(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来の減震装置は、建物の床面や地盤などの設置面と発電機やモールド変圧器等の減震対象物との間に防振装置を介在させて地震発生時の衝撃や振動を抑制するようにしている。そして、小地震による小揺れ或いは稼動による減震対象物自体から発する小振動が発生した場合は、これらを吸収して衝撃や振動が伝達されるのを抑制しているものの予め設定されている防振装置の処理能力の範囲内でしか対応できなかった。
【0003】
このために様々な大きさの衝撃や振動に対処できるように構成した防振装置が知られている。例えば、衝撃力が伝達される油圧ショベル等の作業機の運転室の床部や周囲に防振ゴム、リーフスプリング、緩衝装置、積層免震ゴム等の多種類の防振対策手段を組み合わせて備えることにより振動やローリングを防止して乗り心地を向上させるようにしたものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
しかし、この場合は減震させる多種類の防振対策手段を要して多くの設置スペースを必要とし、また大掛かりとなる問題を有していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、小さな振動に対しても大きな衝撃力に対しても安定して減震処理する減震処理性能や減震対象物の転倒防止性能を有し、しかもシンプルに構成することができる減震装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載した発明(
図3)は、設置面Gと減震対象物Mとの間に介装される減震装置10であって、
減震対象物Mに固定される上ブラケット20と、
上方に膨出し、且つ、下面が開口し、内部に空間部36が形成された下ガイド部33を備え、設置面Gに固定される下ブラケット30と、
前記下ブラケット30と前記設置面Gとの間に敷設され、前記下ガイド部33の下面開口34aを閉塞する搭載盤70と、
前記上ブラケット20と下ブラケット30とに挟持された弾性部材よりなる振動吸収材50と、
前記上ブラケット20に固定され、振動吸収材50及び前記下ブラケット30に備えられた下ガイド部33とを上下方向に貫通する連結部材40と、
前記連結部材40の下部に設けられ、前記空間部36内に収納される下固定部41とを備え、
前記下固定部41の上面41eと下ブラケット30の下ガイド部33の天井部33aとの間に隙間S12が設けられ、且つ、前記下固定部41の下面40dと搭載盤70との間に隙間S11が設けられて
おり、
下固定部41の上面41eと下ブラケット30の下ガイド部33の天井部33aとの間の隙間S12と、下固定部41の下面40dと搭載盤70との間の隙間S11とは、上ブラケット20および連結部材40が減震対象物Mと共に傾動して一定角度θを越えようとしたところで下固定部41の一端の下面40dが搭載盤70の上面71に衝突するとともに、下固定部41の反対側の上面が下ガイド部33の天井部33aの天井面36aと衝突するように略同一寸法に設定されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載した発明(
図4)は、請求項1において、「隙間S12に弾性の衝撃吸収部材60aが挟み込まれている」ことを特徴とする。この衝撃吸収部材60aは地震入力時に下固定部41が傾動した時に圧縮されて変形するから、その変形範囲で隙間S12と同等の作用をすることになる。従って、衝撃吸収部材60aの厚さを隙間S12と現している。
【0009】
請求項3に記載した発明(
図5)は、請求項1において、「
下ブラケット30の下ガイド部33の天井部33aに非接触にて、隙間S12に硬質の傾動調整部材60bが挟み込まれている」ことを特徴とする。この傾動調整部材60bは硬質部材で形成されているので、地震入力時に下固定部41が傾動した時に下ブラケット30の下ガイド部33の天井部33aにその端部が衝突することになるので、下固定部41の一部として働くことになる。
【0010】
請求項4に記載した発明は、請求項2において、「衝撃吸収部材60aに沿って傾動調整部材60bが更に挟み込まれている」ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、上ブラケット20と下ブラケット30間で振動吸収材50が小さな振動等に弾性対応して吸収することにより減震処理することができ、地震等の大きな外力に対しては減震対象物Mに装着された上ブラケット20と共に傾動した下固定部41の下面40dの端部が搭載盤70に押圧され、同時にその上面41e(又は傾動調整部材60bの上面41e)の反対側の端部が、直接又は衝撃吸収部材60aを介して下ブラケット30の下ガイド部33の天井部33aの下面に押圧されて一定角度θ以上の傾動を規制することになり、前記角度θ以内でローリングしている減震対象物Mの転倒を防止することができる。
