【文献】
SHINDO, Y.,Application of polarized modulation technique in polymer science,OPTICAL ENGINEERING,1995年12月,Vol. 34, No. 12,pp. 3369-3384
【文献】
HARADA, T. et al.,Inversion of the sign of the solid-state circular dichroism at low temperature,Chemical Physics Letters,2008年,Vol. 456,pp. 268-271
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1波長板または前記第2波長板に代えて、前記第1光源からの光の波長をλとしたとき、当該入射光の振動面とは異なる振動面を持ち互いに直交する2つの偏光成分の間の位相差に対して周期的に変調を加えて、当該位相差変調後の光を出射する光位相変調手段を用いたことを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の円二色性計測装置。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
【0028】
図1(A),(B)は、本発明の第1実施形態に係る円二色性計測装置の構成を説明する概略構成図である。
図1(A)に示す円二色性計測装置1A(第1計測装置/S02計測手段)は、光源10、単色フィルタ20、偏光板30、1/4λ波長板40、光検出器50が光源10からの光学軸に沿ってこの順に配置され、1/4λ波長板40と光検出器50との間の光路上に試料100が配置されているものである。
【0029】
光源10は、試料に対して照射するための光を出射する。この光源10から出射される光は非偏光であり、例えば、波長280nmの光を出射する重水素ランプ等が光源10として用いられる。
【0030】
光源10から出射された光は単色フィルタ20を通過して、偏光板30に入射する。単色フィルタ20は、円二色性の測定には不要な波長成分やノイズ成分等の除去のために設けられている。本実施形態の円二色性計測装置1Aでは、波長280nmの光を通過させる単色フィルタ20が用いられる。偏光板30では、光源10から出射された光のうち直線偏光が取り出される。偏光板30としては、例えば、グランテーラープリズムが用いられる。
【0031】
ここで、円二色性計測装置1Aにおいて、光源10からの光の光学軸をZ軸とし、Z軸に対して垂直であり互いに直交する2つの軸を、それぞれX軸及びY軸とする。偏光板30は、ここでは、X軸に対して0°方向の直線偏光を取り出すものとする。
【0032】
1/4λ波長板40は、Z軸周りにX軸に対して45°回転させた状態で配置される。偏光板30を通過した直線偏光が1/4λ波長板40を通過することにより、直線偏光の振動面に対して直交する振動面をもつ偏光成分について、直線偏光の振動面と同じ振動面をもつ偏光成分に対して位相差を1/4λ(π/2)とされる。この結果、1/4λ波長板40を通過した光は右円偏光または左円偏光に変換されて出射される。
【0033】
光検出器50は、1/4λ波長板40から出射されて、試料100を透過した透過光を電気信号に変換する機能を有する。円二色性の測定では、光検出器50により検出された電気信号を利用して、右円偏光による信号と左円偏光による信号との差分を求め、その演算結果をたとえば円二色性イメージとして出力する等により、測定結果を得ることができる。
【0034】
また、
図1(B)に示す円二色性計測装置1B(第2計測装置/S20計測手段)は、光源10、単色フィルタ20、1/4λ波長板40、偏光板30、光検出器50が光源10からの光学軸に沿ってこの順に配置され、単色フィルタ20と1/4λ波長板40との間の光路上に試料100が配置されているものである。すなわち、
図1(A)に示す円二色性計測装置1Aと比較して、偏光板30と1/4λ波長板40とが光学軸に沿った配置順が逆転している点と、試料100が1/4λ波長板40の前段に配置される点が相違する。
【0035】
この円二色性計測装置1Bでは、光源10から出射された光が単色フィルタ20を通過した後、試料100に照射される。このうち試料を透過した光が、1/4λ波長板40を通過して円偏光に変換されたのち、偏光板30を通過した光が光検出器50によって電気信号に変換される。
【0036】
本実施形態に係る円二色性計測では、上記の円二色性計測装置1A,1Bを用いて円二色性の測定を行うことにより、試料の円二色性をより正確且つ簡便に計測することが可能となる。この点について、以下説明をする。
【0037】
まず、円二色性の測定において発生するアーチファクトについて説明する。上記の特許文献1によれば、光学活性をもつ試料のミュラー行列は、以下の数式(1)により表される。
【数3】
【0038】
上記の数式(1)において、CDは円二色性、CBは円偏光複屈折、LDは直線偏光二色性、LBは直線偏光複屈折、θは試料のX軸に対する回転角をそれぞれ示している。あまた、数式(1)において各特性を示す単語に「’」を付している場合は、試料を45°傾けた場合について記載したものである。以下では、上記の数式(1)を数式(2)のように省略して記載する。なお、数式(1)において記載されている行列の係数e
−Aeについては、以下の検討には影響を与えない係数であるため、省略する。
【数4】
【0039】
この数式(2)で記載される試料に対して左円偏光もしくは右円偏光を照射すると、試料を透過した透過光のストークスベクトルは、ミュラー行列S(θ)と、円偏光のストークスベクトルとの積により求めることができる。その結果は、左円偏光の場合は数式(3)、右円偏光の場合は数式(4)のように記載される。
