特許第6013106号(P6013106)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6013106物理的パラメータマッピングのためのグラフィックユーザーインターフェイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013106
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】物理的パラメータマッピングのためのグラフィックユーザーインターフェイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/044 20060101AFI20161011BHJP
   A61B 5/01 20060101ALI20161011BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20161011BHJP
   A61B 5/0492 20060101ALI20161011BHJP
   A61B 5/0478 20060101ALI20161011BHJP
   A61B 5/0408 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   A61B5/04 314K
   A61B5/00 101J
   A61B5/00 101M
   A61B5/04 300J
   A61B5/00 101D
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-207872(P2012-207872)
(22)【出願日】2012年9月21日
(65)【公開番号】特開2013-66713(P2013-66713A)
(43)【公開日】2013年4月18日
【審査請求日】2015年6月26日
(31)【優先権主張番号】13/240,162
(32)【優先日】2011年9月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アハロン・ツルゲマン
(72)【発明者】
【氏名】ナタン・カッツ
(72)【発明者】
【氏名】ガル・ハヤム
【審査官】 松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2010−528683(JP,A)
【文献】 特開2001−061789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B5/00−5/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の器官内の複数の部位で物理的パラメータの値を測定するために用いられる信号を与えるように構成されたプローブと、
操作制御部と、
ディスプレイと、
プロセッサと、を備える機器であって、
前記プロセッサは、
前記値の領域を識別するために前記測定値を解析するように構成されており、前記値の前記領域は測定されなかった1つ又は2つ以上の紛失パラメータからなる少なくとも1つの小領域を含み、前記小領域は、前記値の前記領域の内側に存在しており、
ユーザーから前記操作制御部を介して前記小領域の値の選択を受け取るように構成されており、かつ、
前記選択に応答して、更なる測定の候補部位を前記ディスプレイを介して表示するように構成されており、
前記測定値を解析することは、測定された値の第1の視覚的表現と、前記少なくとも1つの小領域の、前記第1の視覚的表現とは異なる第2の視覚的表現とを、前記ユーザーに向けて前記ディスプレイを介して表示することを含む、機器。
【請求項2】
前記器官は心臓を含む、請求項に記載の機器。
【請求項3】
前記物理的パラメータは、前記心臓によって及ぼされた力と前記心臓の温度のいずれかに応答して評価される、請求項に記載の機器。
【請求項4】
前記物理的パラメータは、前記心臓の電気活動に応答して評価される、請求項に記載の機器。
【請求項5】
前記物理的パラメータは、前記心臓内の前記複数の部位の各局所的活性化時間(LAT)を含む、請求項に記載の機器。
【請求項6】
前記信号は時変電位を含み、前記値を測定することは、前記複数の部位の各信号を記録することを含み、前記測定値を解析することは、前記記録した信号に所定の条件を適用することに応答して前記各LATを決定することを含む、請求項に記載の機器。
【請求項7】
前記候補部位を表示することは、前記ユーザーに向けて前記心臓の画像を前記ディスプレイ上に表示することと、前記画像上に前記候補部位を指示することとを含む、請求項に記載の機器。
【請求項8】
前記ユーザーから前記選択を受け取ることは、前記ユーザーが前記操作制御部を操作して前記第2の視覚的表現内の領域を選択することを含む、請求項に記載の機器。
【請求項9】
