特許第6013150号(P6013150)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6013150ポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013150
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】ポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/023 20060101AFI20161011BHJP
   G03F 7/075 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   G03F7/023
   G03F7/075 521
【請求項の数】10
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2012-256754(P2012-256754)
(22)【出願日】2012年11月22日
(65)【公開番号】特開2014-106250(P2014-106250A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2015年10月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】312001199
【氏名又は名称】メルクパフォーマンスマテリアルズマニュファクチャリング合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108350
【弁理士】
【氏名又は名称】鐘尾 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】野中 敏章
(72)【発明者】
【氏名】横山 大志
(72)【発明者】
【氏名】福家 崇司
(72)【発明者】
【氏名】田代 裕治
【審査官】 高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−123391(JP,A)
【文献】 特開2011−227159(JP,A)
【文献】 特開2007−193318(JP,A)
【文献】 特開2010−101957(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/026400(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/161025(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004−7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に対する溶解速度の異なる少なくとも2種類以上のポリシロキサン、(II)シラノール以外のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液可溶性基を有するポリシロキサン、(III)ジアゾナフトキノン誘導体、および(IV)溶剤を含有するポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法であって、前記ポリシロキサン(I)が、
(A)一般式(1):
【化1】
(式中、R1は、任意のメチレンが酸素で置き換えられてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状あるいは環状アルキル基、または炭素数6〜20で任意の水素がフッ素で置き換えられてもよいアリール基を表し、R2は、炭素数1〜5のアルキル基を表し、nは0または1を表す。)
で表されるシラン化合物を塩基性触媒の存在下で加水分解・縮合させて得られるプリベーク後の膜が5重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に可溶であり、その溶解速度が1,000Å/秒以下であるポリシロキサン(Ia)と、
(B)前記一般式(1)で表されるシラン化合物を酸性あるいは塩基性触媒の存在下で加水分解・縮合させて得られるプリベーク後の膜の2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に対する溶解速度が200Å/秒以上であるポリシロキサン(Ib)
との混合物であって、該混合物の2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に対する溶解速度が50〜1,000Å/秒であるポリシロキサンであり、
また前記シラノール以外のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液可溶性基を有するポリシロキサン(II)が、プリベーク後の膜の2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に対する溶解速度が50〜1,000Å/秒であるポリシロキサンであることを特徴とするポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法
【請求項2】
請求項1記載のポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法において、ポリシロキサン(Ib)が、前記一般式(1)で表されるシラン化合物(式中、R1は、任意のメチレンが酸素で置き換えられてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状あるいは環状アルキル基、または炭素数6〜20で任意の水素がフッ素で置き換えられてもよいアリール基を表し、nは0または1、R2は、炭素数1〜5のアルキル基を表す)を酸性あるいは塩基性触媒の存在下で加水分解・縮合させて得られるプリベーク後の膜の2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に対する溶解速度が3,000Å/秒以上であるポリシロキサン(Ib’)および/または200〜3,000Å/秒であるポリシロキサン(Ib”)を含むことを特徴とするポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法
【請求項3】
請求項1記載のポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法において、ポリシロキサン(I)が少なくともポリシロキサン(Ia)および請求項2に記載のポリシロキサン(Ib”)を含み、ポジ型感光性シロキサン組成物は1ミクロン以下の膜厚で用いられることを特徴とするポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法において、前記テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液可溶性基を有するポリシロキサン(II)が、少なくとも1種の下記一般式(2)で表されるシラン化合物を酸性あるいは塩基性触媒の存在下で加水分解・縮合させて得られる、プリベーク後の膜の2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度が50〜1,000Å/秒であるポリシロキサンであることを特徴とするポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法
一般式(2):
【化2】
(式中、R3は、少なくとも1種類の2.38%TMAH水溶液に可溶な基(R3a)を有する基を表し、R3aは、フェノール性水酸基、カルボン酸またはその塩、カルボン酸無水物、スルホン酸またはその塩、チオール、シアノ、または−CO−R7(式中、R7は、水素原子または、炭素数1〜5のアルキル基、アルケニル基またはアルコキシ基を表す。)を表し、R4は、炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
【請求項5】
請求項4記載のポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法において、前記ポリシロキサン(II)が、少なくとも1種の前記一般式(2)で表されるシラン化合物と少なくとも1種の下記一般式(3)で表されるシラン化合物とから得られたものであることを特徴とするポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法
一般式(3):
【化3】
(式中、R5は、メチル基またはフェニル基を表し、R6は、炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
【請求項6】
請求項4または5記載のポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法において、前記R3が、下記一般式(4)で表される基であることを特徴とするポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法
一般式(4):
【化4】
(式中、Xは単結合、または、炭素数1〜10のアルキレン基を表し(但し、1個の−CH2−が、−CH=CH=、−O−、−CO−、−COO−で置き換えられてもよい)、Mは単結合または炭素数5〜10の環状アルキル基、フェニル基、またはナフタレン基を表し、R3aは、フェノール性水酸基、カルボン酸またはその塩、カルボン酸無水物、スルホン酸またはその塩、チオール、シアノ、または−CO−R7(式中、R7は、水素原子または、炭素数1〜5のアルキル基、アルケニル基またはアルコキシ基を表す。)を表し、Mが環状アルキル基の場合カルボン酸基またはその塩、カルボン酸無水物、スルホン酸またはその塩、チオール、およびシアノから選ばれた基であり、Mがフェニル基またはナフタレン基の場合、水酸基、カルボン酸またはその塩、カルボン酸無水物、スルホン酸またはその塩、チオール、およびシアノから選ばれた基を表す。また、R3aはMに複数個置換されていてもよいし、その場合互いのR3aは同一でも異なってもよい。)
【請求項7】
請求項5記載のポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法において、ポリシロキサン(II)が下記構造を有するポリシロキサンであることを特徴とするポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法
【化5】

(式中、R5はメチル基又はフェニル基を表し、nは0〜10であり(但し、アルキレン基の1個の−CH−が、−CH=CH−、−O−、−CO−、−COO−で置き換えられてもよい。)、xおよびyは共重合比(モル%)であって、x:y=10:90〜90:10であり、nは0〜10である。)
【請求項8】
請求項5記載のポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法において、ポリシロキサン(II)が下記構造であることを特徴とするポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法
【化6】

(式中、R5はメチル基またはフェニル基を表し、R7は、水素原子または、炭素数1〜5のアルキル基、アルケニル基またはアルコキシ基を表し、nは0〜10であり(但し、アルキレン基の1個の−CH2−が、−CH=CH−、−O−、−CO−、−COO−で置き換えられてもよい。)、xおよびyは共重合比(モル%)であって、x:y=10:90〜90:10である。)
