特許第6013160号(P6013160)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6013160ガス供給管網管理システム及びガス供給管網管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013160
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】ガス供給管網管理システム及びガス供給管網管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20161011BHJP
【FI】
   G06Q50/06
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-266558(P2012-266558)
(22)【出願日】2012年12月5日
(65)【公開番号】特開2014-112313(P2014-112313A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2015年11月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120352
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100128901
【弁理士】
【氏名又は名称】東 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】池上 宏
(72)【発明者】
【氏名】粂 謙太郎
(72)【発明者】
【氏名】三宅 英之
(72)【発明者】
【氏名】小森 浩治
(72)【発明者】
【氏名】橋本 淳広
【審査官】 大野 朋也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−294962(JP,A)
【文献】 特開2012−087850(JP,A)
【文献】 特開2005−068780(JP,A)
【文献】 特開2001−318019(JP,A)
【文献】 特開2004−295506(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0167825(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給管網レイヤと標高レイヤと需要家ガス栓状態レイヤと供給停止エリア作業レイヤと住宅地図レイヤとを重ね合わせた、ガス供給停止作業を支援するための供給停止作業支援画面を生成する作業支援画面生成部と、
モニタに表示された前記供給停止作業支援画面を通じて工事対象となる地域のガス供給管網の状況を視認しながら、実際に供給停止されたエリアに基づいて前記供給停止エリア作業レイヤに描画される入力輪郭線によって規定されるエリアを、ガス供給停止エリアとして設定する供給停止エリア設定部と、
設定された前記ガス供給停止エリアに基づいて当該ガス供給停止エリアへのガス供給を停止するための遮断弁の位置を含む供給停止用閉栓情報を生成する閉栓情報生成部と、
を備えたガス供給管網管理システム。
【請求項2】
前記ガス供給停止エリアを復旧していく作業を管理する復旧作業管理情報を生成する復旧作業管理情報生成部と、現場の差し水に関する情報を管理する差し水管理情報を生成する差し水管理情報生成部とが備えられ、かつ
前記作業支援画面生成部は、さらに、前記復旧作業管理情報を表示する復旧作業管理レイヤと前記差し水管理情報を表示する差し水現場状況管理レイヤとを重ね合わせた、前記ガス供給停止エリアに対して供給再開するための復旧作業を支援する際に用いられる復旧作業支援画面を生成する請求項1に記載のガス供給管網管理システム。
【請求項3】
前記需要家ガス栓状態レイヤは、需要家宅に備えられた通信機能付きガスメータから送られてきたガス栓状態情報に基づいて生成される請求項1又は2に記載のガス供給管網管理システム。
【請求項4】
前記閉栓情報生成部は、ガス供給管網における遮断弁配置図と前記ガス供給停止エリアとに基づいて、前記供給停止用閉栓情報を生成する請求項1から3のいずれか一項に記載のガス供給管網管理システム。
【請求項5】
前記閉栓情報生成部は、前記供給停止用閉栓情報に含まれる閉栓すべき前記遮断弁の閉栓状況を表す閉栓情報をリスト形式又は地図形式あるいはその両方の形式で生成する請求項1から4のいずれか一項に記載のガス供給管網管理システム。
【請求項6】
前記供給停止用閉栓情報に基づいて閉栓された前記遮断弁の復旧作業における開栓状況をリスト形式又は地図形式あるいはその両方の形式で生成する開栓情報生成部が備えられている請求項1から5のいずれか一項に記載のガス供給管網管理システム。
【請求項7】
ガス供給管網レイヤと標高レイヤと需要家ガス栓状態レイヤと供給停止エリア作業レイヤと住宅地図レイヤとを重ね合わせた、ガス供給停止作業を支援するための供給停止作業支援画面を生成する作業支援画面生成機能と、
モニタに表示された前記供給停止作業支援画面を通じて工事対象となる地域のガス供給管網の状況を視認しながら、実際に供給停止されたエリアに基づいて前記供給停止エリア作業レイヤに描画される入力輪郭線によって規定されるエリアを、ガス供給停止エリアとして設定する供給停止エリア設定機能と、
設定された前記ガス供給停止エリアに基づいて当該ガス供給停止エリアへのガス供給を停止するための遮断弁の位置を含む供給停止用閉栓情報を生成する閉栓情報生成機能と、
をコンピュータによって実現させるガス供給管網管理プログラム。
