(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記操作部は、前記スライド部材に板バネを介して配設され、該板バネにより前記面材の開移動する方向に向けて回動した姿勢に付勢されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の開度規制装置。
開口枠及びこの開口枠に対して開閉移動可能に設けられた面材とを備えた建具において、請求項1〜3のいずれか1つに記載の開度規制装置を備えたことを特徴とする建具。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の開口部に設置される開口枠と、この開口枠に対して開閉移動可能に設けられた障子とを備えた開き窓のような建具においては、障子の開放角度を規制する開度規制装置を備えたものが知られている。
【0003】
この開度規制装置は、障子の一方の縦框に配設されたアームと、開口枠の一方の縦枠に配設された全半開機構とを備えている。アームは、基端部が一方の縦框の見込面に回動可能に支持されており、先端部にピンが設けられている。
【0004】
全半開機構は、受部材とスライド部材とを有している。受部材は、一方の縦枠の見込面に設けられており、縦枠の延在方向、すなわち上下方向に沿って延在する案内溝を有している。
【0005】
スライド部材は、一方の縦枠の見込面における受部材の下方域において該受部材に近接する進出位置と該受部材から離隔する退行位置との間で移動可能に設けられている。このスライド部材は、常態においては付勢手段に付勢されて進出位置に位置することで案内溝の開放端を閉塞しており、自身に連結された操作部が押圧操作される場合、あるいは障子の閉移動に伴ってアームのピンに押圧される場合には、付勢手段の付勢力に抗して受部材から離隔するよう移動して案内溝の開放端を開放するものである。
【0006】
そのような開度規制装置においては、案内溝にピンが進入する場合には、開移動する障子の開度を予め決められた大きさに規制する一方、案内溝からピンが離脱する場合には、開移動する障子が全開状態となることを許容している(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記開度規制装置が適用される建具においては、気密性を保持するために開口枠にAT材が配設されているのが一般的である。そのため、縦枠の見込面に配設されるスライド部材に連結される操作部もその一部がAT材と当接することとなる。このように操作部の一部がAT材と当接していると、スライド部材が付勢手段に付勢されて進出位置に移動する際に操作部の一部がAT材と摺動することとなり、摺動抵抗が過大なものとなると、付勢手段の付勢力だけではスライド部材が進出位置に戻らない虞れがあった。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みて、面材を全閉状態にする場合には気密性を保持しつつ、面材が開移動した場合にはスライド部材を確実に基準位置に位置させることができる開度規制装置及び建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る開度規制装置は、開口枠及びこの開口枠に対して開閉移動可能に設けられた面材の一方に回動可能に支持されたアームと、前記開口枠及び前記面材の他方に配設され、かつ前記アームと係合可能な受け機構とを備え、前記アームと前記受け機構とが係合する場合には、開移動する面材の開度を予め決められた大きさに規制する一方、前記アームと前記受け機構とが非係合状態となる場合には、開移動する面材が全開状態となることを許容する開度規制装置において、前記受け機構の構成要素及び前記アームのうち前記開口枠に設けられるものをスライド移動可能に支持し、かつ常態においては付勢手段に付勢されて基準位置に位置する一方、操作部が操作されることで操作力が付与される場合には前記付勢手段の付勢力に抗してスライド移動するスライド部材を備え、前記操作部は、前記スライド部材に前記面材の開移動する方向に向けて変位した姿勢に付勢されて配設され
、かつ前記面材が全閉状態となる場合に前記開口枠に設けられたAT材に当接することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、操作部が、スライド部材に面材の開移動する方向に向けて変位した姿勢に付勢されて配設されているので、面材が全閉状態となる場合には、操作部が該面材に押圧されて開口枠に設けられたAT材と当接することで気密性を保持することができる。その一方、面材が全閉状態から開移動する場合には、開口枠から離隔した状態となって該開口枠に設けられたAT材と操作部との接触面積を低減させることができ、これにより、スライド部材を基準位置に向けて良好に移動させることができる。