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法において、前記ポリシロキサン(II)の配合量が、ポリシロキサン(I)100重量部に対して、0.1〜5.0重量部であることを特徴とするポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法により得られたポジ型感光性シロキサン組成物を硬化させることを特徴とする硬化膜の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法に関し、より詳細には、光学的に透明で、高温に耐性を有し、また高い薬品耐性、環境耐性を有するパターンを形成することができ、かつ現像時における現像残渣や溶け残り層あるいは難溶物の再付着等によるパターン欠陥が低減された、液晶表示素子や有機EL表示素子などのディスプレイのバックプレーンに使用される薄膜トランジスタ(TFT)基板用平坦化膜や半導体素子の層間絶縁膜をはじめ、固体撮像素子、反射防止フィルム、反射防止板、光学フィルター、高輝度発光ダイオード、タッチパネル、太陽電池、光導波路等の光学デバイスなどの各素子に好適に用いられるポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法に関する。また本発明は、該ポジ型感光性シロキサン組成物から形成された硬化膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ・発光ダイオード・太陽電池などの光学素子において、さらなる光利用効率の向上や省エネルギーのためのさまざまな提案がなされている。例えば、液晶ディスプレイにおいて、透明な平坦化膜をTFT素子上に被覆形成し、この平坦化膜上に画素電極を形成させることにより、表示装置の開口率を上げる方法が知られている(特許文献1参照)。有機ELデバイスの構成も、基板上に形成した透明画素電極上に発光層を蒸着形成し、発光を基板側から取り出す方式(ボトムエミッション)から、TFT素子上に被覆形成された平坦化膜上の透明画素電極およびその上の発光層からの発光をTFT素子とは反対側に取り出す方式(トップエミッション)にすることにより、液晶ディスプレイと同様に開口率を向上させる方法が提案されている(特許文献2参照)。
【0003】
また、ディスプレイの高解像化・大型化および高画質化・3D表示等に伴い、配線上での信号遅延が問題になっている。画像情報の書き換え速度(フレーム周波数)の高速化により、TFTへの入力シグナルは短くなっているが、高解像化の要求から配線抵抗を下げるための配線幅の拡張には制限がある。このため、配線厚を大きくすることにより信号遅延の問題の解決が提案されている(非特許文献1参照)。
【0004】
このようなTFT基板用平坦化膜の材料として、アクリル系樹脂とキノンジアジド化合物を組み合わせた材料が知られている(特許文献3、4参照)。しかしながら、これらの材料は、200℃以上の高温において材料特性が急激に劣化するものではないが、230℃以上では徐々に分解が始まり、膜厚の低下や基板の高温処理により透明膜が着色して、透過率が低下するという問題がある。特に、当該透明膜材料の上に、PE−CVD等の装置を用いて高温で膜形成するようなプロセスには使用することができない。また、有機EL素子においても分解物は有機EL素子の発光効率や寿命に対して悪影響を与えるため、アクリル系材料は、高温プロセスや不純物が影響するようなデバイスに使用するには最適な材料とはいえない。また、耐熱性を付与したようなアクリル材料は、一般に誘電率が高くなる。このため、絶縁膜による寄生容量が大きくなることにより、消費電力が大きくなったり、液晶素子駆動信号の遅延などで画質の品質に問題を与える。誘電率の大きい絶縁材料でも、たとえば膜厚を大きくすることにより容量を小さくすることはできるが、大型ガラス基板上にスリットコート法などにより、例えば5ミクロン以上の膜厚で均一な塗布膜を形成することは一般的には困難であり、材料使用量も多くなることから、膜厚を大きくすることは好ましくない。
【0005】
高耐熱性、高透明性の材料としてポリシロキサン、特にシルセスキオキサンが知られている。シルセスキオキサンは、3官能性のシロキサン構造単位RSi(O1.5)からなるポリマーで、化学構造的には無機シリカ(SiO2)と有機シリコーン(R2SiO)の中間的存在であるが、有機溶剤に可溶ながら硬化物は無機シリカに特徴的な高い耐熱性を示す特異的な化合物である。また、シロキサン骨格のポリマーは一般的に有機ポリマーに比較すると誘電率が小さく、低誘電な透明絶縁膜の材料として期待されている。感光性組成物の成分としては、ポリシロキサンがテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液のような現像液に可溶性である必要がある。このため特定のかご型シルセスキオキサンにアクリル基を付与させたシルセスキオキサン化合物と不飽和カルボン酸、エポキシ基含有不飽和化合物、オレフィン系不飽和化合物を共重合させたアクリル系共重合体とキノンジアジド化合物からなる感光性組成物(特許文献5参照)などが提案されている。しかしながら、これら複雑な系による感光性組成物は、有機化合物の含有量が高いため、ポリシロキサン以外の有機化合物の熱劣化により硬化物の耐熱性は十分でなく、変色や分解ガスの発生による問題は無視できない。
【0006】
ポリシロキサンとキノンジアジドからなる感光性組成物として、例えば現像液に不溶なポリシロキサンと可溶なポリシロキサンの系とキノンジアジド化合物を組み合わせ、これにより、加熱硬化時に現像後に得られたホールやラインなどのパターンがフローして、結果として解像度が低下しまう「パターン」だれを防止した感光性組成物が提案されている(特許文献6参照)。しかしながら、現像液に不溶なポリシロキサンを用いると、現像後の溶け残りや溶け出した難溶物が再付着することにより現像パターン欠陥が発生する原因となってしまう。
【0007】
シラノール基以外に現像液に対する可溶性を保持させる方法として、フェニルポリシロキサンのフェニル基の一部をアシル化する方法(特許文献7参照)やキノンジアジド構造を有するかご状シルセスキオキサン化合物を用いる方法(特許文献8参照)が提案されている。これらシロキサンでは、現像中シラノール基が反応しても、安定な現像液可溶性基を有することから、不溶層の生成や溶け残り等の問題は低減される。しかしながら、このようなポリシロキサン硬化物は、フォトレジストの剥離液のような薬液に対して耐性がなく、使用できる用途が限定されてしまう。
【0008】
ところで、ジアゾナフトキノン誘導体を溶解抑止剤として、現像液を2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液とする感光性シロキサン組成物を構成する場合、ポリシロキサンの2.38重量%TMAH水溶液への溶解速度が100Å/秒以上であれば、露光−現像による実用的なポジ型パターン形成は可能である。シラノール基を有するTMAH水溶液に可溶なポリシロキサンは、比較的分子量の低いポリマーであり、加熱硬化の過程で「パターン」だれが通常発生する。
【0009】
ポリシロキサンは、熱によりシラノール基の脱水縮合反応により高分子量化する。この反応は温度が高い程早く進行するが、高温ではポリシロキサンが一時的に低粘度化するため、「パターン」だれをコントロールすることは困難である。
【0010】
この「パターン」だれについては、ポリシロキサンの分子量を上げることにより抑制することができる。しかしながら、特許文献6に記載されているように、ポリシロキサンの分子量を大きくすると、2.38重量%TMAH水溶液の現像液に難溶解性化してしまう。このため、現像後の溶け残りによる解像度の低下、あるいは低感度、さらには現像後のパターン欠陥などの問題を引き起こしてしまう。その他「パターン」だれを解決する方法として、アルカリ溶解速度の異なる少なくとも2種類のポリシロキサンのうち、溶解速度の低いポリシロキサンを塩基性触媒の存在下で合成することにより、低分子量体でありながら「パターン」だれが抑制される方法が提案されている(特許文献9参照)。この方法では、ポリシロキサンの混合物の2.38重量%TMAH水溶液への溶解速度は、溶解速度の異なるポリシロキサンの混合の割合を変えることにより調整され、高感度なポジ型感光性組成物を形成することが可能である。
【0011】
一般に、感光性組成物の光照射およびその後の現像工程においては、現像後のパターン寸法の制御のため、30秒から120秒の比較的長い現像時間が適用されている。したがって、薄膜になるほど溶解速度を遅くする必要がある。ところが、特許文献9に記載された方法においては、膜厚が小さい場合あるいは現像時間が長いプロセスに適用させるためには、溶解速度を遅くするため、難溶性のポリシロキサンを増やす必要がある。このため、スカムと呼ばれる現像残渣が残る問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第2933879号明細書
【特許文献2】特開2006−236839号公報
【特許文献3】特許第2961722号公報
【特許文献4】特許第3783512号公報
【特許文献5】特開2007−119777号公報
【特許文献6】特開2007−193318号公報
【特許文献7】特開2010−43030号公報
【特許文献8】特開2007−293160号公報
【特許文献9】WO2012/026400号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】IMID/IDMC/ASIA DISPLAY 2008 Digest(p9−p12)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述のような事情に基づいてなされたものであり、高感度、高解像度、高耐熱性、高耐薬品性、高透明性であり、現像残渣や溶け残り等、難溶物の再付着によるパターン欠陥が低減された硬化膜を形成することのできる感光性シロキサン組成物を提供することを目的とするものである。
【0015】
また、本発明の他の目的は、前記感光性シロキサン組成物から形成された、固体撮像素子、反射防止フィルム、反射防止板、光学フィルター、高輝度発光ダイオード、タッチパネル、太陽電池、光導波路等の光学デバイスや半導体素子などの平坦化膜、層間絶縁膜などの硬化膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ポリシロキサン、ジアゾフナフトキノン誘導体および溶剤を含有するポジ型感光性シロキサン組成物において、ポリシロキサンとして、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に対する溶解速度の異なる少なくとも2種類以上のポリシロキサンとシラノール以外のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液可溶性基を有するポリシロキサンを用いることにより、現像残渣や溶け残り等、難溶物の再付着によるパターン欠陥が低減され、高感度で高解像度、高残膜率を有する硬化膜を形成することができ、形成された膜は光学的に透明で、高温に耐性を有し、また高い薬品耐性、環境耐性を有することを見出し、この知見に基づいて本発明を成したものである。
【0017】
すなわち、本発明は、以下に示す、ポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法に関する。
【0018】
〔1〕(I)テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に対する溶解速度の異なる少なくとも2種類以上のポリシロキサン、(II)シラノール以外のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液可溶性基を有するポリシロキサン、(III)ジアゾナフトキノン誘導体、および(IV)溶剤を含有するポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法であって、前記ポリシロキサン(I)が、
(A)一般式(1):
【化1】

