ排気ガスはディーゼル用酸化触媒3、DPF2の順に通過して出口7bへと流れる。ディーゼル用酸化触媒3及びDPF2によって浄化された排気ガスは、出口7bと接続する戻り排気管9へ流れこむ。
【0019】
戻り排気管9は、内側排気管7の出口7bと外側排気管8の入口8aとを接続する管であり、戻り排気管9へ流れ込んだ排気ガスは内側排気管7の内部を流れる排気ガスとは逆の向きに流れて外側排気管8の入口8aに到達する。
【0020】
戻り排気管9は、二重排気管部6に沿って直線状に延在する円管状の直線部9aを有している。直線部9aには、尿素噴射弁10が設けられており、尿素噴射弁10は図示しない尿素水タンクから供給される尿素水を排気ガス中に噴射する。
【0021】
尿素噴射弁10は、直線部9aの上流側に設けられ、直線部9a内の排気ガスの流れ方向に沿って尿素水を噴射することで、尿素水を排気ガス中に拡散させ、効率的に混じり合わせる。直線部9aは、尿素水を排気ガス中に拡散させるための尿素拡散経路として機能する。
【0022】
外側排気管8と内側排気管7との間には、排気ガス中のNOxを浄化する尿素SCR[Selective Catalytic Reduction]触媒4と、アンモニアスリップを防ぐためのアンモニアスリップ防止触媒5が設けられている。
【0023】
尿素SCR触媒4及びアンモニアスリップ防止触媒5は、円筒形状に形成されており、外側排気管8の内側で内側排気管7の外側のスペースに充填されている。尿素SCR触媒4は外側排気管8の入口8a側に配置され、アンモニアスリップ防止触媒5は外側排気管8の出口8b側に配置されている。
【0024】
尿素SCR触媒4及びアンモニアスリップ防止触媒5は、内側排気管7の周方向で四分割されている。尿素SCR触媒4は、図2に示す断面において内側排気管7を中心とした90度毎に分割されており、四つの分割体4A〜4Dに分けられる。すなわち、尿素SCR触媒4は、円筒を周方向に四分割してなる四つの分割体4A〜4Dから構成されている。
【0025】
これらの分割体4A〜4Dは、排気浄化装置1の組立前は分けられており、組立時に接着剤等によって接合されることで一体化する。分割体4A〜4Dの境界面には、接合を容易にするための面加工等が施されていてもよい。なお、分割体4A〜4Dは、必ずしも接合して一体化させる必要はなく、分離可能な状態で外側排気管8及び内側排気管7の間に嵌め込まれていてもよい。
【0026】
また、本実施形態に係るアンモニアスリップ防止触媒5も、尿素SCR触媒4と同様に周方向で四分割され、円筒を四分割してなる四つの分割体から構成されている。
【0027】
戻り排気管9から外側排気管8の入口8aに流れ込んだ排気ガスは、外側排気管8及び内側排気管7の間を、内部排気管7内を流れる排気ガスと同じ方向に流れて行く。排気ガスは、尿素水が添加された状態で尿素SCR触媒4に流れ込み、尿素水から生じるアンモニアの作用により尿素SCR触媒4においてNOxの還元が行われる。
【0028】
尿素SCR触媒4で還元に用いられなかったアンモニアは、下流のアンモニアスリップ防止触媒5において酸化されることで窒素ガスと水に変えられる。これにより、大気中へのアンモニアの排出(アンモニアスリップ)が防止される。
【0029】
排気ガスは、尿素SCR触媒4及びアンモニアスリップ防止触媒5を通り抜けた後、外側排気管8の出口8bから排出される。
【0030】
以上説明した第1の実施形態に係る排気浄化装置1によれば、外側排気管8と内側排気管7の間に配置された尿素SCR触媒4及びアンモニアスリップ防止触媒5が周方向で複数に分割されているので、車種ごとの搭載スペースに合わせて外側排気管8の形状(高さや幅)を変更する必要が生じても、新たな形状の触媒4,5を作り直すことなく、分割体4A〜4Dの配置や個数を変えることで容易に適応することができる。従って、この排気浄化装置1によれば、外側排気管8の形状変更の度に新たな形状の触媒を作成する場合と比べて、多様な搭載スペースへの適応が容易になり、コスト低減に有利である。しかも、この排気浄化装置1によれば、触媒4,5の一部に製造不良があっても、触媒全体ではなく分割体4A〜4Dの単位で交換すれば良く、触媒材料の歩留まりを向上させることができる。
