特許第6013179号(P6013179)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013179
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】作業車のステアリング構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/16 20060101AFI20161011BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20161011BHJP
【FI】
   B62D1/16
   F16F15/08 G
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-288631(P2012-288631)
(22)【出願日】2012年12月28日
(65)【公開番号】特開2014-129061(P2014-129061A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2015年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180507
【弁理士】
【氏名又は名称】畑山 吉孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137590
【弁理士】
【氏名又は名称】音野 太陽
(72)【発明者】
【氏名】西野 顕史
(72)【発明者】
【氏名】中村 正
【審査官】 柳楽 隆昌
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−057270(JP,U)
【文献】 実開昭59−051672(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/16
F16F 15/00−15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持台から上方へ突設された円筒状のハンドルポストと、
前記支持台側から前記ハンドルポスト内に延出されたステアリング操作用の入力軸と、
上部にステアリングハンドルが固定され、前記ハンドルポスト内に回動自在に支持され、前記入力軸と連結されたハンドル軸と、
前記ハンドル軸を周方向に覆う状態で前記ハンドル軸の外周部と前記ハンドルポストの内周部との間に配置され、前記ハンドルポストと前記ハンドル軸との間での振動伝達を防止する第一防振部材と、
前記ハンドル軸側と非接触状態で前記ハンドルポスト側に固定され、前記第一防振部材の上方への移動を規制する第一規制部材と、
前記ハンドルポスト側と非接触状態で前記ハンドル軸側に固定され、前記第一防振部材の下方への移動を規制する第二規制部材と、が備えられており、
前記ハンドル軸と前記入力軸とは、挿し込みによって、抜き挿し自在に嵌合連結され、かつ、前記ハンドル軸の下端部は、前記入力軸の上端部に突き付けられており、
前記第一防振部材が、上部から下部に亘って厚みが略一定の筒状であり、かつ、前記第一防振部材の上下の端面が平坦状であり、
前記第一防振部材の上方への移動が前記第一規制部材のみによって規制され、
前記第一防振部材の下方への移動が前記第二規制部材のみによって規制される作業車のステアリング構造。
【請求項2】
前記ハンドル軸の下端部と前記入力軸とは、前記ハンドル軸の軸心方向に突き合わせて連結されている請求項1に記載の作業車のステアリング構造。
【請求項3】
前記ハンドル軸の下端部と前記入力軸は、前記ハンドル軸の軸心方向においてその間に第二防振部材を介在させて連結されている請求項1又は2に記載の作業車のステアリング構造。
【請求項4】
前記第一防振部材は、上端部に当接する第一当接部材と下端部に当接する第二当接部材とにより上下方向で挟まれた状態で備えられ、
前記第一当接部材は、前記ハンドル軸側と非接触状態で且つ前記ハンドルポスト側と接触状態で備えられ、
前記第二当接部材は、前記ハンドルポスト側と非接触状態で且つ前記ハンドル軸側と接触状態で備えられている請求項1ないし3のいずれか一項に記載の作業車のステアリング構造。
【請求項5】
前記第一当接部材及び前記第二当接部材の両方は、円筒円盤状に形成され、
前記第一当接部材の内径は、前記第二当接部材の外径よりも小径に形成されている請求項4に記載の作業車のステアリング構造。
【請求項6】