【0012】
また、本発明は、上記開度規制装置において、前記スライド部材は、前記アームをスライド移動可能に支持し、かつ常態においては付勢手段に付勢されて基準位置に位置するものであり、前記受け機構は、前記アームに設けられたピンが進入可能な案内溝を有する受部材を備え、前記ピンが該案内溝に進入する場合に該アームと係合する一方、前記ピンが該案内溝より離脱する場合に該アームと非係合状態となるものであり、常態においては基準位置に位置するスライド部材に支持されたアームのピンが前記案内溝に進入した状態を維持する一方、前記面材が全閉状態で操作部が操作されることで前記スライド部材が前記付勢手段の付勢力に抗して基準位置から移動する場合には、前記ピンが前記案内溝から離脱した状態に維持し、その後前記面材が開移動してから再度全閉状態となるまでの間に前記スライド部材が前記付勢手段により基準位置に復帰することを許容して前記面材が再度全閉状態となる際に前記ピンを前記案内溝に進入させる復帰機構を備えたことを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、復帰機構が、常態においては基準位置に位置するスライド部材に支持されたアームのピンが案内溝に進入した状態を維持する一方、面材が全閉状態で操作部が操作されることでスライド部材が付勢手段の付勢力に抗して基準位置から移動する場合には、ピンが案内溝から離脱した状態に維持し、その後面材が開移動してから再度全閉状態となるまでの間にスライド部材が付勢手段により基準位置に復帰することを許容して面材が再度全閉状態となる際にピンを案内溝に進入させるので、面材を全開状態にさせる場合には、操作部を一旦操作してスライド部材を第1進出位置に位置させれば操作部の操作を維持する必要がなく、面材を容易に全開状態にさせることができ、その後、面材を閉移動させれば、容易に初期の状態とすることができる。
【0014】
また、本発明は、上記開度規制装置において、前記操作部は、前記スライド部材に板バネを介して配設され、該板バネにより前記面材の開移動する方向に向けて回動した姿勢に付勢されていることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、操作部が、スライド部材との間に介在する板バネにより面材の開移動する方向に向けて回動した姿勢に付勢されているので、面材が全閉状態となる場合には、操作部が該面材に押圧されて開口枠に設けられたAT材と当接することで気密性を保持することができる。その一方、面材が全閉状態から開移動する場合には、開口枠から離隔した状態となって該開口枠に設けられたAT材と操作部との接触面積を低減させることができ、これにより、スライド部材を基準位置に向けて良好に移動させることができる。
【0016】
また、本発明に係る建具は、開口枠及びこの開口枠に対して開閉移動可能に設けられた面材とを備えた建具において、上記開度規制装置を備えたことを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、建具は、上記開度規制装置を備えているので、面材が全閉状態となる場合には、操作部が該面材に押圧されて開口枠に設けられたAT材と当接することで気密性を保持することができる。その一方、面材が全閉状態から開移動する場合には、開口枠から離隔した状態となって該開口枠に設けられたAT材と操作部との接触面積を低減させることができ、これにより、スライド部材を基準位置に向けて良好に移動させることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、面材を全閉状態にする場合には気密性を保持しつつ、面材が開移動した場合にはスライド部材を確実に基準位置に位置させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態である開度規制装置が適用された建具、すなわち本実施の形態である建具を室内側から見た場合を示す外観図である。
【
図4】
図4は、
図3に示したツマミの取付状態を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図2及び