【数5】
【0040】
ここで、光強度は、ストークスベクトルの第1項で表現されるため、左円偏光に対する透過光強度は、数式(3)に基づきS00−S02とわかり、右円偏光に対する透過光強度は、数式(4)に基づきS00+S02とわかる。円二色性は、左円偏光の透過光強度と右円偏光の透過光強度との差であるため、数式(5)で示すように求められる。
【数6】
【0041】
数式(5)では、左円偏光の透過光強度と右円偏光の透過光強度との差を求めた結果には、CD(円二色性)の成分だけではなく、LD(直線偏光二色性)とLB(直線偏光複屈折)に由来する成分が含まれることが示されている。LDとLBとの積がCDと比較して無視できる程度に小さい場合は、直線偏光成分が含まれない純粋な円二色性に係る情報を得ることができる。しかしながら、LDとLBとの積がCDと比較して無視できない程度の大きさである場合には、純粋な円二色性の測定ができているとは言えず、アーチファクトの影響を受けるという問題がある。
【0042】
ところで、特許文献1において光学活性をもつ試料のミュラー行列として上記の数式(1)が示されているが、非特許文献2では、ミュラー行列の記載が数式(6)に示すものとなっていて、特許文献1における数式(1)と符号や記号等が一部相違している。
【数7】
【0043】
例えば、行列要素S02について、特許文献1では「CD+1/2(LB’LD−LBLD’)」となっているが、非特許文献2では「CD+1/2(LB’LD+LBLD’)」となっている。このように、基本となるミュラー行列が正確ではないとすると、その先の議論が難しくなる。このため、発明者は、非特許文献2,3に記載のミュラー行列の導出方法に基づいて、ミュラー行列を新たに求めた。
【0044】
非特許文献3によれば、ミュラー行列の一般式は以下の数式(7),(8)で示される。
【数8】
【0045】
そして、上記の数式を展開すると、数式(9),(10)が得られる。
【数9】
【0046】
さらに、上記の数式(9),(10)を、非特許文献2に従って2次の項まで展開すると、以下の数式(11)が得られる。
【数10】
【0047】
数式(11)に含まれるパラメータのうち、CDとCBとは、LDおよびLBと比較して10
−3から10
−5程度小さな値になるので、CDとCBの2乗の項は無視できると考え、数式(11)を簡略化した結果、数式(12)が得られる。
【数11】
【0048】
ここで、試料の回転角をθとすると、試料の回転を考慮したミュラー行列は以下の数式(13)で表すことができる。
【数12】
【0049】
数式(13)におけるRは回転のための行列であり、以下の数式(14)と表される。また、R−1は、Rの逆行列であり、数式(15)と表される。
【数13】
【0050】
以上の結果、ミュラー行列の行列要素S02は数式(16)になり、S20は数式(17)となる。
【数14】
【0051】
ここで、本実施形態に係る円二色性計測装置1Aを用いて、偏光軸がX軸方向になるように偏光板30を配置した場合、試料からの透過光のストークスベクトルは、以下の数式(18)の計算により導かれる。
【数15】
【0052】
この場合に、円二色性計測装置1Aの光検出器50において検出される光の強度は、数式(18)の第1項、すなわち数式(19)となる。
【数16】
【0053】
次に、偏光軸がY軸方向になるように偏光板30を配置した場合、試料からの透過光のストークスベクトルは、以下の数式(20)の計算により導かれる。
【数17】
【0054】
この場合に、円二色性計測装置1Aの光検出器50において検出される光の強度は、数式(20)の第1項、すなわち数式(21)となる。
【数18】
【0055】
ここで、数式(21)から数式(19)を減算すると、数式(22)で示すように行列要素S02のみとなるので、上記の計算結果、S02が求められる。
【数19】
【0056】
すなわち、円二色性計測装置1Aを用いて、偏光板30を通過した第1の振動面を有する直線偏光を、第1の振動面に対して45°の角度をなす1/4λ波長板40に対して入射させることで得られる円偏光を試料に対して照射させることで得られる第1の測定結果と、偏光板30の配置を90°回転することにより当該1/4λ波長板40に対して第1の振動面と直交する第2の振動面を有する直線偏光を入射させることで得られる円偏光を試料に対して照射させることで得られる第2の測定結果とによって、ミュラー行列の行列要素S02を求めることができる。
【0057】
次に、偏光板30、1/4λ波長板40および試料100の配置が変更された円二色性計測装置1Bを用いた測定を行う場合を想定して、円二色性装置1Aと同様の計算を行う。まず偏光軸がX軸方向になるように偏光板30を配置した場合、試料からの透過光のストークスベクトルは、以下の数式(23)の計算により導かれる。
【数20】
【0058】
この場合に、円二色性計測装置1Bの光検出器50において検出される光の強度は、数式(23)の第1項、すなわち数式(24)となる。
【数21】
【0059】
次に、偏光軸がY軸方向になるように偏光板30を配置した場合、試料からの透過光のストークスベクトルは、以下の数式(25)の計算により導かれる。
【数22】
【0060】
この場合に、円二色性計測装置1Aの光検出器50において検出される光の強度は、数式(25)の第1項、すなわち数式(26)となる。
【数23】
【0061】
ここで、数式(25)から数式(26)を減算すると、数式(27)で示すように行列要素S20のみとなるので、上記の計算結果、S20が求められる。
【数24】
【0062】
