特許第6013194号(P6013194)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6013194
(24)【登録日】2016年9月30日
(45)【発行日】2016年10月25日
(54)【発明の名称】リン光発光体
(51)【国際特許分類】
   C07F 15/00 20060101AFI20161011BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20161011BHJP
   C09K 11/06 20060101ALN20161011BHJP
【FI】
   C07F15/00 ECSP
   H05B33/14 B
   !C09K11/06 660
【請求項の数】11
【全頁数】87
(21)【出願番号】特願2012-555090(P2012-555090)
(86)(22)【出願日】2011年2月23日
(65)【公表番号】特表2013-520508(P2013-520508A)
(43)【公表日】2013年6月6日
(86)【国際出願番号】US2011025807
(87)【国際公開番号】WO2011106344
(87)【国際公開日】20110901
【審査請求日】2013年8月23日
(31)【優先権主張番号】12/712,802
(32)【優先日】2010年2月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503055897
【氏名又は名称】ユニバーサル ディスプレイ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】チュアンジュン・シャ
(72)【発明者】
【氏名】ディネシュ・ラヤバラプ
(72)【発明者】
【氏名】ヨンガン・ウー
(72)【発明者】
【氏名】スマン・レイェク
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス・フィオルデリーソ
【審査官】 福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/097149(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/060779(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/107497(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/067746(WO,A1)
【文献】 特開2010−118381(JP,A)
【文献】 特開2010−135467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 15/00
C07D 409/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式を有する配位子Lを含む化合物。
【化1】
式中、
Aはイミダゾール環を表し、AはRと縮合してベンゾ[d]イミダゾール環を形成していてもよく;
Bはフェニル環を表し;
は、モノ又はジ置換を表し;
及びRは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表し;
、R、及びRは独立に、水素、アルキル、及びアリールから選択され;
がアルキルである場合には、Rは環Aと任意選択により縮合していてもよく;
及びRがアルキル又はアリールである場合には、それらはそれらが結合している環と任意選択により縮合していてもよく;
Xは、NR、O、及びSからなる群から選択され、ここでRはアルキル及びアリールからなる群から選択され
前記配位子LはIrに配位しており;
は、2つのアルキル置換を表す。
【請求項2】
ホモレプティックである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
ヘテロレプティックであり、且つ化合物中の配位子Lの全てが式Iを有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
ヘテロレプティックであり、且つ化合物中の配位子Lのうちの少なくとも1つが式Iを有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
が、3つ以上の炭素原子を有する2つのアルキル置換基である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
を含む環が、Aと結合している炭素原子のオルト位のうちの1つで置換されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
を含む環が、Aと結合している炭素原子のオルト位に配置されている2つの置換基を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
を含む環が、Aと結合している炭素原子のオルト位に配置されている1つの置換基を有し、且つAと結合している炭素原子の別のオルト位が、置換されたジベンゾ部分によって占められている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
以下のものからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【請求項10】
XがOである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
アノード;
カソード;
前記アノードとカソードの間に配置された有機層を含み、前記有機層が請求項1〜10のいずれか一項に記載の化合物を含む、有機発光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
特許請求の範囲に記載した発明は、共同の大学・企業研究契約に関わる1つ以上の以下の団体:ミシガン大学評議員会、プリンストン大学、サザン・カリフォルニア大学、及びユニバーサル・ディスプレイ・コーポレーションにより、1つ以上の団体によって、1つ以上の団体のために、及び/又は1つ以上の団体と関係して行われた。上記契約は、特許請求の範囲に記載された発明がなされた日及びそれ以前に発効しており、特許請求の範囲に記載された発明は、前記契約の範囲内で行われた活動の結果としてなされた。
【0002】
本発明は有機発光デバイス(OLED)に関する。より具体的には、本発明は、ジベンゾ縮合した5員環置換基をもつ配位子を含むリン光有機物質、及びそれらの化合物を含むデバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
有機物質を用いるオプトエレクトロニクスデバイスは、多くの理由によりますます望ましいものとなってきている。そのようなデバイスを作るために用いられる多くの物質はかなり安価であり、そのため有機オプトエレクトロニクスデバイスは、無機デバイスに対してコスト上の優位性について潜在力をもっている。加えて、有機物質固有の特性、例えばそれらの柔軟性は、それらを柔軟な基材上への製作などの特定用途に非常に適したものにしうる。有機オプトエレクトロニクスデバイスの例には、有機発光デバイス(OLED)、有機光トランジスタ、有機光電池、及び有機光検出器が含まれる。OLEDについては、有機物質は、従来の物質に対して性能上優位性をもちうる。例えば、有機発光層が発光する波長は、一般に、適切なドーパントで容易に調節することができる。
【0004】
OLEDは、そのデバイスを横切って電圧を印加した場合に光を発する薄い有機膜(有機フィルム)を用いる。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、照明、及びバックライトなどの用途で用いるためのますます興味ある技術となってきている。いくつかのOLEDの物質と構成が、米国特許第5,844,363号明細書、同6,303,238号明細書、及び同5,707,745号明細書に記載されており、これらの明細書はその全体を参照により本明細書に援用する。
【0005】
燐光発光分子の一つの用途はフルカラーディスプレイである。そのようなディスプレイのための工業規格は、「飽和」色といわれる特定の色を発光するように適合された画素(ピクセル)を要求している。特に、これらの規格は、飽和の赤、緑、及び青の画素を必要としている。色はCIE座標を用いて測定でき、CIE座標は当分野で周知である。
【0006】
緑色発光分子の一例は、Ir(ppy)と表されるトリス(2-フェニルピリジン)イリジウムであり、これは以下の式Iの構造を有する。
【化1】
【0007】
この式及び本明細書の後の図で、窒素から金属(ここではIr)への供与結合は直線で表す。
【0008】
本明細書で用いるように、「有機」の用語は、有機オプトエレクトロニクスデバイスを製作するために用いることができるポリマー物質並びに小分子有機物質を包含する。「小分子(small molecule)」とは、ポリマーではない任意の有機物質をいい、「小分子」は、実際は非常に大きくてもよい。小分子はいくつかの状況では繰り返し単位を含んでもよい。例えば、置換基として長鎖アルキル基を用いることは、分子を「小分子」の群から排除しない。小分子は、例えばポリマー主鎖上のペンダント基として、あるいは主鎖の一部として、ポリマー中に組み込まれてもよい。小分子は、コア残基上に作り上げられた一連の化学的殻からなるデンドリマーのコア残基として働くこともできる。デンドリマーのコア残基は、蛍光性又は燐光性小分子発光体であることができる。デンドリマーは「小分子」であることができ、OLEDの分野で現在用いられている全てのデンドリマーは小分子であると考えられる。
【0009】
本明細書で用いるように「トップ」は、基材から最も遠くを意味する一方で、「ボトム」は基材に最も近いことを意味する。第一の層が第二の層の「上に配置される」と記載した場合は、第一の層は基材から、より遠くに配置される。第一の層が第二の層と「接触している」と特定されていない限り、第一の層と第二の層との間に別な層があってよい。例えば、カソードとアノードとの間に様々な有機層があったとしても、カソードはアノードの「上に配置される」と記載できる。
【0010】
本明細書で用いるように、「溶液処理(加工)可能」とは、溶液もしくは懸濁液の形態で、液体媒体中に溶解され、分散され、又は液体媒体中で輸送され、及び/又は液体媒体から堆積されうることを意味する。
【0011】
配位子が発光物質の光活性特性に直接寄与していると考えられる場合は、その配位子は「光活性」ということができる。配位子が発光物質の光活性特性に寄与していないと考えられる場合は、配位子は「補助」ということができるが、補助配位子は光活性配位子の特性を変えうる。
【0012】
本明細書で用いるように、かつ当業者によって一般に理解されているように、第一の「最高被占分子軌道」(HOMO)又は「最低空分子軌道」(LUMO)のエネルギー準位は、その第一のエネルギー準位が真空のエネルギー準位により近い場合には、第二のHOMO又はLUMOよりも「大きい」あるいは「高い」。イオン化ポテンシャル(IP)は真空準位に対して負のエネルギーとして測定されるので、より高いHOMOエネルギー準位は、より小さな絶対値をもつIPに対応する(より小さな負のIP)。同様に、より高いLUMOエネルギー準位は、より小さな絶対値をもつ電子親和力(EA)に対応する(より小さな負のEA)。上(トップ)に真空準位をもつ従来のエネルギー準位図の上では、物質のLUMOエネルギー準位はその同じ物質のHOMOエネルギー準位よりも高い。「より高い」HOMO又はLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMO又はLUMOエネルギー準位よりも、そのような図のトップのより近くに現れる。
【0013】
本明細書で用いるように、また当業者によって一般に理解されるように、第一の仕事関数は、その第一の仕事関数がより高い絶対値を有する場合には、第二の仕事関数よりも「大きい」あるいは「高い」。仕事関数は通常、真空準位に対して負の値として測定されるので、このことは「より高い」仕事関数は、より負であることを意味する。上(トップ)に真空準位をもつ従来のエネルギー準位図の上では、「より高い」仕事関数は真空準位から下向きの方向へさらに離れて図示される。したがって、HOMO及びLUMOエネルギー準位の定義は、仕事関数とは異なる慣例に従う。
