特許第6013114号(P6013114)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6013114-吸引システム 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013114
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】吸引システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/00 20060101AFI20161011BHJP
【FI】
   A61M16/00 380
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-215125(P2012-215125)
(22)【出願日】2012年9月27日
(65)【公開番号】特開2014-68690(P2014-68690A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 慎一
(72)【発明者】
【氏名】美浦 学
【審査官】 久島 弘太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−524155(JP,A)
【文献】 特表2012−509107(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0107967(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/045735(WO,A1)
【文献】 国際公開第2001/036020(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/00
A61M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気管内に挿入される気管カニューレを有した人工呼吸器と併用され、気管内の粘稠物を吸引する吸引システムであって、
前記気管内に設けられる吸引ラインと、
前記吸引ラインを介して、前記粘稠物を吸引する吸引装置と、
前記気管内に設けられる送気ラインと、
前記吸引装置により吸引された空気と略同量の空気を、前記送気ラインを介して前記気管内に送出する送気装置とを備え
前記吸引ラインの先端部は、前記人工呼吸器を構成する気管カニューレ内に設けられ
ことを特徴とする吸引システム。
【請求項2】
請求項1に記載の吸引システムにおいて、
前記吸引ラインには、前記吸引装置により吸引された前記粘稠物を回収する回収容器が設けられ、
前記吸引装置及び前記送気装置は、前記吸引ラインが吸込側に接続され、前記送気ラインが排出側に接続されたポンプである
ことを特徴とする吸引システム。
【請求項3】
請求項に記載の吸引システムにおいて、
前記回収容器と前記ポンプとの間の前記吸引ライン、及び、前記送気ラインの少なくともいずれかには、前記気管内に送出される空気をろ過するフィルターが設けられている
ことを特徴とする吸引システム。
【請求項4】
請求項3に記載の吸引システムにおいて、
前記送気ライン及び前記吸引ラインの一部は、内部に送気ルーメン及び吸引ルーメンが形成されたカテーテルとなっている
ことを特徴とする吸引システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘稠物を吸引する吸引システムに関し、詳しくは、人工呼吸器と併用され、気管から痰等の粘稠物を吸引する吸引システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、呼吸ができない患者、或いは、呼吸が弱い患者に利用される人工呼吸システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載の人工呼吸システムは、患者の気管に挿入される気管カニューレと、当該気管カニューレと接続される呼吸管を介して送気及び排気を行う人工呼吸器と、気管内に溜まった痰を吸い出す吸引カテーテルと、当該吸引カテーテルと接続された痰吸引器と、コントロールボックスとを備えている。これらのうち、吸引カテーテルの先端部は、気管カニューレ内に配置されている。
【0003】
このような人工呼吸システムでは、吸引カテーテル内の圧力が−20kPa以下であれば、気管内に痰が発生しているとコントロールボックスが判断し、当該圧力が−18kPa以上に復帰するまで、痰吸引器を作動させる。