すなわち、円二色性計測装置1Bを用いて、光源10から出射され、試料100を透過した透過光を1/4λ波長板40に対して入射させ、1/4λ波長板40から出射された光を1/4λ波長板40に対して45°の角度をなす偏光板30を通過させることで、第1の振動面を有する光を通過させ、これを光検出器50により検出することで得られる第3の測定結果と、偏光板30の配置を90°回転することにより、第1の振動面と直交する第2の振動面を有する光を光検出器50により検出することで得られる第4の測定結果とによって、ミュラー行列の行列要素S20を求めることができる。
【0063】
ところで、数式(16)と(17)とに示されるように、行列要素のS02とS20とは、直線偏光由来の項、すなわちアーチファクト成分の符号が逆転しているので、S02とS20とを足し合わせることで、数式(28)に示すようにアーチファクト成分を打ち消すことができ、結果として、純粋な円二色性の測定結果を得ることができる。
【数25】
【0064】
このように、本実施形態に係る円二色性計測装置及びこの円二色性測定方法によれば、ミュラー行列の行列要素S02と行列要素S20とをそれぞれ求めた後、これに基づいて円二色性を算出される。このため、従来の円二色性の測定結果には含まれていたアーチファクト成分が除去されるため、より正確な円二色性の測定を行うことができる。また、従来は、より正確な円二色性を計測するために、円二色性以外の光学活性を有しない状態である溶液状態での測定を行ってきたが、上記の計測方法によれば、溶液状態以外の状態、例えば、固相、ゲル、液晶、膜状の試料の円二色性であっても、アーチファクト成分の除去が適切に行われるため、溶液状態ではない試料の円二色性の計測にも適用することが可能となる。
【0065】
なお、上記では、偏光板30を90°回転させた場合について記載したが、波長板40を90°回転させた場合でも同様の効果が得られる。
【0066】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る円二色性計測装置の構成について説明する。
図2及び
図3は、本発明の第2実施形態に係る円二色性計測装置の構成を説明する概略構成図である。第2実施形態に係る円二色性計測装置が第1実施形態に係る円二色性計測装置と相違する点は、偏光板30、1/4λ波長板40、及び試料100がターンテーブル60上に配置され、ターンテーブル60の回転によりこれらが回転可能となっている点である。
【0067】
図2に示す円二色性計測装置2Aは、
図1(A)の円二色性計測装置1Aに対応する構成となっていて、光源10、単色フィルタ20、偏光板30、1/4λ波長板40、光検出器50が光源10からの光学軸に沿ってこの順に配置され、1/4λ波長板40と光検出器50との間の光路上に試料100が配置されている。第1実施形態と同様に、光源10からの光の光学軸をZ軸とし、Z軸に対して垂直であり互いに直交する2つの軸を、それぞれX軸及びY軸とすると、偏光板30、1/4λ波長板40及び試料100がターンテーブル60上に配置され、このターンテーブル60はX軸周りに回転可能となっている。また、偏光板30及び1/4λ波長板40は、光学軸周りに回転可能となっていて、ターンテーブル60と同様にX軸周りに回転可能となっている。
【0068】
図3に示す円二色性計測装置2Bは、
図1(B)の円二色性計測装置1Bに対応する構成であり、且つ円二色性計測装置2Aのターンテーブル60を180°回転させたものである。この構成では、光源10、単色フィルタ20、1/4λ波長板40、偏光板30、光検出器50が光源10からの光学軸に沿ってこの順に配置され、単色フィルタ20と1/4λ波長板40との間の光路上に試料100が配置されている。
【0069】
上記の円二色性計測装置2A,2Bを用いて測定を行う方法について説明する。まず、
図2に示す円二色性計測装置2Aにおいて、1/4λ波長板40をZ軸周りにX軸に対して45°回転した状態で配置すると共に偏光板30の偏光軸をX軸方向とする。そして、この状態で、数式(19)に示す1/2(S00−S02)に相当する光の強度を取得する。次に、偏光板30を回転することで偏光軸をY軸方向とし、数式(21)に示す1/2(S00+S02)に相当する光の強度を取得する。そして、これらの結果より、試料のミュラー行列の行列要素S02を得ることができる。
【0070】
次に、ターンテーブル60を180°回転させることで、
図3に示す円二色性計測装置2Bの配置とする。また、さらに1/4λ波長板40についても光学軸周りに90°回転させることで、1/4λ波長板40の配置を
図1(B)の円二色性計測装置1Bと同様にする。そして、1/4λ波長板40をZ軸周りにX軸に対して45°回転した状態で配置すると共に偏光板30の偏光軸をX軸方向とする。そして、この状態で、数式(24)に示す1/2(S00+S20)に相当する光の強度を取得する。次に、偏光板30を回転することで偏光軸をY軸方向とし、数式(26)に示す1/2(S00−S20)に相当する光の強度を取得する。そして、これらの結果より、試料のミュラー行列の行列要素S20を得ることができる。
【0071】
最後に、上記の計算の結果得られたミュラー行列の行列要素S02及びS20を加算することで、数式(28)で示すように正確な円二色性信号を得ることができる。
【0072】
以上のように、第2実施形態に係る円二色性計測装置によれば、第1実施形態と同様に、アーチファクト成分が除去されたより正確な円二色性の測定が可能となる。また、第1実施形態と比較すると、第2実施形態に係る円二色性装置の場合は、ターンテーブル60を回転させることで、光学部品及び試料の配置を変更するため、より簡便に計測ができる。また、手動で配置を変更する場合と比較して、各部品や試料の位置や向きを光学軸に沿って正確に配置をすることが可能となるため、より精度よく円二色性を測定することができる。