【0012】
更に、衝撃吸収部材60aに代えて又は衝撃吸収部材60aと共に傾動調整部材60bを挟み込んでいるので、傾動調整部材60bの厚さを調節することで隙間S11、S12を可変とすることが出来、傾動角度θを調節することができる。
【0013】
加えて、連結部材40に支持される上下のブラケット20,30間に振動吸収材50を介在させ、下固定部41を空間部36内に収納するという極めてシンプルな構成のため設置スペースが小さくて済み、部品点数も少ないので低コストに製作することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の減震装置10を
図1〜3(実施例1)に基づいて説明する。この減震装置10は、
図9に示すように建物や地盤などの設置面Gと、例えば、大型のモールド変圧器などのように200kg〜4トンもの重量のある減震対象物Mとの間に介装される。そして、常時は該減震対象物Mの稼動による発生振動を設置面Gに伝達されるのを防止し、地震などの非常時には外力が設置面G側から減震対象物Mに伝達されて、これが大きくローリングして転倒するというようなことを防ぐものであり、大略、上ブラケット20、下ブラケット30、搭載盤70、連結部材40、上固定部42、振動吸収材50及び下固定部41とを備えて構成される。
【0016】
上ブラケット20は、垂直プレート23と凹形状の水平プレート24と上ガイド部25とから構成される。まず、垂直プレート23は、横長の垂直な長方板であり、その両側に減震対象物Mに固定するための取着部21が備えられている。取着部21は長方板の両側に開口されている長孔22に、平座金21aとバネ座金21bを嵌挿した六角ボルト21cを挿通して減震対象物Mの下部側面の適所に形成されている図示しないネジ孔に締結することにより減震対象物Mの側面に取り付けられる。
【0017】
凹形状の水平プレート24は、垂直プレート23の前面中央に水平に延出され、該水平プレート24の強度を高めるために両側を上向きに屈曲して凹形状に設けている。さらに、延出された水平部分の中央付近を開口し、この開口部分に筒状の上ガイド部25の上端を例えば溶接等によって固定して垂設している。そして、筒状の内周面に後述する連結部材40の雄ネジ40bが螺合する雌ネジ26が形成されている。(勿論、雌ネジ26を刻設せず、単なる通孔でもよい。)そして筒状に形成された上ガイド部25の下端部が後述する連結部材40の上動規制部27として備えられている。
【0018】
下ブラケット30は、平板32と下ガイド部33とから構成され、平板32は横長の長方板であり、その両側に形成されている設置面取着用の取着部31を介して後述する搭載盤70と重設して設置面Gに固定される。この設置面取着用の取着部31は平板32の4隅に開口しているベース孔32aに、
図1、2に示すように平座金31aとバネ座金31bを嵌挿した六角ボルト31cを挿通して、設置面Gの上面に形成されている図示しないネジ孔(アンカー)に締結することにより下ブラケット30の平板32は搭載盤70を介して設置面Gの上面に固定される。
【0019】
下ガイド部33は、上述した平板32の中央に上向きに膨出した中空の部分で、この下ガイド部33は下面開口34aを有し、内部に空間部36が形成され、空間部36の天井部33aの中央に開口されて上述した上ガイド部25を上方より挿通させる挿通孔35を有している。この挿通孔35に挿通される上ガイド部25の下端部が前記上動規制部27であって、この上動規制部27を下ガイド部33の空間部36内へと臨ませる円形の挿通孔35が下ガイド部33の中央に穿設されている。なお、下ガイド部33は、プレス加工等によって一体形成してもよく、
図3に示すように、平板32と下ガイド部33とを溶接によって一体形成してもよい。
【0020】
上述の搭載盤70は、下ガイド部33の平板32と同外形の長方板で4隅に、平板32のベース孔32aと対応するベース孔32bを開口して構成され、この搭載盤70の中央部上面で下ガイド部33の下面開口34aを閉鎖する蓋板として設けられ、平板32の下側に重設して設置面Gの上面に固定されるものである。なお、図示しないが、搭載盤70は、下ガイド部33の下面開口34aを閉塞するためのものであるから、下面開口34aと同径に形成し、螺着するようにしてもよい。
【0021】