前記第一防振部材は、前記ハンドル軸の軸心方向の一部に前記ハンドル軸の外周部との間に隙間を形成して備えられている請求項1ないし5のいずれか一項に記載の作業車のステアリング構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持台から上方へ突設された円筒状のハンドルポストと、上部にステアリングハンドルが固定され、ハンドルポスト内に回動自在に支持されたハンドル軸と、が備えられた作業車のステアリング構造に関する。
【背景技術】
【0002】
このような作業車のステアリング構造が例えば特許文献1に記載されている。特許文献1に示されたものは、支持台(文献では「支持ケース」)から上方へ突設された円筒状のハンドルポストと、上部にステアリングハンドルが固定され、ハンドルポスト内に回動自在に支持されたハンドル軸(文献では「ステアリング軸」)と、が備えられている。そのハンドル軸の下端部には、中間軸が連結され、その中間軸の下端部には、ステアリング操作用の入力軸が連結されている。
【0003】
ハンドル軸には、上側の大径部と下側の小径部とが形成されており、ハンドル軸の小径部には、ハンドル軸の大径部よりも内径の小さなブッシュが上方より嵌挿され、そのブッシュの上方において、ハンドルポストの上端部がシール部材によりシールされている。このような構成とすることにより、ハンドル軸が上方に引っ張られたときに、ブッシュ及びシール部材によりハンドル軸の上方への移動が規制され、ハンドルポストからのハンドル軸の抜けが防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−80960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、ブッシュ及びシール部材によってハンドルポストからのハンドル軸の抜けは防止できるが、ハンドル軸が、ブッシュやシール部材等の振動を伝達しうる部品を介してハンドルポストに接しているので、ハンドルポストの振動がハンドル軸へ伝達される構造となっていた。ハンドル軸にハンドルポストからの振動が伝達されると、ハンドル軸の上部に固定されたステアリングハンドルにも振動が伝達されてしまい、操作性を低下させる可能性があった。
【0006】
上記実情に鑑み、本発明は、ハンドル軸への振動の伝達を防止しながら、ハンドルポストからのハンドル軸の抜けを防止できる作業車のステアリング構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一特徴は、
支持台から上方へ突設された円筒状のハンドルポストと、
前記支持台側から前記ハンドルポスト内に延出されたステアリング操作用の入力軸と、
上部にステアリングハンドルが固定され、前記ハンドルポスト内に回動自在に支持され、前記入力軸と連結されたハンドル軸と、
前記ハンドル軸を周方向に覆う状態で前記ハンドル軸の外周部と前記ハンドルポストの内周部との間に配置され、前記ハンドルポストと前記ハンドル軸との間での振動伝達を防止する第一防振部材と、
前記ハンドル軸側と非接触状態で前記ハンドルポスト側に固定され、前記第一防振部材の上方への移動を規制する第一規制部材と、
前記ハンドルポスト側と非接触状態で前記ハンドル軸側に固定され、前記第一防振部材の下方への移動を規制する第二規制部材と、が備えられており、
前記ハンドル軸と前記入力軸とは、挿し込みによって、抜き挿し自在に嵌合連結され、かつ、前記ハンドル軸の下端部は、前記入力軸の上端部に突き付けられており、
前記第一防振部材が、上部から下部に亘って厚みが略一定の筒状であり、かつ、前記第一防振部材の上下の端面が平坦状であり、
前記第一防振部材の上方への移動が前記第一規制部材のみによって規制され、
前記第一防振部材の下方への移動が前記第二規制部材のみによって規制される点にある。
【0008】
本発明の第一特徴によれば、ハンドル軸の外周部とハンドルポストの内周部との間に第一防振部材が備えられているので、ハンドル軸は、ハンドルポスト側とは振動を伝達する部品を介して接しておらず、第一防振部材に接触している。このため、支持台から伝達されたハンドルポストの振動が第一防振部材により吸収され、ハンドル軸へ振動が伝達されることを防止できる。
【0009】
