特許第6013131号(P6013131)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6013131-隠蔽層付き印刷物、及びその製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013131
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】隠蔽層付き印刷物、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/20 20140101AFI20161011BHJP
   B42D 25/40 20140101ALI20161011BHJP
【FI】
   B42D15/10 200
   B42D15/10 400
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-231989(P2012-231989)
(22)【出願日】2012年10月19日
(65)【公開番号】特開2014-83698(P2014-83698A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100083839
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 泰男
(74)【代理人】
【識別番号】100120189
【弁理士】
【氏名又は名称】奥 和幸
(72)【発明者】
【氏名】田島 寛一
(72)【発明者】
【氏名】関野 吉厚
(72)【発明者】
【氏名】伊東 康裕
(72)【発明者】
【氏名】山本 博之
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕二
(72)【発明者】
【氏名】久田 悟史
(72)【発明者】
【氏名】伊崎 敦子
【審査官】 吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−000887(JP,A)
【文献】 特開2008−162152(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 25/20
B41M 3/00
B42D 25/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地に隠蔽すべき情報を示す隠蔽情報を印刷した隠蔽情報層を設け、この隠蔽情報層の上層には、OPニスを印刷した剥離層を設け、この剥離層の上層には、紫外線硬化型の有色インキを印刷し前記隠蔽情報を隠蔽する隠蔽層を設けた隠蔽層付き印刷物であって、
前記紫外線硬化型の有色インキは、インキ組成物の総量中ウレタンアクリレートを30%以上含有し、且つ、光重合開始剤を10〜15%の範囲で含有し、
前記剥離層の濡れ指数は、36dyne/cm以下であることを特徴とする隠蔽層付き印刷物。
【請求項2】
下地にOPニスを印刷した剥離層を設け、この剥離層の上層には、隠蔽すべき情報を示す隠蔽情報を白抜き印刷した紫外線硬化型の有色インキを印刷してなる隠蔽情報層を設け、この隠蔽情報層の上層には、紫外線硬化型の有色インキを印刷し前記隠蔽情報を隠蔽する隠蔽層を設けた隠蔽層付き印刷物であって、
前記隠蔽情報を白抜き印刷する紫外線硬化型の有色インキは、インキ組成物の総量中ウレタンアクリレートを30%以上含有し、且つ、光重合開始剤を10〜15%の範囲で含有し、
前記剥離層の濡れ指数は、36dyne/cm以下であることを特徴とする隠蔽層付き印刷物。
【請求項3】
隠蔽層は、インキ組成物である植物油由来成分をインキ中に5〜15%の範囲で含有することを特徴とする請求項1、又はに記載の隠蔽層付き印刷物。
【請求項4】
オフセット印刷により、隠蔽情報を印刷した下地の、隠蔽情報(隠蔽情報層)の上層にOPニスによる剥離層を印刷し、この剥離層の上層に紫外線硬化型の有色インキによる隠蔽層を印刷し、紫外線を照射することで当該有色インキを乾燥して硬化させるものであって、前記紫外線硬化型の有色インキは、インキ組成物の総量中ウレタンアクリレートを30%以上含有し、且つ、光重合開始剤を10〜15%の範囲で含有し、前記剥離層の濡れ指数は、36dyne/cm以下であることを特徴とする隠蔽層付き印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、隠蔽層付き印刷物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からインスタント抽選券やゲーム用のカードにおいて、一般的にスクラッチ印刷物と称される隠蔽層付き印刷物が広く利用されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に示すスクラッチ印刷物は、紙上にオフセット印刷により当落などを文字で表わした隠蔽情報を表示するインキ層と