特許第6013110号(P6013110)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋機械金属株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6013110-成形機 図000002
  • 特許6013110-成形機 図000003
  • 特許6013110-成形機 図000004
  • 特許6013110-成形機 図000005
  • 特許6013110-成形機 図000006
  • 特許6013110-成形機 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013110
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/17 20060101AFI20161011BHJP
   B22D 17/20 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   B29C45/17
   B22D17/20 Z
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-208300(P2012-208300)
(22)【出願日】2012年9月21日
(65)【公開番号】特開2014-61655(P2014-61655A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年9月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000222587
【氏名又は名称】東洋機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤田 靖丈
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−012720(JP,A)
【文献】 特開平05−192956(JP,A)
【文献】 特開2004−276553(JP,A)
【文献】 特開2000−084979(JP,A)
【文献】 特開平05−278071(JP,A)
【文献】 特開昭58−092543(JP,A)
【文献】 特表2003−512198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00−45/84
B22D 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型装置を開閉駆動する型締装置と、成形材料を前記金型装置に形成されたキャビティ内に射出・充填する射出装置と、これらの各装置を所定の配列で搭載するフレームとを備えた成形機において、
前記フレームは、底部構造体と、当該底部構造体上に組み立てられた直方体構造の上部構造体とからなり、
前記上部構造体は、所要の部分に窓孔が開設された複数枚の板材の組み合わせをもって構成され、
前記底部構造体は、相平行に配置された2本の型鋼からなる主材と、これら2本の主材を連結する複数本の型鋼からなる横桟とをもって全体が枠形に形成されていて、前記横桟は、前記主材の両端部と、前記主材の中間部であって前記上部構造体に開設された窓孔の両側部分と対応する位置に配置されていることを特徴とする成形機。
【請求項2】
前記主材の所要部分に、防振ゴムの取付孔を開設したことを特徴とする請求項1に記載の成形機。
【請求項3】
前記上部構造体は、前記底部構造体の上面を覆う底板と、前記型締装置及び前記射出装置を搭載する天板と、これら底板と天板とを連結する縦板とをもって構成されていることを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機及びダイカストマシン等の成形機に係り、特に、金型装置、型締装置、射出装置及びエジェクト装置等を搭載するフレームの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、固定側金型及び可動側金型からなる金型装置、金型装置を開閉駆動する型締装置、可塑化された樹脂材料を金型装置に形成されたキャビティ内に射出・充填する射出装置及び成形品を金型装置から取り出すエジェクト装置等から構成されており、これらの各装置は、フレームと呼ばれる枠型の構造物上に搭載されている。運転時に発生する振動を抑制するため、並びに、型締時及び射出時における前記各装置の位置ずれを防止して高品質の成形品を製造するため、射出成形機用フレームには、高剛性であることが強く求められる。なお、ダイカストマシン用のフレームについても事情は全く同じである。
【0003】