【0014】
OLEDについてのさらなる詳細及び上述した定義は、米国特許第7,279,704号明細書に見ることができ、その全体を参照により本明細書に援用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第5,844,363号明細書
【特許文献2】米国特許第6,303,238号明細書
【特許文献3】米国特許第5,707,745号明細書
【特許文献4】米国特許第7,279,704号明細書
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Baldoら,“Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices”, Nature, vol. 395, 151-154, 1998
【非特許文献2】Baldoら,“Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence”, Appl. Phys. Lett., vol. 75, No. 3, 4-6 (1999)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本明細書で提供する化合物は、下記式:
【化2】
を有する配位子Lを含む。
【0018】
A及びBは独立に、5員又は6員の炭素環又はヘテロ環である。好ましくは、Bはフェニルである。R、R、R、及びRは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表す。R、R、R、及びRは独立に、水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリール、及びヘテロアリールから選択される。R、R、R、及びRは任意選択により縮合していてもよい。Xは、CRR′、NR、O、及びSからなる群から選択される。R及びR′は独立に、アルキル及びアリールからなる群から選択される。配位子Lは、40より大きな原子番号を有する金属Mに配位している。好ましくは、MはIrである。
【0019】
一つの側面では、上記化合物はホモレプティックである。ホモレプティック化合物の例には、化合物1〜72及び化合物83〜114が含まれるがこれらに限定されない。
【0020】
別の側面では、上記化合物はヘテロレプティックであり、化合物中の配位子Lの全てが式Iを有する。なお別の側面では、上記化合物はヘテロレプティックであり、化合物中の配位子Lのうち少なくとも1つが式Iを有する。
【0021】
一つの側面では、Rは2つのアルキル置換基である。別の側面では、Rは3つ以上の炭素原子を有する2つのアルキル置換基である。
【0022】
を含む環は、Aに結合した炭素原子のオルト位でさらに置換されていてもよい。一つの側面では、Rを含む環は、Aに結合した炭素原子のオルト位のうちの1つで置換されている。別の側面では、Rを含む環は、Aに結合した炭素原子のオルト位に配置された2つの置換基を有する。さらなる側面では、Rを含む環は、Aに結合した炭素原子のオルト位に配置された1つの置換基を有し、且つAに結合した炭素原子の別のオルト位は、置換されたジベンゾ部分(残基)によって占められている。
【0023】
一つの側面では、Rは水素である。
【0024】
一つの側面では、上記化合物は、化合物1〜化合物114からなる群から選択される。
【0025】
一つの側面では、RはAに縮合している。好ましくは、Rはアリール又はヘテロアリールである。より好ましくは、Rはイミダゾールである。
【0026】
ジベンゾ置換されたベンゾイミダゾール配位子を含む化合物には、化合物37〜化合物72からなる群から選択される化合物が含まれる。
【0027】
一つの側面では、上記化合物は、XがOである配位子Lを含む。ジベンゾフラン配位子を含む化合物には、化合物1〜化合物48からなる群から選択される化合物が含まれる。
【0028】
一つの側面では、上記化合物は、XがSである配位子Lを含む。ジベンゾチオフェン配位子を含む化合物には、化合物13〜化合物60からなる群から選択される化合物が含まれる。
【0029】
一つの側面では、上記化合物は、XがNRである配位子Lを含む。カルバゾール配位子を含む化合物には、化合物25〜化合物72からなる群から選択される化合物が含まれる。
【0030】
有機発光デバイスを含む第一のデバイスも提供する。この有機発光デバイスは、さらに、アノード、カソード、及びそのアノードとカソードの間に配置された有機層を含み、その有機層は、上で述べた式Iを有する配位子Lを含む化合物を含む。式Iを有する配位子Lを含む化合物について好ましいと記載した置換基についての選択は、式Iを有する配位子Lを含む化合物を含むデバイスにおいて用いるためにも好ましい。これらの選択には、B、M、R、R、及びXについて記載したものが含まれる。
【0031】
A及びBはそれぞれ独立に、5員又は6員の炭素環又はヘテロ環である。好ましくは、Bはフェニルである。R、R、R、及びRは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表す。R、R、R、及びRは独立に、水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリール、及びヘテロアリールから選択される。R、R、R、及びRは任意選択により縮合していてもよい。Xは、CRR′、NR、O、及びSからなる群から選択される。R及びR′は独立に、アルキル及びアリールからなる群から選択される。配位子Lは、40より大きな原子番号を有する金属Mに配位している。好ましくは、MはIrである。
【0032】
一つの側面では、第一のデバイスは消費者製品である。一つの特定の側面では、第一のデバイスは有機発光デバイスである。別の特定の側面では、第一のデバイスはディスプレイである。
【0033】
一つの側面では、上記化合物はホモレプティックである。別の側面では、上記化合物はヘテロレプティックであり、その化合物中の全ての配位子Lが式Iを有する。なお別の側面では、上記化合物はヘテロレプティックであり、且つその化合物中の配位子Lのうち少なくとも1つが式Iを有する。
【0034】
一つの側面では、Rは2つのアルキル置換基である。別の側面では、Rは3つ以上の炭素原子を有する2つのアルキル置換基である。
【0035】
一つの側面では、Rを含む環は、Aに結合した炭素原子の両方のオルト位で置換されている。
【0036】
一つの側面では、Rは水素である。
【0037】
特定のデバイスを提供し、そのデバイスは、化合物1〜化合物114からなる群から選択される化合物を含む。
【0038】
さらに、デバイスを提供し、そのデバイスにおいては有機層が発光層であり、且つ式Iを有する配位子Lを含む化合物が発光ドーパントである。そのうえさらに、有機層はホストを含む。好ましくは、ホストは下記式:
【化3】
を有する。
、R、R、R、R、及びRは独立に、水素、アルキル、及びアリールからなる群から選択される。
【0039】
最も好ましくは、ホストはH1(後述)である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は有機発光デバイスを示す。
図2図2は、別個の電子輸送層をもたない倒置型有機発光デバイスを示す。
図3図3は、ジベンゾ縮合した5員環置換基をもつ配位子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
[詳細な説明]
一般に、OLEDは、アノードとカソードとの間に配置され且つそれらと電気的に接続された少なくとも1つの有機層を含む。電流が流された場合、有機層(1又は複数)にアノードは正孔を注入し、カソードは電子を注入する。注入された正孔と電子はそれぞれ反対に帯電した電極に向かって移動する。電子と正孔が同じ分子上に局在する場合、励起エネルギー状態を有する局在化された電子−正孔対である「励起子」が形成される。励起子が発光機構によって緩和するときに光が発せられる。いくつかの場合には、励起子はエキシマー又はエキシプレックス上に局在化されうる。非放射機構、例えば、熱緩和も起こりうるが、通常は好ましくないと考えられる。
【0042】
初期のOLEDは、一重項状態から光を発する(「蛍光」)発光性分子を用いており、例えば、米国特許第4,769,292号明細書(この全体を参照により援用する)に記載されているとおりである。蛍光発光は、一般に、10ナノ秒よりも短いタイムフレームで起こる。
【0043】
より最近、三重項状態から光を発する(「燐光」)発光物質を有するOLEDが実証されている。Baldoら,“Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices”, Nature, vol. 395, 151-154, 1998 (“Baldo-I”);
及び、Baldoら,“Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence”, Appl. Phys. Lett., vol. 75, No. 3, 4-6 (1999) (“Baldo-II”)、これらを参照により全体を援用する。燐光は、米国特許第7,279,704号明細書の第5〜6欄に、より詳細に記載されており、これを参照により援用する。
【0044】
図1は有機発光デバイス100を示している。この図は、必ずしも一定の縮尺で描かれていない。デバイス100は、基板110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子阻止層130、発光層135、正孔阻止層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、およびカソード160を含み得る。カソード160は、第一導電層162および第二導電層164を有する複合カソードである。デバイス100は、記載した層を順次、堆積させることによって作製できる。これらの様々な層の特性及び機能、並びに例示物質は、米国特許第7,279,704号明細書の第6〜10欄により詳細に記載されており、これを参照により援用する。
【0045】
これらの層のそれぞれについてのより多くの例が得られる。例えば、可撓性且つ透明な基材−アノードの組み合わせが米国特許第5,844,363号明細書に開示されており、参照により全体を援用する。p型ドープ正孔輸送層の例は、50:1のモル比で、F−TCNQでドープしたm−MTDATAであり、これは米国特許出願公開第2003/0230980号公報に開示されているとおりであり、その全体を参照により援用する。発光物質及びホスト物質の例は、Thompsonらの米国特許第6,303,238号明細書に開示されており、その全体を参照により援用する。n型ドープ電子輸送層の例は、1:1のモル比でLiでドープされたBPhenであり、これは米国特許出願公開第2003/0230980号公報に開示されているとおりであり、その全体を参照により援用する。米国特許第5,703,436号明細書及び同5,707,745号明細書(これらはその全体を参照により援用する)は、上に重ねられた透明な電気導電性のスパッタリングによって堆積されたITO層を有するMg:Agなどの金属の薄層を有する複合カソードを含めたカソードの例を開示している。阻止層の理論と使用は、米国特許第6,097,147号明細書及び米国特許出願公開第2003/0230980号公報に、より詳細に記載されており、その全体を参照により援用する。注入層の例は、米国特許出願公開第2004/0174116号公報に提供されており、その全体を参照により援用する。保護層の記載は米国特許出願公開第2004/0174116号公報にみられ、その全体を参照により援用する。
【0046】
図2は倒置型(inverted)OLED200を示している。このデバイスは、基板210、カソード215、発光層220、正孔輸送層225、およびアノード230を含む。デバイス200は記載した層を順に堆積させることによって製造できる。最も一般的なOLEDの構成はアノードの上方に配置されたカソードを有し、デバイス200はアノード230の下方に配置されたカソード215を有するので、デバイス200を「倒置型」OLEDとよぶことができる。デバイス100に関して記載したものと同様の物質を、デバイス200の対応する層に使用できる。図2は、デバイス100の構造からどのようにいくつかの層を省けるかの1つの例を提供している。