、このインキ層を覆うようにして設けられる剥離ニス層と、この剥離ニス層上に設けられる隠蔽用顔料を含有する隠蔽層と、を備えて構成されており、コインや爪、又は接着テープにより隠蔽層を剥離することで隠蔽情報を表出させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−246188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種のスクラッチ印刷物は、本や雑誌に綴じ込まれて付録として適用される場合、書店に当該雑誌が置かれた際に隠蔽層を簡単に剥離可能なため、爪やコインでの単なる引っ掻き程度では剥離できないものとしたいという出版社からの要望がある。
【0006】
また、爪やコインでの擦れによる剥離では、けずりカスが発生し、周囲を汚染するという不具合がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的の一例は、隠蔽層における剥離性の改善を図った隠蔽層付き印刷物等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の隠蔽層付き印刷物(1)は、下地(2)に隠蔽すべき情報を示す隠蔽情報(X)を印刷した隠蔽情報層(4)を設け、この隠蔽情報層の上層には、剥離成分を含有せず剥離効果を有する酸化重合型のOPニスを印刷した剥離層(5)を設け、この剥離層の上層には、紫外線硬化型の有色インキを印刷し前記隠蔽情報を隠蔽する隠蔽層(6)を設けた隠蔽層付き印刷物であって、前記紫外線硬化型の有色インキは、インキ組成物の総量中ウレタンアクリレートを30%以上含有し、且つ、光重合開始剤を10〜15%の範囲で含有し、前記剥離層の濡れ指数は、36dyne/cm以下であることを特徴とする。
【0010】
また、請求項に記載の隠蔽層付き印刷物は、下地にOPニスを印刷した剥離層を設け、この剥離層の上層には、隠蔽すべき情報を示す隠蔽情報を白抜き印刷した紫外線硬化型の有色インキを印刷してなる隠蔽情報層(8a)を設け、この隠蔽情報層の上層には、紫外線硬化型の有色インキを印刷し前記隠蔽情報を隠蔽する隠蔽層(8b、8c)を設けた隠蔽層付き印刷物であって、前記隠蔽情報を白抜き印刷する紫外線硬化型の有色インキ(8a)は、インキ組成物の総量中ウレタンアクリレートを30%以上含有し、且つ、光重合開始剤を10〜15%の範囲で含有し、前記剥離層の濡れ指数は、36dyne/cm以下であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項に記載の隠蔽層付き印刷物は、請求項1、又はに記載の隠蔽層付き印刷物において、隠蔽層(8b)は、インキ組成物である植物油由来成分をインキ中に5〜15%の範囲で含有することを特徴とする。
【0012】
また、請求項に記載の隠蔽層付き印刷物の製造方法は、オフセット印刷により、隠蔽情報を印刷した下地の、隠蔽情報(隠蔽情報層)の上層にOPニスによる剥離層を印刷し、この剥離層の上層に紫外線硬化型の有色インキによる隠蔽層を印刷し、紫外線を照射することで当該有色インキを乾燥して硬化させるものであって、前記紫外線硬化型の有色インキは、インキ組成物の総量中ウレタンアクリレートを30%以上含有し、且つ、光重合開始剤を10〜15%の範囲で含有し、前記剥離層の濡れ指数は、36dyne/cm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明における隠蔽層付き印刷物等によれば、隠蔽層が爪やコインでは剥離せずに、接着テープにて良好に剥離可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】隠蔽層付き印刷物の構成を示す模式図である。
図2】隠蔽層付き印刷物の層構成を示す模式図である。
図3】隠蔽層付き印刷物の使用態様を示す概略図である。
図4】他の実施形態の隠蔽層付き印刷物の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0016】
本実施形態の隠蔽層付き印刷物1は、図1及び図2に示すように、下地となる原反2に文字や絵柄等の隠蔽すべき情報(以下、「隠蔽情報X」と称する。)を表示する隠蔽情報層4と、この隠蔽情報層4の上部に、すわなち、隠蔽情報Xが表示された面に配置される剥離層5と、この剥離層5の上部に設けられる隠蔽用顔料を含有する隠蔽層6と、を備えて構成されている。
【0017】
原反2は、例えば、コート紙等が用いられ、隠蔽情報層4はオフセット印刷により、隠蔽情報Xとしての、例えば、くじの当落や等級等を示す文字、数字、あるいはそれらに該当する絵柄等の情報が印刷される。
【0018】
剥離層5は、オフセット印刷により印刷されるものであって、剥離成分を含有せず剥離効果を有する酸化重合型のOP(Over Print)ニスと称される、通常は主として表面保護を目的として使用されるものが用いられ、特にその濡れ指数が36dyne/cm以下とし、好適な範囲としては34〜36dyne/cmに設定される。