【請求項8】
前記ガス供給停止エリアを復旧していく作業を管理する復旧作業管理情報を生成する復旧作業管理情報生成機能と、現場の差し水に関する情報を管理する差し水管理情報を生成する差し水管理情報生成機能とをさらにコンピュータによって実現させるとともに、
前記作業支援画面生成機能は、さらに、前記復旧作業管理情報を表示する復旧作業管理レイヤと前記差し水管理情報を表示する差し水現場状況管理レイヤとを重ね合わせた、前記ガス供給停止エリアに対して供給再開するための復旧作業を支援する際に用いられる復旧作業支援画面を生成する請求項7に記載のガス供給管網管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス供給管網にガス供給不良が生じた際の復旧工事におけるガス供給管網の管理を支援するガス供給管網管理システム、及びそのようなシステムをコンピュータシステムで実現させるためのガス供給管網管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス供給管網のガス管切断を含む復旧工事では、第一にガス供給管網の工事対象となる特定エリアに対するガス供給の停止作業(遮断弁の閉栓等、及び切断による)、次いでガス供給管網の修繕作業、そしてガス供給の再開作業(遮断弁の開栓等)を経て、工事が終了する。
【0003】
ガス供給管網のガス供給不良として、ガス導管外周部に開口部が生じ、ガス導管内に水が流入してくる、いわゆる、差し水に起因して、ガス供給に支障が生じるという障害(これをサンドブラストによるガス供給不良という)がある。このような支障が生じると、復旧作業として、漏水滞留箇所を推定し、水抜き作業を行う必要がある。同様にガス供給管網のガス供給不良の一つとして地震があり、サンドブラストと地震によるガス供給不良事故に対する復旧作業のプロセスはほぼ同様である。
【0004】
この復旧作業をスムーズに行うためのサーバ・クライアントシステムが提案されている(特許文献1)。このシステムでは、サーバは、ガス導管の埋設深さ情報を含むガス導管データ、および標高値を含む標高データを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶されている前記ガス導管データおよび前記標高データに基づいて、前記ガス導管の標高値を算出する算出手段とを備えている。クライアント端末は、前記サーバの前記記憶手段から受信した前記ガス導管データに基づいて、ガス管経路の表示を制御する第1の表示制御手段と、前記ガス管経路の表示上で所定の区間を指定する入力手段と、前記入力手段により所定の区間が指定された場合、指定された所定の区間を通る最短経路上における前記ガス導管の標高値を前記サーバから受信し、前記ガス導管の標高値の縦断面図上における表示を制御する第2の表示制御手段とを備えている。この構成により、モニタ画面上に、ガス導管が埋設されている標高値を表示することができ、管理者は、ガス導管内の漏水滞留箇所を、迅速かつ高精度に特定することができる。さらに、サーバの記憶手段は、ガス供給状況情報を含む顧客データをさらに記憶し、クライアント端末の第2の表示制御手段は、前記サーバから前記顧客データを受信し、前記ガス導管の標高値の縦断面図上に、ガス供給停止箇所に関する情報を重ね合わせて表示することができ、ガス供給停止箇所を容易に把握することが可能となる。
しかしながら、このシステムでは、ガス管経路の所定の区間を通る最短経路におけるガス導管の標高値の縦断面図を表示し、その縦断面図上に顧客のガスメータ稼動状況を重畳表示するだけであるので、ガス供給管網における特定のエリアの状況を把握するのは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−87850号公報(図1図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記公知技術の欠点を解消し、災害等によってガス供給管網にガス供給不良が生じた際、復旧工事におけるまず行なわなければならないガス供給停止エリアの迅速かつ適切な決定を支援するコンピュータシステムが要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるガス供給管網管理システムは、ガス供給管網レイヤと標高レイヤと需要家ガス栓状態レイヤと供給停止エリア作業レイヤと住宅地図レイヤとを重ね合わせた、ガス供給停止作業を支援するための供給停止作業支援画面を生成する作業支援画面生成部と、モニタに表示された前記供給停止作業支援画面を通じて工事対象となる地域のガス供給管網の状況を視認しながら、実際に供給停止されたエリアに基づいて前記供給停止エリア作業レイヤに描画される入力輪郭線によって規定されるエリアを、ガス供給停止エリアとして設定する供給停止エリア設定部と、設定された前記ガス供給停止エリアに基づいて当該ガス供給停止エリアへのガス供給を停止するための遮断弁の位置を含む供給停止用閉栓情報を生成する閉栓情報生成部とを備えている。
【0008】
