特許第6013140号(P6013140)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013140
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】発電システム
(51)【国際特許分類】
   F03G 4/00 20060101AFI20161011BHJP
   F01K 23/02 20060101ALI20161011BHJP
   F01K 27/02 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   F03G4/00 521
   F01K23/02 Z
   F01K27/02 Z
   F03G4/00 511
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-241513(P2012-241513)
(22)【出願日】2012年11月1日
(65)【公開番号】特開2014-92040(P2014-92040A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2015年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハディアント アスハリ モハメッド
(72)【発明者】
【氏名】谷口 晶洋
(72)【発明者】
【氏名】ロジオノフミハイル
(72)【発明者】
【氏名】沖田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勝康
(72)【発明者】
【氏名】山下 勝也
(72)【発明者】
【氏名】古屋 修
(72)【発明者】
【氏名】高柳 幹男
【審査官】 佐藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−125172(JP,A)
【文献】 特開昭62−298668(JP,A)
【文献】 特開昭58−010168(JP,A)
【文献】 実開昭60−084772(JP,U)
【文献】 特開平05−222906(JP,A)
【文献】 特開2001−280104(JP,A)
【文献】 特開2002−221008(JP,A)
【文献】 特開平07−208117(JP,A)
【文献】 米国特許第05598706(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03G 4/00
F01K 23/00−10
F01K 25/10
F01K 27/02
DWPI(Thomson Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産井から供給される地熱流体を蒸気と熱水とに分離するフラッシャーと、
前記フラッシャーによって分離された蒸気が作動媒体として供給されることにより駆動する蒸気タービンと、
前記蒸気タービンから排出された蒸気が第1の熱媒として供給される蒸発器と、
前記蒸発器を介して前記第1の熱媒が供給される第1予熱器と、
前記フラッシャーによって分離された熱水が前記フラッシャーから第2の熱媒として供給される過熱器と、
前記過熱器を介して前記第2の熱媒が供給される第2予熱器と、
水よりも沸点が低い低沸点媒体が、前記第1予熱器、前記第2予熱器、前記蒸発器、及び前記過熱器において、順次、熱交換された後に、作動媒体として供給されることによって駆動する媒体タービンと、
を有し、
前記蒸発器及び前記第1予熱器では、前記低沸点媒体と前記第1の熱媒との間において熱交換が行われ、
前記過熱器及び前記第2予熱器においては、前記低沸点媒体と前記第2の熱媒との間において熱交換が行われることを特徴とする、
発電システム。
【請求項2】
前記フラッシャーによって分離された熱水が前記過熱器を介して供給され、当該供給された熱水を減圧することによって、蒸気と熱水とに分離する気液分離器
を更に有し、
前記気液分離器において蒸気が分離された熱水は、前記第2予熱器に前記第2の熱媒として供給され、
前記気液分離器において熱水から分離された蒸気は、前記蒸気タービンから排出された蒸気と共に、前記第1の熱媒として、前記蒸発器と前記第予熱器とに順次供給されることを特徴とする、
請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
前記フラッシャーによって分離された熱水が前記過熱器を介して供給され、当該供給された熱水を減圧することによって、蒸気と熱水とに分離する気液分離器