【0047】
図1および2に例示されている簡単な層状構造は非限定的な例として与えられており、本発明の実施形態は多様なその他の構造と関連して使用できることが理解される。記載されている具体的な物質および構造は事実上例示であり、その他の物質および構造も使用できる。設計、性能、およびコスト要因に基づいて、実用的なOLEDは様々なやり方で上記の記載された様々な層を組み合わせることによって実現でき、あるいは、いくつかの層は完全に省くことができる。具体的に記載されていない他の層を含むこともできる。具体的に記載したもの以外の物質を用いてもよい。本明細書に記載されている例の多くは単一の物質を含むものとして様々な層を記載しているが、物質の組合せ(例えばホストおよびドーパントの混合物、または、より一般的には混合物)を用いてもよいことが理解される。また、層は様々な副層(sublayer)を有してもよい。本明細書において様々な層に与えられている名称は、厳格に限定することを意図するものではない。例えば、デバイス200において、正孔輸送層225は正孔を輸送し且つ発光層220に正孔を注入するので、正孔輸送層として、あるいは正孔注入層として説明されうる。一実施形態において、OLEDは、カソードとアノードとの間に配置された「有機層」を有するものとして説明できる。この有機層は単一の層を含むか、または、例えば図1および2に関連して記載したように様々な有機物質の複数の層をさらに含むことができる。
【0048】
具体的には説明していない構造および物質、例えばFriendらの米国特許第5,247,190号(これはその全体を参照により援用する)に開示されているようなポリマー物質で構成されるOLED(PLED)、も使用することができる。さらなる例として、単一の有機層を有するOLEDを使用できる。OLEDは、例えば、Forrestらの米国特許第5,707,745号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているように積み重ねられてもよい。OLEDの構造は、図1および2に示されている簡単な層状構造から逸脱していてもよい。例えば、基板は、光取出し(out-coupling)を向上させるために、Forrestらの米国特許第6,091,195号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているメサ構造、および/またはBulovicらの米国特許第5,834,893号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているピット構造などの、角度の付いた反射表面を含みうる。
【0049】
特に断らないかぎり、様々な実施形態の層のいずれも、何らかの適切な方法によって堆積されうる。有機層については、好ましい方法には、熱蒸着(thermal evaporation)、インクジェット(例えば、米国特許第6,013,982号および米国特許第6,087,196号(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、有機気相成長(organic vapor phase deposition、OVPD)(例えば、Forrestらの米国特許第6,337,102号(その全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびに有機気相ジェットプリンティング(organic vapor jet printing、OVJP)による堆積(例えば、米国特許出願第10/233,470号(これはその全体を参照により援用する)に記載されている)が含まれる。他の適切な堆積方法には、スピンコーティングおよびその他の溶液に基づく方法が含まれる。溶液に基づく方法は、好ましくは、窒素または不活性雰囲気中で実施される。その他の層については、好ましい方法には熱蒸着が含まれる。好ましいパターニング方法には、マスクを通しての蒸着、圧接(cold welding)(例えば、米国特許第6,294,398号および米国特許第6,468,819号(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびにインクジェットおよびOVJDなどの堆積方法のいくつかに関連するパターニングが含まれる。その他の方法も用いることができる。堆積される物質は、それらを特定の堆積方法に適合させるために改変されてもよい。例えば、分枝した又は分枝していない、好ましくは少なくとも3個の炭素を含むアルキルおよびアリール基などの置換基が、溶液加工性を高めるために、小分子に用いることができる。20個又はそれより多い炭素を有する置換基を用いてもよく、3〜20炭素が好ましい範囲である。非対称構造を有する物質は対称構造を有するものよりも良好な溶液加工性を有しうるが、これは、非対称物質はより小さな再結晶化傾向を有しうるからである。デンドリマー置換基は、小分子が溶液加工を受ける能力を高めるために用いることができる。
【0050】
本発明の実施形態により製造されたデバイスは多様な消費者製品に組み込むことができ、これらの製品には、フラットパネルディスプレイ、コンピュータのモニタ、テレビ、広告板、室内もしくは屋外の照明灯および/または信号灯、ヘッドアップディスプレイ、完全に透明な(fully transparent)ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンタ、電話機、携帯電話、携帯情報端末(personal digital assistant、PDA)、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダ、ビューファインダー、マイクロディスプレイ、乗り物、大面積壁面(large area wall)、映画館またはスタジアムのスクリーン、あるいは標識が含まれる。パッシブマトリクスおよびアクティブマトリクスを含めて、様々な制御機構を用いて、本発明にしたがって製造されたデバイスを制御できる。デバイスの多くは、18℃から30℃、より好ましくは室温(20〜25℃)などの、人にとって快適な温度範囲において使用することが意図されている。
【0051】
本明細書に記載した物質及び構造は、OLED以外のデバイスにおける用途を有しうる。例えば、その他のオプトエレクトロニクスデバイス、例えば、有機太陽電池及び有機光検出器は、これらの物質及び構造を用いることができる。より一般には、有機デバイス、例えば、有機トランジスタは、これらの物質及び構造を用いることができる。
【0052】
ハロ、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロ環基、アリール、芳香族基、及びヘテロアリールの用語は、当分野で公知であり、米国特許第7,279,704号明細書の第31〜32欄で定義されており、これを参照により援用する。
【0053】
[発明の説明]
ジベンゾ縮合された5員環置換基(ジベンゾ縮合5員環置換基)を有する配位子を含む新規な化合物を提供する(図3に示す)。特に、その配位子上のジベンゾ縮合5員環置換基には、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、カルバゾール、及びフルオレン配位子が含まれる。ジベンゾ縮合5員環置換基は、その配位子のシクロメタル化している部分についての面より外にねじれているか又は最小限ねじれている。これらの化合物は、特に有利な性質を示すことができ、且つ有機発光デバイスに有利に用いることができる。
【0054】
2つの芳香族炭素環及び/又はヘテロ環が結合されている場合には、その2つの環は互いに対して平面から外にねじれている(あるいは、ひねられている(twist))ことができる。例えば、式Iは、2つの環である環Y及び環Zを含み、それらが互いに対して平面から外へねじれていることができる構造を示している。
【化4】
【0055】
その二面角(dihedral angle)は小さくてよく、例えば約0°から約40°であることができる。例えば、ビフェニルは、互いに結合した2つのフェニル環を有し、その二面角は約40°である。前の例では、環Y及び環Zの1つ又は両方が5員環である場合、あるいはX〜Xのうち1つ以上がNであってC−Hでない場合には、その二面角は約40°又はそれ未満になりうる。この二面角は、その2つの芳香族環の間の共役に対して顕著な影響を及ぼす。ビフェニルの2つの環は、互いに対して完全に共役していると考えられる。本明細書で用いるとき、「最小限ねじれている」とは、0°〜40°の間の二面角として定義され、「ねじれている」とは、二面角が41°〜90°の間であると定義される。
【0056】
ねじれたアリール置換基をもつ有機金属化合物は、文献に報告されている(米国特許出願公開第2007/0088167号公報及び同2006/0251923号公報を参照されたい)。しかし、本明細書で提供する化合物は新規な構造を含み、且つ向上した特性を示す。本明細書中の化合物は、ジベンゾ縮合5員環置換基をもつ配位子を含み、そのジベンゾ縮合5員環配位子は、環Aの平面に対してねじれているか又は最小限ねじれていることができる。このジベンゾ縮合5員環置換基は、そのジベンゾ縮合5員環置換基とその配位子の残りの部分、すなわち環Aとの間の結合位置に対するオルト位のうち1つ以上における嵩高い置換基の付加によって、環Aに対して平面から外へねじれていることができる。1つのオルト位における嵩高い置換基の付加は、ジベンゾ縮合5員環置換基をいくらかねじることができ、且つ、環Aとジベンゾ縮合5員環置換基との間の共役を小さくすることができる。両方のオルト位での嵩高い置換基は、共役を完全に乱させるだろう(すなわち、90°に近い二面角)。
【0057】
ねじれたジベンゾ縮合5員環置換基をもつ配位子を含む化合物は、向上した特性を有しうる。理論に縛られないが、オルト置換基の嵩高さが、ジベンゾ縮合5員環置換基を平面から外へねじり、共役を乱させることができると考えられる。特に、フェニルイミダゾールをもつ化合物は酸化を受けやすい。このオルト置換基によってもたらされる立体効果が、酸素による攻撃から環Aを守り、それがその化合物の安定性を高めることができると考えられる。また、このオルト置換基の嵩高さは、化合物の積み重なり(スタッキング)を小さくし、それによって量子収率を高める。したがって、ねじれたジベンゾ縮合5員環で置換された配位子は、デバイス効率及びデバイス寿命を向上させることができる。
【0058】
LUMOは、上記化合物の配位子上のジベンゾ縮合5員環置換基、すなわちC環上に局在すると考えられる。ホスト中のジベンゾフラン及びジベンゾチオフェン部分は、電子を安定化させることができる。C環の共役を大きくすることが、デバイス安定性を向上させることができると考えられる。本明細書で提供した化合物はLUMOの位置としてジベンゾ縮合5員環を有し、それによってこの化合物はより良いデバイス安定性をもたらすことができる。特に、環Cとしてジベンゾフラン及び/又はジベンゾチオフェンを含む化合物は、より安定化されたLUMOと向上したデバイス安定性を有しうる。例えば、化合物1はジベンゾフラン部分を含み、E1はフェニルを含んでいる。化合物1は、E1と比較して、デバイスの向上された安定性を示した。
【0059】
さらに、上記化合物は有利な特性を備えているとともに、望ましい発光スペクトルを保っている。例えば、化合物1の色は、E1と比べてわずかにシフトしているに過ぎない。
【0060】
さらに、提供した化合物は、より短い励起状態の寿命を有し、且つこれまでに報告された化合物よりも高い放射速度(radiative rate)を有する。これらの化合物の短くなった遷移寿命は、向上した光物理特性をもたらしうる。特に、これらの化合物は、励起状態においてより短い時間しか費やさず、それによって光化学反応又は消光が起こる可能性を低くしうる。例えば、提供した化合物の測定された遷移寿命は、これまでに報告された化合物のものよりも短い(表4を参照されたい)。したがって、これらの化合物は、向上した安定性をもつデバイスを提供しうる。
【0061】
ジベンゾ縮合5員環置換基をもつ配位子を含む新規な化合物を本明細書において提供する。これらの化合物は、OLEDに有利に用いることができる新しいタイプの材料をもたらす。
【0062】
本明細書において提供する化合物は、下記式:
【化5】
を有する配位子Lを含む。
【0063】