この構成によれば、作業支援画面生成部で生成された画面データに基づく供給停止作業支援画面がデータ伝送ラインを通じてモニタに表示されると、作業管理者は、この画面から、工事対象となる地域におけるガス供給管網状態、標高の状態、個人宅や集合住宅や会社建物などにおける特定種のガスメータの開閉状態などを確認することが可能となる。しかも、その状態を面的な拡がりをもって確認することができ、ガス供給管網のガス供給不良の結果生じている実際に供給停止されているエリアを供給停止作業支援画面で確認することができる。さらには、作業管理者によって前記供給停止エリア作業レイヤに描画される入力輪郭線に基づいて規定されるガス供給停止エリアを何度も繰り返しながら検討することができる。そして、最終的に決定したものが、ガス供給停止エリアとしてシステム内で設定されるので、作業管理者は、ガス供給停止エリアの作業が迅速かつ適切に行なうことができる。なお、好適には、ガス供給停止エリアを決定する輪郭線は、ガス供給管網における遮断弁の位置を通るように設定される。ガス供給停止エリアが設定されると、このガス供給停止エリアをガス供給の閉鎖空間とするために要求される遮断弁の位置を含む供給停止用閉栓情報が生成される。この供給停止用閉栓情報に含まれている、ガス供給管網における遮断弁の位置(設置場所)を参照しながら、作業者は迅速に遮断弁を閉栓し、ガス供給停止エリアに対するガス供給停止作業を完遂することができる。
【0009】
ガス供給停止エリアに対するガス供給停止作業が終えると、ガス供給停止エリアにガスを供給再開するために、修繕作業及びガス再供給作業を含む復旧作業が行われる。本発明によるガス供給管網管理システムは、このような復旧作業にも適用することができる。つまり、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記ガス供給停止エリアを供給再開するための復旧作業を管理する復旧作業管理情報を生成する復旧作業管理情報生成部と、現場の差し水に関する情報を管理する差し水管理情報を生成する差し水管理情報生成部とが備えられ、かつ前記作業支援画面生成部は、さらに、前記復旧作業管理情報を表示する復旧作業管理レイヤと前記差し水管理情報を表示する差し水現場状況管理レイヤとを重ね合わせた復旧作業支援画面を生成する。この復旧作業支援画面は、前記ガス供給停止エリアに対して供給再開するための復旧作業を支援する際に用いられる画面である。この復旧作業支援画面に差し水現場状況管理レイヤを含めると、モニタを通じて水が溜まっているガス管の地図的位置が容易に把握することができ、復旧作業の適切な支援を行なうことができる。また、復旧作業支援画面には復旧作業管理レイヤも含まれているので、モニタを通じてガス供給再開のための復旧作業の進捗状況を地図上で、つまり俯瞰的に把握することも可能となる。
復旧作業管理レイヤは、復旧作業を管理する上で必要な各種情報を表示するものであり、好ましくは複数のレイヤに分割される。そのような復旧作業管理レイヤを構成するサブレイヤとして、例えば、顧客の復旧状況を示す復旧対象顧客レイヤ、復旧作業者の管理情報を示す担当地区レイヤ、復旧作業の管理情報を示す復旧ブロックレイヤなどが挙げられる。
【0010】
具体的な実施の形態においては、供給停止作業支援画面に含まれているレイヤのうち必要なものだけを選んで復旧作業支援画面に組み込んでおいて、差し水現場状況管理レイヤ及び復旧作業管理レイヤとともに表示可能にしてもよい。あるいは、供給停止作業支援画面に含まれている全てのレイヤを復旧作業支援画面に組み込んでおいて、必要に応じて選択して表示させることも好適である。つまり、供給停止作業支援画面と復旧作業支援画面は、作業支援画面として統合化してもよいし、供給停止作業支援画面と復旧作業支援画面とを別個の作業支援画面として取り扱っても良い。
【0011】
なお、本出願では、表示内容毎にレイヤが割り当てられている記述を採用しているが、もちろん、各レイヤを統合したり、あるいはさらに分割したりしてもよい。例えば、住宅地図レイヤを、需要家ガス栓状態レイヤ、ガス供給管網レイヤ、復旧作業管理レイヤなどに統合してもよい。必要な表示内容が供給停止支援画面や復旧作業支援画面の中で表示される限りにおいて、そのレイヤ構造は任意に選択可能である。
【0012】
需要家ガス栓状態レイヤに含まれる需要家のガス栓状態を示すデータは、一般的には本管から分岐する引き込み管の終端口に設けられているガスメータの遮断弁(ガス栓)の開閉状態を示すものである。近年、ガスメータとして、ガス栓状態や流量などのメータ情報を通信回線を利用してリアルタイムに中央管理センタに送信する通信機能付きガスメータが採用されている。このようなガスメータからの情報はリアルタイムでの局地的なガス供給管網の状態を把握するために適している。このことから、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記需要家ガス栓状態レイヤは、需要家宅に備えられた通信機能付きガスメータから送られてきたガス栓状態情報に基づいて生成されている。
【0013】
さらに、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記閉栓情報生成部は、ガス供給管網における遮断弁配置図と前記ガス供給停止エリアとに基づいて、前記供給停止用閉栓情報を生成する。この構成では、供給停止用閉栓情報に、供給停止支援画面を通じて設定されたガス供給停止エリアと遮断弁配置図とから導かれる閉栓すべき遮断弁の種別や位置などの遮断弁属性情報を含ませることができる。従って、この供給停止用閉栓情報を配布された作業者は、迅速かつ確実に局地的な閉栓作業を行なうことができる。このような閉栓作業は、多くの作業者に手分けして行われるので、その全体的な閉栓作業の流れをシステム側で管理し、必要に応じて作業者が閲覧できるようにする必要がある。このため、供給停止用閉栓情報に含まれる閉栓すべき遮断弁の閉栓状況が閉栓作業の経過とともに順次システム側に送られてくる。このようにして得られる遮断弁の閉栓状況を全体的に効率よく把握できるようにするため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記閉栓情報生成部は、前記供給停止用閉栓情報に含まれている閉栓すべき前記遮断弁の閉栓状況を表す閉栓情報をリスト形式又は地図形式あるいはその両方の形式で生成する。