を更に有し、
前記気液分離器において蒸気が分離された熱水は、前記第2予熱器に前記第2の熱媒として供給され、
前記気液分離器において熱水から分離された蒸気は、前記蒸気タービンにおいて、前記フラッシャーによって分離された蒸気が作動媒体として供給される初段のタービン段落よりも後段に位置するタービン段落に、作動媒体として供給されることを特徴とする、
請求項1に記載の発電システム。
【請求項4】
前記媒体タービンから排出された低沸点媒体を凝縮する凝縮器と、
前記凝縮器によって凝縮された低沸点媒体を、前記第1予熱器、前記第2予熱器、前記蒸発器、及び前記過熱器を順次介して、前記媒体タービンに供給する媒体ポンプと
を有することを特徴とする、
請求項1から3のいずれかに記載の発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
地熱流体(地熱水)から分離した蒸気を作動媒体として蒸気タービンが駆動すると共に、蒸気タービンから排出された蒸気及び地熱流体から分離した熱水を用いてガス化した低沸点媒体を作動媒体として媒体タービンが駆動するコンバインド発電システムが、知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−208117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の発電システムでは、蒸気タービンから排出された蒸気と地熱流体から蒸気を分離して得た熱水とを合流させたものを熱媒(熱源媒体)として用いて、低沸点媒体をガス化し、媒体タービンに供給している。
【0005】
しかしながら、地熱流体から蒸気を分離して得られた熱水と、蒸気タービンから排出された蒸気とのそれぞれは、エネルギーレベルが互いに異なる。このため、両者を合流させたものと低沸点媒体との間で熱交換を行う場合には、低沸点媒体を十分に過熱することができない場合がある。
【0006】
このように、地熱流体を用いて発電を行う発電システムにおいては、地熱エネルギーの利用効率が十分でなく、その結果、発電量の向上が困難な場合がある。
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、地熱エネルギーの利用効率を向上し、発電量を増加することができる発電プラントを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態の発電システムにおいては、生産井から供給される地熱流体を蒸気と熱水とにフラッシャーが分離する。そのフラッシャーによって分離された蒸気が作動媒体として供給されることにより蒸気タービンが駆動する。その蒸気タービンから排出された蒸気が第1の熱媒として蒸発器に供給される。その蒸発器を介して第1の熱媒が第1予熱器に供給される。フラッシャーによって分離された熱水がフラッシャーから第2の熱媒として過熱器に供給される。その過熱器を介して第2の熱媒が第2予熱器に供給される。そして、水よりも沸点が低い低沸点媒体が、第1予熱器、第2予熱器、蒸発器、及び過熱器において、順次、熱交換された後に、作動媒体として供給されることによって、媒体タービンが駆動する。蒸発器及び第1予熱器では、低沸点媒体と第1の熱媒との間において熱交換が行われる。そして、過熱器及び第2予熱器においては、低沸点媒体と第2の熱媒との間において熱交換が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、第1実施形態に係る発電システムを示す系統図である。
図2図2は、第2実施形態に係る発電システムを示す系統図である。
図3図3は、第3実施形態に係る発電システムを示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
<第1実施形態>
[A]発電システムの構成
図1は、第1実施形態に係る発電システムを示す系統図である。
【0012】
発電システム1は、図1に示すように、フラッシャー11、蒸気タービン21、発電機22と、蒸発器31、第1予熱器32、過熱器41、第2予熱器42、媒体タービン51、発電機52、凝縮器61、冷却塔71、冷却ポンプ72、及び、媒体ポンプ81を有する。
【0013】
以下より、発電システム1を構成する各部について順次説明する。
【0014】
[A−1]フラッシャー11
フラッシャー11は、生産井10から供給される地熱流体F1(地熱水)を蒸気と熱水とに分離し、その分離した蒸気を作動媒体F11として蒸気タービン21に供給すると共に、その分離した熱水を熱媒F12として過熱器41に供給する。