【0019】
このように本実施形態の隠蔽層付き印刷物1は、従来のように剥離ニスを使用して、ワックスやシリコーン等剥離成分の剥離作用にてはがれを発生させるのではなく、剥離層5の濡れ指数を設定し、若しくは隠蔽層6と樹脂の相溶性の悪いインキを剥離層5に選定することによる密着性の低減により、剥離を発生させる。
【0020】
隠蔽層6は、オフセット印刷により有色インキを用いて所定の色(銀色、墨色等)が印刷され、その下層の隠蔽情報Xを隠蔽するものであって、紫外線硬化型インキを用い、印刷後、紫外線を照射することによりインキを乾燥して硬化させたものである。
【0021】
このインキは、銀インキが好適に用いられる。また、当該銀インキは、インキ組成物の総量中ウレタンアクリレートを30%以上含有し、且つ、光重合開始剤を10〜15%含有している。
【0022】
この隠蔽層6は、一層でも構わないが、より隠蔽効果を得るためには、複数層とすることが好ましい。
【0023】
隠蔽層6を複数層とする場合、好適には、銀インキを最下層と最上層に配置し、中間層を挟むサンドイッチ構造とすることが好ましく、この中間層は、インキ組成物である大豆油やアマニ油などの植物油由来成分をインキ組成物の総量中に5〜15%の範囲で含有する紫外線硬化型のインキを用いることが好ましい。この中間層に用いられるインキは、好適には墨色インキであるが他の色インキであっても構わない。また、中間層が直接、剥離層(OPニス)と接触した場合、剥離が発生しないため、中間層の印刷面積は上下の層の印刷面積よりも小さいサイズとする。なお、中間層にインキ組成物の総量中に植物油由来成分が5%未満であるインキを用いることも可能であるが、若干、剥離性が低下することが懸念される。
【0024】
このように構成された隠蔽層付き印刷物1は、図3に示すように、接着テープ10にて隠蔽部を剥がすと、接着テープ10と接触する隠蔽部6aが剥離されるので、隠蔽情報Xが視認可能となる。
【0025】
また、隠蔽層6は、紫外線硬化型インキを用いて強固な皮膜を形成し、また、剥離層5に剥離成分を含まないことで、接着テープで確実に引き剥がすことが可能である一方で、爪やコインでの単なる引っ掻き程度では剥離されないようにすることができる。
【0026】
このような隠蔽層付き印刷物1は、上述したようにオフセット印刷により、隠蔽情報Xを印刷した下地(原反2)の、隠蔽情報X(隠蔽情報層4)の上部に、すなわち、隠蔽情報Xが表示された面にOPニスによる剥離層5を印刷し、この剥離層5の上部に紫外線硬化型の有色インキによる隠蔽層6を印刷し、紫外線を照射することで当該有色インキを乾燥して硬化させて製造される。
【0027】
このような隠蔽層付き印刷物1の製造方法によれば、隠蔽情報層4、剥離層5、及び隠蔽層6が、それぞれ同一のオフセット印刷方式により印刷されるので、剥離層5及び隠蔽層6を、グラビア印刷やスクリーン印刷など、異なる印刷方式で印刷するのに比べて、生産性の向上や製造コストの低減を図れる。
【0028】
次に、隠蔽層付き印刷物の他の実施例について図4を用いて説明する。上記実施形態が、下地としての原反2に隠蔽情報Xを印刷するのに対して、本実施例の隠蔽層付き印刷物は、原反2に隠蔽情報Xを印刷せずに、複数の有色インキ層の最下層に隠蔽情報Xを逆版印刷し、その上層に隠蔽層を形成するものである。
【0029】
本実施形態の隠蔽層付き印刷物1Aは、例えば、被隠蔽部が単色ネームや図形である場合において、原反2上にOPニスで構成される剥離層5と、この剥離層5上に設けられる有色インキ層8と、を備えて構成されている。
【0030】
この有色インキ層8は、例えば、下インキ層8a、中間インキ層8b、上インキ層8cの3層で構成されている。下インキ層8aは、銀インキが印刷され、隠蔽情報Xが白抜きされており、中間インキ層8bは、隠蔽層として機能し、墨色インキが印刷されており、上インキ層8cは、銀インキが印刷されている。
【0031】
この場合、接着テープにて隠蔽部を剥がすと、剥離層5であるOPニスと接触している下インキ層8aは剥離が生じ、OPニスと中間インキ層8bが接触している部分は剥離が生じないため、隠蔽層により隠蔽情報Xが形成される。
【0032】
以上に説明したように、本実施形態の隠蔽層付き印刷物1は、隠蔽部をインキ組成物の総量中ウレタンアクリレートを30%以上含有し、且つ光重合開始剤を10〜15%含有する銀インキを用いることでコインや爪で削れないようにすることができる。
【0033】
また、剥離層5に剥離成分を含まないOPニスを用い、剥離層5の濡れ指数を36dyne/cm未満とすることで剥離を生じるようにしている。
【0034】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 隠蔽層付き印刷物
X 隠蔽情報
2 原反
4 隠蔽情報層
5 剥離層
6 隠蔽層
図1
図2
図3
図4