A及びBは独立に、5員又は6員の炭素環又はヘテロ環である。好ましくは、Bはフェニルである。R、R、R、及びRは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表す。R、R、R、及びRは独立に、水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリール、及びヘテロアリールから選択される。R、R、R、及びRは任意選択により縮合していてもよい。Xは、CRR′、NR、O、及びSからなる群から選択される。R及びR′は独立に、アルキル及びアリールからなる群から選択される。配位子Lは、40より大きな原子番号を有する金属Mに配位している。好ましくは、MはIrである。
【0064】
一つの側面では、上記化合物はホモレプティックである。ホモレプティック化合物はいくつかの有利な特性、例えば、直接的な合成及び精製並びに予測可能な光物性を有しうる。特に、ホモレプティック化合物はより容易に合成し且つ精製することができ、なぜなら、その錯体中の全ての配位子が同じだからである。ホモレプティック化合物の例には、化合物1〜72及び化合物83〜114が含まれるがこれらに限定されない。
【0065】
本願明細書において提供する化合物はヘテロレプティックであることもできる。ヘテロレプティック化合物はいくつかの有利な特性を有することができ、それには、その化合物の特性を変えることができることが含まれる。特に、ヘテロレプティック化合物は、非常に調節可能なリン光発光物質をもたらし、なぜなら、その錯体は異なるHOMO/LUMO準位をもつ異なる配位子を含むことができるからである。さらに、ヘテロレプティック化合物は、より低い昇華温度を有することができる。別の側面では、上記化合物はヘテロレプティックであり、化合物中の配位子Lの全てが式Iを有する。これらの化合物の例には、化合物81及び82が含まれるがこれらに限定されない。なお別の側面では、上記化合物はヘテロレプティックであり、その化合物中の配位子Lのうち少なくとも1つが式Iを有する。これらの化合物の例には、化合物73〜82が含まれるがこれらに限定されない。
【0066】
一つの側面では、Rは2つのアルキル置換基である。別の側面では、Rは3つ以上の炭素原子を有する2つのアルキル置換基である。3つ以上の炭素原子を有するアルキル置換基には、3つより多い炭素原子を有する直鎖アルキル(例えば、ブチル)、3つより多い炭素原子を有する分岐アルキル(例えば、イソブチル)、及び3つより多い炭素原子を有するシクロアルカン類(例えば、シクロへキシル)が含まれうる。Rが3つ以上の炭素原子を有する2つのアルキル置換基である化合物の例には、化合物1〜化合物82が含まれるがこれらに限定されない。
【0067】
を含む環は、Aに結合した炭素原子のオルト位でさらに置換されていてもよい。一つの側面では、Rを含む環は、Aに結合した炭素原子のオルト位のうちの1つで置換されている。別の側面では、Rを含む環は、Aに結合した炭素原子のオルト位に配置された2つの置換基を有する。これらの化合物には、例えば、化合物1、2、及び4〜6が含まれうる。さらなる側面では、Rを含む環は、Aに結合した炭素原子のオルト位に配置された1つの置換基を有し、且つAに結合した炭素原子の別のオルト位は、置換されたジベンゾ基によって占められている。これらの化合物には、例えば、化合物3、7、及び11が含まれうる。
【0068】
一つの側面では、Rは水素である。そのような化合物のジベンゾ縮合5員環置換基は、A環、すなわちイミダゾールに対して平面の外に最小限ねじれている。最小限ねじれたジベンゾ縮合5員環で置換された配位子を含む化合物の例には、化合物83〜114が含まれるがこれらに限定されない。
【0069】
一つの側面では、上記化合物は、以下のものからなる群から選択される。
【0070】
【化6】
【0071】
【化7】
【0072】
【化8】
【0073】
【化9】
【0074】
【化10】
【0075】
【化11】
【0076】
【化12】
【0077】
【化13】
【0078】
【化14】
【0079】
【化15】
【0080】
【化16】
【0081】
一つの側面では、RはAに縮合している。好ましくは、Rはアリール又はヘテロアリールである。より好ましくは、Rはイミダゾールである。ジベンゾ縮合5員環で置換されたベンゾイミダゾール配位子を含む化合物は、特に望ましい特性、例えば、向上した量子効率及び安定性を有しうる。
【0082】
ジベンゾ縮合5員環で置換されたベンゾイミダゾール配位子を含む化合物には、以下のものからなる群から選択される化合物が含まれる。
【0083】
【化17】
【0084】
【化18】
【0085】
【化19】
【0086】
【化20】
【0087】
一つの側面では、上記化合物は、XがOである配位子Lを含む。ジベンゾフラン配位子を含む化合物には、以下のものからなる群から選択される化合物が含まれる。
【0088】
【化21】
【0089】
【化22】
【0090】
【化23】
【0091】
一つの側面では、上記化合物は、XがSである配位子Lを含む。ジベンゾチオフェン配位子を含む化合物には、以下のものからなる群から選択される化合物が含まれる。
【0092】
【化24】
【0093】
【化25】
【0094】
【化26】
【0095】
一つの側面では、上記化合物は、XがNRである配位子Lを含む。カルバゾール配位子を含む化合物には、以下のものからなる群から選択される化合物が含まれる。
【0096】
【化27】
【0097】
【化28】
【0098】
【化29】
【0099】
有機発光デバイスを含む第一のデバイスを提供する。この有機発光デバイスは、さらに、アノード、カソード、及びそのアノードとカソードの間に配置された有機層を含み、その有機層は、上で述べたように、式Iを有する配位子Lを含む化合物を含む。式Iを有する配位子Lを含む化合物について好ましいと記載した置換基についての選択は、式Iを有する配位子Lを含む化合物を含むデバイスにおいて用いるためにも好ましい。これらの選択には、B、M、R、R、及びXについて記載したものが含まれる。
【0100】
A及びBはそれぞれ独立に、5員又は6員の炭素環又はヘテロ環である。好ましくは、Bはフェニルである。R、R、R、及びRは、モノ、ジ、トリ、又はテトラ置換を表す。R、R、R、及びRは独立に、水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アミノ、アルケニル、アルキニル、アリール、及びヘテロアリールから選択される。R、R、R、及びRは任意選択により縮合していてもよい。Xは、CRR′、NR、O、及びSからなる群から選択される。R及びR′は独立に、アルキル及びアリールからなる群から選択される。配位子Lは、40より大きな原子番号を有する金属Mに配位している。好ましくは、MはIrである。
【0101】
一つの側面では、第一のデバイスは消費者製品である。一つの特定の側面では、第一のデバイスは有機発光デバイスである。別の特定の側面では、第一のデバイスはディスプレイである。
【0102】
一つの側面では、上記化合物はホモレプティックである。上で論じたように、ホモレプティック化合物は多くの望ましい特性を有することができる。ホモレプティック化合物の例には、化合物1〜72及び化合物83〜114が含まれるがこれらに限定されない。別の側面では、上記化合物はヘテロレプティックであり、その化合物中の全ての配位子Lが式Iを有する。なお別の側面では、上記化合物はヘテロレプティックであり、且つその化合物中の配位子Lのうち少なくとも1つが式Iを有する。これらの化合物の例には、化合物73〜82が含まれるがこれらに限定されない。先に論じたように、ヘテロレプティック化合物を有利に用いることができる。
【0103】
一つの側面では、Rは2つのアルキル置換基である。別の側面では、Rは3つ以上の炭素原子を有する2つのアルキル置換基である。
【0104】
を含む環は、Aに結合した炭素原子のオルト位にさらなる置換基をもっていてもよい。一つの側面では、Rを含む環は、Aに結合した炭素原子のオルト位のうち1つで置換されている。別の側面では、Rを含む環は、Aに結合した炭素原子のオルト位に配置された2つの置換基を有する。これらの化合物には、例えば、化合物1、2、及び4〜6が含まれうる。さらなる側面では、Rを含む環は、Aに結合した炭素原子のオルト位に配置された1つの置換基を有し、Aに結合した炭素原子の別のオルト位はその置換されたジベンゾ部分(残基)によって占められている。これらの化合物には、例えば、化合物3、7、及び11が含まれうる。
【0105】
一つの側面では、Rは水素である。
【0106】
特定のデバイスを提供し、そのデバイスは、化合物1〜化合物114からなる群から選択される化合物を含む。
【0107】
さらに、デバイスを提供し、そのデバイスにおいては有機層が発光層であり、且つ式Iを有する配位子Lを含む化合物が発光ドーパントである。そのうえさらに、有機層はホストを含む。好ましくは、ホストは下記式:
【化30】
を有する。
、R、R、R、R、及びRは独立に、水素、アルキル、及びアリールからなる群から選択される。
【0108】
最も好ましくは、ホストは:
【化31】
である。
【0109】
有機発光デバイス中の具体的な層に有用として本明細書に記載した物質は、そのデバイス中に存在するその他の広範囲にわたる物質と組み合わせて用いることができる。例えば、本明細書に開示した発光ドーパントは、存在してもよい広い範囲のホスト、輸送層、阻止層、注入層、電極、及びその他の層と組み合わせて用いることができる。以下に記載乃至言及した物質は、本明細書に記載した化合物と組み合わせて有用でありうる物質の非制限的な例であり、当業者は組み合わせて有用でありうるその他の物質を特定するために文献を容易に参考にすることができる。
【0110】
本明細書に開示した物質に加えて、及び/又はそれと組み合わせて、多くの正孔注入物質、正孔輸送物質、ホスト物質、ドーパント物質、励起子/正孔阻止層物質、電子輸送及び電子注入物質をOLEDに用いてもよい。本明細書に開示した物質と組み合わせてOLEDに用いてもよい物質の非限定的な例を、以下の表1に列挙している。表1は、非限定的な物質群、各群についての錯体の非限定的な例、及びその物質を開示している参考文献を列挙している。
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】
【表3】
【0114】
【表4】
【0115】
【表5】
【0116】
【表6】
【0117】
【表7】
【0118】
【表8】
【0119】
【表9】
【0120】
【表10】
【0121】
【表11】
【0122】
【表12】
【0123】
【表13】
【0124】
【表14】
【0125】
【表15】
【0126】
【表16】
【0127】
【表17】
【0128】
【表18】
【0129】
【表19】
【0130】
【表20】
【0131】
【表21】
【0132】
【表22】
【0133】
【表23】
【実施例】
【0134】
[化合物例]
上記化合物いくつかを以下のように合成した。
【0135】
例1.化合物1の合成
【化32】
【0136】
3−ニトロジベンゾフランの合成
ジベンゾフラン(30g, 178 mmol)を276mLのトリフルオロ酢酸(TFA)に溶かし、氷水浴中で冷やした。発煙硝酸15g(約17 mL)を3mLの水で希釈し、次に25mLのTFA中に溶かし、ジベンゾフランの溶液に滴下により添加した。反応がほとんど直ぐに起こり、粘稠な明るい緑色の沈殿物が生じた。添加の終わりに、フラスコをさらに20分間撹拌し、次に氷の上に注いだ。明るい緑色の沈殿物を濾過してとり、2MのNaOHで洗い、乾燥させ、沸騰エタノールから再結晶して、30g(76%)の生成物を得た。
【0137】
【化33】
【0138】
3−アミノジベンゾフランの合成
3−ニトロベンゾフラン(30 g, 141 mmol)を500mLの酢酸エチル中で撹拌し、3gの10%Pd/Cをそのスラリーに添加した。反応混合物を30分間、50psiのH圧力で水素化した。反応混合物を小さなセライトパッドを通して濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、溶出液として9:1のDCM/ヘキサンを用いてシリカゲルカラムを行った。最終的に単離された量は14.5g(56%収率)だった。
【0139】
【化34】
【0140】
2,4−ジブロモ−3−アミノジベンゾフランの合成