【0014】
ガス供給停止エリアにおける閉栓作業の完了後、必要な修繕が実施され、その後、ガス供給停止エリアにおける開栓作業が行われる。この開栓作業も、多くの作業者に手分けして行われるので、その全体的な開栓作業の流れをシステム側で管理し、必要に応じて作業者が閲覧できるようにする必要がある。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記供給停止用閉栓情報に基づいて閉栓された前記遮断弁の復旧作業における開栓状況をリスト形式又は地図形式あるいはその両方の形式で生成する開栓情報生成部が備えられている。
【0015】
本発明は、上述したガス供給管網管理システムだけでなく、そのようなガス供給管網管理システムをコンピュータシステムで実現させるためのコンピュータプログラムも対象としている。本発明によるガス供給管網管理プログラムは、ガス供給管網レイヤと標高レイヤと需要家ガス栓状態レイヤと供給停止エリア作業レイヤと住宅地図レイヤとを重ね合わせた、ガス供給停止作業を支援するための供給停止作業支援画面を生成する作業支援画面生成機能と、モニタに表示された前記供給停止作業支援画面を通じて工事対象となる地域のガス供給管網の状況を視認しながら、実際に供給停止されたエリアに基づいて前記供給停止エリア作業レイヤに描画される入力輪郭線によって規定されるエリアを、ガス供給停止エリアとして設定する供給停止エリア設定機能と、設定された前記ガス供給停止エリアに基づいて当該ガス供給停止エリアへのガス供給を停止するための遮断弁の位置を含む供給停止用閉栓情報を生成する閉栓情報生成機能とをコンピュータによって実現させる。
このガス供給管網管理プログラムがもたらす作用効果は、上述したガス供給管網管理システムで述べた通りである。また、好適な実施形態として述べられた種々の特徴もこのガス供給管網管理プログラムに適用可能である。
【0016】
ガス供給管網管理プログラムにおける、特に好適な実施形態の1つでは、前記ガス供給停止エリアを復旧していく作業を管理する復旧作業管理情報を生成する復旧作業管理情報生成機能と、現場の差し水に関する情報を管理する差し水管理情報を生成する差し水管理情報生成機能とをさらにコンピュータによって実現させるとともに、前記作業支援画面生成機能は、さらに、前記復旧作業管理情報を表示する復旧作業管理レイヤと前記差し水管理情報を表示する差し水現場状況管理レイヤとを重ね合わせた、前記ガス供給停止エリアに対して供給再開するための復旧作業を支援する際に用いられる復旧作業支援画面を生成する。これにより、本発明によるガス供給管網管理プログラムは、ガス供給停止エリアに対するガス供給停止作業だけでなく、ガス供給停止作業後に行なわれる、ガス供給停止エリアにガス供給を再開するための、修繕作業及びガス再供給作業を含む復旧作業に対しても、効果的な支援を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の基本的な原理を説明する模式図である。
図2】本発明の具体的な実施形態の1つであるガス供給管網管理システムの機能ブロック図である。
図3】ガス供給管網管理システムを用いたガス供給管網の復旧工事の流れを示すフローチャートである。
図4】端末のモニタに表示される、供給停止作業画面及び復旧作業支援画面のレイヤ構成を説明するための模式図である。
図5】標高レイヤの表示形態を変更するための表示形態調整画面図である。
図6】設定されたガス供給停止エリアの一例を示す模式図である。
図7】遮断弁配置地図情報の一例を示すモニタ画面図である。
図8】閉栓業務指示書の一例を示す説明図である。
図9】2つの復旧ブロックに分割された供給停止エリアの画面図である。
図10】顧客状態集計画面の一例を示すモニタ画面図である。
図11】集計処理の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明によるガス供給管網管理システムの具体的な実施形態を説明する前に、図1を用いて本発明を特徴付けている基本原理を説明する。
図1には、ガス供給不良事故に対する復旧作業を支援する際に用いられるモニタ画面としての作業支援画面Sの構成が示されている。なお、ここでは、作業支援画面Sとして、ガス供給管網における特定地域をガス供給停止エリアとして決定する供給停止エリア作業を行う際に用いられる供給停止支援画面Saと、ガス供給停止エリアに対して供給再開するための復旧作業を支援する際に用いられる復旧作業支援画面Sbとに分けられている。もちろん供給停止支援画面Saと復旧作業支援画面Sbとを統合してもよい。
この供給停止支援画面Saは、ガス供給管網レイヤS1と、標高レイヤS2と、需要家ガス栓状態レイヤS3と、供給停止エリア作業レイヤS4と住宅地図レイヤS0とから構成されている。住宅地図レイヤS0は、供給停止支援画面Saを通じて家屋の配置状況や家屋と道路との関係を把握し易くするために、広域地図や住宅地図を表示するためのレイヤであり、この住宅地図レイヤS0はガス供給管網レイヤS1や需要家ガス栓状態レイヤS3などの他のレイヤに予め組み込んでおいてもよい。ガス供給管網レイヤS1は、ガス管網図が組み込まれたガス供給管網地図データに基づく画像が配置されたレイヤである。標高レイヤS2は、標高値を含む標高地図情報に基づいて画面上で標高値の違いが区分けされた標高画像が配置されたレイヤである。標高レイヤS2は等高線で表してもよいが、所定の標高高さステップで色分けすれば、特定地域における標高の違いがより視認しやすい。需要家ガス栓状態レイヤS3は、特定の家屋に設置された通信機能付きガスメータからのガス栓状態情報を含むメータ情報を管理している管理センタから転送された、各ガスメータにおけるガス栓状態を示す画像が配置されたレイヤである。例えば、開栓されたガスメータは白丸で示され、閉栓されたガスメータは赤丸で示される。ガスメータは、ガス漏れ等でガス圧が減少した場合に自動閉栓する機能を有するので、この需要家ガス栓状態レイヤS3によって、ガス圧が低下した地域の把握が可能である。供給停止エリア作業レイヤS4は、いわゆる作業レイヤであり、マウスなどの操作入力を通じて決定されたガス供給停止エリアの輪郭線ZAが記録されるレイヤである。