(式中、R1は、任意のメチレンが酸素で置き換えられてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状あるいは環状アルキル基、または炭素数6〜20で任意の水素がフッ素で置き換えられてもよいアリール基を表し、R2は、炭素数1〜5のアルキル基を表し、nは0または1を表す。)
で表されるシラン化合物を塩基性触媒の存在下で加水分解・縮合させて得られるプリベーク後の膜が5重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(以下「5%TMAH」と略記することがある。)水溶液に可溶であり、その溶解速度が1,000Å/秒以下であるポリシロキサン(Ia)と、
(B)前記一般式(1)で表されるシラン化合物を酸性あるいは塩基性触媒の存在下で加水分解・縮合させて得られるプリベーク後の膜の2.38重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(以下「2.38%TMAH」と略記することがある。)水溶液に対する溶解速度が200Å/秒以上であるポリシロキサン(Ib)
との混合物であって、該混合物の2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度が50〜1,000Å/秒であるポリシロキサンであり、
また前記シラノール以外のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液可溶性基を有するポリシロキサン(II)が、プリベーク後の膜の2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度が50〜1,000Å/秒であるポリシロキサンであることを特徴とするポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法
【0019】
〔2〕上記〔1〕記載のポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法において、ポリシロキサン(Ib)が、一般式(1)で表されるシラン化合物(式中、R1は、任意のメチレンが酸素で置き換えられてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状あるいは環状アルキル基、または炭素数6〜20で任意の水素がフッ素で置き換えられてもよいアリール基を表し、nは0または1、R2は、炭素数1〜5のアルキル基を表す)を酸性あるいは塩基性触媒の存在下で加水分解・縮合させて得られる、少なくともプリベーク後の膜の2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度が3,000Å/秒以上であるポリシロキサン(Ib’)および/または200〜3,000Å/秒であるポリシロキサン(Ib”)を含むことを特徴とするポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法
【0020】
〔3〕上記〔1〕記載のポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法において、ポリシロキサン(I)が少なくともポリシロキサン(Ia)および請求項2に記載のポリシロキサン(Ib”)を含み、ポジ型感光性シロキサン組成物は1ミクロン以下の膜厚で用いられることを特徴とするポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法
【0021】
〔4〕上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法において、前記テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液可溶性基を有するポリシロキサン(II)が、少なくとも1種の下記一般式(2)で表されるシラン化合物を酸性あるいは塩基性触媒の存在下で加水分解・縮合させて得られる、プリベーク後の膜の2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度が50〜1,000Å/秒であるポリシロキサンであることを特徴とするポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法
【0022】
一般式(2):
【化2】
(式中、R3は、少なくとも1種類の2.38%TMAH水溶液に可溶な基(R3a)を有する基を表し、R3aは、フェノール性水酸基、カルボン酸またはその塩、カルボン酸無水物、スルホン酸またはその塩、チオール、シアノ、または−CO−R7(式中、R7は、水素原子または、炭素数1〜5のアルキル基、アルケニル基またはアルコキシ基を表す。)を表し、R4は、炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
【0023】
〔5〕上記〔4〕記載のポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法において、前記ポリシロキサン(II)が、少なくとも1種の上記一般式(2)で表されるシラン化合物と少なくとも1種の下記一般式(3)で表されるシラン化合物とから得られたものであることを特徴とするポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法
【0024】
一般式(3):
【化3】
(式中、R5は、メチル基またはフェニル基を表し、R6は、炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
【0025】
〔6〕上記〔4〕または〔5〕記載のポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法において、前記R3が、下記一般式(4)で表される基であることを特徴とするポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法
【0026】
一般式(4):
【化4】
(式中、Xは単結合、または、炭素数1〜10のアルキレン基を表し(但し、1個の−CH2−が、−CH=CH−、−O−、−CO−、−COO−で置き換えられてもよい。)、Mは単結合または炭素数5〜10の環状アルキル基、フェニル基、またはナフタレン基を表し、R3aは、水酸基、カルボン酸またはその塩、カルボン酸無水物、スルホン酸またはその塩、チオール、シアノおよび−CO−R7(式中、R7は、水素原子または、炭素数1〜5のアルキル基、アルケニル基またはアルコキシ基を表す。)であり、Mが環状アルキル基の場合カルボン酸基またはその塩、カルボン酸無水物、スルホン酸またはその塩、チオール、およびシアノから選ばれた基であり、Mがフェニル基またはナフタレン基の場合、水酸基、カルボン酸またはその塩、カルボン酸無水物、スルホン酸またはその塩、チオール、およびシアノから選ばれた基を表す。また、R3aはMに複数個置換されていてもよいし、その場合互いのR3aは同一でも異なってもよい。)
【0027】
〔7〕上記〔5〕記載のポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法において、ポリシロキサン(II)が下記構造を有するポリシロキサンであることを特徴とするポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法
【0028】
【化5】
(式中、R5はメチル基又はフェニル基を表し、nは0〜10であり(但し、アルキレン基の1個の−CH2−が、−CH=CH−、−O−、−CO−、−COO−で置き換えられてもよい。)、xおよびyは共重合比(モル%)であって、x:y=10:90〜90:10である。)
【0029】
〔8〕上記〔5〕記載のポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法において、ポリシロキサン(II)が下記構造を有するポリシロキサンであることを特徴とするポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法
【0030】
【化6】
(式中、R5はメチル基またはフェニル基を表し、R7は、水素原子または、炭素数1〜5のアルキル基、アルケニル基またはアルコキシ基を表し、nは0〜10であり(但し、アルキレン基の1個の−CH−が、−CH=CH−、−O−、−CO−、−COO−で置き換えられてもよい。)、xおよびyは共重合比(モル%)であって、x:y=10:90〜90:10である。)
【0031】
〔9〕上記〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載のポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法において、前記ポリシロキサン(II)の配合量が、ポリシロキサン(I)100重量部に対して、0.1〜5.0重量部であることを特徴とするポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法
【0032】
〔10〕上記〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載のポジ型感光性シロキサン組成物の製造方法により得られたポジ型感光性シロキサン組成物を硬化させることを特徴とする硬化膜の製造方法
【発明の効果】
【0033】
本発明によって得られるポジ型感光性シロキサン組成物(以下、「本発明のポジ型感光性シロキサン組成物」という。)は、高感度、高解像度を有し、また得られた硬化膜は耐熱性、透明性、残膜率に優れ、現像の際の現像残渣や溶け残り等、難溶物の再付着によるパターン欠陥が低減されている。しかも、平坦性、電気的絶縁特性も優れていることから、液晶表示素子や有機EL表示素子などのディスプレイのバックプレーンに使用される薄膜トランジスタ(TFT)基板用平坦化膜や半導体素子の層間絶縁膜をはじめ、固体撮像素子、反射防止フィルム、反射防止板、光学フィルター、高輝度発光ダイオード、タッチパネル、太陽電池などにおける絶縁膜や透明保護膜などの各種膜形成材料、さらには光導波路などの光学デバイスとして好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、図面代用写真であり、実施例5で得られた膜厚0.5ミクロンのポジ型感光性シロキサン組成物の2.38%TMAH水溶液現像後の5μmのラインアンドスペース(L/S)パターンのSEM写真である。
図2図2は、図面代用写真であり、比較例2で得られた膜厚0.5ミクロンのポジ型感光性シロキサン組成物の2.38%TMAH水溶液現像後の5μmのラインアンドスペース(L/S)パターンのSEM写真である。
図3図3は、図面代用写真であり、実施例7で得られた膜厚2ミクロンのポジ型感光性シロキサン組成物の2.38%TMAH水溶液現像後の5μmのラインアンドスペース(L/S)パターンのSEM写真である。
図4図4は、図面代用写真であり、比較例4で得られた膜厚2ミクロンのポジ型感光性シロキサン組成物の2.38%TMAH水溶液現像後のラインアンドスペース(L/S)パターンのSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明のポジ型感光性シロキサン組成物を更に詳しく説明する。
上記したように、本発明のポジ型感光性シロキサン組成物は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に対する溶解速度の異なる少なくとも2種類以上のポリシロキサンからなるポリシロキサン(I)と、シラノール以外のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液可溶性基を有するポリシロキサン(II)と、ジアゾフナフトキノン誘導体(III)と、溶剤(IV)とを含有することを特徴とするものである。以下、本発明のポジ型感光性シロキサン組成物で使用される、これらポリシロキサン、ジアゾフナフトキノン誘導体、および溶剤について、順次詳細に説明する。