本願出願人は先に、射出成形機用のフレームとして、相平行に配設された縦部材と、縦部材の上面に固定されたベース用平板部材と、縦部材の底面に固定された底部用平板部材と、これら各部材の少なくとも2つに固着された枠構造の補強部材とからなるものを提案した(特許文献1の図1参照。)。このフレームは、縦部材がフレーム高さとほぼ等しい高さ寸法を有するI型鋼、C型鋼又はH型鋼をもって形成されている。
【0004】
本構成のフレームは、縦部材とベース用平板部材と底部用平板部材とからなる直方体構造を有し、搭載される各装置の全重量を縦部材にて担持する構成であるので、縦部材の長手方向と射出成形機の主たる作動方向とが一致し、極めてシンプルな構造で高い剛性を有する。また、内部空間を広くシンプルな形にできるので、電装品、製品搬送装置、油圧装置及び油圧配管などの収納を容易なものにすることができる。さらに、縦部材間に枠構造の補強部材を配設したので、補強部材があたかも竹の節のような働きをなし、シンプルな補強でフレームの強度を格段に向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−084979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のフレームは、縦部材が、高さ寸法の大きな大型の型鋼をもって形成されているので、大重量で、フレームの組立や搬送が困難であるとの指摘があった。また、射出成形機用のフレームの前面及び背面には電線類や配管類を通すための貫通孔を設ける必要があり、かつ底面には防振ゴムを取り付けるための取付孔を設ける必要があるが、特許文献1に記載の高剛性フレームは、縦部材が大型かつ大重量の型鋼をもって形成されているので、これらの加工を行うことが困難であるとの指摘もあった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、軽量かつ高剛性にして、必要な加工を容易に行うことができるフレームを備えた成形機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題を解決するため、金型装置を開閉駆動する型締装置と、成形材料を前記金型装置に形成されたキャビティ内に射出・充填する射出装置と、これらの各装置を所定の配列で搭載するフレームとを備えた成形機において、前記フレームは、底部構造体と、当該底部構造体上に組み立てられた直方体構造の上部構造体とからなり、前記上部構造体は、所要の部分に窓孔が開設された複数枚の板材の組み合わせをもって構成され、前記底部構造体は、相平行に配置された2本の型鋼からなる主材と、これら2本の主材を連結する複数本の型鋼からなる横桟とをもって全体が枠形に形成されていて、前記横桟は、前記主材の両端部と、前記主材の中間部であって前記上部構造体に開設された窓孔の両側部分と対応する位置に配置されていることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によると、成形機のフレームを、複数本の型鋼を組み合わせることによって枠形に形成された底部構造体と、複数枚の板材を組みわせることによって形成され、底部構造体上に組み立てられた上部構造体とから構成したので、I型鋼、C型鋼又はH型鋼からなる大型かつ大重量の縦部材を必須の構成要素とする従来のフレームに比べて、その重量を減少することができる。また、前記構成によると、上部構造体を構成する各板材の所要部分に、配線類及び配管類の引き回しや成形機各部のメンテナンスに必要な窓孔を開設するので、大型かつ大重量の縦部材に窓孔を開設する場合に比べて、窓孔の加工を容易なものにすることができる。同様に、前記構成によると、底部構造体を構成する比較的軽量の主材に防振ゴムの取付孔を開設できるので、大型かつ大重量の縦部材に防振ゴムの取付孔を開設する場合に比べて、防振ゴムの取付孔の加工を容易なものにすることができる。さらに、前記構成によると、底部構造体の横桟を上部構造体に開設された窓孔の両側部分と対向する位置に配置するので、窓孔を開設したことによる剛性の低下を横桟にて抑止することができ、全体として高剛性のフレームとすることができる。
【0010】
また本発明は、前記構成の成形機において、前記主材の所要部分に、防振ゴムの取付孔を開設したことを特徴とする。
【0011】
かかる構成によると、底部構造体の主材に防振ゴムの取付孔を開設するので、大型かつ大重量の型鋼からなる縦部材に防振ゴムの取付孔を開設する場合に比べて、取付孔の開設作業を容易なものにすることができる。
【0012】
また本発明は、前記構成の成形機において、前記上部構造体は、前記底部構造体の上面を覆う底板と、前記型締装置及び前記射出装置を搭載する天板と、これら底板と天板とを連結する縦板とをもって構成されていることを特徴とする。
【0013】