【0073】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態に係る円二色性計測装置の構成について説明する。
図4及び
図5は、本発明の第3実施形態に係る円二色性計測装置の構成を説明する概略構成図である。第3実施形態に係る円二色性計測装置が第2実施形態に係る円二色性計測装置と相違する点は、ターンテーブル60上に配置されているものが、光源10、単色フィルタ20及び光検出器50であって、ターンテーブル60の回転によりこれらが回転可能となっている点である。また、光学系の最上流となる光源10と最下流となる光検出器50とがターンテーブル60上に配置されるため、ミラー81〜84により光の進行方向を変える構成となっている。
【0074】
図4に示す円二色性計測装置3Aは、
図1(A)の円二色性計測装置1Aに対応する構成である。円二色性計測装置3Aでは、光源10、単色フィルタ20、偏光板30、1/4λ波長板40、光検出器50が光源10からの光学軸に沿ってこの順に配置されていて、1/4λ波長板40と光検出器50との間の光路上に試料100が配置されている。また、光路上にミラー81〜84が配置される。
【0075】
偏光板30、1/4λ波長板40及び試料100が載置される軸をZ軸とし、Z軸に対して垂直であり互いに直交する2つの軸を、それぞれX軸及びY軸とすると、光源10、単色フィルタ20及び光検出器50がターンテーブル60上に配置され、このターンテーブル60はX軸周りに回転可能となっている。また、ターンテーブル60上において、光源10及び単色フィルタ20側と光検出器50側とは隔壁70により区切られている。偏光板30及び1/4λ波長板40は、光学軸周りに回転可能となっていて、ターンテーブル60と同様にX軸周りに回転可能となっている。
【0076】
図5に示す円二色性計測装置2Bは、
図1(B)の円二色性計測装置1Bに対応する構成であり、且つ円二色性計測装置3Aのターンテーブル60を180°回転させたものである。この構成では、光源10、単色フィルタ20、1/4λ波長板40、偏光板30、光検出器50が光源10からの光学軸に沿ってこの順に配置され、単色フィルタ20と1/4λ波長板40との間の光路上に試料100が配置されている。
【0077】
上記の円二色性計測装置3A,3Bを用いて測定を行う方法について説明する。まず、
図4に示す円二色性計測装置3Aにおいて、1/4λ波長板40をZ軸周りにX軸に対して45°回転した状態で配置すると共に偏光板30の偏光軸をX軸方向とする。この構成で光源10から光を出射すると、光源10からの光は、単色フィルタ20を経てZ軸の−方向へ進んだ後、ミラー81での反射によりその進路がY軸の−方向へ変更され、さらに、ミラー82での反射によりZ軸方向へ変更される。その後、偏光板30、1/4λ波長板40、試料100を通過した光は、ミラー83を経てY軸方向へ進み、さらにミラー84によりZ軸の−方向へ進み、光検出器50へ入射する。この状態では、数式(19)に示す1/2(S00−S02)に相当する光の強度を取得することができる。次に、偏光板30を回転することで偏光軸をY軸方向とし、数式(21)に示す1/2(S00+S02)に相当する光の強度を取得する。そして、これらの結果より、試料のミュラー行列の行列要素S02を得ることができる。
【0078】
次に、ターンテーブル60を180°回転させることで、
図5に示す円二色性計測装置3Bの配置とする。また、さらに1/4λ波長板40についても光学軸周りに90°回転させることで、1/4λ波長板40の配置を
図1(B)の円二色性計測装置1Bと同様にする。そして、1/4λ波長板40をZ軸周りにX軸に対して45°回転した状態で配置すると共に偏光板30の偏光軸をX軸方向とする。この状態で光源10から出射した光は、単色フィルタ20を経てZ軸方向へ進んだ後、ミラー84での反射によりその進路がY軸方向へ変更され、さらに、ミラー82での反射によりZ軸の−方向へ変更される。その後、試料100、1/4λ波長板40、偏光板30を通過した光が、ミラー82を経てY軸の−方向へ進み、さらにミラー81によりZ軸方向へ進み、光検出器50へ入射する。そして、この状態で、数式(24)に示す1/2(S00+S20)に相当する光の強度を取得する。次に、偏光板30を回転することで偏光軸をY軸方向とし、数式(26)に示す1/2(S00−S20)に相当する光の強度を取得する。そして、これらの結果より、試料のミュラー行列の行列要素S20を得ることができる。
【0079】
最後に、上記の計算の結果得られたミュラー行列の行列要素S02及びS20を加算することで、数式(28)で示すように正確な円二色性信号を得ることができる。
【0080】
以上のように、第3実施形態に係る円二色性計測装置によれば、第1実施形態と同様に、アーチファクト成分が除去されたより正確な円二色性の測定が可能となる。また、第1実施形態と比較すると、第3実施形態に係る円二色性装置の場合は、ターンテーブル60を回転させることで、光学部品及び試料の配置を変更するため、より簡便に計測ができる。また、手動で配置を変更する場合と比較して、各部品や試料の位置や向きを光学軸に沿って正確に配置をすることが可能となるため、より精度よく円二色性を測定することができる。また、試料100を移動することなく計測が行えるため、壊れやすい、倒れやすい等の力学的に不安定な試料についても計測を行うことができる。
【0081】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態に係る円二色性計測装置の構成について説明する。