連結部材40は、金属等からなる円柱状の本体40aを含み、本体40aの外周面には、上述した雌ネジ26に螺合される雄ネジ40bが形成される。また、本体40aの軸方向の下端部には、本体40aよりも大きな外径を有する金属製円盤の係止部40cが溶接のような接合手段にて一体的に形成される。勿論、係止部40cをスウェージングのような方法で連結部材40に一端に一体的に形成してもよい。そして、本体40aの頭頂部にはドライバ溝40eが刻設されている。
【0022】
この連結部材40の下部に備えられた係止部40cは、下ブラケット30側の空間部36に挿入され、且つ、空間部36の内周面と係止部40cの外周で十分な隙間S2が確保される大きさに形成される。そして、この係止部40cが
図3の場合、下ブラケット30側の空間部36内で後述する傾動規制作用をなす下固定部41となる。また、
図5、6では後述する傾動調整部材60bとで下固定部41となる。
【0023】
上固定部42は本実施例ではナット42cで、連結部材40を下ガイド部33の挿通孔35及び上ガイド部25の雌ネジ26に螺入して(上ガイド部25に雌ネジ26が刻設されていなければ単に挿入して)連結部材40の上端部を水平プレート24の上方に突出させ、その上端部に平座金42aとバネ座金42bを嵌挿した状態で連結部材40の上部に該ナット42cを螺着し、締め込んで固定する。勿論、上固定部42はナット42cに限定されるものでなく、連結部材40を上ガイド部25に固定できるものであればよい。
【0024】
振動吸収材50は、
図8に示すように、振動吸収に適した合成ゴムや低反発性ゴムなど等の弾性材で外鍔付筒状に構成し、この外鍔部が大径部50aであり、その下部の筒状部分が小径部50bである。そして、この外鍔付筒状体の振動吸収材50の内周面が上ガイド部25の外周面に嵌着して取り付けられる。この時、上部の大径部50aは水平プレート24の下面と下ガイド部33の上面との上下方向の対向面間に介在される。一方、下部の小径部50bは上ガイド部25の外周面とこれより小径の挿通孔35との径方向の対向面間に介在される。
【0025】
次に、減震装置10を組み立てる際には、上ブラケット20側では上ガイド部25の外周面に振動吸収材50を嵌着させた状態で、上ガイド部25を上方より下ブラケット30の挿通孔35に押し込む。この状態で連結部材40を上ブラケット20の上ガイド部25に下ブラケット30の下ガイド部33側から螺入(下ガイド部33に雌ねじ26が刻設されていない場合はそのまま挿入)し、連結部材40の上部を上ブラケット20の上方に突出させる。その上で平座金42a、バネ座金42bを嵌挿して上固定部42であるナット42cで締め付ける。
【0026】
これにより、上ブラケット20の上ガイド部25の下端の上動規制部27に下固定部41である係止部40cが当接し、上ブラケット20と下ブラケット30とは連結部材40を通じて固定される。この時、下固定部41である係止部40cと下ガイド部34の天井部33aの天井面36aとの間には隙間S12が形成される。同時に上ブラケット20の水平プレート24の下面と下ガイド部34の天井部33aの上面との間に振動吸収材50の大径部50aが挟持され、その小径部50bが下ガイド部34の外周を取り囲み、下ガイド部34との接触を防止している。小径部50bの下端は
図3のように下固定部41である係止部40cの上面41eから離間するようように形成してもよいが、図示しないが、上面41eに接する長さとしてもよい。
【0027】
また、係止部40cと搭載盤70の上面71との間に隙間S11が形成される。隙間S11と隙間S12とは同一寸法となるように設定することが係止部41cの対角に位置する角が天井部33aと搭載盤70に同時に衝突することになって好ましいが、別段、両者の差が大きくなければ異なっていてもよい。以上により、係止部40cは下ガイド部34の内面及び搭載盤70の上面71に隙間S11、S12及びS2を以って離間している。なお、上ガイド部25に雌ネジ26が刻設されている場合、連結部材40の回転はドライバ溝40eにドライバを挿入して回すことで行われる。
【0028】
減震装置10を使用する際には、
図9に示すように下ブラケット30の下側に搭載盤70を重設し、その4隅を取着部31でそれぞれ設置面Gに取着することにより、減震装置10は下ブラケット30を通じて設置面Gに固定される。一方、上ブラケット20の垂直プレート23の両側を取着部21でそれぞれ減震対象物Mの下部側面に取着することにより減震装置10は上ブラケット20を通じて減震対象物Mに固定される。この減震装置10は減震対象物Mを支持するのに適した複数個を減震対象物Mの周囲に必要数取着して一台の減震対象物Mを支持するものである。
【0029】