図3に示した開度規制装置を示すもので、(a)は障子側から見た説明図であり、(b)は室内側から見た場合を示す説明図である。
【
図6】
図6は、
図2及び
図3に示した開度規制装置を示すもので、(a)は障子側から見た説明図であり、(b)は室内側から見た場合を示す説明図である。
【
図7】
図7は、
図6に示した状態を右縦枠側から見た場合を示す説明図である。
【
図8】
図8は、
図7に示した開度規制装置を右縦枠側から見た場合を示す説明図である。
【
図9】
図9は、障子が閉移動する際のアームと受部材とを示すもので、(a)は右縦枠側から見た場合を示す説明図であり、(b)は下方から見た場合を示す説明図であり、受部材に配設された係止部材を割愛している。
【
図10】
図10は、障子が閉移動する際のアームと受部材とを示すもので、(a)は右縦枠側から見た場合を示す説明図であり、(b)は下方から見た場合を示す説明図であり、受部材に配設された係止部材を割愛している。
【
図11】
図11は、障子が閉移動する際のアームと受部材とを示すもので、(a)は右縦枠側から見た場合を示す説明図であり、(b)は下方から見た場合を示す説明図であり、受部材に配設された係止部材を割愛している。
【
図12】
図12は、障子が閉移動する際のアームと受部材とを示すもので、(a)は右縦枠側から見た場合を示す説明図であり、(b)は下方から見た場合を示す説明図であり、受部材に配設された係止部材を割愛している。
【
図13】
図13は、
図2及び
図3に示した開度規制装置を示すもので、(a)は障子側から見た説明図であり、(b)は室内側から見た場合を示す説明図である。
【
図15】
図15は、障子が全閉状態となる場合の開度規制装置の要部の横断面図である。
【
図16】
図16は、障子が全閉状態となる場合の開度規制装置を室内側から見た場合を拡大して示す拡大外観図である。
【
図17】
図17は、障子が開移動した場合の開度規制装置の要部の横断面図である。
【
図18】
図18は、障子が開移動した場合の開度規制装置を室内側から見た場合を拡大して示す拡大外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る開度規制装置及び建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態である開度規制装置が適用された建具、すなわち本実施の形態である建具を室内側から見た場合を示す外観図であり、
図2は、
図1に示した建具の要部を示す斜視図であり、
図3は、
図2に示した要部の分解斜視図である。
【0022】
ここで例示する建具は、開口枠10に対して一枚の障子(面材)20が開閉移動可能に配設された、いわゆる外開き窓と称されるものである。開口枠10は、建物の開口部に設置されるもので、上枠11、下枠12及び一対の縦枠13,14を四周枠組みすることによって構成した矩形状を成すものである。障子20は、それぞれ上框21、下框22及び一対の縦框23,24を四周框組みし、かつこれら上框21、下框22及び一対の縦框23,24の間にガラス板等のパネル材25を配設することによって構成されたものである。かかる障子20は、一方側の縦框23(以下、左縦框23ともいう)が図示せぬヒンジ機構等を介して上枠11及び下枠12に支持され、他方側の縦框24(以下、右縦框24ともいう)が室外側に開移動可能に構成されている。
【0023】
このような建具においては、操作ハンドル1の操作により開口枠10に対して障子20を施解錠する錠装置及び非常時に室外側より障子20を開移動させるための外部開放装置(ともに図示せず)の他、開度規制装置30が設けられている。ここで錠装置及び外部開放装置は、従来公知のものであるので、これらの説明については割愛する。
【0024】
開度規制装置30は、アーム40と、受部材70と、ロック受部材80とを備えて構成されている。アーム40は、アーム支持機構50を介して右縦枠14の見込面に設けられている。アーム40は、金属製の長尺平板状部材であり、その先端部には、右縦枠14に対向する面と反対側の面、すなわち右縦框24に対向可能な面にアーム先端ピン41が設けられている。
【0025】
アーム支持機構50は、ベース51とスライダ(スライド部材)52とを備えて構成されている。ベース51は、金属製の板状部材に適宜屈曲加工等を施すことにより形成されたもので、上下方向が長手方向となる長尺状のものである。このベース51は、図示せぬ固定ピンを介して右縦枠14の見込面に配設されている。
【0026】
かかるベース51には、スライド孔511及び異形孔512が形成されているとともに、スライドバネ(付勢手段)53が配設されている。
