(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
流体を収容するための、2つの端面によって閉鎖された側壁を有する実質的にシリンダー形状の空洞部を有するポンプ本体であって、前記空洞部は高さ(h)および半径(r)を有し、高さ(h)に対する半径(r)の比が約1.2よりも大きいポンプ本体;
一方の端面の中心部分と動作可能に関連し、かつ前記端面に、共振の曲げモードおよびブリージングモードを有する周波数(f)の振動運動を発生させるように適合され、それにより、印加された駆動信号に応答して、少なくとも1つの環状圧力ノードを含む前記空洞部内の流体に半径方向圧力振動を生成させる、圧電素子;
前記圧電素子に前記周波数(f)の前記駆動信号を提供するために、前記圧電素子に電気的に接続された出力部を有する駆動回路であって、前記駆動信号が、方形波信号であり、前記圧電素子の基本曲げモード以外の前記圧電素子のモードの周波数と一致する当該方形波信号の高調波成分を減衰させるデューティサイクルを有する、駆動回路;
前記空洞部内の、前記環状圧力ノードの位置以外の任意の位置に配置され、かつ前記ポンプ本体を通って延在する第1の開口部;
前記ポンプ本体内の、前記第1の開口部の位置以外の任意の位置に配置され、かつ前記ポンプ本体を通って延在する第2の開口部;および、
前記第1の開口部および第2の開口部の少なくとも一方に配置されて、使用時に前記流体が前記空洞部を通って流れるようにする弁
を含むことを特徴とするポンプ。
請求項1に記載のポンプにおいて、前記デューティサイクルが、前記圧電素子のブリージングモードの周波数と一致する前記方形波信号の前記高調波成分がゼロに設定される値に等しいことを特徴とするポンプ。
請求項13に記載のポンプにおいて、前記デューティサイクルが約42.9%であり、前記圧電素子の基本ブリージングモードの周波数と一致する前記方形波信号の第7の高調波成分を減衰させることを特徴とするポンプ。
請求項15に記載のポンプにおいて、前記駆動回路が、前記圧電素子の、基本曲げモード以外のモードと一致する前記方形波信号の高調波を減衰させる処理回路を含むことを特徴とするポンプ。
請求項16に記載のポンプにおいて、前記処理回路が、前記方形波のデューティサイクルを、前記圧電素子のブリージングモードを励振する前記方形波信号の高調波を減衰させる値に設定することを特徴とするポンプ。
請求項19に記載のポンプにおいて、前記デューティサイクルが、前記圧電素子のブリージングモードと一致する前記方形波の高調波成分がゼロに設定される値に等しいことを特徴とするポンプ。
請求項20に記載のポンプにおいて、前記デューティサイクルが約42.9%であり、前記圧電素子の前記ブリージングモードと一致する前記方形波の第7の高調波成分を減衰させることを特徴とするポンプ。
【背景技術】
【0002】
熱音響式およびポンプ式コンプレッサの分野では、閉鎖空洞部における高振幅の圧力振動の生成が大きな注目を集めている。最近の非線形音響学の発展により、従来可能であると思われていたよりも高い振幅での圧力波の生成が可能になった。
【0003】
音響共振を使用して、決められた入口および出口から流体をポンプで押し出すことが知られている。これは、音響定常波を発生する音響ドライバを一方の端部に備えるシリンダー状空洞部を使用して達成できる。そのようなシリンダー状空洞部では、音響圧力波の振幅は限定されている。円錐形、角付き円錐形、球状などの変断面空洞部を使用して高振幅の圧力振動を達成し、それによりポンピング効果を著しく高めている。そのような高振幅の波では、エネルギー散逸を伴う非線形機構が抑制されている。しかしながら、最近まで、半径方向圧力振動が励振されるディスク形状の空洞部内で、高振幅の音響共振が用いられてこなかった。国際公開第2006/111775号パンフレットとして公開された国際特許出願第PCT/GB2006/001487号明細書(‘487号出願)には、アスペクト比、すなわち、空洞部の半径と空洞部の高さとの比が高い、実質的にディスク形状の空洞部を有するポンプが開示されている。
【0004】
そのようなポンプは、実質的にシリンダー状空洞部を有し、その空洞部は、各端部が端壁によって閉鎖されている側壁を含む。そのポンプはまた、端壁のいずれか一方を駆動して、被駆動端壁の表面に実質的に垂直な方向に振動させるアクチュエータも含む。被駆動端壁の運動の空間プロファイルは、空洞部内の流体圧力振動の空間プロファイルに適合しており、本明細書ではモードマッチングと説明される状態であると説明される。ポンプがモードマッチングしていると、空洞部内の流体に対してアクチュエータが行う仕事が、被駆動端壁面全体に建設的に加わり、それにより、空洞部内の圧力振動の振幅を増強し、かつポンプ効率を高める。モードマッチングされたポンプの効率は、被駆動端壁と側壁との間の境界部に依存する。被駆動端壁の運動を減少または減衰せず、それゆえ空洞部内の流体圧力振動の振幅のいかなる縮小も抑制するように境界部を構造化することによって、そのようなポンプの効率を維持することが望ましい。
【0005】
上述のポンプのアクチュエータは、端壁に対して実質的に垂直な方向の、またはシリンダー状空洞部の長手軸に対して実質的に平行な方向の被駆動端壁の振動運動(「変位振動」)を発生させる。以下、この振動を空洞部内での被駆動端壁の「軸方向振動」と称する。被駆動端壁の軸方向振動は、空洞部内に流体の実質的に比例「圧力振動」を発生させ、‘487号出願(参照により本書に援用される)で説明されているような第1種ベッセル関数の半径方向圧力分布に近似する半径方向圧力分布を生じ、そのような振動を、以下、空洞部内の流体圧力の「半径方向振動」と称する。アクチュエータと側壁との間の被駆動端壁の一部分は、変位振動の減衰を減少させて空洞部内で圧力振動のいかなる縮小も抑制する、ポンプの側壁との境界部を形成する。その部分を、以下、「アイソレータ」と称する。アイソレータの説明に役立つ実施形態は、変位振動の減衰を減少させるために、被駆動端壁の周辺部分と動作可能に関連する。
【0006】
より具体的には、ポンプは、実質的に円形の端壁によって両端部が閉鎖された側壁によって形成された空洞部を画成する、実質的にシリンダー形状を有するポンプ本体を含み、端壁の少なくとも一方が、中心部分と、側壁に隣接した周辺部分とを有する被駆動端壁であり、空洞部は使用時に流体を含む。ポンプは、被駆動端壁の中心部分と動作可能に関連したアクチュエータをさらに含み、アクチュエータにより、被駆動端壁に対して実質的に垂直な方向に、被駆動端壁の中心の辺りで最大振幅となるように被駆動端壁の振動運動を発生させ、それにより、使用時に被駆動端壁の変位振動を発生させる。ポンプは、被駆動端壁の周辺部分と動作可能に関連したアイソレータをさらに含み、より具体的に米国特許出願第12/477,594号明細書(参照により本書に援用される)に説明されているように、空洞部の側壁に端壁が接続されていることに起因する変位振動の減衰を減少させる。ポンプは、端壁の一方の中心の辺りに配置された第1の開口部と、ポンプ本体の任意の他の位置に配置された第2の開口部とをさらに含み、それにより、変位振動が前記ポンプ本体の空洞部内で流体圧力の半径方向振動を発生させ、前記開口部に流体が流れるようにする。