【0015】
具体的には、フラッシャー11は、減圧弁100vが設置された配管100が、生産井10との間に設けられており、生産井10から地熱流体F1がその配管100に流入し、減圧弁100vを介して供給される。そして、フラッシャー11は、その供給された地熱流体F1を減圧することによって、蒸気と熱水とに分離する。
【0016】
また、フラッシャー11は、弁111Av(主蒸気止め弁(MSV),蒸気加減弁(CV))が設置された配管111Aが蒸気タービン21との間に設けられており、分離した蒸気を、その配管111Aから蒸気タービン21に作動媒体F11として供給する。さらに、フラッシャー11は、減圧弁111Bvが設置された配管111Bが、過熱器41との間に設けられており、分離した熱水を、その配管111Bから過熱器41に熱媒F12として供給する。
【0017】
[A−2]蒸気タービン21
蒸気タービン21は、フラッシャー11から作動媒体F11が内部に供給されることにより駆動する。
【0018】
具体的には、蒸気タービン21は、フラッシャー11との間に設けられた配管111Aから、作動媒体F11が弁111Av(MSV,CV)を介してケーシング(図示省略)の内部に供給される。そして、蒸気タービン21は、その作動媒体F11の供給によって、ケーシングの内部においてタービンロータ(図示省略)が回転する。
【0019】
ここでは、蒸気タービン21は、静翼(ノズル)と動翼(タービン羽根)とによって構成されるタービン段落が、タービンロータの回転軸に沿って複数設けられており、一方の端部に位置する初段のタービン段落に作動媒体F11が供給される。そして、蒸気タービン21においては、その供給された作動媒体F11が、各タービン段落において仕事を行ってタービンロータを回転させる。作動媒体F11は、一方の端部から他方の端部へ流れるに従って温度および圧力が低下し、他方の端部に位置する最終段のタービン段落を通過した後に、配管121Aから排出される。
【0020】
つまり、蒸気タービン21は、作動媒体F11が一方の端部から他方の端部に向かって流れて排出される単流タービンである。
【0021】
[A−3]発電機22
発電機22は、蒸気タービン21に備えられたタービンロータの回転軸に連結されており、タービンロータの回転によって駆動し、発電を行う。
【0022】
[A−4]蒸発器31
蒸発器31は、蒸気タービン21において作動媒体F11として用いられた蒸気が熱媒F11A(第1の熱媒)として排出され、その熱媒F11Aを用いて、第2予熱器42で予熱された低沸点媒体F2を蒸発させる。
【0023】
具体的には、蒸発器31は、熱媒F11Aが蒸気タービン21から配管121Aを介して供給される。また、蒸発器31は、低沸点媒体F2が第2予熱器42から配管142Bを介して供給される。そして、蒸発器31では、熱媒F11Aと低沸点媒体F2との間において熱交換が行われることによって、低沸点媒体F2が蒸発する。
【0024】
その後、蒸発器31においては、熱交換後の熱媒F11Aが配管131Aに排出される。ここでは、熱媒F11Aは、蒸発器31の出口において復水されて、熱水になった状態で排出される。また、蒸発器31においては、熱交換後の低沸点媒体F2が配管131Bに排出される。
【0025】
[A−5]第1予熱器32
第1予熱器32は、蒸発器31から排出された熱媒F11Aを用いて、凝縮器61によって凝縮された低沸点媒体F2を予熱する。
【0026】
具体的には、第1予熱器32は、熱媒F11Aが蒸発器31から配管131Aを介して供給される。また、第1予熱器32は、低沸点媒体F2が凝縮器61から配管161Bを介して供給される。ここでは、熱媒F11Aは、蒸発器31の出口において復水されて、熱水になった状態で供給され、低沸点媒体F2は、凝縮器61によって凝縮され、液化された状態で供給される。そして、第1予熱器32では、熱媒F11Aと、低沸点媒体F2との間において熱交換が行われることによって、低沸点媒体F2が予熱される。
【0027】
その後、第1予熱器32においては、熱媒F11Aが配管132Aに排出され、還元井90に還元される。また、低沸点媒体F2が第1予熱器32から配管132Bに排出される。
【0028】
[A−6]過熱器41
過熱器41は、フラッシャー11によって分離された熱水が熱媒F12(第2の熱媒)として供給され、その供給された熱媒F12を用いて、蒸発器31によって蒸発された低沸点媒体F2を過熱する。
【0029】