かかる構成によると、上部構造体に底部構造体の上面を覆う底板と、型締装置及び射出装置を搭載する天板とを備えるので、上部構造体ひいてはフレームの剛性を高められると共に、フレーム上への型締装置及び射出装置の搭載を容易なものにすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、成形機用のフレームを、底部構造体と、当該底部構造体上に組み立てられた直方体構造の上部構造体とから構成し、上部構造体には所要の部分に窓孔を開設すると共に、底部構造体には上部構造体に開設された窓孔の両側部分と対向する位置に横桟を配置したので、大型かつ大重量の型鋼からなる縦部材を必須の構成要素とする従来のフレームに比べて、所要の剛性を維持しながら重量を減少できると共に、窓孔及び防振ゴム取付孔の加工を容易なものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係る成形機の正面図である。
図2】実施形態に係るフレームの正面側から見た斜視図である。
図3】実施形態に係るフレームの背面側から見た斜視図である。
図4】実施形態に係るフレームの底部構造体側から見た斜視図である。
図5】実施形態に係る底部構造体の斜視図である。
図6】実施形態に係る防振ゴムの取付状態を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る成形機の実施形態を、図を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態においては、射出成形機を例にとって説明するが、ダイカストマシンについても同様に実施することができる。
【0017】
図1に示すように、実施形態に係る成形機は、フレーム1と、当該フレーム1上に搭載された型締装置2及び射出装置3を有している。
【0018】
型締装置2は、所定の間隔を隔てて対向に配置され、それぞれフレーム1上に固定されたテールストック21及び固定ダイプレート22と、これらテールストック21及び固定ダイプレート22の間に配置され、フレーム1上に摺動自在に取り付けられた可動ダイプレート23と、両端がテールストック21と可動ダイプレート23とに連結され、図示しないモータの回転力によって可動ダイプレート23を往復駆動する型開閉・型締機構24とからなる。固定ダイプレート22には、固定側金型25が搭載され、可動ダイプレート23には、可動側金型26が搭載される。本例の型締装置2においては、型開閉・型締機構24が、トグルリンク機構24aと、図示しないモータの回転力を直進力に変換してトグルリンク機構24aに伝達するボールねじ機構24bとから構成されている。なお、固定側金型25と可動側金型26とからなる金型装置の近傍には、成形品を金型装置から取り出すためのエジェクト装置(図示省略)が備えられる。
【0019】
上記の構成において、モータを所定の一方向に回転駆動すると、ボールねじ機構24bのねじ軸が前進して、トグルリンク機構24aが伸張し、固定側金型25と可動側金型26とが所定の型締力で型締される。これにより、固定側金型25と可動側金型26との間に形成された金型キャビティ内への溶融樹脂の射出・充填が可能になる。溶融樹脂の射出・充填後、モータを逆転駆動すると、ボールねじ機構24bのねじ軸が後退してトグルリンク機構24aが収縮し、可動側金型26が固定側金型25から型開される。これにより、エジェクト装置による成形品の取り出しが可能になる。
【0020】
射出装置3は、先端に射出ノズル31が取り付けられた筒型の加熱シリンダ32と、加熱シリンダ32の内部に回転可能かつ前後進可能に収納された射出スクリュ33と、射出スクリュ33を回転自在に支持する支持部材34と、射出スクリュ33の回転駆動及び前後進駆動を行うスクリュ駆動部35と、原料樹脂を貯えるホッパ36と、ホッパ36内に貯えられた原料樹脂を加熱シリンダ32内に供給するホッパブロック37とから、主に構成されている。加熱シリンダ32の外周には、加熱シリンダ32内に供給された樹脂を加熱するバンドヒータ38が巻装されている。また、射出ノズル31は、連続運転時、固定側金型25に押し付けられている。
【0021】
加熱シリンダ32内で射出スクリュ33を回転駆動すると、それに伴ってホッパ36内の原料樹脂が加熱シリンダ32内に導入される。加熱シリンダ32内に導入された原料樹脂は、射出スクリュ33の回転駆動に伴って発生する摩擦熱や剪断熱、それにバンドヒータ38の発熱により溶融され、順次加熱シリンダ32の先端部に貯えられる。加熱シリンダ32の先端部に所定量の溶融樹脂が貯えられると、射出スクリュ33が前進駆動され、加熱シリンダ32の先端部に貯えられた所定量の溶融樹脂が、金型キャビティ内に射出・充填される。これにより、所定形状の成形品が得られる。
【0022】
以下、上述の型締装置2、射出装置3、金型装置及びエジェクト装置を搭載するフレーム1の構成を、図2図6を用いて説明する。本実施形態に係るフレーム1は、図2図4に示すように、底部構造体11と、当該底部構造体11上に組み立てられた直方体構造の上部構造体12とからなる。
【0023】