【0031】
また、この排気浄化装置1によれば、二重管構造を採用して、内側排気管7の内部と内側排気管7及び外側排気管8の間にDPF2及び尿素SCR触媒4をそれぞれ配置することで、DPF2及び尿素SCR触媒4を一体化して装置の小型化を図ることができる。従って、この排気浄化装置1によれば、小型化により、搭載スペースの少ない車種であっても排気浄化装置1を搭載可能となるので、DPF2及び尿素SCR触媒4を搭載可能な車種を増やすことができる。
【0032】
しかも、この排気浄化装置1によれば、DPF2及び尿素SCR触媒4が一体化されて近くに配置されることにより、DPF2からの放熱が抑制されてDPF煤再生制御時の昇温時間短縮や燃料噴射量の削減が図られると共に、尿素SCR触媒4にとってはDPF2の熱により保温されることで、エンジン始動直後の暖気時間の短縮及び還元剤噴射時間の短縮を図ることができる。
【0033】
また、この排気浄化装置1では、戻り排気管9が直線状に延在する直線部9aを有しているので、戻り排気管9を曲線形状のみから形成する場合と比べて、排気ガスが受ける抵抗を少なくすることができる。また、直線部9aを有する簡素な構造は装置の小型化に有利である。
【0034】
更に、この排気浄化装置1では、戻り排気管9の直線部9aに尿素噴射弁10を設けているので、直線状に延在する直線部9a内で尿素水を効率良く拡散させることができる。しかも、DPF2等に加えて尿素噴射弁10も一体化させることができるので、装置の小型化に好適である。
【0035】
[第2の実施形態]
図3に示されるように、第2の実施形態に係る排気浄化装置21は、第1の実施形態に係る排気浄化装置1と比べて、二重排気管22を構成する外側排気管23の形状及び尿素SCR触媒24の配置が大きく異なっている。なお、第1の実施形態と同一の構成要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0036】
具体的には、第2の実施形態に係る外側排気管23は、二重排気管部22の高さ方向の厚さを小さくするために、図3に示す断面形状が円環の上下端部を平行な直線で切り取った形状となっている。すなわち、外側排気管23の中腹部分(尿素SCR触媒24等が配置されている部分)は、円管の上下端部が潰れて平面となった形状を有している。なお、外側排気管23の出口側及び入口側は、出口又は入口に近づくにつれて断面円形状に縮径し、戻り排気管9又は出口側の排気管に接続されている。
【0037】
また、第2の実施形態に係る尿素SCR触媒24は、内側排気管7の周方向で二分割されており、二つの分割体24A,24Bに分けられる。分割体24A,24Bの形状は、第1の実施形態における分割体4A〜4Dと同じである。二つの分割体24A,24Bは、内側排気管7を挟んで左右対称に配置されている。
【0038】
二つの分割体24A,24Bの間には、充填材25が配置されている。充填材25は、外側排気管23と内側排気管7との間に配置され、排気ガスが分割体24A,24Bの隙間を通り抜けることを防止するためのものである。充填材25は、外側排気管23と内側排気管7との間で余分な隙間を塞ぐように設けられている。
【0039】
また、図3には現れていないがアンモニアスリップ防止触媒の形状も尿素SCR触媒24と同様に周方向で分割され、同じ断面形状を有している。この点は、後述する第3の実施形態及び第4の実施形態の場合も同様である。
【0040】