ジベンゾフラン−3−アミン(5.9 g, 32.2 mmol)を無水DMF(25 mL)に溶かし、室温にて、DMF(25 mL)中のN−ブロモコハク酸アミド(NBS)の溶液を滴下して添加した。この反応混合物を1時間撹拌し、沈殿物が生じ、これを濾過し、水で数回洗った。その沈殿物を塩化メチレンに溶かし、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗生成物を、溶離液としてヘキサン及び酢酸エチルを用いる短いシリカカラムによって精製して、10.0g(94%収率)の表題化合物を得た。
【0141】
【化35】
【0142】
2,4−ビス(イソプロペニル)ジベンゾ[b,d]フラン−3−アミンの合成
250mLのトルエン及び25mLのHO中の2,4−ジブロモジベンゾ[b,d]フラン−3−アミン(14.5 g, 42.5 mmol)、ベンズアルデヒド(4.96 g, 46.8 mmol)、4,4,5,5−テトラメチル−2−(1−プロペン−2−イル)−1,3,2−ジオキサボロラン(21.44 g, 128 mmol)、及びリン酸カリウム(45.1 g, 213 mmol)の混合物に、20分間、Nをバブリングした。ジシクロへキシル(2′,6′−ジメトキシビフェニル−2−イル)ホスフィン(0.698 g, 1.701 mmol)及びPd(dba)(0.389 g, 0.425 mmol)を次に添加し、その混合物をN下で14時間加熱還流させた。GC−MSは反応が終了したことを示した。室温に冷やした後、トルエン層をデカンテーションした。水層をトルエンで洗い、有機層を一緒にした。60mLの濃塩酸を添加した。その混合物を室温で1時間撹拌した。沈殿物を濾過によって集めた。その固体をジクロロメタンに溶かし、NaOHで中和し、硫酸マグネシウム上で乾燥させた。溶媒蒸発後、残留物を、溶媒として5〜10%の酢酸エチル/ヘキサンを用いるカラムクロマトグラフィーによって精製した。6.6g(59%収率)の生成物が精製後に得られた。
【0143】
【化36】
【0144】
2,4−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]フラン−3−アミンの合成
2,4−ビス(イソプロペニル)ジベンゾ[b,c]フラン−3−アミン(6.6 g, 25 mmol)をエタノール(150 mL)に溶かし、それに10%Pd/C(1.5 g)及び5%Pt/C(1.5 g)を添加し、50psiのHにて夜通し水素化した。GCは、オレフィンのアルカンへの完全な転化を示した。その反応混合物をセライトパッドを通して濾過し、メチレンクロライドで洗った。濾液を濃縮して6g(90%収率)の所望の生成物を得た。
【0145】
【化37】
【0146】
1−(2,4−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]フラン−3−イル)−2−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾールの合成
N−(2−クロロエチル)ベンズアミド(4.12 g, 22.44 mmol)及び五塩化リン(7.01 g, 33.7 mmol)をm−キシレン中、窒素下で2時間還流させた。その反応混合物を室温まで冷やした。次にその反応物に2,4−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]フラン−3−アミン(6 g, 22.44 mmol)を添加した。その反応物を16時間還流させた。室温まで冷やした後、沈殿物を濾過によって集め、トルエン及びヘキサンで充分に洗った。水酸化ナトリウム溶液をその固体に添加し、次に酢酸エチルを添加した。有機層を分離し、MgSO上で乾燥させた。溶媒を蒸発させた。7.4g(83%収率)の生成物を得た。
【0147】
【化38】
【0148】
1−(2,4−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]フラン−3−イル)−2−フェニル−1H−イミダゾールの合成
1−(2,4−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]フラン−3−イル)−2−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール(7.4 g, 18.66 mmol)を200mLのアセトニトリル及び100mLのジクロロメタン中に溶かした。過マンガン酸カリウム(5.90 g, 37.3 mmol)及びクレーK10(Clay K10)(12 g, 30.7 mmol)を乳鉢中で粉砕した。その固体を次に先の溶液に注意深く添加した。数分後に熱が発生した。反応物をTLCで監視した。反応物を1.5時間後にメタノールで失活させた。反応混合物を、セライトを通して濾過した。溶媒を蒸発させ、残留物をカラムで精製した。5.3g(72%収率)の純粋な生成物が得られた。
【0149】
【化39】
【0150】
化合物1の合成
1−(2,4−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]フラン−3−イル)−2−フェニル−1H−イミダゾール(1.3 g, 3.30 mmol)及びトリス(アセチルアセトナート)イリジウム(III)(0.323 g, 0.659 mmol)をシュレンクチューブに入れた。1mLのトリデカンを添加した。その反応フラスコを排気し、窒素で戻した。この過程を3回繰り返した。反応物を68時間、窒素下で255度に加熱した。反応完了後、反応混合物をジクロロメタンで希釈し、セライト上にコーティングした。生成物は溶媒として2:3のジクロロメタン及びヘキサンを用いるカラムによって精製した。1.4g(56%収率)の生成物をカラムの後で得た。
【0151】
例2.化合物2の合成
【化40】
【0152】
2−ニトロジベンゾフランの合成
1Lの丸底フラスコに、1−ニトロ−4−フェノキシベンゼン(50 g, 232 mmol)、炭酸カリウム(3.21 g, 23.23 mmol)、酢酸パラジウム(2.61 g, 11.62 mmol)、及び280mLのピバリン酸を添加した。この混合物を空気中で120℃に加熱した。3日後、反応混合物を氷浴中で冷やした。125mLの50%水酸化ナトリウム溶液を時間をかけて分割してゆっくり添加した。その黒いエマルションを多量の水及び酢酸エチルで希釈し、セライトを通して濾過した。有機層を分離し、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過した。溶媒を蒸発させ、セライト上に予め吸着させた。そのセライト混合物を、シリカゲルの詰め物によって、ヘキサン中10%〜50%のジクロロメタンで溶出させて精製した。36.4g(63%収率)の所望の生成物が得られた。
【0153】
【化41】
【0154】
2−アミノジベンゾフランの合成
Parr水素化瓶に、10%Pd/C(0.77 g, 0.724 mmol)を添加し、その瓶を窒素でパージした。次に、180mLの酢酸エチル中の2−ニトロジベンゾ[b,d]フラン(15 g, 44.3 mmol)を添加し、その溶液によって水素がそれ以上吸収されなくなるまでParr水素化器でその溶液を水素化した。触媒を、セライトを通して濾別し、酢酸エチルで洗った。濾液を蒸発させ、セライト上に予め吸着させた。そのセライト混合物を、ジクロロメタンで溶出させるVarian400gカラムを用いて精製した。10.9gの生成物が得られた。
【0155】
【化42】
【0156】
2−アミノ−1,3−ジブロモベンゾフランの合成
3つ口丸底フラスコ中で、ジベンゾ[b,d]フラン−2−アミン(20.8 g, 114 mmol)を160mLの無水DMFに溶かし、0℃に冷やした。200mLのDMF中のN−ブロモコハク酸イミド(NBS)(44.5 g, 250 mmol)の溶液を1時間かけて滴下して添加し、その溶液を1時間撹拌した。その溶液をシリカゲルを通して濾過し、ジクロロメタンを添加した。有機層を10%LiCl溶液で繰り返し洗ってDMFを除去した。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、紫色の残留物になるまで蒸発させた。19.24g(50%収率)の生成物を得た。
【0157】
【化43】
【0158】
1,3−ジ(1−プロペン−2−イル)ジベンゾ[b,d]フラン−2−アミンの合成
三ツ口500mL丸底フラスコ中で、1,3−ジブロモジベンゾ[b,d]フラン−2−アミン(19.24 g, 56.4 mmol)、4,4,5,5−テトラメチル−2−(1−プロペン−2−イル)−1,3,2−ジオキサボロラン(30 g, 179 mmol)、ジシクロへキシル(2′,6′−ジメトキシビフェニル−2−イル)ホスフィン(1.85 g, 4.51 mmol)、ベンズアルデヒド(5.7 mL, 56.4 mmol)、リン酸カリウム一水和物(52 g, 226 mmol)、トルエン(400 mL)、及び水(40 mL)を混ぜた。窒素をその混合物中に15分間直接バブリングし、次にPd(dba)(1.03 g, 1.13 mmol)を添加した。その混合物を夜通し加熱し還流させた。室温まで冷やした後、有機層を分離した。40mLの濃HClをその有機層に添加した。その混合物を1時間激しく撹拌した。水酸化ナトリウム水溶液を添加して、その混合物を塩基性にした。有機層を分離し、1:1のジクロロメタン/ヘキサンで溶出させてシリカゲルの詰め物により精製し、19.1gの茶色いオイルを得た。
【0159】
【化44】
【0160】
1,3−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]フラン−2−アミンの合成
500mLのParr水素化瓶に、1,2−ジ(1−プロペン−2−イル)ジベンゾ[b,d]フラン−2−アミン(19.1 g, 72.5 mmol)、10%パラジウムカーボン(5.7 g, 5.36 mmol)、5%白金カーボン(5.7 g, 1.46 mmol)、エタノール(180 mL)、及び酢酸(20 mL)を添加した。その混合物をParr水素化器で夜通し水素化した。反応混合物を、セライトを通して濾過し、ジクロロメタンで洗った。濾液を茶色のオイルになるまで蒸発させた。そのオイルをジクロロメタンに溶かし、10%水酸化ナトリウムで洗い、硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、茶色いオイルになるまで蒸発させた。そのオイルを、10%酢酸エチル/ヘキサンで溶出させる200gVarianカラムを用いて精製した。6.55g(34%収率)の生成物を得た。
【0161】
【化45】
【0162】
1−(1,3−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]フラン−2−イル)−2−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾールの合成
250mLの丸底フラスコに、N−(2−クロロエチル)ベンズアミド(4.09 g, 22.27 mmol)及び90 mLのm−キシレンを添加した。次に、五塩化リン(6.96 g, 33.4 mmol)を注意深く添加した。反応混合物を窒素下で2時間加熱し還流させた。反応混合物を室温まで冷やし、30mLのm−キシレン中の1,3−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]フラン−2−アミン(6.55 g, 24.50 mmol)を添加した。その反応混合物を窒素下で夜通し還流させた。反応混合物を氷浴中で冷やした。白色固体を濾過によって集めた。その固体をヘキサンで洗い、酢酸エチルに溶かし、10%水酸化ナトリウム溶液で2回洗った。有機層を硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、白色固体になるまで蒸発させ、これを真空下で乾燥させた。4.78g(54%収率)の生成物を得た。
【0163】
【化46】
【0164】
1−(1,3−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]フラン−2−イル)−2−フェニル−1H−イミダゾールの合成