【0007】
そのようなポンプはまた、ポンプを流れる流体を制御するために1つ以上の弁、具体的には、高周波数で動作できる弁を必要とする。従来の弁は、一般に、様々な応用で500Hz未満の低周波数で動作する。例えば、多くの従来のコンプレッサは、一般に50または60Hzで動作する。当該技術分野で公知の線形共振コンプレッサは、150〜350Hzで動作する。しかしながら、医療装置を含む多くの携帯型電子装置が、正圧を供給するまたは真空にする、比較的サイズが小さいポンプを必要とし、およびそのようなポンプを動作時に不可聴にして、個別の動作を提供するようにすることが好都合である。これらの目的を達成するために、そのようなポンプは、非常に高い周波数で動作する必要が有り、約20kHz以上で動作できる弁を必要とする。これらの高周波数で動作させるために、弁は、整流されて最終的にポンプを通る流体流を生成できる高周波数振動圧力に応答性を有する必要がある。
【0008】
そのような弁は、国際特許出願第PCT/GB2009/050614号明細書(参照により本書に援用される)により具体的に説明されている。弁は、ポンプを通る流体の流れを制御するために第1または第2の開口部に、または両開口部に配置されてもよい。各弁は、開口部がほぼ垂直に延在する第1のプレートと、同様に開口部がほぼ垂直に延在する第2のプレートとを含み、第2のプレートの開口部は、第1のプレートの開口部から実質的にオフセットしている。弁は、第1のプレートと第2のプレートとの間に配置された側壁をさらに含み、側壁は、第1および第2のプレートの周囲の周りで閉鎖されて、第1のプレートと第2のプレートとの間に、第1および第2のプレートの開口部と流体連通する空洞部を形成する。弁は、第1のプレートと2のプレートとの間に配置されかつそれらの間を可動なフラップをさらに含み、フラップは、第1のプレートの開口部から実質的にオフセットされかつ第2のプレートの開口部と実質的に位置合わせされた開口部を含む。フラップは、弁の両面間での流体の差圧方向の変化に応答して、第1のプレートと第2のプレートとの間で動かされる。
【0009】
アクチュエータは、基本周波数、すなわち、アクチュエータの駆動を予定している周波数に加えて、複数の周波数で共振する圧電アクチュエータとし得る。圧電駆動回路は、一般にそのようなアクチュエータに方形波駆動信号を用いる。なぜなら、駆動回路エレクトロニクスは、より安価でかつより小型であり得るからである。これらの要素は、例えば、創傷処置のために減圧を生成するために使用され得る医療装置、および小型ポンプおよび駆動エレクトロニクスが必要とされる他の応用においては、重要である。そのようなアクチュエータのための駆動信号として方形波を用いる際の問題は、方形波が、その基本周波数(f)の数倍の追加的な周波数、すなわち、高調波周波数を含むことであり、その周波数は、アクチュエータの基本モードと共に励振される他の振動モード(例えばアクチュエータの高次の「曲げ」モードまたは半径方向の「ブリージング」モード)に関連した、アクチュエータのより高い周波数の共振周波数と一致し得るまたはそれに十分に近くなり得る。これらのモードの励振は、アクチュエータ、それゆえ、ポンプの性能を実質的に低下させ得る。例えば、そのようなより高い周波数モードの励振は、電力消費量を増大させ、結果としてポンプ効率を低下させ得る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の例示的ないくつかの実施形態の詳細な説明では、これらの一部を形成する添付図面を説明し、添付図面には、本発明を実施し得る好ましい具体的な実施形態を例として示す。これらの実施形態を、当業者が本発明を実施できるように十分に詳細に説明し、かつ、本発明の趣旨または範囲から逸脱せずに、他の実施形態を用いてもよいこと、および論理的な構造的、機械的、電気的、および化学的な変更を行ってもよいことを理解されたい。本明細書で説明した実施形態を当業者が実施できるようにするのに不要な詳細を避けるために、説明では、当業者に公知の特定の情報を省略し得る。それゆえ、以下の詳細な説明は、限定を意図するものではなく、説明に役立つ実施形態の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ規定される。
【0014】
図1Aは、本発明の説明に役立つ実施形態によるポンプ10の概略的な断面図である。また、
図1Bを参照すると、ポンプ10は、シリンダー状壁19を含む、実質的にシリンダー形状を有するポンプ本体を含み、シリンダー状壁19は、一方の端部がベース18によって閉鎖され、かつ他方の端部が、エンドプレート17、およびエンドプレート17とポンプ本体のシリンダー状壁19の他方の端部との間に配置されたリング状アイソレータ30によって閉鎖されている。シリンダー状壁19およびベース18は、ポンプ本体を含む単一の構成部品としてもよく、かつ、他の構成部品またはシステムに装着されてもよい。シリンダー状壁19、ベース18、エンドプレート17、およびリング状アイソレータ30の内側面が、ポンプ10内に空洞部11を形成し、空洞部11は、端壁12および13によって両端部が閉鎖されている側壁14を含む。端壁13はベース18の内側面であり、側壁14はシリンダー状壁19の内面である。端壁12は、エンドプレート17の内面に対応する中心部分と、リング状アイソレータ30の内面に対応する周辺部分とを含む。空洞部11の形状は実質的に円形であるが、空洞部11は同様に、楕円形または他の形状でもよい。ポンプ本体のベース18およびシリンダー状壁19は、限定するものではないが、金属、セラミック、ガラス、または、限定するものではないが射出成形プラスチックを含むプラスチックを含む、任意の好適な剛性材料から形成してもよい。
【0015】
ポンプ10はまた圧電性円板20を含み、圧電性円板20は、エンドプレート17に動作可能に接続されてアクチュエータ40を形成し、エンドプレート17を介して端壁12の中心部分に動作可能に関連する。圧電性円板20は圧電材料で形成される必要はないが、例えば、電歪または磁歪材料などを振動させる、任意の電気的に活性の材料で形成し得る。エンドプレート17は、好ましくは、圧電性円板20と同様の曲げ剛性を有してよく、および金属またはセラミックなどの電気的に非活性の材料で形成し得る。圧電性円板20が電流によって励振されると、アクチュエータ40は、空洞部11の長手軸に対して半径方向に膨張したり収縮したりしてエンドプレート17を曲げ、それにより、端壁12に対して実質的に垂直な方向において、端壁12の軸方向の撓みを誘発する。あるいは、エンドプレート17はまた、電気的に活性の材料、例えば、圧電、磁歪、または電歪材料などから形成し得る。別の実施形態では、圧電性円板20を、端壁12と力を伝達する関係にある装置、例えば、機械的、磁気的または静電気的な装置などによって置き換えてもよく、端壁12は、上述したような方法でそのような装置(図示せず)によって振動するように追い込まれる、電気的に非活性のまたはパッシブな材料層として形成し得る。