【0027】
スライド孔511は、複数(図示の例では2つ)形成されており、それぞれが長手方向が上下方向となる長孔形状を有するものである。これらスライド孔511の形状は互いに等しいものとされている。異形孔512は、2つのスライド孔511の間に形成されている。
【0028】
スライドバネ53は、上端がバネピン531を介してベース51の上端部に係止されており、下端にガイド部材54が係止された引張コイルバネである。ガイド部材54は、例えば針金等の金属製のワイヤーを加工して構成されたもので、上下方向が長手方向となる長孔形状のガイド孔54aを有している。
【0029】
スライダ52は、ベース51と同様に、金属製の板状部材に適宜屈曲加工等を施すことにより形成されたもので、上下方向が長手方向となる長尺状のものである。このスライダ52は、自身に形成されたスライドピン孔521にベース51に形成されたスライド孔511を貫通するスライドピン55の先端が挿通してかしめられることで、ベース51に対して上下方向に沿って、すなわち右縦枠14の長手方向に沿ってスライド移動可能となるものである。
【0030】
このスライダ52には、アーム支持孔522、アーム規制孔523、連結ピン孔524、ロックピン孔525、規制片526及びツマミベース527が設けられている。
【0031】
アーム支持孔522は、スライダ52の中央領域に形成されている。このアーム支持孔522に、アーム40の基端部に形成された基端孔42を円錐バネ43を介して貫通するアーム軸ピン44の先端が挿通してかしめられることで、スライダ52は、アーム40をアーム軸ピン44の中心軸回りに回動可能に支持するものである。
【0032】
アーム規制孔523は、アーム支持孔522の中心部を中心として円弧状に形成された長孔である。このアーム規制孔523は、スライダ52がスライド移動する場合においてもベース51の異形孔512の一部と常に重なりあう位置に形成されている。また、このアーム規制孔523は、アーム40の基端部に取り付けられたアーム角度規制ピン45が貫通することを許容しており、これにより、スライダ52は、アーム40の回動角度を規制している。
【0033】
連結ピン孔524は、アーム支持孔522よりも上方側に形成されている。この連結ピン孔524に、スライドバネ53の下端に係止されたガイド部材54のガイド孔54aを貫通する連結ピン56の先端が挿通してかしめられることで、スライダ52は、スライドバネ53に付勢されており、常態においては基準位置に位置している。ここで、スライダ52が基準位置に位置する場合、スライドピン55はスライド孔511の中間部を貫通しており、連結ピン56はガイド孔54aの下端部を貫通している。
【0034】
ロックピン孔525は、連結ピン孔524よりも上方側に形成されている。このロックピン孔525に、ロックピン57の先端がアーム40の配設側(左縦枠13側)より挿通してかしめられることで、スライダ52は、ロックピン57を有している。
【0035】
規制片526は、スライダ52の室内側下端縁部を左縦枠13側に屈曲させて形成されたものである。この規制片526は、アーム軸ピン44の中心軸回りに回動するアーム40に当接可能なもので、該アーム40が自身に当接することにより、アーム40がそれ以上室内側に回動することを規制するものである。
【0036】
ツマミベース527は、スライダ52の中央領域の室内側端部より左縦枠13に向けて突出するよう形成された部位である。このツマミベース527には、複数(図示の例では2つ)のツマミベース孔527aが形成されている。これらツマミベース孔527aに、
図4の(a)にも示すように、操作部であるツマミ60のツマミ基部61に形成されたツマミ孔61aを貫通するツマミピン62の先端が板バネ63を介して挿通してかしめられることで、スライダ52は、ツマミ60が取り付けられている。そして、スライダ52に取り付けられるツマミ60は、板バネ63に付勢されることで、
図4の(b)に示すように、ツマミ基部61の基端縁部とツマミベース527との当接部分64を中心として室外側(障子20が開移動する方向)に回動した姿勢となっており、該当接部分64を中心として回動することが可能である。
【0037】