具体的には、過熱器41は、熱媒F12がフラッシャー11から配管111Bを介して供給される。また、過熱器41は、低沸点媒体F2が蒸発器31から配管131Bを介して供給される。ここでは、熱媒F12は、蒸気タービン21から排出された熱媒F11Aよりも高い温度で過熱器41に供給され、低沸点媒体F2は、蒸発器31によって気化された状態で供給される。そして、過熱器41では、熱媒F12と低沸点媒体F2との間において熱交換が行われ、低沸点媒体F2が過熱される。
【0030】
その後、過熱器41においては、熱媒F12が配管141Aに排出される。また、低沸点媒体F2が過熱器41から配管141Bに排出される。
【0031】
[A−7]第2予熱器42
第2予熱器42は、過熱器41から供給された熱媒F12を用いて、第1予熱器42によって予熱された低沸点媒体F2を、更に予熱する。
【0032】
具体的には、第2予熱器42は、熱媒F12が過熱器41から配管141Aを介して供給される。また、第2予熱器42は、低沸点媒体F2が第1予熱器32から配管132Bを介して供給される。そして、第2予熱器42では、熱媒F12と低沸点媒体F2との間において熱交換が行われることによって、低沸点媒体F2が更に予熱される。
【0033】
その後、第2予熱器42においては、熱媒F12が配管142Aに排出され、還元井90に還元される。また、低沸点媒体F2が第2予熱器42から配管142Bに排出される。
【0034】
[A−8]媒体タービン51
媒体タービン51は、第1予熱器32、第2予熱器42、蒸発器31、及び、過熱器41において、順次、熱交換された低沸点媒体F2が内部に供給されることによって、発電機52を駆動させる。
【0035】
具体的には、媒体タービン51は、過熱器41との間に設けられた配管141Bから、減圧弁141Bvを介して、ケーシング(図示省略)の内部に、低沸点媒体F2が作動媒体として供給される。本実施形態では、低沸点媒体F2は、水よりも沸点が低いものが用いられる。たとえば、低沸点媒体F2は、ハイドロフルオロカーボン(HFC)などの代替フロンや、ブタンなどの炭化水素である。そして、媒体タービン51は、その低沸点媒体F2の供給によって、そのケーシングの内部に設置されたタービンロータ(図示省略)が回転する。
【0036】
ここでは、媒体タービン51は、蒸気タービン21と同様に、静翼(ノズル)と動翼(タービン羽根)とによって構成されるタービン段落が、タービンロータの回転軸に沿って複数設けられており、低沸点媒体F2は、一方の端部に位置する初段のタービン段落に供給される。そして、媒体タービン51においては、その供給された低沸点媒体F2が、各タービン段落において仕事を行ってタービンロータを回転させる。低沸点媒体F2は、一方の端部から他方の端部へ流れるに従って圧力および温度が低下し、他方の端部に位置する最終段のタービン段落を通過した後に、配管151Bから排出媒体として排出される。
【0037】
つまり、媒体タービン51は、蒸気タービン21と同様に、単流タービンである。
【0038】
[A−9]発電機52
発電機52は、媒体タービン51の回転軸に連結されており、媒体タービン51の内部においてタービンロータが回転することによって駆動し、発電を行う。
【0039】
[A−10]凝縮器61
凝縮器61は、媒体タービン51から排出された低沸点媒体F2を凝縮する。
【0040】
具体的には、凝縮器61は、低沸点媒体F2が媒体タービン51から配管151Bを介して供給される。また、凝縮器61は、冷却ポンプ72から配管172Cを介して冷媒F3が供給される。そして、凝縮器61においては、媒体タービン51から排出された低沸点媒体F2と、冷却ポンプ72から供給された冷媒F3との間で熱交換が行われ、低沸点媒体F2が凝縮される。
【0041】
その後、凝縮器61では、凝縮された低沸点媒体F2が、配管161Bに排出される。また、冷媒F3が凝縮器61から配管161Cに排出される。
【0042】
[A−11]冷却塔71
冷却塔71は、凝縮器61から排出された冷媒F3を冷却する。
【0043】
具体的には、冷却塔71は、冷媒F3が凝縮器61から配管161Cを介して供給され、その供給された冷媒F3を冷却する。そして、冷却塔71は、冷却した冷媒F3を配管171に排出する。
【0044】
[A−12]冷却ポンプ72
冷却ポンプ72は、冷却塔71から排出された冷媒F3を凝縮器61に供給する。
【0045】
具体的には、冷却ポンプ72は、冷却塔71から冷媒F3が配管171Cを介して供給される。そして、冷却ポンプ72は、その供給された冷媒F3を配管172Cへ排出することによって、凝縮器61に移送し供給する。