【0016】
ポンプ10は、空洞部11からポンプ10の外側まで延在する少なくとも2つの開口部をさらに含み、開口部の少なくとも最初の1つは、開口部を通る流体の流れを制御する弁を含んでもよい。弁を含む開口部は、アクチュエータ40が圧力差を発生させる(下記で詳細に説明する)、空洞部11の任意の位置に配置してもよいが、ポンプ10の好ましい一実施形態は、端壁12、13のいずれかのほぼ中心に弁が配置された開口部を含む。
図1Aおよび
図1Bに示すポンプ10は、空洞部11から端壁13の中心の辺りでポンプ本体のベース18を通って延在しかつ弁46を含む主開口部16を含む。弁46は、主開口部16内に装着され、矢印で示すように流体の流れが一方向となるようにし、ポンプ10の出口として機能するようにする。第2の開口部15は、空洞部11内の、弁46を備える主開口部16の位置以外の任意の位置に配置し得る。ポンプ10の好ましい一実施形態では、第2の開口部15は、端壁12、13のいずれか一方の中心と側壁14との間に配置される。
図1Aおよび
図1Bに示すポンプ10の実施形態は、空洞部11からアクチュエータ40を通って延在する2つの副開口部15を含み、それら副開口部は、端壁12の中心と側壁14との間に配置されている。ポンプ10のこの実施形態では副開口部15は弁で調節されないが、副開口部も同様に、必要であれば弁で調節されて性能を高めてもよい。ポンプ10のこの実施形態では、主開口部16は弁で調節されるため、流体が、副開口部15を通ってポンプ10の空洞部11に吸い込まれ、矢印で示すように主開口部16を通って空洞部11から送り出され、主開口部16に正圧をもたらす。
【0017】
図2Aは、空洞部11の被駆動端壁12の軸方向振動を示す変位プロファイルの可能性の1つを示す。実線の曲線および矢印は、ある時刻での被駆動端壁12の変位を表し、破線の曲線は、それより半サイクル後の被駆動端壁12の変位を表す。この図面および他の図面に示すように変位は誇張して示してある。アクチュエータ40は、その周囲が堅固に装着されておらず、むしろリング状アイソレータ30で吊るされているため、アクチュエータ40は、その基本モードにおいて、その質量中心の辺りで自由に振動できる。この基本モードでは、アクチュエータ40の変位振動の振幅は、端壁12の中心と側壁14との間に配置された環状変位ノード22において実質的にゼロである。端壁12の他の点にある変位振動の振幅は、垂直方向の矢印で示すようにゼロ超の振幅を有する。アクチュエータ40の中心付近には中心変位アンチノード21があり、アクチュエータ40の周囲付近には周辺変位アンチノード21’がある。
【0018】
図2Bは、
図2Aに示す軸方向変位振動に起因する空洞部11内での圧力振動を示す圧力振動プロファイルの可能性の1つを示す。実線の曲線および矢印は、ある時刻での圧力を表し、破線の曲線は、それより半サイクル後の圧力を表す。このモードおよび高次のモードでは、圧力振動の振幅は、空洞部11の中心付近に中心圧力アンチノード23、および空洞部11の側壁14付近に周辺圧力アンチノード24を有する。圧力振動の振幅は、中心圧力アンチノード23と周辺圧力アンチノード24との間の環状圧力ノード25において実質的にゼロである。シリンダー状空洞部の場合、空洞部11における圧力振動の振幅の径方向依存性は、第1種ベッセル関数によって概算してもよい。上述の圧力振動は、空洞部11内の流体の半径方向運動に起因するので、アクチュエータ40の軸方向変位振動から区別されて、空洞部11内の流体の「半径方向圧力振動」と称する。
【0019】
図2Aおよび
図2Bをさらに参照すると、アクチュエータ40の軸方向変位振動の振幅の径方向依存性(アクチュエータ40の「モード−形状」)は、第1種ベッセル関数で概算し、空洞部11内の所望の圧力振動の振幅の径方向依存性(圧力振動の「モード−形状」)に、より近く適合するようにしていることが分かる。アクチュエータ40をその周囲において堅固に装着せず、かつその質量中心の辺りでより自由に振動できるようにすることによって、変位振動のモード−形状は、空洞部11内の圧力振動のモード−形状に実質的に適合するので、モード−形状の適合、またはもっと簡単には、モードマッチングを達成する。モードマッチングは、この点において常に完璧でなくてもよく、アクチュエータ40の軸方向変位振動、および空洞部11内の対応する圧力振動は、アクチュエータ40の全表面にわたって実質的に同じ相対位相を有し、空洞部11における圧力振動の環状圧力ノード25の半径方向位置、およびアクチュエータ40の軸方向変位振動の環状変位ノード22の半径方向位置は、実質的に合致する。
【0020】
図2Aに示すようなアクチュエータ40のモード−形状は、アクチュエータ40の最低の周波数共振「曲げ」モードである(「基本曲げモード」)。矢印は、実線と破線との間で動くアクチュエータ40の軸方向変位を示す。変位のアンチノード、変位アンチノード21および21’は、アクチュエータ40のそれぞれ中心および縁部に配置される。当業者には、高次の曲げモードは、高い周波数に存在することが理解される。動作時、圧電性円板20は面内で、すなわち、圧電性円板20の平面に平行な方向に膨張したり収縮したりする。上述の曲げ運動を引き起こすことに加えて、この運動はまた、
図2Cに示すような拡張圧電性円板20’および拡張エンドプレート17’に示すように面内でエンドプレート17を膨張させたり収縮させたりさせる。複合アクチュエータ40の対応する面内の膨張および収縮が、アクチュエータ40の「ブリージング」モードとして公知のアクチュエータ40の振動のモードを形成する(軸方向変位または曲げモードとは対照的に)。一般に、最低次のブリージングモード(「基本ブリージングモード」)は、基本曲げモードの周波数よりも著しく高い共振周波数を有する。当業者には、高次のブリージングモードは高い周波数で存在することが理解される。アクチュエータ40の基本曲げモードとは異なり、アクチュエータ40のそのようなブリージングモードは、基本曲げモードに関して
図2Bに示すようには、ポンプ10の空洞部11内に有用な圧力振動を発生させない。
【0021】
アクチュエータ40がその質量中心の辺りで振動するとき、環状変位ノード22の半径方向位置は、