【0019】
供給停止支援画面Saは、これらのレイヤを適切に透明化して重ね合わせたものである。従って、この、供給停止支援画面Saを通じて、工事管理者は、ガス供給管網をベースとして、土地の標高分布や点在する閉栓された遮断弁をみながらガス供給不良の復旧工事のための供給停止エリアの輪郭描画を繰り返し試行することができる。最終的に決定された供給停止エリアの輪郭線(供給停止エリア輪郭線)ZAは、供給停止エリア作業レイヤS4に書き込まれる。
【0020】
供給停止エリアが最終的に確定されると、供給停止エリア作業レイヤS4から読み出された供給停止エリアの輪郭を示す輪郭線ZAに基づいて、供給停止エリアがガス供給停止状態になるために閉栓しなければならない遮断弁に関する弁種や設置されている位置(場所)の含む供給停止用閉栓情報が生成される。この供給停止用閉栓情報には、遮断弁に対する閉栓作業を行う作業者の閲覧に便利なように、地図情報M1だけでなく、総合リスト情報や個別リスト情報L1も含まれる。例えば、個別リスト情報を用いて閉栓帳票L2をプリント出力することで、閉栓作業命令書として担当作業者に効率的に配布することができる。
【0021】
ガス供給停止エリアに対するガス供給停止作業が終えると、ガス供給停止エリアにガス供給を再開するために、修繕作業及びガス再供給作業を含む復旧作業が行われるが、その際には、復旧作業支援画面Sbが用いられる。ここでは、復旧作業支援画面Sbには、上記の住宅地図レイヤS0、差し水管理情報を表示するための差し水現場状況管理レイヤS5、顧客の復旧状況を示す復旧対象顧客レイヤS6、復旧作業者の管理情報を示す担当地区レイヤS7、復旧作業の管理情報を示す復旧ブロックレイヤS8が含まれている。復旧対象顧客レイヤS6、担当地区レイヤS7、復旧ブロックレイヤS8は、復旧作業を管理する上で必要な各種情報を表示するものであり、これらを復旧作業管理レイヤとして統合してもよい。さらには、復旧作業支援画面Sbに、供給停止支援画面Saに含まれているその他のレイヤのいずれかまたはすべてを導入してもよいし、供給停止支援画面Saと復旧作業支援画面Sbとを統合した作業支援画面Sを採用してもよい。
【0022】
次に、図面を用いて、本発明によるガス供給管網管理システムの具体的な実施形態の1つを説明する。図2は、そのようなガス供給管網管理システムの構成を示す機能ブロック図である。図2では、このガス供給管網管理システムは、クライアントとしての端末1と管理センタ(以下単にセンタと略称する)に設置されるサーバとしての復旧管理サーバとが通信回線(WANやLAN)を介して接続されるサーバ・クライアントシステムないしはクラウドシステムとして構築されている。なお、このサーバ・クライアントシステムにおける端末1と復旧管理サーバとの機能を統合して、ガス供給管網管理システムをスタンドアロンシステムとして構築してもよい。
【0023】
図2から明らかなように、センタに設置される復旧管理サーバは、ここではWEBサーバとして構築された入出力部2と、各種データ処理機能をプログラムによって実現する機能部群を有するアプリケーションサーバ3と、各種データを格納するデータベース群からなるデータベースサーバ4とを備えている。
【0024】
データベースサーバ4には、住宅地図データベース部40、管網データベース部41、標高データベース部42、閉栓管理データベース部43、ユーザ管理データベース部44、復旧作業管理情報データベース部45が含まれている。住宅地図データベース部40は一般に流通している住宅地図ないしは広域地図の地図データを格納しており、市販の地図データを流用することができる。また、管網データベース部41にガス供給管網図とともに格納することも可能である。管網データベース部41は、地形・市街地地図情報に、ガス管網を含む供給設備のラインやシンボル記号やその属性情報を組み込んで作成されたガス供給管網図を格納している。標高データベース部42は、それ自体は良く知られた標高図をデジタルデータ化したものを格納している。閉栓管理データベース部43は、ガス供給管網における遮断弁の弁種、位置、開閉状態などをガス管工事中の作業者からの報告に基づいて読み取り可能に記録している。ユーザ管理データベース部44は、いわゆる顧客管理データベースであり、ガス需要家の需要家ID,氏名、住所、ガスメータIDなどがフィールドデータとして含まれている。復旧作業管理情報データベース部45は、復旧作業で利用する作業担当者情報、復旧ブロック情報とその属性情報、差し水情報などを格納している。
【0025】