【0046】
[A−13]媒体ポンプ81
媒体ポンプ81は、第1予熱器32、第2予熱器42、蒸発器31、及び、過熱器41を順次介して、凝縮器61によって凝縮された低沸点媒体F2を、媒体タービン51に供給する。
【0047】
具体的には、媒体ポンプ81は、凝縮器61によって凝縮された低沸点媒体F2が、配管161Bを介して供給される。そして、媒体ポンプ81は、その供給された低沸点媒体F2を昇圧して、配管181Bへ排出する。これにより、媒体ポンプ81は、第1予熱器32、第2予熱器42、蒸発器31、及び、過熱器41に、低沸点媒体F2を順次移送して、熱交換させた後に、その低沸点媒体F2を媒体タービン51に供給する。
【0048】
[B]発電システムでの動作
上記の発電システム1の動作について図1を参照して説明する。
【0049】
発電システム1は、図1に示すように、地熱流体F1をフラッシャー11が蒸気と熱水とに分離した後に、そのフラッシャー11によって分離された蒸気を作動媒体F11として蒸気タービン21が駆動する。
【0050】
これと共に、発電システム1は、蒸気タービン21から排出された蒸気、および、フラッシャー11によって分離された熱水を熱媒F11A,F12として用いて、低沸点媒体F2をガス化する。その後、発電システム1は、そのガス化された低沸点媒体F2を作動媒体として用いて、媒体タービン51が駆動する。
【0051】
以下より、上記の動作に関して、地熱流体F1の流れと、低沸点媒体F2の流れとに分けて、詳細に説明する。
【0052】
[B−1]地熱流体F1の流れについて
地熱流体F1は、図1に示すように、生産井10、フラッシャー11、蒸気タービン21、蒸発器31、第1予熱器32、過熱器41、第2予熱器42、及び、還元井90を順次循環するフラッシュサイクルにおいて用いられる。
【0053】
具体的には、地熱流体F1(地熱水)は、まず、生産井10からフラッシャー11に供給される。地熱流体F1は、蒸気と熱水とが混合した混合流体であり、フラッシャー11において減圧され、蒸気と熱水とに分離される。
【0054】
そして、フラッシャー11で分離された蒸気は、作動媒体F11として蒸気タービン21に供給される。たとえば、作動媒体F11は、150℃の温度で蒸気タービン21に供給される。そして、作動媒体F11が、蒸気タービン21において仕事を行うことによって、発電機22を駆動させる。
【0055】
その後、作動媒体F11は、蒸気タービン21から排出され、熱媒F11A(第1の熱媒)として、蒸発器31と第1予熱器32とに順次供給される。たとえば、熱媒F11Aは、100℃の温度で蒸気タービン21から蒸発器31に供給された後に、蒸発器31において復水された状態で第1予熱器32に供給される。そして、熱媒F11Aは、第1予熱器32から還元井90に還元される。たとえば、熱媒F11Aは、80℃の温度で還元井90に排出される。
【0056】
この一方で、フラッシャー11で分離された熱水は、熱媒F12(第2の熱媒)として、過熱器41と第2予熱器42とに順次供給される。熱媒F12(第2の熱媒)は、蒸発器31に供給される熱媒F11A(第1の熱媒)よりも温度が高い状態で、過熱器41に供給される。また、熱媒F12(第2の熱媒)は、蒸発器31から第1予熱器32に供給される熱媒F11A(第1の熱媒)よりも温度が高い状態で、過熱器41から第2予熱器42に供給される。たとえば、熱媒F12は、150℃の温度で過熱器41に供給された後に、第2予熱器42に供給される。その後、熱媒F12は、第2予熱器42から還元井90に還元される。たとえば、熱媒F12は、80℃の温度で還元井90に排出される。
【0057】
このように、地熱流体F1は、フラッシュサイクルにおいて循環される。なお、上記のように、フラッシュサイクルにおいて流れる流体の温度条件等は、例示であり、上記の条件に限らない。
【0058】
[B−2]低沸点媒体F2の流れについて
低沸点媒体F2は、図1に示すように、第1予熱器32、第2予熱器42、蒸発器31、過熱器41、媒体タービン51、凝縮器61、及び、媒体ポンプ81を順次循環するバイナリサイクルにおいて用いられる。
【0059】