充填材25は、十分な耐熱性を有する材料から構成されている。充填材25は、DPF3の温度を保つ観点から、適切な保温性を有することが好ましい。充填材25の材料としては、例えば耐熱セラミック製マット(具体的には住友スリーエム株式会社製のインタラムマット[登録商標])がある。
【0041】
このような第2の実施形態に係る排気浄化装置21によれば、周方向に二分割された尿素SCR触媒24を左右に配置して上下の触媒を無くす構成とすることで、高さ方向の厚さを小さくできるので、搭載スペースの高さが十分にない場合であっても容易に適応して車両に搭載することが可能になる。
【0042】
また、この排気浄化装置21によれば、第2の実施形態に係る尿素SCR触媒24の分割体24A,24Bとして、第1の実施形態に係る分割体4A〜4Dと同じものを用いるので、組み合わせを変えることで様々な車種の排気浄化装置に採用することができ、筐体形状が変更されるごとに新たな形状の触媒を製造する場合と比べて、大幅なコストダウンが図られる。
【0043】
なお、排気浄化装置21は、尿素SCR触媒24の断面積を減らした分、排気ガスの進行方向に分割体を複数配置することで浄化性能を確保してもよい。
【0044】
[第3の実施形態]
図4に示されるように、第3の実施形態に係る排気浄化装置31は、第2の実施形態に係る排気浄化装置21と比べて、高さ方向ではなく幅方向(水平方向)の厚さを小さくしている点が異なっている。
【0045】
具体的には、第3の実施形態に係る外側排気管33は、二重排気管部32の幅さ方向の厚さを小さくするために、図4に示す断面形状が円環の左右の端部を平行な直線で切り取った形状となっている。すなわち、外側排気管33の中腹部分は、円管の左右両端が潰れて平面となった形状を有している。
【0046】
また、第3の実施形態に係る尿素SCR触媒34は、内側排気管7の周方向で二分割されて二つの分割体34A,34Bに分けられ、二つの分割体34A,34Bは内側排気管7を挟んで上下対称に配置されている。二つの分割体34A,34Bの間には、充填材35が設けられている。充填材35の機能及び構成は第2の実施形態と同様である。
【0047】
このような第3の実施形態に係る排気浄化装置31によれば、周方向に二分割された尿素SCR触媒34を上下に配置して左右の触媒を無くす構成とすることで、幅方向の厚さを小さくできるので、搭載スペースの幅が十分にない場合であっても容易に適応して車両に搭載することが可能になる。また、第3の実施形態に係る尿素SCR触媒34の分割体34A,34Bを他の実施形態に係る分割体と共通とすることで、大幅なコストダウンが図られる。
【0048】
なお、この排気浄化装置31では、図4に示す配置よりも戻り排気管9を外側排気管33に寄せる配置とすることで、幅方向の厚さを更に小さくすることができ、必要スペースを一層低減することができる。
【0049】
[第4の実施形態]
図5に示されるように、第4の実施形態に係る排気浄化装置41は、第3の実施形態に係る排気浄化装置31と比べて、三つの分割体44A〜44Cから尿素SCR触媒44が構成されている点が主に異なる。
【0050】
具体的には、第4の実施形態に係る排気浄化装置41は、内側排気管7の上下に配置された分割体44A、44Bに加えて、内側排気管7の左側(図5の紙面左側)に配置された分割体44Cを有している。
【0051】
第4の実施形態に係る尿素SCR触媒44は、分割体44A、44B、44Cの三つに分けられる。分割体44A、44B、44Cの形状は、第1の実施形態における分割体4A〜4Dと同じである。内側排気管7から見て分割体44Cの反対側(戻り排気管9側)には、充填材45が配置されており、分割体44A、44Bの隙間が塞がれている。
【0052】
第4の実施形態に係る外側排気管43は、図5に示す断面形状が、円環の右端部(図5の紙面右側の端部)を直線で切り取った形状となっている。すなわち、外側排気管43の中腹部分は、円管のうち戻り配管9に沿った右側のみが潰れて平面となった形状を有している。
【0053】