図6は、本発明の第4実施形態に係る円二色性計測装置の構成を説明する概略構成図である。第4実施形態に係る円二色性計測装置が第3実施形態に係る円二色性計測装置と相違する点は、単色フィルタ20に代えて分光器21が用いられている点、1/4λ波長板40に代えて円偏光変調器11が用いられている点である。また、本実施形態の円二色性計測装置では、円偏光変調器45及び光検出器50からの光信号を受信するロックインアンプ91及び記録計92が接続されている。
【0082】
図6に示す円二色性計測装置4は、
図1(A)の円二色性計測装置1Aに対応する構成である。円二色性計測装置4では、光源10、分光器21、偏光板30、円偏光変調器45、光検出器50が光源10からの光学軸に沿ってこの順に配置されていて、円偏光変調器45と光検出器50との間の光路上に試料100が配置されている。また、光路上にミラー81〜84が配置される。分光器21は、光源10からの光を入射し、特定の波長の光のみを出力させる。円偏光変調器45は、光源10からの光を入力し、右円偏光または左円偏光に周期的に変換する機能を有する。円偏光変調器45は、光源10から入射する光に含まれる直線偏光について、互いに直交する2つの偏光成分の間の位相差が周期的に変化するように変調されることで、右円偏光又は左円偏光に交互に変換されて出射される。円偏光変調器45の具体的な素子としては、例えば光弾性変調器(PEM)を用いることができる。また、円偏光変調器45における変調の周期を示す変調信号が、ロックインアンプ91へ送信される構成となっている。同時に、光検出器50において受光した光の信号についてもロックインアンプ91へ送信される構成となっている。また、ロックインアンプ91には記録計92が接続されている。記録計92は、ロックインアンプ91において取得された情報を格納する機能を有し、例えば、AD変換器とコンピュータを用いて実現することもできる。
【0083】
また、円二色性計測装置4では、偏光板30、円偏光変調器45及び試料100が載置される軸をZ軸とし、Z軸に対して垂直であり互いに直交する2つの軸を、それぞれX軸及びY軸とすると、光源10、分光器21及び光検出器50がターンテーブル60上に配置され、このターンテーブル60はX軸周りに回転可能となっている。また、ターンテーブル60上において、光源10及び単色フィルタ20側と光検出器50側とは隔壁70により区切られている。偏光板30及び1/4λ波長板40は、光学軸周りに回転可能となっていて、ターンテーブル60と同様にX軸周りに回転可能となっている。なお、
図6では、
図5の円二色性計測装置3Bに対応する構成が示されているが、ターンテーブル60を回転させることで、
図4の円二色性計測装置3Aの構成とすることもできる。
【0084】
上記の円二色性計測装置4Aを用いて測定を行う方法について説明する。まず、ターンテーブル60を180°回転させて、円二色性計測装置3Aに対応する構成とし、円偏光変調器45を動作させて、右円偏光と左円偏光とを周期的に交互に出射させる構成とすることで、光検出器50において、数式(19)に示す1/2(S00−S02)に相当する光の強度と、数式(21)に示す1/2(S00+S02)に相当する光の強度とを交互に取得する。これらの結果は、ロックインアンプ91において、円偏光変調器45からの変調信号と組み合わせることで、どの時点の光の強度がどの値に対応するか、すなわち、1/2(S00−S02)なのか1/2(S00+S02)なのかを把握することができる。記録計92では、1/2(S00−S02)に相当する光の強度と、1/2(S00+S02)に相当する光の強度とを区別して格納する。これらの結果より、試料のミュラー行列の行列要素S02を得ることができる。
【0085】
次に、ターンテーブル60を180°回転させることで、
図5に示す円二色性計測装置3Bに対応する構成とする。そして、円偏光変調器45を動作させて、右円偏光と左円偏光とを周期的に交互に出射させる構成とすることで、数式(24)に示す1/2(S00+S20)に相当する光の強度と、数式(26)に示す1/2(S00−S20)に相当する光の強度とを交互に取得する。これらの結果は、ロックインアンプ91において、円偏光変調器45からの変調信号と組み合わせることで、どの時点の光の強度がどの値に対応するか、すなわち、1/2(S00+S20)なのか1/2(S00−S20)なのかを把握することができる。記録計92では、1/2(S00+S20)に相当する光の強度と、1/2(S00−S20)に相当する光の強度とを区別して格納する。これらの結果より、試料のミュラー行列の行列要素S02を得ることができる。
【0086】
最後に、上記の計算の結果得られたミュラー行列の行列要素S02及びS20を加算することで、数式(28)で示すように正確な円二色性信号を得ることができる。
【0087】
以上のように、第4実施形態に係る円二色性計測装置によれば、第1実施形態と同様に、アーチファクト成分が除去されたより正確な円二色性の測定が可能となる。また、第1実施形態と比較すると、第4実施形態に係る円二色性装置の場合は、ターンテーブル60を回転させることで、光学部品及び試料の配置を変更するため、より簡便に計測ができる。また、手動で配置を変更する場合と比較して、各部品や試料の位置や向きを光学軸に沿って正確に配置をすることが可能となるため、より精度よく円二色性を測定することができる。また、試料100を移動することなく計測が行えるため、壊れやすい、倒れやすい等の力学的に不安定な試料についても計測を行うことができる。さらに、第4実施形態に係る円二色性計測装置では、単色フィルタや波長板を交換することなく、分光器及び円偏光変調器の設定を変えるだけで様々な波長の円二色性の信号を得ることができるため、円二色性スペクトルを容易に取得することが可能となる。