70mLのアセトニトリル及び70mLのジクロロメタン中の1−(1,3−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]フラン−2−イル)−2−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール(4.78 g, 12.05 mmol)を1Lの丸底フラスコに入れた。過マンガン酸カリウム(3.81 g, 24.11 mmol)を乳鉢及び乳棒で細かくした。モンモリロナイトKを添加し、その過マンガン酸カリウムとともに細かく粉砕した。この混合物を先の溶液に0.5時間かけて分割して添加した。反応を、最初の添加後1時間行った。100mLのメタノールを添加し、1時間撹拌した。セライトを通して固体を濾過した。その物質を、20%酢酸エチル/ヘキサンを用いて溶出させる200gVarianカラムを使用して精製した。2.1g(44%収率)の生成物をカラム後に得た。
【0165】
【化47】
【0166】
化合物2の合成
1−(1,3−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]フラン−2−イル)−2−フェニル−1H−イミダゾール(2.1 g, 5.32 mmol)及びトリス(アセチルアセトナート)イリジウム(III)(0.521 g, 1.065 mmol)をシュレンクチューブに入れた。1mLのトリデカンを添加した。反応フラスコを脱気し、窒素で戻した。この過程を3回繰り返した。反応物を窒素下で70時間、255度に加熱した。反応完了後、反応混合物をジクロロメタンで希釈し、セライト上にコーティングした。その生成物を2:3のジクロロメタン及びヘキサンを用いてカラムにかけた。1.0g(68%収率)の生成物をカラムの後で得た。
【0167】
例3.化合物3の合成
【化48】
【0168】
1−ニトロベンゾ[b,d]フランの合成
火炎で乾燥させた三ツ口フラスコ中で、CuI(10.3 g, 54.3 mmol)、BuOK(6.7 g, 60 mmol)を120mLのジメトキシエタン中で1時間撹拌した。その撹拌した溶液に280mLのピリジンを添加し、溶液が紫色に変わった。別のフラスコ中で、60mLのジメトキシエタンに2−ヨードフェノール(24.1 g, 109 mmol)及びBuOK(12.9 g, 115 mmol)を溶かし、先の反応フラスコに移した。固体の2,4−ジニトロジベンゾフラン(16 g, 95 mmol)を次にその反応フラスコに直ちに添加し、10分間撹拌した。反応混合物を次に2.5時間還流させた。完了後、反応混合物を冷やし、8MのHSOで注意深く失活させた。暗色溶液を、セライトを通して濾過し、その濾液を酢酸エチルと水の間で分配した。水層を酢酸エチルで2回抽出した。一緒にした有機層を亜硫酸ナトリウム溶液、次にNaCO溶液で洗い、無水NaSO上で乾燥させた。有機溶媒を減圧下で除去した。粗生成物を、20%DCM/ヘキサンを用いてシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。減圧下で有機溶媒を蒸発させて、目的化合物(13 g, 64%収率)を黄色固体として単離した。
【0169】
【化49】
【0170】
ジベンゾ[b,d]フラン−1−アミンの合成
1−ニトロジベンゾ[b,d]フラン(7.3 g, 34.2 mmol)及び730mgの10%Pd/Cを150mLの酢酸エチルに添加し、反応混合物を50psiで水素化した。反応混合物を次に濾過し、減圧下で濃縮した。粗生成物を、90%DCM/ヘキサンを用いてシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。目的化合物(5.1 g, 82%収率)を灰白色固体として単離した。
【0171】
【化50】
【0172】
2,4−ジブロモジベンゾ[b,d]フラン−1−アミンの合成
ジベンゾ[b,d]フラン−1−アミン(5.1 g, 28 mmol)を120mLのDCMに溶かし、氷浴中で冷やした。撹拌したその溶液に、N−ブロモコハク酸イミド(10.9 g, 59 mmol)を少量ずつ添加した。完全に反応した後、未精製物を食塩水及びDCMに分配した。有機層をNaCO溶液、次に水で洗い、無水NaSO上で乾燥させた。粗生成物を次の反応に用いた。
【0173】
【化51】
【0174】
2,4−ジ(1−プロペン−2−イル)ジベンゾ[b,d]フラン−1−アミンの合成
170mLのトルエン及び水の9:1混合物に、2,4−ジブロモジベンゾ[b,d]フラン−1−アミン(6.5 g, 18.5 mmol)、イソプロペニルボロン酸ピナコールエステル(15.5 g, 92 mmol)、リン酸カリウム一水和物(17 g, 74 mmol)、ジシクロへキシル(2′,6′−ジメトキシビフェニル−3−イル)ホスフィン(0.6 g, 1.5 mmol)、ベンズアルデヒド(2 g, 18.5 mmol)を添加した。30分間窒素をバブリングさせて反応混合物を脱ガスし、Pddba(0.34 g, 0.4 mmol)をこの時点で添加した。反応混合物をさらに10分間脱ガスし、次に3時間還流させた。粗反応混合物を、セライトパッドを通して濾過し、食塩水と酢酸エチルの間で分配した。酢酸エチル層を1N HCl、次に飽和NaCO溶液で洗い、最後に無水NaSO上で乾燥させた。粗生成物を40%DCM/ヘキサンを用いてシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。目的化合物(4.8 g, 99%収率)が明るい赤色オイルとして単離された。
【0175】
【化52】
【0176】
2,4−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]フラン−1−アミンの合成
2,4−ジ(1−プロペン−2−イル)ジベンゾ[b,d]フラン−1−アミン(4.8 g
, 18.2 mmol)並びに5%Pt/C(0.48 g)及び10%Pd/C(0.48 g)を、エタノール(90 mL)及び酢酸(10 mL)の混合物に添加した。反応混合物を50psiにて夜通し水素化した。反応混合物をセライトパッドを通して濾過し、ほとんどの有機溶媒を減圧下で蒸発させた。粗生成物を酢酸エチルに溶かし、1N NaOHと酢酸エチルの間で分配し、酢酸を取り除いた。有機層を無水NaSO上で乾燥させ、減圧下で蒸発させ、40%DCM/ヘキサンを用いるシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。目的化合物(3.3 g, 68 %)が白色結晶として単離された。
【0177】
【化53】
【0178】
1−(2,4−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]フラン−1−イル)−2−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾールの合成
N−(2−クロロエチル)ベンズアミド(2.1 g, 11.2 mmol)、PCl(3.5 g, 16.8 mmol)を、m−キシレン(100 mL)に溶かし、2時間還流させた。反応フラスコを室温まで冷やした後、2,4−ジイソプロピルジベンゾ[b,c]フラン−1−アミン(3.3 g, 12.3 mmol)をそこに添加し、反応混合物を夜通し還流させた。冷やした反応混合物から、白色沈殿物を濾別した。沈殿物を酢酸エチルに溶かし、酢酸エチルとNaCO水溶液との間で分配した。有機層を抽出し、減圧下で乾燥させた。目的化合物(4 g, 90%収率)はさらに精製することなく次の工程で用いた。
【0179】
【化54】
【0180】
1−(2,4−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]フラン−1−イル)−2−フェニル−1H−イミダゾールの合成
1−(2,4−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]フラン−1−イル)−2−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール(4.7 g, 12 mmol)を100mLのアセトニトリルに溶かした。その撹拌した溶液に、KMnO(3.8 g, 24 mmol)及び4gのモンモリロナイトK10クレーの微細な混合物を少量ずつ添加し、反応混合物を2時間撹拌した。最後に、反応をMeOHで失活させ、セライトパッドを通して濾過した。粗生成物を80%DMC/ヘキサンから80%DCM/酢酸エチルを用いてシリカゲル上でのフラッシュクロマトグラフィーによって精製した。3gの明るい黄色オイルを単離した。このオイルを、逆相クロマトグラフィーによってさらに精製した。目的化合物(1.3 g, 28%収率)を白色固体として単離した。
【0181】
【化55】
【0182】
化合物3の合成
1−(2,4−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]フラン−1−イル)−2−フェニル−1H−イミダゾール(1.2 g, 3 mmol)、Ir(acac)、及び100μLのトリデカンをシュレンクチューブに入れ、窒素でパージした。反応混合物を250℃に40時間加熱した。冷却した反応混合物を、1:1のDCM/ヘキサンを用いてシリカゲル上でクロマトグラフィーにかけた。昇華後、目的化合物(0.12 g, 14%収率)を黄色結晶として得た。
【0183】
化合物4の合成
【化56】
【0184】
N−(2−フェノキシフェニル)アセトアミドの合成
2−フェノキシアニリン(100 g, 540 mmol)、トリエチルアミン(0.090 L, 648 mmol)、及び1Lのジクロロメタンの混合物を、氷浴で0℃に冷やした。アセチルクロライド(0.04 L, 567 mL)を滴下して添加した。添加が完了した後、反応物を室温で2時間撹拌した。その混合物を濃縮し、ジクロロメタンで希釈した。有機層を水で洗い、硫酸ナトリウム上で乾燥させた。粗生成物をシリカゲルカラム(ヘキサン中20%EtOAc)によって精製して、赤茶色の油性固体のN−(2−フェノキシフェニル)アセトアミド(120 g, 98%収率)を得た。
【0185】
【化57】
【0186】
N−(ジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)アセトアミドの合成
N−(2−フェノキシフェニル)アセトアミド(120 g, 528 mmol)、炭酸カリウム(7.30 g, 52.8 mmol)、酢酸パラジウム(11.85 g, 52.8 mmol)、及びピバリン酸(539 g, 5280 mmol)の混合物を調製し、空気下で2日間105℃(内温)に加熱した。GC−MSは60%の生成物を示した。その反応物を115℃(内温)でさらに一晩撹拌した。反応物を次に室温に冷やし、飽和炭酸ナトリウム溶液で中和し、これを次にEtOAcで3回抽出した。抽出液を濃縮して粗生成物のN−(ジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)アセトアミド(90 g, 76%収率)を茶色の固体として得た。
【0187】
【化58】
【0188】
ジベンゾ[b,d]フラン−4−アミンの合成
N−(ジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)アセトアミド(90 g, 400 mmol)を、濃HCl(240 mL)及びメタノール(240 mL)の混合物中に懸濁させた。この反応物を2時間還流させ、次に室温まで冷やした。飽和炭酸ナトリウムを用いてその溶液を中和した。残留物を濾過によって集め、DCMに再溶解した。硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、その溶液を濃縮して、ジベンゾ[b,d]フラン−4−アミン(67 g, 92%収率)を茶色い固体として得た。
【0189】
【化59】
【0190】
1,3−ジブロモジベンゾ[b,d]フラン−4−アミンの合成
ジベンゾ[b,d]フラン−4−アミン(33.4 g, 182 mmol)をDMF(300 mL)に溶かし、氷浴で0℃に冷やした。1−ブロモピロリジン−2,5−ジオン(68.1 g, 383 mmol)をDMF(300 mL)に溶かし、その反応溶液に滴下して添加した。添加後、反応物を室温で夜通し撹拌した。次に、反応混合物をEtOAcで希釈し、10%LiCl溶液で3回、飽和炭酸水素ナトリウムで2回洗った。その有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラム(ヘキサン中15%未満のEtOAc)を使用して精製して、赤茶色固体の1,3−ジブロモジベンゾ[b,d]フラン−4−アミン(76 g, 122%収率、いくらかコハク酸イミドを含む)を得た。