図2Aに示すようにアクチュエータ40がその基本曲げモードで振動する際に、必然的にアクチュエータ40の半径の内側にあることになる。それゆえ、環状変位ノード22を環状圧力ノード25と確実に一致させるために、アクチュエータの半径(r
act)は、モードマッチングを最適にするために、好ましくは環状圧力ノード25の半径よりも大きい必要がある。再度、空洞部11内の圧力振動を第1種ベッセル関数で概算すると仮定すると、環状圧力ノード25の半径は、
図1Aに示すように、端壁13の中心から側壁14への半径、すなわち、空洞部11の半径(r)の約0.63となる。それゆえ、アクチュエータ40の半径(r
act)は、好ましくは、以下の式を満たす:r
act≧0.63r。
【0022】
リング状アイソレータ30は、
図2Aの周辺変位アンチノード21’における変位に示すようなアクチュエータ40の振動に応答する曲げおよび伸張により、上述のようにアクチュエータ40の縁部がより自由に動けるようにする可撓性膜とし得る。可撓性膜は、ポンプ10のアクチュエータ40とシリンダー状壁19との間に低機械インピーダンス支持体を設けることにより、アクチュエータ40に対して発生し得る側壁14の減衰効果に打ち勝ち、それにより、アクチュエータ40の周辺変位アンチノード21’における軸方向振動の減衰を小さくする。本質的に、可撓性膜は、アクチュエータ40から側壁14へ伝達されるエネルギーを最小限にし、それにより、実質的に静止したままとなる。それゆえ、環状変位ノード22は、ポンプ10のモードマッチング条件を維持するために、環状圧力ノード25に実質的に位置合わせされたままとなる。それゆえ、被駆動端壁12の軸方向変位振動は、
図2Bに示すように、側壁14において中心圧力アンチノード23から周辺圧力アンチノード24へ、空洞部11内で圧力の振動を効果的に発生させ続ける。
【0023】
図3Aを参照すると、例示的なアクチュエータ40のインピーダンススペクトル300のグラフを、周波数に応じたインピーダンス300の大きさ成分302および位相成分304の双方を含めて、示す。アクチュエータ40のインピーダンススペクトル300のピークは、約21kHz以上の周波数共振モードでの基本共振モード311を含む特定の周波数において、アクチュエータ40の電気−機械共振モードに対応している。そのような高周波数共振モードは、約83kHzにおいて第2の共振モード312を、約147kHzにおいて第3の共振モード313を、約174kHzにおいて第4の共振モード314を、および約282kHzにおいて第5の共振モード315を有する。
【0024】
約21KHzにおける基本共振モード311は、空洞部11に圧力振動を生じさせて、
図2Aおよび
図2Bと併せて説明したようにポンプ10を駆動させる基本曲げモードである。83kHzにおける第2の共振モード312は、基本モード311の単一の環状変位ノード22に加えて第2の環状変位ノード(図示せず)を有する第2の曲げモードである。それぞれ約174kHzおよび282kHzにおける第4および第5の共振モード314および315はまた、軸方向に対称的なより高次の曲げモードであり、基本曲げモード311の単一の環状変位ノード22を超えておよびより高い方に、それぞれ2つおよび3つの追加的な環状変位ノード(図示せず)を有する。
図3Aから分かるようにこれらの曲げモードの強度は、概して、周波数が増大するにつれて低下する。
【0025】
アクチュエータ40の第3の共振モード313は、ポンプ10の空洞部11内に有用な圧力振動を発生させずに、上述のようにアクチュエータ40を半径方向に変位させる基本ブリージングモード(
図2C)である。本質的に、アクチュエータ40の面内共振運動は、この周波数で優勢であり、
図3Aから分かるように非常に低いインピーダンスを生じさせる。この基本ブリージングモードの低インピーダンスは、その周波数で駆動信号が励振されると、高パワーを引き出すことを意味する。
【0026】
基本周波数と、基本周波数の高調波周波数とを含むパルス幅変調(PWM)方形波信号を使用して、上述のアクチュエータ40を駆動してもよい。
図3Bを参照すると、符号370で示すPWM方形波信号の高調波を表すフーリエ成分370(n)(「n」は、高調波の次数である)の棒グラフが、アクチュエータ40を駆動するとして示されている。各高調波のフーリエ成分を、異なるデューティサイクルを有するPWM方形波信号の高調波成分の各々には別々の参照符号を付して、表Iに一覧にする。PWM方形波信号370は50%のデューティサイクル(「DC」)を有する。デューティサイクルとは、信号が2つの状態のうちの一方にある方形波周期の百分率を意味し、例えば、方形波周期の50%が正である信号は、50%のデューティサイクルを有する。50%のデューティサイクルのPWM方形波信号の奇数の各高調波成分の振幅は、高調波次数に反比例して減少する。50%のデューティサイクルのPWM方形波信号の偶数の各高調波の振幅は、ゼロである。
【0028】
上述の例では、駆動回路は、アクチュエータをその基本曲げモードで駆動するように設計されている、すなわち駆動PWM方形波信号の周波数は、基本曲げモードの周波数に適合するように選択されている。しかしながら、
図3Aと
図3Bを比較することから分かるように、PWM方形波信号370のある高調波は、アクチュエータ40の、あるより高次の共振モードと一致し得る。駆動信号の高調波がアクチュエータのより高次のモードと一致する場合、エネルギーがこのモードに移される可能性があり、ポンプの効率を低下させる。アクチュエータ40のそのようなより高次の共振モードに変換されるエネルギーレベルは、その関連のモードの強度およびタイプ、およびその対応するインピーダンスだけでなく、基本駆動周波数のその特定の高調波周波数においてアクチュエータ40を励振する駆動信号の振幅にも依存することに留意されたい。共振モードが、低インピーダンスで強く、かつ駆動信号の有意な振幅によって駆動されるとき、かなりのエネルギーが、これらの望ましくないより高次のモードにおいてアクチュエータ40に伝達され、かつアクチュエータ40の振動によって消散され、ポンプ効率を低下させ得る。このため、より高次の共振モードは、ポンプ10の有用な動作には寄与せず、むしろ、エネルギーを浪費し、かつポンプ10の効率に悪影響を及ぼす。
【0029】
より具体的には、
図3Aの例では、50%のデューティサイクルのPWM方形波信号370の第7の高調波377は、約147kHzにおける基本ブリージングモード313の低インピーダンスに一致する。第7の高調波377の振幅は、その高調波次数に反比例して比較的小さな数まで減少するにしても、アクチュエータ40のインピーダンスはその周波数において十分低いので、第7の高調波377の振幅が比較的小さくても、有意なエネルギーを基本ブリージングモード313に十分引き込める。