アプリケーションサーバ3に含まれている、本発明に特に関係する機能部は、ガスメータ情報管理部30、作業支援画面生成部31、供給停止エリア設定部32、閉栓情報生成部33、分別部35、開栓情報生成部36、差し水管理情報生成部37、復旧作業管理情報生成部38である。ガスメータ情報管理部30は、登録されたガス需要家宅に設置された通信機能付きガスメータから送られてくるガスメータ情報を取り扱っている中央管理センタから必要に応じて転送されてくるガスメータの状態情報を管理している。ガスメータの状態情報には、接続されているガス管の圧力低下などによって閉栓状態となったガスメータの位置データ及び開栓状態となっているガスメータの位置データが含まれている。したがって、ガスメータ情報管理部30は、上述した需要家ガス栓状態レイヤS3を生成するためのデータを、実質的にリアルタイムで管理することができる。
【0026】
作業支援画面生成部31は、供給停止支援画面Saと復旧作業支援画面Sbとを作り出す。あるいはそれらを統合した作業支援画面Sを作り出すように作業支援画面生成部31を構成することも可能である。この実施の形態では、供給停止支援画面Saを作り出すために、作業支援画面生成部31は、住宅地図データベース部40から読み出した住宅地図データに基づいて住宅地図レイヤS0を生成し、管網データベース部41から読み出した管網図データに基づいてガス供給管網レイヤS1を生成し、標高データベース部42から読み出した標高図データに基づいて標高レイヤS2を生成し、ガスメータ情報管理部30で管理されているガスメータのガス栓開閉状態データに基づいて需要家ガス栓状態レイヤS3を生成する。また、この実施形態では、復旧作業の進捗に応じて、差し水管理情報生成部37によって差し水管理情報が生成され、復旧作業管理情報生成部38によって復旧作業管理情報が生成され、生成された差し水管理情報および復旧作業管理情報は復旧作業管理情報データベース部45に格納される。従って、作業支援画面生成部31は、差し水管理情報を表示するための差し水現場状況管理レイヤS5及び復旧作業管理情報を表示する復旧作業管理レイヤも生成することができる。この復旧作業管理レイヤには、上述した復旧対象顧客レイヤS6、担当地区レイヤS7、復旧ブロックレイヤS8が含まれている。
作業支援画面生成部31は、住宅地図レイヤS0とガス供給管網レイヤS1と標高レイヤS2と需要家ガス栓状態レイヤS3とを重ね合わせるとともに、操作入力された供給停止エリアの輪郭線ZAを記述するための供給停止エリア作業レイヤS4も配置し供給停止支援画面Sa(正確には画面データ)を生成する。さらに、この実施形態では、この供給停止支援画面Saには、差し水現場状況管理レイヤS5を含んでいる。この供給停止支援画面Saは入出力部2を通じて端末1に送られ、端末1のモニタ(ディスプレイ)1aに表示される。
【0027】
供給停止エリア設定部32は、モニタ1aに表示された、供給停止支援画面Saを通じて工事対象となる地域のガス供給管網の状況を視認しながらマウスなどの入力操作デバイスを用いて決定されたガス供給停止エリアの輪郭線ZAを、供給停止エリア作業レイヤS4を通じて読み取ることで、ガス供給停止エリアを設定する。
【0028】
閉栓情報生成部33は、作業管理者によって決定されるとともに供給停止エリア設定部32によって設定されたガス供給停止エリアに含まれる、当該ガス供給停止エリアへのガス供給を停止するための遮断弁の位置を含む供給停止用閉栓情報を生成する。その際、閉栓情報生成部33は、管網データベース部41から当該ガス供給停止エリアに含まれる遮断弁の属性情報を読み出して利用する。
【0029】
閉栓情報生成部33は、さらに、生成された供給停止用閉栓情報に含まれる閉栓すべき遮断弁の閉栓状況を表す閉栓情報をリスト形式又は地図形式あるいはその両方の形式で生成するが、その際、閉栓管理データベース部43に記録されている開閉(開栓・閉栓)状態を読み出して利用する。
【0030】
差し水管理情報生成部37は、ガス管に水が溜まる現象である差し水の状況を現場からの報告、あるいは場合によってはガス供給網に装備されている各種計器の検出情報に基づいて現場の差し水状況を示す差し水管理情報を生成する。復旧作業管理情報生成部38は、設定されているガス供給停止エリアに対する復旧作業の進捗状態を監視するための復旧作業管理情報を、作業現場から送られてくる各種作業情報に基づいて生成して復旧作業管理情報データベース部45に格納する。
【0031】
ガス供給管網の復旧のために必要な修繕工事の終了後、ガス供給停止エリアに再びガスを供給するために、復旧完了地域及び当該地域に属する需要家宅毎の、一旦閉栓された遮断弁(ガスメータの遮断弁も含む)を開栓する開栓作業(復旧作業)が行われる。この復旧作業を支援するために、モニタ1aに復旧作業支援画面Sbが表示される。開栓作業における遮断弁の開栓状況は閉栓管理データベース部43に順次記録されるが、開栓情報生成部36は、その情報を読み出して、供給停止用閉栓情報に基づいて閉栓された遮断弁の復旧作業における開栓状況をリスト形式又は地図形式あるいはその両方の形式で生成する。作業者は、この開栓情報生成部36によって生成された開栓状況をプリント出力ないしはモニタ出力することで、今後の作業を確認することができる。なお、この開栓作業では、例えば、個人宅に設置されたガスメータの遮断弁に対する作業と、集合住宅に設置されたガスメータの遮断弁に対する作業では異なる。集合住宅ではガスメータと本管を接続する引き込み管にさらに引き込み管遮断弁が設置されているなどの事情から、開栓作業に必須のパージ作業などの手順が複雑となるからである。このため、分別部35が、上記のような事情を考慮して、ガス供給停止エリアを複数の復旧ブロックに分割する。ここでは、戸建建物が属するブロックを一般ブロックと称し、集合・大規模建物が属するブロックを特殊ブロックと称している。さらに、開栓情報生成部36が、分別部35によって分割された復旧ブロックにおける閉栓された遮断弁に対する開栓作業のための開栓情報を、内管パージを必要としない戸建建物開栓情報と内管パージを必要とする集合・大規模建物開栓情報とに区分けして生成する。