さらに、第一規制部材は第一防振部材の上方への移動を規制しており、第二規制部材は第一防振部材の下方への移動を規制していることから、第一防振部材は、第一規制部材と第二規制部材とにより上下方向で挟まれた状態となっている。よって、ステアリングハンドルが上方へ引っ張られることにより、ハンドル軸が上方へ移動しようとしても、第一規制部材と第二規制部材とにより第一防振部材が上下方向で挟まれて、第一規制部材にて第一防振部材の上方への移動が規制される。よって、ハンドル軸の上方への移動が規制され、ステアリングポストからハンドル軸が抜けることを防止できる。しかも、第一防振部材は、第一規制部材と第二規制部材とにより上下方向で挟まれているので、第一規制部材と第二規制部材とが直接接触せずに、その間に第一防振部材が介在することになる。このため、第一規制部材と第二規制部材との間でも第一防振部材によって振動の伝達を防止できる。よって、ハンドル軸への振動の伝達を防止しながら、ハンドルポストからのハンドル軸の抜けを確実に防止できる。
【0010】
本発明の第二特徴は、前記ハンドル軸の下端部と前記入力軸とは、前記ハンドル軸の軸心方向に突き合わせて連結されている点にある。
本発明の第三特徴は、前記ハンドル軸の下端部と前記入力軸は、前記ハンドル軸の軸心方向においてその間に第二防振部材を介在させて連結されている点にある。
ステアリング操作用の入力軸は、ステアリング機構に連繋されているので、ステアリング機構からの振動が伝達されやすい。本発明の第三特徴によれば、ハンドル軸の下端部とステアリング操作用の入力軸とは、ハンドル軸の軸心方向において、その間に第二防振部材を介在させて連結されているので、ステアリング操作用の入力軸の振動が第二防振部材により低減され、ハンドル軸へと伝達される振動を低減できる。
本発明の第四特徴は、前記第一防振部材は、上端部に当接する第一当接部材と下端部に当接する第二当接部材とにより上下方向で挟まれた状態で備えられ、
前記第一当接部材は、前記ハンドル軸側と非接触状態で且つ前記ハンドルポスト側と接触状態で備えられ、
前記第二当接部材は、前記ハンドルポスト側と非接触状態で且つ前記ハンドル軸側と接触状態で備えられている点にある。
【0011】
本発明の第四特徴によれば、第一防振部材が多少磨耗や変形等をしても、第一防振部材の上端部側の第一当接部材と第一防振部材の下端部側の第二当接部材とにより第一防振部材を上下方向にしっかりと挟むことができ、第一規制部材と第二規制部材との間に第一防振部材を確実に介在させることができる。よって、ハンドル軸を上方へ引き抜く力がかかっても、第一当接部材と第二当接部材とで第一防振部材が挟み込まれて第一規制部材と第二規制部材との間に第一防振部材が確実に介在される。このため、ハンドルポストからハンドル軸が抜けることを確実に防止できる。
【0012】
本発明の第五特徴は、前記第一当接部材及び前記第二当接部材の両方は、円筒円盤状に形成され、
前記第一当接部材の内径は、前記第二当接部材の外径よりも小径に形成されている点にある。
【0013】
本発明の第五特徴によれば、第一当接部材の内径が、第二当接部材の外径よりも小径に形成されているため、第一当接部材と第二当接部材とは、上下方向に重なりを有した状態で第一防振部材を挟み込んでいる。このため、第一当接部材と第二当接部材とにより第一防振部材を確実に挟み込むことができるので、第一防振部材が磨耗したり変形したりしたとしても、第一規制部材と第二規制部材との間に第一防振部材を確実に介在させることができる。さらに、第一当接部材及び第二当接部材の両方が、円筒円盤状に形成されているので、第一防振部材が円周方向に不均一に磨耗したり変形したりしたとしても、第一当接部材と第二当接部材により第一防振部材を確実に挟み込むことができる。
【0014】
本発明の第六特徴は、前記第一防振部材は、前記ハンドル軸の軸心方向の一部に前記ハンドル軸の外周部との間に隙間を形成して備えられている点にある。
【0015】
本発明の第六特徴によれば、第一防振部材には、ハンドル軸の軸心方向の一部にハンドル軸の外周部との間に隙間が形成されているので、ハンドル軸に対する第一防振部材の接触面積が小さくなり、ハンドル軸が回動する際における、ハンドル軸と第一防振部材との間の抵抗を低減させることができる。このため、ハンドル軸を回動させ易くなり、ステアリングハンドルの操作性を向上できる。また、第一防振部材が摩耗する部位を極力小さくでき、第一防振部材の耐久性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】トラクタの全体側面図である。
図2】ステアリング機構及びハンドルポストの内部を示す断面図である。
図3】ハンドルポストの上部、ハンドル軸の上部の付近の縦断側面図である。