図4Bは、この周波数でアクチュエータ40によって吸収されるパワーが、基本曲げモードの周波数で吸収されたパワーに近いことを示す:それにより総入力パワーの大部分が浪費され、動作時のポンプの効率を劇的に低下させる。
【0030】
アクチュエータ40のより高次の共振モードのこの有害な励振は、共振モードの強度を小さくするかまたはアクチュエータ40の特定の共振モードに周波数が最も近い駆動信号の高調波の振幅を小さくすることを含め、いくつもの方法によって抑制し得る。本発明の実施形態は、駆動信号を適切に選択および/または修正することによる駆動信号の高調波によって、高次の共振モードの励振を低減する装置および方法に関する。例えば、正弦波駆動信号は、この問題を回避する。その理由は、まず第1に、正弦波内に高調波周波数が全く含まれていないので、正弦波駆動信号はアクチュエータ40のより高次の共振モードを全く励振させないからである。しかしながら、圧電駆動回路は、一般に、アクチュエータに方形波駆動信号を用いる。なぜなら、駆動回路エレクトロニクスは、低コストでありかつより小型であり、このことは、本出願で説明したポンプ10の医学的応用および他の応用では重要なことであるためである。それゆえ、好ましい戦略は、駆動信号の第7の高調波377を減衰させることによって147kHzにおけるその基本ブリージングモード313の周波数でアクチュエータ40を駆動しないように、アクチュエータ40のための方形波駆動信号370を修正することである。このように、基本ブリージングモード313はもはや駆動回路から大してエネルギーを引き出さず、それに関連するポンプ10の効率の低下を回避する。
【0031】
解決法の第1の実施形態は、アクチュエータ40と直列に電気的フィルタを追加して、方形波駆動信号に存在する第7の高調波377の振幅を除外するまたは減衰させることである。例えば、低域フィルタとして直列の誘導子を使用して、方形波駆動信号における高周波数の高調波を減衰し、駆動回路の方形波出力を効果的に平滑化してもよい。そのような誘導子は、アクチュエータと直列のインピーダンスZを追加する(|Z|=2πfLである)。ここで、fは、問題となっている周波数であり、およびLは、誘導子のインダクタンスである。周波数f=147kHzにおいて|Z|を300Ω超にする場合、誘導子は、320μHを上回る値を有する必要がある。そのような誘導子を追加することは、147kHzにおけるアクチュエータ40のインピーダンスを著しく増大させる。アナログおよびデジタルの双方の低域フィルタを含む、代替的な低域フィルタの構成が、本発明の原理に従って用いられ得る。低域フィルタに代わるものとして、基本周波数または他の高調波信号に影響を及ぼすことなく第7の高調波377の信号を阻止するために、ノッチフィルタを使用してもよい。ノッチフィルタは、それぞれ3.9μHおよび330nFの値を有する平行の誘導子およびコンデンサを含んで、駆動信号の第7の高調波377を抑制してもよい。アナログおよびデジタルの双方のノッチフィルタを含む、代替的なノッチフィルタの構成は、本発明の原理に従って使用し得る。
【0032】
第2の実施形態では、方形波信号370のデューティサイクルの修正によって第7の高調波377の振幅を低減するように、PWM方形波駆動信号370を修正できる。方形波信号370のフーリエ解析を使用して、式1によって示すような駆動周波数の第7の高調波の振幅の低減または除外をもたらすデューティサイクルを決定できる。
ここで、A
nは、第nの高調波の振幅であり、tは時間であり、およびTは、方形波の周期である。関数f(t)は、方形波信号370を表し、方形波の「負」の部分に−1の値を、および「正」の部分に+1の値を取る。関数f(t)は、デューティサイクルが変更されると、はっきりと変化する。
【0033】
第7の高調波を除外するための最適なデューティサイクルのために式1を解く(すなわちn=7に対してA
n=0と設定する):
これらの式では、T
1は、方形波が正から負へ符号を変更する時間であり、すなわちT
1/Tは、デューティサイクルを表す。この式には無数の解があるが、基本成分を保存するために方形波を50%のデューティサイクルの近くに維持したいため、T
1/Tが1/2である条件に最も近い解、すなわち:
を選択する。これは、42.9%のデューティサイクルに対応する。それゆえ、方形波のデューティサイクルの駆動信号において除外されるまたは著しく減衰される第7の高調波信号は、約42.9%の特定値に調整される。
【0034】
再び
図3Bを参照すると、符号380で示すPWM方形波信号の高調波を表すフーリエ成分380(n)の棒グラフも、表Iに参照符号で示され、一覧にされている。PWM方形波信号380は約43%のデューティサイクルを有し、これは、50%のデューティサイクルのPWM方形波信号370の相対振幅と比較して、基本周波数381の振幅を大きく変更することなく、高調波成分380(n)の相対振幅を変更する。第7の高調波成分387の振幅は、所望の通りごくわずかなレベルまで低減されたが、デューティサイクルの変化の結果第4の高調波成分384の振幅はゼロから増大し、およびその周波数は、83kHzでのアクチュエータ40の第2の曲げモード312の周波数に近い。しかしながら、第2の曲げモード共振312におけるアクチュエータ40のインピーダンスは、十分に高い(基本ブリージングモード314におけるインピーダンスとは異なる)ため、わずかなエネルギーしかこのアクチュエータモードに伝達されず、第4の高調波の存在が、アクチュエータ40の電力消費量に、その結果、ポンプ10の効率に、大きく影響を及ぼさない。第7の高調波成分387を除いて、
図3Bに示す他の高調波成分には問題がない。なぜなら、それら高調波成分は、
図3Aに示すアクチュエータ40の曲げまたはブリージングモードのいずれかと一致しないかまたは近いためである。
【0035】
43%のデューティサイクルにおける第7の高調波成分387の振幅は、ここでは無視できるほどに小さく、アクチュエータ40の基本ブリージングモード312の低インピーダンスの衝撃はごくわずかである。その結果、43%のデューティサイクルのPWM方形波信号380は、アクチュエータ40の基本ブリージングモード312を著しく励振しない、すなわち、ごくわずかなエネルギーしかこのモードに伝達されず、ポンプ10の効率は、アクチュエータ40への入力としてPWM方形波信号を使用することによって低下されない(not compromised)。
【0036】
図4Aは、方形波のデューティサイクルが変化する際の、基本周波数(「Sin x」)、第4の高調波周波数(「Sin 4x」)、および第7の高調波周波数(「Sin 7x」)の高調波振幅(A
n)のグラフを示す。
図4Bは、方形波のデューティサイクルが変化する際の、アクチュエータ40の対応する電力消費量(A
n2/Z(式中、Zは、その周波数でのアクチュエータのインピーダンスである)に比例する)を示す。より具体的には、それぞれPWM方形波信号370および380の基本周波数371および381は、