減震対象物Mを稼動させると、それ自体に振動が生じ、その振動に対応して上ブラケット20が振動するが、減震装置10の振動吸収材50が振動を吸収して設置面Gへの不適な振動の伝達を抑制することができる。この間、係止部40cは下ガイド部33及び搭載盤70に対する離間状態を保つ。また、小地震のような小さな揺れが発生した場合でも、下ブラケット30側から上方の減震対象物Mに伝達しようとする外力は振動吸収材50の弾性に基づく振動吸収作用によって上ブラケット20側への不適な揺れの伝達を抑制し、離間状態を保って減震対象物Mを僅かにローリングさせる程度で減震対象物Mに対する悪影響を及ぼさないように対処することができる。
【0030】
大地震が発生した場合は設置面G側から大きな外力が下ブラケット30に直接伝達され、減震対象物Mは前後左右、上下とあらゆる方向に揺さぶられ、大きくローリングしようとする。この時、
図7(
図7は実施例3の傾動状態を示すものであるが、後述する傾動調整部材60bと係止部40cとが一体となって下固定部41の働きをなすので、この図を実施例1の説明に代用する。)のようにローリングする減震対象物Mと共に上ブラケット20、連結部材40が傾動し、振動吸収材50を繰り返し圧縮する。
【0031】
これによって、地震エネルギに一部は熱に変換されてその分だけ減衰する。そして、その傾きが一定角度θを越えようとした処で下固定部41の一端の下面40d(図の場合は左端の底面)が搭載盤70の上面71に、下固定部41の反対側の上面(図の場合は右端の上面)が下ガイド部33の天井部33aの天井面36aに衝突して傾動を止める。押圧ポイントを黒丸で示す。そして、その緩和された衝撃は連結部材40を通して上ブラケット20から減震対象物Mに伝わる。ローリングの際は、押圧ポイントを黒丸は左右入れ替わることになる。これにより、振動吸収材50に吸収されてある程度弱くなった衝撃荷重を減震対象物Mに与えるもののローリングによる減震対象物Mは防止できる。なお、水平方向の揺れは振動吸収材50の小径部50bにより吸収・緩和される。
【0032】
図4は本発明の実施例2で、隙間S12に合成ゴムや低反発ゴムのような弾性部材から衝撃吸収部材60aが挟み込まれている場合である。この場合、上固定部42であるナット42cを締め込んで行くと、実施例1と同様、連結部材40の引き上げによって係止部40cが上昇して衝撃吸収部材60aを係止部40cと天井部へ33aを挟み込む。搭載盤70の上面71との間では隙間S11が形成される点は実施例1と同様である。衝撃吸収部材60aは前述のように弾性部材にて形成されているので、前述のような減震対象物Mがローリングして係止部40cが傾動した時(或いは上下動した時)、ある程度変形するので、実質的には隙間S12と同等の働きをする。従って、
図4の衝撃吸収部材60aの部分は隙間S12と表示した。震対象物Mがローリングして係止部40cが傾動した時、
図7と同様の作用が部分的に圧縮された衝撃吸収部材60aを介して発生する。その間、衝撃吸収部材60aでは圧縮分だけ振動エネルギーの減衰効果を得ることができる。それ以外の点は実施例1と同様である。
【0033】
図5は本発明の実施例3で、ブラケット30の下ガイド部33の天井部33aに非接触にて、隙間S12に例えば、鉄や硬質樹脂などの硬質の傾動調整部材60bが挟み込まれている。減震対象物Mのローリング規制度合いは隙間S11、S12の大きさによって決まるので、傾動調整部材60bの肉厚を調整することで最適又は任意の感度に設定できる。
【0034】
傾動調整部材60bは、剛性が得られる素材を用いる。例えば、硬質樹脂材等の高分子材または鉄などの金属材で剛性を有する円板で構成することができる。傾動調整部材60bの外径は係止部40cと一致しており、内径は上ガイド部25の外径に一致し、上ガイド部25に嵌り込んでいる。図示していないが、傾動調整部材60bの内径を連結部材40の外径に一致するようにし、傾動調整部材60bの上面に上ガイド部25の上動規制部27が当接するようにしてもよい。なお、隙間S12については実施例1と同様であり、また、傾動調整部材60bは係止部40cの上に取り付けられて一体となって働くため、傾動調整部材60bと係止部40cとで下固定部41となる。この場合も搭載盤70の上面71との間では隙間S11が形成される点は実施例1と同様であり、それ以外の点は実施例1と同様である
。
【0035】
図6は本発明の実施例4で、隙間S12に前述の傾動調整部材60bと衝撃吸収部材60aとが挟み込まれている。衝撃吸収部材60aは傾動調整部材60bの上の設けられ、上・下ブラケット20、30は衝撃吸収部材60aにて縁が切られるようになっている。この場合も衝撃吸収部材60aが隙間S12と実質的に同様の働きをなす。この場合も搭載盤70の上面71との間では隙間S11が形成される点は実施例1と同様であり、それ以外の点は実施例1と同様である。