図4】ハンドルポストの下部、ステアリング操作用の入力軸、ハンドル軸の付近の縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すように、トラクタ10(「作業車」の一例)は、右及び左の前輪11、右及び左の後輪12で支持された走行車体の前部にエンジン13が備えられるとともに、エンジン13にクラッチハウジング14及びミッションケース15が連結された四輪駆動型に構成されている。
【0020】
図1図2に示すように、トラクタ10には、右及び左の前輪11を操向操作するナックルアーム16が備えられており、右及び左の前輪11のナックルアーム16に亘ってタイロッド17が接続されている。また、クラッチハウジング14には、マニュアル操作式のステアリング機構の支持台18が固定されている。支持台18には、図2に示すように、ステアリング機構により横軸芯P1周りに揺動駆動される操作アーム19と、左の前輪11のナックルアーム16とに亘って、ステアリングロッド20が接続されている。
【0021】
図1図2図4に示すように、支持台18の上部からは円筒状のハンドルポスト21が上方へ突出されている。ハンドルポスト21は、その下部に固定された第一ブラケット22を介して支持台18の上部にボルト23により固定されている。ハンドルポスト21内には、ハンドル軸24が回動自在に支持されており、ハンドル軸24の上部には、ホイール型のステアリングハンドル25が固定されている。また、ハンドルポスト21内には、支持台18に連繋されているステアリング操作用の入力軸26が備えられている。第一ブラケット22は、ステアリング操作用の入力軸26の中心と、ハンドルポスト21におけるハンドル軸24の支持中心(ハンドルポスト21の断面円の中心)とが合致するように、支持台18の上部にハンドルポスト21が固定されている。また、ハンドルポスト21は、その上部に固定された第二ブラケット27を介して支持フレーム(図示なし)に固定されている。
【0022】
図2図4に示すように、ステアリング操作用の入力軸26は、支持台18の上部から上方に突出されてハンドルポスト21の内部に入り込むようにされている。ステアリング操作用の入力軸26の外面には、上部にスプライン部26aが形成されている。ハンドル軸24の下部には、内面にスプライン溝が形成された円筒状のスプライン筒28が、溶接により固定されている。そして、ステアリング操作用の入力軸26とハンドル軸24とはスプライン連結(セレーション連結)されている。
【0023】
ハンドル軸24とステアリング操作用の入力軸26との突き合わせ部分には、Oリング29(「第二防振部材」に相当)が配置されている。つまり、ハンドル軸24とステアリング操作用の入力軸26とは、上下方向に間隔を隔てて備えられており、その上下方向での間隙にOリング29が備えられている。これにより、入力軸26からハンドル軸24への振動伝達がOリング29によって防止されている。
【0024】
Oリング29は、その外径が、スプライン筒28の内径と同じ径又はやや大きい径とされ、Oリング29がスプライン筒28の内側に内嵌されている。これにより、スプライン筒28を固定したハンドル軸24を、ステアリング操作用の入力軸26にスプライン連結する際、スプライン筒28内にOリング29を位置させ、スプライン筒28の内周部によりOリング29が落下しないように保持した状態で、ステアリング操作用の入力軸26に、Oリング29を介してハンドル軸24を突き合わせることでき、組み付けを行い易くできる。
【0025】
図2図3に示すように、ハンドルポスト21及びハンドル軸24の上部側では、円筒状でゴム等の弾性部材からなるブッシュ32(「第一防振部材」に相当)がハンドル軸24に挿通されて備えられている。ブッシュ32は、ハンドル軸24を周方向に覆う状態でハンドル軸24の外周部24aとハンドルポスト21の内周部21aとの間に配置されている。つまり、ハンドル軸24の外周部24aとハンドルポスト21の内周部21aとの間には、その径方向の全長に亘ってブッシュ32が介在されており、このブッシュ32の介在によってハンドルポスト21とハンドル軸24との間での振動伝達を防止する。
【0026】
ブッシュ32の上端部側には、ハンドル軸24側と非接触状態でハンドルポスト21の内周部21a側に固定され、ブッシュ32が上方へ移動することを規制する第一止め輪33(「第一規制部材」に相当)が備えられている。第一止め輪33は、リング状に形成されており、ハンドルポスト21の内周部21aにその周方向の全周に亘って形成された第一円周溝21bに内嵌されて、ハンドルポスト21に固定されている。第一止め輪33の内径は、ハンドル軸24の外径よりも大径に形成されており、第一止め輪33の内周部とハンドル軸24の外周部24aとの間に間隔を隔てることで、第一止め輪33がハンドル軸24と非接触状態となっている。