図3Bで上述したように、それらの第4および第7の高調波成分374、384および377、387の対応する振幅と共に、デューティサイクルに応じて示す。図から分かるように、43%のデューティサイクルを有するPWM方形波信号380の第7の高調波387の電圧振幅はゼロに等しい一方、基本成分381の電圧振幅は、PWM方形波信号370のデューティサイクルが50%であるとき、その値からわずかにしか減少しない。第4の高調波374が、50%のデューティサイクルを有するPWM方形波信号380には存在しないが、上述のように43%のデューティサイクルを有するPWM方形波信号380には存在することに留意されたい。しかしながら、第4の高調波384の電圧振幅の増加には問題がない。なぜなら、上述の通り、第2の共振モード312におけるアクチュエータ40の対応するインピーダンスが比較的高いためである。それゆえ、第4の高調波の電圧振幅を適用することによって、
図4Bに示すように、方形波のデューティサイクルが43%であるときに、アクチュエータ40における電力損484が非常にわずかとなる。第7の高調波387の電圧振幅は、43%のデューティサイクルを有するPWM方形波信号380から実質的に除外されており、基本的に、デューティサイクルが43%であるとき、
図4Bに示すアクチュエータ40におけるごくわずかな電力損487によって示されるように、アクチュエータ40の基本ブリージングモード312の低インピーダンスを無効にする。
【0037】
ここで
図5を参照すると、ポンプ10を駆動する駆動回路500が示されている。駆動回路500はマイクロコントローラ502を含んでもよく、マイクロコントローラは、当該技術分野で理解されているように、PWM信号とし得る駆動信号510を生成するように構成されている。マイクロコントローラ502は、マイクロコントローラ502の動作を制御するソフトウェア命令および/またはデータを記憶するメモリ504を備えて構成し得る。メモリ504は、周期レジスタ506およびデューティサイクルレジスタ508を含み得る。周期レジスタ506は、駆動信号510の周期を規定する値を記憶する記憶場所とし、およびデューティサイクルレジスタ508は、駆動信号510のデューティサイクルを規定する値を記憶する記憶場所とし得る。一実施形態では、周期レジスタ506およびデューティサイクルレジスタに記憶される値は、マイクロコントローラ502によるソフトウェアの実行前に決定され、かつユーザによってレジスタ506および508に記憶される。マイクロコントローラ502によって実行中のソフトウェア(図示せず)は、駆動信号510の周期およびデューティサイクルの確立に使用するために、レジスタ506および508に記憶されている値にアクセスし得る。マイクロコントローラ502は、アナログデジタルコントローラ(ADC)512をさらに含んでもよく、ADCはアナログ信号をデジタル信号に変換して、マイクロコントローラ502によって駆動信号510の生成、修正、または制御に使用されるように、構成されている。
【0038】
駆動回路500はバッテリー514をさらに含んでもよく、バッテリーは、駆動回路500中の電子部品に、電圧信号518によって電力を供給する。電流センサ516は、ポンプ10によって引き込まれる電流を感知するように構成し得る。昇圧コンバータ519は、電圧信号518を、アップコンバートされた電圧信号522までアップコンバート、増幅、または増加させるように構成し得る。Hブリッジ520は、昇圧コンバータ519およびマイクロコントローラ502と通信しており、およびポンプ10のアクチュエータに適用されるポンプ駆動信号524aおよび524b(まとめて524)によってポンプ10を駆動するように構成されている。Hブリッジ520は、当該技術分野で理解されているように標準のHブリッジとし得る。動作時、電流センサ516が、ADC512を経由してマイクロコントローラ502によって決定されるように、ポンプ10が電流を多く引き込みすぎていることを感知する場合、マイクロコントローラ502は、駆動信号510の電源を切り、それにより、ポンプ10または駆動回路500が過熱したりまたは損傷されたりしないようにする。そのような能力は、医学的応用において、例えば、患者を負傷させるまたは患者の処置が無効となる可能性を回避するために、有益とし得る。マイクロコントローラ502はまた、可聴音または可視光インジケータを発生させる警報信号を発生し得る。
【0039】
駆動回路500を別個の電子部品として示す。駆動回路500は、ASICまたは任意の他の集積回路として構成し得ることを理解されたい。駆動回路500はアナログ回路として構成され、かつ、アナログ正弦波駆動信号を使用し、それにより、高調波信号に関する問題を回避し得ることも理解されたい。
【0040】
ここで
図6A〜
図6Cを参照すると、方形波駆動信号610、630および650および対応するアクチュエータ応答信号620、640および660のグラフ600A〜Cが、約21kHzの基本周波数で50%、45%および43%のデューティサイクルに対してそれぞれ示されている。50%および45%のデューティサイクルの方形波駆動信号610および630は、それぞれ対応する電流信号620および640における高周波数成分から分かるように、アクチュエータ40の基本ブリージングモード313を励振するのに十分な第7の高調波の成分をそれぞれ含む。そのような信号は、約147kHzにおいてかなりのパワーがアクチュエータ40の基本ブリージングモード310に送られていることの証拠である。しかしながら、方形波駆動信号のデューティサイクルを、
図6Cに示す方形波駆動信号650に対して約43%に設定する場合、第7の高調波の内容物は効果的に抑制され、アクチュエータ40の基本ブリージングモード310へのエネルギー伝達は、電流信号620および640と比較して対応する電流信号660に高周波数成分がないことから明らかなように、著しく低下する。このように、ポンプの効率は効果的に維持される。
【0041】
アクチュエータ40のインピーダンス300および対応する共振モードは、直径約22mmのアクチュエータに基づき、圧電性円板20の厚さは約0.45mmであり、およびエンドプレート17の厚さは約0.9mmである。本出願の範囲内でアクチュエータ40の寸法および構造特性が異なる場合、本発明の原理を、依然として、基本周波数に基づいて方形波信号のデューティサイクルを調整することによって使用してもよく、アクチュエータの基本ブリージングモードは方形波信号の高調波成分のいずれによっても励振されないことを理解されたい。さらに広い意味では、本発明の原理を使用して、アクチュエータ40の構造およびポンプ10の性能を特徴づける共振モードに対する方形波信号の高調波成分の効果を減衰または除外し得る。これらの原理は、アクチュエータ40および対応する高調波を駆動するために選択された方形波信号の基本周波数にかかわらず、適用可能である。