底部構造体11は、図5に示すように、相平行に配置された2本のH型鋼からなる主材111と、これら2本の主材111を連結する複数本(図3の例では、7本)のC型鋼からなる横桟112とをもって全体が長四角の枠形に形成されている。複数本の横桟112のうちの2本は、主材111の端部に配置され、他の複数本(図3の例では、5本)の横桟112は、上部構造体12に開設される窓孔の両側部分と対向する位置に配置される。これについては、後に図4を用いてさらに詳細に説明する。これらの各主材111と各横桟112は、溶接により組み立てられる。また、主材111の外側面には、複数本の縦補強片113が溶接される。なお、本例においては、主材111がH型鋼にて形成され、横桟112がC型鋼をもって形成されているが、本発明の要旨はこれに限定されるものではなく、I型鋼、C型鋼又はH型鋼などから選択される型鋼を、適宜使用することができる。また、平鋼板を曲げ加工して、C型などの所要の形状に成形したものを使用することもできる。
【0024】
主材111を構成する2本の形鋼の下片には、図4に示すように、複数個の防振ゴム取付孔114が所定の配列で開設されている。主材111は、特許文献1に記載の縦部材よりも各段に小型かつ軽量の形鋼にて形成されるので、防振ゴム取付孔114の開設作業を容易に行うことができる。なお、防振ゴム取付孔114は、図4に示すように、隣接して配置された2つの縦補強片113の間に開設される。このようにすると、図6に示すように、縦補強片113により補強された高剛性の部分に防振ゴム115を設置できるので、大重量のフレーム1を複数個の防振ゴム115で支持した場合にも、フレーム1の変形を防止することができる。
【0025】
防振ゴム115は、図6に示すように、円盤状に形成された防振ゴム本体115aと、該防振ゴム本体115aの中心部に一端が固定され、先端が垂直に起立された取付ボルト115bと、該取付ボルト115bに螺合されたナット115cとから成る。主材111に対する防振ゴム115の取り付けは、図6に示すように、主材111の下方より、主材111に開設された防振ゴム取付孔114内に取付ボルト115bを挿入し、ナット115cにて締結することにより行われる。
【0026】
上部構造体12は、図2図4に示すように、底部構造体11の上面を覆う底板121と、型締装置2及び射出装置3を搭載する天板122と、これら各板121,122の間に配置された複数枚の縦板124をもって、直方体構造に形成されている。これらの各板及び各部材は、溶接により組み立てられる。また、底板121と底部構造体11についても溶接により一体に組み立てられる。これにより、上部構造体ひいてはフレームの剛性を高めることができる。
【0027】
上部構造体12の前面側には、複数枚の縦板124と複数枚の横板123の組み合わせをもって、複数段の小物入れ123aと、成形機全体を制御する制御装置の収納部123bと、成形機に電力を供給する制御盤の収納部123cとが形成されている。また、上部構造体12の背面側には、複数枚の縦板124の組み合わせをもって、アンプ等の収納部123dが形成されている。各縦板124の間には、各種の機器類を収納するためのスペースが形成されると共に、各縦板124の所要の部分には、配線類及び配管類の引き回しや成形機各部のメンテナンスに必要な窓孔124aが開設される。このように、縦板124に窓孔124aを開設することにより、窓孔124aの開設作業を容易なものにすることができる。上述した底部構造体11の横桟112は、図4に示すように、縦板124の所要の部分に開設された窓孔124aの両側部分と対向する位置に配置される。これにより、窓孔124aを開設したことによる剛性の低下を横桟112にて抑止できるので、全体として高剛性のフレームとすることができる。
【0028】
天板122には、図2及び図3に示すように、型締装置2の搭載側にトグルリンク機構24aから漏れたグリスを下方に配置された図示しないグリス受けに落とすための4個の透孔122aが開設されると共に、その隣接部分には、金型装置からの成形品の取り出しを行うための大口径の透孔122bが開設されている。これに対して、射出装置3の搭載側には、射出装置を固定するための複数枚の座板122cが所定の配列で設けられている。さらに、天板122の中央部分には、チェーンブロック等の懸垂装置を係合するためのフック122dが固定されている。
【0029】
なお、前記実施形態においては、上部構造体12の一部に枠型部材123を備えたが、縦板124の組み合わせのみをもって上部構造体12を構成することもできる。
【符号の説明】
【0030】
1 フレーム
2 型締装置
3 射出装置
11 底部構造体
111 主材
112 横桟
113 縦補強片
114 防振ゴム取付孔
115 防振ゴム
12 上部構造体
121 底板
122 天板
122a 透孔
122b 透孔
122c 座板
122d フック
123 枠型部材
123a 小物入れ
123b 制御装置の収納部
123c 制御盤の収納部
124 縦板
124a 窓孔
図1
図2
図3
図6
図4
図5