前記第1の視覚的表現及び前記第2の視覚的表現は、数直線として形成される、請求項に記載の機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広義には被験者の器官内での物理的パラメータの測定に関し、具体的にはその測定を容易にするためのグラフィックユーザーインターフェイスに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓の電気活動のマッピングなどの医療手技において、通常、可能な限り迅速に手技を実施することが好ましい。しかしながら、可能な限り短時間で手技を完了するための要件は、結果の収集における非効率性にもつながり得る。したがって、この非効率性を低減するためのシステムが有利となる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明のある実施形態は、ある方法を提供するものであり、その方法は、
被験者の器官内の複数の部位で物理的パラメータの値を測定することと、
その値の領域であって、測定されなかった1つ又は2つ以上の値を含む少なくとも1つの小領域を含む、領域を識別するためにその測定値を解析することと、
ユーザーから小領域の値の選択を受け取ることと、
その選択に応答して、更なる測定の候補部位を表示することと、を含む。
【0004】
通常、器官には心臓が含まれる。物理的パラメータは、心臓によって及ぼされた力と心臓の温度のいずれかに応答して評価されてもよい。それに代わって、物理的パラメータは、心臓の電気活動に応答して評価されてもよい。
【0005】
開示する実施形態において、物理的パラメータは、心臓内の複数の部位の各局所的活性化時間(LAT)を含む。通常、その値を測定することは、複数の部位の各時変電位を記録することを含み、測定値を解析することは、記録した時変電位に所定の条件を適用することに応答して各LATを決定することを含む。
【0006】
それに代わる実施形態において、候補部位を表示することは、ユーザーに向けて心臓の画像を表示することと、画像上に候補部位を指示することとを含む。
【0007】
それに代わる更なる実施形態において、測定値を解析することは、測定された値の第1の視覚的表現と、少なくとも1つの小領域の、第1の視覚的表現とは異なる第2の視覚的表現とを、ユーザーに向けて表示することを含む。通常、ユーザーから選択を受け取ることは、ユーザーがポインティング装置を操作して第2の視覚的表現内の領域を選択することを含む。第1及び第2の視覚的表現は、数直線として形成されてもよい。
【0008】
本発明の実施形態によれば、ある機器が更に提供され、その機器は、
被験者の器官内の複数の部位で物理的パラメータの値を測定するために用いられる信号を与えるように構成されたプローブと、
プロセッサとを備え、そのプロセッサは、
それらの値の領域であって、測定されなかった1つ又は2つ以上の値を含む少なくとも1つの小領域を含む、領域を識別するために測定値を解析し、
ユーザーから小領域の値の選択を受け取り、
その選択に応答して、更なる測定の候補部位を表示するように構成されている。
【0009】
本開示は、添付の図面と共になされる、本発明の実施形態の以下の詳細な説明によって、更に十分に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態による生理学的マッピングシステムの概略図。
図2】本発明の実施形態による、心臓のマッピングの間に作成されたディスプレイの概略図。
図3】本発明の実施形態による、図1のシステムによって生成された信号の概略的グラフを示している。
図4】本発明の実施形態による、局所的活性化時間(LAT)の概略的表現。
図5A】本発明の実施形態による、ディスプレイ上の表現を示す概略図。
図5B】本発明の実施形態による、ディスプレイ上の表現を示す概略図。
図6】本発明の実施形態による、図1のマッピングシステムにおいて追従される工程の流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
概要
本発明の実施形態は、被験者の器官内の複数の部位における物理的パラメータの値の測定を改善するための方法を提供する。通常、物理的パラメータは、電極などの電気的センサ、力センサなどの機械的センサ、又は温度センサを使用して、器官の複数の部位の各々で測定され得る任意のパラメータであってよい。各部位で測定され得るパラメータの例には、限定するものではないが、インピーダンス、局所的活性化時間(LAT)、収縮力、温度、及び作用する力が挙げられる。器官は、被験者の体内のいかなる器官であってもよいが、簡潔にするため、別段の指定がない限り、以下の説明において器官は被験者の心臓であると想定される。
【0012】