【0027】
また、ブッシュ32の下端部側には、ハンドルポスト21側と非接触状態でハンドル軸24の外周部24a側に固定され、ブッシュ32が下方へ移動することを規制する第二止め輪34(「第二規制部材」に相当)が備えられている。第二止め輪34は、リング状に形成されており、ハンドル軸24の外周部24aにその周方向の全周に亘って形成された第二円周溝24bに外嵌されて、ハンドル軸24に固定されている。第二止め輪34の外径は、ハンドルポスト21の内径よりも小径に形成されており、第二止め輪34の外周部とハンドルポスト21の内周部21aとの間に間隔を隔てることで、第二止め輪34がハンドルポスト21と非接触状態となっている。
【0028】
第一止め輪33とブッシュ32との間には、ハンドル軸24側と非接触状態で且つハンドルポスト21側と接触状態とされ、薄肉の円筒円盤状に形成された例えば平座金からなる第一リング部材35(「第一当接部材」に相当)がハンドル軸24に挿通されて備えられている。第一リング部材35の内径は、ハンドル軸24の外径よりも大径に形成されており、第一リング部材35の内周部とハンドル軸24の外周部24aとの間に間隔を隔てることで、第一リング部材35がハンドル軸24と非接触状態となっている。
【0029】
また、第一リング部材35の外周部は、ハンドルポスト21の内周部21aと接触状態とされている。つまり、第一リング部材35の外径は、ハンドルポスト21の内径と略同径に形成されており、これにより、第一リング部材35の外周部がハンドルポスト21の内周部21aに接触状態とされ、第一リング部材35がハンドル軸24の径方向に移動することを防止して、第一リング部材35がハンドル軸24に接触しないようにされている。
【0030】
また、第一リング部材35の内径は、第一止め輪33の内径に比べて小径に形成されており、第一リング部材35を配置しない場合に比べて、ブッシュ32の上端部の上面に対する接触面積が大きくされている。これにより、ハンドル軸24を上方へ引き抜く力がかかったときに、第一リング部材35の下面がブッシュ32の上端部の上面に大きな接触面積で当接され、ブッシュ32の上方への移動が第一リング部材35及び第一止め輪33により適切に規制される。
【0031】
ブッシュ32と第二止め輪34との間には、ハンドルポスト21側と非接触状態で且つハンドル軸24側と接触状態とされ、薄肉の円筒円盤状に形成された例えば平座金からなる第二リング部材36(「第二当接部材」に相当)がハンドル軸24に挿通されて備えられている。第二リング部材36の外径は、ハンドルポスト21の内径よりも小径に形成されており、第二リング部材36の外周部とハンドルポスト21の内周部21aとの間に間隔を隔てることで、第二リング部材36がハンドルポスト21と非接触状態となっている。
【0032】
また、第二リング部材36の内周部は、ハンドル軸24の外周部24aと接触状態とされている。つまり、第二リング部材36の内径は、ハンドル軸24の外径と略同径に形成されており、これにより、第二リング部材36の内周部がハンドル軸24の外周部24aに接触状態とされ、第二リング部材36がハンドル軸24の径方向に移動することを防止して、第二リング部材36がハンドルポスト21に接触しないようにされている。
【0033】
また、第二リング部材36の外径は、第二止め輪34の外径に比べて大径に形成されており、第二リング部材36を配置しない場合に比べて、ブッシュ32の下端部の下面に対する接触面積が大きくされている。これにより、ハンドル軸24を上方へ引き抜く力がかかったときに、第二リング部材36の上面がブッシュ32の下端部の下面に大きな接触面積で当接される。
【0034】
このように、ブッシュ32は、ブッシュ32の上端部に第一リング部材35を当接し、ブッシュ32の下端部に第二リング部材36を当接しており、第一リング部材35と第二リング部材36とにより上下方向に挟まれた状態で備えられている。
【0035】