【0042】
図7Aを参照すると、主開口部16の代替的な構成を備える
図1のポンプ10が示されている。より具体的には、主開口部16の弁46’が逆向きにされて、主開口部16を通って流体が空洞部11に引き込まれ、かつ矢印で示すように副開口部15を通って空洞部11から吐出され、それにより、主開口部16において吸引または減圧源をもたらす。本明細書では、用語「減圧」は、概して、ポンプ10が配置されている周囲圧力を下回る圧力に使用される。用語「真空」および「負圧」を使用して減圧を説明してもよいが、実際の減圧は、完全な真空に通常関連する減圧を著しく下回り得る。圧力は、ゲージ圧である場合「負」である、すなわち、圧力が、周囲の大気圧未満に減圧される。特に示さない限り、本明細書で述べる圧力の値はゲージ圧である。減圧の増大への言及は、一般に絶対圧が減少することを指す一方、減圧の低下は一般に絶対圧の増加を指す。
【0043】
図7Aは、
図7Aのポンプの概略的な断面図を示し、
図8は、
図1BBに示すようなポンプ内の流体の圧力振動のグラフを示す。弁46’(ならびに弁46)は、上述のように流体が一方向にのみ流れるようにする。弁46’は、逆止弁、または流体が一方向にのみ流れるようにする任意の他の弁とし得る。一部のタイプの弁には、開放位置と閉鎖位置との間で切り替わることによって流体の流れを調整し得るものがある。このように弁が、アクチュエータ40によって生成された高周波数で動作するためには、弁46および46’は、これらが圧力変動の時間スケールよりも著しく短い時間スケールで開閉できるように、応答時間が極めて早い必要がある。弁46および46’の一実施形態によれば、低慣性の、従って、弁構造にわたる相対圧力の変化に応答して迅速に移動できる、極めて軽量のフラップ弁を用いることによってこれを達成する。
【0044】
図9A〜Dを参照すると、説明に役立つ実施形態による、フラップ弁のような弁110が示されている。弁110は、実質的にシリンダー状壁112を含み、実質的にシリンダー状壁はリング状であり、かつ一方の端部が保持板114によって、および他方の端部が密封板116によって閉鎖されている。壁112、保持板114、および密封板116の内面は、弁110内に空洞部115を形成する。弁110は、保持板114と密封板116との間に配置されているが密封板116に隣接した実質的に円形のフラップ117をさらに含む。円形フラップ117は、代替的な実施形態では、下記で詳細に説明するように保持板114に隣接して配置してもよく、この意味では、フラップ117は、密封板116または保持板114のいずれか一方に対して「バイアス」されて配置されているとみなす。フラップ117の周辺部分は、密封板116とリング状の壁112との間に挟まれているので、フラップ117の動きは、フラップ117の面に実質的に垂直な平面内に保持される。そのような平面でのフラップ117の動きはまた、密封板116または壁112のいずれかに直接取り付けられているフラップ117の周辺部分によって、または代替的な実施形態では、リング状壁112にぴったり嵌っているフラップ117によって制限され得る。フラップ117の残りの部分は十分に可撓性があり、フラップ117の面に対して実質的に垂直な方向において可動であるため、フラップ117のいずれかの面に加えられる力が、フラップ117を密封板116と保持板114との間で動かす。
【0045】
保持板114および密封板116は双方とも、それぞれ孔118および120を有し、それら孔は、各板を通って延在する。フラップ117も、全体的に保持板114の孔118と位置合わせされた孔122を有していて、
図7Bおよび
図10Aに破線矢印124で示すように流体が流れ得る流路をもたらす。フラップ117の孔122はまた、保持板114の孔118と部分的に位置合わせされてもよく、すなわち、孔118と部分的にのみ重なりあってもよい。孔118、120、122を実質的に均一のサイズおよび形状であるものとして示すが、本発明の範囲を限定することなく、異なる直径または異なる形状としてもよい。本発明の一実施形態では、孔118および120は、
図9Dに実線の円および破線の円でそれぞれ示すように、板の面にわたって交互のパターンを形成する。他の実施形態では、孔118、120、122を、破線矢印124の個々の組によって示すような孔118、120、122の個々のペアリングの機能に対して、弁110の動作をもたらすことなく、異なるパターンに配置してもよい。孔118、120、122のパターンは、孔の数を増減するように設計して、弁110を通る流体の総流量を要求に応じて制御し得る。例えば、孔118、120、122の数は、弁110の流れ抵抗を下げて弁110の総流量を増大するために、増加させてもよい。
【0046】
フラップ117のバイアスに打ち勝つためにフラップ117のいずれの面にも力が加えられない場合、フラップ117が密封板116に隣接して配置され、その場合、密封板116の孔118からフラップの孔122がオフセットされている、すなわち密封板116の孔118と位置合わせされていないため、弁110は「常閉」位置にある。この「常閉」位置では、
図9Aおよび
図9Bに示すように、密封板116を通る流体の流れが実質的に遮断されるかまたはフラップ117の非穿孔部分によって被覆される。
図7Bおよび
図10Aに示すように、フラップ117のいずれかの側面に圧力が加えられてフラップ117のバイアスに打ち勝ち、かつフラップ117を密封板116から離れて保持板114の方へ動かすと、弁110は、ある期間、開放時間遅延(T
o)にわたって常閉位置から「開放」位置まで動き、破線矢印124で示す方向に流体が流れるようにする。
図10Bに示すように圧力の方向を変えると、フラップ117は、密封板116の方へ戻るように、常閉位置へ動かされる。そのとき、
図9Bおよび
図10Cに示すように、流体は、フラップ117が密封板116の孔120を密封するまで、破線矢印132で示す反対方向に短期間、閉鎖時間遅延(T
c)流れ、密封板116を通る流体の流れを実質的に遮断する。本発明の他の実施形態では、フラップ117は、保持板114に対してバイアスされてもよく、孔118、122が「常開」位置に位置合わせされる。この実施形態では、フラップ117に正圧をかけることが、フラップ117を「閉鎖」位置に動かすためには必須である。弁の動作に関連して本明細書で使用される用語「密封」および「遮断」は、弁の流れ抵抗が「開放」位置よりも「閉鎖」位置において大きくなるように、実質的な(しかし不十分な)密封または遮断が発生する場合を含むことを意図していることに留意されたい。
【0047】
弁110の動作は、弁110の両面間にわたる流体の差圧(ΔP)の方向の変化に応じる。