この方法のユーザーは通常、パラメータを評価するために用いられる心臓の測定値の組を複数の部位で記録する。プロセッサが各測定値を解析して、その測定値が記録された部位に対するパラメータを評価する。プロセッサは、パラメータの値を測定値から導出できるようになっていてもよく、それに代わって、測定によってパラメータの値が生成されなくてもよい。
【0013】
すべての測定値が解析された後、その結果は、パラメータの数直線上に、ユーザーに向けて表示されてもよい。数直線は通常、2種類の数を表示するものであり、第1の種類は、パラメータが評価されており、第2の種類は、パラメータが評価されていないものである。これらの2種類は、視覚的に区別される方式で表示される。例えば、パラメータが評価されている第1の種類は、第1の色で示されてよく、パラメータが評価されていない第2の種類は、第2の色で示されてよい。
【0014】
ユーザーは、第2の色の領域上に(すなわち、評価済みのパラメータがない数の上に)カーソルを配置することができる。この位置から、プロセッサは、通常は心臓の3次元画像上のある部位を示すが、その部位をプロセッサはパラメータの再測定の候補部位であると見なす。プロセッサは、測定値の組において記録が行われているが、パラメータの値が評価されることができなかった部位から候補部位を選択する。
【0015】
ユーザーは、指示された部位で再測定してプロセッサ用の信号を生成することができ、プロセッサはその新たな信号を解析して、指示された部位に対するパラメータを決定する。通常、数直線は、ここで既知となったパラメータの値を反映するように更新され、ユーザーは、数直線が第1の色のみを示し、心臓のすべてのサンプル部位に対してパラメータが測定されたことが示されるまで、上述のプロセスを繰り返すことができる。
【0016】
システムの説明
ここで図1を参照するが、図1は、本発明の実施形態による生理学的マッピングシステム20の概略図である。システム20は、被験者26の器官の特性パラメータをマッピングするために、プローブ24の遠位端部32上のセンサ22を使用している。一実施形態において、センサ22は電極を備える。それに代わってあるいはそれに加えて、センサ22は、力センサ又は温度センサなど、物理的測定値を感知するように構成された別の種類のセンサを備える。
【0017】
本明細書の説明において、マッピングされている器官は、一例として、別段の指定がない限り、被験者の心臓34であると想定されている。通常、プローブ24はカテーテルを備え、そのカテーテルは、システム20のユーザー28によって実施されるマッピング手技の間に被験者26の体の中に挿入される。本明細書の説明において、ユーザー28は、一例として、医療専門家であると想定される。手技の間、被験者26は接地電極23に接続されると想定される。加えて、電極29が、心臓34の領域にて被験者26の皮膚に取り付けられると想定される。
【0018】
システム20は、システムプロセッサ40によって制御されてもよく、システムプロセッサ40は、メモリ44と通信する処理装置42を備えている。プロセッサ40は通常、制御卓46内に搭載されており、制御卓46は、通常はマウス又はトラックボールなどのポインティング装置39を有する操作制御部38を備え、専門家28はこの操作制御部38を使用してプロセッサと相互作用する。プロセッサは、メモリ44内に記憶された、プローブ追跡モジュール30と感知モジュール36とを有するソフトウェアを使用して、システム20を操作する。感知モジュールはセンサ22に従って構成されている。例えば、センサ22が力センサーを含む場合、モジュール36はそのセンサにかかる力の値を生成する。センサ22が電極を備える場合、モジュール36は、その電極によって感知された信号から、局所的活性化時間又はインピーダンスなどの電気パラメータの値を生成する。
【0019】
プロセッサ40によって実施される操作の結果が、専門化に向けてディスプレイ48上に提示され、ディスプレイ48は通常、操作者向けのグラフィックユーザーインターフェイス、及び/又は、マッピングされている間の心臓34の画像を提示する。そのソフトウェアは、例えば、ネットワークを介して電子形式でプロセッサ40にダウンロードされてもよく、あるいは、それに代わってあるいはそれに加えて、磁気的、光学的、又は電子的メモリなどの非一時的な有形のメディア上に提供及び/又は記憶されてもよい。
【0020】