受部材70は、金属製平板状部材に適宜屈曲加工等を施すことによって形成されたもので、上下方向に沿って延在するよう右縦框24の見込面に取り付けられている。この受部材70は、アーム40と係合可能な受け機構を構成するものである。かかる受部材70は、上下方向に沿って延在し、かつ下端が開放された案内溝71を有している。この案内溝71は、拡径部71aと縮径部71bとを有している。拡径部71aは、案内溝71の下端部分に形成されており、右縦框24の見込方向に沿った幅がアーム先端ピン41の頭部の幅よりも大きい部位である。縮径部71bは、拡径部71aの上方に形成されており、右縦框24の見込方向に沿った幅がアーム先端ピン41の頭部の幅よりも小さい部位である。このような案内溝71は、アーム先端ピン41の進入を許容するものである。
【0038】
また、上記受部材70には係止部材72が取り付けられている。係止部材72は、樹脂材により形成されるもので、上端部が案内溝71の下端より進入して該案内溝71の開放端を閉塞するものである。この係止部材72には、下方に向かうに連れて漸次右縦框24の見込面より離隔するよう傾斜する下延傾斜面73aを備えた係止部73が形成されている。
【0039】
さらに、上記受部材70には、傾斜案内部74が形成されている。傾斜案内部74は、案内溝71における拡径部71aの室内側及び室外側において受部材70と一体的に形成されたもので、拡径部71aに近接するに従って漸次右縦框24の見込面より離隔するよう傾斜する案内傾斜面74aを備えている。
【0040】
ロック受部材80は、金属製平板状部材に適宜屈曲加工等を施すことによって形成されたもので、上下方向が長手方向となる長尺状のものである。このロック受部材80は、右縦框24の見込面における上記受部材70よりも上方側領域に取り付けられている。このロック受部材80は、上下方向に沿って延在し、かつ下端が開放されたロック溝81を有している。また、上記ロック受部材80の内部には、下方に向けて二股状に分岐した樹脂バネ82が樹脂バネピン83を介して取り付けられている。
【0041】
以上のような構成を有する建具においては、開度規制装置30が次のようにして障子20の開移動を規制している。
【0042】
図5は、障子20が全閉状態となる場合における開度規制装置30を示すもので、(a)は障子20側から見た状態を示す説明図、(b)は室内側から見た状態を示す説明図である。尚、本明細書において、「全閉状態」とは、障子20が開口枠10により形成される開口(窓)を完全に閉塞しており、それ以上閉移動することができない状態であり、「全開状態」とは、許容された開移動の限界位置まで開移動しており、それ以上開移動することができない状態のことをいう。
【0043】
図5に示すように、障子20が全閉状態にある場合には、スライダ52は基準位置に位置しており、アーム40のアーム先端ピン41が受部材70の案内溝71に進入している。このような状態で操作ハンドル1が操作されて解錠された後、障子20が開移動させられると、この障子20の開移動に伴ってアーム40がアーム軸ピン44の中心軸回りに回動してアーム先端ピン41が案内溝71の長手方向に沿って移動する。そして、アーム先端ピン41が案内溝71の上端縁に当接することでアーム40の移動は規制され、これにより障子20の開移動も規制される。
【0044】
つまり、本実施の形態である建具(開度規制装置30)においては、アーム40のアーム先端ピン41が案内溝71に進入する場合には、開移動する障子20の開度を予め決められた大きさに規制している。
【0045】
次に
図6及び
図7に示すように、障子20が全閉状態にある状態でツマミ60が下方に向けて押圧操作されると、スライダ52は、ガイド部材54を介してスライドバネ53の付勢力に抗して下方に向けてスライド移動する。すなわち、スライダ52は、連結ピン56がガイド孔54aの下端縁部に当接した状態でガイド部材54を下方に向けて引っ張るようにしてスライドバネ53の付勢力に抗して下方に向けてスライド移動する。この下方に向けてのスライド移動でアーム40のアーム先端ピン41が案内溝71の開放端を閉塞する係止部材72の下延傾斜面73aを摺動する。その後、スライド移動するスライダ52が第1進出位置に位置することでアーム40のアーム先端ピン41は、下延傾斜面73aを乗り越えてスライドバネ53の付勢力も作用して係止部材72(係止部73)に係止する。これにより、スライダ52は第1進出位置に維持されることになり、アーム40のアーム先端ピン41は案内溝71から離脱した状態に維持される。
【0046】
このようにスライダ52が第1進出位置に維持された状態で操作ハンドル1が操作されて解錠された後、
図8に示すように全閉状態にある障子20が開移動させられると、係止部材72とアーム先端ピン41との係止状態が解除され、スライダ52はスライドバネ53の付勢力により上方に向けてスライド移動して基準位置に戻る。