これにより、痰の吸引を必要に応じて常時行うことができるので、気管カニューレから呼吸管を取り外し、当該気管カニューレ内に吸引カテーテルを挿入して痰を吸い出す手間を省くことができる。
【0004】
また、自発呼吸が可能な患者に装着される人工呼吸器として、気管の内圧の変動に伴う空気の流量変化をトリガーとして、換気(送気及び吸気)を開始する人工呼吸器が知られている。この人工呼吸器は、横隔膜が下がって収縮する動作(空気を吸い込む動作)に伴う気管内の空気の微小な流量変化を検知して、上記気管カニューレを介して空気を送出し、当該空気を送出してから所定時間経過後に、当該気管カニューレを介して空気を気管から吸引する。この所定時間は、患者ごとに調整される。このような人工呼吸器により、呼吸が弱い患者の自発呼吸に応じた換気を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3652356号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の特許文献1に記載の人工呼吸システムでは、上記のように気管内に痰が発生していると判断されると、痰吸引器が吸引を開始する。このため、上記人工呼吸器(自発呼吸が可能な患者に装着される人工呼吸器)が当該人工呼吸システムに採用された場合には、痰吸引器による吸引に起因する気管内の流量変化をトリガーとして、当該気管内への空気の送出を行ってしまうことが考えられる。このような場合、気管内に空気が入り続けてしまい、肺内の空気を適切に換気できないという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、人工呼吸器による換気を乱すことなく粘稠物を吸引できる吸引システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る吸引システムは、気管内に挿入される気管カニューレを有した人工呼吸器と併用され、気管内の粘稠物を吸引する吸引システムであって、前記気管内に設けられる吸引ラインと、前記吸引ラインを介して、前記粘稠物を吸引する吸引装置と、前記気管内に設けられる送気ラインと、前記吸引装置により吸引された空気と略同量の空気を、前記送気ラインを介して前記気管内に送出する送気装置とを備え、前記吸引ラインの先端部は、前記人工呼吸器を構成する気管カニューレ内に設けられることを特徴とする。
【0009】
なお、気管内の粘稠物とは、例えば、痰が挙げられる。
上記一態様によれば、吸引装置により、吸引ラインを介して気管内から吸引された空気と略同量の空気が、送気装置により、送気ラインを介して気管内に送出される。これによれば、粘稠物の吸引に伴って気管内の圧力が変動することを抑制できる。従って、人工呼吸器が誤って換気を開始してしまうことを抑制でき、当該人工呼吸器による換気を乱すことなく粘稠物を吸引できる。
【0010】
また、吸引ラインの先端部が、気管カニューレ内に配置されるので、当該気管カニューレが粘稠物により詰まることを抑制できる。また、吸引ラインの先端部が気管カニューレ内に配置されるので、当該先端部が気管内壁に吸い付くことを防止できる。この他、気管カニューレの径方向外側に吸引ライン及び送気ラインが配置される場合に比べて、吸引ライン及び送気ラインの配置を容易に行うことができる。
【0011】
上記一態様では、前記吸引ラインには、前記吸引装置により吸引された前記粘稠物を回収する回収容器が設けられ、前記吸引装置及び前記送気装置は、前記吸引ラインが吸込側に接続され、前記送気ラインが排出側に接続されたポンプであることが好ましい。
上記一態様によれば、吸引ラインに設けられた回収容器により、気管から吸引された空気と粘稠物とを確実に分離できる。従って、吸引された粘稠物を確実に回収できる。また、吸引装置及び送出装置は、吸引ライン及び送気ラインと接続され、回収容器により粘稠物と分離された空気を送気ラインに送出するポンプである。これにより、吸引システムの構成を簡略化できる他、吸引された空気と略同量の空気を確実に気管内に送出できる。
【0012】
上記一態様では、前記回収容器と前記ポンプとの間の前記吸引ライン、及び、前記送気ラインの少なくともいずれかには、前記気管内に送出される空気をろ過するフィルターが設けられていることが好ましい。
なお、フィルターとしては、除菌可能な多孔質フィルターを例示できる。
上記一態様によれば、吸引された粘稠物を回収する回収容器内で菌が増殖した場合でも、当該フィルターにより、吸引された空気とともに当該菌が気管内に送出されることを抑制できる。