プローブ追跡モジュール30は、プローブが被験者26の体内にある間にプローブ24の各区間を追跡する。追跡モジュールは通常、被験者26の心臓内における、プローブ24の遠位端部32の位置と向きの両方を追跡する。いくつかの実施形態において、モジュール30はプローブの他の区間を追跡する。追跡モジュールは、当該技術分野で知られている、プローブを追跡するための任意の方法を用いてよい。例えば、磁場発信器からの磁場が、追跡されているプローブの各区間内に配置された追跡コイルと相互作用するように、モジュール30は、被験者の付近で磁場発信器を操作してもよい。磁場と相互作用するコイルは、モジュールに伝送される信号を生成し、モジュールはその信号を解析して、コイルの位置及び向きを決定する。(簡潔にするため、そのようなコイル及び発信器は図1には示されていない。)カリフォルニア州ダイアモンド・バー(Diamond Bar)のバイオセンス・ウェブスター社(Biosense Webster)によって生産されているCarto(登録商標)システムは、そのような追跡方法を用いるものである。それに代わってあるいはそれに加えて、追跡モジュール30は、電極23と、電極29と、センサー22(センサーが電極を備える場合)との間のインピーダンス、並びに、プローブ上に配置され得る他の電極に対するインピーダンスを測定することによって、プローブ24を追跡してもよい。バイオセンス・ウェブスター社(Biosense Webster)によって生産されているCarto3(登録商標)システムは、磁場発信器とインピーダンス測定値の両方を追跡のために用いている。
【0021】
システム20の動作中に、プロセッサ40は、追跡モジュールによって決定された位置の各対の組50と、プロセッサによって実施された解析の結果を、メモリ44内に格納する。例えば、センサ22は電極を備えてもよく、感知モジュール36及びプロセッサ40は、心臓のデータ採取位置にて局所的活性化時間(LAT)の値を生成するように構成されてもよい。この場合、組50は、図1に示すように、位置とLATとの各対を含んでいる。4つの対52、54、56、及び58が図1に示されている。一例として図1に表で示す組については、以下で更に詳細に説明することにする。
【0022】
図2は、本発明の実施形態による、心臓34のマッピングの間に作成されたディスプレイ48の概略図である。心臓34をマッピングするために、本明細書では心臓の3次元(3D)特性を表示する画像であると想定される心臓の画像60が、専門家28に向けてディスプレイ48上に提示される。この画像は、追跡モジュール30を使用して心臓の房の表面の3D座標をマッピングすることなど、当該技術分野で知られている任意の方法で生成されてよい。Carto(登録商標)システム又はCarto3(登録商標)システムが、そのような3D座標マッピングに使用されてよい。それに代わってあるいはそれに加えて、磁気共鳴画像法(MRI)などの任意の他の方法が画像60を生成するために用いられてよい。
【0023】
画像60を使用して、専門家は心臓内の種々の表面上にセンサ22を位置させる。専門家は、プローブの近位端部を操作することによって、センサ(プローブの遠位端部32上に位置する)を位置させる。センサ22の配置はモジュール30によって追跡され、その配置は、画像60の上に重なるカーソル62として専門家28に提示される。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態において、上述した3D画像60の生成、及び上述した心臓34の生理学的マッピングは、1つの手技の間に実質的に同時に実施される。本明細書の説明においては、簡潔にするため、心臓の3D画像の生成及び心臓の生理学的マッピングは、2つの別の手技で順次的に実施されると想定される。当業者であれば、必要に応じて、実質的に同時の手技に、この説明を適合させることが可能となろう。
【0025】
図3は、本発明の実施形態による、システム20によって生成された信号の概略的グラフを示している。簡潔にするため、以下の説明においては、特に断りのない限り、センサ22は電極を備えると想定されてよい。加えて、モジュール36は、電極からの電気信号を感知するように構成されたECGモジュールを備えると想定されてもよく、また、プロセッサ40は、その信号からLATを物理的パラメータとして生成するために、感知した信号を解析するように構成されてもよい。
【0026】
図3のグラフは、心臓34が拍動するときに生じる電気活動を示しており、電位図とも呼ばれるものである。システム20のマッピングはこの場合は(上述した3D座標マッピングとは異なるものとして)電気生理学的マッピングを含むものであるが、このマッピングを実施するために、電極22は心臓34内の多数の部位と接触しなければならない。それぞれの接触の間、プロセッサ40は、各部位の電気活動、すなわち、電位と電位の発生時間の各対の組を記録する。電極22は、その部位から得られる十分なデータを記録できる時間にわたって、各部位と接触するべきである。心臓の電気活動は反復的であるので、1回の心拍が完結する期間に等しいかそれよりも長い期間で十分となり得る。したがって、1分間あたり70回で拍動する「通常の」健康な心臓の場合、十分な期間は通常、約850msか又はそれ以上となり得る。しかしながら、以下で説明するように、必要となる期間は、心拍の期間よりも短くなることも、あるいはそれよりも長くなることもある。
【0027】