【0047】
ところで、アーム40のアーム先端ピン41は案内溝71から既に離脱していることから障子20の開移動によってもアーム40が回動することなく、障子20は全開状態となることが可能である。つまり、本実施の形態である建具(開度規制装置30)においては、案内溝71からアーム40のアーム先端ピン41が離脱する場合には、開移動する障子20が全開状態となることを許容している。
【0048】
このように全開状態となった障子20を閉移動させると、
図9に示すように、障子20の右縦框24に設けた受部材70が右縦枠14に設けたアーム40に接近する。そして、
図10及び
図11に示すように、障子20の閉移動に伴い、アーム40のアーム先端ピン41が受部材70に形成された傾斜案内部74の案内傾斜面74aを摺動する。そして、障子20が全閉状態となると、
図12に示すように、アーム先端ピン41は、案内傾斜面74aを乗り越えて拡径部71aより案内溝71に進入し、
図5に示した状態に戻る。
【0049】
一方、
図13及び
図14に示すように、障子20が全閉状態にある状態でツマミ60が上方に向けて押圧操作されると、スライダ52は次のようにして上方に向けてスライド移動する。すなわち、スライダ52は、連結ピン56がガイド部材54のガイド孔54aを下端部から上端部に向けて移動することでスライドバネ53の付勢力に関係なく上方に向けてスライド移動する。この上方に向けてのスライド移動でスライダ52のロックピン57がロック受部材80のロック溝81の下端より該ロック溝81に進入する。その後、スライド移動するスライダ52が第2進出位置に位置することでスライダ52のロックピン57は、ロック溝81の上端部に至り樹脂バネ82の弾性復元力により該上端部にて係止される。
【0050】
このようにロックピン57がロック溝81に進入して係止されると、操作ハンドル1が操作されても障子20が開移動することが規制され、障子20が全閉状態に保持される。かかる全閉状態の保持は、ツマミ60が下方に向けて押圧操作されてスライダ52が第2進出位置から基準位置に戻ることにより、ロックピン57がロック溝81から離脱して解除される。
【0051】
ところで、上述したようにツマミ60は、板バネ63に付勢されることでツマミ基部61の基端縁部とツマミベース527との当接部分64を中心として室外側に回動した姿勢となっているが、障子20が全閉状態となる場合には、
図15に示すように、障子20の右縦框24により室内側に向けて押圧されてツマミ基部61の室内側面が右縦枠14に設けられたAT材14aに当接して気密性を保持している。このように障子20が全閉状態となる場合には、ツマミ60は、
図16に示すように、下方若しくは上方に向けて押圧操作されるが、この押圧操作は手動にて行われている。
【0052】
そして、障子20が開移動すると、
図17に示すように、ツマミ60は、板バネ63に付勢されることでツマミ基部61の基端縁部とツマミベース527との当接部分64を中心として室外側に回動した姿勢となり、右縦枠14のAT材14aとの接触面積を低減させることができる。これにより、
図18に示すように、第1進出位置に位置するスライダ52がスライドバネ53の付勢力により基準位置に向けて上方にスライド移動する場合におけるツマミ基部61とAT材14aとの摺動抵抗を低減させることができ、スライダ52を基準位置に向けて良好に移動させることができる。
【0053】
以上説明したように本実施の形態である建具(開度規制装置30)においては、係止部材72及び傾斜案内部74が、常態においては基準位置に位置するスライダ52に支持されたアーム40のアーム先端ピン41が案内溝71に進入した状態を維持する一方、障子20が全閉状態でツマミ60が操作されることでスライダ52がスライドバネ53の付勢力に抗して基準位置から第1進出位置に移動する場合には、アーム先端ピン41が案内溝71から離脱した状態に維持し、その後障子20が開移動してから再度全閉状態となるまでの間にスライダ52がスライドバネ53により基準位置に復帰することを許容して障子20が再度全閉状態となる際にアーム先端ピン41を案内溝71に進入させる復帰機構を構成している。また、ガイド部材54は、スライダ52がツマミ60の操作に応じてスライドバネ53の付勢力に関係なく基準位置と第2進出位置との間でスライド移動することを許容し、かつ障子20が全閉状態でスライダ52が第2進出位置にスライド移動した場合には、該スライダ52に配設されたロックピン57をロック受部材80のロック溝81に進入させて障子20を全閉状態に保持するロック機構を構成している。