【0036】
(I)テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に対する溶解速度の異なる少なくとも2種類以上のポリシロキサンからなるポリシロキサン
本発明は、ポリシロキサン(I)として、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に対する溶解速度の異なる少なくとも2種類以上のポリシロキサン、すなわち、2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度の低いポリシロキサンと2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度の比較的高いポリシロキサンを組み合わせることを特徴とするものである。本発明で用いられる2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度の低いポリシロキサンとしては、2.38%TMAH水溶液に難溶解性である、一般式(1)のR1nSi(OR24-nで示されるシラン化合物を塩基性触媒の存在下で加水分解・縮合により得たポリシロキサンであって、プリベーク後の膜が5%TMAH水溶液に可溶であり、その溶解速度が1,000Å/秒以下であるポリシロキサン(Ia)が用いられる。ポリシロキサン(Ia)は1種が用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0037】
一方、前記2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度の比較的高いポリシロキサンとしては、前記一般式(1)で表されるシラン化合物を用い、これを酸性あるいは塩基性触媒の存在下で加水分解・縮合させて得られる、プリベーク後の膜の2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度が200Å/秒以上のポリシロキサン(Ib)が用いられる。このポリシロキサン(Ib)は1種が用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0038】
さらに、本発明のポリシロキサン(I)において、現像後の溶け残りを軽減するために、(Ib)を一般式(1)で表されるシラン化合物(式中、R1は、任意のメチレンが酸素で置き換えられてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状あるいは環状アルキル基、または炭素数6〜20で任意の水素がフッ素で置き換えられてもよいアリール基を表し、nは0または1、R2は、炭素数1〜5のアルキル基を表す)を酸性あるいは塩基性触媒の存在下で加水分解・縮合させて得られる、プリベーク後の膜の2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度が3,000Å/秒以上であるポリシロキサン(Ib’)および/または200〜3,000Å/秒であるポリシロキサン(Ib”)とすることができる。特に、膜厚1ミクロンの場合は、(Ia)と(Ib”)から成ることが好ましい。
【0039】
上記TMAH水溶液に対する溶解速度の異なる少なくとも2種類以上のポリシロキサン混合物の2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度が、50〜1,000Å/秒であれば、2.38%TMAH水溶液を現像液とする感光性ポリシロキサン組成物を構成することができる。このため、前記少なくとも2種類以上のポリシロキサン、具体的には、ポリシロキサン(Ia)、(Ib)、あるいは(Ia)、(Ib’)、あるいは(Ia)、(Ib’)、(Ib”)、あるいは(Ia)、(Ib”)の量は、適応される膜厚と用いられるポリシロキサン(Ia)、(Ib)、(Ib”)の溶解特性を勘案し、これらの混合物の2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度が前記50〜1,000Å/秒を満足するような量とされる。
【0040】
一方、ポリシロキサン(Ia)、(Ib)あるいは(Ia)、(Ib’) 、あるいは(Ia)、(Ib’)、(Ib”)、あるいは(Ia)、(Ib”)の混合物において、n=0のシリカ構造体の含有量が増えると、架橋密度が向上し、「パターン」の熱だれ現象は緩和されていく。ポリシロキサン(Ia)は「パターン」の熱だれ防止効果を有するが、難溶成分を含むため、現像残渣の点からは好ましいものでない。前記したように、シリカ構造体の含有量を増やすことにより「パターン」の熱だれ現象が緩和されていくことから、難溶成分を含むポリシロキサン(Ia)の配合量を低下させることができるが、n=0のシリカ構造体の含有量が増えすぎると、ポリシロキサンの反応活性が高くなり現像中に難溶成分を生成させてしまうことがある。この点から、ポリシロキサン混合物中における一般式(1)のn=0のシリカ構造体の含有量は、5モル%から30モル%であることが好ましい。例えば、ポリシロキサン(Ia)としては、n=0のシリカ構造体の含有量は、好ましくは20モル以下であり、ポリシロキサン(Ib)としては、好ましくは30モル以下であり、ポリシロキサン(Ib’)、(Ib”)としては、好ましくは30モル以下である。
【0041】
本発明のポジ型感光性シロキサン組成物を用いてパターンを形成する際には、基材上に前記ポジ型感光性シロキサン組成物を塗布して塗膜を形成し、露光後現像が行われ、現像後は、硬化被膜を形成するため、好ましくは200℃以上の温度で加熱されるが、このとき現像後のパターンがフローすることがある。この熱フローを抑制し、パターン形状を維持するためには、ポリシロキサン(Ia)と(Ib)の重量比は30/70から70/30であることが好ましい。ポリシロキサン(Ia)が70重量部を超えると、感度が著しく低下し実用的ではなくなる。また、現像残渣をなくすには、ポリシロキサン(Ia)と(Ib’)の合計重量とポリシロキサン(Ib”)の重量比が95/5から50/50であることが好ましい。ポリシロキサン(Ib”)の割合が5重量部以下では、現像残渣の防止が十分でない。また、50重量部以上では、ポリシロキサン混合物に占めるポリシロキサン(Ia)の割合が十分ではなく、熱フローの問題が顕著になる。
【0042】
また、ポリシロキサン(Ib)として、塩基性触媒を用いて合成されたポリシロキサンを用いると、「パターン」だれ防止効果の優れた感光性シロキサン組成物が形成されることから好ましい。
【0043】
上記ポリシロキサン(Ia)および(Ib)の合成方法を含め、更に詳しく説明する。
上記したように、ポリシロキサン(Ia)は、前記一般式(1)で表されるシラン化合物を、塩基性触媒の存在下で加水分解・縮合させて得られる。一方、ポリシロキサン(Ib)は、前記一般式(1)で表されるシラン化合物を、酸性あるいは塩基性触媒の存在下で加水分解・縮合させて得られる。TMAH水溶液に対する溶解速度が異なるポリシロキサン(Ib’)、(Ib”)は、一般式(1)で表されるシラン化合物を、酸性あるいは塩基性触媒の存在下で加水分解・縮合させて得られが、溶解速度の違いは、酸触媒の材料については、反応時間の長短によって、また、アルカリ触媒の材料については、反応時に仕込む水の量を増減することにより調整できることから、反応時間や水の量を適宜調整する以外は、ポリシロキサン(Ia)、(Ib)は、以下に示す手順で同様に製造することができる。したがって、以下の説明において、ポリシロキサン(Ia)、(Ib)の区別をする必要がない場合は、単に「ポリシロキサン」ということもある。
【0044】
ポリシロキサンを製造するために必要とされる、一般式(1)のR1nSi(OR24-nのR1は、任意のメチレンが酸素で置き換えられてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状あるいは環状アルキル基または炭素数6〜20で任意の水素がフッ素で置き換えられてもよいアリール基を表し、R2は炭素数1〜5のアルキル基を表す。nは0あるいは1である。これら一般式(1)のシラン化合物は、2種以上が併用されてもよい。
【0045】
一般式(1)中、R1の、任意のメチレンが酸素で置き換えられてもよい炭素数1〜20の直鎖状、分岐状あるいは環状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−デシル基、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。また、炭素数6〜20で任意の水素がフッ素で置き換えられてもよいアリール基としては、フェニル基、トリル基などが挙げられる。それら基の中でも、メチル基は、原料が入手し易く、硬化後の膜硬度が高く、高い薬品耐性を有し、また、フェニル基は、当該ポリシロキサンの溶剤への溶解度を高め、硬化膜がひび割れしにくくなることから、好ましい化合物であり、特にメチル基が好ましい。
【0046】
一方、R2の炭素数1〜5のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基などが挙げられる。R2は、それぞれ同じでも異なっていてもよいし、一般式(1)のシラン化合物が複数の化合物からなる場合、これら複数の化合物中のRは、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
【0047】
上記一般式(1)で示されるシラン化合物のうちn=1で表される化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリn−ブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリn−ブトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリフルオロメチルトリメトキシシラン、トリフルオロメチルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、ナフチルトリエトキシシラン、ナフチルトリイソプロポキシシラン、ナフチルトリn−ブトキシシラン等が挙げられる。これらの中で、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランは、入手しやすく好ましい化合物である。
【0048】
また、一般式(1)で示されるシラン化合物のうちn=0で表される化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどが挙げられ、その中でも、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどは反応性が高く、好ましい。
【0049】
1としてメチル基を用いた場合、ポリシロキサン(I)中のR1のメチル基の含有量が少ないと、レジスト剥離液への耐性が劣り、逆に、含有量が多すぎるとシロキサン活性が高くなって、不溶物生成の原因となる。そのため、ポリシロキサン(I)における一般式(1)のR1がメチル基で示されるシラン化合物の割合は、20モル%〜80モル%であることが好ましい。また、各ポリシロキサン(Ia)、(Ib)においても、これらの少なくともいずれかは、ポリシロキサンを製造するために用いられる一般式(1)のR1がメチル基で示されるシラン化合物の割合が、20モル%〜80モル%であることが好ましいし、ポリシロキサン(Ia)、(Ib)の2種類のポリシロキサン混合物についても、少なくとも混合物のR1がメチル基で示されるシラン化合物の割合が、20モル%〜80モル%であることが好ましい。さらに、各ポリシロキサン(Ia)、(Ib)、さらには(Ib’)、(Ib”)のいずれも、R1がメチル基で示されるシラン化合物の割合が、20モル%〜80モル%であることがより好ましい。