電位図100は、電極22が心臓34の表面上の第1の部位と接触しているときに電極22上の第1の信号から導出された、概略的な電位対時間のグラフである。電位図102は、電極が心臓の表面上の第2の部位と接触しているときに電極上の第2の信号から導出された、概略的な電位対時間のグラフである。心臓34の表面上の種々の部位に対する電位対時間の関係の組は、電位図100及び102で示すものと類似したものであり、心臓の電気活動を含んでおり、そのような組がプロセッサ40によって記録される。
【0028】
電位図104は、皮膚電極29のうちの1つにおける信号の、概略的なECG電位対時間のグラフであり、信号の典型的なQRS群を示している。電位図100及び102で示す電位−時間の関係の組を十分に特徴付けるために、電位−時間の関係は、互いに時間内に参照される必要がある。本発明の実施形態において、この時間参照は、基準信号上にある事例(本明細書では基準事例と呼ばれる)を時間内に測定することによって達成される。本明細書では、一例として、基準信号は、ECG電位対時間の信号を含むと想定される。同様に一例として、基準事例は、ECG信号のQRS群の開始、Tであると想定される。マッピングされている心臓内の任意の所与の部位に対し、その部位の電気活動のLATは、所定の条件を満たす電気活動によって定義されてよい。以下の説明において、所定の条件は、その部位における電位図の最大の急速な振れの発生時間を含むと想定され、また、LATは、基準事例Tから、その部位の電位図の最大の急速な振れが次に発現するまでの時間であると想定される。LATは正であっても負であってもよい。電位図の最大の急速な振れの発生時間を決定するための方法、並びにLATを決定するための他の定義及び条件は、当業者にはよく知られているものであり、そのようなすべての方法、定義、及び条件は、本発明の範囲内に含まれると想定される。
【0029】
電位図100において、最大の急速な振れは(T後)、時間Tに生じており、ここで電位は急速に上昇し始めている。第1の部位の信号に対する局所的活性化時間、すなわち本明細書でLATと称される期間は、TからTまでの時間である。電位図102において、最大の急速な振れは時間Tに生じており、ここで電位は急速に低下し始めている。第2の部位の信号に対する局所的活性化時間は、本明細書でLATと称されるものであり、TからTまでの時間である。
【0030】
図4は、本発明の実施形態による、LATの概略的表現150である。電気生理学的にマッピングされている心臓内の各部位は、特徴的なLATを有する。通常、LATは、約−200ms〜約+100msの範囲内にあるが、他の範囲も考えられる。加えて、特定の心臓に対するLATは連続領域を形成し、そのため、取り得るLAT値の範囲内に通常、ギャップは存在しない。しかしながら、心臓の電気活動の初期の記録において、記録された時変電位には、LATの評価に十分なデータをプロセッサ40に与えないものもあり、そのため、LATの値が測定されていないLATの小領域が存在する。
【0031】
表現150は、LATの数直線である。LATは時間の単位で測定されるので、表現150は時間直線である。時間直線は、LATが測定された時間152の組と、評価が行われていない時間154の組とを含むLATの領域を示す。表現150がディスプレイ48上に提示され、組152及び154は、典型的には異なる色をそれら2つの組に割り当てることによって、視覚的に区別される。時間154は、ここでは紛失時間154とも呼ばれるものであり、LATの全領域のうちの、LATが評価されていない小領域を含む。
【0032】
図5A及び5Bは、本発明の実施形態による、ディスプレイ48上の表現150に似た表現を示す概略図である。図6は、本発明の実施形態による、図5A及び5Bの表現を用いてマッピングシステム20において追従される工程の流れ図200である。簡潔にするため、図5A及び5Bは、マッピングされている物理的パラメータがLATであり、そのため、表現150が時間直線として表示されることを想定したものとなっている。
【0033】
流れ図の最初の工程202において、専門家28が、実質的に図2に関連して上述した通りに、心臓の表面上にセンサ22を位置させることによって、心臓34の初期マッピングを実施する。したがって、専門家28は、心臓画像60上のカーソル62を使用しながらプローブ24の遠位端部を操作して、遠位端部及びそれに取り付けられたセンサ22を心臓の所望の表面と接触させて位置させる。各部位において、プロセッサ40は、部位の座標を記録し、また物理的パラメータの測定値を記録する。
【0034】
パラメータがLATである事例において、測定値は時変電位であり、その時変電位は電位−時間の値の組を含む。最初の工程の間、プロセッサ40はまた、LATの基準事例を決定するために使用される基準信号を記録する。図3に関連して上述したように、基準信号はECG信号であると想定され、基準事例はQRS群の開始であると想定される。
【0035】