【0191】
【化60】
【0192】
N−(1,3−ジブロモジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)アセトアミドの合成
2Lの丸底フラスコ中、ジクロロメタン(800 mL)及びピリジン(180 mL, 2229 mmol)中の1,3−ジブロモジベンゾ[b,d]フラン−4−アミン(76 g, 223 mmol)を氷浴で冷やした。撹拌しながら、アセチルクロライド(31.7 mL, 446 mmol)を滴下して添加した。次に氷浴を取り除いた。反応物を室温で1時間撹拌した。残留物を濾過によって集め、水及びジクロロメタンで洗ってN−(1,3−ジブロモジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)アセトアミド(60 g, 70.3%収率)を茶色固体として得た。
【0193】
【化61】
【0194】
N−(1,3−ジ(1−プロペン−2−イル)ジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)アセトアミドの合成
N−(1,3−ジブロモジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)アセトアミド(55 g, 144 mmol)、4,4,5,5−テトラメチル−2−(1−プロペン−2−イル)−1,3,2−ジオキサボロラン(72.4 g, 431 mmol)及び三塩基性リン酸カリウム(132 g, 574 mmol)をトルエン(800 mL)及び水(80 mL)中で混合した。この混合物を20分間窒素でバブリングした。次にPd(dba)(2.63 g, 2.87 mmol)及びジシクロへキシル(2′,6′−ジメトキシビフェニル−2−イル)ホスフィン(4.72 g, 11.49 mmol)をその反応混合物に添加した。さらに20分間、窒素でバブリングした後、反応物を窒素下で夜通し還流させた。室温まで冷やした後、有機層を水で洗い、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濃縮した。シリカゲルカラム(ヘキサン中30%から50%EtOAc)の後、N−(1,3−ジ(1−プロペン−2−イル)ジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)アセトアミド(32.5 g, 74.1%収率)を茶色固体として得た。
【0195】
【化62】
【0196】
N−(1,3−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)アセトアミドの合成
500mLの水素化容器中で、エタノール(200 mL)に、N−(1,3−ジ(1−プロペン−2−イル)ジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)アセトアミド(22.6 g, 74.0 mmol)、Pd/C,10%(3 g, 74 mmol)、及びPt/C,5%(3 g, 74.0 mmol)を添加した。2日間の反応後、その溶液をセライトの詰め物を通して濾過し、ジクロロメタンで洗った。濾液を濃縮して粗製N−(1,3−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)アセトアミド(18.8 g, 82%収率)を白色固体として得た。
【0197】
【化63】
【0198】
1,3−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]フラン−4−アミンの合成
N−(1,3−ジイソプロプルジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)アセトアミド(15 g, 48 mmol)を濃HCl(125 mL)及びMeOH(125 mL)の混合物中に懸濁させた。この混合物を2時間還流させ、次に室温に冷やした。飽和炭酸ナトリウムを用いてその溶液を中和した。残留物を濾過によって集め、DCMに再溶解させた。硫酸ナトリウム上で乾燥させた後、その溶液を濃縮して1,3−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]フラン−4−アミン(10.5 g, 81%収率)を茶色固体として得た。
【0199】
【化64】
【0200】
1−(1,3−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)−2−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾールの合成
N−(2−クロロエチル)ベンズアミド(6.3 g, 34 mmol)及びPCl(7.9 g, 38 mmol)をキシレン(75 mL)に懸濁させ、2時間還流させた。次に、1,3−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]フラン−4−アミン(10 g, 38 mmol)を添加した。その混合物を夜通し還流させた。氷浴で冷却した後、沈殿物は全く観察されなかった。その混合物を濃縮し、残留物を少量のトルエン及びヘキサンで洗った。未精製の1−(1,3−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)−2−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール(7.5 g, 19 mmol, 54.8%収率)をさらに精製することなく次に工程に用いた。
【0201】
【化65】
【0202】
1−(1,3−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)−2−フェニル−1H−イミダゾールの合成
過マンガン酸カリウム(5.58 g, 35.3 mmol)及びモンモリロナイトK−10クレー(10 g)を混合し、細かく粉砕した。この混合物を、ジクロロメタン(50 mL)、アセトニトリル(150 mL)、及び1−(1,3−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)−2−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール(7 g, 17.6 mmol)の、氷浴で冷やした混合溶液に、ゆっくり(約15分)添加した。次に、その反応物をさらに1時間撹拌し、20mLのエタノールを添加することによって失活させた。セライトの詰め物を通して濾過した。粗生成物を、シリカゲルカラム(ヘキサン中30%までのEtOAc)及びヘキサンからの再結晶によって精製した。1−(1,3−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)−2−フェニル−1H−イミダゾール(2.6 g, 6.57 mmol, 37.2%収率)を白色固体として得た(99.8%HPLC)。
【0203】
【化66】
【0204】
化合物4の合成
Ir(acac)(0.620 g, 1.267 mmol)、1−(1,3−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]フラン−4−イル)−2−フェニル−1H−イミダゾール(2.5 g, 6.34 mmol)及びトリデカン(1 mL)を、シュレンクチューブ中で混ぜた。注意深く真空にして窒素で戻すことを4回繰り返した後、反応物を250℃の砂浴中で3日間加熱した。粗生成物を、ヘキサン中80%までのジクロロメタンを用いるシリカカラムによって精製して、生成物(700 mg, 40.2%収率)を黄色固体として得た。
【0205】
化合物5の合成
【化67】
【0206】
2,4−ビス(2−メチル−1−プロペニル)ジベンゾ[b,d]フラン−3−アミンの合成
脱ガスしたトルエン(40 mL)に、2,4−ジブロモジベンゾフラン−3−アミン(1.5 g, 4.4 mmol)、ベンズアルデヒド(0.47 g, 4.4 mmol)、4,4,5,5−テトラメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)−1,3,2−ジオキサボロラン(3.2 g, 17.6 mmol)、リン酸カリウム(6.08 g, 26 mmol)、2−ジシクロへキシルホスフィノ−2′,6′−ジメトキシビフェニル(0.28 g, 0.704 mmol)、Pd(dba)(0.161 g, 0.176 mmol)、及び水(6 mL)を順に添加した。この溶液を窒素雰囲気下で夜通し還流させ、次に室温まで冷やした。反応物を酢酸エチルで希釈し、有機相を水相から分離した。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。生成物を、溶離液として酢酸エチル及びヘキサンを用い、シリカゲルを使用してクロマトグラフィーにかけた。溶媒を除去して1.05g(82%収率)の標題化合物を得た。
【0207】
【化68】
【0208】
2,4−ジイソブチルジベンゾ[b,d]フラン−3−アミンの合成
2,4−ビス(2−メチル−1−プロペニル)ジベンゾ[b,d]フラン−3−アミン(5.45 g, 18.7 mmol)をエタノール(150 mL)に溶かし、そこへ10%Pd/C(1.5 g)及び5%Pt/C(1.5 g)を添加し、夜通し、50psiのHで水素化した。GCはオレフィンのアルカンへの完全な転化を示した。その反応混合物をセライトの詰め物を通して濾過し、塩化メチレンで洗った。濾液を濃縮して5.3g(96%収率)の所望の生成物を得た。
【0209】
【化69】
【0210】
1−(2,4−ジイソブチルジベンゾ[b,d]フラン−3−イル)−2−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾールの合成
N−(2−クロロエチル)ベンズアミド(3.1 g, 16.88 mmol)を窒素下で40mLの無水m−キシレンに溶かした。五塩化リン(5.27 g, 25.3 mmol)を次に注意深く添加し、その混合物を窒素下で2時間加熱還流させた。その溶液を室温まで冷やし、2,4−ジイソブチルジベンゾ[b,d]フラン−3−アミン(5.49 g, 18.57 mmol)を添加した。その反応混合物を20時間加熱還流させた。冷却後、沈殿物を濾過し、その固体のイミダゾリン生成物を集め、トルエン、次にヘキサンで洗った。得られた粗生成物を塩化メチレンに溶かし、50%NaOHで2回洗った。有機層をMgSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して標題生成物を得た(5.5 g, 77%)。
【0211】
【化70】
【0212】
1−(2,4−ジイソブチルジベンゾ[b,d]フラン−3−イル)−2−フェニル−1H−イミダゾールの合成
過マンガン酸カリウム(4.09 g, 25.9 mmol)及びK−10(8.1 g)を、細かく均一な粉末が得られるまで乳鉢中で一緒に細かくした。このKMnO−K−10粉末を少しづつ、CHCN(100 mL)中の1−(2,4−ジイソブチルジベンゾ[b,d]フラン−3−イル)−2−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール(5.5 g, 12.9 mmol)の溶液に添加し、その混合物を室温で2時間撹拌した。エタノール(5 mL)を添加し、過剰な酸化剤を還元した。さらに30分間撹拌した後、その混合物をセライトの短いパッドを通して濾過し、その固体をCHCN(50 mL)で洗った。濾液を蒸発させ、得られた粗製物質をSiO上でのクロマトグラフィーによって精製して、所望のイミダゾールを得た(2.76 g, 50%)。
【0213】
【化71】
【0214】
化合物5の合成