【0050】
また、R1は、一般式(1)のシラン化合物が複数の化合物からなる場合、これら複数の化合物中のR1は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。R1としてメチル基を含むシラン化合物が用いられる場合、他の一般式(1)のシラン化合物としてR1がフェニル基であるシラン化合物とともに用いることが好ましい。
【0051】
ポリシロキサン(Ia)、(Ib)、さらには(Ib’)、(Ib”)の各重量平均分子量(Mw)は5,000以下が好ましく、1,000〜3,000程度がより好ましい。重量平均分子量(Mw)が1,000より小さいと、「パターン」だれ防止効果が小さく、一方5,000以上では、現像時の溶け残りが起こることがある。
【0052】
ポリシロキサン(Ia)、(Ib)、具体的には(Ib’)、(Ib”)は、一般的には、有機溶媒、触媒および水の混合溶液に、一般式(1)で示されるシラン化合物の混合液を滴下し、加水分解および縮合反応をさせ、必要に応じて中和や洗浄による精製、また濃縮により所望の有機溶媒に置換することで合成することができる。
【0053】
反応に使用する有機溶媒は、単独もしくは複数を組み合わせて使用することができる。溶媒について具体例を示すと、ヘキサン、トルエン、キシレン、ベンゼンなどの炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒を挙げることができ、その使用量はシラン化合物の混合液の0.1〜10重量倍であり、0.5〜2重量倍が好ましい。
【0054】
シラン化合物の混合液の滴下および反応温度は0〜200℃であり、10〜60℃が好ましく、滴下温度と反応温度が同じでも異なってもよい。反応時間は、上記一般式(1)で表されるシラン化合物の構造の置換基R2によっても異なるが、通常は数十分から数十時間であり、加水分解および縮合反応における各種条件は、反応スケール、反応容器の大きさ、形状などを考慮して、例えば、触媒量、反応温度、反応時間などを設定することによって、目的とする用途に適した物性を得ることができる。
【0055】
塩基性触媒としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノ基を有するアルコキシシラン等の有機塩基、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基、陰イオン交換樹脂やテトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩等が挙げられる。触媒量はシラン化合物の混合物に対して0.0001〜10モル倍が好ましい。
【0056】
塩基性触媒を用いる場合には、加水分解度は水の添加量により調整することができる。水の添加量は、用いられるシラン化合物の種類および量等により異なるものの、一般には、ポリシロキサン(Ia)を合成する場合には、一般式(1)で表されるシラン化合物の加水分解性アルコキシ基に対し、水を0.01〜10モル倍、好ましくは0.5〜0.9モル倍の割合で反応させることが望ましく、ポリシロキサン(Ib)を合成する場合には、一般式(1)で表されるシラン化合物の加水分解性アルコキシ基に対し、水を0.01〜10モル倍、好ましくは0.9〜2.0モル倍の割合で反応させることが望ましい。
【0057】
反応終了後は、酸性化合物を中和剤として用いて反応溶液を中性もしくは酸性よりに中和してもよい。酸性化合物の例としては、リン酸、硝酸、硫酸、塩酸、フッ酸等の無機酸や、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、乳酸、アクリル酸、シュウ酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸の多価カルボン酸およびその無水物、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等のスルホン酸等の有機酸また陽イオン交換樹脂等が挙げられる。
【0058】
中和剤の量は、ポリシロキサンを含む反応液のpHに応じて、適宜、選択されるが、塩基性触媒に対して、好ましくは0.5〜1.5モル倍、より好ましくは1〜1.1モル倍である。
【0059】
一方、酸性触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、多価カルボン酸あるいはその無水物、イオン交換樹脂が挙げられる。触媒の添加量は、酸の強さにもよるが、シラン化合物の混合物に対して0.0001〜10モル倍が好ましい。
【0060】
酸性触媒を用いる場合、用いられるシラン化合物の種類および量等により異なるものの、一般には、加水分解度は攪拌時間により調整することができる。一般に、ポリシロキサン(Ib)を合成する場合には、攪拌時間は1〜12時間が好ましく、溶解速度の大きいポリシロキサン(Ib”)を合成する場合には、攪拌時間は5〜12時間が好ましい。
【0061】
反応終了後、塩基性触媒を使用した際と同様に、反応溶液を中和してもよい。酸性触媒を使用した場合には、塩基性化合物が中和剤として使用されるが、中和に用いられる塩基性化合物の例としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、等の有機塩基、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基、陰イオン交換樹脂やテトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩等が挙げられる。中和剤の量は、酸性触媒に対して、好ましくは0.5〜1.5モル倍、より好ましくは1〜1.1モル倍である。
【0062】
中和後は、中和液を塗膜または貯蔵安定性の必要性に応じて、洗浄し精製してもよい。条件としては中和液に疎水性有機溶剤と必要に応じて水を添加し、混合および接触させて、少なくともポリシロキサンを疎水性有機溶剤に溶解する。疎水性有機溶剤としては、ポリシロキサンを溶解し、水と混和しない化合物を使用する。水と混和しないとは、水と疎水性有機溶剤とを十分混合した後、静置すると、水層および有機層に分離することを意味する。
【0063】
好ましい疎水性有機溶剤としては、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、ブタノールなどのアルコール系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒等が挙げられる。上記疎水性有機溶剤は、反応で用いられた反応溶媒と同一であってよいし、異なってもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。洗浄によりこれまでに使用した塩基性触媒、酸性触媒、中和剤ならびにそれらの塩、さらに反応の副生成物であるアルコールや水の大半は水層に含まれ、有機層から実質的に除かれるが洗浄回数は必要とされる塗膜特性あるいは貯蔵安定性などの特性に応じて適宜設定される。
【0064】
洗浄の温度は、特に制限されないが、好ましくは0℃〜70℃、より好ましくは10℃〜60℃である。また、水層と有機層とを分離する温度もまた、特に限定されないが、好ましくは0℃〜70℃、分液時間を短縮する観点から、より好ましくは10℃〜60℃である。
【0065】
洗浄後は、ポリシロキサンを含む、洗浄に用いた疎水性溶媒の溶液のまま使用してもよいが、目的に応じて濃縮により溶媒や残存する反応の副生成物であるアルコールや水を除去したり、濃度の変更や他の溶媒に置換してもよい。濃縮は常圧(大気圧)または減圧下で実施することができ、濃縮度は留出量を制御することで任意に変更できる。濃縮時の温度は30〜150℃であり、好ましくは40〜100℃である。また目的の溶媒組成になるよう適時所望の溶媒を添加しさらに濃縮することで溶媒置換することもできる。
【0066】
以上により本発明のシロキサン樹脂組成物に用いられるポリシロキサン(Ia)、(Ib)、より具体的には(Ib’)、(Ib”)を製造することができ、それらを混合することによって、ポリシロキサン(I)が得られる。
【0067】
(II)シラノール以外のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液可溶性基を有するポリシロキサン
本発明では、シラノール基によって2.38%TMAH水溶液に可溶なポリシロキサンと不溶なポリシロキサンを所望の2.38%TMAH水溶液への溶解速度に配合し(ポリシロキサン(I))、ジアゾナフトキノン誘導体の光反応による溶解速度の差を利用してポジ型のパターン形成を行う。しかしながら、シラノール基はTMAH存在下で脱水縮合反応を促し、アルカリ不溶性物質を生成する。これが、現像残渣となっていると推察される。従って、ポリシロキサン(I)が有するシラノールとの反応性の低いテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液可溶性基を有するポリシロキサン(II)によって、現像残渣を軽減することができる。このような化合物としては、ポリシロキサン(I)と相溶性の高いポリシロキサン、特に下記一般式(2)で示されるシラン化合物を酸性あるいは塩基性触媒の存在下で加水分解・縮合させて得られるポリシルセスキオキサン化合物が好ましい。
【0068】
【化7】
(式中、R3は、少なくとも1種類の2.38%TMAH水溶液に可溶なシラノール基以外の基(R3a)を有する基を表し、R3aは、フェノール性水酸基、カルボン酸またはその塩、カルボン酸無水物、スルホン酸またはその塩、チオール、シアノまたは−CO−R7(式中、R7は、水素原子または、炭素数1〜5のアルキル基、アルケニル基またはアルコキシ基を表す。)を表し、R4は、炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
【0069】
上記R3としては、例えば下記一般式(4)で表される基が好ましいものとして挙げられる。
【0070】
一般式(4):
【化8】
(式中、Xは単結合、または、炭素数1〜10のアルキレン基を表し(但し、1個の−CH2−が、−CH=CH−、−O−、−CO−、−COO−で置き換えられてもよい。)、Mは単結合または置換基を有していても良い炭素数5〜10の環状アルキル基、フェニル基、またはナフタレン基を表し、R3aは、フェノール性水酸基、カルボン酸またはその塩、カルボン酸無水物、スルホン酸またはその塩、チオール、シアノまたは−CO−R7(式中、R7は、水素原子または、炭素数1〜5のアルキル基、アルケニル基またはアルコキシ基を表す。)を表し、Mが環状アルキル基の場合カルボン酸またはその塩、カルボン酸無水物、スルホン酸またはその塩、チオール、およびシアノから選ばれた基であり、Mがフェニル基またはナフタレン基の場合、水酸基、カルボン酸またはその塩、カルボン酸無水物、スルホン酸またはその塩、チオール、およびシアノから選ばれた基を表す。)
【0071】
−M−R3aとしては、Mがフェニル基である、例えば、次のような基が好ましいものとして挙げられる。
【化9】
(なお、上記式中、mは1または2の整数を、Aは水素原子またはアンモニウムイオンを表す。)
【0072】
シラノール以外のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液可溶性基を有するポリシロキサン(II)は、少なくとも1種の上記一般式(2)で表されるシラン化合物を用いて製造され、プリベーク後の膜の2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度が50〜1,000、好ましくは100〜1,000Å/秒であるが、その際少なくとも1種の上記一般式(2)で表されるシラン化合物と、少なくとも1種の下記一般式(3)で表されるテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液可溶性基を有さないシラン化合物とを酸性あるいは塩基性触媒の存在下で加水分解・縮合させて得られたポリシロキサンであることがより好ましい。