解析工程204において、プロセッサ40は、各部位ごとに、対応する測定値の組を解析して、その組に対する物理的パラメータの値を見出そうとする。
【0036】
LATの場合、測定値は電位−時間の値である。この場合、各組ごとに、LATはプロセッサによって測定可能であってもよく、あるいはLATは測定可能でなくてもよい。
【0037】
観測可能なLATを有する組において、プロセッサは、後に発現する、信号の最大の急速な振れに対して、少なくとも1つの基準時間及び少なくとも1つの時間を決定することが可能であった。通常、そのような時間の対は複数存在し、その場合、プロセッサはLATの平均値を生成してもよい。通常、必須ではないが、所与の部位に対し、観測可能なLATを得るために、この例では電極であるセンサ22が、その部位と接触し、それによって、少なくとも1回の拍動の完結に相当する期間にわたって、その部位で生成された電気信号を感知する。
【0038】
LATは、電極22が所与の部位に十分な時間にわたって接触していないこと、電極からの信号にノイズがあること、及び/又は基準信号にノイズがあることなど、多数の理由により、測定可能でないこともある。
【0039】
また、各組(測定可能なLATを有する組又は測定可能なLATを有さない組)ごとに、その組が記録された部位の座標の対応する組が存在する。プロセッサは、各対の組50(図1)として解析結果を格納する。図1に示す組50の例で分かるように、対52及び56、すなわち部位(x,y,z)及び(x,y,z)に対しては、プロセッサはLATの各値を測定しており、対54及び58、すなわち部位(x,y,z)及び(x,y,z)に対しては、プロセッサはLATの値を測定できなかった。
【0040】
直線生成工程206において、プロセッサ40は、組50の値を数直線150として表示する(図4)。数直線は、プロセッサがパラメータを測定できた、物理的パラメータの組の値152を示している。数直線はまた、プロセッサが身体的パラメータの値を測定できなかった、紛失パラメータの組に対応する直線上の小領域154を示している。
【0041】
したがって、LAT測定の場合、表示される時間直線は、プロセッサがLATを測定できた、時間152の組の値を示す。表示される時間直線はまた、プロセッサがLATを測定できなかった、紛失時間154の組に対応する、時間直線上の小領域を示す。時間152の各組は連続的であり、未測定又は紛失時間154に対応する領域の各組もまた連続的である。
【0042】
選択工程208において、プロセッサ40は、ディスプレイ48上に心臓の画像60及び数直線150を提示する。操作者28は、ポインティング装置39を使用して、各紛失パラメータ154のうちの1つの紛失パラメータ154の中の選択された部分232にカーソル230を位置させる(図5A)。各対50の組から、プロセッサ40は、選択された部分232に対応する対、すなわちプロセッサが紛失パラメータを測定できなかった対を選択する。選択された対は、既知の部位を有するが、未知のパラメータ値を有し、プロセッサは、画像60上の既知の部位をマーカー234でマーキングし、そのマーカーは、その既知の部位が操作者による更なる測定の候補であることを示す。
【0043】
反復工程210において、操作者は、通常はカーソル62をマーカー234の上に重ねることによって、マーカー234で指示される部位に遠位端部32を再び位置させる。遠位端部が再び位置されると、プロセッサ40は、センサ22を使用して物理的パラメータの測定値の組を再び記録する。
【0044】
再解析工程212において、プロセッサ40は、再び記録された測定値を解析し、第1の条件214において、プロセッサは、物理的パラメータの値が解析から導出されたか否かを確認する。
【0045】
パラメータ値が導出された場合、更新工程216において、数直線150が更新される。組50もまた更新される。通常、マーカーで指示される部位に対してはパラメータ値が発見されているので、カーソル62が残存し得る間、マーカー234は画像60から除去される。図5Bは、この場合の更新された時間直線を示しており、領域232はここでは値152に含まれている。
【0046】
条件214において、プロセッサが、再び記録された測定値からパラメータ値を導出できなかった場合、操作者が測定値の記録を反復するように、流れ図は工程210に戻る。通常、工程210が反復されているという視覚的及び/又は聴覚的な指示が操作者に与えられる。
【0047】
第2の条件218は、紛失値が小領域154に残っているか否かを確認するものである。紛失値がある場合、流れ図は工程208に戻り、紛失値が数直線150上にない場合、流れ図は完了する。
【0048】
上記の説明は、LATのマッピングを含んでいる。しかしながら、記載の方法は、被験者の心臓又は他の器官の他の物理的パラメータの値を決定するために、不当な実験を伴うことなく、当業者によって適合され得ることが理解されよう。例えば、心臓の場合、他の物理的パラメータは、心臓壁の温度又は収縮力を含んでもよく、これらはそれぞれ、センサ22の代わりに温度センサ又は力センサを使用するものである。マッピングされ得る他の器官には、膀胱又は胃を挙げることができる。