また、ブッシュ32は、ブッシュ32における内周部と外周部との間の中央部側において第一リング部材35及び第二リング部材36により、ハンドル軸24の軸心方向に上下方向に挟み込まれている。具体的には、第一リング部材35の内径が、第二リング部材36の外径よりも小径に形成されており、ハンドル軸24の軸心方向に、第一リング部材35と第二リング部材36とが重なりを有している。より具体的には、ハンドル軸24の径方向におけるハンドル軸24の外周部24aとハンドルポスト21の内周部21aとの間に形成された間隔において、第一リング部材35の内周部がブッシュ32の中央部よりも内径側に突出されており、かつ、第二リング部材36の外周部がブッシュ32の中央部よりも外径側に突出されている。よって、ブッシュ32においてその径方向の中央部において、ハンドル軸24の軸心方向に、第一リング部材35と第二リング部材36とが重なりを有している。これにより、ハンドル軸24を引き抜く力がかかったときに、第一リング部材35と第二リング部材36とにより、第一リング部材35と第二リング部材36とが重なる部分にブッシュ32に対して押し付け力が作用されるので、ブッシュ32が多少摩耗したり変形したりしたとしても、第一リング部材35又は第二リング部材36からブッシュ32が抜けることを確実に防止できる。
【0036】
また、ブッシュ32は、上接触部32aと下接触部32bとでハンドル軸24に当接されている。ブッシュ32における上接触部32aと下接触部32bとの間には、ハンドル軸24に当接しない非接触部32cが形成されている。つまり、ブッシュ32は、そのハンドル軸24の軸心方向の一部に、ハンドル軸24の外周部24aとの間に隙間37を形成して備えられている。ハンドル軸24は、ハンドルポスト21の上部側において、弾性部材のブッシュ32の上接触部32aと下接触部32bのみに接触して支持され、ハンドル軸24が、ハンドルポスト21側における振動を伝達しうる部材に接触しないようにされている。
【0037】
また、第一止め輪33と第二止め輪34との間のハンドル軸24の軸心方向における距離は、第一リング部材35、ブッシュ32、第二リング部材36のハンドル軸24の軸心方向における距離を合計した距離よりも大きくされている。これにより、第一リング部材35と第二リング部材36とにより上下方向で挟み込まれたブッシュ32は、その自重により下方側に移動するが、その下方側への移動が第二止め輪34にて規制されている。この状態では、ハンドル軸24の軸心方向で第一リング部材35と第一止め輪33との間に間隔が空いている。そして、ハンドル軸24を上方側へ引き抜く力がかかったときだけ、第一リング部材35と第二リング部材36とにより上下方向で挟み込まれたブッシュ32が上方側に移動して、第一リング部材35が第一止め輪33に当接することで、第一止め輪33によりブッシュ32の上方側への移動が規制されている。
【0038】
以上の構造により、ステアリングハンドル25を回転操作すると、ステアリングハンドル25の回転操作が、ハンドル軸24を介して、ステアリング機構に伝達され、ステアリング機構の操作アーム19が横軸芯P1周りに揺動駆動されて、ステアリングロッド20が前後駆動され、ナックルアーム16及びタイロッド17を介して、右及び左の前輪11が左右に操向操作される。このような操向操作の際等に、ハンドル軸24に振動が伝達されることを防止でき、且つ、ハンドルポスト21からハンドル軸24が抜けることを防止できる。
【0039】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、第二規制部材として第二止め輪34を用い、第二当接部材として第二リング部材36を用いる例を示したがこれに限られない。例えば、ハンドル軸24におけるブッシュ32の配置位置よりも下側において、ハンドル軸24の径よりも大径の環状部位をハンドル軸24に突設しておき、その環状部位を第二規制部材や、第二規制部材及び第二当接部材を兼用する部材として用いてもよい。
【0040】
(2)上記実施形態では、マニュアル操作式のステアリング機構を一例に示したが、これに限られず、油圧式又は電気式のパワーステアリング操作式等の他のステアリング機構であってもよい。
【0041】
(3)上記実施形態では、作業車の一例としてトラクタ10を示したが、これに限られず、乗用型芝刈り機、乗用型草刈り機、乗用型田植機、コンバイン、ホイルローダ等の他の作業車であってもよい。
【符号の説明】
【0042】
10 :トラクタ
18 :支持台
21 :ハンドルポスト
21a :内周部
24 :ハンドル軸
24a :外周部
25 :ステアリングハンドル
26 :ステアリング操作用の入力軸
29 :Oリング(「第二防振部材」)
32 :ブッシュ(「第一防振部材」)
33 :第一止め輪(「第一規制部材」)
34 :第二止め輪(「第二規制部材」)
35 :第一リング部材(「第一当接部材」)
36 :第二リング部材(「第二当接部材」)
37 :隙間
図1
図2
図3
図4