図10Bでは、差圧は、下向き矢印で示すように負の値(−ΔP)が指定されている。差圧が負の値(−ΔP)を有する場合、保持板114の外表面における流体圧力は、密封板116の外表面の流体圧力よりも大きい。この負の差圧(−ΔP)は、上述の通りフラップ117を十分な閉鎖位置にし、フラップ117は密封板116に押し付けられて密封板116の孔120を遮断し、それにより、流体が弁110を実質的に流れないようにする。弁110の両面間にわたる差圧が逆転して、
図10Aに上向き矢印で示すような正の差圧(+ΔP)となる場合、フラップ117は、密封板116から離れるように、保持板114に向かって、開放位置まで動かされる。差圧が正の値(+ΔP)を有する場合、密封板116の外表面における流体圧力は、保持板114の外表面における流体圧力よりも大きい。開放位置では、フラップ117の動きによって密封板116の孔120の閉鎖が解除されるので、破線矢印124で示すように、流体は、それら孔、およびフラップ117および保持板114の位置合わせされた孔122および118をそれぞれ流れることができる。
【0048】
弁110の両面間にわたる差圧が、
図10Bに下向き矢印で示すように負の差圧(−ΔP)に戻るように変化する場合、流体は、破線矢印132で示すように反対方向に弁110を通って流れ始め、それにより、フラップ117を、
図10Cに示すように閉鎖位置に向かって戻るようにする。
図10Bでは、フラップ117と密封板116との間の流体圧力は、フラップ117と保持板114との間の流体圧力よりも小さい。それゆえ、フラップ117は、矢印138で表される正味の力を受け、それにより、フラップ117が密封板116に向かって弁110を閉鎖することを加速させる。このように、差圧の変化によって、弁110の両面間にわたる差圧の方向(すなわち、正または負)に基づいて弁110を閉鎖位置と開放位置との間でサイクルさせる。弁110にわたって差圧が全くないときにフラップ117を保持板114に対して開放位置にバイアスできる、すなわち、弁110が「常開」位置になることを理解されたい。
【0049】
再度
図7Aを参照すると、弁110は、ポンプ10の主開口部46’内に配置されて、流体が主開口部46’を通って空洞部11に引き込まれ、かつ実線の矢印で示すように副開口部15を通って空洞部11から吐出され、それにより、ポンプ10の開口部46’に減圧源をもたらす。上向きの実線の矢印によって示すような主開口部46’を通る流体の流れは、これも上向きの破線矢印124で示すような弁110の孔118、120を通る流体の流れに対応する。上述の通り、弁110の動作は、負圧ポンプのこの実施形態では、弁110の保持板114の全表面にわたる流体の差圧(ΔP)の方向の変化に応じる。差圧(ΔP)は、保持板114の全表面にわたって実質的に均一であると仮定する。これは、保持板114の直径が空洞部115における圧力振動の波長に対して小さく、さらに、弁110が、中心圧力アンチノードの振幅が比較的一定である空洞部115の中心付近の主開口部46’に配置されているためである。
図7Bおよび
図10Aに示すように弁110の両面間にわたる差圧が正の差圧(+ΔP)となるように反転する場合、バイアスされたフラップ117が、密封板116から離れるように保持板114に向かって動き、開放位置になる。この位置では、フラップ117の動きによって密封板116の孔120の閉鎖が解除されるため、破線矢印124に示すように、流体は、それら孔を、および位置合わせされた保持板114の孔118およびフラップ117の孔122を流れることができる。差圧が変化して負の差圧(−ΔP)に戻ると、流体は反対方向に弁110を通って流れ始め(
図10B参照)、それによりフラップ117を閉鎖位置に戻されようにする(
図9B参照)。それゆえ、空洞部11における圧力振動が常閉位置と開放位置との間で弁110をサイクルさせると、ポンプ10は、弁110が開放位置にあるときに半サイクルごとに減圧をもたらす。
【0050】
差圧(ΔP)は、上述のように中心圧力アンチノード71に対応するため、保持板114の全表面にわたって実質的に均一であると仮定する。それゆえ、これは弁110の両面間にわたる圧力に空間的変動がないという良好な近似である。実際には、弁の両面間にわたる圧力の時間依存性は、近似的に正弦波とし得るものの、以下の分析では、
図11Aに示すように、正の差圧(+ΔP)の値と負の差圧(−ΔP)の値との間の差圧(ΔP)を、方形波の正圧期間(t
P+)および負圧期間(t
P−)のそれぞれにわたる方形波によって表すことができると仮定される。差圧(ΔP)が弁110を常閉位置と開放位置との間でサイクルさせる際、上述の通りおよび
図11Bに示す通り、ポンプ10は、弁110が開放時間遅延(T
o)および閉鎖時間遅延(T
c)に開放位置にあるときに、半サイクル毎に減圧をもたらす。弁110の両面間にわたる差圧が、弁110が閉鎖されて(
図9B参照)初めは負となり、そして逆転して正の差圧(+ΔP)となると、バイアスされたフラップ117は、開放時間遅延(T
o)後に密封板116から離れて保持板114の方へ開放位置まで動かされる(
図10A参照)。この位置では、フラップ117の動きが密封板116の孔120の閉鎖を解除するので、破線矢印124で示すように、流体は、それらの孔を、および位置合わせされた保持板114の孔118およびフラップ117の孔122を流れることができ、それにより、開放期間(t
o)中ポンプ10の主開口部46’の外側に減圧源をもたらす。弁110の両面間にわたる差圧が負の差圧(−ΔP)に戻ると、流体は、反対方向に弁110を通って流れ始め(
図10B参照)、これにより、
図10Cに示すように閉鎖時間遅延(T
c)後にフラップ117を閉鎖位置に戻す。弁110は半サイクルの残りの期間または閉鎖期間(t
c)の間は閉鎖したままである。
【0051】
保持板114および密封板116は、著しい機械的変形を伴わずに、それらが受ける流体圧力振動に耐えるほど十分に強度がある。保持板114および密封板116は、任意の好適な剛性材料、例えばガラス、ケイ素、セラミック、または金属から形成し得る。保持板114および密封板116の孔118、120は、化学エッチング、レーザー加工、機械的ドリル加工、粉末ブラスト、およびスタンピングを含め、任意の好適なプロセスから形成し得る。一実施形態では、保持板114および密封板116は、厚さ100〜200μmの鋼板から形成され、そこに、化学エッチングによって孔118、120が形成される。フラップ117は、任意の軽量の材料、例えば金属または高分子フィルムから形成し得る。一実施形態では、20kHz以上の流体圧力振動が弁110の保持板側または密封板側のいずれかの存在する場合、フラップ117は、厚さが1μm〜20μmの薄い高分子シートから形成し得る。例えば、フラップ117は、厚さが約3μmのポリエチレンテレフタレート(PET)または液晶高分子フィルムから形成し得る。