【0088】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態に係る円二色性計測装置の構成について説明する。本実施形態以降は、第1〜第4実施形態を改良したものであり、試料の円二色性をより正確に計測することが可能な構成である。
【0089】
図7は、第5実施形態に係る円二色性計測装置の構成を示す図である。
図7に示す円二色性計測装置5(第3測定装置/S20計測手段)は、直線偏光光源15、単色フィルタ20、1/4λ波長板40、偏光板30、光検出器50が光源10からの光学軸に沿ってこの順に配置され、単色フィルタ20と1/4λ波長板40との間の光路上に試料100が配置されているものである。第1実施形態に係る円二色性計測装置と比較すると、光源10に代えて直線偏光光源15が用いられている点が最も大きな相違点である。また、試料100、1/4λ波長板40及び偏光板30の配置も第1実施形態の円二色性計測装置とは相違する。
【0090】
以下、円二色性計測装置5を用いて、数式(16)に示すS02及び数式(17)に示す行列要素S20を計測する方法を示す。ここで、以降の数式の簡略化のために、光源及び光学素子のミュラー行列を以下数式(29)〜(34)のように略記する。
【0093】
ここで、
図1に示す第1実施形態に係る構成を用いて、数式(23)〜(26)に従って行列要素S20を求める場合は、無偏光光を試料に対して照射することになるが、完全な無偏光光でないと上記数式は成立しない。すなわち、S20以外の様々な行列要素が混入することになる。
【0094】
実際に測定に用いられる光源では、レンズや分光器などの様々な光学素子を透過させる必要があるため、これらの光学素子や光学配置の影響を受けてわずかに偏光成分が生じる。したがって、完全な無偏光性を保証することは現実的には極めて難しい。このため、実際の計測においては、無偏光光源内のわずかな偏光成分により、新たなアーチファクトが生じるという問題があった。
【0095】
そこで、
図7に示す円二色性計測装置5では、行列要素S20の測定に際して、直線偏光光源15を用いることで、上記の問題を解決した。具体的には、
図7に示す円二色性計測装置5では、直線偏光光源15からの直線偏光光は単色フィルタ20を経て試料100に照射される。そして試料100を透過した光は、1/4λ波長板40及び偏光板30を通って、光検出器50で電気信号に変換される。なお光の光軸をZ軸とし、Z軸に垂直で横方向の軸をY軸、同じくZ軸に垂直で縦方向の軸をX軸と定義したときに、波長板30は、Z軸周りにX軸に対して45°回転させて設置する。
【0096】
直線偏光光源15及び偏光板30の偏光軸をX軸方向となるようにセットすると、試料からの透過光のストークス行列は、数式(35)で示される行列計算で求められる。
【数28】
【0097】
この場合、光検出器50で検出される光強度K00は、数式(35)の第1項、すなわち数式(36)となる。
【数29】
【0098】
次に、直線偏光光源15の偏光軸を90°回転してY軸方向にセットし、偏光板30の偏光軸をX軸方向のまま保持すると、試料からの透過光のストークス行列は、数式(37)で示される行列計算で求められる。
【数30】
【0099】
この場合、光検出器50で検出される光強度K10は、数式(37)の第1項、すなわち数式(38)となる。
【数31】
【0100】
次に直線偏光光源15の偏光軸を90°回転してX軸方向にセットし、偏光板30の偏光軸も90°回転してY軸方向にセットすると、試料からの透過光のストークス行列は、数式(39)で示される行列計算で求められる。
【数32】
【0101】
この場合、光検出器50で検出される光強度K01は、数式(39)の第1項、すなわち数式(40)となる。
【数33】
【0102】
次に直線偏光光源15の偏光軸を90°回転してY軸方向にセットし、偏光板30の偏光軸をY軸方向のままにすると、試料からの透過光のストークス行列は、数式(40)で示される行列計算で求められる。
【数34】
【0103】
この場合、光検出器50で検出される光強度K11は、数式(41)の第1項、すなわち数式(42)となる。
【数35】
【0104】
このようにして得られた4つの光強度、K00,K10,K01,K11を使い、数式(43)に示す演算を行うことで、行列要素S20を求めることができる。
【数36】
【0105】
このようにして求められた行列要素S20と、数式(22)によって求められたS02と、を数式(28)に従って足し合わせることで、CD以外のアーチファクト成分が打ち消され、純粋なCD信号のみが得られることになる。
【0106】
第5実施形態の円二色性測定装置によれば、無偏光光を使うことなくアーチファクト成分を打ち消すことができるため、完全な無偏光光源は必要なく、また無偏光光源にわずかに含まれる偏光成分による新たなアーチファクトも発生しないため、理想的なアーチファクトの打消しが可能となる。
【0107】
(第6実施形態)
第6実施形態に係る円二色性測定装置について、
図8を用いて説明する。
図8(A)と
図8(B)とでは、円二色性測定装置に含まれる各光学部品及び試料の配置が異なる。
【0108】
図8に示す円二色性測定装置においては、第5実施形態において用いられた直線偏光光源15に代えて、一般的な無偏光の光源10と第1の偏光板32とを組み合わせて、直線偏光光源15と同じ働きをさせる点が第5実施形態の構成と相違する。なお、光源10については、第1の偏光板32で直線偏光のみが取り出されるため、完全に無偏光光源である必要は無く、ある程度の偏光特性を持っていてもかまわない。
【0109】
まず