このような第4の実施形態に係る排気浄化装置41によれば、第1の実施形態に係る排気浄化装置1と比べて、四分割された触媒の一つを無くして三分割とすることにより、幅方向の厚さを小さくできるので、搭載スペースの幅が十分にない場合であっても容易に適応して車両に搭載することが可能になる。また、この排気浄化装置41においても、戻り排気管9を外側排気管43に寄せる配置とすることで、幅方向の厚さを更に小さくすることができる。
【0054】
更に、この排気浄化装置41では、上述した第2の実施形態又は第3の実施形態の場合と比べて、触媒と排気ガスの接触面積を大きくできるので、十分な浄化性能を確保しやすい。また、第4の実施形態に係る尿素SCR触媒44の分割体44A、44B、44Cを他の実施形態に係る分割体と共通とすることで、大幅なコストダウンが図られる。
【0055】
なお、排気浄化装置41のように触媒を三分割する場合には、左右何れかの分割体ではなく、上下何れかの分割体を無くす構成であってもよい。
【0056】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0057】
例えば、上述した第2〜第4の実施形態において、必ずしも充填材を設ける必要はない。外側排気管の形状を工夫することで、外側排気管及び内側排気管の間に不要な隙間が生じないようにすることもできる。例えば、図3に示す断面形状において、外側排気管23の上下を凹ませることにより、充填材25が配置される隙間を無くすように形成してもよい。
【0058】
また、本発明に係る排気浄化装置は様々な形状を採用することが可能である。例えば、内側排気管や外側排気管、触媒その他の構成の寸法比率は、図1図4に示すものに限られない。内側排気管や外側排気管は、断面が楕円形状であってもよく、楕円形状の一つ又は複数の端部を直線で切り取った形状であってもよい。
【0059】
触媒の分割体の形状や個数、配置は、上述したものに限られず、円筒を周方向で180°ごとに三分割した分割体を採用してもよく、円筒を周方向で45°ごとに八分割した分割体を採用してもよい。上下左右だけではなく、斜め方向の厚みを小さくするため、斜めの触媒を無くすように配置してもよい。また、上述した第1〜第4の実施形態に係る触媒の分割体は、全く同じ形状である必要はなく、長さ(排気ガスの進行方向の長さ)が互いに異なっていてもよい。
【0060】
また、戻り排気管の形状は、上述したものに限られず、曲線部分のみから構成されていてもよい。また戻り排気管は、外側排気管の出口と内側排気管の入口とを接続する構成であってもよい。この場合、排気ガスは、まず外側排気管と内側排気管の間へと入り込み、外側排気管の出口から戻り排気管を通じて内側排気管の入口へと流れ、内側排気管の内部を通って外へ排出される。
【0061】
還元剤は、尿素水に限られず、HCを含む燃料であってもよく。この場合、尿素SCR触媒に代えてHC選択還元触媒等を採用することができる。また、還元剤の噴射弁の位置は図1に示す位置に限られない。また、還元剤の噴射弁を設けることなく、NOx吸着触媒を採用してもよい。尿素水を用いない場合には、アンモニアスリップ防止触媒を設ける必要もない。
【0062】
また、本発明に係る排気浄化装置は、ディーゼルエンジンの排気ガスに限られず、様々な内燃機関の排気ガスの浄化に利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1,21,31,41…排気浄化装置 2…DPF 3…ディーゼル用酸化触媒 4,24,34,44…尿素SCR触媒 4A〜4D,24A,24B,34A,34B,44A〜44C…分割体 5…アンモニアスリップ防止触媒 6,22,32,42…二重排気管部 7…内側排気管 8,23,33,43…外側排気管 9…戻り排気管 9a…直線部 10…尿素噴射弁 25,35,45…充填材
図1
図2
図3
図4
図5