上記一態様では、前記送気ライン及び前記吸引ラインの一部は、内部に送気ルーメン及び吸引ルーメンが形成されたカテーテルとなっていることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係る人工呼吸システムの構成を示す模式図。
図2】前記実施形態における気管カニューレの挿入位置を示す模式図。
図3】前記実施形態におけるカテーテルの先端部を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る人工呼吸システム1の構成を示す模式図である。
本実施形態に係る人工呼吸システム1は、図1に示すように、患者に対して人工呼吸(換気)を実施する人工呼吸器2と、当該患者の気管TR内から痰等の粘稠物を吸引及び回収する吸引システム3とが組み合わされた構成を有する。
【0015】
[人工呼吸器の構成]
図2は、人工呼吸器2を構成する気管カニューレ21の挿入位置を示す模式図である。
人工呼吸器2は、気管TR内に挿入される気管カニューレ21と、気管カニューレ21に接続されるコネクター22と、一端がコネクター22に接続される呼吸管23と、当該呼吸管23の他端と接続される呼吸器本体24とを備える。
気管カニューレ21は、本実施形態では、図2に示すように、側面視略J字状に形成され、気管切開方式によって気管TRに形成された孔に挿入される合成樹脂製の管状部材である。この気管カニューレ21内に形成された貫通孔211は、後述する呼吸器本体24の駆動によって空気が流通する流通路を形成する。
【0016】
また、図1及び図2に示すように、気管カニューレ21において、気管TR内に挿入される先端側の外表面にはカフ212が設けられている。このカフ212は、カフ用チューブ(図示省略)を介して流体(例えば気体)が注入されることで膨張する。このカフ212により、気管TR内に気管カニューレ21を固定できる他、当該気管TR内壁と気管カニューレ21の外表面との間の隙間を埋めることができる。
【0017】
更に、気管カニューレ21には、唾液吸入チューブ213が設けられている。この唾液吸入チューブ213は、一端が気管カニューレ21の基端側端部(体表外に位置する端部)に露出し、他端が気管カニューレ21の外表面においてカフ212より口腔側の位置に露出している。この唾液吸入チューブ213を介して、気管TR内に流入して溜まった唾液や痰が吸引される。なお、唾液吸入チューブ213は、気管カニューレ21の管壁内に埋設されていてもよく、当該気管カニューレ21の外表面或いは内表面に沿って配設されていてもよい。
【0018】
コネクター22は、図1に示すように、気管カニューレ21における上記基端側端部に接続される円筒状部材である。このコネクター22は、当該基端側端部に接続される第1接続部221と、呼吸管23の一端が接続される第2接続部222と、吸引システム3を構成するカテーテル31が挿入される第3接続部223とを有する。そして、コネクター22内には、空間Sが形成されている。このため、気管TR内に挿入された気管カニューレ21にコネクター22を接続した場合には、当該気管カニューレ21及びコネクター22を介して、第2接続部222に接続された呼吸管23内と気管TR内とが連通する。また、第3接続部223に挿入されたカテーテル31は、先端が貫通孔211内に位置付けられる。
【0019】
呼吸管23は、第2接続部222と呼吸器本体24とを接続する。この呼吸管23は、蛇腹様に形成されたフレキシブルチューブ231を含んで構成され、当該フレキシブルチューブ231にて屈曲変形可能である。
【0020】
呼吸器本体24は、呼吸管23、コネクター22及び気管カニューレ21を介して換気(空気の送出及び吸引)を行う。
具体的に、呼吸器本体24は、自発呼吸ができない患者に対しては、所定周期で換気を実施する。また、呼吸器本体24は、自発呼吸が可能な患者に対しては、気管TR内の空気の流量変化に基づく換気を実施する。この自発呼吸が可能な患者に対する換気の場合、呼吸器本体24は、例えば、患者が空気を排出し終えた後の気管TR内の空気の微小な流量変化を検知して空気を送出し、当該空気を送出してから所定時間経過後に空気を吸引する。この流量変化は、次の吸気に備えて横隔膜が下がって収縮する動作による内圧の低下に伴うものである。
【0021】
このような空気の送出においては、予め設定された量の空気を送出する従量式と、気管TR内の圧力が所定値に達するまで空気を送出する従圧式とのいずれかを採用できる。