【0032】
上記のように構成されたガス供給管網管理システムにおける、ガス管網の供給不良を伴う災害における災害復旧作業での基本的な工程を、図3のフローチャートを用いて説明する。
ガス管網被害を伴う災害が発生すると(#00)、ガス供給停止作業が行われる(#01)。このガス供給停止作業では、ガス供給停止エリアを最適に決定する必要がある。このガス供給停止エリアの決定を含む復旧作業を支援すべく、作業支援画面生成部31が、供給停止支援画面Saが生成され、端末1のモニタ1aに表示される(#11)。この供給停止支援画面Saのレイヤ構成が、図4で示されている。図4では、供給停止支援画面Sa及び復旧作業支援画面Sbに含まれるレイヤが示されている。供給停止支援画面Saは、好ましくは、住宅地図レイヤS0とガス供給管網レイヤS1と標高レイヤS2と需要家ガス栓状態レイヤS3と供給停止エリア作業レイヤS4と差し水現場状況管理レイヤS5とを重ね合わせることにより生成される。しかしながら、さらに復旧作業管理レイヤである、復旧対象顧客レイヤS6、担当地区レイヤS7、復旧ブロックレイヤS8にいずれかあるいはすべてを追加的に重ね合わせることも可能であり、その場合、供給停止支援画面Saは復旧作業支援画面Sbとしても兼用される。
【0033】
なお、作業管理者は、供給停止支援画面Saを構成する各レイヤのレイヤ属性を変更することが可能である。例えば、標高レイヤS2では、図5に示されているように、標高値によって区分けされる領域の間隔や分割数の変更、分割された領域の色分けを行なうことができる。これにより、供給停止エリアを決定するにあたって最適な標高レイヤS2が表示される。このような標高レイヤS2の生成において、供給停止支援画面Saが表示されている端末1ごとに個別に、標高領域の間隔や分割数、分割された領域の色分けを設定することできる。また、作業支援画面生成部31に変更指示を送信して、新たな供給停止支援画面Saを表示させる方法を採用しても良い。
【0034】
供給停止支援画面Saを見ながら、作業管理者は、ガス供給管網での遮断位置(遮断弁の位置)を特定していくことで、望ましいガス供給停止エリアの輪郭を供給停止エリアS4レイヤ上に描画させる。あるいは、作業管理者によって描画される描画線を参照してシステム側が遮断弁を通過する輪郭線を作り出す。最終的に、ガス供給停止エリアの輪郭が決定されると、供給停止エリア作業レイヤS4に描画されるガス供給停止エリアの輪郭線ZAが供給停止エリア輪郭線としてデータ化され、以後の処理でガス供給停止エリアとして取り扱われる(#12)。その際、図6で示すように、ガス供給停止エリアは複数のガス供給停止サブエリアから構成することも可能である。
【0035】
次いで、決定されたガス供給停止エリアに属する、閉栓すべき遮断弁の位置などの閉栓属性情報を示す供給停止用閉栓情報が生成され、閉栓管理データベース部43に記録される。閉栓管理データベース部43に記録された情報は端末1からの要求により出力される(#13)。供給停止用閉栓情報の1つの形態は、市街地図上に閉栓すべき遮断弁の位置をシンボル(図では灰色丸)で示している遮断弁配置地図情報であり、遮断弁配置地図情報に基づいて出力されたモニタ画面の一例が図7で示されている。供給停止用閉栓情報の他の形態の1つは、各遮断弁の属性データ(設置場所や対応ガスメータIDなど)とともに、閉栓作業の手順(家屋判定状況、閉栓状況、閉栓不能理由、引継ぎ依頼事項、周辺被害情報など)等を示している閉栓業務指示書であり、図8で模式的にごく一部が例示されている。作業者は、このような遮断弁配置地図情報を参照し、閉栓業務指示書に基づいて閉栓作業を行う(#02)。
【0036】
図3に戻ると、閉栓作業が完了して、ガス供給停止エリアへのガス供給が遮断されると、ガス供給停止エリアにおけるガス供給管網の修繕が行なわれる(#03)。修繕作業では、外管と呼ばれている大径の供給管の取替え工事や、内管と呼ばれている小径の引き込み管の取替え工事などが行なわれる。この工事により、災害等によるガス供給管網の供給不良が修復される。
【0037】
修繕作業が完了すると、ガス供給停止エリアへのガス供給が可能となるように、閉栓状態の遮断弁を開栓する開栓作業が行われる(#04)。この開栓作業を含む復旧作業は、復旧作業支援画面Sbによって支援される。このため、復旧作業支援画面Sbには、少なくとも住宅地図レイヤS0、差し水現場状況管理レイヤS5、復旧対象顧客レイヤS6、担当地区レイヤS7、復旧ブロックレイヤS8が含まれると好都合である。
既に述べたように、復旧工事における遮断弁の開栓作業では、当該遮断弁と接続しているガス管に対するパージ作業が必要となるが、集合住宅などでは、外管から内管(引き込み管)を経て需要家宅のガスメータの遮断弁までには1つ以上の遮断弁が介装されている場合もある。複数の遮断弁が介装されている場合、先行する第1の遮断弁を用いたパージ作業を行ってその開栓作業を行い、次のステップで後続する第2の遮断弁を用いたパージ作業を行ってその開栓作業を行いというように、順次パージ作業と開栓作業が行われる。なお、ガスメータに接続する引き込み管に介装された遮断弁、つまり引き込み管遮断弁の開栓時に行なわれるパージ作業は内管パージと呼ばれている。この内管パージが要否に応じて、つまり、引き込み管の中間に介装されている引き込み管遮断弁の開栓作業を行わない限り個々の家宅のガスメータを開栓できない家宅群(集合住宅や大規模建物)と、すぐに個々の家宅のガスメータを開栓してガス供給が再開される家宅群が存在する。このため、各宅に対して共通的に開栓作業を行ってガス供給が再開されることを報知した場合、家宅によっては開栓作業結果的にはガス供給再開のタイミングが大きくずれてしまうという問題が生じる。