【0054】
そして、本実施の形態である建具(開度規制装置30)によれば、係止部材72が、障子20が全閉状態でスライダ52が基準位置から第1進出位置にスライド移動する場合にはアーム先端ピン41が自身を乗り越えることで該アーム先端ピン41と係止して該アーム先端ピン41が案内溝71から離脱した状態を維持し、その後障子20が開移動してから再度全閉状態となるまでの間にアーム先端ピン41との係止状態を解除して該スライダ52が基準位置に移動することを許容しており、傾斜案内部74が、障子20が再度全閉状態となる場合に係止部材72との係止状態を離脱したアーム先端ピン41が自身の案内傾斜面74aを摺動することで案内溝71に進入することを許容するので、障子20を全開状態にさせる場合には、ツマミ60を一旦操作してスライダ52を第1進出位置に位置させればツマミ60の操作を維持する必要がない。そして、操作ハンドル1のみの操作で障子20を容易に全開状態にさせることができ、その後、障子20を閉移動させれば、容易に初期の状態とすることができる。よって、障子20を全開状態にする操作を容易なものとすることができる。しかも、ガイド部材54が、スライダ52が基準位置と第2進出位置との間でスライド移動することを許容するので、ツマミ60を一旦操作してスライダ52を第2進出位置に位置させればロックピン57をロック受部材80のロック溝81に進入させて障子20を全閉状態に保持することができる。よって、障子20を全閉状態に保持する操作を簡単に行うことができる。
【0055】
上記建具(開度規制装置30)によれば、ツマミ60が、板バネ63に付勢されることでツマミ基部61の基端縁部とツマミベース527との当接部分64を中心として室外側に回動した姿勢となるので、障子20が開移動した場合には右縦枠14のAT材14aとの接触面積を低減させることができ、これにより、スライダ52を基準位置に向けて良好に移動させることで、確実に基準位置に位置させることができる。特に、スライダ52を第1進出位置に位置させた後に障子20が開移動してその後に閉移動することで全閉状態となる場合には、アーム先端ピン41を案内溝71に進入させることができ、再度障子20が開移動する場合には、該商品時の開度を規制することができ、不意に障子20が全開状態となってしまうことを確実に回避することができる。
【0056】
以上本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
【0057】
上述した実施の形態では、アーム40が開口枠10に設けられており、受部材70(受け機構の構成要素)が障子20に設けられていたが、本発明においては、アームが障子に設けられており、受部材が開口枠に設けられていてもよい。このような構成によっても上述した実施の形態と同様の効果を奏することができる。この場合において、受け機構は、受部材とスライド体とを有してなるものでもよい。受部材は、一方の縦枠の見込面に設けられており、縦枠の延在方向、すなわち上下方向に沿って延在する案内溝を有している。スライド体は、一方の縦枠の見込面における受部材の下方域において該受部材に近接する進出位置と該受部材から離隔する退行位置との間でスライド移動可能に設けられている。このスライド体は、常態においては付勢手段に付勢されて進出位置に位置することで案内溝の開放端を閉塞しており、自身に連結された操作部が押圧操作される場合、あるいは面材の閉移動に伴ってアームのピンに押圧される場合には、付勢手段の付勢力に抗して受部材から離隔するよう移動して案内溝の開放端を開放するものである。
【0058】
上述した実施の形態では、ツマミ60を下方に向けて押圧操作することによりスライダ52を基準位置から第1進出位置にスライド移動させ、ツマミ60を上方に向けて押圧操作することによりスライダ52を基準位置から第2進出位置にスライド移動させるものとして説明したが、本発明では、第1進出位置が基準位置より下方で、第2進出位置が基準位置より上方と限られるものではない。
【0059】
上述した実施の形態では、ツマミ60は、板バネ63に付勢されることで、ツマミ基部61の基端縁部とツマミベース527との当接部分64を中心として室外側に回動した姿勢となって、該当接部分64を中心として回動することが可能であったが、本発明においては、かかる板バネが介在していなくても、例えばツマミ基部を屈曲させることでツマミが室外側に変位した姿勢とされるものであってもよい。