【0073】
一般式(3):
【化10】
(式中、R5は、メチル基またはフェニル基を表し、R6は、炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
【0074】
本発明で用いられる、一般式(2)のシラン化合物と一般式(3)で表されるシラン化合物とから製造されたポリシロキサン(II)としては、下記構造を有するポリシルセスキオキサン化合物が好ましいものとして挙げられる。これらは1種が用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0075】
【化11】
(式中、X、M、R3a、R5は上記と同様のものであり、xおよびyは共重合比(モル%)である。)
【0076】
上記式(7)において、特にMがフェニル基である化合物が好ましい。このMがフェニル基である化合物の代表的なものを挙げると、次の式で示されるものが挙げられる。
【0077】
【化12】
【0078】
【化13】
(式中、mは1または2である。)、
【0079】
【化14】
【0080】
【化15】
【0081】
【化16】
【0082】
【化17】
【0083】
また、その他好ましい構造として、R3aが−C(O)−R7(式中、R7は、水素原子、または炭素数1〜5のアルキル基、アルケニル基またはアルコキシ基を表す。)である化合物が挙げられる。
【0084】
特に、R5がメチル基あるいはフェニル基である下記の構造を有するものが好ましい。
【化18】
(式中、R7は、水素原子または炭素数1〜5のアルキル基あるいはアルコキシ基を表し、nは0〜10のアルキレン基を表し、該アルキル基の1個の−CH2−は、−CH=CH−、−O−、−CO−、−COO−で置き換えられてもよく、xおよびyは共重合比(モル%)である。)
【0085】
上記において、R7は、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、イソプロピル、イソブチルなどのアルキル基、ビニル基などのアルケニル基あるいはメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、n−ブトキシ、n−ペントキシ、イソプロポキシ、イソブトキシなどのアルコキシ基が好ましい。これらの基はアルキル基などで置換されていてもよい。
【0086】
具体的には、例えば、下記のものが挙げられる。
【0087】
【化19】
【0088】
【化20】
【0089】
また、上記において、x、yは、ポリシロキサン(II)の2.38%TMAH水溶液に対する溶解速度が50〜1,000Å/秒になるように割合を変えることができるが、x:y=10:90〜90:10が好ましく、特にxが50〜90モル%であり、yが10〜50モル%であることが好ましい。
【0090】
ポリシロキサン(II)は、ポリシロキサン(I)の(Ia)、(Ib)と同様の方法で製造することができる。
【0091】
ポリシロキサン(II)の配合量は、ポリシロキサン(I)100重量部に対して、0.1〜5.0重量部であることが好ましい。
【0092】
なお、現在、現像液としては一般的に2.38%TMAH水溶液が用いられているため、ポリシロキサン(Ib)およびポリシロキサン(II)の溶解速度を上記の範囲に設定したが、仮に、これとは異なるTMAH濃度の水溶液が現像液として用いられる場合においては、ポリシロキサン(Ib)およびポリシロキサン(II)の溶解速度は、使用された現像液に対する溶解速度が、上記2.38%TMAH水溶液を現像液として用いたときの溶解速度と同じような範囲になるようにされれば、本発明と同様の効果を得ることができる。また、現像液としてTMAH以外の水酸化ナトリウムなどの無機アルカリ水溶液が用いられる場合であっても同様である。
【0093】
(アルカリ溶解速度(ADR)の測定、算出法)
本発明においては、ポリシロキサン(Ia)、(Ib)およびポリシロキサン(II)、更にこれらの混合物のTMAH水溶液に対する溶解速度は、次のようにして測定、算出される。
【0094】
すなわち、まず、ポリシロキサンをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に35重量%程度になるように希釈・溶解する。この溶液をシリコンウエハ上に乾燥膜厚が約2〜3μmの厚さになるようにスピンコーティングし、その後100℃のホットプレート上で60秒間加熱することによりさらに溶剤を除去する。分光エリプソメーター(Woollam社)で、塗布膜の膜厚測定を行う。次に、この膜を有するシリコンウエハを、ポリシロキサン(Ia)については5%TMAH水溶液、ポリシロキサン(Ib)および(II)、ポリシロキサン(Ia)、(Ib)の混合物、ポリシロキサン(II)およびこれとポリシロキサン(I)との混合物については、2.38%TMAH水溶液に室温(25℃)で浸漬し、被膜が消失するまでの時間を測定する。溶解速度は、初期膜厚を被膜が消失するまでの時間で除して求める。溶解速度が著しく遅い場合は、一定時間浸漬した後の膜厚測定を行い、浸漬前後の膜厚変化量を浸漬時間で除し、溶解速度を算出する。
【0095】
(III)ジアゾナフトキノン誘導体
本発明のポジ型感光性シロキサン組成物において用いられるジアゾナフトキノン誘導体は、フェノール性水酸基を有する化合物にナフトキノンジアジドスルホン酸がエステル結合した化合物であり、特に構造について制限されないが、好ましくはフェノール性水酸基を1つ以上有する化合物とのエステル化合物であることが好ましい。ナフトキノンジアジドスルホン酸としては、4−ナフトキノンジアジドスルホン酸、あるいは5−ナフトキノンジアジドスルホン酸を用いることができる。4−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物はi線(波長365nm)領域に吸収を持つため、i線露光に適している。また、5−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物は広範囲の波長領域に吸収が存在するため、広範囲の波長での露光に適している。露光する波長によって4−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物、5−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を選択することが好ましい。4−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物と5−ナフトキノンジアジドスルホン酸エステル化合物を混合して用いることもできる。
【0096】
本発明のジアゾナフトキノン誘導体を形成するために用いられるフェノール性水酸基を有する化合物はフェノール性水酸基を有する化合物であればよく特に限定されるわけではない。このようなフェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、以下の化合物が挙げられる。以下の例示化合物に付された名称は、ビスフェノールAを除きいずれも商品名であり、本州化学工業(株)製である。
【0097】
【化21】
【0098】
【化22】
【0099】
【化23】
【0100】
ジアゾナフトキノン誘導体の添加量は、ナフトキノンジアジドスルホン酸のエステル化率、あるいは使用されるポリシロキサンの物性、要求される感度・露光部と未露光部との溶解コントラストにより最適量は異なるが、好ましくはポリシロキサン(Ia)、(Ib)および(II)の合計重量に対して3〜20重量%であり、さらに好ましくは5〜15重量%である。ジアゾナフトキノン誘導体の添加量が3重量%より少ない場合、露光部と未露光部との溶解コントラストが低すぎて、現実的な感光性を有さない。また、さらに良好な溶解コントラストを得るためには8重量%以上が好ましい。一方、ジアゾナフトキノン誘導体の添加量が20重量%より多い場合、ポリシロキサンとキノンジアジド化合物との相溶性が悪くなることによる塗布膜の白化が起こったり、熱硬化時に起こるキノンジアジド化合物の分解による着色が顕著になるため硬化膜の無色透明性が低下することがある。また、ジアゾナフトキノン誘導体の耐熱性は、ポリシロキサンに比較すると劣るため、添加量が多くなると熱分解により硬化物の電気絶縁性の劣化やガス放出の原因となって、後工程の問題になることがある。また、硬化物がモノエタノールアミン等を主剤とするようなフォトレジスト剥離液に対する耐性が低下することがある。
【0101】
(IV)溶剤
溶剤としては、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのジエチレングリコールジアルキルエーテル類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチルなどのエステル類、γ−ブチロラクトンなどの環状エステル類などが挙げられる。かかる溶剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられ、その使用量は塗布方法や塗布後の膜厚の要求によって異なる。
【0102】
例えば、スプレーコートの場合は、感光性シロキサン組成物のうちの溶剤の割合が90重量%以上になったりするが、大型基板で使用されるスリット塗布では通常60重量%以上、好ましくは70重量%以上である。本発明のポジ型感光性シロキサン組成物の特性は、溶剤の量により大きく変わるものではない。
【0103】
また、本発明のポジ型感光性シロキサン組成物には、必要に応じ界面活性剤が含有されてもよい。界面活性剤は、塗布特性、現像性等の向上を目的として添加される。本発明で使用することのできる界面活性剤としては、例えば非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
【0104】
上記非イオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類やポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシ脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレンポリオキシピロピレンブロックポリマー、アセチレンアルコール、アセチレングリコール、アセチレンアルコールのポリエトキシレート、アセチレングリコールのポリエトキシレートなどのアセチレングリコール誘導体、フッ素含有界面活性剤、例えばフロラード(商品名、住友3M(株)製)、メガファック(商品名、DIC(株)製)、スルフロン(商品名、旭硝子(株)製)、または有機シロキサン界面活性剤、例えばKP341(商品名、信越化学工業(株)製)などが挙げられる。前記アセチレングリコールとしては、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールなどが挙げられる。
【0105】
またアニオン系界面活性剤としては、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸のアンモニウム塩または有機アミン塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸のアンモニウム塩または有機アミン塩、アルキルベンゼンスルホン酸のアンモニウム塩または有機アミン塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸のアンモニウム塩または有機アミン塩、アルキル硫酸のアンモニウム塩または有機アミン塩などが挙げられる。
【0106】