そして、当該呼吸器本体24の動作は、1回の換気量、流速、1分当たりの呼吸回数(換気回数)、吸気時及び排気時の時間比、並びに、PEEP(Positive end-expiratory pressure:呼気終末陽圧)が予め設定された動作モードを患者の容態に応じて切り替えることで行われる。
【0022】
[吸引システムの構成]
吸引システム3は、気管TR内において気管カニューレ21のカフ212から肺側の領域に溜まった粘稠物を吸引して回収するものであり、上記呼吸器本体24が空気を送出する方式として従圧式が採用される場合に、特に有効に機能するものである。
この吸引システム3は、図1に示すように、カテーテル31、吸引ライン32、回収容器33、フィルター34、ポンプ35及び送気ライン36を有する。
【0023】
図3は、気管カニューレ21及びカテーテル31の先端部分を示す模式図である。
カテーテル31は、前述のように、コネクター22の第3接続部223を介して気管カニューレ21の貫通孔211内に挿入され、先端が当該気管カニューレ21の先端部近傍に配置される。このカテーテル31は、本発明の吸引カテーテル及び送気カテーテルに相当し、当該カテーテル31には、図3に示すように、内部に吸引ルーメン311及び送気ルーメン312が形成されている。
吸引ルーメン311は、吸引ライン32と接続され、ポンプ35の駆動により、気管TR内の上記粘稠物を吸引する。また、送気ルーメン312は、カテーテル31内で吸引ルーメン311とは独立して設けられ、ポンプ35の駆動により、気管TR内に空気を送出する。
【0024】
吸引ライン32は、図1に示すように、吸引ルーメン311と回収容器33とを接続する第1ライン321、及び、当該回収容器33とポンプ35の吸引側端部とを接続する第2ライン322を有する。すなわち、カテーテル31に形成された吸引ルーメン311と、吸引ライン32とは、本発明の吸引ラインを構成する。なお、第1ライン321及び第2ライン322は、チューブにより構成されている。
回収容器33は、吸引ルーメン311にて吸引され、第1ライン321内を移動した粘稠物を回収する。この回収容器33の内部にて、ポンプ35の駆動により吸引された粘稠物が滴下され、これにより当該粘稠物が分離及び回収される。そして、気管TRから吸引された空気だけが、回収容器33内を流通して、第2ライン322を介してポンプ35に送られる。
【0025】
フィルター34は、回収容器33とポンプ35との間の第2ライン322上に設けられた多孔質フィルターである。具体的に、本実施形態では、フィルター34は、回収容器33における第2ライン322との接続部分に設けられている。このため、フィルター34の交換は、回収容器33の交換とともに実施できる。このようなフィルター34により、回収容器33内で菌が増殖する場合でも、当該菌を含む空気がポンプ35を介して気管TR内に送出されることが抑制される。
【0026】
ポンプ35は、吸引ライン32を介して吸引された空気を、送気ライン36及び送気ルーメン312を介して気管TR内に送出する過程で、上記粘稠物を吸引して、前述の回収容器33にて回収する。このポンプ35における吸込側には、吸引ライン32(第2ライン322)が接続され、排出側には、送気ライン36が接続される。このようなポンプ35として、ローラー方式、フィンガー方式、ボルメトリック方式等の各種ポンプを採用できる他、電磁式エアーポンプを採用できる。
送気ライン36は、ポンプ35の送出側端部と、カテーテル31の送気ルーメン312とを接続する。すなわち、当該送気ライン36と、カテーテル31に形成された送気ルーメン312とは、本発明の送気ラインを構成する。なお、当該送気ライン36は、チューブにより構成されている。
【0027】
[吸引システムの作用]
上記吸引システム3において、ポンプ35が駆動されると、カテーテル31の吸引ルーメン311により気管TR内の空気が吸引され、粘稠物が吸引される。この粘稠物は、吸引ライン32の第1ライン321内を移動して、回収容器33にて回収される。また、吸引された空気は、回収容器33内を流通し、フィルター34及び第2ライン322を介してポンプ35に到達する。当該ポンプ35は、吸引した空気をそのまま送気ライン36に送出し、当該空気は、送気ルーメン312から気管TR内に送出される。
このようにして、吸引システム3は、気管TRから吸引された空気と同量の空気を、当該気管TR内に送出する。
【0028】
[実施形態の効果]
以上説明した本実施形態に係る人工呼吸システム1によれば、以下の効果を奏することができる。