具体的には、低沸点媒体F2は、まず、第1予熱器32、第2予熱器42、蒸発器31、及び、過熱器41で構成される熱交換部において熱交換が行われる。ここでは、低沸点媒体F2は、第1予熱器32において、蒸発器31から排出された熱媒F11A(第1の熱媒)の熱によって、予熱される。そして、第1予熱器32によって予熱された低沸点媒体F2は、第2予熱器42において、過熱器41から排出された熱媒F12(第2の熱媒)の熱によって、更に予熱される。そして、第1予熱器32及び第2予熱器42によって予熱された低沸点媒体F2は、蒸発器31において、蒸気タービン21から排出された熱媒F11A(第1の熱媒)の熱によって、蒸発する。その後、蒸発器31によって蒸発した低沸点媒体F2は、第2予熱器42において、過熱器41から排出された熱媒F12(第2の熱媒)の熱によって、過熱される。
【0060】
低沸点媒体F2は、第1予熱器32、第2予熱器42、蒸発器31、及び、過熱器41において熱交換されるに伴って温度が上昇し、たとえば、第1予熱器32では、70℃となり、第2予熱器42では、80℃となり、蒸発器31では、110℃となり、過熱器41では、145℃となる。
【0061】
つぎに、過熱器41において過熱された低沸点媒体F2は、媒体タービン51の内部に作動媒体として供給され、媒体タービン51において仕事を行うことによって、発電機52を駆動させる。
【0062】
つぎに、媒体タービン51から排出された低沸点媒体F2は、凝縮器61において凝縮される。そして、凝縮器61によって凝縮された低沸点媒体F2は、上記のように、媒体ポンプ81によって、第1予熱器32、第2予熱器42、蒸発器31、及び過熱器41を順次介して、媒体タービン51に供給される。
【0063】
このように、低沸点媒体F2は、バイナリサイクルにおいて循環される。なお、上記のように、バイナリサイクルにおいて流れる流体の温度条件等は、例示であり、上記の条件に限らない。また、並列に並べられた熱交換部を用いて低沸点媒体F2について熱交換を行うように構成してもよい。
【0064】
[C]まとめ
以上のように、本実施形態の発電システム1では、蒸気タービン21から排出された蒸気と、フラッシャー11で分離された熱水との両者は、互いが合流した状態で、蒸発器31などの熱交換器に供給されない。本実施形態において、フラッシャー11で分離された蒸気は、作動媒体F11として蒸気タービン21に供給された後に、蒸発器31と第1予熱器32とに、熱媒F11A(第1の熱媒)として順次供給される。そして、フラッシャー11で分離された熱水は、フラッシャー11で分離された蒸気とは別の流路を流れて、熱媒F12(第2の熱媒)として、過熱器41と第2予熱器42とに順次供給される。そして、低沸点媒体F2は、第1予熱器32、第2予熱器42、蒸発器31、及び、過熱器41において、順次、熱交換が行われた後に、媒体タービン51に作動媒体として供給される。
【0065】
つまり、過熱器41では、フラッシャー11において分離された熱水が、蒸気タービン21から排出された蒸気よりも温度が高い状態で供給されると共に、低沸点媒体F2が蒸発器31から供給され、その熱水と低沸点媒体F2との間で熱交換が行われる。そして、更に、第2予熱器42では、過熱器41から排出された熱水と、第1予熱器32から排出された低沸点媒体F2との間で熱交換が行われる。
【0066】
このため、本実施形態では、第1予熱器32、第2予熱器42、蒸発器31、及び過熱器41のそれぞれにおいて、低沸点媒体F2の温度を効率良く上昇させて、ガス化することができる。その結果、本実施形態では、バイナリサイクルでの発電量を増加させることができる。
【0067】
したがって、本実施形態の発電システム1は、地熱エネルギーの利用効率を向上することができ、発電量の増加を実現することができる。
【0068】
<第2実施形態>
[A]構成等
図2は、第2実施形態に係る発電システムを示す系統図である。
【0069】
図2に示すように、本実施形態の発電システム1bは、気液分離器43が更に設けられている。本実施形態は、この点、および、これに関連する点を除き、第1実施形態の場合と同様である。このため、本実施形態において、上記の実施形態と重複する個所については、適宜、説明を省略する。
【0070】
気液分離器43は、図2に示すように、フラッシャー11によって分離された熱水が、減圧弁141Avが設置された配管141Aを介して、過熱器41から供給される。そして、気液分離器43は、その過熱器41から供給された熱水を減圧することによって、その熱水から蒸気を分離する。
【0071】
そして、気液分離器43は、減圧弁143Bvが設置された配管143Bに、その分離した蒸気を排出する。その配管143Bは、蒸気タービン21と蒸発器31との間に設けられた配管121Aに接続されている。このため、気液分離器43において熱水から分離された蒸気は、蒸気タービン21から排出された蒸気と共に、熱媒F11A(第1の熱媒)として、蒸発器31と第1予熱器32とに順次供給される。