さらに両性界面活性剤としては、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリル酸アミドプロピルヒドロキシスルホンベタインなどが挙げられる。
【0107】
これら界面活性剤は、単独でまたは2種以上混合して使用することができ、その配合量は、本発明の感光性シロキサン組成物に対し、通常50〜2,000ppm、好ましくは100〜1,000ppmである。
【0108】
また、本発明の感光性シロキサン組成物には、必要に応じ増感剤を添加することができる。本発明のポジ型感光性シロキサン組成物で好ましく用いられる増感剤としては、クマリン、ケトクマリンおよびそれらの誘導体、チオピリリウム塩、アセトフェノン類等、具体的には、p−ビス(o−メチルスチリル)ベンゼン、7−ジメチルアミノ−4−メチルキノロン−2、7−アミノ−4−メチルクマリン、4,6−ジメチル−7−エチルアミノクマリン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)−ピリジルメチルヨージド、7−ジエチルアミノクマリン、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−メチルキノリジノ−<9,9a,1−gh>クマリン、7−ジエチルアミノ−4−トリフルオロメチルクマリン、7−ジメチルアミノ−4−トリフルオロメチルクマリン、7−アミノ−4−トリフルオロメチルクマリン、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロキノリジノ−<9,9a,1−gh>クマリン、7−エチルアミノ−6−メチル−4−トリフルオロメチルクマリン、7−エチルアミノ−4−トリフルオロメチルクマリン、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−9−カルボエトキシキノリジノ−<9,9a,1−gh>クマリン、3−(2’−N−メチルベンズイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン、N−メチル−4−トリフルオロメチルピペリジノ−<3,2−g>クマリン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)−ベンゾチアゾリルエチルヨージド、3−(2’−ベンズイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン、3−(2’−ベンゾチアゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン、並びに下記化学式で表されるピリリウム塩およびチオピリリウム塩などの増感色素が挙げられる。増感色素の添加により、高圧水銀灯(360〜430nm)などの安価な光源を用いたパターニングが可能となる。
【0109】
【化24】
【0110】
本発明における感光性シロキサン組成物の塗膜の形成は、一般的な塗布方法、即ち、浸漬塗布、ロールコート、バーコート、刷毛塗り、スプレーコート、ドクターコート、フローコート、スピンコート、スリット塗布等、従来感光性シロキサン組成物の塗布方法として知られた任意の方法により行うことができる。また基材としては、シリコン基板、ガラス基板、樹脂フィルム等の適当な基板上で行うことができる。基材がフィルムである場合には、グラビア塗布も可能である。所望により塗膜の乾燥工程を別に設けることもできる。塗膜は、必要に応じて1回または2回以上繰り返して塗布することにより所望の膜厚とすることができる。
【0111】
本発明の感光性シロキサン組成物の塗膜を形成した後、該塗膜の乾燥、且つ溶剤残存量を減少させるため、該塗膜をプリベーク(加熱処理)することが好ましい。プリベーク工程は、一般に70〜150℃、好ましくは90〜120℃の温度で、ホットプレートによる場合には10〜180秒間、好ましくは30〜90秒間、クリーンオーブンによる場合には1〜30分間実施することができる。
【0112】
本発明のポジ型感光性シロキサン組成物のパターン形成方法について説明する。所望のパターンは、当該ポジ型感光性シロキサン組成物の塗膜を形成し、プリベーク処理した後、該塗膜に光をパターン状に照射する。このような光源としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライド、キセノン等のランプやレーザーダイオード、LED等を使用することができる。照射光としてはg線、h線、i線などの紫外線が通常用いられる。半導体のような超微細加工を除き、数μmから数十μmのパターニングでは360〜430nmの光(高圧水銀灯)を使用することが一般的である。中でも、液晶表示装置の場合には430nmの光を使用することが多い。このような場合に、本発明の感光性シロキサン組成物に増感色素を組み合わせると有利であることは上述した通りである。照射光のエネルギーは、光源や初期の膜厚にもよるが、一般に10〜2000mJ/cm2、好ましくは20〜1000mJ/cm2とする。照射光エネルギーが10mJ/cm2よりも低いと組成物が十分に分解せず、反対に2000mJ/cm2よりも高いと、露光過多となり、ハレーションの発生を招く場合がある。
【0113】
パターン状に照射するためには一般的なフォトマスクを使用すればよく、そのようなフォトマスクについては当業者であれば周知である。照射の際の環境は、一般に周囲雰囲気(大気中)や窒素雰囲気とすればよい。また、全面に膜を形成する場合には、全面露光すればよい。本発明においては、パターン膜とは、このような全面に膜が形成された場合をも含むものである。
【0114】
また、現像の際に用いられる現像液としては、従来知感光性シロキサン組成物の現像に用いられている任意の現像液を用いることができる。好ましい現像液としては、水酸化テトラアルキルアンモニウム、コリン、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属メタ珪酸塩(水和物)、アルカリ金属燐酸塩(水和物)、アンモニア水、アルキルアミン、アルカノールアミン、複素環式アミンなどのアルカリ性化合物の水溶液であるアルカリ現像液が挙げられ、特に好ましいアルカリ現像液は、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液である。これらアルカリ現像液には、必要に応じ更にメタノール、エタノールなどの水溶性有機溶剤、あるいは界面活性剤が含まれていてもよい。アルカリ現像液により現像が行われた後には、通常水洗がなされる。これにより、露光部が除去される。その後、透明膜として使用する場合は、ブリーチング露光を行うことが好ましい。ブリーチング露光を行うことによって、膜中に残存する未反応のジアゾナフトキノン誘導体が光分解して、膜の光透明性がさらに向上する。ブリーチング露光の方法としては、PLAなどの紫外可視露光機を用い、100〜2,000mJ/cm程度(波長365nm露光量換算)を全面に露光する。
【0115】
現像後、パターン膜を加熱することにより、塗膜の硬化が行われる。加熱条件としては、塗膜の硬化が行える如何なる温度であってもよく、通常150〜400℃であり、好ましくは200〜350℃である。150℃以下では、未反応のシラノール基が残存し、十分な薬品耐性を示さない。また、シラノール基の極性は、高い誘電率を誘起させる。したがって、誘電率を下げる場合は200℃以上で硬化させることが好ましい。
【0116】
こうして得られた架橋硬化膜は、400℃以上の耐熱性を有し、また膜の光透過率は95%以上、比誘電率も4以下、好ましくは3.3以下である。このため、アクリル系材料にはない光透過率、比誘電率特性を有しており、フラットパネルディスプレー(FPD)など、前記したような各種素子の平坦化膜や層間絶縁膜、透明保護膜などとして、さらには、低温ポリシリコン用層間絶縁膜あるいはICチップ用バッファーコート膜などとして、多方面で好適に利用することができる。また、硬化物を光学デバイス材料などとして用いることもできる。
【実施例】
【0117】
以下に実施例、比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例、比較例により何ら限定されるものではない。
【0118】
<合成例>
先ず、本発明のポリシロキサンの合成例を以下に示す。なお、測定にあたって、次の装置を用いた。
GPC:HLC−8220GPC(東ソー製)
スピンコーター:MS−A100(ミカサ製)
【0119】
<合成例1(ポリシロキサン(Ia−1)の合成:アルカリ触媒合成)>
撹拌機、温度計、冷却管を備えた2Lのフラスコに、25重量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液36.5g、イソプロピルアルコール(IPA)800ml、水2.0gを仕込み、次いで滴下ロートにフェニルトリメトキシシラン39.7g、メチルトリメトキシシラン34.1g、テトラメトキシシラン7.6gの混合溶液を調整した。その混合溶液を10℃にて前記フラスコ内に滴下し、同温で3時間撹拌した後、10%HCl水溶液を加え中和した。中和液にトルエン400ml、水100mlを添加し、2層に分離させ、得られた有機層を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物に固形分濃度40重量%となるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を添加調整した。
【0120】
得られたポリシロキサンの分子量(ポリスチレン換算)をGPCにて測定したところ、重量平均分子量(以下「Mw」と略記することがある。)=2,200であった。また、得られた樹脂溶液をシリコンウエハにプリベーク後の膜厚が2μmになるようにスピンコーターにより塗布し、プリベーク後5%TMAH水溶液に対する溶解速度(以下「ADR」と略記することがある。)を測定したところ、490Å/秒であった。
【0121】
<合成例2(ポリシロキサン(Ib’−1)の合成:酸触媒合成)>
撹拌機、温度計、冷却管を備えた2Lのフラスコに、35%塩酸水溶液1.6g、PGMEA300ml、水27.4gを仕込み、次いで滴下ロートにフェニルトリメトキシシラン39.7g、メチルトリメトキシシラン34.1g、テトラメトキシシラン7.6gの混合溶液を調製した。その混合物を10℃にて滴下し、同温度で3時間攪拌した後、反応液にトルエン200ml、水100mlを添加し、2層に分離させ、得られた有機層を減圧下濃縮することで溶媒を除去し、濃縮物に固形分濃度40%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を添加調整した。得られたポリシロキサンの分子量(ポリスチレン換算)、2.38%TMAH水溶液に対するADRを合成例1と同様にして測定したところ、Mw=1,590であり、2.38%TMAH水溶液に対するADRは、9,530Å/秒であった。
【0122】
<合成例3(ポリシロキサン(Ib”−1)の合成:酸触媒合成)>
フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、テトラメトキシシランの混合溶液を滴下した後の攪拌時間5時間とすることを除き合成例2と同様にして、ポリシロキサンを合成した。得られたポリシロキサンの分子量(ポリスチレン換算)、2.38%TMAH水溶液に対するADRを合成例1と同様にして測定したところ、Mw=1,890であり、2.38%TMAH水溶液に対するADRは、2,440Å/秒であった。
【0123】
<合成例4(p−ヒドロキシベンジルシルセスキオキサン・メチルシルセスキオキサン共重合体(II−1)の合成:酸触媒合成)>
(式8 n=1、x=70モル%、y=30モル%、不溶基R5:メチル基)
【化25】
【0124】
撹拌機、環流冷却器、滴下ろう斗および温度計を備えた500mL4つ口フラスコに、水117gを仕込み、p−メトキシベンジルトリクロロシラン45.2g(0.187モル)とメチルトリメトキシシラン11.0g(0.080モル)のトルエン117g溶液を反応温度10〜20℃で滴下した。滴下終了後、同温度で2時間熟成後に静置後分液を行い、油層を回収した。次いで5%
炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、トルエン油層を回収した。次にそのトルエン溶液を攪拌機、蒸留塔、冷却器および温度計を備えた1L四つ口フラスコに移し、オイルバスに入れ、徐々に加熱し、トルエンを留去した。トルエン留去後にさらに温度を上げ、200℃で2時間熟成しp−メトキシベンジルシルセスキオキサン・メチルシルセスキオキサン共重合体36.6gを合成した。次に、撹拌機、環流冷却器、滴下ろう斗および温度計を備えた500mL4つ口フラスコに、アセトニトリル215gを仕込み、p−メトキシベンジルシルセスキオキサン・9−フェナントレニルシルセスキオキサン共重合体36.0
gとヨウ化ナトリウム66.8g(0.445モル)とトリメチルクロロシラン48.4g(0.445 モル)を順次加え、65〜70℃
で24時間還流した。還流後、水71.7gを滴下し、65〜70 ℃ で6時間還流後に冷却し、亜硫酸水素ナトリウム水溶液で遊離ヨウ素を還元した後、15 %食塩水で2回洗浄し、油層を回収した。さらに、油層を水に落として結晶を回収し、その結晶を乾燥し、GPC分析により、重量平均分子量(Mw :ポリスチレン換算)5,340、分散度(Mw/Mn:ポリスチレン換算)1.79のp−ヒドロキシベンジルシルセスキオキサン・メチルシルセスキオキサン共重合体36.0gを合成した。膜厚2.6ミクロンでの2.38%TMAH水溶液に対するADRは、550Å/秒であった。
【0125】
<合成例5(p−ヒドロキシベンジルシルセスキオキサン・フェニルシルセスキオキサン共重合体(II−2)の合成)>
(一般式4 n=1、x=70mol%、y=30mol%、不溶性基:フェニル基)
合成例4において、メチルトリメトキシシラン11.0gに代えて、フェニルトリメトキシシラン16.9gを仕込み、合成例4と同一条件でp−ヒドロキシベンジルシルセスキオキサン・フェニルシルセスキオキサン共重合体41.1gを合成した。GPC分析により、重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算)は5,240で、分散度(Mw/Mn:ポリスチレン換算)は1.76であり、膜厚3ミクロンでの2.38%TMAH水溶液に対するADRは、740Å/秒であった。
【0126】
下記表1に、これら合成例について、反応触媒、得られたポリシロキサンのMw、ADRを纏めて記載する。
【0127】
【表1】
【0128】
<実施例1(ポジ型感光性シロキサン組成物)>
ポリシロキサン(Ia−1):(Ib’−1):(Ib”−1)=(40重量%):(30重量%):(30重量%)の割合で混ぜた後、ポリシロキサン混合物を30%のPGMEA溶液に調整し、4−4’−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェノール)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノールのジアゾナフトキノン2.0モル変性体(以下「PAC」と略す。)を、ポリシロキサンに対して12重量%添加した。さらに、ポリシロキサン(II−1)(p−ヒドロキシベンジルシルセスキオキサン・メチルシルセスキオキサン共重合体)をポリシロキサンに対して1.0重量%添加した。界面活性剤として信越化学工業社製 KF−53を、ポリシロキサンに対して0.3重量%加え、感光性シロキサン組成物を得た。
【0129】
この感光性シロキサン組成物を、スピンコートにてシリコンウエハ上に塗布し、塗布後ホットプレート上100℃で90秒間プリベークし、1μmの膜厚になるように調整した。プリベーク後、ニコンFX−604(NA=0.1)のg、h線露光機を用い150mJ/cm2で露光し、2.38%TMAH水溶液で現像後、純水によるリンスを行った。その後、SEM観察を行うことにより、5μmのラインアンドスペース(L/S)パターンおよびコンタクトホール(C/H)パターンが、残渣等なく抜けていることが確認された。
【0130】
<実施例2(ポジ型感光性シロキサン組成物)>
ポリシロキサン(II−1)(p−ヒドロキシベンジルシルセスキオキサン・メチルシルセスキオキサン共重合体)を(II−2)(p−ヒドロキシベンジルシルセスキオキサン・フェニルシルセスキオキサン共重合体)とした以外は、実施例1と同様に感光性シロキサン組成物を得て、塗布、露光、現像、リンスを行った。その後、SEM観察を行うことにより、5μmのラインアンドスペース(L/S)パターンおよびコンタクトホール(C/H)パターンが、残渣等なく抜けていることが確認された。
【0131】
<実施例3(ポジ型感光性シロキサン組成物)>
p−ヒドロキシベンジルシルセスキオキサン・メチルシルセスキオキサン共重合体をポリシロキサンに対して2.0重量%添加し、露光を140mJ/cm2で行った以外は、実施例1と同様に感光性シロキサン組成物を得て、塗布、露光、現像、リンスを行った。その後、SEM観察を行うことにより、5μmのラインアンドスペース(L/S)パターンおよびコンタクトホール(C/H)パターンが、残渣等なく抜けていることが確認された。
【0132】
<実施例4(ポジ型感光性シロキサン組成物)>
p−ヒドロキシベンジルシルセスキオキサン・フェニルシルセスキオキサン共重合体をポリシロキサンに対して1.5重量%添加した以外は、実施例2と同様に感光性シロキサン組成物を得て、塗布、露光、現像、リンスを行った。その後、SEM観察を行うことにより、5μmのラインアンドスペース(L/S)パターンおよびコンタクトホール(C/H)パターンが、残渣等なく抜けていることが確認された。
【0133】
<実施例5(ポジ型感光性シロキサン組成物)>
ポリシロキサンの割合を、(Ia−1):(Ib’−1):(Ib”−1)=(25重量%):(0重量%):(75重量%)の割合で混ぜた後、ポリシロキサン混合物を18%のPGMEA溶液に調整し、PACをポリシロキサン(Ia)、(Ib”−1)合計量に対して9重量%添加した。さらに、ポリシロキサン(II−1)(p−ヒドロキシベンジルシルセスキオキサン・メチルシルセスキオキサン共重合体)をポリシロキサンに対して1.5重量%添加した。0.5μmの膜厚になるように調整した後、露光量200mJ/cm2で実施例1と同様にして実験を行った。SEM観察を行うことにより、5μmのラインアンドスペース(L/S)パターンおよびコンタクトホール(C/H)パターンが、残渣等なく抜けていることが確認された。図1にラインアンドスペース(L/S)のSEM写真を示す。
【0134】
<実施例6(ポジ型感光性シロキサン組成物)>
ポリシロキサンの割合を、(Ia−1):(Ib’−1):(Ib”−1)=(30重量%):(10重量%):(60重量%)とし、PACの量をポリシロキサン(Ia)、(Ib’−1)、(Ib”−1)合計量に対して9重量%添加し、ポリシロキサン(II)の量をポリシロキサン(Ia)、(Ib’−1)、(Ib”−1)合計量に対して1.5重量%とした以外は、実施例1と同様に感光性シロキサン組成物を得て、塗布、露光、現像、リンスを行った。その後、SEM観察を行うことにより、5μmのラインアンドスペース(L/S)パターンおよびコンタクトホール(C/H)パターンが、残渣等なく抜けていることが確認された。
【0135】
<実施例7(ポジ型感光性シロキサン組成物)>
ポリシロキサンの割合を、(Ia−1):(Ib’−1):(Ib”−1)=(35重量%):(35重量%):(30重量%)の割合で混ぜた後、ポリシロキサン混合物を35%のPGMEA溶液に調整し、PACをポリシロキサンに対して12重量%添加した。さらに、ポリシロキサン(II−1)(p−ヒドロキシベンジルシルセスキオキサン・メチルシルセスキオキサン共重合体)をポリシロキサン(Ia)、(Ib’−1)、(Ib”−1)合計量に対して0.7重量%添加した。2.0μmの膜厚になるように調整した後、露光量180mJ/cm2で実施例1と同様にして実験を行った。その後、SEM観察を行うことにより、5μmのラインアンドスペース(L/S)パターンおよびコンタクトホール(C/H)パターンが、残渣等なく抜けていることが確認された。図3にラインアンドスペース(L/S)のSEM写真を示す。
【0136】
<実施例8(ポジ型感光性シロキサン組成物)>
ポリシロキサンの割合を、(Ia−1):(Ib’−1):(Ib”−1)=(30重量%):(40重量%):(30重量%)の割合で混ぜた後、ポリシロキサン混合物を35%のPGMEA溶液に調整し、PACをポリシロキサンに対して12重量%添加した。さらに、ポリシロキサン(II-1)(p−ヒドロキシベンジルシルセスキオキサン・メチルシルセスキオキサン共重合体)を前記ポリシロキサンに対して0.7重量%添加した。3.0μmの膜厚になるように調整した後、露光量200mJ/cm2で実施例1と同様にして実験を行った。その後、SEM観察を行うことにより、5μmのラインアンドスペース(L/S)パターンおよびコンタクトホール(C/H)パターンが、残渣等なく抜けていることが確認された。
【0137】
<比較例1(ポジ型感光性シロキサン組成物)>
実施例1からポリシロキサン(II−1)(p−ヒドロキシベンジルシルセスキオキサン・メチルシルセスキオキサン共重合体)を除いた組成以外は実施例1と同様に感光性シロキサン組成物を得て、塗布、露光、現像、リンスを行った。その後、SEM観察を行ったところ、5μmのラインアンドスペース(L/S)パターンおよびコンタクトホール(C/H)両パターンについて、現像残渣が確認された。
【0138】
<比較例2(ポジ型感光性シロキサン組成物)>
実施例5からポリシロキサン(II−1)(p−ヒドロキシベンジルシルセスキオキサン・メチルシルセスキオキサン共重合体)を除いた組成以外は、実施例5と同様に感光性シロキサン組成物を得て、塗布、露光、現像、リンスを行った。その後、SEM観察を行ったところ、5μmのラインアンドスペース(L/S)パターンおよびコンタクトホール(C/H)両パターンについて、現像残渣が確認された。図2にラインアンドスペース(L/S)のSEM写真を示す。
【0139】
<比較例3(ポジ型感光性シロキサン組成物)>
実施例6からポリシロキサン(II−1)(p−ヒドロキシベンジルシルセスキオキサン・メチルシルセスキオキサン共重合体)を除いた組成以外は、実施例6と同様に感光性シロキサン組成物を得て、塗布、露光、現像、リンスを行った。その後、SEM観察を行ったところ、5μmのラインアンドスペース(L/S)パターンおよびコンタクトホール(C/H)両パターンについて、現像残渣が確認された。
【0140】
<比較例4(ポジ型感光性シロキサン組成物)>
実施例7からポリシロキサン(II−1)(p−ヒドロキシベンジルシルセスキオキサン・メチルシルセスキオキサン共重合体)を除いた組成以外は、実施例7と同様に感光性シロキサン組成物を得て、塗布、露光、現像、リンスを行った。その後、SEM観察を行ったところ、5μmのラインアンドスペース(L/S)パターンおよびコンタクトホール(C/H)両パターンについて、現像残渣が確認された。図4にラインアンドスペース(L/S)のSEM写真を示す。
【0141】
<比較例5(ポジ型感光性シロキサン組成物)>
実施例8からポリシロキサン(II−1)(p−ヒドロキシベンジルシルセスキオキサン・メチルシルセスキオキサン共重合体)を除いた組成以外は、実施例8と同様に感光性シロキサン組成物を得て、塗布、露光、現像、リンスを行った。その後、SEM観察を行ったところ、5μmのラインアンドスペース(L/S)パターンおよびコンタクトホール(C/H)両パターンについて、現像残渣が確認された。
【0142】
実施例1〜8のポジ型感光性シロキサン組成物および比較例1〜5をまとめたものを表2に示す。
【0143】
【表2】
図1
図2
図3
図4