吸引システム3において、ポンプ35によりカテーテル31の吸引ルーメン311及び吸引ライン32を介して気管TR内から吸引された空気は、送気ライン36及び送気ルーメン312を介して気管TR内に送り返される。すなわち、ポンプ35の駆動により吸引された空気と同量の空気が、気管TR内に送出される。これによれば、粘稠物の吸引に伴って気管TR内の圧力が変動することを抑制できる。従って、人工呼吸器2が誤って換気を開始してしまうことを抑制でき、当該人工呼吸器2による換気を乱すことなく粘稠物を吸引できる。
【0029】
吸引ルーメン311及び送気ルーメン312が内部に形成されたカテーテル31は、気管カニューレ21内に配置される。これによれば、粘稠物を吸引する吸引ルーメン311により気管カニューレ21内の粘稠物が吸引されるので、当該気管カニューレ21が粘稠物により詰まることを抑制できる。また、吸引ルーメン311の先端部が気管カニューレ21内に配置されるので、当該先端部が気管TR内壁に吸い付くことを防止でき、ひいては、当該気管TR内壁の損傷を防止できる。この他、気管カニューレ21の径方向外側にカテーテル31が配置される場合に比べて、当該カテーテル31の配置を容易に行うことができる。
【0030】
吸引ルーメン311とポンプ35との間、具体的には、吸引ライン32における第1ライン321と第2ライン322との間に設けられた回収容器33により、気管TRから吸引された空気と粘稠物とを確実に分離できる。従って、吸引された粘稠物を確実に回収できる。また、ポンプ35は、空気及び粘稠物を吸引する吸引装置としての機能と、吸引された空気と同量の空気を送出する送出装置としての機能とを有する。これによれば、これら各装置を別体として設ける場合に比べ、吸引システム3の構成を簡略化できる他、吸引された空気と同量の空気を確実に気管TR内に送出できる。
【0031】
回収容器33から送気ルーメン312における気管TR内の端部までの間にフィルター34が設けられていることにより、吸引された粘稠物を回収する回収容器33内で菌が増殖した場合でも、吸引された空気とともに当該菌が患者Pの体内に送出されることを抑制できる。また、フィルター34が回収容器33の排出側端部に設けられていることにより、回収容器33の交換とともに当該フィルター34も交換できる。従って、吸引システム3、ひいては、人工呼吸システム1のメンテナンス性を向上できる。
【0032】
[実施形態の変形]
本発明を実施するための最良の構成などは、以上の記載で開示されているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0033】
前記実施形態では、吸引ルーメン311及び送気ルーメン312は、カテーテル31内に形成され、当該カテーテル31が、吸引カテーテル及び送気カテーテルとして機能するとしたが、本発明はこれに限らない。例えば、吸引カテーテル及び送気カテーテルをそれぞれ個別に気管カニューレ21内に設けてもよく、更には、当該気管カニューレ21とは独立して気管TR内に設けてもよい。
【0034】
前記実施形態では、気管TRから吸引された空気を当該気管TR内に送出することで、吸引された空気と同量の空気を気管TR内に送出しやすいようにするために、吸引装置及び送出装置としての機能を有する1つのポンプ35を採用した。しかしながら、本発明はこれに限らない。すなわち、吸引装置と送出装置とをそれぞれ別体として設けてもよい。この場合、当該吸引装置により気管TRから吸引された空気と略同量の空気を、送出装置が気管TR内に送出すればよい。
【0035】
前記実施形態では、フィルター34は、回収容器33とポンプ35とを接続する第2ライン322における回収容器33の排出側端部に設けられているとしたが、本発明はこれに限らない。すなわち、フィルター34は、回収容器33から送気ルーメン312における気管TR内の端部(送気側端部)までの間に設けられていればよい。
前記実施形態では、気管切開方式により気管カニューレ21を気管TR内に配置したが、本発明はこれに限らない。例えば、気管内挿管方式により気管カニューレ21を気管TR内に挿入してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、人工呼吸器と併用され、気管から粘稠物を吸引する吸引システムに好適に利用できる。
【符号の説明】
【0037】
2…人工呼吸器
3…吸引システム
21…気管カニューレ
32…吸引ライン
33…回収容器
34…フィルター
35…ポンプ(吸引装置、送気装置)
36…送気ライン
311…吸引ルーメン(吸引ライン)
312…送気ルーメン(送気ライン)
図1
図2
図3