図8(A)の円二色性測定装置6Aにおいて、光源10からの光は、第1の偏光板32により直線偏光光に変換された後に、試料100に照射される。そして、試料100を透過した光は、1/4λ波長板40、第2の偏光板34を通して、光検出器50に検出される。
【0110】
上記の構成において、第1の偏光板32をX軸方向に、1/4λ波長板40をX軸に対して45度、第2の偏光板34をX軸方向にセットすると、透過光のストークス行列は、数式(44)で示される行列計算で求められる。
【数37】
【0111】
この場合、光検出器50で検出される光強度K00は、数式(44)の第1項、すなわち数式(45)となる。
【数38】
【0112】
次に、第1の偏光板32をY軸方向に、1/4λ波長板40をX軸に対して45度、第2の偏光板34をX軸方向にセットすると、透過光のストークス行列は、数式(46)で示される行列計算で求められる。
【数39】
【0113】
この場合、光検出器50で検出される光強度K00は、数式(46)の第1項、すなわち数式(47)となる。
【数40】
【0114】
次に、第1の偏光板32をX軸方向に、1/4λ波長板40をX軸に対して45度、第2の偏光板34をY軸方向にセットすると、透過光のストークス行列は、数式(48)で示される行列計算で求められる。
【数41】
【0115】
この場合、光検出器50で検出される光強度K01は、数式(48)の第1項、すなわち数式(49)となる。
【数42】
【0116】
次に、第1の偏光板32をY軸方向に、1/4λ波長板40をX軸に対して45度、第2の偏光板34をY軸方向にセットすると、透過光のストークス行列は、数式(50)で示される行列計算で求められる。
【数43】
【0117】
この場合、光検出器50で検出される光強度K11は、数式(50)の第1項、すなわち数式(51)となる。
【数44】
【0118】
上記の測定により得られた4つの光強度K00、K10,K01,K11を使い、数式(52)に示す演算を行うことで、行列要素S20が求められる。
【数45】
【0119】
なお、行列要素S02の計測については、
図1(A)に示す第1実施形態での円二色性測定装置の構成を用いて計測を行っても良いが、代わりに
図8(A)の円二色性測定装置6Aで用いられた光学部品の配置を変更し、
図8(B)で示されるように、第1の偏光板32、第2の偏光板34、1/4λ波長板40、試料100の順で光源10からの光が照射されるような光学配置とし、第1の偏光板32と第2の偏光板34とを一緒に回転させてS02を計測することも可能である。この構成の場合、光源10から光検出器50に至る光学素子がS02計測とS20計測との間で同じになるため、光学素子の数による透過率の違いをキャンセルすることができ、より正確な計測が可能となる。
【0120】
このようにして求められた行列要素S20及びS02を、数式(28)に従って足し合わせることで、CD以外のアーチファクト成分が打ち消され、純粋なCD信号のみが得られることになる。
【0121】
なお、本実施形態のように偏光板を回転させて偏光方向を変更する場合、光源10と第1の偏光板32とを一緒にZ軸方向に沿って回転するようにすれば、光源10の偏光特性に依らず同一光量の光となるため、より精度の高い行列要素S20の計測が行える。同様に、後段の第2の偏光板34と光検出器50とを一緒に回転するようにすれば、光検出器50の偏光特性に依らず同一感度で光を検出できるため、より精度の高い行列要素S20の計測が行える。
【0122】
このように、第6実施形態に係る円二色性測定装置によれば、第5実施形態の円二色性装置を用いることによる効果に加えて、無偏光光源や直線偏光光源といった特別な光源を光源10として準備する必要がなく、偏光特性が保証されていないような一般的な光源を利用することができる。
【0123】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態に係る円二色性測定装置について、
図9を用いて説明する。第7実施形態に係る円二色性測定装置(第4測定装置/S02計測手段)は、第6実施形態に係る円二色性測定装置と比較して、用いられる光学部品は同じであるが、その配置が相違する。
【0124】
図9に示す円二色性測定装置7では、光源10からの光は、第1の偏光板32により直線偏光光に変換され、1/4λ波長板40を通過した後、試料100に照射される。そして、試料100を透過した光は、第2の偏光板34を通して、光検出器50に検出される。
【0125】
まず、第1の偏光板32をX軸方向に、1/4λ波長板40をX軸に対して45度、第2の偏光板34をX軸方向にセットすると、透過光のストークス行列は、数式(53)で示される行列計算で求められる。
【数46】
【0126】
この場合、光検出器50で検出される光強度N00は、数式(53)の第1項、すなわち数式(54)となる。
【数47】
【0127】
次に、第1の偏光板32をY軸方向に、1/4λ波長板40をX軸に対して45度、第2の偏光板34をX軸方向にセットすると、透過光のストークス行列は、数式(55)で示される行列計算で求められる。
【数48】
【0128】
この場合、光検出器50で検出される光強度N10は、数式(55)の第1項、すなわち(56)となる。
【数49】
【0129】
次に、第1の偏光板32をX軸方向に、1/4λ波長板40をX軸に対して45度、第2の偏光板34をY軸方向にセットすると、透過光のストークス行列は、数式(57)で示される行列計算で求められる。
【数50】
【0130】
この場合、光検出器50で検出される光強度N01は、数式(57)の第1項、すなわち数式(58)となる。
【数51】
【0131】