1−(2,4−ジイソブチルジベンゾ[b,d]フラン−3−イル)−2−フェニル−1H−イミダゾール(1.97 g, 4.67 mmol)、トリデカン(0.1 mL)、及びIr(acac)(0.44 g, 0.899 mmol)をシュレンクチューブに入れた。そのチューブを脱気し、窒素で再び満たした。この過程を3回繰り返した。反応物を40分間250℃まで加熱した。室温まで冷やした後、反応物をジクロロメタンで希釈し、溶離液として1:1のヘキサン及びジクロロメタンを用いるシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製した。0.7g(54%収率)の生成物を得た。
【0215】
例6.化合物13の合成
【化72】
【0216】
ジベンゾチオフェン−9−オキシドの合成
200mLのクロロホルム中の3−クロロ過安息香酸(22.38 g, 100 mmol)(mcpba)の溶液を、200mLのクロロホルム中のジベンゾ[b,d]チオフェン(18.4 g, 100 mmol)に、−30℃〜−35℃にて滴下して添加した。−30℃で1時間撹拌した後、反応混合物を室温まで温め、室温で1時間撹拌した。この混合物をセライトパッドを通して濾過し、残留物をNaCO水溶液を用いて中和した。反応混合物からの有機層をNaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮し、溶離液として1:1のDCM/ヘキサンを用いるシリカゲルカラムを行った。固体生成物をエタノールからさらに再結晶して、白色のジベンゾチオフェン−9−オキシドを得た(14.6 g, 73%)。
【0217】
【化73】
【0218】
3−ニトロジベンゾチオフェン−9−オキシドの合成
ジベンゾチオフェン−9−オキシド(15 g, 74.9 mmol)を33mLの酢酸及び33mLの硫酸に溶かし、氷浴中で0℃に冷やした。36mLの発煙硝酸を15分間かけて滴下して添加した。反応混合物を30分間0℃で激しく撹拌した。次に、氷で冷やした水を添加し、黄色沈殿物が形成され、これを濾過し、多量の水で洗った。この沈殿物を塩化メチレンに溶かし、NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。最後に、黄色固体をエタノールから再結晶して、3−ニトロジベンゾチオフェン−9−オキシド(11 g, 60%)を得た。
【0219】
【化74】
【0220】
3−アミノジベンゾチオフェンの合成
3−ニトロジベンゾチオフェン−9−オキシド(11 g, 44.9 mmol)を200mLの酢酸エチル中でスラリー化し、そのフラスコに5gの10%Pd/Cを添加した。反応混合物を45分間、50psiのH圧で水素化した。反応混合物を小さなセライトパッドを通して濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、溶離液としてDCM/ヘキサンを用いるシリカゲルカラムを行い、所望する化合物を製造した(6.8 g, 76%)。
【0221】
【化75】
【0222】
2,4−ジブロモ−3−アミノジベンゾチオフェンの合成
3−アミノジベンゾチオフェン(6.8 g, 34.1 mmol)を無水DMF(25 mL)に溶かし、0℃に冷やした。DMF(30 mL)中のN−ブロモコハク酸イミド(NBS)の溶液を、反応フラスコにゆっくりと管を通して入れた。その反応混合物を0℃で1時間撹拌し、次に水をその反応混合物に添加し、沈殿物が生じ、これを濾過し、水で数回洗った。その沈殿物を塩化メチレンに溶かし、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗生成物を、溶離液としてヘキサン及び酢酸エチルを用いる短いシリカカラムで精製して、標題化合物を得た(12 g, 94%)。
【0223】
【化76】
【0224】
2,4−ジ(1−プロペン−2−イル)ジベンゾ[b,d]チオフェン−3−アミンの合成
脱ガスしたトルエン(200 mL)に、2,4−ジブロモジベンゾ[b,d]チオフェン−3−アミン(12.15 g, 34.0 mmol)、4,4,5,5−テトラメチル−2−(1−プロペン−2−イル)−1,3,2−ジオキサボロラン(17.15 g, 102 mmol)、ベンズアルデヒド(3.61 g, 34.0 mmol)、リン酸カリウム(23.51 g, 102 mmol)、ジシクロへキシル(2′,6′−ジメトキシ−[1,1−ビフェニル]−2−イル)ホスフィン(1.676 g, 4.08 mmol)、及びPd(dba)(0.935 g, 1.021 mmol)、及び水(20 mL)を順に添加した。この溶液を窒素雰囲気下で夜通し還流させ、次に室温まで冷やした。反応物を酢酸エチルで希釈し、有機相を水相から分けた。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。生成物を溶離液として酢酸エチル及びヘキサンを用い、シリカゲルを使用してクロマトグラフィーにかけた。溶媒を除去して標題化合物を得た(9.0 g, 95%)。
【0225】
【化77】
【0226】
2,4−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]チオフェン−3−アミンの合成
2,4−ジ(1−プロペン−2−イル)ジベンゾ[b,d]チオフェン−3−アミン(9 g, 32.2 mmol)をエタノール(150 mL)に溶かし、9mLの酢酸を添加した。このフラスコに、10%Pd/C(9.0 g)及び5%Pt/C(9.0 g)を添加し、夜通し40psiのHにて水素化した。GCはオレフィンのアルカンへの完全転化を示した。その反応混合物をセライトパッドを通して濾過し、塩化メチレンで洗った。濾液を濃縮して、7.5g(82%)の所望の生成物を製造した。
【0227】
【化78】
【0228】
1−(2,4−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]チオフェン−3−イル)−2−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾールの合成
N−(2−クロロエチル)ベンズアミド(4.3 g, 23.42 mmol)を窒素下で50mLの無水m−キシレンに溶かした。五塩化リン(7.31 g, 35.1 mmol)を次に注意深く添加し、混合物を窒素下で2時間加熱し還流させた。その溶液を室温まで冷やし、2,4−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]チオフェン−3−アミン(7.30 g, 25.8 mmol)を添加した。その反応混合物を20時間加熱し還流させた。冷やした後、沈殿物を濾過し、その固体のイミダゾリン生成物を集め、トルエン、次にヘキサンで洗った。得られた粗生成物を塩化メチレンに溶かし、50%NaOHで2回洗った。有機層をMgSO上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮して標題化合物を得た(4.8 g, 50%)。
【0229】
【化79】
【0230】
1−(2,4−ジイソプロピルジベンゾ[b,d]チオフェン−3−イル)−2−フェニル−1H−イミダゾールの合成
過マンガン酸カリウム(3.6 g, 23.27 mmol)及びK−10モンモリロナイト(7.2 g)を、細かく均一な粉末が得られるまで乳鉢中で一緒に細かくした。このKMnO−K−10粉末を少しづつ、CHCN(40 mL)中の1−(2,4−ジイソブチルジベンゾ[b,d]チオフェン−3−イル)−2−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール(4.8 g, 11.63 mmol)の溶液に添加し、その混合物を室温で2時間撹拌した。5mLのエタノールを添加して、過剰な酸化剤を還元した。さらに30分間撹拌した後、その混合物をセライトの短いパッドを通して濾過し、その固体を塩化メチレン(50 mL)で洗った。濾液を蒸発させ、得られた粗製物質をSiO上でのクロマトグラフィーによって精製して、所望のイミダゾールを得た(1.2 g, 25%)。
【0231】
【化80】
【0232】
化合物13の合成
1−(2,4−ジイソブチルジベンゾ[b,d]チオフェン−3−イル)−2−フェニル−1H−イミダゾール(0.783 g, 1.907 mmol)及びトリス(アセチルアセトナート)イリジウム(III)(0.187 g, 0.381 mmol)をシュレンクチューブに入れた。0.2mLのトリデカンを添加した。その反応フラスコを排気し、窒素で戻した。この過程を3回繰り返した。その反応物を70時間、225度まで加熱した。終了後、反応混合物をジクロロメタンで希釈し、セライト上にコーティングした。生成物を、溶媒として2:3のジクロロメタン及びヘキサンを用いるカラムによって精製した。0.3g(55.4%収率)の生成物を精製後に得た。
【0233】
[デバイス例]
全てのデバイス例は、高真空(<10−7Torr)熱蒸着によって作製した。アノード電極は、800Åのインジウム錫オキシド(ITO)である。カソードは、10ÅのLiFとそれに続く1000ÅのAlからなる。全てのデバイスは、作製後直ちに窒素グローブボックス(<1ppmのHO及びO)中でエポキシ樹脂を用いてシールしたガラス蓋で密封し、吸湿剤をそのパッケージ内に組み込んだ。
【0234】
デバイスの有機積層部はITO表面から順に、正孔注入層(HIL)として100ÅのE2、正孔輸送層(HTL)として300Åの4,4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)、発光層(EML)として15%又は9%の発光ドーパント、例えば、化合物1及び13でドープした300ÅのH1、阻止層(BL)として50ÅのH1、そして電子輸送層(ETL)として400ÅのAlq(トリス−8−ヒドロキシキノリンアルミニウム)、からなっていた。
【0235】
E1を発光ドーパントとして用いたことを除いて、比較デバイス例1をデバイス例1〜3と同様にして作製した。
【0236】
ここで用いるとおり、下記の化合物は下記の構造を有する。
【化81】
【0237】
OLEDの発光層のための特定の発光ドーパントを提供する。これらの化合物は、特に良好な特性を有するデバイスをもたらしうる。デバイス構造を表2に示し、対応するデバイスデータを表3に示す。
【0238】
【表24】
【0239】
【表25】
【0240】
デバイス例1〜3から、青色リン光OLED中の発光ドーパントとしての本発明の化合物は長いデバイス寿命を与えることがわかる。特に、本発明の化合物の寿命であるLT80%(初期輝度Lが、室温で2000cd/mの初期の明るさから、一定の電流密度において、その値の80%に低下するのに要する時間として定義される)は、E1と比較してかなり高い。具体的には、E1の155時間と比較して、化合物1及び13はそれぞれ320時間及び264時間の寿命を有する。
【0241】
化合物1、2、3、4、13、及びAの遷移寿命を表4に示す。ジベンゾフラン(すなわち、XがOである)及びジベンゾチオフェン(すなわち、XがSである)置換基をもつ化合物は、より短い遷移寿命を有することがわかった。特に、化合物1〜4及び13の77KでのPL遷移寿命は、これまでに報告された化合物について測定された寿命よりも短い。具体的には、化合物1〜4及び13は、3.2μsの寿命をもつE1と比較して、2.6μs未満の寿命を有していた(表4を参照されたい)。この短くなった遷移寿命は、これらの化合物の重要な光物性でありえ、なぜなら、より短い励起状態の寿命をもつ化合物は、より高い放射の割合を有するからである。理論に縛られないが、これらの化合物はデバイス中でより安定であることができ、なぜなら、その分子はその励起寿命において、より短い時間しか費やさないからである。したがって、光反応又は消光が起こりうることについての可能性が低い。そのため、これらの化合物は向上した寿命をもつデバイスをもたらしうる。
【0242】
【表26】
【0243】
本明細書に記載した様々な態様は例示の目的であり、本発明の範囲を限定することを意図していないことが理解される。例えば、本明細書に記載した多くの物質及び構造は、本発明の精神から離れることなく、その他の物質及び構造で置き換えることができる。特許請求の範囲に記載した本発明は、したがって、本明細書に記載した具体的な例及び好ましい態様からの変形を含むことができ、それは当業者には明らかである。本発明が何故機能するのかについての様々な理論は限定することを意図していないことが理解される。
図1
図2
図3