【0049】
上述した実施形態は一例として記載されたものであり、本発明は、本明細書において上に具体的に図示及び説明した内容に限定されないことが明らかとなろう。むしろ、本発明の範囲には、上で説明した様々な特徴の組み合わせと部分的組み合わせの両方、並びにそれらの変形形態及び修正形態が含まれ、これらは、上述の説明を読めば当業者には思いつくものであり、また先行技術では開示されていないものである。
【0050】
〔実施の態様〕
(1) 被験者の器官内の複数の部位で物理的パラメータの値を測定することと、
前記値の領域であって、測定されなかった1つ又は2つ以上の値を含む少なくとも1つの小領域を含む、領域を識別するために前記測定値を解析することと、
ユーザーから前記小領域の値の選択を受け取ることと、
前記選択に応答して、更なる測定の候補部位を表示することと、を含む方法。
(2) 前記器官は心臓を含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記物理的パラメータは、前記心臓によって及ぼされた力と前記心臓の温度のいずれかに応答して評価される、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記物理的パラメータは、前記心臓の電気活動に応答して評価される、実施態様2に記載の方法。
(5) 前記物理的パラメータは、前記心臓内の前記複数の部位の各局所的活性化時間(LAT)を含む、実施態様4に記載の方法。
(6) 前記値を測定することは、前記複数の部位の各時変電位を記録することを含み、前記測定値を解析することは、前記記録した時変電位に所定の条件を適用することに応答して前記各LATを決定することを含む、実施態様5に記載の方法。
(7) 前記候補部位を表示することは、前記ユーザーに向けて前記心臓の画像を表示することと、前記画像上に前記候補部位を指示することとを含む、実施態様2に記載の方法。
(8) 前記測定値を解析することは、測定された値の第1の視覚的表現と、前記少なくとも1つの小領域の、前記第1の視覚的表現とは異なる第2の視覚的表現とを、前記ユーザーに向けて表示することを含む、実施態様1に記載の方法。
(9) 前記ユーザーから前記選択を受け取ることは、前記ユーザーがポインティング装置を操作して前記第2の視覚的表現内の領域を選択することを含む、実施態様8に記載の方法。
(10) 前記第1の視覚的表現及び前記第2の視覚的表現は、数直線として形成される、実施態様8に記載の方法。
【0051】
(11) 被験者の器官内の複数の部位で物理的パラメータの値を測定するために用いられる信号を与えるように構成されたプローブと、
プロセッサと、を備える機器であって、前記プロセッサは、
前記値の領域であって、測定されなかった1つ又は2つ以上の値を含む少なくとも1つの小領域を含む、領域を識別するために前記測定値を解析し、
ユーザーから前記小領域の値の選択を受け取り、
前記選択に応答して、更なる測定の候補部位を表示するように構成されている、機器。
(12) 前記器官は心臓を含む、実施態様11に記載の機器。
(13) 前記物理的パラメータは、前記心臓によって及ぼされた力と前記心臓の温度のいずれかに応答して評価される、実施態様12に記載の機器。
(14) 前記物理的パラメータは、前記心臓の電気活動に応答して評価される、実施態様12に記載の機器。
(15) 前記物理的パラメータは、前記心臓内の前記複数の部位の各局所的活性化時間(LAT)を含む、実施態様14に記載の機器。
(16) 前記信号は時変電位を含み、前記値を測定することは、前記複数の部位の各信号を記録することを含み、前記測定値を解析することは、前記記録した信号に所定の条件を適用することに応答して前記各LATを決定することを含む、実施態様15に記載の機器。
(17) 前記候補部位を表示することは、前記ユーザーに向けて前記心臓の画像を表示することと、前記画像上に前記候補部位を指示することとを含む、実施態様12に記載の機器。
(18) 前記測定値を解析することは、測定された値の第1の視覚的表現と、前記少なくとも1つの小領域の、前記第1の視覚的表現とは異なる第2の視覚的表現とを、前記ユーザーに向けて表示することを含む、実施態様11に記載の機器。
(19) 前記ユーザーから前記選択を受け取ることは、前記ユーザーがポインティング装置を操作して前記第2の視覚的表現内の領域を選択することを含む、実施態様18に記載の機器。
(20) 前記第1の視覚的表現及び前記第2の視覚的表現は、数直線として形成される、実施態様18に記載の機器。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6