次に、第1の偏光板32をY軸方向に、1/4λ波長板40をX軸に対して45度、第2の偏光板34をY軸方向にセットすると、透過光のストークス行列は、数式(59)で示される行列計算で求められる。
【数52】
【0132】
この場合、光検出器50で検出される光強度N11は、数式(59)の第1項、すなわち数式(60)となる。
【数53】
【0133】
このようにして得られた4つの光強度N00,N10,N01,N11を使い、数式(61)に示す演算を行うことで、行列要素S02が求められる。
【数54】
【0134】
このようにして求められた行列要素S02と、
図8(A)に示した第6実施形態に係る円二色性測定装置6A及び数式(44)〜(52)にしたがって求められた行列要素S20と、を、数式(28)に従って足し合わせることで、CD以外のアーチファクト成分が打ち消され、純粋なCD信号のみが得られることになる。
【0135】
第7実施形態に係る円二色性測定装置によれば、行列要素S02及びS20の計測に際して、第1の偏光板32及び第2の偏光板34の配置を変更する必要がないため、自動回転ステージなどの導入が容易となる。
【0136】
(第8実施形態)
次に、第8実施形態に係る円二色性測定装置について、
図10を用いて説明する。
図10に示す第8実施形態に係る円二色性測定装置8では、第7実施形態に係る円二色性測定装置と比較して、1/4λ波長板が2つ(第1の1/4λ波長板42、第2の1/4λ波長板44)用いられる点が相違する。
【0137】
図10において、光源10からの光は、第1の偏光板32により直線偏光光に変換され、第1の1/4λ波長板42を通った後、試料100に照射される。そして、試料100を透過した光は、第2の1/4λ波長板44と第2の偏光板34とを通して光検出器50に検出される。
【0138】
本実施形態においては、波長板の角度を偏光軸もしくは偏光軸と直角にセットすることで、波長板を引き抜いたのと同じ効果を得るところが、第5〜第7実施形態と異なっている。すなわち、行列要素S20の計測の場合、
図10の第1の1/4λ波長板42の角度を第1の偏光板32と同一もしくは直角にセットすることで、第1の1/4λ波長板42の波長板としての作用は無くなる。したがって、その場合は、
図8(A)に示す第6実施形態に係る円二色性測定装置6Aと等価な光学配置と考えることができる。したがって、第6実施形態において説明した数式(44)〜(52)にしたがって行列要素S20を算出することができる。
【0139】
また、行列要素S02の計測の場合は、第2の1/4λ波長板44の角度を、第2の偏光板34と同一もしくは、互いに直交する角度にセットすることで、第2の1/4λ波長板44の波長板としての作用は無くなるため、第7実施形態に記載の円二色性測定装置7と等価な光学配置と考えることができる。したがって、数式(53)〜(61)を用いて行列要素S02を計測することができる。
【0140】
上記の方法により求められた行列要素S02及びS20を数式(28)に従って足し合わせることで、CD以外のアーチファクト成分が打ち消され、純粋なCD信号のみが得られることになる。
【0141】
言い換えると、本実施形態について光学素子の設定角度は以下の表1にまとめることができる。
【0143】
上記の表1における8つの値を用いて、下記の数式(62)に示す演算を行うことで、CD以外のアーチファクト成分が打ち消され、純粋なCD信号のみが得られることになる。
【数55】
【0144】
以上のように、第8実施形態に係る円二色性測定装置依れば、行列要素S02及び行列要素S20の計測において、光学素子を入れ換える必要が無くなるため、よりシンプルで精度の高い光学設計が可能となる。
【0145】
(第9実施形態)
次に、本発明の第9実施形態について説明する。光学部品の配置は第8実施形態に係る円二色性測定装置8と同様だが、試料を回転可能とする点が第8実施形態と相違する。
【0146】
ここで、表1に示す4つの光学部品の他に、試料の回転角を追加し、光強度N00〜N11及び光強度K00〜K11の計測において波長板を回転させない(共通の値とする)設定を考えると、表2に示す通りとなる。
【0148】
さらに、表2に示すK00〜K11の測定において、光学系全体を45度回転させると、次の表3が得られる。
【0150】
ここで、表3の角度設定に沿って、第1の偏光板32、第1の1/4λ波長板42、試料100、第2の1/4λ波長板44、及び第2の偏光板34の配置を調整することで測定されたN00〜N11及びK00〜K11を用いて上記の数式(62)で示される演算を行うことで、CD以外のアーチファクト成分が打ち消され、純粋なCD信号のみが得られることになる。
【0151】
すなわち、表3によれば、N00〜N11及びK00〜K11をそれぞれ測定する際に、試料を回転させると第1の1/4λ波長板42及び第2の1/4λ波長板44を回転させる必要がないということである。したがって、第8実施形態の測定方法によれば、第1の偏光板32、第1の1/4λ波長板42、第2の1/4λ波長板44、及び第2の偏光板34の4つの光学部品を回転させる必要があったのに対して、本実施形態の測定方法では第1の偏光板32、試料100、第2の偏光板34の2つの光学部品及び試料ですむことから、回転ステージの数を減らすことができる。したがって、より簡便に測定をすることができる。
【0152】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されず、
種々の変更を行うことができる。
【0153】
例えば、上記第1〜第4実施形態の一部の構成を適宜組み合わせた構成としてもよい。また、第1実施形態では、円二色性計測装置1A,1Bについては、同一の装置を用いて光学部品の配置を入れ替えて構成する態様であってもよい。