【0038】
このような問題を解消するため、開栓作業工程において、まず、分別部35で、この災害復旧工事の閉栓作業において遮断弁の閉栓によってガス供給が停止されたガス供給停止エリアが、ガスメータに接続する引き込み管に引き込み管遮断弁が介装されている特殊ブロックと介装されていない一般ブロックの複数の復旧ブロックに区分けされる(#41)。区分けされた復旧ブロックが図9に模式的に示されているが、ここでは特殊ブロックがSBで示された集合住宅地域(集合住宅・大規模建物)であり、一般ブロックがNBで示された個別住宅地域(戸建建物地域)である。
【0039】
さらに、開栓情報生成部36で、各復旧ブロックにおける閉栓状態の遮断弁に対する開栓作業のための開栓情報が、前記集合住宅・大規模建物のための集合住宅・大規模建物開栓情報と前記戸建建物のための戸建建物開栓情報とに区分けして、ないしは区分け可能に生成される(#42)。その際、開栓情報生成部36は、開栓情報を、開栓されるべき遮断弁の地図上の位置及び開栓状態を示す地図形式で、又は開栓されるべき遮断弁の設置位置及び個別の開栓状態をリスト化したリスト形式で、あるいはその両方の形式で生成することができる。作業者は、所望の開栓情報を選択し、選択された開栓情報を、モニタ出力やプリント出力といった形態で視覚化し、そのような可視出力情報を参照しながら、各復旧ブロックでのパージ作業(#43)と開栓作業(#44)を行う。各ブロックでのパージ作業と開栓作業とが、全てのガス供給停止エリアで完了するまで順次行なわれる(#45)。このような各復旧ブロックでの開栓作業の作業結果はデータ化され、随時、開栓情報生成部36に送られる。
【0040】
開栓情報生成部36は、送られてきた作業結果を統計処理し、作業の進捗状態を示す開栓状態図表や開栓状態リストを生成し、閉栓管理データベース部43に記録する。この生成された図表やリストはデータ化され、端末1に送られることで、端末1側で見ることができる。例として、図10には、復旧したブロックとまだ復旧していないブロックの状況を示す項目(供給停止、未着手、閉栓完了など)を有する顧客状態集計画面が示されている。復旧工事が完了すると、今回の復旧工事に関するデータが集計され、その集計出力に基づいて復旧工事報告書が作成される(#05)。
【0041】
需要家単位の開栓作業において、需要家宅のガスメータの遮断弁をチェックする毎に、そのチェック結果が復旧工事報告書の一例としての開栓作業報告書に記載される。図11に示された開栓作業報告書には、未着手、閉栓完了、外管復旧計画済み、外管内管復旧完了、開栓訪問不在、開栓完了などのチェック項目が含まれている。この開栓作業報告書に記載されたチェック結果は、スキャナによって機械的読み取られ、データ化され、個別開栓情報として管理サーバに送信される。送られてきた個別開栓情報は、前記遮断弁の識別データとともに閉栓管理データベース部43に記録される。閉栓管理データベース部43に記録された遮断弁情報とユーザ管理データベース部44に記録されているユーザ情報とは互いにリンクされているので、開栓情報生成部36は、閉栓管理データベース部43とユーザ管理データベース部44とにアクセスして必要なデータを抽出することで、需要家(ユーザ)毎の開栓状況(復旧状況)をリスト化した集計情報を容易に生成することができる。この様子は、図11で模式化して示されている。図11に示されているように、個別の開栓情報を、例えば開栓された遮断弁を黒丸などのシンボルで表した地図情報の形式でフォーマット化し、端末1のモニタ1aに復旧工事報告として表示させることもできる。
【0042】
上述した実施形態で示された、アプリケーションサーバ3において実質的にプログラムの実行によって実現する機能部の区分けは、分かり易い説明を目的として行なっており、各機能部は、任意の統合ないしはさらなる分解が可能である。同様に、データベースサーバ4において複数のデータベース部に区分けされたデータベースも、任意の統合ないしはさらなる分解が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、ガス供給管網における種々の復旧工事の管理システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
S :作業支援画面
Sa:供給停止支援画面
Sb:復旧作業支援画面
S0:住宅地図レイヤ
S1:ガス供給管網レイヤ
S2:標高レイヤ
S3:需要家ガス栓状態レイヤ
S4:供給停止エリア作業レイヤ
S5:差し水現場状況管理レイヤ
S6:復旧対象顧客レイヤ(復旧作業管理レイヤ)
S7:担当地区レイヤ(復旧作業管理レイヤ)
S8:復旧ブロックレイヤ(復旧作業管理レイヤ)
1 :端末
1a:モニタ
3 :アプリケーションサーバ
30:ガスメータ情報管理部
31:作業支援画面生成部
32:供給停止エリア設定部
33:閉栓情報生成部
35:分別部
36:開栓情報生成部
37:差し水管理情報生成部
38:復旧作業管理情報生成部
4 :データベースサーバ
41:管網データベース部
42:標高データベース部
43:閉栓管理データベース部
44:ユーザ管理データベース部
45:復旧作業管理情報データベース部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11