【0072】
また、気液分離器43は、第2予熱器42との間に配管143Aが設けられており、蒸気が分離された熱水を、その配管143Aに排出する。このため、気液分離器43において蒸気が分離された熱水は、第2予熱器42に熱媒F12(第2の熱媒)として供給される。
【0073】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態の発電システム1bでは、気液分離器43において熱水から分離された蒸気は、蒸気タービン21から排出された蒸気と共に、熱媒F11A(第1の熱媒)として、蒸発器31と第1予熱器32とに順次供給される。このため、本実施形態では、低沸点媒体F2は、第1実施形態の場合よりも、第1予熱器32において熱交換される熱量が増加すると共に、蒸発器31において熱交換される熱量が増加する。その結果、本実施形態では、低沸点媒体F2の蒸発量を増加させることができるので、バイナリサイクルでの発電量を増加させることができる。
【0074】
したがって、本実施形態の発電システム1bは、地熱エネルギーの利用効率を更に向上可能であって、発電量の増加を実現することができる。
【0075】
<第3実施形態>
[A]構成等
図3は、第3実施形態に係る発電システムを示す系統図である。
【0076】
図3に示すように、本実施形態の発電システム1cは、気液分離器43が分離した蒸気の排出先が、第2実施形態と異なる。本実施形態は、この点、および、これに関連する点を除き、第2実施形態の場合と同様である。このため、本実施形態において、上記の実施形態と重複する個所については、適宜、説明を省略する。
【0077】
気液分離器43は、図3に示すように、減圧弁143Bvが設置された配管143Bが設けられている。その配管143Bは、蒸気タービン21に接続されており、気液分離器43は、その配管143Bを介して、熱水から分離した蒸気を蒸気タービン21に作動媒体F12aとして供給する。ここでは、気液分離器43は、その熱水から分離した蒸気を、初段のタービン段落よりも下流側に位置する中段のタービン段落に、作動媒体F12aとして供給する。
【0078】
このように、蒸気タービン21は、他の実施形態と同様に、フラッシャー11によって分離された蒸気が、作動媒体F11として初段のタービン段落に供給される。この他に、蒸気タービン21は、上記のように、他の実施形態と異なり、気液分離器43において熱水から分離された蒸気が、中段のタービン段落に作動媒体F12aとして供給される。つまり、蒸気タービン21は、混圧タービンである。
【0079】
[B]まとめ
以上のように、本実施形態の発電システム1cでは、気液分離器43において熱水から分離された蒸気は、第2実施形態の場合と異なり、作動媒体F12aとして、蒸気タービン21において中段に位置するタービン段落に供給される。このため、本実施形態では、フラッシュサイクルでの発電量を増加させることができる。
【0080】
この他に、気液分離器43において熱水から分離された蒸気は、フラッシャー11によって分離された蒸気と蒸気タービン21において混合された後に、蒸気タービン21から熱媒F11A(第1の熱媒)として、蒸発器31と第1予熱器32とに順次供給される。このため、本実施形態では、低沸点媒体F2は、第1実施形態の場合よりも、第1予熱器32において熱交換される熱量が増加すると共に、蒸発器31において熱交換される熱量が増加する。その結果、本実施形態では、第1実施形態の場合よりも、低沸点媒体F2の蒸発量を増加させることができるので、バイナリサイクルでの発電量を増加させることができる。
【0081】
したがって、本実施形態の発電システム1cは、地熱エネルギーの利用効率を更に向上可能であって、発電量の増加を実現することができる。
【0082】
<その他>
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0083】
1,1b,1c…発電システム、10…生産井、11…フラッシャー、21…蒸気タービン、22…発電機、31…蒸発器、32…第1予熱器、41…過熱器、42…第2予熱器、43…気液分離器、51…媒体タービン、52…発電機、61…凝縮器、71…冷却塔、72…冷却ポンプ、81…媒体ポンプ、90…還元井、F1…地熱流体、F11…作動媒体、F11A…熱媒(第1の熱媒)、F12…熱媒(第2の熱媒)、F12a…作動媒体、F2…低沸点媒体、F3…冷媒
図1
図2
図3